JP5964768B2 - フォノニック導波路とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜からなる微小機械振動子との機械的な結合が可能で、薄膜機械構造が一次元的に連結したフォノニック導波路に関するものである。
微小な機械構造を有する微小機械振動子は、センサや信号処理デバイスへの利用・応用が検討されている(非特許文献1,2)。微小機械振動子は、主に単一の梁構造から構成されており、梁への駆動によって発生する機械振動を利用している。しかしながら、この機械振動は、梁部のみで発生する局所的な振動であるため、その情報を読み出すには電気や光信号への変換が必要となる。それゆえ、電気信号のみで複雑な処理を行う電気集積回路といったような多数の電気素子を一つにまとめたシステムや、光信号のみで複雑な処理を行う光集積回路といったような多数の光素子を一つにまとめたシステムは、機械素子においては実現されていない。
これまでに、センサやスイッチを始め、メモリや基本論理回路、増幅器などといった単体の機能を実現する機械素子は数多く研究開発されてきたが、それら機械素子を機械的な信号で以て繋げる「導波路」という、最も基本的な機械素子が存在しなかった。そのため、機械的な信号のみで動作する機械システムの構築は不可能であった。
J.L.Arlett,E.B.Myers,and M.L.Roukes,"Comparative advantages of mechanical biosensors",Nature Nanotechnology,Vol.6,p.203-215,2011 I.Mahboob,E.Flurin,K.Nishiguchi,A.Fujiwara,and H.Yamaguchi,"Interconnect-free parallel logic circuits in a single mechanical resonator",Nature Communications,2.198,2011
電気配線や光ワイヤ等は、電磁波(電子、光子)の導波路と言える。一方で、機械振動(フォノン)の導波路としては、表面弾性波(Surface acoustic wave,以下SAW)デバイスがある。SAWデバイスでは、デバイス表面に設置された櫛形電極(Interdigital transducer, 以下IDT)を通して圧電的に機械振動が誘起され、この機械振動が伝搬波となり表面を拡散していく。
しかしながら、SAWデバイスで誘起される機械振動は、振動源となるIDTの電極長手方向と垂直な方向のみに伝搬が許され、機械振動を途中で曲げる、止めるといったような制御は困難であった。また、表面弾性波の指向性も低く、伝搬が進むにつれて表面弾性波が空間的に拡がるという問題もあった。さらに、SAWデバイスの表面弾性波と、梁構造の機械振動子の局所的な機械振動とでは、同一の周波数帯域において運動量(波数)が大きく異なるため、SAWデバイスと機械振動子との間で機械振動エネルギーの受け渡しができないという問題もあった。以上のように、既存で唯一の機械振動導波路であるSAWデバイスは、集積回路で用いられる電気配線や光ワイヤのように、伝搬波の操作性や他の機能素子との整合性を有した導波路ではなかった。
本発明は、このような課題を解消するものであり、機械素子との整合性を有し、機械振動伝搬波の空間的かつ動的な制御が可能なフォノニック導波路とその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のフォノニック導波路は、基板と、この基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部と、前記導波路部の途中に前記導波路部と連結するように配置された前記薄膜からなる機械振動子を備えることを特徴とするものである。
また、本発明のフォノニック導波路は、基板と、この基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部と、前記導波路部を前記機械振動の伝搬方向と垂直な方向に貫通する複数の第1の孔を備え、これら第1の孔が並ぶ方向に沿って前記導波路部が配置されることを特徴とするものである。
また、本発明のフォノニック導波路の1構成例は、さらに、前記複数の第1の孔の間隔よりも長い間隔だけ隣接する第1の孔から離れた位置に形成された、前記薄膜を前記機械振動の伝搬方向と垂直な方向に貫通する第2の孔と、この第2の孔を中心とする位置に、前記導波路部と連結するように配置された前記薄膜からなる機械振動子とを備えることを特徴とするものである。
また、本発明のフォノニック導波路の1構成例は、さらに、前記導波路部となる薄膜の一部の上に形成された第1の電極を備えることを特徴とするものである。
また、本発明のフォノニック導波路の1構成例は、さらに、前記機械振動子となる薄膜の一部の上に形成された第2の電極を備えることを特徴とするものである。
また、本発明のフォノニック導波路の1構成例において、前記薄膜は、圧電特性をもつ物質からなることを特徴とするものである。
また、本発明のフォノニック導波路の製造方法は、基板上に犠牲層を形成する工程と、この犠牲層の上に圧電特性を有する物質の薄膜を形成する工程と、前記薄膜の一部の上に第1の電極を形成する工程と、前記薄膜の表面から前記犠牲層まで届く複数の第1の孔を形成する工程と、前記犠牲層を前記第1の孔を中心にして等方的にエッチングする工程とを備え、前記犠牲層をエッチングによって削る距離を、前記第1の孔の間隔よりも長くすることにより、前記第1の孔が並ぶ方向に沿って前記犠牲層に第1の空間が形成され、前記基板との間に前記第1の空間をあけて配置された前記薄膜からなる導波路部と、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える前記犠牲層からなる支持部とが形成されることを特徴とするものである。
また、本発明のフォノニック導波路の製造方法の1構成例は、さらに、前記犠牲層をエッチングする前に、前記薄膜の一部の上に第2の電極を形成する工程と、前記犠牲層をエッチングする前に、前記複数の第1の孔の間隔よりも長い間隔だけ隣接する第1の孔から離れた位置に、前記薄膜の表面から前記犠牲層まで届く第2の孔を形成する工程とを備え、前記犠牲層をエッチングによって削る距離を、前記第2の孔とこれに隣接する第1の孔の間隔よりも短くすることにより、前記第2の孔を中心とする前記犠牲層に前記第1の空間と部分的に繋がる第2の空間が形成され、前記第2の孔を中心とする位置に前記導波路部と連結するように配置された、前記薄膜からなる機械振動子が形成されることを特徴とするものである。
本発明によれば、薄膜からなる導波路部を用いることにより、微小機械振動子との機械的な結合が可能で、指向性の高い機械振動伝搬波が得られるフォノニック導波路を実現することができる。
また、本発明では、第1の孔の並べ方を変えることで、直線状の導波路のみならず、直角に曲がった導波路や曲線状の導波路、円形の導波路といった様々な形状のフォノニック導波路が実現可能となる。また、本発明では、第1の孔の並べ方を変えることで、機械振動の分波器や合波器の実現が可能である。また、本発明では、伝搬方向と垂直な方向における機械振動の閉じ込めによって増強される非線形効果を利用した、波長変換器や増幅器、スーパーコンティニューム振動発生器といった様々な機械信号処理器の作製が可能となる。
また、本発明では、ノードとなる機械振動子を個数に関わらず導波路部中に配置することが可能となる。また、本発明では、機械振動子の共振周波数を、第2の電極に印加する電圧によって圧電的に変調することで、導波路を伝搬する機械振動の制御が可能となる。また、本発明では、機械振動子の第2の電極に制御振動を誘起する交流電圧を印加することで、導波路部中を伝搬する機械振動の振動情報を機械振動子へ書き込んだり、機械振動子で保持したり、機械振動子から読み出したりすることが可能となる。また、本発明では、機械振動子の第2の電極に制御振動を誘起する交流電圧を印加することで、機械振動の伝搬速度を変調することが可能である。
本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路の製造方法を説明する工程図である。 本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路の製造方法を説明する工程図である。 本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路の製造方法を説明する工程図である。 本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路の製造方法を説明する工程図である。 本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路を上から撮影した光学顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路の形状例を示す平面図である。 本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路による機械振動伝搬波の動的制御方法を説明する図である。 本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路によるメモリの動作を説明する図である。 本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路の別の例を示す平面図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1(A)〜図1(C)、図2(A)〜図2(C)、図3(A)〜図3(C)、図4(A)〜図4(C)は本発明の実施の形態に係るフォノニック導波路の製造方法を説明する工程図である。図1(A)、図2(A)、図3(A)、図4(A)はフォノニック導波路の製造方法を説明する平面図、図1(B)、図2(B)、図3(B)、図4(B)はそれぞれ図1(A)、図2(A)、図3(A)、図4(A)のA−A線断面図、図1(C)、図2(C)、図3(C)、図4(C)はそれぞれ図1(A)、図2(A)、図3(A)、図4(A)のB−B線断面図である。
本実施の形態では、フォトリソグラフィ法もしくは電子ビーム(EB)リソグラフィ法、リン酸またはフッ化水素酸を用いたウェットエッチング法、及び反応性イオンエッチング等の技術を用いて、図1(A)〜図1(C)、図2(A)〜図2(C)、図3(A)〜図3(C)、図4(A)〜図4(C)に示す作製プロセスにより、化合物半導体であるガリウムヒ素(GaAs)/アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)のヘテロ構造から成り、円形薄膜(メンブレン)を内部に組み込むことができるフォノニック導波路を作製した。
具体的には、GaAs基板100上のGaAs/AlXGa1-XAs多層膜を、フォトリソグラフィ法もしくはEBリソグラフィ法によるレジストパターンニングと、リン酸によるウェットエッチング法もしくは反応性イオンエッチングによるドライエッチング法により加工して、図1(A)〜図1(C)に示すようにフォノニック導波路の土台となるメサ構造を形成する。ここでは、GaAs基板100上に形成するGaAs/AlXGa1-XAs多層膜として、Al0.65Ga0.35As層101と、Al0.65Ga0.35As層101上に形成されたSiドープGaAs層102と、SiドープGaAs層102上に形成されたAl0.27Ga0.73As層103と、Al0.27Ga0.73As層103上に形成されたGaAs層104とからなる構造を用いた。
次に、機械振動の誘起・検出で用いる電極105a,105bを、フォトリソグラフィ法もしくはEBリソグラフィ法と、真空蒸着法と、リフトオフ法によってメサ構造のGaAs/AlXGa1-XAs多層膜上(GaAs層104上)に形成する(図2(A)〜図2(C))。
そして、機械振動が伝搬する導波路部を作製する。具体的には、フォトリソグラフィ法もしくはEBリソグラフィ法と、リン酸によるウェットエッチング法もしくは反応性イオンエッチングによるドライエッチング法によって、メサ構造のGaAs/AlXGa1-XAs多層膜の表面(GaAs層104)からAl0.65Ga0.35As層101(犠牲層)まで届く孔106(106a,106b)を複数個形成する(図3(A)〜図3(C))。このとき、図3(C)に示すように、後述するメンブレン機械振動子を設置したい位置にある孔106bと隣接する孔106aとの間隔S2が、孔106a同士の間隔S1よりも長く、且つ導波路幅(図4(A)のd)よりも小さくなるようにする(d>S2>S1)。
その後、希フッ化水素酸によって犠牲層であるAl0.65Ga0.35As層101のみを、孔106b,106aを中心にして等方的にエッチングすることで、SiドープGaAs層102とAl0.27Ga0.73As層103とGaAs層104とからなる多層膜は、GaAs基板100と離間し、残ったAl0.65Ga0.35As層101によって支持される状態となる(図4(A)〜図4(C))。すなわち、エッチング後に残ったAl0.65Ga0.35As層101は、多層膜を支える支持部となる。
Al0.65Ga0.35As層101をエッチングによって削る距離Dを、孔106aの間隔S1よりも長くすると、孔106aの位置のAl0.65Ga0.35As層101に平面視略矩形の空間107が形成され、この空間107上の多層膜が平面視略矩形の導波路部108となる。一方で、孔106bは隣接する孔106aと離れているので、エッチングによって削る距離Dを、孔106bと孔106aの間隔S2よりも短くすると(S2>D>S1)、孔106bの位置のAl0.65Ga0.35As層101に、空間107と部分的に繋がる平面視円形の空間109が形成され、この空間109上の多層膜が、導波路部108と部分的に結合した平面視略円形のメンブレン機械振動子110となる。
以上の製造方法により、ノードとなるメンブレン機械振動子110をその内部に有するフォノニック導波路の作製が可能である。この製造方法によれば、化合物半導体の単結晶構造を用いることで、耐久性や振動特性に優れたフォノニック導波路が実現できる。図5に上記製造方法で作製したフォノニック導波路の光学顕微鏡写真を示す。ただし、図5では、導波路部108のみを示している。この図5の例では、電極105aと105b間の長さを1mm、導波路幅dを30μm、Al0.65Ga0.35As層101の厚さを3000nm、SiドープGaAs層102の厚さを100nm、Al0.27Ga0.73As層103の厚さを95nm、GaAs層104の厚さを5nm、電極105a,105bおよび後述する電極111の厚さを80nmとしている。
次に上述の方法で作製したフォノニック導波路の機械振動伝搬波の発生と伝搬波の検出、伝搬波の空間的制御方法、伝搬波の動的制御方法について説明する。
[機械振動伝搬波の発生と検出]
本実施の形態のフォノニック導波路は、圧電特性をもつ材料(本実施の形態では、GaAs、AlGaAs等の化合物半導体)で作製されている。そのため、一端に配置された電極105aとその下のSiドープGaAs層102との間に交流電圧を印加すると、ピエゾ電気効果によって電極105aの周辺に機械振動が誘起され、この機械振動が導波路部108に沿って伝搬する。そして、その機械振動伝搬波は、ピエゾ電気効果によって電圧に変換されるので、他端に配置された電極105bを介して電気的に検出することができる。
[伝搬波の空間的制御方法]
本実施の形態のフォノニック導波路によれば、孔106aの並べ方を変えることで、直線状の導波路だけでなく、図6(A)の平面図で示すような曲線状の導波路や、図6(B)の平面図で示すような円形の導波路を実現することができる。したがって、機械振動を所望の方向に伝搬させることができる。また、導波路の分岐や結合も容易なため、図6(C)の平面図で示すような機械振動の合波器や分波器を実現することができ、図6(D)の平面図で示すような波長分離器も実現することができる。このように合波器や分波器、波長分離器といった情報通信に必要となる装置の実現が期待できる。
[伝搬波の動的制御方法]
本実施の形態のフォノニック導波路は、SAWデバイスと異なり、機械振動を伝搬方向(図1(A)〜図1(C)、図2(A)〜図2(C)、図3(A)〜図3(C)、図4(A)〜図4(C)のX方向)と垂直な方向(Y方向)に強く閉じ込めることができる。そのため、光ファイバや光ワイヤのように、閉じ込めによって顕著に現れる非線形現象を利用して、機械振動の四波混合による波長変換素子や増幅器、高調波振動発生器、スーパーコンティニューム振動発生器の作製も期待される。このように、フォノニック導波路は、様々な機能デバイスとしても利用できる。
光の閉じ込めによって現れる非線形現象については、例えば文献「P.P.Absil,et al.,“Wavelength conversion in GaAs micro-ring resonators”,Optics Letters,Vol.25,No.8,p.554-556,2000」、文献「J.Hansryd,et al.,“Fiber-Based Optical Parametric Amplifiers and Their Applications”,IEEE Journal Of Selected Topics In Quantum Electronics,Vol.8,No.3,p.506-520,2002」、文献「J.S.Levy,et al.,“Harmonic generation in silicon nitride ring resonators”,Optics Express,Vol.19,No.12,p.11415-11421,2011」、文献「J.M.Dudley,and J.R.Taylor,“Ten years of nonlinear optics in photonic crystal fibre”,Nature Photonics,Vol.3,P.85-90,2009」に記載されている。
また、上述のフォノニック導波路の構造や作製方法では、導波路部108中にノードとなるメンブレン機械振動子110を組み込むことができるため、このメンブレン機械振動子110を用いた振動伝搬の動的制御が可能となる。メンブレン機械振動子110上に形成した電極111に定電圧もしくは交流電圧を印加すると、メンブレン機械振動子110の応力が変調され、メンブレン機械振動子110の共振周波数が変化する。なお、電極111は、電極105a,105bを形成する際に、電極105a,105bと同様の作製方法により形成することができる。
導波路部108を伝搬する機械振動は、途中に配置されたメンブレン機械振動子110の機械特性の影響を受ける。このため、図7(A)のように電極111に電圧Vが印加されていない状態では、機械振動伝搬波200はメンブレン機械振動子110を通過することができるが、図7(B)のように電極111に電圧Vが印加され、メンブレン機械振動子110の共振周波数が変調されると、導波路部108の一端から入射した機械振動伝搬波200はメンブレン機械振動子110の部分で通過が禁止され、反射されるので、その結果として導波路部108の他端へ透過する機械振動が減少する。
さらに、このメンブレン機械振動子110をメモリとして利用することもできる。ここでは、光量子通信で利用される電磁誘導透明化現象による方法(文献「M.D.Eisaman,et al.,“Electromagnetically induced transparency with tunable single-photon pulses”,Nature,Vol.438,p.837-841,2005」)を参考にする。図8(A)〜図8(F)は本実施の形態のフォノニック導波路によるメモリの動作を説明する図であり、図8(A)、図8(C)、図8(E)は振動エネルギーの受け渡しについて説明する図である。
メンブレン機械振動子110の基本モードは、その振動がメンブレン機械振動子110内に留まる局所的な振動となる(|l>)。一方、その高次モードは、導波路部108のフォノンバンド帯域と一致するため、機械振動の伝搬を担う(|p>)。これら基本モードと高次モードの差周波数に等しい振動(制御振動)をメンブレン機械振動子110に印加すると、機械的な電磁誘導透明化現象が発生し(文献「I.Mahboob,et al.,“Phonon-cavity electromechanics”,Nature Physics,Vol.8,p.387-392,2012」)、基本モードと高次モードの相互作用が引き起こされる(図8(A))。
図8(B)の例では、メンブレン機械振動子110に制御振動201を印加することにより、導波路部108の機械振動伝搬波200(|p>)とメンブレン機械振動子110の局所振動(|l>)とが相互作用し、振動エネルギーの受け渡しが行なわれている。この結合状態下では、高次モードにある機械振動伝搬波200の振動エネルギーを基本モードへ移すことが可能となる。すなわち、メモリにおける書込動作を実現することができる。なお、メンブレン機械振動子110への制御振動201の印加は、電極111へ交流電圧を印加することで実現することができる。
振動エネルギーの転送が完了した時に、メンブレン機械振動子110への制御振動の印加を停止すれば、導波路部108の機械振動伝搬波200(|p>)とメンブレン機械振動子110の局所振動(|l>)の結合状態が解かれ、メンブレン機械振動子110内で機械振動伝搬波200の振動エネルギーが基本モードに移された状態で保持される(図8(C)、図8(D))。すなわち、メモリにおける保持動作を実現することができる。
そして、再び制御振動201をメンブレン機械振動子110に印加すると、メンブレン機械振動子110から振動エネルギーを導波路部108へと読み出すことができ、機械振動伝搬波200を生成することが可能である(図8(E)、図8(F))。すなわち、メモリにおける読出動作を実現することができる。
ノードとなるメンブレン機械振動子110は、梁構造の機械振動子と同様の機械特性を有しており、これまでに提案・実証されてきた機械メモリや論理演算(文献「D.Hatanaka,et al., “An electromechanical membrane resonator”,Applied Physics Letters,101,063102-1~063102-5,2012」)の実行ができ、機械機能素子としての基本動作は保証される。
その他にも、上述の機械的電磁誘導透明化現象を利用すれば、機械振動の伝搬速度制御や、非線形効果の増強が可能となり、高度な信号処理を実現する機械システムの創製が期待される。
以上、詳細を示したように、本実施の形態によれば以下のような効果を奏することができる。
(1)エッチングから形成した振動部のみが導波路となるため、指向性の高い機械振動伝搬波が得られる。
(2)孔106aの並べ方を変えることで、直線状の導波路のみならず、直角に曲がった導波路や曲線状の導波路、円形の導波路といった様々な形状のフォノニック導波路が実現可能となる。
(3)孔106aの並べ方を変えることで、機械振動の分波器や合波器の実現が可能である。
(4)伝搬方向と垂直な方向における機械振動の閉じ込めによって増強される非線形効果を利用した、波長変換器や増幅器、スーパーコンティニューム振動発生器といった様々な機械信号処理器の作製が可能となる。
(5)ノードとなるメンブレン機械振動子を個数に関わらず導波路中に配置することが可能となる。
(6)メンブレン機械振動子の共振周波数を圧電的に変調することで、導波路を伝搬する機械振動の制御が可能となる。
(7)メンブレン機械振動子に制御振動を誘起する交流電圧を印加することで、導波路中を伝搬する機械振動の振動情報をメンブレン機械振動子へ書き込んだり、メンブレン機械振動子で保持したり、メンブレン機械振動子から読み出したりすることが可能となる。
(8)メンブレン機械振動子に制御振動を誘起する交流電圧を印加することで、機械振動の伝搬速度を変調することが可能である。
なお、本実施の形態では、導波路部108とメンブレン機械振動子110とが直線上に並ぶようにしているが、これに限るものではなく、図9の平面図で示すように導波路部108の横にメンブレン機械振動子110を結合するようにしてもよい。
また、本実施の形態のフォノニック導波路の作製は既存の微細加工技術(EBリソグラフィ、フォトリソグラフィ、ナノインプリント、ドライエッチング、ウェットエッチング、蒸着、スパッタリング、化学気相成長法)を複数組み合わせて使用することも可能であり、フォノニック導波路の作製法は本実施の形態に限定されるものではない。
また、本実施の形態では、機械振動子の構造材料としてGaAs、AlGaAs等を用いているが、本発明の趣旨に基づきフォノニック導波路は他の材料を用いても作製可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものでない。
本発明によれば、機械振動を制御に利用した機械システムの構築が可能になる。このシステムは熱的にも機械振動を駆動することが可能であり、熱をエネルギー源として動作する熱機能デバイスの創製も期待される。
100…GaAs基板、101…Al0.65Ga0.35As層、102…SiドープGaAs層、103…Al0.27Ga0.73As層、104…GaAs層、105a,105b,111…電極、106b,106a…孔、107,109…空間、108…導波路部、110…メンブレン機械振動子。

Claims (8)

  1. 基板と、
    この基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、
    前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部と
    前記導波路部の途中に前記導波路部と連結するように配置された前記薄膜からなる機械振動子とを備えることを特徴とするフォノニック導波路。
  2. 基板と、
    この基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、
    前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部と、
    前記導波路部を前記機械振動の伝搬方向と垂直な方向に貫通する複数の第1の孔とを備え、
    これら第1の孔が並ぶ方向に沿って前記導波路部が配置されることを特徴とするフォノニック導波路。
  3. 請求項記載のフォノニック導波路において、
    さらに、前記複数の第1の孔の間隔よりも長い間隔だけ隣接する第1の孔から離れた位置に形成された、前記薄膜を前記機械振動の伝搬方向と垂直な方向に貫通する第2の孔と、
    この第2の孔を中心とする位置に、前記導波路部と連結するように配置された前記薄膜からなる機械振動子とを備えることを特徴とするフォノニック導波路。
  4. 請求項または記載のフォノニック導波路において、
    さらに、前記導波路部となる薄膜の一部の上に形成された第1の電極を備えることを特徴とするフォノニック導波路。
  5. 請求項記載のフォノニック導波路において、
    さらに、前記機械振動子となる薄膜の一部の上に形成された第2の電極を備えることを特徴とするフォノニック導波路。
  6. 請求項1乃至のいずれか1項に記載のフォノニック導波路において、
    前記薄膜は、圧電特性をもつ物質からなることを特徴とするフォノニック導波路。
  7. 基板上に犠牲層を形成する工程と、
    この犠牲層の上に圧電特性を有する物質の薄膜を形成する工程と、
    前記薄膜の一部の上に第1の電極を形成する工程と、
    前記薄膜の表面から前記犠牲層まで届く複数の第1の孔を形成する工程と、
    前記犠牲層を前記第1の孔を中心にして等方的にエッチングする工程とを備え、
    前記犠牲層をエッチングによって削る距離を、前記第1の孔の間隔よりも長くすることにより、前記第1の孔が並ぶ方向に沿って前記犠牲層に第1の空間が形成され、
    前記基板との間に前記第1の空間をあけて配置された前記薄膜からなる導波路部と、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える前記犠牲層からなる支持部とが形成されることを特徴とするフォノニック導波路の製造方法。
  8. 請求項記載のフォノニック導波路の製造方法において、
    さらに、前記犠牲層をエッチングする前に、前記薄膜の一部の上に第2の電極を形成する工程と、
    前記犠牲層をエッチングする前に、前記複数の第1の孔の間隔よりも長い間隔だけ隣接する第1の孔から離れた位置に、前記薄膜の表面から前記犠牲層まで届く第2の孔を形成する工程とを備え、
    前記犠牲層をエッチングによって削る距離を、前記第2の孔とこれに隣接する第1の孔の間隔よりも短くすることにより、前記第2の孔を中心とする前記犠牲層に前記第1の空間と部分的に繋がる第2の空間が形成され、
    前記第2の孔を中心とする位置に前記導波路部と連結するように配置された、前記薄膜からなる機械振動子が形成されることを特徴とするフォノニック導波路の製造方法。
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