しかし、上記従来の後部突入防止装置では、バンパを突入防止位置にてロックする機構が必要であった。すなわち、ガイド筒に形成された貫通ロック孔と、貫通ロック孔に挿入されるロック部材と、そのロック部材を駆動するロックジャッキとが必要であった。そのため、部品点数の増加や構造の複雑化を招いていた。
ここで、ロック機構を省略し、油圧式のバンパジャッキのみで後方からの追突荷重に耐えるようにすることが考えられる。しかし、その場合、バンパジャッキの高圧化や大径化が必要となり、構造の大重量化や大型化を招いてしまう。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、バンパを突入防止位置にロックするための専用のアクチュエータが不要な後部突入防止装置を提供することである。
本発明に係る車両の後部突入防止装置は、バンパと、リンク機構とを備えている。前記リンク機構は、前リンクと、後リンクと、前記前リンクの後端部と前記後リンクの前端部とを回転自在に連結する連結ピンと、を有する。前記後部突入防止装置は更に、前記連結ピンと平行に配置され、前記前リンクの前端部を回転自在に支持する前ピンと、前記連結ピンと平行に配置され、前記後リンクを前記バンパに回転自在に連結する後ピンと、前記前ピンの中心と前記後ピンの中心とを結ぶ直線と平行に前後に移動する移動体を有するアクチュエータと、を備えている。前記後リンクは、前記連結ピンの軸方向から見て前記直線よりも前記移動体側に配置されかつ前記連結ピンと平行な係合ピンにより、前記アクチュエータの前記移動体に回転自在に連結されている。前記連結ピンは、前記アクチュエータの前記移動体が前方から後方に移動するときに、前記連結ピンの軸方向から見て、前記直線より前記係合ピン側と反対側の位置から、前記直線上のデッドポイントを経て、前記直線より前記係合ピン側の位置である終点位置にまで移動するように構成されている。前記後部突入防止装置は更に、前記連結ピンが前記終点位置を超えて前記直線より前記係合ピン側に更に移動しないように前記リンク機構の動作を規制する規制部材を備えている。
上記後部突入防止装置によれば、アクチュエータの移動体が前方に移動すると、リンク機構が屈折し、バンパは前方に移動する。これにより、車両の荷台を傾動させたときに、荷台とバンパとの接触を回避することができる。アクチュエータの移動体が後方に移動すると、リンク機構が展開する。このとき、連結ピンは、連結ピンの軸方向から見て、前ピンの中心と後ピンの中心とを結ぶ直線に対して、係合ピンと反対側の位置からデッドポイントを経て係合ピンと同じ側の終点位置にまで移動する。そのため、バンパが後方からの追突に備えた後方の位置(以下、突入防止位置という)にあるときには、連結ピンがデッドポイントを超えた位置にあるので、バンパに後方から追突荷重が加わった場合、リンク機構には連結ピンが係合ピンと同じ側に更に移動するような荷重が加えられる。しかし、連結ピンの移動は規制部材によって規制されるので、リンク機構が屈折することはなく、追突荷重は主にリンク機構および規制部材によって支えられる。したがって、上記後部突入防止装置によれば、バンパを突入防止位置にロックするための専用のアクチュエータは不要となる。よって、部品点数の削減や構造の簡単化を図ることができる。また、バンパを前後に移動させるアクチュエータ自体が追突荷重を受け止める必要がないので、アクチュエータの軽量化または小型化を図ることができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記バンパは、左右に延びるバンパ本体と、前記バンパ本体から前方に延びるバンパアームと、を有している。後部突入防止装置は更に、前記バンパアームを前後にスライド自在に支持する支持部材を備えている。
上記態様によれば、バンパはリンク機構および支持部材によって支持され、または、支持部材のみによって支持される。そのため、バンパをリンク機構のみで支持する場合に比べて、リンク機構の剛性を低く抑えることができる。よって、リンク機構の軽量化または小型化を図ることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記バンパアームには、前記連結ピンの軸方向から見て、前記直線から前記係合ピン側に凸状に湾曲した係合孔が形成され、前記係合ピンは前記係合孔に係合している。
上記態様によれば、リンク機構の屈折および展開に伴って係合ピンが係合孔内を移動することにより、リンク機構の屈折および展開が円滑に行われる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記リンク機構は、前記連結ピンが前記終点位置に至ると前記バンパアームに接触するように、前記バンパアームの側方に配置され、前記規制部材は前記バンパアームによって構成されている。
上記態様によれば、バンパアームが規制部材を兼用するので、規制部材として別途新たな部材を設ける必要がない。そのため、部品点数の削減や構造の小型化を図ることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記バンパは、前記リンク機構のみで支持されている。
上記態様によれば、バンパを支持する専用の部材が不要となり、部品点数の削減や構造の小型化を図ることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記リンク機構、前記前ピン、前記後ピン、前記係合ピン、および前記規制部材は、それぞれ左右に一対設けられている。後部突入防止装置は更に、前記左右のリンク機構を同調させる同調機構を備えている。
上記態様によれば、リンク機構、前ピン、後ピン、係合ピン、および規制部材が左右に一対設けられているので、後方からの追突荷重に対する耐久性が向上する。また、左右のリンク機構は同調機構によって同調するので、左右のリンク機構の動作が円滑となり、バンパを前後に円滑に移動させることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記連結ピンの軸方向から見て前記連結ピンが前記直線より前記係合ピン側に移動するように前記リンク機構を付勢する付勢機構を備えている。
上記態様によれば、連結ピンが意図せずに終点位置からデッドポイントに戻ることを防止することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記アクチュエータはエアシリンダによって構成されている。
一般的に、バンパを前後に移動させるアクチュエータとしてエアシリンダを用いる場合、このエアシリンダのみで追突荷重を支えることは難しい。しかし、前述の通り、本発明によれば追突荷重は主にリンク機構及び規制部材によって支えられるので、アクチュエータとしてエアシリンダを好適に用いることができる。
以上のように、本発明によれば、バンパを突入防止位置にロックするための専用のアクチュエータが不要な後部突入防止装置を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の一形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る後部突入防止装置10は、ダンプカー1の後部に配置されている。なお、ダンプカー1は後部突入防止装置10が搭載される車両の一例であるが、後部突入防止装置10が搭載される車両はダンプカー1に限定されず、他の特装車等であってもよいことは勿論である。
ダンプカー1は、キャビン2と、シャーシ3と、傾動可能な荷台4とを備えている。後部突入防止装置10は、荷台4の後部の下方に配置されている。詳細は後述するが、後部突入防止装置10は、バンパ16に取り付けられた左右一対の伸縮機構10L,10R(図8参照)を備えている。荷台4の傾動時には、荷台4とバンパ16とが接触しないように、伸縮機構10L,10Rが収縮し、バンパ16は前方の退避位置に移動する。一方、荷台4の非傾動時(例えば、ダンプカー1の走行中)には、伸縮機構10L,10Rは伸長し、バンパ16は後方の突入防止位置に位置付けられる。
図2は左側の伸縮機構10Lの鉛直断面図であり、図3は左側の伸縮機構10Lの水平断面図である。図3の符号CLは、ダンプカー1の車両中央線を表している。図2および図3に示すように、後部突入防止装置10は、バンパ16と、バンパ16を前後にスライド自在に支持する支持部材18とを備えている。バンパ16は、左右に延びるバンパ本体12と、バンパ本体12に固定されかつバンパ本体12から前方に延びるバンパアーム14とを有している。バンパアーム14は、左右に一対設けられている。なお、本実施形態ではバンパ本体12とバンパアーム14とは別体であるが、バンパ本体12とバンパアーム14とは一体物であってもよい。バンパアーム14および支持部材18は、横断面が矩形状の筒状に形成されており、バンパアーム14は支持部材18にスライド自在に支持されている。本実施形態では、支持部材18の内部にバンパアーム14の一部が挿入されている。ただし、支持部材18の一部がバンパアーム14の内部に挿入されていてもよい。また、バンパアーム14および支持部材18は必ずしも筒状でなくてもよく、バンパアーム14が支持部材18に対して前後にスライド自在に係合する他の形状であってもよい。支持部材18は、ステー20および吊り下げリンク21を介してシャーシ3に固定されている。
支持部材18およびバンパアーム14の内部には、アクチュエータ22が配置されている。アクチュエータ22はエアシリンダにより構成されている。ただし、アクチュエータ22の種類は特に限定されず、油圧シリンダ、電動モータ等の他の種類のアクチュエータであってもよい。アクチュエータ22は、前後に延びるシリンダ24と、シリンダ24に対してスライド自在なピストンロッド26とを有している。ピストンロッド26の先端部は、前後に移動する移動体26aを構成している。シリンダ24の根元部24a(言い換えると、シリンダ24の前端部)は、鉛直方向に延びるピン28により、支持部材18に回転自在に取り付けられている。
図3に示すように、後部突入防止装置10はリンク機構30を備えている。リンク機構30は、前リンク32と、後リンク34と、前リンク32の後端部と後リンク34の前端部とを回転自在に連結する連結ピン36とを有している。連結ピン36は、鉛直方向に延びている。
前リンク32の前端部は、鉛直方向に延びる前ピン38に回転自在に支持されている。前ピン38は、ステー19を介して支持部材18に固定されており、車両本体に対して移動しないようになっている。前リンク32は真っ直ぐに形成されている。図4に示すように、リンク機構30が屈折したときに、前リンク32は後リンク34と前後に重なることになる。そこで、前リンク32は、リンク機構30が屈折したときに後リンク34の一部を収容できるように、図5に示すように横断面がコ字状に形成されている。なお、図5の上方は車両前方、図5の下方は車両後方を表す。ただし、前リンク32の横断面形状は、前リンク32と後リンク34とを重ねることができる他の形状であってもよい。例えば、前リンク32の横断面形状は、板状であってもよい。ただし、前リンク32の横断面形状がコ字状の場合、前リンク32の断面二次モーメントが大きくなり、前リンク32の剛性を高めることができる。本実施形態では、前リンク32が後リンク34の一部を収容できるように形成されているが、後リンク34が前リンク32の一部を収容できるように形成されていてもよい。
図3に示すように、後リンク34は、真っ直ぐなリンク本体34aと、リンク本体34aの後端から曲がった係合部34bとを有している。本実施形態では、係合部34bはリンク本体34aから屈曲している。ただし、係合部34bはリンク本体34aから湾曲していてもよい。本実施形態では、リンク本体34aと係合部34bとは一体であるが、それらは別体であってもよい。図5に示すように、後リンク34のリンク本体34aの長さ34Lは、前リンク32の長さ32Lよりも短くなっており、リンク機構30が屈折したときに後リンク34の一部が前リンク32の内側に収納されるようになっている。前リンク32と同様、後リンク34のリンク本体34aは、横断面がコ字状に形成されている。これにより、後リンク34のリンク本体34aの剛性が高くなっている。
図3に示すように、バンパアーム14の右側には、右方に突出した支持部14bが形成されている。後リンク34のリンク本体34aの後端部は、鉛直方向に延びる後ピン42により上記支持部14bに回転自在に支持されている。このように、後リンク34は、後ピン42によりバンパアーム14に回転自在に連結されている。
係合部34bの先端部には、鉛直方向に延びる係合ピン46が取り付けられている。バンパアーム14の上面および下面には、平面視曲線状の係合孔44が形成されている。係合孔44は、左方に向かって凸状に湾曲しており、円弧形状に形成されている。係合ピン46は係合孔44に挿入されており、係合孔44内を移動可能に構成されている。
また、係合ピン46には、アクチュエータ22のピストンロッド26の先端部、すなわち移動体26aが連結されている。そのため、係合ピン46は移動体26aと共に移動する。詳しくは、ピストンロッド26が前方に向かって縮むと、係合ピン46は前方に引っ張られ、ピストンロッド26が後方に向かって伸びると、係合ピン46は後方に押し出される。係合ピン46が前方に移動すると、リンク機構30は屈折する。一方、係合ピン46が後方に移動すると、リンク機構30は展開される。よって、リンク機構30は、アクチュエータ22によって屈折および展開される。
アクチュエータ22のピストンロッド26は、係合ピン46、後リンク34の係合部34b、および後ピン42を介してバンパアーム14に連結されている。そのため、ピストンロッド26の伸縮に伴い、バンパ16は前後に移動する。前述の通り、荷台4を傾動させる際には、荷台4と接触しないようにバンパ16を最も前方の位置(退避位置)に移動させる。車両走行時等では、後方からの車両の突入を防止するため、バンパ16は後方の位置(突入防止位置)に位置付けられる。
図6は、アクチュエータ22の動作に伴うリンク機構30の状態変化を表す平面図である。バンパ16を退避位置から突入防止位置に移動させる際に、リンク機構30は図6(a)、(b)、(c)に示す状態に順に変化する。すなわち、バンパ16を退避位置から後方に移動させるようにアクチュエータ22のピストンロッド26を伸長させると、後リンク34の係合部34bが後方に移動し、リンク機構30が展開する。それに伴い、連結ピン36は、前ピン38の中心と後ピン42の中心とを結ぶ直線Lよりも右方の位置から、当該直線Lに向かって移動する(図6(a)参照)。やがて連結ピン36は、図6(b)に示すように、連結ピン36の中心が直線L上に位置するデッドポイントに達する。連結ピン36がデッドポイントに達した後も、アクチュエータ22のピストンロッド26は、係合ピン46を後方に押し続ける。係合ピン46は直線Lよりも左方に位置しているので、後リンク34には後ピン42を中心として反時計回りのモーメントが発生する。その結果、後リンク34は後ピン42を中心として反時計回りに回転する。それにより、図6(c)に示すように、連結ピン36はデッドポイントを超えて、直線Lの右方から左方へと移動する。なお、この際にバンパ16は若干前方に移動する。以上のように、アクチュエータ22のピストンロッド26の伸縮に伴い、バンパ16は前後に移動する。本実施形態では、バンパ16の前後のストロークは、アクチュエータ22の前後のストロークよりも短くなっている。
ところで、直線Lの左方にはバンパアーム14が配置されている。そのため、連結ピン36はデッドポイントを超えた後、バンパアーム14の側面に接触し、それ以上の移動が規制される。バンパアーム14は、リンク機構30の動作を規制する規制部材を構成している。本実施形態では、この連結ピン36がバンパアーム14の側面に接触している位置(終点位置)が、バンパ16の突入防止位置となる。ただし、バンパ16が突入防止位置にあるときの連結ピン36の位置は、デッドポイント(図6(b)参照)とバンパアーム14に接触する位置(図6(c)参照)との間の位置であってもよい。なお、本実施形態では連結ピン36がバンパアーム14の側面と接触するが、連結ピン36と共に、または連結ピン36に代えて、前リンク32および/または後リンク34の一部がバンパアーム14と接触し、それによりリンク機構30の動作が規制されるようになっていてもよい。また、本実施形態ではバンパアーム14が規制部材を兼用しているが、バンパアーム14とは別に規制部材を設けるようにすることも可能である。
バンパ16が突入防止位置にあるときに、バンパ16に対して後方から車両が追突すると、バンパ16には前向きの追突荷重が加えられる。バンパ16は後ピン42を介してリンク機構30の後リンク34に連結されているので、後ピン42を介して、後リンク34にも前向きの荷重が加えられる。前述の通り、バンパ16が突入防止位置にあるときに、リンク機構30の連結ピン36は、デッドポイントを超えて直線Lよりも左方に位置している。そのため、後リンク34に後ピン42から前向きの力が加えられると、リンク機構30は連結ピン36が更に左方に移動するように屈折しようとする。しかし、連結ピン36の左方への移動は、バンパアーム14によって規制される。そのため、リンク機構30は屈折せず、バンパ16の前方への移動は規制される。したがって、バンパ16は後方からの追突荷重に対して十分な強度を発揮する。
なお、バンパ16が突入防止位置にあるときに連結ピン36が必ず直線Lよりも左方に位置するように、連結ピン36を左方に移動させるようにリンク機構30を付勢する付勢機構を設けてもよい。そのような付勢機構として、例えば図7に示すように、連結ピン36の周りにねじりバネ48を設けるようにしてもよい。図7に示す実施形態では、ねじりバネ48により、前リンク32は連結ピン36を中心として時計回りに付勢され、後リンク34は連結ピン36を中心として反時計回りに付勢される。これにより、例えばダンプカー1の走行中に、連結ピン36を右方に移動させる方向の意図しない力がリンク機構30に加わったとしても、連結ピン36は直線Lよりも左方の位置に保持される。また、万一、リンク機構30に意図しない大きな力が作用し、連結ピン36が一時的に直線Lよりも右方に移動したとしても、ねじりバネ48の力により、連結ピン36は再び直線Lよりも左方に移動し、バンパアーム14と接触する終点位置に保持される。
以上、左側の伸縮機構10Lについて説明してきたが、図8に示すように、後部突入防止装置10は左側の伸縮機構10Lに加え、右側の伸縮機構10Rを備えている。左側の伸縮機構10Lと同様、右側の伸縮機構10Rも、リンク機構30、前ピン38、後ピン42、および係合ピン46を備えている。右側の伸縮機構10Rについても、ねじりバネ48等の付勢機構を備えていることが好ましい。右側の伸縮機構10Rは、概ね左側の伸縮機構10Lと左右対称に形成されている。右側においても、バンパ本体12にはバンパアーム14が固定されている。一方、左側の伸縮機構10Lはアクチュエータ22を備えていたが、右側の伸縮機構10Rはアクチュエータ22を備えていない。その代わりに、右側の伸縮機構10Rは、同調機構50を介して左側の伸縮機構10Lに連結されている。右側の伸縮機構10Rは同調機構50により、左側の伸縮機構10Lと同調するように駆動される。左側の伸縮機構10Lおよび右側の伸縮機構10Rは、単一のアクチュエータ22によって駆動される。
本実施形態に係る同調機構50は、左側の伸縮機構10Lの前ピン38に連結されたスプロケット52Lと、右側の伸縮機構10Rの前ピン38に連結されたスプロケット52Rと、それらスプロケット52L,52Rに巻き掛けられたチェーン54とを備えている。スプロケット52Lとスプロケット52Rとが逆方向に回転するように、チェーン54は襷掛けに配置されている。左側の前ピン38と右側の前ピン38とが逆方向に同じ速度で回転することにより、左側の伸縮機構10Lと右側の伸縮機構10Rとは同調する。
なお、同調機構50の具体的構成は何ら限定されず、他に種々の同調機構を用いることができる。例えば、左右のスプロケット52L,52Rおよびチェーン54の代わりに、左右のプーリおよび伝動ベルトを備えていてもよい。また、左側および右側の前ピン38に歯車が連結され、それら歯車が他の歯車を介して連結されていてもよい。同調機構は、歯車とチェーンとを組み合わせた機構であってもよい。
また、同調機構50は必ずしも必要ではなく、左側の伸縮機構10Lおよび右側の伸縮機構10Rのそれぞれにアクチュエータ22を設けることも可能である。
なお、本実施形態では、アクチュエータ22は左側の伸縮機構10Lだけに設けられていたが、アクチュエータ22は右側の伸縮機構10Rだけに設けられていてもよい。この場合、左側の伸縮機構10Lは、同調機構50を介して右側の伸縮機構10Lに連結され、右側に配置されたアクチュエータ22によって駆動されることになる。
以上のように、本実施形態に係る後部突入防止装置10によれば、バンパ16を前後に移動させることができるので、荷台4を傾動させるときにはバンパ16を後方の突入防止位置から前方の退避位置に移動させることによって、荷台4とバンパ16との接触を避けることができる。バンパ16が突入防止位置にあるときには、連結ピン36はデッドポイントを超えてバンパアーム14側に位置している。そのため、バンパ16に追突荷重が加わっても、リンク機構30の屈折はバンパアーム14によって規制され、バンパ16は突入防止位置に保持される。したがって、本実施形態によれば、バンパ16を突入防止位置にロックするための専用のアクチュエータは不要である。よって、部品点数の削減や構造の簡単化を図ることができる。また、本実施形態によれば、追突荷重は主にリンク機構30およびバンパアーム14によって受け止められ、アクチュエータ22が追突荷重を受け止める必要がない。したがって、アクチュエータ22の軽量化または小型化を図ることができる。
本実施形態では、アクチュエータ22としてエアシリンダを用いている。エアシリンダは油圧シリンダに比べると、シリンダ内にて高圧の作動流体を長時間に渡って保持することが難しい。そのため、エアシリンダのみで追突荷重を支えることは難しい。しかし、本実施形態によれば、追突荷重は主にリンク機構30およびバンパアーム14によって支えられる。よって、アクチュエータ22としてエアシリンダを好適に用いることができる。
本実施形態では、バンパ16はリンク機構30だけでなく、支持部材18によっても支持されている。そのため、バンパ16の自重をリンク機構30および支持部材18の両方で負担することができる。支持部材18がバンパ16の自重の一部を負担するので、リンク機構30を小型化または軽量化することができる。一方、リンク機構30がバンパ16の自重の一部を負担するので、支持部材18の負担が減り、支持部材18とバンパアーム14との重なり部分において、支持部材18とバンパアーム14との間に発生する摩擦力を低減させることができる。よって、バンパアーム14を支持部材18に対して移動させるために必要な力を小さくすることができるので、アクチュエータ22の推力を小さく抑えることができる。したがって、アクチュエータ22を小型化または軽量化することが可能となる。ただし、バンパ16の自重は支持部材18のみで負担し、リンク機構30を専らバンパ16を突入防止位置に保持する用途に用いることも可能である。
図6に示すように、バンパアーム14には、係合ピン46が挿入された係合孔44が形成されている。係合ピン46が係合孔44内を移動することにより、リンク機構30の屈折および展開が円滑に行われる。
本実施形態では、リンク機構30の移動を規制する規制部材は、バンパアーム14によって兼用されている。そのため、バンパアーム14とは別に、専用の規制部材を設ける必要がない。よって、部品点数の削減および構造の小型化を図ることができる。
本実施形態に係る後部突入防止装置10は、左右一対の伸縮機構10L,10Rを備えている。そのため、後方からの追突荷重に対する耐久性を向上させることができる。また、右側の伸縮機構10Rは、同調機構50により左側の伸縮機構10Lと同調する。そのため、左右のリンク機構30の動作が円滑となり、バンパ16を前後に円滑に移動させることができる。
図7に示すように、連結ピン36が終点位置に向かうようにリンク機構30を付勢するねじりバネ48を設けることにより、連結ピン36が意図せずに終点位置からデッドポイント側に移動することを防止することができる。よって、ダンプカー1の走行中等において、外部から意図しない力が加わったとしても、バンパ16を突入防止位置に確実に保持することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は他に種々の形態にて実施することができる。次に、本発明の他の実施形態について簡単に説明する。
前記実施形態では、リンク機構30および支持部材18の両方でバンパ16を支持していた。しかし、図9に示すように、リンク機構30のみでバンパ16を支持することも可能である。この実施形態では、リンク機構30の動作を規制する規制部材として、開き止め55が設けられている。開き止め55は支持部材18により支持されている。ただし、開き止め55は他の部材によって支持されていてもよい。連結ピン36がデッドポイントを超えて終点位置に至ると、開き止め55と接触し、それ以上の移動が規制される。この実施形態によれば、支持部材18でバンパ16を支持する必要がない。また、バンパアーム14を短縮または省略することができる。
図10に示すように、連結ピン36が終点位置に至ると前リンク32の一部32dと後リンク34の一部34dとが当接し、連結ピン36のそれ以上の移動が規制されるようになっていてもよい。この場合、前リンク32の一部32dおよび後リンク34の一部34dにより開き止め55が構成される。よって、リンク機構30と別体の開き止めが不要となり、部品点数を削減することができる。
前記実施形態は、連結ピン36がデッドポイントを超えて終点位置に移動するようにリンク機構30を付勢する付勢機構として、ねじりバネ48を備えていた。しかし、付勢機構はねじりバネ48に限定されず、公知の各種の付勢機構を用いることができる。例えば、他の付勢機構として、コイルスプリング、またはボールプランジャを用いてもよい。
前記実施形態では、後部突入防止装置10は、左右一対の伸縮機構10L,10Rを備えていた。すなわち、伸縮機構の個数は2つであった。しかし、伸縮機構の個数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
前記実施形態では、連結ピン36等は鉛直に延び、リンク機構30は左右に屈折するように配置されていた。しかし、リンク機構30の屈折の方向は特に限定されない。連結ピン36等は、鉛直から傾いた方向に延びていてもよい。連結ピン36等が水平に延び、リンク機構30が上下に屈折するように配置されていてもよい。