JP5968338B2 - 無段変速機用駆動ベルト - Google Patents

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Description

本発明は、無段変速機で使用する駆動ベルトに関する。この無段変速機は、2つの可変プーリを有する。各々のプーリは、円周のV字溝を規定している。駆動ベルトは、一般的に2つのバンド組から成る無端の坦持体と、金属製の複数の横方向エレメントとを備える。各々のバンド組は、少なくとも1つだが一般的には複数の、同心的に組み込まれた、比較的薄く且つ平坦な無端の金属製バンドを有している。横方向エレメントは、バンド組に、当該バンド組に対して摺動するように配置されている。各々の横方向エレメントは、1つ又は複数の凹部又は切り欠き部を備える。横方向エレメントの第1の部分が半径方向内方に又はバンド組の下方に延在し、横方向エレメントの第3の部分が半径方向外方に又はバンド組の上方に延在し、且つ横方向エレメントの第2の部分がその第1の部分と第3の部分との間に配置されてこれら後者2つの部分を一体に連結するようにして、各々の切り欠き部は各々のバンド組を収容している。この型式の駆動ベルトは、欧州特許出願公開第0014013号明細書から公知である。
横方向エレメントに関して方向を説明するとき、例えば図2において正面図で図示されるように、横方向エレメントが直立位置にあることが常に想定される。この図において、駆動ベルトの周方向又は延在方向は、図平面に対し直角を成している。図2の平面において、横方向又は幅方向は左から右であり、半径方向又は高さ方向は上から下である。
バンド組の金属製バンドは、当該バンド組が最終的に疲労破壊されるまで、繰り返し且つ可変に、曲げられ且つ引っ張られる、ということが技術的によく知られている。そのような疲労破壊は、一般的に、バンド組の半径方向で最も内側のバンドの半径方向内側の面における弱点で、最初に生じる。なぜなら、そのような面は、横方向エレメントとの接触による応力を、付加的に受けるからである。これらの見識は、例えば、欧州特許出願公開第1273824号明細書で説明されている。この欧州特許出願公開第1273824号明細書は、半径方向で最も内側のバンドの半径方向内側の面が受ける上述の接触応力を補償するために、この面における曲げ応力を減少することを提案している。実際に、この効果を獲る為に、幾つか他の解決策が技術的に提案されている。
しかしながら、バンド組の構造、即ちバンド組の半径方向で最も内側バンドの構造がその疲労強度を改善するために公知技術に関連して変更される場合、疲労破壊の始まりが、バンド組の半径方向で最も外側のバンドの半径方向外側の面に移る可能性がある、ということが実際に観察されてきた。さらに、幾つかの例では、バンド組全体としての疲労強度は、それによって殆ど改善されなかった。この状況に対し、欧州特許出願公開第1273824号明細書はさらに、バンド組の半径方向で最も外側のバンドの半径方向外側の面における曲げ応力を減少し、それによって半径方向で最も外側のバンドの疲労強度も改善し、ひいてはバンド組全体としての疲労強度を改善することを、提案している。しかしながら、バンド組全体としての疲労強度を改善するための、この後者の公知解決手段におけるデメリットは、その半径方向で最も外側のバンドが、バンド組における他のバンドとは異なる加工を必要とすることにある。当然ながら、このことによって、駆動ベルトの製造工程における複雑度とコストが、不都合に付加される。
本発明の目的は、特に、バンド組の半径方向で最も外側のバンドの疲労強度を改善すること、有利には、結果として駆動ベルトの耐用年数を改善することである。特に、このような目的は、好ましくは、駆動ベルト全体としてのコスト及び/又は複雑度を、製造に付加することなく達成されるべきである。
本発明によれば、バンド組に対する横方向エレメントの移動に基づく、頭部とバンド組の半径方向で最も外側のバンドの半径方向外側の面との物理的な接触が、バンド組の幅方向中央又はバンド組の中心線を越えて、横方向エレメントの首部から離れる方を向いた、その側面の方で生じるように、横方向エレメント、特にその頭部を設計することによって、上述の目的が達成されてもよい。
本発明は、バンド組の半径方向で最も外側のバンドの疲労破壊が、実際に、幅方向又は横方向において、そのバンドの中央又は中央近くで最初に生じる傾向があるという見解に基づいている。実際に、特に、僅かに凸状の横断面形状とバンドの内部応力とを考慮するとき、その曲げによるそこでの応力の理論的な解析は、最も高い応力が、バンドが伸ばされている(即ち直線傾向にある)ときにはバンドの半径方向内側の面の横方向で生じ、バンドが凸状に曲げられているときにはバンドの半径方向外側の面の中央で生じる、ということを裏付ける。
上述の実務的な見解と理論的な解析から、駆動ベルトにおいて、横方向エレメントの第3の部分又は頭部とバンド組の半径方向で最も外側のバンドとの接触は、曲げ応力が最も高くなるバンドの中央で、なるべく生じるべきではないという見識がもたらされる。さらに、そのような接触は、横方向エレメントの第2の部分の近くにも、なるべく位置されるべきではない。なぜなら、その第2の部分に起因して、駆動ベルトの不安定さ及び/又は一体性の欠如が生じるからである。そのような接触は、例えば、横方向エレメントがバンド組に対して半径方向内方に移動するとき、又は横方向エレメントがバンド組に対して駆動ベルトの延在方向を中心に回転するときに生じる。
従って、本発明によれば、横方向エレメントの第3の部分とバンド組との接触は、その第2の部分から見て、バンド組の半径方向で最も外側のバンドの中央を十分に越えて、例えばバンド組の幅の3分の2の位置で、有利には生じるべきである。
本発明を説明するために、駆動ベルトの典型的な実施形態が、図面に基づいて記載されている。
2つのプーリ上を走行する駆動ベルトを有する無段変速機の概略的に示す。 その延在方向で見た、駆動ベルトの横断面を示す。 駆動ベルトの横方向エレメントの、幅方向を向いた図を示す。 その延在方向で見た駆動ベルトの断面を、ベルトのバンド組に対して回転した位置にある横方向エレメントとともに示す。 本発明による横方向エレメントの断面を概略的に示す。 本発明による横方向エレメントの詳細を概略的に示す。
図1における無段変速機の概略的な図は、駆動ベルト3を示している。駆動ベルト3は、2つのプーリ1,2上を走行し、閉じたバンド組31を有している。バンド組31は、当該バンド組31の周上に配置された横方向エレメント32の、実質的に連続した列を支えている。図示された位置において、上側のプーリ1は、下側のプーリ2よりも速く回転する。2つの部分間の距離、この場合、各々のプーリ1,2を構成する円錐円板4,5間の距離を変更することによって、各々のプーリ1,2上での駆動ベルト3の、いわゆる走行半径Rが変更され得る。結果として、2つのプーリ1,2間の速度差が、望まれるように変更され得る。このことは、変速機の入力軸6と出力軸7との間の回転速度差を変更する、公知の手段である。
図2において、駆動ベルト3が、延在方向を向いてその横断面で示されている。この図は、横断面で示された2つのバンド組31の存在を示している。このバンド組31は、駆動ベルト3の横方向エレメント32を支持するとともに案内する。1つの横方向エレメント32が、図2において正面図で示されている。駆動ベルト3における、横方向エレメント32及びバンド組31は、一般的に金属、通常は鋼から製造されている。横方向エレメント32は移動することができ、即ちバンド組31の延在方向Lに沿って摺動することができる。これによって、変速機プーリ1,2間で力が伝達されるとき、この力は、横方向エレメント32が互いに押圧し合い、横方向エレメント32が互いを駆動ベルト3及びプーリ1,2の回転方向で前方に押し合うことによって、伝達される。
バンド組31は、駆動ベルト3を一体に保持する。この特定の実施形態において、バンド組31は、8枚の独立した無端のバンドから構成されている。この無端のバンドは、バンド組31を形成するために、互いに同心的に組み込まれている。実際に、バンド組31は、6枚から12枚の無端のバンドを備え得る。
図3において側面図でも示される横方向エレメント32は、2つの切り欠き部33を備える。この切り欠き部33は、互いに反対側に配置され、エレメント32の横方向反対側を向いて開口している。各々の切り欠き部33は、2つのバンド組31の各々の1つを収容する。従って、横方向エレメント32の第1の部分又は基部34は、高さ方向Hで、切り欠き部33から半径方向内方に、又は切り欠き部33の下方に延在している。横方向エレメント32の第2の部分又は首部35は、切り欠き部33の間に、及び/又は切り欠き部33と同じ(半径方向)高さで配置されている。横方向エレメント32の第3の部分又は頭部36は、高さ方向Hで、切り欠き部33から半径方向外方に、又は切り欠き部33の上方に延在している。各々の切り欠き部33の下方又は半径方向内方は、横方向エレメント32の基部34における、いわゆる支え面42によって範囲を定められている。支え面42は、ほぼ頭部36の方向で、半径方向外方又は上方を向いている。支え面42は、一般的に、駆動ベルト3の幅方向W及び/又は延在方向Lで、凸状の曲率を有している。支え面42の曲率半径は、一般的に支え面42の寸法に比べて大きく、実際には、図2及び図3の尺度内若しくは尺度では認識できない。
横方向エレメント32の基部34の側面又はプーリ接触面37は、互いに対して角度φで方向付けられている。この角度φは、変速機プーリ1,2の円錐円板4,5間で規定されたV字角度φ(図1参照)に、少なくともほぼ対応している。
駆動ベルト3の延在方向Lを向いている、横方向エレメント32の第1の面又は後側主要面38は、実質的に平坦である。いわゆる揺動端部又は傾倒端部18は、反対側を向いて、横方向エレメント32の第2の面又は前側主要面39に設けられている。揺動端部18の上方で高さ方向Hにおいて、横方向エレメント32は、側面視で、実質的に一定の厚さを有している。揺動端部18の下方で高さ方向Hにおいて、基部34は、横方向エレメント32の下部側に向かって先細りになっている。揺動端部18は、一般的に、横方向エレメント32の前側主要面39において、僅かに湾曲した区分の形態で設けられている。駆動ベルト3において、横方向エレメント32の前側主要面39は、隣接する横方向エレメント32の後側主要面38に、揺動端部18の位置で接触する。この接触は、プーリ1,2間で伸長している駆動ベルト3の直線部分と、変速機プーリ1,2の円錐プーリ円板4,5間に位置する駆動ベルト3の湾曲部分との両方で生じる。
横方向エレメント32は、その前側主要面39に突出部40と、その後側主要面38に孔41とを備える。駆動ベルト3における、2つの隣接する横方向エレメント32の突出部40及び孔41は、隣接する第1の横方向エレメント32の突出部40がその第2の横方向エレメント32の孔41内に少なくとも部分的に差し込まれる、という意味で互いに係合し合っている。これによって、2つの隣接する横方向エレメント32間での相対的な直線移動、及び/又は2つの隣接する横方向エレメント32の回転は、突起40及び孔41間に設けられた間隙に制限される。
変速機の作動中、駆動ベルト3の横方向エレメント32は、バンド組31に対して、当該バンド組31の周面に沿ってだけ移動することができるのではなく、半径方向内方にも移動することができるし、バンド組31に関して横方向及び/又は延在方向を中心に回転することもできる。横方向エレメント32におけるこれら後者の相対移動は、横方向エレメント32と、バンド組31の一方又は両方との物理的相互作用によって制限される。さらに詳細には、そのような相対移動は、横方向エレメント32の基部34と頭部36との両方が、バンド組31と接触するまでの間でのみ可能である。この場合、バンド組31は、作動中に強く引っ張られており、従って広範囲に亘り剛体であることを表している。
そのような相対移動の例は、図4に、横方向エレメント32の回転C(示された例では、駆動ベルト3の長手方向又は延在方向Lを中心にした時計回転C)によって示されている。しかしながら、この例は、図示の目的で、バンド組31と横方向エレメント32との間の高さ方向Hでの間隙が、誇張された大きさで示されている。図4では、バンド組31に対する横方向エレメント32の回転Cが、確かに、横方向エレメント32の基部34が位置Aで左側のバンド組31と接触し、且つ横方向エレメント32の頭部36が位置Bで右側のバンド組31と接触することによって制限される、ということを表している。本発明によれば、これらの接触位置A及びBにおいて、バンド組31は、横方向エレメント32との接触によって(付加的に)応力を受ける。
どのような場合でもバンド組31の凸形状よりも明白な、支え面42の凸状湾曲又は凸形状によって、一方のバンド組31と横方向エレメント32の基部34との接触位置Aは、一方のバンド組31の幅方向Wの中央に又は少なくとも中央付近に位置している。即ち、接触位置Aは、有利には、バンド組31の半径方向内側の面で生じ、且つバンド組31の側面に又は側面近傍に位置する、最も高い曲げ応力から離れて位置している。しかしながら、他方のバンド組31と横方向エレメント32の頭部36との接触位置Bも、他方のバンド組31の幅方向Wの中央に又は少なくとも中央付近に位置している。即ち、接触位置Bは、バンド組31の半径方向外側の面で生じ、且つバンド組31の幅方向の中央に位置する、最も高い曲げ応力の位置とだいたい合致している。結果的に、横方向エレメント32の頭部36と他方のバンド組31との接触によって、曲げにより既に高い応力が加えられている位置Bにおいて、バンド組31に付加的な応力が加えられる。結果として、バンド組31の半径方向で最も外側のバンドは、少なくともバンド組31の別のバンドと比較して、疲労破壊による早期故障を被る可能性がある。この点において、理想的に、即ち駆動ベルト3の最善の耐用年数を実現するために、バンド組31の全てのバンドに均等に荷重が加えられ且つ/又は応力が加えられることが指摘される。
従って、本発明に関連して、横方向エレメント32は、バンド組31に対する横方向エレメント32の動きについて、バンド組31が横方向エレメント32の各々の頭部36を介してバンド組31の幅方向中央地点Mから離れた位置Bで接触するように、設計されている。駆動ベルト3全体としての安定性及び/又は一体性を損なうことがないように、接触位置Bは、横方向エレメント32の幅方向中央から見てバンド組31の幅方向中央地点Mを越えて、即ち横方向エレメント32の首部35から各々のバンド組31に向かう方向で見てバンド組31の幅方向中央地点Mを越えて位置すべき、ということがさらに必要である。このようにして設計された横方向エレメント32は、図5に示されている。
さらに、本発明を定量化するために、接触位置Bが、バンド組31の全幅の3分の2を超えて位置する、有利には、バンド組31の横方向外側面43から測定したとき、バンド組31の全幅の4分の1以内に位置するということが考慮される。
支え面42における凸形状を考慮すると、本発明の機能的要件は、横方向エレメント32の頭部36が、下方に即ち基部34に向かって、仮想的に凹状に湾曲した円弧42aを越えて延在しないように設計されるということを、構造的に要求する。この円弧42aは、支え面42(の凸状の湾曲)に対応して形成され、横方向エレメント32の頭部36と各々のバンド組31との(意図された)接触位置Bで、頭部36に接している。この構造的な要件は、本発明に関連する横方向エレメント32の詳細を示す図6で、図式的に説明されている。
1,2 プーリ
3 駆動ベルト
4,5 円錐円板
6 入力軸
7 出力軸
18 揺動端部
31 バンド組
32 横方向エレメント
33 切り欠き部
34 基部
35 首部
36 頭部
37 プーリ接触面
38 後側主要面
39 前側主要面
40 突出部
41 孔
42 支え面
42a 仮想的な凹状の円弧
43 横方向外側面
A,B 接触位置
C 回転
H 高さ方向
L 延在方向
M バンド組の幅方向中央地点
W 幅方向

Claims (3)

  1. 無端の担持体(31)と、該担持体(31)に摺動自在に設けられた複数の横方向エレメント(32)とを有する駆動ベルト(3)であって、
    前記担持体(31)は、少なくとも1つの、略リボン状の金属製バンドを有し、
    前記横方向エレメント(32)の各々は、2つの主要面(38,39)と、少なくとも1つの凹部(33)と、前記凹部(33)の下方に配置される第1の部分又は基部(34)と、前記凹部(33)の高さにある第2の部分又は首部(35)と、前記凹部(33)の上方に配置される第3の部分又は頭部(36)と、を有し、
    前記横方向エレメント(32)は前記2つの主要面(38,39)の間を厚さ方向に延在しており、前記担持体(31)は前記凹部(33)内に配置されている、駆動ベルト(3)において、
    前記無端の担持体(31)と、前記凹部(33)の位置で前記担持体(31)を支持するための、前記横方向エレメント(32)の基部(34)における支え面(42)とが共に、前記駆動ベルト(3)の横方向で湾曲されており、
    前記支え面(42)は、前記担持体(31)より大きく湾曲されており、
    前記支え面(42)に対して前記凹部(33)の反対側に配置される、前記横方向エレメント(32)の頭部(36)の下面は、横方向に凹状に湾曲されており、
    前記頭部(36)の下面の凹状の曲率半径は、前記基部(34)の支え面(42)の凸状の曲率半径よりも小さく、
    それによって、前記横方向エレメント(32)の頭部(36)は、前記担持体(31)と、当該担持体(31)の中央地点で接触せず、前記横方向エレメント(32)の首部(35)から離れる方向で見て、前記担持体(31)の全幅の3分の2を超えた位置で、少なくとも、前記担持体(31)に対する前記横方向エレメント(32)の半径方向内方への移動のとき、又は前記駆動ベルト(3)の延在方向軸線及び/又は横方向軸線における仮想軸線を中心にした、前記担持体(31)に対する前記横方向エレメント(32)の回転のときに接触することを特徴とする、駆動ベルト(3)。
  2. 前記接触は、前記横方向エレメント(32)の首部(35)から離れる方向で見て、前記担持体(31)の全幅の4分の3の位置、又は前記担持体(31)の全幅の4分の3を超えた位置で生じることを特徴とする、請求項1記載の駆動ベルト(3)。
  3. 前記横方向エレメント(32)の頭部(36)の下面は、前記支え面(42)の凸状輪郭線に対応して形成される仮想線(42a)に接触するが交わらず、かつ、前記仮想線(42a)に一箇所だけで接することを特徴とする、請求項1又は2記載の駆動ベルト(3)。
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