JP5965096B2 - 鋼管の成形装置及び成形方法 - Google Patents
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上記SQロールの成形スタンドは、被成形材を挟んだ2か所以上に配置したロールが用いられおり、各ロールの位置は、成形開始前に、スクリュージャッキによって手動で移動させたり、エンコーダによるパルスカウントを利用して電動モータの駆動力で移動させたりして、成形すべき鋼管の外周長に応じた位置に予め調整しておくのが通常である。
そこで、各ロールの位置変動と突合せ部や溶接のアップセットの位置変動との関係についてさらに検証を重ねたところ、成形ロールの位置が変動すると、被成形材に対して適切な加圧ができず、突合せ部の溶接後の鋼管の外周長が変動するため、溶接前の被成形材の両エッジの位置や間隔が変動していることが判明した。これによって、突合せ部の位置が適切な位置から前後左右にずれて、該突合せ部に対して適正な位置及び範囲の加熱・溶融が行われないことがわかった。また、突合せ部の溶接後の鋼管の外周長が変動すると、溶接部加圧時において溶鋼の排出量が変動するため、溶接ビードの大きさが変動して、溶接品質がばらつくこともわかった。
これらの検証の結果から、発明者らは、被成形材の材料の強度変動や板厚変動に関わらず、成形中における各ロールの位置変動を抑えて鋼管の外周長ができる限り一定の長さとなるようにすることにより、突合せ部の位置ずれが抑えられ、適正な溶接を安定的に行うことができ、また突合せ部溶接後の溶鋼の排出量の変動も抑えられて溶接品質のばらつきを抑止できるとの知見を得るに至った。
しかしながら、特許文献1の装置を用いた場合、被成形材のエッジの切り子や、溶接時に発生する酸化スケール、溶接スパッタなどがロール間に入り込み、その噛み込みによるロール間の間隔の変動や焼きつきが生じる可能性が高い上、バックアップロールを設ける分、装置全体が大型化するという欠点もあり、実用性に乏しい。特に、ロール間の間隔が開いてしまうと、成形中においては間隔調整等の対応をとることが困難であるため、やはり被成形材の外周長の変動が通管速度に関わらず発生し、溶接が不安定となる。
また、上記一対のサイドロール2,3の回転軸を回転自在に支持する左右のサイドロール用軸受部材5,6と、各軸受部材5,6が固定された左右の軸受基体部7,8と、上記一対のトップロール4,4の回転軸を回転自在に支持するトップロール用軸受部材9.9と、これらトップロール用軸受部材9,9が固定された単一の上方側軸受基体部10、及び該上方側軸受基体10が取付けられた昇降部材11と、上記左右の軸受基体部6,7と昇降部材11の外方側を囲むように設けられたスタンド12と、該スタンド12が取付けられた基台13とを有している。
なお、この実施の形態の成形装置は、被成形材1の上部に位置する突合せ部14に対して電縫溶接する際に使用されるSQロールとして使用している例を示しており、この成形装置における通管方向の上流側の近傍には、図示しない溶接手段が配設されている。
また、上記一対のトップロール4,4は、該被成形材1の左右の両エッジ1a,1bをそれぞれ加圧して、これらの両エッジ1a,1bを同じ高さに相互に向かい合わせるものである。なお、この一対のトップロール4,4も相互に同形となっている。
なお、上記ガイド部材16は、後述する位置補正手段の移動手段による駆動力が適切に伝達されてサイドロール2,3の位置補正を精度よく行えるよう、また、監視手段であるロードセル20,20による荷重の検出の誤差を可及的に小さくするため、各軸受基体部7,8を左右方向のみに滑らかにスライド移動させることが可能となっており、例えば摩擦の小さいリニアガイド機構等が用いられる。
上記昇降部材11は、後述する位置補正手段の移動手段である油圧シリンダ24,24のピストンロッド24a,24aの上下動と同期して一体的に鉛直方向に昇降するものであり、したがって、上記一対のトップロール4,4は、昇降部材11の昇降により、上方側軸受基体部10及びトップロール用軸受部材9,9を介して一体的且つ直線的に上下方向に移動する構成となっている。
上記昇降用のガイド部材17は、後述する位置補正手段の移動手段よるトップロール4の位置補正や監視手段であるロードセル21,21の荷重検出が精度よく行えるように、昇降部材全体を滑らかに上下動させることが可能となっており、例えば摩擦の小さいリニアガイド機構等が用いられる。
なお、上記上方側軸受基体部10は、この昇降部材11の面板部11aの下面側に連結されている。
そうすると、ロールがスタンド12を押して該スタンド12を撓ませるため、結果としてロールが初期位置からずれてしまい、何も対処しなければ、当初予定していた外周長を有する鋼管を成形することができなくなる。
あるいは、図3(b)に示すように、両エッジ1a,1bの圧接時に溶鋼19の排出量が少なくなり、溶接部の強度不良が生じたりするおそれがある(なお、図3(a)は、溶鋼19の排出量が正常である場合を示している。)。
なお、上記「ミル剛性」とは、この発明においては、ロールが位置変動することなく被成形材の反力に抗することができる強さを意味している。したがって、ミル剛性が高まると、ロールの位置変動が抑えられ、鋼管の外周長の変動(溶接時のアップセット量の変動)も抑止されることとなる。
上記監視手段は、この実施の形態では、各ロールに作用する荷重をロードセルによって測定して、その荷重変動に基づいて各ロールの位置の変動を常時監視する構成を採用しており、ロードセルの測定結果を後述する図示しない制御手段に出力して、上記移動手段の制御に供されるようにしている。
また、トップロール4,4については、上記各トップロール用軸受部材9,9の各上端部と、上方側軸受基体部10における各トップロール用軸受部材9,9の各上端部と対向する面との間に、それぞれロードセル21,21を配設し、各トップロール4,4に作用する荷重を常時且つ個別に測定する構成としている。このように、トップロール用のロードセル21,21を各トップロール4,4の近傍に設けることにより、トップロール4,4に作用する荷重の測定の精度を向上させている。
具体的に、上記左側及び右側の各油圧シリンダ22,23は、シリンダボディ22b,23bが上記スタンド12の外側面に固定されていると共に、ピストンロッド22a,23aが上記スタンド12を貫通して軸受基体部側の内側面側に略水平に導出されていて、そのロッド先端側が上記左右の軸受基体部7,8(厳密には上記ロードセルの部分20,20)に連結されている。そして、監視手段からの出力信号に基づいて、図示しないピストンを前後進させることによりピストンロッド22a,23aを水平方向に前後進させ、これにより、左側の軸受基体部7は右左方向に、右側の軸受基体部8は左右方向にそれぞれ直線的に移動させることができるようになっている。
したがって、上記左右のサイドロール3,4は、対応する軸受基体部7,8を介して油圧シリンダ22,23の駆動力が伝達され、左右方向に自在に移動させることが可能となる。
したがって、2つのトップロール4,4は、昇降部材11を介して油圧シリンダ24,24の駆動力が伝達され、上下方向に自在に移動させることが可能となる。
なお、この2つの上側の油圧シリンダ24,24は、相互に同等の荷重が負荷されるように、各油圧シリンダ24,24のピストンロッド24a,24aが昇降部材11の面板部11aの中心から等距離の位置にそれぞれ連結されるように配置されている。
また、上記移動手段の各油圧シリンダ22〜24には、応答性及び精度に優れたデジタルサーボバルブ25がそれぞれ取付けられていて、上記監視手段からの出力に基づいて後述する制御手段から出力された制御信号に応じて、油圧シリンダ22〜24内のピストンヘッド側及びピストンロッド側の両圧力室の油量を短時間のうちに適切に調整し、ピストンの位置、延いてはピストンロッド22a〜24aのそれぞれの位置を正確且つ素早く制御可能となっている。
この実施の形態においては、上記サーボバルブ25は、高応答を実現するために各油圧シリンダ22〜24のシリンダボディ22b〜24bに直接取付けられていて、油圧シリンダ22〜24との間の配管距離を可能な限り短縮させている。
なお、この実施の形態においては、この移動手段の各油圧シリンダ22〜24により、目標とする外周長とするため決定された、各ロールの初期位置も設定することができるようにしている。
より具体的に、この実施の形態では、各ロードセルから出力された各荷重データは、図示しない制御手段に逐次送られ、この制御手段において、その得られた各荷重データに応じて、位置補正すべきロールを決定すると共に、位置補正させるロールに必要な位置補正量(移動量)の算出を行う。このとき、ロールに作用する荷重とその荷重によるロールの位置変動量との関係(即ち、どの程度の荷重が作用した時にどの程度ロールが位置変動するか)が、各ロールごとに事前にデータとして蓄積されており、このデータと上記荷重データとから位置補正量が算出される。
そして、位置補正すべき油圧シリンダ(この場合、厳密にはサーボバルブ)に対してその位置補正量に係る制御信号を出力することにより、各油圧シリンダのピストン及びピストンロッドの位置を上記位置センサによって位置検出しながら逐次正確に制御し、各ロールを速やかに初期位置に戻すように常時補正している。
このとき、被成形材1の材料に強度変動、板厚変動がある場合には、成形装置の各ロールは、被成形材1から想定外の反力を受けて位置変動が生じるが、鋼管の成形中においてはロールの位置補正手段が機能しており、被成形材1から受ける反力により位置変動した各ロールは、初期位置に押し戻す補正が常時行われ、被成形材1の外周長の変動が常に抑えた状態で成形が進められる。
即ち、各ロールの位置変動は監視手段により常時監視され、位置変動が生じた場合には、該監視手段からの出力に基づいて各ロールを初期位置に逐次押し戻して移動させることにより各ロールの位置が常時補正され、材料の強度変動、板厚変動に関わらず鋼管の外周長の変動が抑えられる。
この結果、突合せ部の溶接加工性が飛躍的に向上するため、溶接を高速度であっても安定的に行うことができ、また、溶接部の品質のばらつきを抑えて高品質の鋼管を成形することが可能となる。
さらに、上記実施の形態では、電縫溶接によって突合せ部を溶接する場合を示しているが、これ以外にもレーザーによる溶接等、任意の溶接法によって溶接するようにしてもよい。
例えば、図5(a)に示すように、各ロールの前後(通管方向の上流側及び下流側)に、ロールに対して通管方向の光を照射する発光手段30と、該発光手段30からの光をして受光する受光手段31を設けて、受光した光に基づいて把握された形状によって各ロールの位置変動の感知と変位量の測定を行う、いわゆる光切断法を用いてもよい。
この場合、図5(b)に示すようにロール(図5の場合は右側のサイドロール3を示している。)の位置変動前に得られた形状の最大幅δ1と、ロールの位置変動後に得られた形状の最大幅δ2との差が、図5(c)に示すようにロールが被成形材の反力によって位置変動した量となるため、この変動量を解消する位置補正を行えばよい。
なお、上記発光手段30及び受光手段31は、スタンド12の撓みの影響を受けない場所に設けることが肝要である。
なお、この場合、上記変位計32は、スタンドの撓みの影響を受けない場所に設置したアーム33に取り付けて、ロールと軸受部材との間の空間において該ロールの変位量を正確に測定することが肝要である。
いずれの場合であっても、成形中、被成形材の材料の強度変動、板厚変動による想定外の反力がロールに作用したとしても、被成形材からの反力により変動した各ロールの位置を予め定めた位置に常時補正し、鋼管の外周長を常に一定の長さに保つことが可能であるため、成形される鋼管の寸法精度等が向上する。
なお、従来の成形装置は、ロールの位置補正手段がない点、及びスクリュージャッキによって手動でロールの初期位置を調整することができる点以外は、基本的に本発明の成形装置と同じである。
この実験の結果を図7に示す。
したがって、本発明の成形装置は、従来のものに比べてミル剛性が10倍以上向上していることがわかった。
被成形材の素材としては、引張強さが300MPaと500MPaとである鋼板を用い、外径60.5mm、板厚2.0mmで成形、溶接を行った。溶接は、本発明・従来例ともワークコイル方式の高周波電気抵抗溶接(ERW) 250KHzを用いた。
本発明に係る成形装置においては、使用した油圧サーボの圧力は15MPa、サーボシリンダーのロッドヘッド受圧面積はロッド22cm2、 ヘッド32cm2で、サーボバルブはノズルフラッパータイプ(180Hz、−3dB)を用いた。
なお、制御系の応答周波数は、制御周期は1msで25Hz、−3dBを用いた。
結果を表1に示す。
これに対し、位置補正手段を使用した場合は、平均半径の径差を20μm以下に抑えながら溶接を行うことができた。
この結果、被成形材の材料に強度変動(板厚変動よる強度変動を含む)があったとしても、被成形材となるコイルの先端、中央部、後端部における外径変動(延いては外周長の変動)を抑えることが可能であることがわかった。したがって、溶接時の突合せ部やアッ
プセットの位置の変動、及び最終製品の寸法のばらつきを抑えることができることが実証された。
2 :左側のサイドロール
3 :右側のサイドロール
20:サイドロール用のロードセル
21:トップロール用のロードセル
22〜24:油圧シリンダ
25:サーボバルブ
Claims (2)
- 複数のロールにより鋼管をロール成形する鋼管の成形装置であって、
成形中において被成形材から受ける反力によって変動した各ロールの位置をロードセルによって常時監視する監視手段と、
ロールに作用する荷重とその荷重によるロールの位置変動量との関係が、各ロールごとに事前にデータとして蓄積されており、前記監視手段からの出力に基づいて、位置補正すべきロールを決定すると共に、前記蓄積されたデータを用いて位置補正させるロールに必要な位置補正量の算出を行う、制御手段と、
ピストンロッドを有する油圧シリンダからなる、移動手段と、
ピストンの位置あるいはピストンロッドの位置を検出する、位置センサと、を備え、
前記制御手段から出力された制御信号に応じて、前記移動手段における油圧シリンダ内のピストンヘッド側及びピストンロッド側の両圧力室の油量を調整し、ピストンの位置、またはピストンロッドの位置を、前記位置センサによって把握しながら、制御し、各ロールを初期位置に戻すことで、鋼管の外周長の変動を抑えることを特徴とする鋼管の成形装置。 - 複数のロールにより鋼管をロール成形する鋼管の成形方法であって、
成形中において被成形材から受ける反力によって変動した各ロールの位置をロードセルによって常時監視する監視手段と、
ロールに作用する荷重とその荷重によるロールの位置変動量との関係が、各ロールごとに事前にデータとして蓄積されており、前記監視手段からの出力に基づいて、位置補正すべきロールを決定すると共に、前記蓄積されたデータを用いて位置補正させるロールに必要な位置補正量の算出を行う、制御手段と、
ピストンロッドを有する油圧シリンダからなる、移動手段と、
ピストンの位置あるいはピストンロッドの位置を検出する、位置センサと、を用い、
前記制御手段から出力された制御信号に応じて、前記移動手段における油圧シリンダ内のピストンヘッド側及びピストンロッド側の両圧力室の油量を調整し、ピストンの位置、またはピストンロッドの位置を、前記位置センサによって把握しながら、制御し、各ロールを初期位置に戻すことで、鋼管の外周長の変動を抑えながら成形を行うことを特徴とする鋼管の成形方法。
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