JP5968507B2 - 導電シート、タッチパネル、表示装置 - Google Patents

導電シート、タッチパネル、表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、導電シート、タッチパネル、表示装置に関する。
近時、タッチパネルを組み込んだ電子機器が広く普及しつつある。タッチパネルは、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)等の小サイズ画面を備える機器に多く搭載されている。今後、PC(Personal Computer)用ディスプレイ等の大サイズ画面を備える機器にも組み込まれることが十分想定される。
従来のタッチパネルの電極には、透光性の観点から、酸化インジウムスズ(ITO;Indium Tin Oxide)が主に用いられる。ITOの単位面積当たりの電気抵抗は、金属等と比べて相対的に高いことが知られている。すなわち、ITOの場合、画面のサイズ(タッチパネルの総面積)が大きくなるにつれて、電極全体での表面抵抗が高くなる。その結果、電極間での電流の伝達速度が遅くなり、タッチパネルへの接触後から接触位置を検出するまでの時間(すなわち応答速度)が遅くなるという課題が顕在化する。
そこで、電気抵抗が低い金属からなる細線(金属細線)でメッシュ格子を多数形成し、電極を構成することで、表面抵抗を低下させる技術が種々提案されている。例えば、観察対象物が表示画面である場合、該表示画面を構成する各画素との幾何学的関係に起因するモアレ(干渉縞)の発生を抑制するため、メッシュ形状に不規則性をもたせている。
特許文献1には、図43Aに示すように、ランダム化され横方向に伸びて配置された複数の細線1、及び、ランダム化され縦方向に伸びて配置された複数の細線2を組み合わせたメッシュパターン4が記載されている。
特許文献2には、図43Bに示すように、図示しない導体の接触等を感知可能な帯状領域6内に、多角形状のメッシュ形状を隙間なく敷き詰めたメッシュパターン8が記載されている。
米国特許出願公開第2011−0102361号 米国特許出願公開第2009−0219257号
しかしながら、特許文献1に示すメッシュパターン4のように、各メッシュ形状により画定される開口部のサイズが略等しい場合、画素の各副画素(例えば、RGB副画素)の配置の規則性との関係から色ノイズが発生する場合があった。
また、特許文献2に示すメッシュパターン8のように、各開口部のサイズを過度にばらつかせると、ノイズ粒状感(ざらつき感ともいう。)が視認され易くなるという不都合があった。
本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、ノイズ粒状感及び色ノイズの発生を両立して抑制可能であり、観察対象物の視認性を大幅に向上可能な導電シート、タッチパネル、表示装置、導電シートの製造方法及びプログラムを提供することを目的とする。
本発明に係る導電シートは、基体と、基体の少なくとも一方の主面に形成され、複数の金属細線からなる導電部と、を有し、導電部により、平面視で、形状が異なる複数の開口部を配列したメッシュパターンが形成され、複数の開口部の各々の面積の標準偏差は、0.017mm2以上であり0.038mm2以下であることを特徴とする導電シートである。
このように、メッシュパターンの各開口部の面積の標準偏差を、0.017mm2以上であり0.038mm2以下にした。各開口部の面積分布をこの範囲内に収まるように調整することで、色ノイズの発生を両立して抑制可能となり、観察対象物の視認性を大幅に向上できる。
また、本発明に係る導電シートは、基体と、基体の少なくとも一方の主面に形成され、複数の金属細線からなる導電部と、を有し、導電部により、平面視で、形状が異なる複数の開口部を配列したメッシュパターンが形成され、複数の開口部の各々の重心位置の二次元分布に関して、所定方向に沿って配置された各重心位置の、所定方向の垂直方向に対する位置の平均2乗偏差についての標準偏差は、15.0μm以上であることを特徴とする導電シートである。
また、本発明に係る導電シートは、基体と、基体の少なくとも一方の主面に形成され、複数の金属細線からなる導電部と、を有し、導電部により、平面視で、形状が異なる複数の開口部を配列したメッシュパターンが形成され、メッシュパターンのパワースペクトルにおける角度方向に沿った標準偏差の、常用対数で表される値の動径方向にわたる標準偏差は、0.965以上であり1.065以下であることを特徴とする導電シートである。
また、上記導電シートは、複数の開口部の各々の面積の標準偏差は、0.017mm2以上であり0.038mm2以下であること、複数の開口部の各々の重心位置の二次元分布に関して、所定方向に沿って配置された各重心位置の、所定方向の垂直方向に対する位置の平均2乗偏差についての標準偏差は、15.0μm以上であること、及びメッシュパターンのパワースペクトルにおける角度方向に沿った標準偏差の、常用対数で表される値の動径方向にわたる標準偏差は、0.965以上であり1.065以下であることの2以上を満足する導電シートであることが好ましい。
また、複数の開口部の各々の面積の標準偏差は、0.019mm2以上であり0.027mm2以下であることが好ましい。
また、複数の開口部の各々の重心位置の二次元分布に関して、所定方向に沿って配置された各重心位置の、所定方向の垂直方向に対する位置の平均2乗偏差についての標準偏差は、54.62μm以上であることが好ましい。
また、メッシュパターンのパワースペクトルにおける角度方向に沿った標準偏差の、動径方向にわたる標準偏差は、0.97以上であり1.06以下であることが好ましい。
また、導電部は、前記基体の一方の主面に形成され、複数の金属細線からなる第1導電部と、前記基体の他方の主面に形成され、複数の金属細線からなる第2導電部と、を有し、前記メッシュパターンは、前記第1導電部及び前記第2導電部を組み合わせることで形成されることが好ましい。
又は、導電部は、基体の一方の主面に形成されることが好ましい。
さらに、一方の主面の上に設けられた、第1導電部を被覆する第1保護層と、他方の主面の上に設けられた、第2導電部を被覆する第2保護層と、をさらに有し、第1保護層に対する基体の相対屈折率、及び/又は第2保護層に対する基体の相対屈折率は0.86以上であり1.15以下であることが好ましい。
さらに、一方の主面に形成され、第1導電部と電気的に絶縁された複数の金属細線からなる第1ダミー電極部をさらに有し、第1導電部は、一方向に配置され、それぞれ複数の第1感知部が接続された第1導電パターンを複数有し、第1ダミー電極部は、隣接する第1導電パターン同士の隙間部に配置された第1ダミーパターンを複数有し、第1ダミーパターンの配線密度は、第1導電パターンの配線密度に等しいことが好ましい。
本発明に係るタッチパネルは、上記したいずれかの導電シートと、導電シートの主面側からの接触位置又は近接位置を検出する検出制御部と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る表示装置は、上記したいずれかの導電シートと、導電シートの一方の主面側からの接触位置又は近接位置を検出する検出制御部と、表示信号に基づいて表示画面上に画像を表示する表示部と、を備え、導電シートは、他方の主面側を表示部に対向させて、表示画面上に配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、ノイズ粒状感及び色ノイズの発生を両立して抑制することができ、観察対象物の視認性を大幅に向上させることができる。
即ち、本発明に係る導電シート、タッチパネル及び表示装置によれば、メッシュパターンの各開口部の面積の標準偏差を、0.017mm2以上、0.038mm2以下の範囲内、各開口部の重心位置の二次元分布に関して所定方向に沿って配置された各重心位置の、所定方向の垂直方向に対する位置の平均2乗偏差についての標準偏差を15.0μm以上の範囲内、又は、メッシュパターンのパワースペクトルにおける角度方向に沿った標準偏差の、常用対数で表される値の動径方向にわたる標準偏差を0.965以上、1.065以下の範囲内に収まるように調整することで、ノイズ粒状感及び色ノイズの発生を両立して抑制可能となり、観察対象物の視認性を大幅に向上できる。
また、本発明に係る導電シートの製造方法及びプログラムによれば、複数の開口部を備えるメッシュパターンの模様を表す画像データを作成し、画像データに基づいて各開口部の面積分布、各開口部の重心位置の二次元分布、又は、メッシュパターンのパワースペクトルのばらつき程度について定量化した評価値を算出し、評価値及び所定の評価条件に基づいて1つの画像データを出力用画像データとして決定するようにしたので、所定の評価条件を満たすノイズ特性を有する各開口部の形状や、各開口部の重心位置の二次元分布や、メッシュパターンのパワースペクトル異方性を決定できる。換言すれば、メッシュパターンの形状を適切に制御することで、色ノイズの発生を両立して抑制できる。
図1Aは、本実施の形態に係る導電シートの一例を表す概略平面図である。図1Bは、図1Aの導電シートの一部省略断面図である。 図2Aは、本実施の形態に係る導電シートの別の一例を表す概略平面図である。図2Bは、図2Aの導電シートの一部省略断面図である。 表示ユニットの画素配列を表す概略説明図である。 図2Aの導電シートを組み込んだ表示装置の概略断面図である。 図5Aは、図2Bに示す第1導電部のパターン例を示す平面図である。図5Bは、図2Bに示す第2導電部のパターン例を示す平面図である。 図5Aの第1センサ部の部分拡大平面図である。 図5Bの第2センサ部の部分拡大平面図である。 第1導電部と第2導電部とを組み合わせた状態での導電シートの概略平面図である。 図9Aは、1つの平面領域の中から8つの点を選択した結果を示す概略説明図である。図9Bは、ボロノイ図に従って配線形状を決定した結果を示す概略説明図である。図9Cは、ドロネー図に従って配線形状を決定した結果を示す概略説明図である。 図10Aは、メッシュパターンの模様を表す画像データを可視化した概略説明図である。図10Bは、図10Aに示す画像データに対してFFTを施して得られるパワースペクトルの分布図である。図10Cは、図10Bに示すパワースペクトル分布のXC−XC線に沿う断面図である。 図11Aは、動径方向におけるパワースペクトルの偏差量の算出方法を表す説明図である。図11Bは、空間周波数に対する偏差量の特性を表すグラフである。 図12A〜図12Cは、メッシュパターンにおける各開口部が有する面積のヒストグラムである。 図13A〜図13Dは、トポロジー的に閉じた開口部の領域内に他の要素を付加した事例(第1〜第3事例)についての概略説明図である。 図14A〜図14Dは、トポロジー的に開いておりメッシュ形状を構成しない事例(第4〜第6事例)についての概略説明図である。 図9Bに示す各領域の重心位置を表す説明図である。 メッシュパターンと、各メッシュ形状の重心位置との関係を示す概略説明図である。 図17Aは、図16に示すメッシュパターンの各メッシュ形状の重心位置分布を表す画像データを可視化した概略説明図である。図17Bは、図17Aの画像データに対してFFTを施して得られるパワースペクトルの分布図である。図17Cは、図17Bに示すパワースペクトル分布のXVIIC−XVIIC線に沿う断面図である。 図18A及び図18Bは、所定方向に沿って配置された各重心位置についての、所定方向の垂直方向に対する位置の標準偏差の算出方法を模式的に表す説明図である。 図19Aは、金属細線に向けて照射された平行光の経路を表す概略説明図である。図19Bは、金属細線に向けて照射された斜入光の経路を表す概略説明図である。図19Cは、図19Bにおける透過光の強度分布を表すグラフである。 図20Aは、本発明に係る構成において、金属細線に向けて照射された斜入光の経路を表す概略説明図である。図20Bは、図20Aにおける透過光の強度分布を表すグラフである。 図21Aは、従来例に係る第1センサ部の概略平面図である。図21Bは、図21Aの第1センサ部に入射された外光の経路を表す概略説明図である。図21Cは、図21Aの第1センサ部における反射光の強度分布を表すグラフである。 図22Aは、本実施の形態に係る第1センサ部の概略説明図である。図22Bは、図22Aの第1センサ部に入射された外光の経路を表す概略説明図である。図22Cは、図22Aの第1センサ部における反射光の強度分布を表すグラフである。 本実施の形態に係る導電シートを製造する製造装置の概略構成ブロック図である。 図23に示す画像生成装置の動作説明に供されるフローチャートである。 ドゥーリー・ショー関数(観察距離300mm)のグラフである。 出力用画像データの作成方法(図24のステップS2)についてのフローチャートである。 図27Aは、画像データにおける画素アドレスの定義を表す説明図である。図27Bは、画像データにおける画素値の定義を表す説明図である。 図28Aは、シード点の初期位置の模式図である。図28Bは、図28Aのシード点を基準とするボロノイ図である。 単位領域の端部における模様(配線形状)の決定方法を示す概略説明図である。 単位画像データを規則的に配置し、画像データを作成した結果を示す概略説明図である。 図26に示すステップS26の詳細フローチャートである。 図32Aは、画像領域内の第1シード点、第2シード点及び候補点の位置関係を表す説明図である。図32Bは、第2シード点と候補点とを交換してシード点の位置を更新した結果の説明図である。 図33Aは、各第1導電パターン及び各第1ダミーパターンを切り出した結果を示す概略説明図である。図33Bは、各第2導電パターンを切り出した結果を示す概略説明図である。 本実施の形態に係る導電シートの製造方法を示すフローチャートである。 図35Aは、作製された感光材料を一部省略して示す断面図である。図35Bは、感光材料に対する両面同時露光を示す概略説明図である。 第1露光処理及び第2露光処理の実行状態を示す概略説明図である。 第1変形例に係るタッチパネルの概略断面図である。 図38Aは、図37に示す第1センサ部の部分拡大平面図である。図38Bは、図37に示す第2センサ部の部分拡大平面図である。 図37に示すタッチパネルの一部省略正面図である。 図40Aは、第2変形例に係る第1センサ部の部分拡大平面図である。図40Bは、第2変形例に係る第2センサ部の部分拡大平面図である。 第3変形例に係る導電シートの一部省略断面図である。 第4変形例に係る導電シートの一部省略断面図である。 図43A及び図43Bは、従来例に係る導電シートの概略平面図である。
以下、本発明に係る導電シートについて、それを実施するタッチパネル及び表示装置との関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
以下では、本発明に係る導電シートについて、タッチパネル用の導電シートを代表例として説明するが、本発明は、これに限定されず、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)や有機ELディスプレイ(OELD:Organic ElectroLuminescence Display)や無機ELディスプレイ等の表示(パネル)装置の表示ユニット上に設置される導電シートであれば、どのようなものでも良く、例えば、太陽電池等の各種の電極用導電シートや、電磁波シールド用の導電シートや、車両のデフロスタ等の各種の透明発熱体用導電シートなどであっても良いのはもちろんである。
[本実施の形態]
本実施の形態に係る導電シート10は、表示装置の表示ユニット上に設置され、表示ユニットのブラックマトリックス(BM:Black Matrix)に対してモアレの発生の抑止の点で優れた配線パターン、特に、BMパターンに重畳した際にBMパターンに対してモアレの視認性の点で最適化された配線パターンを持つ導電シートであり、図1A及び図1Bに示すように、透明基体12(基体)を有する。透明基体12は、絶縁性を有し、且つ、透光性が高い材料、例えば、樹脂、ガラス、シリコン等の材料からなる。樹脂としては、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)、PMMA(Polymethyl methacrylate)、PP(Polypropylene)、PS( Polystyrene)等が挙げられる。
透明基体12の一方の主面(図1Bの矢印s1方向側)には、第1導電部14aが形成されている。第1導電部14aは、金属製の細線(以下、金属細線16と記す。また、金属細線16p、16q、16r、16sと記す場合がある。)と開口部18によるメッシュパターン20とを有する。金属細線16は、例えば、金(Au)、銀(Ag)又は銅(Cu)の線材からなる。金属細線16の線幅は、視認性の点からは細い方が好ましいが、例えば、30μm以下から選択可能であり、0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましい。
第1導電部14aは、詳細には、異なるメッシュ形状22を隙間なく配列したメッシュパターン20を有する。換言すれば、メッシュパターン20は、各メッシュ形状22に規則性(統一性)がないランダムなパターンである。例えば、メッシュパターン20のうち、ハッチングを付したメッシュ形状22は、図示例では四角形状であり、頂点C1及び頂点C2を直線で結ぶ金属細線16pと、頂点C2及び頂点C3を直線で結ぶ金属細線16qと、頂点C3及び頂点C4を直線で結ぶ金属細線16rと、頂点C4及び頂点C1を直線で結ぶ金属細線16sとで形成されている。本図から諒解されるように、メッシュ形状22はいずれも、少なくとも3辺を有する多角形状であるのが好ましいが、後述するように、円形でも、楕円形でも良いし、後述する図13に示すように、他の要素が追加されていても良いし、図14に示すように、必ずしも閉じた形状で無くとも良く、開区間があっても良い。
以下、本明細書中における「多角形」には、幾何学的に完全な多角形のみならず、完全な多角形に対し軽微な変更を加えた「実質的な多角形」も含まれるものとする。軽微な変更の例示として、メッシュ形状22と比べて微小な点要素・線要素の付加や、メッシュ形状22を構成する各辺(金属細線16)の部分的欠損等が挙げられる。
第1導電部14aの略全面には、金属細線16を被覆するように、第1接着層24aを介して第1保護層26aが接着されている。第1接着層24aの材料として、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等が挙げられる。
第1保護層26aは、透明基体12と同様に、例えば、樹脂、ガラス、シリコンを含む透光性が高い材料からなる。第1保護層26aの屈折率n1は、透明基体12の屈折率n0に等しいか、これに近い値である。この場合、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1は1に近い値であるのが良い。
ここで、本明細書における屈折率は、波長589.3nm(ナトリウムのD線)の光における屈折率を意味し、例えば樹脂では、国際標準規格であるISO 14782:1999(JIS K 7105に対応)で定義される。また、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1は、nr1=(n1/n0)で定義される。ここで、相対屈折率nr1は、0.86以上1.15以下の範囲にあればよく、より好ましくは、0.91以上1.08以下である。
相対屈折率nr1の範囲をこの範囲に限定して、透明基体12と第1保護層26aとの部材間の光の透過率を制御することにより、モアレの視認性をより向上させ、改善することができる。
この導電シート10は、上述したように、例えば、液晶素子、無機EL素子、有機EL素子等の表示素子(からなる表示パネル)、あるいは太陽電池等の各種電極用として用いられる。また、導電シート10は、電極用以外にも、電流を流すことで発熱する透明発熱体(例えば、車両のデフロスタ)、電磁波を遮断する電磁波シールド材にも適用可能である。
上述した実施の形態の導電シート10は、透明基体12の一方の主面のみに第1導電部14aを有するものであるが、本発明は、これに限定されず、透明基体12の両面に導電部を有するものであっても良い。このように、透明基体12の両方の主面に導電部を有する導電シート11を図2A及び図2Bに示す。
本実施の形態に係る導電シート11は、図2A及び図2Bに示すように、透明基体12の一方の主面(図2Bの矢印s1方向側)には、第1導電部14aの他、第1ダミー電極部15aが形成されている。第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aは、金属細線16と開口部18によるメッシュパターン20とを有する。タッチパネルに適用する導電シート11に関し、金属細線16の線幅は、上述したように、視認性の点から30μm以下から選択可能であり、0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましい。
ここで、第1ダミー電極部15aは、第1導電部14aと所定間隔だけ離間して配置されている。すなわち、第1ダミー電極部15aは、第1導電部14aと電気的に絶縁された状態下にある。第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aの略全面には、金属細線16を被覆するように、第1接着層24aを介して第1保護層26aが接着されている。
本実施形態の導電性シート11においては、透明基体12の一方(図2Bの上側)の面にも、透明基体12の他方(図2Bの下側)の面に形成されている第2導電部14bの複数の金属細線16に対応する複数の金属細線16からなる第1ダミー電極部15aを形成しているので、透明基体12の一方(図2Bの上側)の面での金属細線16による散乱を制御することができ、電極視認性を改善することができる。
以下、透明基体12の一方の主面(図1B、図2Bの矢印s1方向側)に形成された各部(第1導電部14a、第1ダミー電極部15a、第1接着層24a及び第1保護層26aを含む。)を総称して第1積層部28aという場合がある。
ところで、透明基体12の他方の主面(図2Bの矢印s2方向側)には、第2導電部14bが形成されている。第2導電部14bは、第1導電部14aと同様に、金属細線16と開口部18によるメッシュパターン20を有する。透明基体12は絶縁性材料からなり、第2導電部14bは、第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aと電気的に絶縁された状態下にある。
第2導電部14bの略全面には、金属細線16を被覆するように、第2接着層24bを介して第2保護層26bが接着されている。第2接着層24bの材質は、第1接着層24aと同一であってもよいし、異なってもよい。第2保護層26bの材質は、第1保護層26aと同一であってもよいし、異なってもよい。
第2保護層26bの屈折率n2は、透明基体12の屈折率n0に等しいか、これに近い値である。この場合、第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2は1に近い値である。ここで、屈折率及び相対屈折率の定義は上記の通りとする。また、第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2は、nr2=(n2/n0)で定義される。ここで、相対屈折率nr2は、相対屈折率nr1と同様に、上述の両部材間の光の透過率の制御によるモアレの視認性の向上や改善の点から0.86以上1.15以下の範囲にあればよく、より好ましくは、0.91以上1.08以下である。
以下、透明基体12の他方の主面(図2Bの矢印s2方向側)に形成された各部(第2導電部14b、第2接着層24b及び第2保護層26bを含む。)を総称して第2積層部28bという場合がある。
この導電シート11は、上述の導電シート10と同様に、上述したように、例えば、液晶素子、無機EL素子、有機EL素子等の表示素子を用いたタッチパネル用電極、太陽電池等の各種の電極、電磁波シールド材、車両のデフロスタ等の各種の透明発熱体等にも用いることができる。
このように、これらの導電シート10及び11は、例えば、図3に示す表示ユニット30(表示部)のタッチパネルに適用される。この表示ユニット30は、液晶パネル、プラズマパネル、有機ELパネル、無機ELパネル等で構成されてもよい。
図3に一部を省略して示すように、表示ユニット30は、複数の画素32がマトリクス状に配列されて構成されている。1つの画素32は3つの副画素(赤色副画素32r、緑色副画素32g及び青色副画素32b)が水平方向に配列されて構成されている。1つの副画素は垂直方向に縦長とされた長方形状とされている。画素32の水平方向の配列ピッチ(水平画素ピッチPh)と画素32の垂直方向の配列ピッチ(垂直画素ピッチPv)は略同じとされている。つまり、1つの画素32と該1つの画素32を囲むブラックマトリクス34(パターン材)にて構成される形状(網掛けにて示す領域36を参照)は正方形となっている。また、1つの画素32のアスペクト比は1ではなく、水平方向(横)の長さ>垂直方向(縦)の長さとなっている。上記した画素配列を有する表示ユニット30の表示パネル上に導電シート10又は11を配置する場合、画素32の配列周期と、ランダムに形成された金属細線16との間における空間周波数の干渉が殆どなく、モアレの発生が抑制されることになる。
次に、本実施の形態に係る導電シート11を組み込んだ表示装置40について、図4〜図8を参照しながら説明する。ここでは、投影型静電容量方式のタッチパネルを例に挙げて説明する。
以下では、図2A及び図2Bに示す導電シート11を図3に示す表示ユニット30のタッチパネルに適用した表示装置40を代表例として説明するが、本発明は、これに限定されず、図1A及び図1Bに示す導電シート10を適用した表示装置であっても良いのは言うまでもない。
図4に示すように、表示装置40は、カラー画像及び/又はモノクロ画像を表示可能な表示ユニット30(図3参照)と、入力面42(矢印Z1方向側)からの接触位置を検出するタッチパネル44と、表示ユニット30及びタッチパネル44を収容する筐体46とを有する。筐体46の一面(矢印Z1方向側)に設けられた大きな開口部を介して、ユーザは、タッチパネル44にアクセス可能である。
タッチパネル44は、上記した導電シート11(図2A及び図2B参照)の他、導電シート11の一面(矢印Z1方向側)に積層されたカバー部材48と、ケーブル50を介して導電シート11に電気的に接続されたフレキシブル基板52と、フレキシブル基板52上に配置された検出制御部54とを備える。
表示ユニット30の一面(矢印Z1方向側)には、接着層56を介して、導電シート11が接着されている。導電シート11は、他方の主面側(第2導電部14b側)を表示ユニット30に対向させて、表示画面上に配置されている。
カバー部材48は、導電シート11の一面を被覆することで、入力面42としての機能を発揮する。また、接触体58(例えば、指やスタイラスペン)による直接的な接触を防止することで、擦り傷の発生や、塵埃の付着等を抑止可能であり、導電シート11の導電性を安定させることができる。
カバー部材48の材質は、例えば、ガラス、樹脂フイルムであってもよい。カバー部材48の一面(矢印Z2方向側)を酸化珪素等でコートした状態で、導電シート11の一面(矢印Z1方向側)に密着させてもよい。また、擦れ等による損傷を防止するため、導電シート11及びカバー部材48を貼り合わせて構成してもよい。
フレキシブル基板52は、可撓性を備える電子基板である。本図例では、筐体46の側面内壁に固定されているが、配設位置は種々変更してもよい。検出制御部54は、導体である接触体58を入力面42に接触する(又は近づける)際、接触体58と導電シート11との間での静電容量の変化を捉えて、その接触位置(又は近接位置)を検出する電子回路を構成する。
図5Aに示すように、導電シート11の一方の主面には、矢印Z2方向側への平面視で、表示ユニット30(図3及び図4参照)の表示領域に配された第1センサ部60aと、表示領域の外周領域に配された第1端子配線部62a(いわゆる額縁)とが設けられている。
導電シート11の外形は平面視で矩形状を有するとともに、第1センサ部60aの外形も矩形状を有する。第1端子配線部62aのうち、導電シート11の矢印Y方向に平行する一辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第1端子64aが矢印Y方向に配列形成されている。第1センサ部60aの一辺(本図例では矢印Y方向に平行する辺)に沿って、複数の第1結線部66aが略一列に配列されている。各第1結線部66aから導出された第1端子配線パターン68aは、表示領域の外周領域の第1端子64aに向かって引き回されており、それぞれ対応する第1端子64aに電気的に接続されている。
第1センサ部60aに対応した部位には、複数の金属細線16(図2A及び2B参照)で形成された2以上の第1導電パターン70a(メッシュパターン)を有する。第1導電パターン70aは、矢印X方向(第1方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に直交する矢印Y方向(第2方向)に配列されている。また、各第1導電パターン70aは、2以上の第1感知部72aが矢印X方向に直列に接続されて構成される。その輪郭が概略菱形状の各第1感知部72aは、それぞれ同一の輪郭形状を有する。隣接する第1感知部72a間には、これら第1感知部72aを電気的に接続する第1接続部74aが形成されている。より詳細には、一の第1感知部72aの頂角部は、第1接続部74aを介して、一の第1感知部72aの矢印X方向に隣接する他の第1感知部72aの頂角部に連結されている。
各第1導電パターン70aの一方の端部側において、第1感知部72aの開放端には、第1接続部74aが形成されていない。各第1導電パターン70aの他方の端部側において、第1感知部72aの端部には、第1結線部66aがそれぞれ設けられている。そして、各第1導電パターン70aは、各第1結線部66aを介して、第1端子配線パターン68aに電気的に接続されている。
第1センサ部60aに対応した部位には、複数の金属細線16(図2A及び2B参照)で形成された2以上の第1ダミーパターン76a(メッシュパターン)を有する。各第1ダミーパターン76aは、隣接する第1導電パターン70a同士の第1隙間部75a(図6参照)に配置されている。その輪郭が概略菱形状の第1ダミーパターン76aは、各第1導電パターン70a(第1感知部72a及び第1接続部74a)と所定間隔だけ離間して配されている。この間隔(幅)は、第1感知部72aの一辺の長さと比較してきわめて小さい。したがって、第1センサ部60aには、その全面にわたって、略一様な密度で金属細線16が配線されている。
説明の便宜のため、図6では、1つの第1ダミーパターン76a(図面の中央右部)に限り、各メッシュ形状を詳細に表記している。その他の第1ダミーパターン76aにおいては、その輪郭を破線で示し、その内部の形状を省略した。
図6に示すように、各第1感知部72a及び各第1ダミーパターン76aは、それぞれ2以上の第1メッシュ要素78aを組み合わせて構成されている。第1メッシュ要素78aの形状は、上述したメッシュ形状22(図2A参照)と同様に、少なくとも3辺を有する多角形状である。また、隣接する第1感知部72a間を接続する第1接続部74aは、少なくとも1つの第1メッシュ要素78aから構成されている。
なお、各第1感知部72a及び各第1ダミーパターン76aの周縁部を構成する第1メッシュ要素78aは、位相幾何学(トポロジー)的に閉領域であってもよいし開領域であってもよい。第1接続部74aに関しても同様である。
また、隣接する第1導電パターン70a間には、電気的に絶縁された第1絶縁部80aがそれぞれ配されている。
ここで、第1ダミーパターン76aの配線密度は、第1導電パターン70a(第1感知部72a及び第1接続部74a)の配線密度に等しい。この場合、第1ダミーパターン76aの平面領域内での光反射率は、第1導電パターン70aの平面領域内での光反射率に一致する。金属細線16の線幅が一定であるとき、配線密度と光反射率との間には高い相関関係があるためである。
なお、本明細書中において「配線密度が等しい」とは、完全に等しい場合のみならず、実質的に等しい場合(密度比が概ね0.8〜1.2の範囲内)をも含む概念である。すなわち、人間(観察者)の視覚にとって検知できない程度の光反射率の差であればよい。また、金属細線16の配線密度の測定面積は、測定精度等を考慮して、1mm2以上であればよい。
また、各第1導電パターン70aと各第1ダミーパターン76aとの離間距離は、位置によらず一定(略一定の場合も含まれる。)にしてもよい。これにより、金属細線16の配線密度が一様に近づくので好ましい。
さらに、第1隙間部75aに対する第1ダミーパターン76aの被覆率(配置割合)は、概ね30〜95%の範囲が好ましく、70〜95%の範囲が一層好ましい。その理由は、被覆率が30%未満では、第2導電パターン70bの金属細線16による散乱の制御が不十分となり、電極視認性を十分に改善できないからであり、95%超では、第1ダミーパターン76aと第1導電パターン70aとの離間距離が近付き過ぎ、正確な感知ができなくなる恐れがあり、又、両者の絶縁性が不十分となる恐れがあるからである。
さらに、各第1ダミーパターン76aの輪郭は、三角形、矩形、円形等を含む種々の形状を採り得る。例えば、各第1ダミーパターン76aの輪郭は、各第1感知部72aの輪郭の形状(図5A例では、概略菱形状)と同一の又は相似する形状を有してもよい。
一方、図5Bに示すように、導電シート11の他方の主面には、矢印Z1方向側への平面視で、表示ユニット30(図3及び図4参照)の表示領域に配された第2センサ部60bと、表示領域の外周領域に配された第2端子配線部62b(いわゆる額縁)とが設けられている。
導電シート11の外形は平面視で矩形状を有するとともに、第2センサ部60bの外形も矩形状を有する。第2端子配線部62bのうち、導電シート11の矢印Y方向に平行する一辺側の周縁部には、その長さ方向中央部分に、複数の第2端子64bが矢印Y方向に配列形成されている。第2センサ部60bの一辺(本図例では矢印X方向に平行する辺)に沿って、複数の第2結線部66b(例えば、奇数番目の第2結線部66b)が略一列に配列されている。第2センサ部60bの他辺(一辺に対向する辺)に沿って、複数の第2結線部66b(例えば、偶数番目の第2結線部66b)が略一列に配列されている。各第2結線部66bから導出された第2端子配線パターン68bは、表示領域の外周領域の第2端子64bに向かって引き回されており、それぞれ対応する第2端子64bに電気的に接続されている。
第2センサ部60bに対応した部位には、複数の金属細線16(図2A及び図2B参照)で形成された2以上の第2導電パターン70b(メッシュパターン)を有する。第2導電パターン70bは、矢印Y方向(第2方向)にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に直交する矢印X方向(第1方向)に配列されている。また、各第2導電パターン70bは、2以上の第2感知部72bが矢印Y方向に直列に接続されて構成される。その輪郭が概略菱形状の各第2感知部72bは、それぞれ同一の輪郭形状を有する。隣接する第2感知部72b間には、これら第2感知部72bを電気的に接続する第2接続部74bが形成されている。より詳細には、一の第2感知部72bの頂角部は、第2接続部74bを介して、一の第2感知部72bの矢印Y方向に隣接する他の第2感知部72bの頂角部に連結されている。
各第2導電パターン70bの一方の端部側において、第2感知部72bの開放端には、第2接続部74bが形成されていない。各第2導電パターン70bの他方の端部側において、第2感知部72bの端部には、第2結線部66bがそれぞれ設けられている。そして、各第2導電パターン70bは、各第2結線部66bを介して、第2端子配線パターン68bに電気的に接続されている。
なお、第2センサ部60bに関し、第1センサ部60a(図5A及び図6参照)と異なり、隣接する第2導電パターン70b同士の第2隙間部75bにダミーパターンが配されていない。
図7に示すように、各第2感知部72bは、それぞれ2以上の第2メッシュ要素78bを組み合わせて構成されている。第2メッシュ要素78bの形状は、上述したメッシュ形状22(図2A参照)と同様に、少なくとも3辺を有する多角形状である。隣接する第2感知部72b間を接続する第2接続部74bは、少なくとも1つの第2メッシュ要素78bから構成されている。
なお、各第2感知部72bの周縁部を構成する第2メッシュ要素78bは、位相幾何学(トポロジー)的に閉領域であってもよいし開領域であってもよい。第2接続部74bに関しても同様である。
また、隣接する第2導電パターン70b間には、電気的に絶縁された第2絶縁部80bがそれぞれ配されている。
図8に示すように、導電シート11の平面視において、一面(矢印Z2方向側)に形成された第1導電パターン70a及び第1ダミーパターン76aの隙間(第1隙間部75aの一部)を埋めるように、他面(矢印Z1方向側)に形成された第2導電パターン70bが配列された形態となる。また、第1導電パターン70aの輪郭と、第2導電パターン70bの輪郭とが重なる平面領域において、両者の金属細線16の位置が完全に一致する。さらに、第1ダミーパターン76aの輪郭と、第2導電パターン70bの輪郭とが重なる平面領域において、両者の金属細線16の位置が完全に一致する。その結果、導電シート11の平面視において、多数のポリゴン82(メッシュ形状)が敷き詰められた形態となる。
第1感知部72a(及び第2感知部72b)の一辺の長さは、3〜10mmであることが好ましく、4〜6mmであることがより好ましい。一辺の長さが、上記下限値未満であると、導電シート11をタッチパネルに適用した場合、検出時の第1感知部72a(及び第2感知部72b)の静電容量が減るため、検出不良になる可能性が高くなる。他方、上記上限値を超えると、接触位置の検出精度が低下するおそれがある。同様の観点から、ポリゴン82(第1メッシュ要素78a、第2メッシュ要素78b)の一辺の平均長さは、上述したように、100〜400μmであることが好ましく、150〜300μmであることがさらに好ましく、最も好ましくは210〜250μm以下である。ポリゴン82の一辺が上記範囲である場合には、さらに透明性も良好に保つことが可能であり、表示ユニット30の前面に取り付けた際に、違和感なく表示を視認することができる。
図6に戻って、第1接続部74aの幅w1は、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.4〜0.8mmであることがより好ましい。w1が上記した下限値未満である場合、各第1感知部72aを接続する配線数が減少するため電極間抵抗が上昇する。一方、w1が上記した上限値を超える場合、第2感知部72bとの重なり面積が増加するためノイズ量が増大する。なお、第2接続部74b(図7参照)の幅に関しても幅w1と同様である。
第1感知部72aと第2感知部72bとの離間幅w2は、0.1〜0.6mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであることがより好ましい。w2が上記した下限値未満である場合、接触体58の接触(又は近接)に伴う静電容量の変化量が小さくなるため信号量が低下する。一方、w2が上記した上限値を超える場合、第1感知部72aの密度が低下するためセンサの解像度が低下する。
続いて、第1導電部14a、第1ダミー電極部15a、及び第2導電部14bの配線形状の決定例の概略を、図9A〜図10Cを参照しながら説明する。アルゴリズムの詳細については後述する。
本実施の形態では、1つの平面領域100内に存在する複数の位置からメッシュパターン20を決定する。図9Aに示すように、正方形状の平面領域100の中から、8つのシード点P1〜P8を無作為に選択したとする。
図9Bは、ボロノイ図(ボロノイ分割法)に従って配線形状を決定した結果を示す概略説明図である。これにより、8つのシード点P1〜P8をそれぞれ囲繞する8つの領域V1〜V8がそれぞれ画定される。ここで、ボロノイ図により区画された領域Vi(i=1〜8)は、シード点Piが最も近接する点である点の集合体であることを示している。ここで、距離関数としてユークリッド距離を用いたが、種々の関数を用いてもよい。
図9Cは、ドロネー図(ドロネー三角形分割法)に従って配線形状を決定した結果を示す概略説明図である。ドロネー三角形分割法とは、シード点P1〜P8のうち、隣接する点同士を繋いで三角形状の領域を画定する方法である。これにより、8つのシード点P1〜P8のいずれかを頂点とする8つの領域V1〜V8がそれぞれ画定される。
このようにして、図9B(又は図9C)に示す各境界線を金属細線16とし、各領域Viを開口部18とする配線形状、すなわち、第1導電部14a、第1ダミー電極部15a、及び第2導電部14bを重ね合わせた場合での各メッシュ形状22が決定される。なお、配線形状の決定例は上記した手法に限定されることなく、種々の手法を採り得る。例えば、領域を区間する各線分は、図9B及び図9Cに例示した直線のみならず、曲線及びこれらの結合であってもよい。
また、図13、および図14(A)〜(C)に例示したようなメッシュパターンの開口部を変形した態様でもよい。
続いて、本発明に係る導電シート10、11のノイズ特性(例えば、粒状ノイズ)を定量化した評価値について、図10A〜図18を参照しながら詳細に説明する。なお、メッシュパターン20の配線形状を数理的に評価するため、この模様を可視化した画像データを予め取得する必要がある。この画像データImgは、カメラ、スキャナ等の入力装置を用いて読み取られた導電シート10、11の色値データや、メッシュパターン20の出力形成に実際に用いた画像データであってもよい。いずれの場合でも、画像データImgは、金属細線16の平均線幅を1以上の画素で表現可能な程度の高い解像度(小さい画素サイズ)を有することが好ましい。
なお、所定の画像データImgに基づいて導電シート10、11を実際に作製した結果、金属細線16の交点近傍(多角形状の場合は頂点部)で線が太くなる場合がある。そこで、この特性を予め考慮し画像データImgを補正した上で、以下の評価に用いてもよい。
次に、本発明によるパターンの特徴を評価する評価値(指標)について説明する。画質の評価は、主としてモアレ、色ノイズの視認性の良否で評価される。本発明においては、評価値(指標)として、主として、モアレの視認性の評価に適した第1評価値と、色ノイズの視認性の評価に適した第2評価値と、モアレと色ノイズ(周波数成分)をほぼ等価的に評価するのに適した第3評価値とを用いることができるが、これらの第1評価値、第2評価値及び第3評価値については、評価したい画質に応じて、具体的には、モアレ及び色ノイズの視認性のいずれか一方、もしくは両方かに応じて、いずれかの評価値を用いれば良いが、これらの評価値を単独で用いることに限定されず、評価目的や目標に応じて、2つ以上の評価値を組み合わせて用いても良い。
[第1評価値]
まず、第1評価値について説明する。
第1評価値は、モアレ強度を色ノイズより重要視した評価値であり、この評価値は画質評価の中でモアレが良好(視認され難い)と判断するのに有効な指標となるが、色ノイズの評価も可能であることは言うまでもない。
第1評価値EV1は、金属細線16の配線形状における空間周波数特性のばらつき程度を定量化した指標である。以下、第1評価値EV1について、図10A〜図11Bを参照しながら説明する。
図10Aは、メッシュパターン20の模様を表す画像データImgを可視化した概略説明図である。先ず、画像データImgに対してフーリエ変換(例えば、FFT;Fast Fourier Transformation)を施す。これにより、メッシュパターン20の形状について、空間周波数分布として把握できる。
図10Bは、図10Aの画像データImgに対してFFTを施して得られる二次元パワースペクトル(以下、単にスペクトルSpcという。)の分布図である。ここで、当該分布図の横軸はX軸方向に対する空間周波数(Ux)を示し、その縦軸はY軸方向に対する空間周波数(Uy)を示す。また、空間周波数帯域毎の表示濃度が薄いほど強度レベル(スペクトルの値)が小さくなり、表示濃度が濃いほど強度レベルが大きくなっている。本図の例では、このスペクトルSpcの分布は、等方的であるとともに環状のピークを2個有している。
ここで、原点Oからの距離に相当する動径空間周波数r{=(Ux2+Uy21/2}、偏角θ{=tan-1(Uy/Ux)}をそれぞれ変数とする、極座標で表されるスペクトルSpcのスペクトル強度分布関数SPC(r,θ)の(以下、動径スペクトルともいう)を算出し、これらの統計的なばらつき量を算出する。
なお、図10Cは、図10Bに示すパワースペクトル分布のXC−XC線に沿うスペクトル強度(Power:スペクトルの値)を示すものであり、偏角θが0度(θ=0)の時のスペクトル強度分布関数SPC(r,0)を示す。
図11Aに示す例では、動径空間周波数(r)が一定値の下、偏角(θ)は0〜360度の間で、各偏角における動径スペクトル{SPC(r,θ)}の分散を算出し、その値を動径スペクトル{SPC(r,θ)}の二乗で割った値を異方性{AI(r)}と定義する。横軸を動径空間周波数(r)、縦軸に異方性{AI(r)}の常用対数を用いた場合の、標準偏差を第1評価値(偏差量)EV1と定義し、次の式(1)で表される。
即ち、下記式(1)に示すように、メッシュパターン20のパワースペクトルSpcにおける角度方向(偏角θ=0〜360度)に沿った標準偏差は、動径空間周波数をr、偏角をθとする時、異方性{AI(r)}で表され、異方性{AI(r)}の、常用対数で表される値の動径方向にわたる標準偏差は、第1評価値となる偏差量EV1で表される。なお、パワー(スペクトル強度)を計算するスペクトルSpcのサンプリング数(サンプル数)nは、極座標における一定の動径空間周波数(r=rの円周)上のピクセル数となる。
図11Bは、各動径空間周波数rに対する異方性AI(r)のグラフである。本図例では、約22cycle/mm近傍の空間周波数帯域で、1つの鋭いピークが存在している。その他の空間周波数帯域では、概ね平坦な特性を有している。
ここで、AI(r)は、動径空間周波数rにおける動径スペクトルの異方性を表し、SPC(r、θ)は、スペクトルSpcの動径スペクトル(スペクトル強度分布関数)、SPCave(r)は、スペクトルSpcの動径スペクトルSPCの角度方向に沿った(偏角θ=0〜360度にわたる)平均値、nは、動径スペクトルSPCの角度方向に沿った(偏角θ=0〜360度にわたる)サンプル数、AIaveは、異方性AIの動径方向に沿った(動径空間周波数r=0〜nyq(ナイキスト周波数)にわたる)平均値、mは、異方性AIの動径方向に沿った(動径空間周波数r=0〜nyq(ナイキスト周波数)にわたる)サンプル数である。上記式(1)中、偏角θ=0〜2πに亘るサメンションΣは、θ=(2π/n)jとした時のj=1〜nに亘るサメンションΣを表し、動径空間周波数r=0〜nyqに亘るサメンションΣは、r=(nyq/m)kとした時のk=1〜mに亘るサメンションΣを表す。
なお、nyqは、画像データImgに対するナイキスト周波数である。自然数であるk(k=1,2,‥,m)は、零周波数からナイキスト周波数までを等間隔にプロットする変数に相当する。すなわち、第1評価値EV1は、異方性AI(r)の、動径方向にわたる標準偏差を表す。
第1評価値EV1は、二次元周波数空間上の各角度方向に沿ってスペクトルSpcの値がばらつく場合、メッシュパターン20の異方性が高くなる。この場合、異方性AI(r)は、特定の空間周波数Uで大きなピークを有するため、上記式(1)の第1評価値EV1の値は大きくなる。
一方、図10B例のように、各角度方向に沿ってスペクトルSpcの値が均一である場合、メッシュパターン20の異方性が低くなる。この場合、異方性AI(r)の値は動径周波数rによらず小さくなり、上記式(1)の第1評価値EV1の値は小さくなる。
即ち、第1評価値EV1は、メッシュパターン20のパワースペクトルSpcの角度方向のバラツキを表す異方性AI(r)の動径方向のバラツキを表す。
本発明においては、このように表される第1評価値EV1は、後述する実施例の記載からも明らかなように、0.965以上1.065以下の範囲にある必要がある。第1評価値EV1は、0.97以上1.06以下であることが好ましい。
本発明において、第1評価値EV1を0.965以上1.065以下の範囲に限定する理由は、第1評価値EV1が0.965未満では、異方性AIのバラツキが小さく、特定周波数成分が多いため、モアレが目立つことになり、第1評価値EV1が1.065超では、異方性AIのバラツキが大きく、種々の周波数成分が多数混在し、モアレのみならず、色ノイズ成分がムラとなって視認されてしまうからである。
[第2評価値]
次に、第2評価値について説明する。
第2評価値(面積分布)は、色ノイズ強度をモアレより重要視した評価値であり、この評価値は、画質評価の中で色ノイズが良好と判断するのに有効な指標となるが、モアレの評価も可能であることは言うまでもない。
第2評価値EV2は、開口部18(あるいは、メッシュ形状22)の面積分布のばらつき程度を定量化した指標である。以下、第2評価値EV2について、図12A〜図14Dを参照しながら説明する。
図12A〜図12Cは、メッシュパターン20における各開口部18が有する面積(以下、開口面積という場合がある。)のヒストグラムである。
図12Aは、金属細線16の配置形状の規則性が高いメッシュパターン20における、開口面積のヒストグラムの典型例である。本ヒストグラムは、平均値をSaveとした、標準偏差σ1のガウス分布を有する。金属細線16の配線形状の規則性が高い場合、開口部18の開口面積は均一に分布する傾向がある。標準偏差σ1の値が小さい場合、表示ユニット30(図4参照)上に重ねて配置した位置関係下、モアレが生じやすい傾向がある。
図12Bは、金属細線16の配置形状の規則性が低いメッシュパターン20における、開口面積のヒストグラムの典型例である。本ヒストグラムは、平均値をSaveとした、標準偏差σ2のガウス分布を有する。金属細線16の配線形状の規則性が低い場合、開口部18の開口面積は幅広く分布する傾向がある。標準偏差σ2の値が大きい場合、観察者にとってノイズ粒状感(ざらつき感ともいう。)を視認し易い傾向がある。また、各画素32を構成する赤色副画素32r、緑色副画素32g、青色副画素32bの存在比率が開口部18毎に異なるため、色ノイズとして顕在化する傾向がある。
図12Cは、金属細線16の配置形状が好適に決定されたメッシュパターン20における、開口面積のヒストグラムの典型例である。本ヒストグラムは、平均値をSaveとした、標準偏差σのガウス分布を有する。標準偏差σを、σ1<σ<σ2の範囲に定めることで、上記したモアレ、ノイズ粒状感及び色ノイズの発生を両立して抑制できる。
ここで、開口部18の面積の分布を特徴付ける第2評価値EV2は、各開口部18が占める面積Sk(k=1,2,‥‥,N)を用いて、次の式(2)で算出される。
上記式(2)から諒解されるように、第2評価値EV2は、標準偏差σ1、σ2、σ(図12A〜図12C参照)に対応する。第2評価値EV2は、常に0以上の値を取り、モアレ、ノイズ粒状感及び色ノイズの発生を総合的に考慮して、所定範囲内(σ1<EV2<σ2)にあることが好ましい。
本発明においては、このような第2評価値EV2は、後述する実施例の記載からも明らかなように、前述したような2032dpi換算時において110.2ピクセル(0.017mm2)以上240ピクセル(0.038mm2)以下の範囲内にある必要がある。また、第2評価値EV2は、120ピクセル(0.019mm2)以上170ピクセル(0.027mm2)以下の範囲であることが好ましい。
本発明において、第2評価値EV2を110.2ピクセル(0.017mm2)以上240ピクセル(0.038mm2)の範囲に限定する理由は、第2評価値EV2が110.2ピクセル(0.017mm2)未満では、色ノイズのムラのみならず、モアレのようなムラが見えてしまい、第2評価値EV2が240ピクセル(0.038mm2)超では、面積にばらつきが多いため、色ノイズにバラツキが多くなりすぎ、視認性に不利となり、色ノイズがムラとなって、目立つからである。
ところで、図1A、図2Aの例に示すように、多角形状を敷き詰めたメッシュパターン20の場合、開口部18の各形状(あるいは、各メッシュ形状22)が一意に画定されるので、これらの開口面積及び第2評価値EV2を算出することは容易である。しかし、メッシュ形状22に変形等を施すことで、開口部18の開口面積は一意に画定されない場合がある。そこで、本出願に係る特許請求の範囲及び明細書中では、第2評価値EV2の定義を明確にするため、開口面積を次のように定義する。
図13A〜図13Dは、トポロジー的に閉じた開口部18aの領域内に他の要素を付加した事例(第1〜第3事例)についての概略説明図である。これらの事例の場合、各閉領域を形成する要素(線素)を予め抽出し、抽出された線素以外の要素を除外した上で、開口部18の開口面積を計算する。
図13Aに示すように、トポロジー的に閉じた開口部18aに関し、その開口面積は、ハッチングを付した領域の面積として計算される。開口部18aは幾何学的に完全な四角形状を有しているので、その開口面積は一意に計算される。
第1事例として図13Bに示すように、図13Aに示す開口部18aの一部(例えば中央部)に点素400が形成された開口部18bについて考察する。この場合、開口部18bの開口面積は、点素400を除外した領域の面積として計算される。すなわち、開口部18bは、開口部18a(図13A参照)と等価に取り扱われる。
第2事例として図13Cに示すように、図13Aに示す開口部18aの一部に環状の線素402が形成された開口部18cについて考察する。この場合、開口部18cの開口面積は、線素402を除外した領域の面積として計算される。すなわち、開口部18cは、開口部18a(図13A参照)と等価に取り扱われる。
第3事例として図13Dに示すように、図13Aに示す開口部18aの境界線(本図例では、四角形の一辺)と交差し、その内側に向けて突出する線素404(いわゆるヒゲ)を有する開口部18dについて考察する。この場合、開口部18dの開口面積は、線素404を除外した領域の面積として計算される。すなわち、開口部18dは、開口部18a(図13A参照)と等価に取り扱われる。
図14A〜図14Dは、トポロジー的に開いておりメッシュ形状22を構成しない事例(第4〜第6事例)についての概略説明図である。これらの事例の場合、開口部18を囲繞する各線に対して最短の仮想線を補足することで閉領域(以下、仮領域という。)を画定し、この仮領域の面積を、開口部18の開口面積として計算する。
ただし、補足した仮想線の長さの総和が、仮領域を画定する境界線の全長の20%以下である場合に限り、開口面積の計算が可能であると定義する。なぜならば、補足した仮想線の長さの総和が、仮領域を画定する境界線の全長の20%を超える場合、各開口部18をもはや特定できないからである。
第4事例として図14Aに示すように、開口部18eを囲繞する線は、開口部18a(図13A参照)の境界線の一部が欠損した形状を有する。この場合、図14Bに示すように、第1端点406と第2端点408との間を最短経路(すなわち直線状の仮想線410)で補うことで、開口部18a(図13A参照)と同じ形状を有する仮領域412が画定される。したがって、開口部18eの開口面積は、仮領域412の面積として計算される。すなわち、開口部18eは、開口部18a(同図参照)と等価に取り扱われる。
第5事例として図14Cに示すように、開口部18fを囲繞する線は、円周の一部が欠損した円弧形状を有する。この場合、第1端点414と第2端点416との間を最短距離(すなわち直線状の仮想線418)で補うことで、仮領域420が画定される。したがって、開口部18fの開口面積は、仮領域420の面積として計算される。
第6事例として図14Dに示すように、開口部18gは、一対の平行線に挟まれた開領域であるとする。この場合、各平行線の端点をそれぞれ連結する仮想線422、424を補うことで、矩形状の仮領域426が画定される。しかし、補足した仮想線422、424の長さの総和が、仮領域426を画定する境界線の全長の20%を超えているので、開口面積の計算が可能でないとし、第2評価値EV2の算出から除外される。
[第3評価値]
次に、第3評価値について説明する。
第3評価値(重心位置)はモアレと色ノイズ(周波数成分)をほぼ等価的に評価するのに適していて、この評価値はモアレ、色ノイズが共に良好と判断するのに有効な指標となる。
第3評価値EV3は、メッシュ形状22の重心位置のばらつき程度を定量化した評価値である。以下、第3評価値EV3について、図15〜図18を参照しながら説明する。
図15に示すように、図9Bと同様の平面領域100に対し、上述したボロノイ図を用いて多角形状の各領域V1〜V8が画定されているものとする。なお、各領域V1〜V8内にそれぞれ属する各点C1〜C8は、各領域の幾何学的な重心位置を表している。
図16は、本実施の形態に係るメッシュパターン20と、各メッシュ形状22の重心位置との関係を示す概略説明図である。
図17Aは、図16のメッシュパターン20が有する各メッシュ形状22の重心位置の分布(以下、「重心位置分布C」という。)を表す画像データ(以下、「重心画像データImgc」という。)を可視化した概略説明図である。本図から諒解されるように、重心位置分布Cは、各重心位置が互いに重複することなく適度に分散している。
図17Bは、図17Aの重心画像データImgcに対してFFTを施して得られる二次元パワースペクトル(以下、「重心スペクトルSpcc」という。)の分布図である。ここで、当該分布図の横軸はX軸方向に対する空間周波数(Ux)を示し、その縦軸はY軸方向に対する空間周波数(Uy)を示す。また、空間周波数帯域毎の表示濃度が薄いほど強度レベル(スペクトルの値)が小さくなり、表示濃度が濃いほど強度レベルが大きくなっている。本図の例では、この重心スペクトルSpccの分布は、等方的であるとともに環状のピークを1個有している。
図17Cは、図17Bに示す重心スペクトルSpccの分布のXVIIC−XVIIC線に沿った断面図である。重心スペクトルSpccは等方的であるので、図17Cはあらゆる角度方向に対する動径方向分布に相当する。本図から諒解されるように、低空間周波数帯域での強度レベルが小さくなり、中間の空間周波数帯域には幅が広いピークを有している。さらに、低空間周波数帯域に対して、高空間周波数帯域での強度レベルが高くなるいわゆるハイパス型の特性を有する。すなわち、図17Aに示す重心画像データImgcは、画像工学分野の技術用語によれば、「ブルーノイズ」の特性を有する模様を表すものといえる。
なお、導電シート10、11における重心位置分布Cを決定するためには、開口部18の各領域を画定する必要がある。ここでは、第2評価値EV2の算出(図13A〜図14D参照)と同様の定義に沿って各領域を画定する。
図18A及び図18Bは、所定方向に沿って配置された各重心位置についての、所定方向の垂直方向に対する位置の標準偏差の算出方法を模式的に表す説明図である。
図18Aに示すように、先ず、重心位置分布Cの中から初期位置としての重心位置Pc1を任意に選択する。そして、重心位置Pc1からの距離が最も近い重心位置Pc2を選択する。そして、既に選択された重心位置Pc1を除く残余の重心位置分布Cの中から、重心位置Pc2に最も近い重心位置Pc3を選択する。以下、同様にして、統計学的に十分に多いN個の重心位置(本図例では、説明の便宜のため、9点の重心位置Pc1〜Pc9)をそれぞれ選択する。その後、重心位置Pc1〜Pc9の回帰直線を求め、この直線を基準軸430として定義する。この回帰直線は、最小2乗法を含む種々の公知の分析手法を用いて、決定してもよい。
図18Bに示すように、基準軸430(本図では、X’軸と表記する。)及びこれに直交する交差軸432(本図では、Y’軸と表記する。)をそれぞれ設定する。そして、X’軸方向(所定方向)に沿って配置された重心位置Pc1〜Pc9についての、Y’軸方向(直交方向)に対する位置の標準偏差を算出する。
以下、重心位置分布Cの中から重心位置Pc1(初期位置)を無作為に選択し、標準偏差を算出する試行をM回繰り返す。以下、m(m=1,2,‥‥,M)回目の試行で得られた標準偏差の値をSTD(m)と表記する。STD(m)は、次の式(3)で算出される。
ここで、Y’mkは、m回目の試行において、X’Y’座標系で表現した場合におけるk番目の重心位置PckのY’座標に相当する。Y’aveは、m回目の試行におけるの重心位置PckのY’座標の平均値、Nは、サンプリング数である。上記式(3)から諒解されるように、STD(k)は、常に0以上の値を取り、0に近づくほどノイズ特性が良好であるといえる。
そして、第3評価値EV3は、試行毎に得られたSTD(m)及びこれらの平均値STDaveを用いて、次の式(4)で算出される。
上記式(4)から諒解されるように、第3評価値EV3は、常に0以上の値を取り、0に近づくほど重心位置分布Cの規則性が高いといえる。重心位置分布Cが規則的(例えば、周期的)である場合、STDの値は、初期位置Pc1の選択結果によらず略一定になる。その結果、試行毎のSTD(m)のばらつきが小さくなり、第3評価値EV3の値は小さくなる。この場合、重心位置分布Cの規則性が高いので、各開口部18の配置位置と、各画素32(赤色副画素32r、緑色副画素32g及び青色副画素32b)との配置位置との同期(干渉)が発生し、モアレとして顕在化する傾向があり、ノイズ粒状感や色ノイズも顕在化する恐れがある。
一方、図17A例のように、適度に分散された重心位置分布Cを有する場合、標準偏差の値は、初期位置Pc1の選択結果に依存して変化する。その結果、試行毎のSTD(m)の値がばらつき、第3評価値EV3の値は大きくなる。この場合、重心位置分布Cの規則性が低いので、各開口部18の配置位置と、各画素32(赤色副画素32r、緑色副画素32g及び青色副画素32b)との配置位置との同期(干渉)が発生しなくなり、モアレや色ノイズが抑制される。
本発明においては、このような第3評価値EV3は、後述する実施例の記載からも明らかなように、前述したような2032dpi換算時において1.2ピクセル(15.0μm)以上である必要がある。また、第3評価値EV3は、4.37ピクセル(54.62μm)以上であることが好ましい。
本発明において、第3評価値EV3を1.2ピクセル(15.0μm)以上の範囲に限定する理由は、第3評価値EV3が1.2ピクセル(15.0μm)未満では、重心位置分布の規則性が高いので、各開口部18の配置位置と、各画素32との配置位置との同期(干渉)が発生し、モアレ成分が強くなり、モアレとして顕在化するからであり、ノイズ粒状感や色ノイズも顕在化する恐れがあるからである。
なお、本発明では、第3評価値EV3の上限値は、特に制限的ではないが、実用性の点から、50ピクセル(625μm)以下であることが好ましい。
このようにして、第1評価値EV1{上記式(1)参照}、第2評価値EV2{上記式(2)参照}及び第3評価値EV3{上記式(3)及び上記式(4)参照}を用いて、導電シート10、11のノイズ特性を種々定量化でき、導電シート10、11を透過する画像の画質を適切に評価できる。したがって、第1評価値EV1、第2評価値EV2及び第3評価値EV3は、いずれも画質評価値ということができる。
続いて、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1を1に近い値にすることで得られる作用効果について、図19A〜図20Bを参照しながら詳細に説明する。理解の容易のため、導電シート11の一部の構成を省略し、透明基体12、第1導電部14a及び第1保護層26aのみを表記している。
図19Aに示すように、表示ユニット30(図4参照)側から照射された平行光102は、透明基体12の内部に入射し、矢印Z1方向に沿って直進する。そして、平行光102は、透明基体12と金属細線16との第1界面104で、反射成分106として、矢印Z2方向に略全て反射される。すなわち、非透光性材料である金属細線16の有無に応じて、導電シート11を透過する光量の差が大きくなる。その結果、メッシュパターン20の形状に応じた濃淡が顕著になり、モアレが発生し易くなる。これに対して、透光性が高い導電性材料(典型的には、ITO)を用いた導電シートの場合、上記した影響を殆ど受けることはない。
以下、透明基体12と第1保護層26aとの屈折率差が大きい場合、すなわち、相対屈折率nr1が1から離れている場合での光学的現象について、図19B及び図19Cを用いて説明する。
図19Bに示すように、矢印Z1方向に対し僅かながら斜入する光(斜入光108)は、透明基体12の内部に入射し、第1導電部14a(開口部18)と第1保護層26aとの第2界面110まで直進する。そして、斜入光108は、第2界面110による屈折現象により、一部の光(直進成分112)は透過されるとともに、残余の光(反射成分114)は反射される。このとき、相対屈折率nr1が1から離れているので界面透過率が低下し、直進成分112(あるいは反射成分114)の光量は相対的に減少(あるいは増加)する。
例えば、図19Cに示すように、開口部18に対応する位置においてI=Iwの光量が、金属細線16に対応する位置においてI=Ibの光量が、導電シート11をそれぞれ透過して検出されたとする。この場合、金属細線16に起因する光学濃度は、開口部18での検出光量を基準として、ΔD1=−log(Ib/Iw)で表される。
次いで、透明基体12と第1保護層26aとの屈折率差が小さい場合、すなわち、相対屈折率nr1が1に近い値である場合での光学的現象について、図20A及び図20Bを用いて説明する。
相対屈折率nr1が1に近い値である場合、光学的考察から容易に導き出せるように、界面透過率が1(界面反射率が0)に近づく。したがって、直進成分116(あるいは反射成分118)の光量は、図19Bの場合と比べて相対的に増加(あるいは減少)する。換言すれば、散乱されることなく透明基体12内部を通過する光量が、非透光性材料からなる金属細線16の位置によらず一律に増加する。以下、説明の便宜のため、検出光量がε(正値)だけ増加したとする。
このとき、図20A及び図20Bに示すように、開口部18に対応する位置においてI=Iw+εの光量が、金属細線16に対応する位置においてI=Ib+εの光量が、それぞれ透過して検出される。金属細線16に起因する光学濃度は、開口部18での検出光量を基準として、ΔD2=−log{(Ib+ε)/(Iw+ε)}で表される。
Iw>Ib≧0、且つ、ε>0のとき、(Ib/Iw)<(Ib+ε)/(Iw+ε)の不等式を満たすので、ΔD1>ΔD2の関係が常に成り立つ。すなわち、透明基体12及び第1保護層26aの相対屈折率nr1を1に近い値にすることで、金属細線16に起因する光学濃度のコントラストを低減できる。これにより、表示装置40の平面視において、金属細線16の模様がユーザに視認され難くなる。
なお、透明基体12と第1保護層26aとの関係のみならず、透明基体12と第2保護層26bとの関係においても上記と同様である。また、相対屈折率nr1、nr2が0.86〜1.15であれば好ましく、0.91〜1.08であることが一層好ましい。特に、第1保護層26a及び/又は第2保護層26bは、透明基体12と同一の材料であれば、nr1=1(nr2=1)となるので、更に好ましい。
このように、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1、及び/又は第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2を0.86〜1.15にしたので、透明基体12の法線方向(矢印Z1方向)に対して僅かに斜入する光(斜入光108)のうち、透明基体12と第1保護層26aとの界面、及び/又は透明基体12と第2保護層26bとの界面において直進する光量(直進成分116)が相対的に増加する。すなわち、散乱されることなく透明基体12内部を通過する光量が、非透光性材料からなる金属細線16の位置によらず一律に増加する。これにより、金属細線16に起因する光学濃度のコントラストを低減可能であり、観察者(ユーザ)に視認され難くなる。特に、異なるメッシュ形状22を隙間なく配列したメッシュパターン20では、ノイズ粒状感の発生を抑制できるので一層効果的である。なお、各メッシュ形状22が多角形状である場合のみならず、種々の形状であっても上記した作用効果が得られることは言うまでもない。
即ち、本発明において、第1保護層26aに対する透明基体12の相対屈折率nr1、及び/又は第2保護層26bに対する透明基体12の相対屈折率nr2を0.86〜1.15の範囲内に限定することは、モアレ/色ノイズの視認性に有効な相対屈折率の好ましい範囲を限定することである。
続いて、導電シート11に第1ダミーパターン76aを設けることで得られる作用効果について、図21A〜図22Cを参照しながら説明する。以下、理解の容易のため、第1保護層26a等の構成を省略するとともに、光の屈折効果による影響が僅かであるとして光学的現象を説明する。
図21Aは、従来例に係る第1センサ部120の概略平面図である。第1センサ部120は、第1導電パターン70aのみで構成されており、第1ダミーパターン76a(図5A及び図6参照)が欠落した形態を有する。
図21Bは、第1センサ部120に入射された外光122の経路を表す概略説明図である。本図は、図21Aに示す第1導電パターン70aの境界Bd近傍での概略断面図に相当する。
位置P1は、第1導電部14a及び第2導電部14bのいずれにも金属細線16が存在しない位置に相当する。表示装置40(図4参照)の外部から照射された外光122は、導電シート11の内部に入射し、矢印Z2方向に沿って略平行に直進する。そして、外光122は、開口部18と透明基体12との第1界面104で、矢印Z2方向に略全て透過される。このとき、透過光の一部は、直進成分124として矢印Z2方向に沿って直進するとともに、残余の一部は散乱成分126として散乱する。その後、直進成分124は、透明基体12と開口部18との第3界面128で、矢印Z2方向に略全て透過される。透過光の一部は、直進成分130として矢印Z2方向に沿って直進するとともに、残余の一部は散乱成分132として散乱する。その結果、位置P1に照射された外光122のうちの大半は、導電シート11の矢印Z2方向側に放出される。
位置P2は、第1導電部14aに金属細線16が存在し、且つ、第2導電部14bに金属細線16が存在しない位置に相当する。表示装置40(図4参照)の外部から照射された外光122は、第1導電部14a(非透光性材料である金属細線16)の表面で、反射成分134として矢印Z1方向に略全て反射される。
位置P3は、第1導電部14aに金属細線16が存在せず、且つ、第2導電部14bに金属細線16が存在する位置に相当する。表示装置40(図4参照)の外部から照射された外光122は、導電シート11の内部に入射し、矢印Z2方向に沿って略平行に直進する。そして、外光122は、第1界面104で、矢印Z2方向に略全て透過される。このとき、透過光の一部は、直進成分124として矢印Z2方向に沿って直進するとともに、残余の一部は散乱成分126として散乱する。そして、直進成分124は、第3界面128(非透光性材料である金属細線16の表面)で、反射成分135として矢印Z1方向に略全て反射される。その後、反射成分135は、矢印Z1方向に沿って透明基体12内部を直進し、第1界面104で、矢印Z1方向に略全て透過される。その結果、位置P3に照射された外光122のうちの一部は、直進成分136(あるいは散乱成分137)として、導電シート11の外側(矢印Z1方向側)に放出される。
このように、位置P2での反射光量Ir(反射光134)は、位置P3での反射光量Ir(直進成分136)と比べて多いことが諒解される。これは、金属細線16の位置に到達するまでの光路長の差異(透明基体12の厚みの2倍値に相当する。)に起因する。
図21Cは、図21Aの第1センサ部120における反射光の強度分布を表すグラフである。グラフの横軸は矢印X方向の位置を表し、グラフの縦軸は反射光の強度(反射光量Ir)を表す。この反射光量Irは、矢印X方向の位置によらず一様な外光122を入射した場合での、導電シート11の一面側(矢印Z1方向側)に反射される光量を意味する。
その結果、第1センサ部120に第1導電パターン70aが存在しない位置では、反射光量Irは極小値(Ir=I1)を採る。また、第1センサ部120に第1導電パターン70aが存在する位置では、反射光量Irは極大値(Ir=I2)を採る。すなわち、反射光量Irは、第1感知部72aの規則的配置に応じた特性、換言すれば、極小値(I1)及び極大値(I2)を交互に繰り返す周期的な特性を有する。
これに対して、透光性が高い導電性材料(典型的には、ITO)を用いた導電シートの場合、反射光量Irは略0に等しい(I1=I2=0)。このため、第1導電パターン70aの有無に起因するコントラスト(輝度差)が殆どない。すなわち、第1導電パターン70aに金属細線16を適用する場合と比べて、上記した影響を殆ど受けることはない。
一方、図22Aは、本実施の形態に係る第1センサ部60a(図5A及び図6参照)の概略平面図である。第1センサ部60aは、第1導電パターン70a及び第1ダミーパターン76aで構成されている。
図22Bは、第1センサ部60aに入射された外光122の経路を表す概略説明図である。本図は、図22Aに示す第1導電パターン70aの境界Bd近傍での概略断面図に相当する。
位置P1に対応する位置Q1に関しては、図21Bと同様であるので説明を割愛する。位置P2に対応する位置Q2に関しても同様である。
位置P3に対応する位置Q3において、表示装置40(図4参照)の外部から照射された外光122は、第1ダミー電極部15a(非透光性材料である金属細線16)の表面で、反射成分138として矢印Z1方向に略全て反射される。すなわち、導電シート11は、第2導電部14bでの金属細線16の有無にかかわらず、位置Q2と同じ程度に外光122を反射する。
その結果、図22Cに示すように、反射光量Irは、第1感知部72aの規則的配置によらず、Ir=I2とする一様な特性を有する。なお、第1導電部14aと第1ダミー電極部15aとの離間部において、反射光量Irが若干(ε)減少する傾向がみられる。この離間部の幅を小さくすることで、第1感知部72aの形状が一層視認されにくくなる。
以上のように、隣接する第1導電パターン70a同士の第1隙間部75aに配置された第1ダミーパターン76aの配線密度を、第1導電パターン70aの配線密度に等しくしたので、一方の主面側からの外光122に対する第1ダミーパターン76aの平面領域内での光反射率は、第1導電パターン70aの平面領域内での光反射率に略一致する。すなわち、第1感知部72aの規則的配置によらず、反射光(反射成分134、138)の強度分布を一様に近づけることが可能である。これにより、透明基体12の両面に金属細線16からなる電極を形成した構成であっても、反射光源としての外光122に起因する第1感知部72a(又は第2感知部72b)の視認を抑制できる。
図23は、本実施の形態に係る導電シート10、11を製造する製造装置310の概略構成ブロック図である。
製造装置310は、メッシュパターン20に応じた模様(配線形状)を表す画像データImg(出力用画像データImgOutを含む。)を作成する画像生成装置312と、画像生成装置312により作成された出力用画像データImgOutが表す模様を具現化すべく、製造工程下の導電シート(感光材料140;図35A参照)の一主面に第1光144aを照射して露光する第1光源148aと、出力用画像データImgOutに基づいて感光材料140の他主面に第2光144bを照射して露光する第2光源148bと、画像データImgを作成するための各種条件(メッシュパターン20又はブラックマトリクス34の視認情報を含む。)を画像生成装置312に入力する入力部320と、入力部320による入力作業を補助するGUI画像や、記憶された出力用画像データImgOut等を表示する表示部322とを基本的に備える。
画像生成装置312は、画像データImg、出力用画像データImgOut、候補点SPの位置データSPd、及びシード点SDの位置データSDdを記憶する記憶部324と、擬似乱数を発生して乱数値を生成する乱数発生部326と、乱数発生部326により生成された乱数値を用いて、所定の二次元画像領域の中からシード点SDの初期位置を選択する初期位置選択部328と、乱数値を用いて二次元画像領域の中から候補点SPの位置(シード点SDの位置を除く。)を決定する更新候補位置決定部330と、出力用画像データImgOutから第1画像データ及び第2画像データ(後述する。)をそれぞれ切り出す画像切り出し部332と、表示部322に各種画像を表示する制御を行う表示制御部334とを備える。
シード点SDは、更新対象でない第1シード点SDNと、更新対象である第2シード点SDSとからなる。換言すれば、シード点SDの位置データSDdは、第1シード点SDNの位置データSDNdと、第2シード点SDSの位置データSDSdとから構成されている。
なお、CPU等で構成される図示しない制御部は、記録媒体(図示しないROM又は記憶部324)に記録されているプログラムを読み出し実行することで、この画像処理に関する各制御を実現可能である。
画像生成装置312は、入力部320から入力された視認情報(詳細は後述する。)に基づいてメッシュパターン20に応じた画像情報を推定する画像情報推定部336と、画像情報推定部336から供給された画像情報及び記憶部324から供給されたシード点SDの位置に基づいてメッシュパターン20に応じた模様を表す画像データImgを作成する画像データ作成部338と、画像データ作成部338により作成された画像データImgに基づいてメッシュ形状22の模様を評価するための評価値EVPを算出するメッシュ模様評価部340(評価値算出部)と、メッシュ模様評価部340により算出された評価値EVPに基づいて、シード点SD及び評価値EVP等のデータの更新/非更新、又は、出力用画像データImgOutの決定可否を指示するデータ更新指示部342(画像データ決定部)と、をさらに備える。
以下、メッシュパターン20の出力形成に供される画像データの作成方法について、図24のフローチャート及び図23の構成ブロック図を主に参照しながら説明する。
ステップS1において、入力部320は、メッシュパターン20の配線形状の決定に必要な各種情報を入力する。作業者は、表示部322を介して、メッシュパターン20の視認性に関わる視認情報を入力する。メッシュパターン20の視認情報は、メッシュパターン20の形状や光学濃度に寄与する各種情報であり、例えば、金属細線16の材質、色値、光透過率、光反射率、断面形状及び太さのうち少なくとも1つが含まれてもよい。また、透明基体12の材質、色値、光透過率、光反射率、及び膜厚のうち少なくとも1つが含まれてもよい。
そして、画像情報推定部336は、入力部320から入力された各種情報に基づいて、メッシュパターン20に応じた画像情報を推定する。例えば、メッシュパターン20の縦サイズと出力用画像データImgOutの画像解像度とに基づいて、出力用画像データImgOutの縦方向の画素数を算出できる。また、配線の幅と画像解像度とに基づいて金属細線16の線幅に相当する画素数を算出できる。さらに、金属細線16の光透過率と、透明基体12の光透過率と、目標とする全体透過率と、配線の幅とに基づいて、開口部18の個数を推定するとともに、シード点SDの個数を推定できる。
次いで、出力用画像データImgOutを作成する(ステップS2)。出力用画像データImgOutの作成方法の説明に先立って、画像データImgの評価方法について始めに説明する。本実施の形態では、ノイズ特性(例えば、粒状ノイズ)を定量化した評価値EVPに基づいて評価を行う。
図25は、人間の標準視覚応答特性の一例を表すグラフである。
本実施の形態では、人間の標準視覚応答特性として、明視状態下、観察距離300mmでのドゥーリー・ショー(Dooley-Shaw)関数を用いている。ドゥーリー・ショー関数は、VTF(Visual Transfer Function)の一種であり、人間の標準視覚応答特性を模した代表的な関数である。具体的には、輝度のコントラスト比特性の2乗値に相当する。なお、グラフの横軸は空間周波数(単位:cycle/mm)であり、縦軸はVTFの値(単位は無次元)である。
観察距離を300mmとすると、0〜1.0cycle/mmの範囲ではVTFの値は一定(1に等しい。)であり、空間周波数が高くなるにつれて次第にVTFの値が減少する傾向がある。すなわち、この関数は、中〜高空間周波数帯域を遮断するローパスフィルタとして機能する。
なお、実際の人間の視覚応答特性は、0cycle/mm近傍で1より小さい値になっており、いわゆるバンドパスフィルタの特性を有する。しかし、本実施の形態において、図25に例示するように、極めて低い空間周波数帯域であってもVTFの値を1にすることで、評価値EVPへの寄与度を高くしている。これにより、メッシュパターン20の繰り返し配置に起因する周期性を抑制する効果が得られる。
基準評価値EV0は、スペクトルSpcの値をF(Ux,Uy)とするとき、次の式(5)で算出される。
ウィナー・ヒンチン(Wiener-Khintchene)の定理によれば、スペクトルSpcを全空間周波数帯域で積分した値は、RMSの2乗値に一致する。このスペクトルSpcに対してVTFを乗算し、この新たなスペクトルSpcを全空間周波数帯域で積分した値は、人間の視覚特性に略一致する評価指標となる。この評価値EVPは、人間の視覚応答特性で補正したRMSということができる。通常のRMSと同様に、評価値EVPは、常に0以上の値を取り、0に近づくほどノイズ特性が良好であるといえる。
評価値EVPは、基準評価値EV0の他、上述した第1評価値EV1、第2評価値EV2及び第3評価値EV3を用いて、計算してもよい。
たとえばEV1、EV2、EV3などの評価値は一度、Aを10点、Bを8点、Cを5点、Dを0点などのようにスコア化してから、その総和をトータルスコアとして算出してもよい。
さらに、角度方向のスペクトルSpc(第1評価値EV1)、各開口部18の面積分布(第2評価値EV2)又は所定方向に沿った重心位置(第3評価値EV3)についてのばらつき程度は、種々の統計値で定量化してもよい。ここで、「統計値」とは、統計学的手法を用いて算出した計算値であり、例えば、標準偏差(RMS)の他、平均値、最頻値、中心値、最大値、最小値等であってもよい。また、ヒストグラム等のような統計的処理を行った後、その形状等からばらつき程度を定量化してもよい。
以下、上記した評価値EVPに基づいて出力用画像データImgOutを決定する具体的方法について説明する。例えば、複数のシード点SDからなるドットパターンの作成、複数のシード点SDに基づく画像データImgの作成、及び評価値EVPによる評価を順次繰り返す方法を用いることができる。ここで、複数のシード点SDの位置を決定するアルゴリズムは、種々の最適化手法を採り得る。例えば、ドットパターンを決定する最適化問題として、構成的アルゴリズムや逐次改善アルゴリズム等の種々の探索アルゴリズムを用いることができる。具体例として、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、擬似焼きなまし法、ボイド・アンド・クラスター法等が挙げられる。
本実施の形態では、擬似焼きなまし法(Simulated Annealing;以下、SA法という。)によるメッシュパターン20の模様の最適化方法について、図26のフローチャート、図23の機能ブロック図を主に参照しながら説明する。なお、SA法は、高温状態で鉄を叩くことで頑健な鉄を得る「焼きなまし法」を模した確率的探索アルゴリズムである。
ステップS21において、初期位置選択部328は、シード点SDの初期位置を選択する。初期位置の選択に先立って、乱数発生部326は、擬似乱数の発生アルゴリズムを用いて乱数値を発生する。そして、初期位置選択部328は、乱数発生部326から供給された乱数値を用いて、シード点SDの初期位置をランダムに決定する。ここで、初期位置選択部328は、シード点SDの初期位置を画像データImg上の画素のアドレスとして選択し、シード点SDが互いに重複しない位置にそれぞれ設定する。
ステップS22において、画像データ作成部338は、初期データとしての画像データImgInitを作成する。画像データ作成部338は、記憶部324から供給されたシード点SDの個数や位置データSDd、並びに画像情報推定部336から供給された画像情報に基づいて、メッシュパターン20に応じた模様を表す画像データImgInit(初期データ)を作成する。
画像データImg(画像データImgInitを含む。)の作成に先立ち、画素のアドレス及び画素値の定義を予め決定しておく。
図27Aは、画像データImgにおける画素アドレスの定義を表す説明図である。例えば、画素サイズが10μmであり、画像データの縦横の画素数はそれぞれ8192個とする。後述するFFTの演算処理の便宜のため、2の冪乗(例えば、2の13乗)となるように設けている。このとき、画像データImgの画像領域全体は、約82mm四方の矩形領域に対応する。
図27Bは、画像データImgにおける画素値の定義を表す説明図である。例えば、1画素当たりの階調数を8ビット(256階調)とする。光学濃度0を画素値0(最小値)と対応させ、光学濃度4.5を画素値255(最大値)と対応させておく。その中間の画素値1〜254では、光学濃度に対して線形関係となるように値を定めておく。なお、画素値の定義は、光学濃度のみならず、三刺激値XYZやRGB、L***等の色値であってもよい。
このようにして、画像データ作成部338は、画像データImgのデータ定義と、画像情報推定部336で推定された画像情報に基づいて、メッシュパターン20に応じた画像データImgInitを作成する(ステップS22)。
画像データ作成部338は、シード点SDの初期位置(図28A参照)を基準とする種々の領域決定アルゴリズム(例えば、ボロノイ図、ドロネー図等)を用いて、図28Bに示すメッシュパターン20の初期状態を決定する。
ところで、画像データImgのサイズが極めて大きい場合、最適化のための演算処理量が莫大になるので、画像生成装置312の処理能力及び処理時間を必要とする。また、画像データImg(出力用画像データImgOut)のサイズが大きくなるので、これを格納するメモリ容量も必要となる。そこで、所定の境界条件を満たす単位画像データImgEを規則的に配置することで、画像データImgに繰り返し形状を持たせる手法が有効である。以下、その具体的方法について、図29及び図30を参照しながら詳細に説明する。
図29は、単位領域90の端部における模様の決定方法を示す概略説明図である。図30は、単位画像データImgEを規則的に配列し、画像データImgを作成した結果を示す概略説明図である。
図29に示すように、概略正方形状の単位領域90において、その右上隅部、左上隅部、左下隅部、及び右下隅部には、点P11〜点P14がそれぞれ配置されている。説明の便宜のため、単位領域90内に存在する点P11〜点P14の4点のみ表記し、その他の点を省略した。
単位領域90の右方には、単位領域90と同じサイズの仮想領域92(破線で示す。)が隣接して配置されている。仮想領域92上には、単位領域90内の点P12の位置に対応するように、仮想点P22が配置されている。また、単位領域90の右上方には、単位領域90と同じサイズの仮想領域94(破線で示す。)が隣接して配置されている。仮想領域94上には、単位領域90内の点P13の位置に対応するように、仮想点P23が配置されている。さらに、単位領域90の上方には、単位領域90と同じサイズの仮想領域96(破線で示す。)が隣接して配置されている。仮想領域96上には、単位領域90内の点P14の位置に対応するように、仮想点P24が配置されている。
以下、画像データ作成部338は、この条件下において、単位領域90の右上隅部における模様(配線形状)をボロノイ図(分割法)に従って決定する。
点P11と仮想点P22との関係において、両方の点からの距離が等しい点の集合である1つの区画線97が決定される。また、点P11と仮想点P24との関係において、両方の点からの距離が等しい点の集合である1つの区画線98が決定される。さらに、仮想点P22と仮想点P24との関係において、両方の点からの距離が等しい点の集合である1つの区画線99が決定される。この区画線97〜99によって、単位領域90の右上隅部における模様が画定される。同様にして、単位領域90の端部のすべてにわたって模様が画定される。以下、このように作成された単位領域90内の画像データを単位画像データImgEという。
図30に示すように、単位画像データImgEを、同じ向きに、且つ、縦方向及び横方向に規則的に配列することで、平面領域100内に画像データImgが作成される。図29に示す境界条件に従って模様を決定したので、単位画像データImgEの上端と下端との間で、及び、単位画像データImgEの右端と左端との間で、それぞれ継ぎ目なく繋げることができる。
このように構成することで、単位画像データImgEの小サイズ化が可能であり、演算処理量及びデータサイズを低減できる。また、継ぎ目の不整合に起因するモアレが発生することがない。なお、単位領域90の形状は、図29及び図30に示す正方形に限られず、矩形、三角形、六角形等、隙間なく配列可能な形状であれば種類は問わない。
ステップS23において、メッシュ模様評価部340は、初期値としての評価値EVPInitを算出する。なお、SA法において、評価値EVPは、対価関数(Cost Function)としての役割を担う。メッシュ模様評価部340は、画像データImgInitに対してFFT(Fast Fourier Transformation)を施してスペクトルSpcを得た後、該スペクトルSpcに基づいて評価値EVPを算出する。また、メッシュパターン20を決定するための目標レベル(許容範囲)や評価関数に応じて、評価値EVPの算出式を種々変更し得ることはいうまでもない。
ステップS24において、記憶部324は、ステップS22で作成された画像データImgInitをImgとして、ステップS23で算出された評価値EVPInitをEVPとして、それぞれ一時的に記憶する。あわせて、擬似温度Tに初期値nΔT(nは自然数、ΔTは正の実数である。)を代入する。
ステップS25において、メッシュ模様評価部340は、変数Kを初期化する。すなわち、Kに0を代入する。
次いで、シード点SDの一部(第2シード点SDS)を候補点SPに置き換えた状態で、画像データImgTempを作成し、評価値EVPTempを算出した後に、シード点SDの「更新」又は「非更新」を判断する(ステップS26)。このステップS26について、図31のフローチャート及び図23の機能ブロック図を参照しながら、更に詳細に説明する。
ステップS261において、更新候補位置決定部330は、所定の平面領域100から候補点SPを抽出し、決定する。更新候補位置決定部330は、例えば、乱数発生部326から供給された乱数値を用いて、画像データImgにおけるシード点SDのいずれの位置とも重複しない位置を決定する。なお、候補点SPの個数は1つであっても複数であってもよい。図32Aに示す例では、現在のシード点SDが8個(点P1〜P8)に対して、候補点SPは2個(点Q1と点Q2)である。
ステップS262において、シード点SDの一部と候補点SPとを無作為に交換する。更新候補位置決定部330は、各候補点SPと交換(あるいは更新)される各シード点SDを無作為に対応付けておく。図32Aでは、点P1と点Q1とが対応付けられ、点P3と点Q2とが対応付けられたとする。図32Bに示すように、点P1と点Q1とが交換されるとともに、点P3と点Q2とが交換される。ここで、交換(あるいは更新)対象でない点P2、点P4〜P8を第1シード点SDNといい、交換(あるいは更新)対象である点P1及び点P3を第2シード点SDSという。
ステップS263において、画像データ作成部338は、交換された新たなシード点SD(図32B参照)、及び、画像情報推定部336で推定された画像情報(ステップS1の説明を参照)に基づいて、画像データImgTempを作成する。このとき、ステップS22(図26参照)の場合と同一の方法を用いるので、説明を割愛する。
ステップS264において、メッシュ模様評価部340は、画像データImgTempに基づいて、評価値EVPTempを算出する。このとき、ステップS23(図26参照)の場合と同一の方法を用いるので、説明を割愛する。
ステップS265において、データ更新指示部342は、シード点SDの位置の更新確率Probを算出する。ここで、「位置の更新」とは、ステップS262で暫定的に交換して得たシード点SD(すなわち、第1シード点SDN及び候補点SP)を新たなシード点SDとして決定することをいう。
具体的には、メトロポリス基準に従って、シード点SDを更新する確率又は更新しない確率をそれぞれ算出する。更新確率Probは、次の式(6)で与えられる。
ここで、Tは擬似温度を表し、絶対温度(T=0)に近づくに従って、シード点SDの更新則が確率論的から決定論的に変化する。
ステップS266において、データ更新指示部342は、算出された更新確率Probに従って、シード点SDの位置を更新するか否かについて判断する。例えば、乱数発生部326から供給された乱数値を用いて、確率的に判断してもよい。データ更新指示部342は、シード点SDを更新する場合は「更新」の旨を、更新しない場合は「非更新」の旨を記憶部324側にそれぞれ指示する(ステップS267、S268)。
このようにして、シード点SDの一部(第2シード点SDS)を候補点SPに置き換える(更新)か否か(非更新)を判断するステップS26が完了する。
図26に戻って、シード点SDの位置の「更新」及び「非更新」のうちいずれか一方の指示に従って、シード点SDを更新するか否かが判定される(ステップS27)。シード点SDを更新する場合は次のステップS28に進み、シード点SDを更新しない場合は、ステップS28を省略して、ステップS29に進む。
ステップS28において、シード点SDを更新する場合、記憶部324は、現在記憶している画像データImgに対し、ステップS263で求めた画像データImgTempを上書き更新する。また、記憶部324は、現在記憶している評価値EVPに対し、ステップS264で求めた評価値EVPTempを上書き更新する。さらに、記憶部324は、現在記憶している第2シード点SDSの位置データSDSdに対し、ステップS261で求めた候補点SPの位置データSPdを上書き更新する。その後、次のステップS29に進む。
ステップS29において、データ更新指示部342は、現時点でのKの値を1だけ加算する。
ステップS30において、データ更新指示部342は、現時点でのKの値と予め定められたKmaxの値との大小関係を比較する。Kの値の方が小さい場合はステップS26まで戻り、以下ステップS26〜S29を繰り返す。K>Kmaxを満たす場合、次のステップS31に進む。
ステップS31において、データ更新指示部342は、擬似温度TをΔTだけ減算する。なお、擬似温度Tの変化量は、ΔTの減算のみならず、定数δ(0<δ<1)の乗算であってもよい。この場合は、上記式(6)に示す確率Prob(下段)が一定値だけ減算される。
ステップS32において、データ更新指示部342は、現時点での擬似温度Tが0に等しいか否かを判定する。Tが0と等しくない場合はステップS25に戻って、以下ステップS25〜S31を繰り返す。一方、Tが0に等しい場合、データ更新指示部342は、記憶部324に対してSA法による評価が終了した旨を通知する。
ステップS33において、記憶部324は、ステップS28で最後に更新された画像データImgの内容を出力用画像データImgOutに上書き更新する。このように、出力用画像データImgOutの作成(ステップS2)を終了する。
複数の異なるメッシュ形状22を配列したメッシュパターン20の模様を表す画像データImgを作成し、画像データImgに基づいて、スペクトルSpcについての角度方向に沿ったばらつき程度について定量化した第1評価値EV1を算出し、第1評価値EV1及び所定の評価条件に基づいて1つの画像データImgを出力用画像データImgOutとして決定するようにしたので、所定の評価条件を満たすノイズ特性を有する各メッシュ形状22を決定できる。換言すれば、メッシュパターン20の形状を適切に制御することで、モアレの発生を抑制できる。
また、複数の開口部18を備えるメッシュパターン20の模様を表す画像データImgを作成し、画像データImgに基づいて各開口部18の面積分布のばらつき程度について定量化した第2評価値EV2を算出し、第2評価値EV2及び所定の評価条件に基づいて1つの画像データImgを出力用画像データImgOutとして決定するようにしたので、所定の評価条件を満たすノイズ特性を有する各開口部18の形状を決定できる。換言すれば、メッシュパターン20の形状を適切に制御することで、ノイズ粒状感及び色ノイズの発生を両立して抑制できる。
さらに、異なるメッシュ形状22を配列したメッシュパターン20の模様を表す画像データImgを作成し、画像データImgに基づいて各メッシュ形状22の重心位置のばらつき程度について定量化した第3評価値EV3を算出し、第3評価値EV3及び所定の評価条件に基づいて1つの画像データImgを出力用画像データImgOutとして決定するようにしたので、所定の評価条件を満たすノイズ特性を有する各メッシュ形状22を決定できる。換言すれば、メッシュパターン20の形状を適切に制御することで、ノイズ粒状感及びモアレの発生を両立して抑制できる。
出力用画像データImgOutは、タッチパネル44の他、無機EL素子、有機EL素子、あるいは太陽電池等の各種電極の配線形状であってもよい。また、電極以外にも、電流を流すことで発熱する透明発熱体(例えば、車両のデフロスタ)、電磁波を遮断する電磁波シールド材にも適用可能である。
図24に戻って、最後に、画像切り出し部332は、出力用画像データImgOutが表す平面領域100の形状(メッシュパターン20の模様)から、2以上の第1導電パターン70a、2以上の第1ダミーパターン76a、及び2以上の第2導電パターン70bをそれぞれ切り出す(ステップS3)。
図33Aは、各第1導電パターン70a及び各第1ダミーパターン76aを切り出した結果を示す概略説明図である。図33Bは、各第2導電パターン70bを切り出した結果を示す概略説明図である。
図33Aに示す平面領域100の中から第1領域R1(ハッチングが付された領域)を除く箇所を切り出すことで、透明基体12の一主面側(図2Bの矢印s1方向側)での模様を表す第1画像データが作成される。第1領域R1は、額縁状の菱形枠が、矢印X方向に複数個連結された形状を有する。すなわち、第1画像データは、2以上の第1導電パターン70a及び2以上の第1ダミーパターン76a(図6等参照)をそれぞれ表している。
また、図33Bに示す平面領域100の中から第2領域R2(ハッチングが付された領域)のみを切り出すことで、透明基体12の他主面側(図2Bの矢印s2方向側)での模様を表す第2画像データが作成される。第2画像データは、2以上の第2導電パターン70b(図7等参照)をそれぞれ表している。なお、第2領域R2を除く残余の領域(図33Bに示す平面領域100内の余白領域)は、各第1導電パターン70aの位置にそれぞれ対応する。
図33A及び図33Bでは、平面領域100は、図30と比べて、所定角度(例えば、θ=45°)だけ傾けた状態で配置されている。すなわち、単位画像データImgEの配列方向と、各第1導電パターン70a(又は各第2導電パターン70b)の延在方向とのなす角θが、非0(0°<θ<90°)である関係にされている。このように、各第1導電パターン70a(又は各第2導電パターン70b)は、メッシュパターン20の繰り返し形状の配列方向に対して所定角度θだけ傾けて形成されることで、各第1感知部72a(又は各第2感知部72b)と繰り返し形状との間のモアレの発生を抑制できる。なお、モアレが発生しないのであれば、θ=0°であってもよいことは言うまでもない。同様の観点から、繰り返し形状のサイズは、各第1感知部72a(又は各第1感知部72b)のサイズよりも大きくすることが好ましい。
なお、作成された出力用画像データImgOut、第1画像データ及び第2画像データは、金属細線16の出力形成に用いられる。例えば露光を用いて導電シート10、11を製造する場合、出力用画像データImgOut、第1画像データ及び第2画像データは、フォトマスクのパターンの作製に用いられる。また、スクリーン印刷、インクジェット印刷を含む印刷により導電シート10、11を製造する場合、出力用画像データImgOut、第1画像データ及び第2画像データは、印刷用データとして用いられる。
次に、第1導電パターン70a、第1ダミーパターン76a、及び第2導電パターン70b(以下、第1導電パターン70a等という場合がある。)を形成する方法としては、例えば、透明基体12上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって、露光部及び未露光部にそれぞれ金属銀部及び光透過性部を形成して第1導電パターン70a等を形成するようにしてもよい。なお、さらに金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施すことによって金属銀部に導電性金属を担持させるようにしてもよい。図2Aに示す導電シート11に関し、以下に示す製造方法を好ましく採用することができる。すなわち、透明基体12の両面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層に対して一括露光を行って、透明基体12の一主面に第1導電パターン70a及び第1ダミーパターン76aを形成し、透明基体12の他主面に第2導電パターン70bを形成する。
この製造方法の具体例を、図34〜図36を参照しながら説明する。
先ず、図34のステップS101において、メッシュパターン20の出力形成に供される画像データを作成する。このステップは、図24のフローチャートに従って実行される。具体的方法について既に上述したので、ここの説明を割愛する。
図34のステップS102において、長尺の感光材料140を作製する。感光材料140は、図35Aに示すように、透明基体12と、該透明基体12の一方の主面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層(以下、第1感光層142aという)と、透明基体12の他方の主面に形成された感光性ハロゲン化銀乳剤層(以下、第2感光層142bという)とを有する。
図34のステップS103において、感光材料140を露光する。この露光処理では、第1感光層142aに対し、透明基体12に向かって光を照射して第1感光層142aを第1露光パターンに沿って露光する第1露光処理と、第2感光層142bに対し、透明基体12に向かって光を照射して第2感光層142bを第2露光パターンに沿って露光する第2露光処理とが行われる(両面同時露光)。図34Bの例では、長尺の感光材料140を一方向に搬送しながら、第1感光層142aに第1光144a(平行光)を第1フォトマスク146aを介して照射すると共に、第2感光層142bに第2光144b(平行光)を第2フォトマスク146bを介して照射する。第1光144aは、第1光源148aから出射された光を途中の第1コリメータレンズ150aにて平行光に変換されることにより得られ、第2光144bは、第2光源148bから出射された光を途中の第2コリメータレンズ150bにて平行光に変換されることにより得られる。
図35Bの例では、2つの光源(第1光源148a及び第2光源148b)を使用した場合を示しているが、1つの光源から出射した光を光学系を介して分割して、第1光144a及び第2光144bとして第1感光層142a及び第2感光層142bに照射してもよい。
そして、図34のステップS104において、露光後の感光材料140を現像処理する。第1感光層142a及び第2感光層142bの露光時間及び現像時間は、第1光源148a及び第2光源148bの種類や現像液の種類等で様々に変化するため、好ましい数値範囲は一概に決定することができないが、現像率が100%となる露光時間及び現像時間に調整されている。
そして、本実施の形態に係る製造方法のうち、第1露光処理は、図36に示すように、第1感光層142a上に第1フォトマスク146aを例えば密着配置し、該第1フォトマスク146aに対向して配置された第1光源148aから第1フォトマスク146aに向かって第1光144aを照射することで、第1感光層142aを露光する。第1フォトマスク146aは、透明なソーダガラスで形成されたガラス基板と、該ガラス基板上に形成されたマスクパターン(第1露光パターン152a)とで構成されている。従って、この第1露光処理によって、第1感光層142aのうち、第1フォトマスク146aに形成された第1露光パターン152aに沿った部分が露光される。第1感光層142aと第1フォトマスク146aとの間に2〜10μm程度の隙間を設けてもよい。
同様に、第2露光処理は、第2感光層142b上に第2フォトマスク146bを例えば密着配置し、該第2フォトマスク146bに対向して配置された第2光源148bから第2フォトマスク146bに向かって第2光144bを照射することで、第2感光層142bを露光する。第2フォトマスク146bは、第1フォトマスク146aと同様に、透明なソーダガラスで形成されたガラス基板と、該ガラス基板上に形成されたマスクパターン(第2露光パターン152b)とで構成されている。従って、この第2露光処理によって、第2感光層142bのうち、第2フォトマスク146bに形成された第2露光パターン152bに沿った部分が露光される。この場合、第2感光層142bと第2フォトマスク146bとの間に2〜10μm程度の隙間を設けてもよい。
第1露光処理及び第2露光処理は、第1光源148aからの第1光144aの出射タイミングと、第2光源148bからの第2光144bの出射タイミングを同時にしてもよいし、異ならせてもよい。同時であれば、1度の露光処理で、第1感光層142a及び第2感光層142bを同時に露光することができ、処理時間の短縮化を図ることができる。
最後に、図34のステップS105において、現像処理後の感光材料140にラミネート処理を施すことで、導電シート11が完成する。具体的には、第1感光層142a側に第1保護層26aを形成するとともに、第2感光層142b側に第2保護層26bを形成する。これにより、第1センサ部60a、第2センサ部60bの保護になる。
このように、上述の両面一括露光を用いた製造方法を用いることで、タッチパネル44の電極を容易に形成可能であり、タッチパネル44の薄型化(低背化)を図ることができる。
上述した例は、感光性ハロゲン化銀乳剤層を用いて第1導電パターン70a等を形成する製造方法であるが、その他の製造方法としては、以下のような製造方法がある。
例えば、透明基体12上に形成された銅箔上のフォトレジスト膜を露光、現像処理してレジストパターンを形成し、レジストパターンから露出する銅箔をエッチングすることによって、第1導電パターン70a等を形成するようにしてもよい。あるいは、透明基体12上に金属微粒子を含むペーストを印刷し、ペーストに金属めっきを行うことによって、第1導電パターン70a等を形成するようにしてもよい。あるいは、透明基体12上に、第1導電パターン70a等をスクリーン印刷版又はグラビア印刷版によって印刷形成するようにしてもよい。あるいは、透明基体12上に、第1導電パターン70a等をインクジェットにより形成するようにしてもよい。
続いて、本実施の形態に係る導電シート11の変形例(第1〜第4変形例)について、図37〜図42を参照しながら説明する。なお、変形例において本実施の形態と同一である構成要素には、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略し、以下同様とする。
[第1変形例]
タッチパネル160は、静電容量方式ではなく、抵抗膜方式(更には、デジタル方式、アナログ方式)に適用されてもよい。以下、図37〜図39を参照しながら、構造及び動作原理について説明する。
デジタル抵抗膜方式のタッチパネル160は、下側パネル162と、下側パネル162に対向して配置された上側パネル164と、下側パネル162及び上側パネル164の周縁部で貼り合わせ、且つ、両者を電気的に絶縁する額縁接着層166と、下側パネル162及び上側パネル164に挟持されたFPC168(Flexible Printed Circuits)とを備える。
図37及び図38Aに示すように、上側パネル164は、可撓性を有する材質(例えば、樹脂)からなる第1透明基体170aと、その一主面(矢印Z2方向側)に形成された第1センサ部172a及び第1端子配線部174aとを有する。第1センサ部172aは、複数の金属細線16でそれぞれ形成された、2以上の第1導電パターン176aを有する。帯状の第1導電パターン176aは、矢印Y方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に等間隔に配列されている。各第1導電パターン176aは、第1端子配線部174aを介して、FPC168に電気的に接続されている。各第1導電パターン176a間には、帯状の第1ダミーパターン178aがそれぞれ配置されている。
図37及び図38Bに示すように、下側パネル162は、高剛性の材質(例えば、ガラス)からなる第2透明基体170bと、その一主面(矢印Z1方向側)に形成された第2センサ部172b及び第2端子配線部174bと、第2センサ部172b上に所定間隔で配置された多数のドットスペーサ180とを有する。第2センサ部172bは、複数の金属細線16でそれぞれ形成された、2以上の第2導電パターン176bを有する。帯状の第2導電パターン176bは、矢印X方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に等間隔に配列されている。各第2導電パターン176bは、第2端子配線部174bを介して、FPC168に電気的に接続されている。各第2導電パターン176b間には、帯状の第2ダミーパターン178bがそれぞれ配置されている。
図37及び図39に示すように、上側パネル164及び下側パネル162を貼り合わせた状態において、各ドットスペーサ180を介して、第1センサ部172aは、第2センサ部172bと所定間隔だけ離間して配されている。そして、各第1導電パターン176aと各第2導電パターン176bがそれぞれ交差することで、略正方形の重複領域182が多数形成される。さらに、各第1ダミーパターン178aと各第2ダミーパターン178bがそれぞれ交差する位置に、ドットスペーサ180がそれぞれ配置されている。すなわち、各重複領域182の四隅に、ドットスペーサ180が1つずつ配置された位置関係にある。
次いで、タッチパネル160の動作について説明する。入力面(第1透明基体170aの矢印Z1側主面)からの押圧を受けて、可撓性を有する第1透明基体170aが凹状に撓まされる。そうすると、押圧位置に最も近い4つのドットスペーサ180に囲まれた、1つの重複領域182に対応する部位で、第1導電パターン176aの一部が、第2導電パターン176bの一部と接触する。この状態下で、FPC168を介して電圧を印加することで、上側パネル164と下側パネル162との間に電位勾配が発生する。すなわち、FPC168を介して、上側パネル164から電圧を読み取ることで、矢印X方向(X軸)の入力位置が検出可能である。同様に、下側パネル162から電圧を読み取ることで、矢印Y方向(Y軸)の入力位置が検出可能である。
ここで、第1導電パターン176a(又は第2導電パターン176b)の幅w3は、解像度に応じて種々設定してもよく、例えば1〜5mm程度が好ましい。第1ダミーパターン178a(又は第2ダミーパターン178b)の幅w4は、第1導電パターン176a(又は第2導電パターン176b)との絶縁性及びタッチパネル160の感度の観点から、50〜200μmの範囲が好ましい。
図38A及び図38Bに示すシングルハッチング領域(第1導電パターン176a及び第2導電パターン176b)、並びにダブルハッチング領域(第1ダミーパターン178a及び第2ダミーパターン178b)の一部を拡大すると、図2Aに示すメッシュパターン20の構造が現れることとなる。すなわち、上側パネル164及び下側パネル162を重畳した状態下で、モアレ発生の抑制及びノイズ粒状感の低減を両立可能な配線形状を決定しておくことが好ましい。
[第2変形例]
第1導電パターン192a及び/又は第2導電パターン192bの輪郭形状は、本実施の形態と異なる形状であってもよい。以下、第1感知部72a(図5A参照)及び第2感知部72b(図5B参照)を形成することなく、平面視において巨視的に概略格子状の模様を有する第1センサ部190a及び第2センサ部190bについて、図40A及び図40Bを参照しながら説明する。
図40Aは第1センサ部190a(第1導電部14a、第1ダミー電極部15a)の部分拡大図であり、図40Bは第2センサ部190b(第2導電部14b、第2ダミー電極部15b)の部分拡大図である。説明の便宜のため、図40A及び図40Bにおいて、複数の金属細線16で形成されるメッシュパターン20の輪郭のみを単線で表記している。すなわち、図40A及び図40Bに示す各単線の一部を拡大すると、図2Aに示すメッシュパターン20の構造が現れることとなる。
図40Aに示すように、第1センサ部190aに対応する部位には、複数の金属細線16で形成された2以上の第1導電パターン192aを有する。第1導電パターン192aは、矢印Y方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印Y方向に直交する矢印X方向に等間隔で配列されている。また、第1導電パターン192aは、第2導電パターン70b(図5B参照)とは異なり、略一定の線幅を有している。各第1導電パターン192aの間には、格子状の第1ダミーパターン194がそれぞれ配置されている。第1ダミーパターン194は、矢印Y方向に延在し且つ等間隔で配置された4本の長線パターン196と、4本の長線パターン196にそれぞれ交差して配置された多数の短線パターン198とから構成される。各短線パターン198はいずれも同じ長さを有しており、4本を繰り返し単位として、矢印Y方向に対し等間隔に並設されている。
図40Bに示すように、第2センサ部190bに対応する部位には、複数の金属細線16で形成された2以上の第2導電パターン192bを有する。第2導電パターン192bは、矢印X方向にそれぞれ延在し、且つ、矢印X方向に直交する矢印Y方向に等間隔で配列されている。また、第2導電パターン192bは、第1導電パターン70a(図5A参照)とは異なり、略一定の線幅を有している。各第2導電パターン192bの間には、矢印X方向に伸びる直線状の第2ダミーパターン200が多数配置されている。各第2ダミーパターン200はいずれも同じ長さを有しており、4本を繰り返し単位として、矢印Y方向に対し等間隔に並設されている。
すなわち、平面視において、第1センサ部190a(図40A参照)及び第2センサ部190b(図40B参照)に形成される模様が相互に補完することで、格子要素202を単位とする格子形状が完成する。このように構成しても、本発明と同様の作用効果が得られる。
[第3変形例]
導電シート210は、2枚のシート部材(第1シート部材212a及び第2シート部材212b)から構成されてもよい。
図41に示すように、導電シート210は、下方から順番に、第2シート部材212b及び第1シート部材212aを積層して構成されている。第1シート部材212aは、第1透明基体12aの一主面(矢印s1方向側)に形成された第1導電部14a及び第1ダミー電極部15aを有する。第2シート部材212bは、第2透明基体12bの一主面(矢印s1方向側)に形成された第2導電部14bを有する。すなわち、第1透明基体12aの一主面(矢印s1方向側)上に第1導電部14a等が形成され、且つ、第1透明基体12aの他主面(矢印s2方向側)上に第2導電部14b等が形成された一形態であると言える。
このように導電シート210を構成しても、本実施の形態と同様の作用効果が得られる。なお、第1シート部材212aと第2シート部材212bとの間に他の層が介在してもよい。また、第1導電部14aと第2導電部14bとが、あるいは、第1ダミー電極部15aと第2導電部14bとが絶縁状態であれば、それらが対向して配置されてもよい。
[第4変形例]
導電シート220には、片面側のみならず、両面側にダミー電極部(第1ダミー電極部15a及び第2ダミー電極部15b)を設けてもよい。
図42に示すように、透明基体12の他方の主面(矢印s2方向側)には、第2導電部14bのみならず、第2ダミー電極部15bが形成されている。ここで、第2ダミー電極部15bは、第2導電部14bと所定間隔だけ離間して配置されている。すなわち、第2ダミー電極部15bは、第2導電部14bと電気的に絶縁された状態下にある。
このように、透明基体12の両面側にダミー電極部を設けることで、表示装置40(図4参照)に導電シート220を組み込む際、表裏いずれの配置であっても本発明の作用効果が得られる。逆に、生産コストの観点から、透明基体12の両面にダミー電極部を設けない形態を採ってもよい。
本実施の形態に係る導電シート10、11の製造方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
(1) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(2) 物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(3) 物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像銀であり、高比表面のフィラメントである点で後続するめっき又は物理現像過程で活性が高い。
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面の小さい球形である。
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に光透過性導電性膜等の透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社、1955年刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Processes, 4th ed.」(Mcmillan社、1977年刊行)に解説されている。本件は液処理に係る発明であるが、その他の現像方式として熱現像方式を適用する技術も参考にすることができる。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号の各公報、特願2004−244080号、同2004−085655号の各明細書に記載された技術を適用することができる。
ここで、本実施の形態に係る導電シート10、11の各層の構成について、以下に詳細に説明する。
[透明基体12]
透明基体12としては、プラスチックフイルム、プラスチック板、ガラス板等を挙げることができる。
上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)を含むポリエステル類、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
透明基体12としては、融点が約290℃以下であるプラスチックフイルム、又はプラスチック板が好ましく、特に、光透過性や加工性等の観点から、PETが好ましい。
[銀塩乳剤層]
第1積層部28a及び第2積層部28bの金属細線16となる銀塩乳剤層は、銀塩とバインダの他、溶媒や染料等の添加剤を含有する。
<1.銀塩>
本実施の形態に用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本実施の形態においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
銀塩乳剤層の塗布銀量(銀塩の塗布量)は、銀に換算して1〜30g/m2が好ましく、1〜25g/m2がより好ましく、5〜20g/m2がさらに好ましい。この塗布銀量を上記範囲とすることで、導電シート10、11とした場合に所望の表面抵抗を得ることができる。
<2.バインダ>
本実施の形態に用いられるバインダとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
本実施の形態の銀塩乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。銀塩乳剤層中のバインダの含有量は、銀/バインダ体積比で1/4以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。銀/バインダ体積比は、100/1以下が好ましく、50/1以下がより好ましい。また、銀/バインダ体積比は1/1〜4/1であることがさらに好ましい。1/1〜3/1であることが最も好ましい。銀塩乳剤層中の銀/バインダ体積比をこの範囲にすることで、塗布銀量を調整した場合でも抵抗値のばらつきを抑制し、均一な表面抵抗を有する導電シート10を得ることができる。なお、銀/バインダ体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダ量(重量比)を銀量/バインダ量(重量比)に変換し、さらに、銀量/バインダ量(重量比)を銀量/バインダ量(体積比)に変換することで求めることができる。
<3.溶媒>
銀塩乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
<4.その他の添加剤>
本実施の形態に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、公知のものを好ましく用いることができる。
[第1保護層26a、第2保護層26b]
第1保護層26a及び第2保護層26bとしては、透明基体12と同様に、プラスチックフイルム、プラスチック板、ガラス板等を挙げることができる。上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料としては、例えば、PET、PEN、PMMA、PP、PS、TAC等を用いることができる。
第1保護層26a及び第2保護層26bの厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、5〜100μmが好ましく、8〜50μmがより好ましく、10〜30μmが特に好ましい。
次に、導電シート10、11の作製方法の各工程について説明する。
[露光]
本実施の形態では、第1導電部14a、第2導電部14b及び第1ダミー電極部15a等を印刷方式によって施す場合を含むが、印刷方式以外は、第1導電部14a、第2導電部14b及び第1ダミー電極部15a等を露光と現像等によって形成する。すなわち、透明基体12上に設けられた銀塩含有層を有する感光材料又はフォトリソグラフィ用フォトポリマーを塗工した感光材料への露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
[現像処理]
本実施の形態では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
現像、定着処理を施した感光材料は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。
現像処理後の露光部に含まれる金属銀部の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
以上の工程を経て、導電シート10、11は得られる。現像処理後の導電シート10、11に対しては、さらにカレンダー処理を行ってもよく、カレンダー処理により所望の表面抵抗に調整することができる。得られた導電シート10、11の表面抵抗は0.1〜300オーム/sq.の範囲にあることが好ましい。
なお、表面抵抗は、導電シート10、11の用途によって異なる。例えば、タッチパネル用途の場合には、1〜70オーム/sq.であることが好ましく、5〜50オーム/sq.であることがより好ましく、5〜30オーム/sq.であることがさらに好ましい。また、電磁波シールド用途の場合には、10オーム/sq.以下であることが好ましく、0.1〜3オーム/sq.であることがより好ましい。
[物理現像及びめっき処理]
本実施の形態では、露光及び現像処理により形成された金属銀部の導電性を向上させる目的で、金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像及び/又はめっき処理を行ってもよい。本発明では物理現像又はめっき処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよく、物理現像とめっき処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させてもよい。なお、金属銀部に物理現像及び/又はめっき処理を施したものを含めて「導電性金属部」と称する。
本実施の形態における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオン等の金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフイルム、インスタントスライドフイルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
本実施の形態において、めっき処理は、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。本実施の形態における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術を用いることができ、例えば、プリント配線板等で用いられている無電解めっき技術を用いることができ、無電解めっきは無電解銅めっきであることが好ましい。
なお、本実施の形態に係る導電シート10、11の製造方法では、めっき等の工程は必ずしも行う必要はない。本製造方法では銀塩乳剤層の塗布銀量、銀/バインダ体積比を調整することで所望の表面抵抗を得ることができるからである。
[酸化処理]
本実施の形態では、現像処理後の金属銀部、並びに、物理現像及び/又はめっき処理によって形成された導電性金属部には、酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性を略100%にすることができる。
[現像処理後の硬膜処理]
銀塩乳剤層に対して現像処理を行った後に、硬膜剤に浸漬して硬膜処理を行うことが好ましい。硬膜剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類及びほう酸等の特開平2−141279号公報に記載のものを挙げることができる。
本実施の形態に係る導電シート10、11には、反射防止層やハードコート層等の機能層を付与してもよい。
[カレンダー処理]
現像処理済みの金属銀部にカレンダー処理を施して平滑化するようにしてもよい。これによって金属銀部の導電性が顕著に増大する。カレンダー処理は、カレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは通常一対のロールからなる。
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等のプラスチックロール又は金属ロールが用いられる。特に、両面に乳剤層を有する場合は、金属ロール同士で処理することが好ましい。片面に乳剤層を有する場合は、シワ防止の点から金属ロールとプラスチックロールの組み合わせとすることもできる。線圧力の下限値は、1960N/cm(200kgf/cm、面圧に換算すると699.4kgf/cm2)以上、さらに好ましくは2940N/cm(300kgf/cm、面圧に換算すると935.8kgf/cm2)以上である。線圧力の上限値は、6880N/cm(700kgf/cm)以下である。
カレンダーロールで代表される平滑化処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュパターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
[ラミネート処理]
第1センサ部60a、第2センサ部60bの保護のため、銀塩乳剤層上に保護層を形成してもよい。保護層と銀塩乳剤層との間に第1接着層24a(又は第2接着層24b)を設けることで、接着性の調整が自在となる。
第1接着層24a及び第2接着層24bの材料として、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等が挙げられる。特に、接着可能な材料の種類が豊富であり、且つ、貼り合わせ速度も早いドライラミネート接着剤が好ましい。ドライラミネート接着剤として、具体的には、アミノ樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、クロロプレンゴム接着剤、ニトリルゴム接着剤、エポキシ接着剤、ウレタン接着剤、反応型アクリル接着剤等を用いることができる。その中でも、アクリル系低酸価接着剤である住友スリーエム社製のOCA(Optical Clear Adhesive;登録商標)を用いることが好ましい。
乾燥条件は、30〜150℃の温度環境下で、1〜30分間であることが好ましい。乾燥温度は、50〜120℃が特に好ましい。
また、上記した接着層に代替して、透明基体12及び保護層の少なくともいずれかを表面処理することにより、層間接着力を調整することができる。銀塩乳剤層との接着力を高めるため、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、高周波照射処理、グロー放電照射処理、活性プラズマ照射処理、レーザ光線照射処理等を施してもよい。
なお、本発明は、下記表1及び表2に記載の公開公報及び国際公開パンフレットの技術と適宜組み合わせて使用することができる。「特開」、「号公報」、「号パンフレット」等の表記は省略する。
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
この実施例では、実施例1〜21、並びに比較例1、及び2に係る導電シート11について、これらを組み込んだ表示装置40での視認性(モアレ、ノイズ粒状感及び色ノイズ)をそれぞれ評価した。
<実施例1〜21、比較例1、2>
(ハロゲン化銀感光材料)
水媒体中のAg150gに対してゼラチン10.0gを含む、球相当径平均0.1μmの沃臭塩化銀粒子(I=0.2モル%、Br=40モル%)を含有する乳剤を調製した。
また、この乳剤中にはK3Rh2Br9及びK2IrCl6を濃度が10-7(モル/モル銀)になるように添加し、臭化銀粒子にRhイオンとIrイオンをドープした。この乳剤にNa2PdCl4を添加し、さらに塩化金酸とチオ硫酸ナトリウムを用いて金硫黄増感を行った後、ゼラチン硬膜剤と共に、銀の塗布量が10g/m2となるように透明基体(ここでは、屈折率n0=1.64であるポリエチレンテレフタレート(PET))上に塗布した。この際、Ag/ゼラチン体積比は2/1とした。
幅300mmのPET支持体に250mmの幅で20m分だけ塗布し、塗布幅の中央部240mmを残すように両端を30mmずつ切り落とし、ロール状のハロゲン化銀感光材料を得た。
(露光パターンの作成)
本実施の形態で説明したSA法(図26等参照)を用いて、多角形状のメッシュ形状22を隙間なく敷き詰めたメッシュパターン20(図2A参照)を表す出力用画像データImgOutを作成した。
メッシュパターン20の作製条件は、全体透過率93%、透明基体12の厚さを20μm、金属細線16の幅を12.5μm、金属細線16の厚さを10μmとした。単位領域90のサイズを縦横とも5mm、画像解像度を2032dpi(dot per inch)とした。シード点SDの初期位置は、メルセンヌ・ツイスタを用いてランダムに決定するとともに、多角形状の各メッシュ形状22は、ボロノイ図に従って決定した。図29及び図30に示した手法を用いて、単位画像データImgEを規則的に配置することで、繰り返し形状を有する出力用画像データImgOutを形成した。
次いで、図33A及び図33Bに示した通り、平面領域100内の配線形状を切り出すことで、第1領域R1を除く領域からなる第1露光パターンと、第2領域R2からなる第2露光パターンとをそれぞれ作成した。
比較のため、従来例に係るメッシュパターン4(図43A参照)、メッシュパターン6(図43B参照)を表す露光パターンも併せて作成した。これらを比較例1、2と称する。
(露光)
A4判サイズ(210mm×297mm)の透明基体12の両面に向けてそれぞれ露光を行った。露光は上記した第1露光パターン(第1導電部14a側に対応)及び第2露光パターン(第2導電部14b側に対応)のフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光した。
(現像処理)
・現像液1L処方
ハイドロキノン 20 g
亜硫酸ナトリウム 50 g
炭酸カリウム 40 g
エチレンジアミン・四酢酸 2 g
臭化カリウム 3 g
ポリエチレングリコール2000 1 g
水酸化カリウム 4 g
pH 10.3に調整
・定着液1L処方
チオ硫酸アンモニウム液(75%) 300 ml
亜硫酸アンモニウム・1水塩 25 g
1,3−ジアミノプロパン・四酢酸 8 g
酢酸 5 g
アンモニア水(27%) 1 g
pH 6.2に調整
上記処理剤を用いて露光済み感材を、富士フイルム社製自動現像機 FG−710PTSを用いて処理条件:現像35℃ 30秒、定着34℃ 23秒、水洗 流水(5L/分)の20秒処理で行った。
(ラミネート処理)
現像済み感材の両面に、シート状のPET(第1保護層26a及び第2保護層26b)を1枚ずつ貼り付けた。また、第1接着層24a及び第2接着層24b(図2B参照)として、市販の粘着テープ(NSS50−1310;新タック化成社製、厚さ50μm)を用いた。そして、第1保護層26a及び第2保護層26bを貼り付けた後、気泡の発生を防止するため、0.5気圧、40℃の環境下で20分間加熱し、オートクレーブ処理を施した。
[評価]
実施例1〜21、及び比較例1〜2に係る各サンプルを、表示ユニット30の表示画面上にそれぞれ貼り付けた。表示ユニット30として、市販のカラー液晶ディスプレイ(画面サイズ11.6型、1366×768ドット、画素ピッチは縦横とも約194μm)を用いた。表示ユニット30を表示制御して白色(最高輝度)を表示させた状態下で、3名の研究員が、表示画面の視認性に関する官能評価をそれぞれ実施した。なお、表示画面からの観察距離を300mmに、室内照度を300lxにそれぞれ設定した。
ここでは、実施例1〜6及び比較例1〜2に係る各サンプルに対しては、第1評価値EV1による評価を行った。また、実施例7〜14及び比較例1〜2に係る各サンプルに対しては、第2評価値EV2による評価を行った。また、実施例15〜18及び比較例1〜2に係る各サンプルに対しては、第3評価値EV3による評価を行った。実施例19〜21及び比較例1〜2に係る各サンプルに対しては、第1、第2及び第3評価値EV1,EV2及びEV3による総合評価を行った。
第1評価値EV1による評価(主としてモアレの評価)
モアレの観点から評価した。モアレが顕在化しなかった場合を「A」評価、モアレが殆ど顕在化しなかった場合を「B」評価、モアレが視認されたが問題のないレベルであった場合を「C」評価、モアレが顕在化した場合を「D」評価とした。そして、各研究員による評価の平均をもって、モアレの評価結果とした。
第2評価値EV2による評価(主として色ノイズの評価)
色ノイズの観点で複合的な評価を行った。色ノイズが目立たなかった場合を「A」評価、色ノイズが殆ど目立たなかった場合を「B」評価、色ノイズが視認されたが問題のないレベルであった場合を「C」評価、色ノイズが目立った場合を「D」評価とした。そして、各研究員による評価の平均をもって、ざらつき感及び色ノイズの評価結果とした。
第3評価値EV3による評価(色ノイズ、モアレの双方のバランスの評価)
モアレ及び色ノイズの観点で複合的な評価を行った。両方とも目立たなかった場合を「A」評価、両方とも殆ど目立たなかった場合を「B」評価、いずれか一方が視認されたが問題のないレベルであった場合を「C」評価、両方とも目立った場合を「D」評価とした。そして、各研究員による評価の平均をもって、ざらつき感(色ノイズ)及びモアレの評価結果とした。
(各評価値の算出)
入力解像度が2032dpiであるスキャナ装置を用いて、導電シート11に形成されるメッシュパターン20の一部を表す256階調の画像データを取得した。この画像データから、一辺が2の冪乗に相当する画素数、例えば一辺が512画素のサイズを有する単位正方画像を無作為に切り出した。そして、この単位正方画像を上下方向及び左右方向に交互に折り返して配置することで、メッシュ形状22を隙間なく配列した模様を表す評価用データを作成した。尚、線幅が12.5μmを下回る場合においては、取り込んだ画像の濃度情報によりパターン形状を特定できる為、2値化を行うことで評価値の算出が可能である。なぜならメッシュの開口部のサイズに比べて、濃度情報から得られる線の位置の不確定差が相対的に無視できるレベルであるからである。
なお、高速フーリエ変換の演算には、FFTW(Fastest Fourier Transformation in the West)を用いた。上記した手順に沿って一定サイズの評価用データを作成することで、使用アルゴリズムが一意に定まり、安定した変換結果を得ることができる。具体的には、図43に示すプログラムのコードに従って、FFTの演算を施している。
[結果]
実施例1〜21、及び比較例1〜8に係る各サンプルを用いた、表示ユニット30の表示画面の視認性に関する官能評価の結果を、次の表3、表4、表5、及び表6に示す。なお、表3は、実施例1〜6及び比較例1〜2の第1評価値EV1による評価結果を示す。表4は、実施例7〜14及び比較例1〜2の第2評価値EV2による評価結果を示す。表5は、実施例15〜18及び比較例1〜2の第3評価値EV3による評価結果を示す。表6は、実施例19〜21及び比較例1〜2の第1、第2及び第3評価値EV1、EV2及びEV3による各評価結果及び総合評価(画質評価)結果を示す。
表3に示す実施例1〜6は、それぞれメッシュ開口部の重心位置を変更することにより、異方性バラツキを示す第1評価値EV1の値をふったパターンであり、主としてモアレを評価するためのものである。
表3に示すように、実施例1〜6は、本発明の第1評価値EV1の数値限定範囲(0.965〜1.065)を満足するものであり、評価結果がA〜Cであり、モアレが全く視認されないか、視認されてもほとんど問題にならないレベルのものであった。即ち、実施例3は、評価がAであり、モアレが顕在化しなかった。また、実施例2、4及び5は、評価がいずれもBであり、モアレが殆ど顕在化しなかった。さらに、実施例1及び6は、評価がいずれもCであり、モアレが視認されたが問題のないレベルであった。
これに対し、比較例1及び2は、本発明の第1評価値EV1の上記数値限定範囲から外れており、評価がいずれもDであり、モアレが顕在化していることがわかった。また、これらは、色ノイズが顕在化しているものもあった。
表4に示す実施例7〜14は、メッシュ開口部の重心数を変更することにより、面積バラツキの値をふったパターンであり、主として色ノイズを評価するためのものである。
表4に示すように、実施例7〜14は、本発明の第2評価値EV2の数値限定範囲(0.017mm2(110.2ピクセル)〜0.038mm2(240ピクセル))を満足するものであり、評価結果がA〜Cであり、色ノイズが全く視認されないか、視認されてもほとんど問題にならないレベルのものであった。即ち、実施例9及び10は、評価がいずれもAであり、色ノイズが目立たなかった。また、実施例8、11及び12は、評価がいずれもBであり、色ノイズが殆ど目立たなかった。さらに、実施例7、13、14は、評価がいずれもCであり、色ノイズが視認されたが問題がないレベルであった。
これに対し、比較例1及び2は、本発明の第2評価値EV2の上記数値限定範囲から外れており、評価がいずれもDであり、色ノイズがいずれも目立っていた。
表5に示す実施例15〜18は、規則的な重心の位置にバラツキを持たせるようにすることにより、重心位置を変化させたパターンであり、モアレ及び色ノイズを評価するためのものである。
表5に示すように、実施例15〜18は、本発明の第3評価値EV3の数値限定範囲(15μm(1.2ピクセル)以上)を満足するものであり、評価結果がA及びCであり、色ノイズ及びモアレの両方とも全く視認されないか、視認されてもほとんど問題にならないレベルのものであった。即ち、実施例16〜18は、評価がいずれもAであり、色ノイズ及びモアレの両方とも目立たなかった。また、実施例15は、評価がCであり、色ノイズ及びモアレのいずれか一方が視認されたが問題がないレベルであった。
これに対し、比較例1及び2は、本発明の第3評価値EV3の上記数値限定範囲から外れており、評価がいずれもDであり、モアレがいずれも目立っていた。
表6に示す実施例19〜21は、第1、第2及び第3評価値EV1、EV2及びEV3の3つの値を変化させたパターンであり、モアレ及び色ノイズを総合的に評価するためのものである。
表6に示すように、実施例19〜21は、本発明の第1、第2及び第3評価値EV1、EV2及びEV3の上記の各数値限定範囲を満足するものであり、評価結果がA〜Cであり、色ノイズ及びモアレの両方とも全く視認されないか、視認されてもほとんど問題にならないレベルのものであった。即ち、実施例20は、各評価値の評価がいずれもAであり、総合評価もAであり、色ノイズ及びモアレの両方とも目立たなかった。また、実施例21は、各評価値の評価がB、C及びAであり、総合評価がBであり、色ノイズ及びモアレの両方とも殆ど目立たなかった。さらに、実施例19は、各評価値の評価がB、C及びCであり、総合評価がCであり、色ノイズ及びモアレのいずれか一方が視認されたが問題がないレベルであった。
これに対し、比較例1及び2は、本発明の第1、第2及び第3評価値EV1、EV2及びEV3がいずれも上記の各数値限定範囲から外れており、各評価値の評価がいずれもDであり、また、総合評価がいずれもDであり、モアレ及び色ノイズがいずれも目立っていた。
以上の表3及び表6から明らかなように、メッシュパターン20のスペクトルSpcにおける角度方向(φ方向)に沿った異方性AI(r)の、動径方向(r方向)にわたる標準偏差を、0.965以上であり1.065以下の範囲内に、即ちこのスペクトルSpcをこの範囲内に収まるように調整することで、モアレの発生を大幅に抑制できる。
また、以上の表4及び表6から明らかなように、メッシュパターン20の各開口部18(あるいは、各メッシュ形状22)の面積の標準偏差を、0.017mm2以上0.038mm2以下の範囲内に、即ち面積分布をこの範囲内に収まるように調整することで、色ノイズの発生を抑制できる。
さらに、以上の表5及び表6から明らかなように、メッシュパターン20の各開口部18(あるいは、各メッシュ形状22)の重心位置分布Cに関して、基準軸430(X’軸)に沿って配置された各重心位置Pc1〜Pc9の、交差軸432(Y’軸)に対する位置の平均2乗偏差についての標準偏差を、15.0μm以上の範囲内に、即ち位置の平均2乗偏差についての標準偏差をこの範囲内に適度に調整することで、色ノイズ及びモアレの発生をバランスよく抑制できる。
なお、この発明は、上述した実施の形態及び実施例に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
10、11、210、220、230…導電シート
12…透明基体
12a、170a…第1透明基体 12b、170b…第2透明基体
14a…第1導電部 14b…第2導電部
16(p、q、r、s)…金属細線 18…開口部
20、232…メッシュパターン 22…メッシュ形状
26a…第1保護層 26b…第2保護層
28a…第1積層部 28b…第2積層部
30…表示ユニット 32…画素
40…表示装置 44、160…タッチパネル
70a、176a、192a…第1導電パターン
70b、176b、192b…第2導電パターン
72a…第1感知部 72b…第2感知部
78a…第1メッシュ要素 78b…第2メッシュ要素
82…ポリゴン 90…単位領域
100…平面領域 310…製造装置
312…画像生成装置 328…初期位置選択部
330…更新候補位置決定部 332…画像切り出し部
336…画像情報推定部 338…画像データ作成部
Img…画像データ Imgc…重心画像データ
Spc…スペクトル Spcc…重心スペクトル

Claims (10)

  1. 基体と、
    前記基体の主面の少なくとも一方に形成され、複数の金属細線からなる導電部と、
    を有し、
    前記導電部により、平面視で、形状が異なる複数の開口部を配列したメッシュパターンが形成され、
    前記複数の開口部の各々の重心位置の二次元分布に関して、所定方向に沿って配置された各前記重心位置の、前記所定方向の垂直方向に対する位置の平均2乗偏差についての標準偏差は、15.0μm以上であることを特徴とする導電シート。
  2. 前記複数の開口部の各々の重心位置の二次元分布に関して、各々の前記重心位置の、前記所定方向の垂直方向に対する位置の平均2乗偏差についての標準偏差は、54.62μm以上である請求項1に記載の導電シート。
  3. 前記メッシュパターンのパワースペクトルにおける角度方向に沿った標準偏差の、常用対数で表される値の動径方向にわたる標準偏差は、0.965以上であり1.065以下である請求項1又は2に記載の導電シート。
  4. 前記メッシュパターンのパワースペクトルにおける角度方向に沿った標準偏差の、動径方向にわたる標準偏差は、0.97以上であり1.06以下である請求項3に記載の導電シート。
  5. 前記導電部は、
    前記基体の一方の主面に形成され、複数の金属細線からなる第1導電部と、
    前記基体の他方の主面に形成され、複数の金属細線からなる第2導電部と、を有し、
    前記メッシュパターンは、
    前記第1導電部及び前記第2導電部を組み合わせることで形成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電シート。
  6. さらに、前記一方の主面の上に設けられた、前記第1導電部を被覆する第1保護層と、
    前記他方の主面の上に設けられた、前記第2導電部を被覆する第2保護層と、
    を有し、
    前記第1保護層に対する前記基体の相対屈折率、及び/又は前記第2保護層に対する前記基体の相対屈折率は0.86以上であり1.15以下である請求項5に記載の導電シート。
  7. さらに、前記一方の主面に形成され、前記第1導電部と電気的に絶縁された複数の金属細線からなる第1ダミー電極部をさらに有し、
    前記第1導電部は、一方向に配置され、それぞれ複数の第1感知部が接続された第1導電パターンを複数有し、前記第1ダミー電極部は、隣接する前記第1導電パターン同士の隙間部に配置された第1ダミーパターンを複数有し、
    前記第1ダミーパターンの配線密度は、前記第1導電パターンの配線密度に等しい請求項5又は6に記載の導電シート。
  8. 前記導電部は、
    前記基体の一方の主面に形成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電シート。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電シートと、
    前記導電シートの主面側からの接触位置又は近接位置を検出する検出制御部と、を備えることを特徴とするタッチパネル。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電シートと、
    前記導電シートの一方の主面側からの接触位置又は近接位置を検出する検出制御部と、
    表示信号に基づいて表示画面上に画像を表示する表示部と、
    を備え、
    前記導電シートは他方の主面側を前記表示部に対向させて、前記表示画面上に配置されていることを特徴とする表示装置。
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