ところで、PTC素子は、それ自体の温度が低い状態で電力を供給すると、供給し始めた直後の電流値(突入電流値)が大きくなり、その後、PTC素子自体の温度上昇に伴って電流値が低下するという性質を持っている。
特許文献1の電気式ヒータのように複数のPTC素子を有している場合、例えばPTC素子が第1〜第3PTC素子の3つであれば、電気式ヒータ全体として見たときの突入電流値を低減するためには、第1PTC素子、第2PTC素子、第3PTC素子の順に時間的に間隔をあけて電力を供給することが考えられる。これにより、第1PTC素子の温度上昇に伴う電流値低下が起こってから第2PTC素子に電力を供給し、また、第2PTC素子の電流値低下が起こってから第3PTC素子に電力を供給することができるので、電気式ヒータ全体として見たときに最大電流値を低下させることができ、ひいては回路設計が容易に行えるようになる。
しかしながら、例えば冬季に車両を長時間放置していた場合のように大きな暖房立ち上げ能力が要求されることがある。このような場合に、複数のPTC素子に順に電力を供給するようにしていると、暖房立ち上げ能力が低下してしまい、乗員の快適性を確保できない恐れがある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電力を供給することによって発熱する複数の発熱素子を用いて車室の暖房を行うようにする場合に、最大電流値を低下させて回路設計を容易にしながら、暖房立ち上げ時の乗員の快適性を高めることにある。
上記目的を達成するために、本発明では、発熱素子に電力を供給するタイミングを電気式ヒータの温度に基づいて設定するようにした。
第1の発明は、電流を流すことによって発熱する第1発熱素子及び第2発熱素子を有する電気式ヒータと、
上記電気式ヒータの第1発熱素子に電力を供給して所定の遅れ時間が経過した後に、上記第2発熱素子に電力を供給するように構成された制御装置とを備えた車両用空調装置において、
上記電気式ヒータの温度状態を得る温度状態検出センサを備え、
上記制御装置は、上記温度状態検出センサで得られた上記電気式ヒータの温度状態に基づいて上記遅れ時間を設定するように構成されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、電気式ヒータの温度が低い場合に遅れ時間を長くすることで、第1発熱素子の電流値が低下した後に、第2発熱素子に電力を供給することが可能になる。これにより、電気式ヒータの最大電流値が低下する。
一方、電気式ヒータの温度が高い場合には第1発熱素子の電流値が低下しており、この場合に遅れ時間を短くすることで、第2発熱素子に電力を早く供給することが可能になる。
第2の発明は、第1の発明において、
上記制御装置は、上記電気式ヒータの温度が高いほど遅れ時間を短くするように構成されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、電気式ヒータの温度が高い場合には第1発熱素子の電流値が低下しており、この場合には、遅れ時間を短くして第2発熱素子に電力を早く供給しても電気式ヒータの最大電流値を低下することが可能になる。
第3の発明は、第1の発明において、
上記電気式ヒータは、第3発熱素子を有し、
上記制御装置は、上記電気式ヒータの第1発熱素子に電力を供給して所定の第1遅れ時間が経過した後に、上記第2発熱素子に電力を供給し、該第2発熱素子に電力を供給して所定の第2遅れ時間が経過した後に、上記第3発熱素子に電力を供給するように構成され、上記第2遅れ時間を上記第1遅れ時間よりも短く設定することを特徴とするものである。
この構成によれば、第1発熱素子及び第2発熱素子に電力を供給すると、第3発熱素子に電力を供給していなくても第1発熱素子及び第2発熱素子の熱が第3発熱素子に伝達して第3発熱素子の温度が上昇する。従って、第3発熱素子に電力を供給するタイミングを設定する第2遅れ時間を相対的に短くして暖房立ち上げ能力の向上を図った場合にも、第3発熱素子の突入電流値は低く抑えることが可能になる。
第4の発明は、第1の発明において、
上記温度状態検出センサは、上記第1発熱素子の温度状態を得る第1温度センサと、上記第2発熱素子の温度状態を得る第2温度センサとを有し、
上記制御装置は、上記第1温度センサ及び上記第2温度センサで得られた上記第1発熱素子及び上記第2発熱素子の温度状態に基づいて遅れ時間を設定することを特徴とするものである。
この構成によれば、第1発熱素子及び第2発熱素子の温度状態を個別に得ることで、各発熱素子の温度状態を考慮した最適な遅れ時間を設定することが可能になる。
第5の発明は、第4の発明において、
上記制御装置は、上記第1温度センサ及び上記第2温度センサで得られた上記第1発熱素子及び上記第2発熱素子の温度変化に基づいて遅れ時間を設定することを特徴とするものである。
この構成によれば、第1温度センサ及び第2温度センサで得られた温度の上昇速度が速い場合には第2発熱素子の温度が上昇し易い状態であり、この場合に遅れ時間を短くすることで、第2発熱素子の突入電流値を低く抑えながら、第2発熱素子に電力を早く供給することが可能になる。
第6の発明は、第5の発明において、
上記制御装置は、上記第1温度センサ及び上記第2温度センサで得られた上記第1発熱素子及び上記第2発熱素子の温度の上昇速度が速いほど遅れ時間を短く設定することを特徴とするものである。
この構成によれば、第2発熱素子の突入電流値を低く抑えながら、第2発熱素子に電力を早く供給することが可能になる。
第7の発明は、第1の発明において、
上記電気式ヒータの空気流れ方向下流側に設けられ、該電気式ヒータを通過した空気の温度を得る空気温度センサによって上記温度状態検出センサが構成され、
上記制御装置は、上記空気温度センサで得られた温度に基づいて遅れ時間を設定することを特徴とするものである。
この構成によれば、吹出空気の温度調整にも利用可能な空気温度センサを利用して遅れ時間を設定することで、電気式ヒータに温度センサを別途設ける場合に比べて低コスト化を図ることが可能になる。
第8の発明は、第7の発明において、
上記制御装置は、上記空気温度センサで得られた温度変化に基づいて遅れ時間を設定することを特徴とするものである。
この構成によれば、空気温度センサで得られた温度の上昇速度が速い場合には第2発熱素子の温度が上昇し易い状態であり、この場合に遅れ時間を短くすることで、第2発熱素子の突入電流値を低く抑えながら、第2発熱素子に電力を早く供給することが可能になる。
第9の発明は、第8の発明において、
上記制御装置は、上記空気温度センサで得られた温度の上昇速度が速いほど遅れ時間を短く設定することを特徴とするものである。
この構成によれば、第2発熱素子の突入電流値は低く抑えながら、第2発熱素子に電力を早く供給することが可能になる。
第10の発明は、第1の発明において、
上記電気式ヒータに空調用空気を送風する送風機を備え、
上記電気式ヒータの空気流れ方向下流側に設けられ、該電気式ヒータを通過した空気の温度を得る空気温度センサによって上記温度状態検出センサが構成され、
上記制御装置は、上記電気式ヒータに電力を供給する前に上記送風機を作動させ、該送風機の作動後に上記空気温度センサで得られた温度に基づいて遅れ時間を設定することを特徴とするものである。
この構成によれば、電気式ヒータに電力を供給する前に送風機を作動させ、その後、電気式ヒータに電力を供給することで、空気温度センサで得られる温度は次第に上昇していく。したがって、空気温度センサによって電気式ヒータの温度が得られる。この空気温度センサによって得られた温度に基づいて遅れ時間を設定することで、遅れ時間を適切に設定することが可能になる。
第11の発明は、第1の発明において、
上記電気式ヒータを通過する前の空気の温度を検出する上流側温度センサを備え、
上記制御装置は、上記上流側温度センサで得られた温度に基づいて遅れ時間を設定することを特徴とするものである。
この構成によれば、上流側温度センサで検出された温度が高い場合には電気式ヒータの温度が上昇し易い状況であるので、この場合に遅れ時間を短くすることで、第2発熱素子に電力を早く供給することが可能になる。
一方、上流側温度センサで検出された温度が低い場合には電気式ヒータの温度が上昇しにくい状況であるので、この場合に遅れ時間を長くすることで、第2発熱素子の突入電流値を低く抑えることが可能になる。
第12の発明は、第11の発明において、
上記制御装置は、上記上流側温度センサで得られた温度が高いほど遅れ時間を短くすることを特徴とするものである。
この構成によれば、第2発熱素子の突入電流値は低く抑えながら、第2発熱素子に電力を早く供給することが可能になる。
第13の発明は、第11または12の発明において、
上記電気式ヒータの空気流れ上流側に設けられ、空調用空気を冷却する冷却用熱交換器を備え、
上記上流側温度センサは、上記冷却用熱交換器を通過した空気の温度を検出する冷却用熱交換器温度センサで構成されていることを特徴とするものである。
この構成によれば、冷却用熱交換器温度センサを利用して遅れ時間を変更することが可能になる。これにより、遅れ時間を変更するために専用の上流側温度センサを設ける必要がなくなる。
第1の発明によれば、第1発熱素子に電力を供給してから第2発熱素子に電力を供給するまでの遅れ時間を、電気式ヒータの温度に基づいて設定するようにしたので、最大電流値を低下させて回路設計を容易にできるとともに、暖房立ち上げ時には高い暖房能力を得て乗員の快適性を向上できる。
第2の発明によれば、電気式ヒータの温度が高いほど遅れ時間を短くすることで、最大電流値を低下させながら、暖房立ち上げ時に高い暖房能力を得ることができる。
第3の発明によれば、第1発熱素子、第2発熱素子、第3発熱素子の順に電力の供給を開始する場合に、第1発熱素子に電力を供給してから第2発熱素子に電力を供給するまでの時間に比べて、第2発熱素子に電力を供給してから第3発熱素子に電力を供給するまでの時間を短くしているので、最大電流値を抑制しながら、暖房立ち上げ時に高い暖房能力を得ることができる。
第4の発明によれば、第1発熱素子の温度状態と第2発熱素子の温度状態とを用いて遅れ時間を設定するようにしたので、各発熱素子の温度状態を考慮した遅れ時間とすることができ、暖房立ち上げ時に高い暖房能力を得ることができる。
第5の発明によれば、第1発熱素子及び第2発熱素子の温度変化に基づいて遅れ時間を設定することができるので、第2発熱素子の突入電流値を低く抑えながら、第2発熱素子に電力を早く供給して暖房立ち上げ時に高い暖房能力を得ることができる。
第6の発明によれば、第1発熱素子及び第2発熱素子の温度の上昇速度が早いほど遅れ時間を短く設定するようにしたので、第2発熱素子に電力を早く供給して暖房立ち上げ時に高い暖房能力を得ることができる。
第7の発明によれば、電気式ヒータを通過した空気の温度を得る空気温度センサで得られた温度に基づいて遅れ時間を設定するようにしたので、電気式ヒータに温度センサを別途設ける場合に比べて低コスト化を図ることができる。
第8の発明によれば、第1発熱素子及び第2発熱素子の温度変化に基づいて遅れ時間を設定することができるので、第2発熱素子の突入電流値を低く抑えながら、第2発熱素子に電力を早く供給して暖房立ち上げ時に高い暖房能力を得ることができる。
第9の発明によれば、第1発熱素子及び第2発熱素子の温度の上昇速度が早いほど遅れ時間を短く設定することで、第2発熱素子に電力を早く供給して暖房立ち上げ時に高い暖房能力を得ることができる。
第10の発明によれば、電気式ヒータに電力を供給する前に送風機を作動させ、該送風機の作動後に空気温度センサで得られた温度に基づいて遅れ時間を設定するようにしたので、電気式ヒータの温度の推定結果が正確なものとなり、よって遅れ時間を適切な長さにすることができる。
第11の発明によれば、電気式ヒータを通過する前の空気の温度に応じた遅れ時間とすることができるので、最大電流値を低下させることができるとともに、暖房立ち上げ時には高い暖房能力を得ることができる。
第12の発明によれば、上流側温度センサで得られた温度が高いほど遅れ時間を短くするようにしたので、最大電流値を低下させることができるとともに、暖房立ち上げ時には高い暖房能力を得ることができる。
第13の発明によれば、冷却用熱交換器温度センサで上流側温度センサを構成したので、コスト高を抑制しながら遅れ時間を適切に変更することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る車両用空調装置1の概略構造を示す図である。この車両用空調装置1は、例えば自動車等の車両に搭載されるものであり、車室内または車室外の空気を導入して所望温度の空調風を生成した後、車室の各部に供給することができるようになっている。
尚、この空調装置1が搭載される車両は、走行用モータ(図示せず)とバッテリBとを備えた電気自動車である。
車両用空調装置1は、室外ユニット2と、室内ユニット3と、室外ユニット2及び室内ユニット3を制御する制御装置4とを備えている。室外ユニット2は、例えば走行用モータが搭載されるモータルームに配設されており、冷凍サイクル装置の構成要素である凝縮器10及び電動コンプレッサ11と、凝縮器10に空気を送る送風機12とを備えている。電動コンプレッサ11は、制御装置4によってON及びOFFの切替と、回転数の変更とが行われる。電動コンプレッサ11にはバッテリBから電力が供給される。
室内ユニット3は、ケーシング20と、ケーシング20の内部に収容される送風機21と、エバポレータ(冷却用熱交換器)22と、電気式ヒータ23と、内外気切替ダンパ24と、エアミックスダンパ25と、吹出方向切替ダンパ26とを備えている。
ケーシング20の内部には空気通路が形成されている。ケーシング20の空気流れ方向上流側には、内外気切替部30が設けられている。内外気切替部30には、車室内の空気をケーシング20の内部に導入するための内気取入口31と、車室外の空気をケーシング20の内部に導入するための外気取入口32とが形成されている。
上記内外気切替ダンパ24は、内外気切替部30の内部に配設されており、内気取入口31と外気取入口32との一方を開放し、他方を閉塞するように構成されている。
送風機21は、ケーシング20の内部において内外気切替ダンパ24よりも下流側に配置されている。送風機21は、ブロアモータ28により回転駆動される。ブロアモータ28は、制御装置4によってON及びOFFの切替と、回転数の変更(送風量の変更)とが行われる。
ケーシング20の内部には、該ケーシング20の内部に導入された空調用空気を冷却するための冷却通路R1と、空調用空気を加熱するための加熱通路R2と、空調用空気が該加熱通路R2をバイパスして流れるバイパス通路R3と、加熱通路R2及びバイパス通路R3を流れた空気を混合させるエアミックス空間R4とが形成されている。
詳しくは、冷却通路R1は送風機21よりも空気流れ方向下流側に形成されている。冷却通路R1の下流側は2つに分岐しており、そのうちの一方に加熱通路R2の上流側が接続され、他方にバイパス通路R3の上流側が接続されている。また、加熱通路R2の下流側及びバイパス通路R3の下流側がエアミックス空間R4に接続されている。さらに、エアミックス空間R4の下流側は3つに分岐しており、デフロスタ吹出口33、ベント吹出口34、ヒート吹出口35に接続されている。
上記エバポレータ22は、冷却通路R1に配置されている。ケーシング20に導入された空調用空気の全量がエバポレータ22を通過する。エバポレータ22は、冷凍サイクル装置の構成要素としての蒸発器である。また、このエバポレータ22には、膨張弁装置37が設けられており、凝縮器10から排出された冷媒は膨張弁装置37を通過して減圧されてからエバポレータ22に流入するようになっている。エバポレータ22を循環した冷媒は電動コンプレッサ11に吸入される。
エバポレータ22には、該エバポレータ22の表面温度を検出するためのエバポレータセンサとしてのエバセンサ(上流側温度センサ)40が設けられている。図2にも示すように、エバセンサ40は、制御装置4に接続されており、検出した温度を制御装置4に対して出力するようになっている。
電気式ヒータ23は、図3に示すように、第1〜第6発熱ユニット51〜56と、多数のフィン57と、電極ホルダ58とを備えている。第1〜第6発熱ユニット51〜56は、電気式ヒータ23の幅方向に順に並んでおり、これら第1〜第6発熱ユニット51〜56の間にフィン57が配設されており、空調用空気が通過するようになっている。
第1〜第6発熱ユニット51〜56は同じものであり、発熱量もほぼ同じである。各ユニット51〜56の内部には、電力を流すことによって発熱するPTC素子が設けられている。
第1〜第6発熱ユニット51〜56は3つのグループに分けられている。すなわち、第1及び第2発熱ユニット51,52には、第1陽極側電極58aと、陰極側電極58dとが接続されている。また、第3及び第4発熱ユニット53,54には、第2陽極側電極58bと、陰極側電極58dとが接続されている。さらに、第5及び第6発熱ユニット55,56には、第3陽極側電極58cと、陰極側電極58dとが接続されている。
第1及び第2発熱ユニット51,52のPTC素子は、本発明の第1発熱素子51a,52aである。第3及び第4発熱ユニット53,54のPTC素子は、本発明の第2発熱素子53a,54aである。第5及び第6発熱ユニット55,56のPTC素子は、本発明の第3発熱素子55a,56aである。第1発熱素子51a,52a、第2発熱素子53a,54a及び第3発熱素子55a,56aに熱が発生した場合はその熱が他の発熱素子に伝わるようになっている。
第1〜第3陽極側電極58a〜58c及び陰極側電極58dは制御装置4に接続されており、第1〜第3陽極側電極58a〜58cには独立して電力を供給するようになっている。第1陽極側電極58aに電力を供給することで、第1及び第2発熱ユニット51,52の第1発熱素子51a,52aに電流が流れて該第1発熱素子51a,52aが発熱し、また、第1陽極側電極58a及び第2陽極側電極58bに電力を供給することで第1〜第4発熱ユニット51〜54の第1及び第2発熱素子51a,52a,53a,54aに電流が流れて該発熱素子51a,52a,53a,54aが発熱し、また、第1〜第3陽極側電極58a〜58cに電力を供給することで第1〜第6発熱ユニット51〜56の第1〜第3発熱素子51a,52a,53a,54a,55a,56aに電流が流れて該発熱素子51a,52a,53a,54a,55a,56aが発熱する。このように電気式ヒータ23の暖房能力は、大きく3段階に調節することができる。
図1に示すように、電気式ヒータ23には、該電気式ヒータ23に入力する電流値を検出する電流値検出センサ23aが設けられている。この電流値検出センサ23aは、制御装置4に接続されており、検出した電流値を制御装置4に対して出力するようになっている。
ケーシング20の内部には、電気式ヒータ23の第1及び第2発熱ユニット51,52の温度(第1発熱素子51a,52aの温度状態)を検出する第1温度センサ(温度状態検出センサ)41と、電気式ヒータ23の第3及び第4発熱ユニット53,54の温度(第2発熱素子53a,54aの温度状態)を検出する第2温度センサ(温度状態検出センサ)42とが配設されている。この第1温度センサ41及び第2温度センサ42は、制御装置4に接続されており、検出した温度を制御装置4に対して出力するようになっている。
ケーシング20の内部には、電気式ヒータ23よりも空気流れ方向下流側に、電気式ヒータ23を通過した空気の温度を得る温風センサ(空気温度センサ)44が配設されている。この温風センサ44は、温度状態検出センサを構成するものであり、制御装置4に接続され、検出した温度を制御装置4に対して出力するようになっている。温風センサ44により、電気式ヒータ23の温度状態を得ることが可能である。
エアミックスダンパ25は、加熱通路R2及びバイパス通路R3の一部である上流端開口を開閉するように構成されている。エアミックスダンパ25は、空調装置1の構成要素であるアクチュエータ43により駆動されるようになっている。アクチュエータ43は制御装置4に接続され、制御装置4から出力される信号によって動作する。
図1に実線で示すように、エアミックスダンパ25を、加熱通路R2を全閉にするまで動作させると、冷却通路R1を流通した空調用空気は全量がバイパス通路R3を流れてエアミックス空間R4に流入する。一方、図1に仮想線で示すようにエアミックスダンパ25を、バイパス通路R3を全閉にするまで動作させると、冷却通路R1を流通した空調用空気は全量が加熱通路R2を流れてエアミックス空間R4に流入する。このエアミックスダンパ25の動作により、加熱通路R2及びバイパス通路R3の開度を調整してエアミックス空間R4に流入する冷風量と温風量とが変更される。
この実施形態では、エアミックスダンパ25の開度を加熱通路R2の開度で表すこととする。例えば、エアミックスダンパ25の開度が100%とは、加熱通路R2の開度が100%で、かつ、冷却通路R1の開度が0%であり、エアミックスダンパ25の開度が0%とは、加熱通路R2の開度が0%で、かつ、冷却通路R1の開度が100%である。エアミックスダンパ25の開度は、0%〜100%の間で任意の値に設定することができるようになっている。
エアミックス空間R4では、冷風と温風とが混ざり、これにより調和空気が生成される。
エアミックス空間R4で生成された調和空気は、吹出方向切替ダンパ26の開閉状態に応じて車室の各部に供給される。このときの吹出モードとしては、例えばデフロスタモードやベントモード、ヒートモード等がある。
また、上記車両には、車室内に配設されて車室内の空気温度を検出する内気温度センサ60と、車室外に配設されて車室外の空気温度を検出する外気温度センサ61とが設けられている。内気温度センサ60及び外気温度センサ61は、車両用空調装置1の構成要素である。内気温度センサ60及び外気温度センサ61は制御装置4に接続されており、検出した温度を制御装置4に対して出力するようになっている。
制御装置4は、冷凍サイクル装置を制御するとともに、送風機21、電気式ヒータ23、アクチュエータ43も制御する。冷凍サイクル装置の制御では、基本的には、空調負荷(冷房負荷)に応じて電動コンプレッサ11のON、OFFの切替と、回転数を制御する。このとき、エバセンサ40の出力信号からエバポレータ22の表面温度を得て、これに基づいて電動コンプレッサ11を制御する。
また、強めの空調が要求される場合にはブロアモータ28への印加電圧を増大させてブロア21の回転数を高める。強めの空調が要求されているか否かは、例えば、乗員による設定温度、車室内の空気温度、車室外の空気温度等に基づいて制御装置4が周知の手順に従って判定する。
また、制御装置4は、乗員による設定温度、車室内の空気温度、車室外の空気温度等に基づいてエアミックスダンパ25の目標開度を演算する。例えば、夏季のように外気温度が高く、かつ、乗員の設定温度が低い場合には、エアミックスダンパ25の開度を例えば0%〜20%の範囲にして急速冷房を行い、また、冬季のように外気温度が低く、かつ、乗員の設定温度が高い場合には、エアミックスダンパ25の開度を例えば80%〜100%の範囲にして急速暖房を行う。また、急速暖房や急速冷房が必要ない状況では、エアミックスダンパ25の開度を20%〜80%の範囲にすることで、弱冷房や弱暖房を行う。
また、制御装置4は、基本的には、上記演算したエアミックスダンパ25の目標開度を得て、該エアミックスダンパ25の目標開度が暖房側(50%以上100%以下)にあるときには冷房側(0%以上50未満)にあるときに比べて電気式ヒータ23への電力供給量を多くするようにしている。
制御装置4は、暖房が要求されているときには、電気式ヒータ23の第1及び第2発熱ユニット51,52、第3及び第4発熱ユニット53,54、第5及び第6発熱ユニット55,56に順に電力を供給する。第1及び第2発熱ユニット51,52に電力を供給して所定の第1遅れ時間が経過した後に、第3及び第4発熱ユニット53,54に電力を供給する。第3及び第4発熱ユニット53,54に電力を供給して所定の第2遅れ時間が経過した後に、第5及び第6発熱ユニット55,56に電力を供給する。
また、逆の順で電力の供給を停止して暖房能力を調整するが、空調装置1を停止するときには、第1〜第6発熱ユニット51〜56の全てを電力供給を同時に停止する。
制御装置4による電気式ヒータ23への電力供給のタイミングの決定要領について、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。尚、この制御は、空調装置1が作動を開始した直後からスタートし、空調装置1の作動中は繰り返し行われる。
この制御は空調装置1の運転開始スイッチ等の操作によって開始され、スタート後のステップS1では、送風機をONにする。
ステップS1に続くステップS2では、エバセンサ40で検出されたエバポレータ22の表面温度(TE1)と、温風センサ44で検出された電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)とを読み込む。
そして、ステップS3に進み、エバポレータ22の表面温度(TE1)から電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)を引いた差温(TE3)を求め、エバポレータ22の表面温度(TE1)と差温(TE3)とにより、第1遅れ時間(TI1)を算出する。具体的には、エバポレータ22の表面温度(TE1)が低く、差温(TE3)が約0℃であれば、電気式ヒータ23の温度が低いということであり、第1遅れ時間(TI1)を長く設定する。一方、エバポレータ22の表面温度(TE1)が低くても、差温(TE3)の絶対値が大きな値であれば、電気式ヒータ23の温度が高いということであり、第1遅れ時間(TI1)を短く設定する。電気式ヒータ23の温度が高いほど、第1遅れ時間(TI1)が短くなるようにする。
その後、ステップS4に進み、電気式ヒータ23の第1発熱素子51a,52aにON(電力供給)の要求があるか否かを判定する。これは乗員の空調操作による暖房要求があるか否かによって判定することができる。
ステップS4でNOと判定されて電気式ヒータ23の第1発熱素子51a,52aにON要求がない場合には、ステップS2に戻る。ステップS4でYESと判定されて電気式ヒータ23の第1発熱素子51a,52aにON要求がある場合には、ステップS5に進んで第1発熱素子51a,52aに電力を供給する。
ステップS5に続くステップS6では、第1発熱素子51a,52aに電力を供給してから第1遅れ時間(TI1)が経過したか否かを判定する。ステップS6でNOと判定されて第1遅れ時間(TI1)を経過していない場合には、ステップS7に進んで電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)を読み込む。
ステップS7に続くステップS8では、電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)の変化速度に基づいて第1補正遅れ時間(TI1’)を算出する。電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)の変化速度が遅ければ、電気式ヒータ23の温度上昇が遅く、電気式ヒータ23が未だ低温状態であると考えられるので、第1補正遅れ時間(TI1’)を長くする。電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)の変化速度が速ければ、電気式ヒータ23の温度上昇が速く、電気式ヒータ23が高温状態であると考えられるので、第1補正遅れ時間(TI1’)を短くする。
第1補正遅れ時間(TI1’)を算出した後、ステップS9に進んで第1遅れ時間(TI1)から第1補正遅れ時間(TI1’)を引き、その結果が0以下であるか否かを判定する。YESと判定されて第1補正遅れ時間(TI1’)が第1遅れ時間(TI1)よりも長い場合には、ステップS10に進み、電気式ヒータ23の第2発熱素子53a,54aにONの要求があるか否かを判定する。これは乗員による暖房の強弱の要求によって判定することができる。
一方、ステップS9においてNOと判定されて第1遅れ時間(TI1)から第1補正遅れ時間(TI1’)を引いた結果が0よりも大きい場合には、第1遅れ時間(TI1)が第1補正遅れ時間(TI1’)よりも長いということであり、ステップS10に進まず、ステップS6に戻る。
ステップS6でYESと判定されて第1遅れ時間(TI1)を経過した場合には、ステップS10に進む。
ステップS10でNOと判定されて電気式ヒータ23の第2発熱素子53a,54aにON要求がない場合には、ステップS6に戻る。ステップS10でYESと判定されて電気式ヒータ23の第2発熱素子53a,54aにON要求がある場合には、ステップS11に進んでステップS2と同様に、エバポレータ22の表面温度(TE1)と電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)とを読み込む。ステップS12では、ステップS3と同様な方法によって第2遅れ時間(TI2)を算出する。第2遅れ時間(TI2)は、第1遅れ時間(TI1)よりも短い時間に設定する。これは、第1遅れ時間(TI1)が経過する間に第3発熱素子55a,56aの温度が上昇して突入電流値が低くなっていると推定されるからである。
ステップS12で第2遅れ時間(TI2)を算出した後、ステップS13に進み、電気式ヒータ23の第2発熱素子53a,54aに電力を供給する。
ステップS14では、第2発熱素子53a,54aに電力を供給してから第2遅れ時間(TI2)が経過したか否かを判定する。ステップS14でNOと判定されて第2遅れ時間(TI2)を経過していない場合には、ステップS15に進んで電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)を読み込む。ステップS15に続くステップS16では、電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)の変化速度に基づいて第2補正遅れ時間(TI2’)を算出する。電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)の変化速度が遅ければ、電気式ヒータ23の温度上昇が遅く、低温状態であると考えられるので、第2補正遅れ時間(TI2’)を長くする。電気式ヒータ23通過後の空気の温度(TE2)の変化速度が速ければ、電気式ヒータ23の温度上昇が速く、高温状態であると考えられるので、第2補正遅れ時間(TI2’)を短くする。
第2補正遅れ時間(TI2’)を算出した後、ステップS17に進んで第2遅れ時間(TI2)から第2補正遅れ時間(TI2’)を引き、その結果が0以下であるか否かを判定する。YESと判定されて第2補正遅れ時間(TI2’)が第2遅れ時間(TI2)よりも長い場合には、ステップS18に進み、電気式ヒータ23の第3発熱素子55a,56aにONの要求があるか否かを判定する。これは乗員による暖房の強弱の要求によって判定することができる。
一方、ステップS17においてNOと判定されて第2遅れ時間(TI2)から第2補正遅れ時間(TI2’)を引いた結果が0よりも大きい場合には、第2遅れ時間(TI2)が第2補正遅れ時間(TI2’)よりも長いということであり、ステップS18に進まず、ステップS14に戻る。
ステップS14でYESと判定されて第2遅れ時間(TI2)を経過した場合には、ステップS18に進む。そして、ステップS19では、第3発熱素子55a,56aに電力を供給する。
従って、電気式ヒータ23の第1発熱素子51a,52aに電力を供給して第1遅れ時間(TI1)が経過する間に、第1発熱素子51a,52aが発熱して第1発熱素子51a,52aの電流値が低下していき、さらに、その第1発熱素子51a,52aの熱が第2発熱素子53a,54aに伝わって第2発熱素子53a,54aの温度が上昇する。図5に電流値と時間との関係を示すように、第2発熱素子53a,54aの温度が上昇した状態で、第2発熱素子53a,54aに電力を供給するようにしたことで、最大電流値を低く抑えることができる。
一方、ステップS9においてYESと判定された場合のように、電気式ヒータ23の温度が高くなっていて突入電流値が低いと推定される場合には、第1遅れ時間(TI1)の経過を待つことなく、早いタイミングで次のステップ(ステップS10以降)に移り、必要に応じて第2発熱素子53a,54aに電力を供給することが可能になる。その結果、第2発熱素子53a,54aへの電力を供給を早く開始することが可能になる。
これにより、最大電流値を低下させて回路設計を容易にできるとともに、暖房立ち上げ時には高い暖房能力を得て乗員の快適性を向上できる。
また、電気式ヒータ23の第2発熱素子53a,54aに電力を供給した後、第3発熱素子55a,56aに電力を供給する場合も同様に、最大電流値を低下させることができるとともに、暖房立ち上げ時には高い暖房能力を得ることができる。
また、上記実施形態では、温風センサ44で検出した温度に基づいて第1遅れ時間(TI1)及び第2遅れ時間(TI2)を設定しているが、これに限らず、第1温度センサ41及び第2温度センサ42で検出した第1発熱素子51a,52a及び第2発熱素子53a,54aの温度状態に基づいて第1遅れ時間(TI1)及び第2遅れ時間(TI2)を設定してもよい。この場合、第1発熱素子51a,52a及び第2発熱素子53a,54aの温度が低いほど第1遅れ時間(TI1)及び第2遅れ時間(TI2)を長くし、第1発熱素子51a,52a及び第2発熱素子53a,54aの温度が高いほど、第1遅れ時間(TI1)及び第2遅れ時間(TI2)を短くする。
また、第1発熱素子51a,52a及び第2発熱素子53a,54aの温度変化を検出し、温度変化が所定速度よりも速い場合には、第1発熱素子51a,52a及び第2発熱素子53a,54aの温度が上昇し易いということであるので、この場合に第1遅れ時間(TI1)及び第2遅れ時間(TI2)を短くするようにしてもよい。これにより、突入電流値は低く抑えながら、電力の供給を早めることができる。また、第1発熱素子51a,52a及び第2発熱素子53a,54aの温度変化が所定速度よりも遅い場合には、第1発熱素子51a,52a及び第2発熱素子53a,54aの温度が上昇しにくいということであるので、第1遅れ時間(TI1)及び第2遅れ時間(TI2)を長くする。第1発熱素子51a,52a及び第2発熱素子53a,54aの温度状態を個別に得ることで、各発熱素子51a,52a,53a,54aの温度を考慮した最適な遅れ時間を設定することが可能になる。
また、制御装置4は、電気式ヒータ23に電力を供給する前に送風機21を作動させ、該送風機21の作動後に温風センサ44で得られた温度に基づいて遅れ時間を設定するように構成してもよい。この場合、温風センサ44で得られる温度は次第に上昇していくことになり、これにより、電気式ヒータ32の温度状態が得られる。この温風センサ44によって得られた温度に基づいて遅れ時間を設定することで、遅れ時間を適切に設定することが可能になる。
また、制御装置4は、電気式ヒータ23を通過する前の空気の温度を検出するエバセンサ40で得られた温度に基づいて遅れ時間を変更するように構成してもよい。エバセンサ40で検出された温度が高い場合には電気式ヒータ23の温度が上昇し易い状況であるので、高いほど遅れ時間を短くすることで、電力供給を早くすることが可能になる。
一方、エバセンサ40で検出された温度が低い場合には電気式ヒータ23の温度が上昇しにくい状況であるので、この場合に遅れ時間を長くすることで、突入電流値を低く抑えることが可能になる。この電気式ヒータ23を通過する前の空気の温度を検出するセンサとしてエバセンサ40を用いているので、遅れ時間を設定するための専用のセンサを用いることなく、低コストで遅れ時間を適切に設定することができる。
尚、上記実施形態では、電気式ヒータ23の暖房能力を3段階、即ち、最低暖房能力、中間暖房能力、最大暖房能力に変更可能に構成しているが、これに限らず、2段階であってもよいし、4段階以上であってもよい。
また、本発明は、例えば、エンジンと走行用モータとを備えたハイブリッド自動車の空調装置にも適用することができる。