JP5971738B1 - 透湿耐水シート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い透湿性を有しながら、耐水性も有する透湿耐水シートを提供する。【解決手段】バインダー樹脂、油脂成分及び水性溶媒を含む液状組成物をコーティングした後、乾燥することにより貫通孔を含む平均孔径0.1〜10μmの孔部を透湿耐水層に形成した透湿耐水シートを調製する。前記孔部の最大孔径は20μm以下であってもよい。前記油脂成分は流動パラフィンであってもよい。前記バインダー樹脂は水溶性樹脂又は水性エマルジョン由来の非水溶性樹脂であってもよい。前記バインダー樹脂は(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。前記バインダー樹脂と前記油脂成分との質量割合は、バインダー樹脂/油脂成分=80/20〜40/60程度である。透湿耐水シートは、さらに基材シートを含み、透湿耐水層が前記基材シートを被覆していてもよい。【選択図】なし

Description

本発明は、農業、食品、工業、建築、服飾、医療などの各種の分野において、耐水性を有しながら、通気性や透湿性も要求される用途に利用される透湿耐水シート及びその製造方法に関する。
従来から、通気性や透湿性を有する耐水シートは、農業、食品、工業、建築、服飾、医療などの各種の分野で利用されている。このような耐水シートとしては、疎水性樹脂で形成された不織布や多孔質膜などが知られているが、何れも繊維形状や多孔質形状を形成するために、紡糸やシートの延伸処理などの精密な工程が必要である。これに対し、コーティングにより透湿性や通気性を有する膜を形成する方法も知られている。
特開2004−244511号公報(特許文献1)には、水及び乳化剤の存在下で、有機溶剤を分散して得られた溶剤微粒子を水性塗料に配合した組成物で塗膜を形成すると、塗膜内の溶剤が揮発して微細な空孔が塗膜内に均一に生じ、透湿性、断熱性等の多機能な塗膜を形成する方法が開示されている。
しかし、この方法で得られた塗膜でも、透湿性は低く、通気性は有していない。また、溶剤微粒子を予め調製する必要があり、製造工程も煩雑である。
特開2006−102584号公報(特許文献2)には、透湿性基材の表面に、pH4.0以上10.0以下の合成樹脂エマルション(A)及び粒子径1〜200nm、pH5.0以上8.5未満の中性シリカゾル(B)を必須成分とし、前記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、前記中性シリカゾル(B)を固形分換算にて0.1〜50重量部含む水性上塗材を塗装する透湿性塗膜の形成方法が開示されている。この文献は、前記中性シリカゾルとして、前記特定の中性シリカゾル(B)、特に疎水処理されたシリカゾルを用いることにより、透湿性と防水性の相反する特性を付与できることが記載されている。
しかし、この透湿性塗膜でも、透湿性は低く、通気性は有していない。
特開2004−244511号公報(請求項1、段落[0037]) 特開2006−102584号公報(特許請求の範囲、段落[0009])
従って、本発明の目的は、高い透湿性を有しながら、耐水性も有する透湿耐水シート及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、通気性及び撥水・撥油性に優れる透湿耐水シート及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、基材シートなどの支持材に対する密着性の高い透湿耐水層を有する透湿耐水シート及びその製造方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、高い透湿性及び耐水性を有する透湿耐水シートを簡便に製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、バインダー樹脂と油脂成分とを組み合わせた透湿耐水層が貫通孔を含む微細な孔部を有することにより、耐水性を有しながら、透湿性を向上できることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明の透湿耐水シートは、バインダー樹脂及び油脂成分を含み、かつ複数の孔部を有する透湿耐水層を含む透湿耐水シートであって、前記孔部の平均孔径が0.1〜10μmであり、かつ前記孔部が貫通孔を含む。前記孔部の最大孔径は20μm以下であってもよい。前記油脂成分は流動パラフィンであってもよい。前記バインダー樹脂は水溶性樹脂又は水性エマルジョン由来の非水溶性樹脂であってもよい。前記バインダー樹脂は(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。前記バインダー樹脂と前記油脂成分との質量割合は、バインダー樹脂/油脂成分=80/20〜40/60程度である。前記透湿耐水層は、アルキレンオキサイド鎖を有する界面活性剤をさらに含んでいてもよい。
本発明の透湿耐水シートは、さらに基材シートを含み、透湿耐水層が前記基材シートを被覆していてもよい。前記基材シートは通気性シートであってもよい。前記透湿耐水層は基材シートの少なくとも一方の略全面を被覆していてもよい。前記透湿耐水層の平均厚みは6μm以下であってもよい。本発明の透湿耐水シートは透湿度が500g/(m・24時間)以上であってもよい。
本発明には、バインダー樹脂、油脂成分及び水性溶媒を含む液状組成物をコーティングするコーティング工程、コーティングした液状組成物を乾燥させる乾燥工程を含む前記透湿耐水シートの製造方法も含まれる。
なお、本願明細書において「孔部」とは、透湿耐水層を貫通する貫通孔、透湿耐水層を貫通せず、透湿耐水層の表面で凹部を形成する非貫通孔(穴)の双方を含む意味で用いる。また、「貫通孔」とは、透湿耐水層の表面から裏面まで連続する孔路が形成された孔部を意味し、「貫通孔」には、層を貫通するサイズを有する1つの独立した孔で形成された貫通孔(例えば、層の厚み方向に対して略平行に延びる貫通孔)だけでなく、層を貫通しないサイズを有する複数の孔部が重なることにより形成された貫通孔(例えば、湾曲した孔路を有する貫通孔)も含まれる。さらに、「孔径」とは、貫通孔及び非貫通孔の透湿耐水層表面における孔の大きさ(孔径)を意味する。
本発明では、バインダー樹脂と油脂成分とを組み合わせた透湿耐水層に貫通孔を含む微細な孔部が形成されているため、耐水性を保持しながら、透湿性を向上できる。また、貫通孔を有し、油脂成分も含むため、通気性及び撥水・撥油性も向上できる。また、基材シートなどの支持材に対する密着性の高い透湿耐水層を実現できる。さらに、本発明の透湿耐水シートは、バインダー樹脂、油脂成分及び水性溶媒を含む液状組成物をコーティングして乾燥する簡便な方法で得ることができる。
[透湿耐水層]
本発明の透湿耐水シートは、バインダー樹脂及び油脂成分を含み、かつ貫通孔を含む複数の孔部を有する透湿耐水層を含む。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、慣用のバインダー樹脂を利用できるが、製造過程において、油脂成分と相分離構造を形成できる点から、水溶性樹脂、水性エマルジョン由来の非水溶性樹脂が好ましい。
水溶性樹脂としては、例えば、水溶性(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルピロリドン系樹脂、ポリアルキレングリコール、水溶性ウレタン樹脂(水溶性アクリルウレタン樹脂など)、水溶性スチレン系樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル、セルロース誘導体(セルロースエステルなど)、天然高分子、ポリエチレンスルホン酸又はその塩、ポリスチレンスルホン酸又はその塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミン、ポリエーテルポリアミンなどが挙げられる。これらの水溶性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、水溶性樹脂も、水性エマルジョン又は水溶液形態の水溶性樹脂(水性エマルジョン又は水溶液の形態で市販されている水溶性樹脂)であってもよい。
これらの水溶性樹脂は、用途に応じて選択でき、例えば、透湿防水層を接着層として利用してもよく、このような用途としては、例えば、酢酸ビニル系樹脂、ビニルアルコール系樹脂などが好ましい。そのため、例えば、複数の通気性シート間の接着層として積層体(積層構造)を形成すると、透湿性を有する積層体を作製できる。また、通気性シートと各種成形体との間に接着層として介在させると、透湿耐水性が要求される成形体のカバー層として機能させることもできる。
一方、これらの水溶性樹脂のうち、透湿防水層に強度が要求される用途では、例えば、水溶性(メタ)アクリル系樹脂、水溶性ポリエステル、水溶性ウレタン樹脂などが好ましい。水溶性ポリエステルは、例えば、分子内にスルホン酸塩基やカルボン酸塩基などを導入したポリエステルであってもよい。水溶性(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸又はその塩で構成された単位を含む(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。水溶性ウレタン樹脂は、分子内にカルボン酸塩基や3級アミノ基などの親水性基を導入したウレタン樹脂であってもよい。
水性エマルジョンに含まれる非水溶性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂(エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、スチレン系樹脂、ポリエステル(脂肪族ポリエステル、非晶性ポリエステルなど)、脂肪族ポリアミド、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの非水溶性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの非水溶性樹脂のうち、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂が好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルで構成された単位を含む(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。スチレン系樹脂は、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステルブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系エラストマーであってもよい。
水性エマルジョンは、非水溶性樹脂に加えて界面活性剤及び水性溶媒を含む。界面活性剤としては、慣用の界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤の割合は、非水溶性樹脂100質量部に対して、例えば、0.01〜30質量部、好ましくは0.1〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部程度である。
水性エマルジョンは、界面活性剤に加えて、慣用の添加剤、例えば、増粘剤、造膜助剤、湿潤剤、架橋剤、可塑剤、表面調整剤、消泡剤、粘度調整剤などを含んでいてもよい。
水性溶媒としては、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、ニトリル類(アセトニトリルなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなど)、カルビトール類などが挙げられる。これらの水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、水を含む溶媒、例えば、水単独の溶媒、水と低級アルコール(イソプロパノールなど)との混合溶媒などが汎用される。
非水溶性樹脂の割合は、水性エマルジョン全体に対して、例えば、1〜80質量%、好ましくは5〜70質量%、さらに好ましくは10〜60質量%程度である。
非水溶性樹脂の水性エマルジョンとしては、市販のSBRエマルジョン、市販のアクリルエマルジョンなどを使用できる。
これらのバインダー樹脂のうち、取り扱い性に優れるともに、基材シートなどの支持材に対する密着性にも優れる点から、水溶性又は非水溶性(メタ)アクリル系樹脂が特に好ましい。
水溶性又は非水溶性(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体の単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルなどの(メタ)アクリル酸C1−10アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロへキシルなどの(メタ)アクリル酸C3−12シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル;ベンジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシC2−6アルキル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノ−アルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド又はその誘導体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリルなどが挙げられる。なお、(メタ)アクリル系単量体は共重合性単量体と組み合わせて使用してもよい。共重合性単量体としては、スチレンなどの芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル系単量体;無水マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸又はその誘導体;エチレンなどのオレフィン系単量体などが挙げられる。これらの(メタ)アクリル系樹脂は、容易に水性エマルジョンを形成でき、取り扱い性に優れるともに、基材シートなどの支持材に対する密着性にも優れる点から、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びグリシジル基から選択された少なくとも一種の官能基を有する樹脂(例えば、水溶性(メタ)アクリル系樹脂)が好ましい。
水溶性樹脂及び非水溶性樹脂のガラス転移温度は、それぞれ、例えば、−30℃〜50℃、好ましくは−20℃〜40℃、さらに好ましくは−10℃〜30℃程度である。
水溶性樹脂及び非水溶性樹脂の重量平均分子量は、それぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、例えば、1000〜10万、好ましくは3000〜5万、さらに好ましくは5000〜5万程度である。
(油脂成分)
油脂成分は、製造過程において、前記バインダー樹脂と相分離構造を形成可能な成分であり、疎水性又は撥水性の脂肪族骨格を有していればよい。本発明では、透湿耐水層が油脂成分を含むため、撥水性にも優れている。油脂成分には、高級脂肪酸又はその誘導体、天然油脂、鉱物油、ワックス、フッ素系オイルなどが含まれる。
高級脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などの直鎖又は分岐鎖飽和C8−24脂肪酸;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ガトレン酸、アラキドン酸、エルカ酸などの直鎖又は分岐鎖不飽和C8−24脂肪酸などが挙げられる。誘導体としては、これらの高級脂肪酸に対応する脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸の脂肪族骨格を有する脂肪族アルコールなどが挙げられる。
天然油脂としては、例えば、植物油(綿実油、あまに油、ひまし油、やし油、パーム油など)、動物油(牛脂、豚脂、馬脂、鶏脂など)、魚油(ニシン油、カレイ油、タラ油など)などが挙げられる。
鉱物油としては、例えば、パラフィン(ノルマルパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィンなど)、ナフテン性油、プロセスオイル、エキステンダーなどが挙げられる。
ワックスとしては、脂肪族炭化水素系ワックス(例えば、ポリエチレンワックス、エチレン共重合体ワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリC2−4オレフィン系ワックス、天然パラフィンや合成パラフィンなどのパラフィン系ワックス、マイクロクリスタリンワックスなど)、植物性又は動物性ワックス(例えば、カルナウバワックス、ミツロウ、セラックワックス、モンタンワックスなど)などが挙げられる。
フッ素系オイルとしては、例えば、パーフルオロポリエーテル系化合物などの低分子量フッ素系オイルなどが挙げられる。
これらの油脂成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの油脂成分のうち、撥水性及び流動性が高く、製造過程において、バインダー樹脂との相分離性に優れる点から、ノルマルパラフィンなどのパラフィン、ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスが好ましく、流動パラフィンが特に好ましい。さらに、油脂成分として、撥水性に加えて、パラフィンオイルやフッ素系オイルなどの撥油性も備えた油脂成分を用いると透湿耐水層の撥油性も向上できる。
油脂成分(特にパラフィン及びワックス)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)において、ポリスチレン換算で、1000以下(例えば100〜1000)であってもよく、例えば、500以下(例えば120〜500)、好ましくは400以下(例えば130〜300)、さらに好ましくは350以下(例えば230〜350)程度であり、特に250以下(例えば150〜250)程度であってもよい。なお、低分子量の油脂成分の分子量は化学式(分子式)に基づいて算出できる。油脂成分の分子量が高すぎると、流動性が低下し、製造過程において、バインダー樹脂に対する相分離性が低下するとともに、油脂成分の凝集性が低下するため、通気性が低下し易い。一方、油脂成分の分子量が低すぎると、比重が水に対して軽すぎるため、混和するのが困難となる。
油脂成分の粘度(37.8℃)は200mm/秒以下(例えば、1〜200mm/秒)であってもよく、例えば、2〜150mm/秒、好ましくは3〜100mm/秒(例えば、5〜50mm/秒)、さらに好ましくは8〜30mm/秒(特に10〜20mm/秒)程度である。粘度が高すぎると、流動性が低下し、製造過程において、バインダー樹脂に対する相分離性が低下するとともに、油脂成分の凝集性が低下するため、通気性が低下し易い。本発明では、粘度の測定方法は、JIS K5600−2−3に準拠して、コーンプレート型粘度計により測定できる。
バインダー樹脂と油脂成分との質量割合(固形分比)は、百分率で、バインダー樹脂/油脂成分=90/10〜30/70程度の範囲から選択でき、透湿性や通気性、密着性などの諸特性に優れる点から、例えば、80/20〜40/60、好ましくは70/30〜45/55、さらに好ましくは68/32〜50/50(特に65/35〜55/45)程度であり、諸特性のバランスに優れる点から、例えば、90/10〜50/50、好ましくは80/20〜60/40、さらに好ましくは75/25〜65/35程度であってもよい。バインダー樹脂の割合が多すぎると、孔部の面積が小さくなるため、通気性及び透湿性が低下するおそれがある。一方、油脂成分の割合が多すぎると、強度の低下により層の形態安定性が低下するとともに、透湿耐水層の表面に油脂成分がしみ出し易くなるおそれがある。
(透湿耐水層の特性)
透湿耐水層は、貫通孔を含む複数の孔部を有しており、高い透湿性及び通気性を有している。孔部は、非貫通孔を含んでいてもよく、孔部全体に対する貫通孔の割合(個数割合)は特に限定されない。具体的には、貫通孔は、孔部全体に対して10%以上(例えば10〜100%)であればよく、透湿性及び通気性を向上できる点から、例えば30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上(特に90%以上)であり、貫通孔のみで形成されていてもよい。貫通孔の有無は、電子顕微鏡写真により評価できる。
孔部の空隙率(透湿耐水層の全表面に対して孔部が占める面積割合)は1〜40%程度の範囲から選択でき、例えば、2〜30%、好ましくは3〜20%、さらに好ましくは5〜15%(特に6〜10%)程度である。空隙率が大きすぎると、強度の低下により層の形態安定性が低下するとともに、表面に油脂成分もしみ出し易くなるおそれがあり、空隙率が小さすぎると、透湿性及び通気性が低下するおそれがある。
孔部の平均孔径(異方形状の場合、長径と短径との平均値)は、例えば0.1〜10μm(例えば0.3〜9μm)、好ましくは0.4〜8μm(例えば0.5〜7μm)、さらに好ましくは0.8〜6μm(特に1〜3μm)程度である。孔部の最大孔径は30μm以下であってもよく、例えば、28μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下(特に18μm以下)であってもよい。孔部の径が大きすぎると、強度の低下により層の形態安定性が低下するとともに、表面に油脂成分もしみ出し易くなるおそれがあり、逆に小さすぎると、透湿性及び通気性の向上効果が小さくなるおそれがある。また、透湿防水層に接着機能を付与する場合は、孔部の径が大きすぎると、接着性が低下するおそれがある。
本発明では、空隙率及び孔部の孔径は、電子顕微鏡写真に基づいて測定し、平均孔径については400個以上測定して平均値を算出する。
透湿耐水層の平均厚み(孔部以外の平均厚み)は10μm以下(特に6μm以下)であってもよく、例えば0.5〜7.5μm、好ましくは0.6〜7μm、好ましくは0.8〜6.5μm、さらに好ましくは1〜6μm(特に2〜5μm)程度であってもよい。厚みが厚すぎると、貫通孔の形成が困難となり、逆に薄すぎると、強度の低下により層の形態安定性が低下するおそれがある。本明細書では、透湿耐水層の平均厚みは、電子顕微鏡写真に基づいて、任意の10箇所の平均値として測定できる。
透湿耐水層は、慣用の添加剤、例えば、安定剤(耐光安定剤、耐熱安定剤など)、充填剤、難燃剤、帯電防止剤、界面活性剤、防虫剤(防蟻剤など)、防腐剤(防カビ剤、抗菌剤など)などを含んでいてもよい。例えば、防カビ剤や抗菌剤などを含有させて、防カビシートや抗菌シートとして用いてもよい。
これらの添加剤の割合は、添加剤の種類に応じて選択できるが、バインダー樹脂100質量部(固形分)に対して、例えば0.5〜30質量部、好ましくは0.7〜20質量部、さらに好ましくは1.0〜15質量部(特に1〜10質量部)程度である。また、充填剤(フィラー)を添加することにより透湿防水層に反射防止性を付与する場合、充填剤の割合は、バインダー樹脂100質量部(固形分)に対して5〜20質量部程度であってもよい。
本発明では、このような透湿耐水層はコーティングにより得られるが、本発明の透湿耐水シートは、透湿耐水層単独で形成してもよい。透湿耐水シートを透湿耐水層単独で形成する場合、コーティング後に剥離した透湿耐水層単独で形成されたシートであってもよく、各種の二次元又は三次元成形体の表面に被覆された状態のシートであってもいずれでもよい。そのため、三次元成形体の表面に被覆された態様では、本発明の透湿耐水シートは、平面形状に限定されず、三次元成形体の形状に追随した形状(例えば、曲面形状など)であってもよい。
[基材シート]
本発明の透湿耐水シートは、前述のように、透湿耐水層を含んでいればよく、透湿耐水層単独で形成されていてもよいが、生産性や形態安定性などの点から、さらに基材シートを含む積層体であってもよい。このような積層体は、通常、透湿耐水層が前記基材シートを被覆している。透湿耐水層は、前記基材シートの少なくとも一部を被覆していればよいが、通常、基材シートの少なくとも一方の略全面を被覆しており、両面の略全面を被覆してもよい。なお、基材シートが布帛の場合、透湿耐水層の少なくとも一部が布帛の繊維間に浸透していてもよい。
基材シートは、特に限定されず、各種の有機材料(熱可塑性樹脂、ゴム、熱硬化性樹脂など)や無機材料(金属、ガラス、セラミックなど)で形成されたシートを基材シートとして利用できる。これらのうち、柔軟性や透明性、取り扱い性などに優れる点から、有機材料(例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、脂肪族ポリアミドなどのポリアミド、ポリスチレンやアクリロニトリル−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂)で形成されたシートが好ましい。基材シートは、目的に応じて選択でき、非通気性シートであってもよいが、透湿耐水層の透湿性及び通気性を有効に利用できる点から、通気性シートが好ましい。
通気性シートは、通気性を有していればよく、多孔質プラスチックシートや布帛などが含まれる。
多孔質プラスチックシートとしては、多孔質ポリオレフィンシート、多孔質スチレン系樹脂シート、多孔質ポリエステルシート、多孔質ポリアミドシートなどが挙げられる。多孔質プラスチックシートの平均孔径は0.01〜100μm(例えば、0.05〜50μm)程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜15μm、好ましくは0.3〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μm程度である。
布帛としては、例えば、織布、編布、ネット、紙、不織布などが挙げられる。これらのうち、生産性や透湿耐水層との密着性、耐久性などの点から不織布が好ましい。
不織布は、少なくとも繊維を含む。繊維としては、例えば、天然繊維(綿、麻など)、再生繊維(レーヨンなど)、半合成繊維(セルロースエステル繊維など)、合成繊維[ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維など)、スチレン系繊維、テトラフルオロエチレン系繊維、アクリル系繊維、ビニルアルコール系繊維(エチレンビニルアルコール系繊維など)、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリC2−4アルキレンアリレート系繊維、液晶ポリエステル繊維などの全芳香族ポリエステル系繊維など)、ポリアミド系繊維(ポリアミド6、ポリアミド66などの脂肪族ポリアミド系繊維、アラミド繊維などの全芳香族ポリアミド系繊維など)、ポリウレタン系繊維など]、無機繊維(炭素繊維やガラス繊維など)などが例示できる。これらの繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの繊維のうち、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエチレン繊維やポリプロピレン繊維などのポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などのポリエステル繊維、ポリアミド6繊維などのポリアミド繊維などが汎用される。
繊維の平均繊度は、例えば、0.1〜5デニール、好ましくは0.2〜4デニール、さらに好ましくは0.5〜3デニール程度であってもよい。また、平均繊維長は、例えば、10〜150mm、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは30〜60mm程度であってもよく、スパンボンド、メルトブロー、フラッシュ紡糸法などの直接紡糸法では、無限長であってもよい。
不織布の目付は、例えば、10〜500g/m、好ましくは20〜300g/m、さらに好ましくは50〜150g/m程度である。
不織布は、慣用の方法、例えば、前記繊維を含むウェブの形成工程と、ウェブの接着工程とを経て調製でき、具体的には、スパンボンド、メルトブロー、フラッシュ紡糸、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンレース、ニードルパンチ、ステッチボンド法などにより調製できる。
通気性シートは、多孔質プラスチックシート、布帛のいずれかの単層構造であってもよく、積層構造(例えば、多孔質プラスチックシートと不織布との積層体など)であってもよい。
これらの通気性シートは、用途に応じて選択でき、例えば、通気性や柔軟性などが要求される用途では、不織布などの布帛が好ましく、透湿防水性が要求される用途では、透湿防水シートが好ましい。
基材シートのうち、有機材料で形成された基材シート(特に通気性シート)は、透湿耐水層の項で例示された慣用の添加剤を含んでいてもよい。
基材シート(特に通気性シート)の平均厚みは、特に制限されず、例えば、0.05〜10mm、好ましくは0.1〜4mm、さらに好ましくは0.2〜2mm程度であってもよい。
[透湿耐水シートの特性]
本発明の透湿耐水シートは、透湿性に優れ、JIS K7129に準拠した方法において、透湿度が500g/(m・24時間)以上[例えば1000g/(m・24時間)以上]であってもよく、例えば1000〜10000g/(m・24時間)、好ましくは1200〜8000g/(m・24時間)、さらに好ましくは1500〜6000g/(m・24時間)[特に2000〜5000g/(m・24時間)]程度である。
本発明の透湿耐水シートは、高い耐水性も有しており、JIS L1092の耐水度試験に準拠した方法において、防水性が0.1kPa以上であってもよく、例えば、0.1〜100kPa、好ましくは2〜50kPa、さらに好ましくは5〜30kPa程度である。
本発明の透湿耐水シートは、貫通孔を有し、透湿性に優れているにも拘わらず、基材シートのなどの支持材に対する透湿耐水層の密着性にも優れており、基材シートが不織布である場合、基材シートに対する引き剥がし粘着力(N/10mm)は、JIS Z0237に準拠した方法で、例えば1N/10mm以上、好ましくは1.5〜10N/10mm、さらに好ましくは2〜5N/10mm(特に2.5〜4N/10mm)程度である。
本発明の透湿耐水シートは、用途に応じてさらに他の機能層を含んでいてもよい。他の機能層としては、例えば、粘着層、接着層、耐熱層、耐油層、耐薬品層、帯電防止層などが挙げられる。
[透湿耐水シートの製造方法]
本発明の透湿耐水シートは、バインダー樹脂、油脂成分及び水性溶媒を含む液状組成物を支持材の上にコーティングした後、乾燥させて得られる。詳しくは、本発明の透湿耐水シートは、バインダー樹脂、油脂成分及び水性溶媒を攪拌混合して液状組成物を調製する攪拌工程、得られた液状組成物を支持材の上にコーティング(被覆)する被覆(コーティング)工程、被覆した液状組成物を乾燥する乾燥工程を経て得られる。
攪拌工程では、水性溶媒としては、前記バインダー樹脂の項で例示された水性溶媒を利用できる。前記水性溶媒のうち、水単独、水と低級アルコールとの混合溶媒などが好ましい。水性溶媒の割合は、バインダー樹脂100質量部(固形分)に対して、例えば、50〜300質量部、好ましくは100〜250質量部、さらに好ましくは150〜200質量部程度である。
液状組成物の原料としては、バインダー樹脂の水性エマルジョンの項で例示された慣用の界面活性剤や添加剤を更に添加してもよい。前記界面活性剤のうち、液状組成物中で、バインダー樹脂と油脂成分とを均一に微分散できるとともに、後工程である乾燥工程において、適度に相分離して透湿耐水層の表面に孔部を形成できる点から、ノニオン性界面活性剤、特に、アルキレンオキサイド鎖(特にエチレンオキサイド鎖)を有する界面活性剤が好ましい。さらに、アルキレンオキサイド鎖を有する界面活性剤は、アセチレン骨格を有する脂肪族ジオール(アセチレンジオール)のアルキレンオキサイド付加物であってもよい。アセチレンジオールのアルキレンオキサイド付加物を用いると、適度な分散作用を有するためか、適度な空隙率で微細な孔部を形成できるとともに、金属イオン(特に銀イオン)と錯体を形成するためか、バインダー樹脂のゲル化や固化を抑制して取り扱い性を向上できる。
アセチレンジオールのアルキレンオキサイド付加物は、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
Figure 0005971738
(式中、R〜Rは、同一又は異なってアルキル基であり、A及びAは、C2−4アルキレン基であり、m及びnは、同一又は異なって0以上の数であり、m及びnのいずれか一方は1以上である)。
式(1)において、R〜Rのアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシルなどのC1−12アルキル基などが挙げられる。これらのアルキル基は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアルキル基のうち、メチル、エチル、ブチルなどのC1−4アルキル基が好ましく、少なくともイソブチル基などの分岐鎖C3−4アルキル基を含むものが特に好ましく、例えば、メチル基とイソブチル基との組み合わせであってもよい。
及びAのC2−4アルキレン基としては、例えば、エチレン、プロピレンなどのC2−3アルキレン基が好ましく、エチレン基が特に好ましい。
m及びnは、いずれかが1以上の数であればよく、それぞれが、例えば、0〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜10程度である。
アセチレンジオールのアルキレンオキサイド付加物の割合は、バインダー樹脂100質量部(固形分)に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.3〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部(特に1〜2質量部)程度である。
液状組成物の固形分濃度は、例えば、30〜80質量%、好ましくは35〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%程度である。
液状組成物の攪拌方法としては、特に高速回転の攪拌機は要せず、通常の低速又は中速回転型攪拌機で攪拌する方法が好ましく、例えば、10〜1000rpm、好ましくは30〜800rpm、さらに好ましくは50〜500rpm程度の回転数で攪拌する方法などが挙げられる。
攪拌工程で調製された相分離した液状組成物は、前記被覆工程に供される。被覆工程において、コーティング方法としては、慣用のコーティング法、例えば、バーコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、キャスト法、ディッピング法などが挙げられる。これらのうち、簡便性などの点から、バーコーティング法が汎用される。
コーティングにおける塗布量は、特に限定されず、例えば0.5〜30g/m、好ましくは1〜15g/m、さらに好ましくは2〜10g/m程度であってもよいが、製膜性などの点から、2g/m以上程度が好ましい。塗布量が多すぎると、透湿耐水シートの柔軟性が低下し、貫通孔の形成が困難となるおそれがあり、少なすぎると、強度の低下により層の形態安定性が低下するおそれがある。塗布量は適宜選択できるが、バーコーターを用いる場合、例えば、♯10番以下のバーコーターを用いてもよく、好ましくは♯6番以下、さらに好ましくは♯4番以下(例えば、♯3〜4番程度)のバーコーターを用いてもよい。
被覆工程において、支持材は、特に限定されないが、前記基材シートを支持材として用いると、基材シートの表面が透湿耐水層で被覆された積層シートを透湿耐水シートとして得ることができる。この場合、前述のように、透湿耐水層は基材シートの少なくとも一部を被覆すればよく、通常、基材シートの一方の面を全面被覆することができる。
一方、支持材として、剥離性支持材を用いて、乾燥工程を経た透湿耐水層を剥離することにより、透湿耐水層単独で形成された透湿耐水シートを調製してもよい。さらに、各種の二次元又は三次元成形体の上に液状組成物をコーティングすることにより、前記成形体を被覆する態様の透湿耐水シートを調製してもよい。
乾燥工程において、乾燥方法は、自然乾燥であってもよく、加熱乾燥であってもよい。加熱乾燥における加熱温度は、例えば、40〜150℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは80〜100℃程度である。
本発明の製造方法により、貫通孔を含む複数の孔部を有する透湿耐水層が形成される理由は、次のように推定できる。すなわち、攪拌工程において、バインダー樹脂と油脂成分とが均質に微分散された後、乾燥工程において、バインダー樹脂を含む連続相と、油脂成分を含む分散相とに相分離して海島構造が形成される。さらに、乾燥が進行すると、分散相を形成している油脂成分が凝集して連続相に取り込まれることにより、孔部が形成されると推定できる。本発明では、特定のバインダー樹脂と油脂成分とを組み合わせて相分離構造を形成することにより、透湿性及び通気性に優れた非対称な透湿耐水層を形成でき、特に、複数の孔部を形成することにより、透湿性と通気性とを向上できるが、界面活性剤などを用いて分散状態を制御することにより、孔部の大きさや空隙率を制御することもできる。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例で用いた材料、実施例における各物性値の測定方法を以下に示す。
[用いた材料]
水性アクリル樹脂エマルジョンA:(株)T&K TOKA製「アクアパックワニスF−2」、固形分42±2%
水性エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョンB:(株)トウペ製「XB−3011」
水性酢酸ビニル樹脂エマルジョンC:コニシ(株)製「ボンド木工用速乾」
水性アクリル樹脂エマルジョンD:昭和電工(株)製「PSA SE−6010」
水性ポリビニルアルコール樹脂エマルジョンE:ダイヤ糊工業(株)製「キープノール洗たくのり」
流動パラフィン:カネダ(株)製「ハイコールK−290」、分子量290、粘度(37.8℃)35.29mm/秒
透湿防水シート:七王工業(株)製「トーシツシートE」。
[透湿耐水層の平均厚み]
電子顕微鏡(1500倍にて拡大、視野数5)を用いて観察し、電子顕微鏡写真に基づいて、任意の10箇所を測定して、平均した。
[透湿度]
水蒸気透過度試験機(デンマークPBI Dansensor社製「L80ー5000型」)を用いて、JIS K7129(A法)に準拠して、測定範囲0.03で透湿度[単位:g/(m・24時間)]を測定した。
[透湿耐水層の孔部の分布]
JIS H7804に準拠して、透湿耐水シートにおける透湿耐水層中の孔部の径と数について、電子顕微鏡(1500倍にて拡大、視野数5)を用いて観察し、その大きさと数をカウントした。
[透湿耐水層の孔部の平均孔径及び最大孔径]
電子顕微鏡による孔部の大きさはJIS H7804に従って計測し、孔部の長径(最も長い箇所の半径)と短径(最も短い箇所の半径)とを加算して2で除した数を孔部の孔径とした。次に、1視野中の全ての孔部の面積を計算により求め、この全ての面積を足すことで孔部の総面積を求めた。さらに、1視野の縦の長さと横の長さを乗じて1視野中の面積を計算し、(孔部の総面積/1視野中の面積)により、空隙率(%)を求めた。
[引き剥がし粘着力]
JIS Z0237 10.粘着力 方法1 に準拠して、引張試験機((株)島津製作所製「オートグラフAGS−5KND」)を用いて、20mm/秒の速さで試験板(鉄板)に透湿耐水層側を圧着し、300mm/分の速さで、試験板と透湿耐水シートとを180度引き剥がし、粘着力(N/10mm)を測定した。
実施例1
水性アクリル樹脂エマルジョン樹脂A75gを汎用のプロペラ攪拌機を用いて50〜300rpmで撹拌し、さらに流動性パラフィン15gを添加した後、さらに50〜300rpmで撹拌して透湿耐水層用塗工液を調製した。この塗工液を不織布表面にバーコーダー(#3番)にて塗工し、90℃のオーブン内で温風乾燥して透湿耐水シートを得た。透湿耐水層の平均厚みは3〜4μmであった。電子顕微鏡で観察した結果、透湿耐水層には貫通孔が形成されていた。
実施例2〜5
水性アクリル樹脂エマルジョン樹脂Aの代わりに各種の水性樹脂エマルジョンB〜Eを使用する以外は実施例1と同様にして透湿耐水シートを得た。
実施例1〜5で得られた透湿耐水シートの透湿耐水層の平均厚み及び透湿度を測定した結果を表1に示す。さらに、孔部の孔径分布、平均孔径及び最大孔径を測定した結果を表2に示す。
Figure 0005971738
Figure 0005971738
表1及び表2の結果から明らかなように、実施例の透湿耐水シートは、微細な貫通孔が形成され、高い透湿度を示した。
比較例1
流動性パラフィンを添加しないこと以外は実施例1と同様にして透湿耐水シートを得た。
比較例2
流動性パラフィンを添加しないこと以外は実施例4と同様にして透湿耐水シートを得た。
実施例1及び4並びに比較例1〜2の透湿耐水シートの密着性を評価した結果を表3に示す。
Figure 0005971738
表3の結果から明らかなように、実施例1及び4の透湿耐水シートは、貫通孔を有し、かつ透湿性に優れるにも拘わらず、不織布と透湿耐水層とが高い密着性を有していた。
本発明の透湿耐水シートは、透湿性や通気性を要求される各種の用途(農業、工業、食品、建築、日用品、服飾、身体用品、医療分野など)に利用でき、例えば、農業用シート(養液栽培用ベットに利用されるカバーシートや、防カビシート、抗菌シートなど)、フィルター、食品容器又は包装材料、建材(壁、天井、屋根などの防水シートなど)、衣類(防護服、レインコートなど)、身体用品(雨具など)、医療材料(創傷被覆シート、包袋、ドレープなど)などに利用できる。

Claims (12)

  1. バインダー樹脂及び油脂成分を含み、かつ複数の孔部を有する透湿耐水層を含む透湿耐水シートであって、前記透湿耐水層の平均厚みが6μm以下であり、前記孔部の平均孔径が0.1〜10μmであり、かつ前記孔部が貫通孔を含む透湿耐水シート。
  2. 孔部の最大孔径が20μm以下である請求項1記載の透湿耐水シート。
  3. 油脂成分が流動パラフィンである請求項1又は2記載の透湿耐水シート。
  4. バインダー樹脂が水溶性樹脂又は水性エマルジョン由来の非水溶性樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の透湿耐水シート。
  5. バインダー樹脂が(メタ)アクリル系樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の透湿耐水シート。
  6. バインダー樹脂と油脂成分との質量割合が、バインダー樹脂/油脂成分=80/20〜40/60である請求項1〜5のいずれかに記載の透湿耐水シート。
  7. 透湿耐水層が、アルキレンオキサイド鎖を有する界面活性剤をさらに含む請求項1〜6のいずれかに記載の透湿耐水シート。
  8. さらに基材シートを含み、透湿耐水層が前記基材シートを被覆している請求項1〜7のいずれかに記載の透湿耐水シート。
  9. 基材シートが通気性シートである請求項8記載の透湿耐水シート。
  10. 透湿耐水層が基材シートの少なくとも一方の全面を被覆している請求項8又は9記載の透湿耐水シート。
  11. 透湿度が500g/(m・24時間)以上である請求項1〜10のいずれかに記載の透湿耐水シート。
  12. バインダー樹脂、油脂成分及び水性溶媒を含む液状組成物をコーティングするコーティング工程、コーティングした液状組成物を乾燥させる乾燥工程を含む請求項1〜11のいずれかに記載の透湿耐水シートの製造方法。
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