JP6105498B2 - 機械振動のパラメトリック制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜構造から成るフォノニック導波路を伝搬する機械振動の周波数変換、増幅、再生成が可能なパラメトリック制御方法に関するものである。
機械素子や電気回路等から構成されたMEMS(Micro Electromechanical System)は、センサやアクチュエータ、極限環境における信号処理デバイスへの利用が期待されている。また、近年の半導体微細加工技術の発展から恩恵を受けて、有効質量がアトグラム(〜10-18g)にまで至る極小で、かつ、周波数がギガヘルツ(〜109Hz)にまで達する高速動作が可能な機械素子も作製されるようになった。特に、そのサイズがナノメータースケールの微小機械システムはNEMS(Nano Electromechanical System)と呼ばれる(非特許文献1)。
しかしながら、現状のMEMS/NEMSにおいて、機械素子はスイッチやフィルタ、センサ、アクチュエータ等の末端部品としてのみ利用され、それらを繋ぐ部分は電気回路が担ってきた(非特許文献2)。それ故、末端の機械素子を駆動するためには、電流や電圧といった電気エネルギーを振動や変位、歪といった機械エネルギーへと一度変換する必要があり、そこでは多大なエネルギー損失が常に伴っていた。加えて、電気−機械変換のためにはトランスデューサを機械素子に組み込まなければならず、素子の材料や構造にも制約が科せられていた。
上記問題を解決する方法として、メンブレン振動子アレイから成るフォノニック導波路を電気回路の代わりに利用することで、機械振動による機械素子の直接的な制御が可能となる。さらに、導波路固有の振動輸送能力を使えば、空間的に離れた機械素子同士をダイナミックに直接結合させることが可能となり、機械振動を制御対象として用いたフォノンネットワークの実現も期待される。以上のように、メンブレンフォノニック導波路を機械的に既存の機械素子と組み合わせることによって、フォノンによるMEMS/NEMS操作が可能となる。その波及効果は従来の端末部品の省エネルギー化だけに留まらず、高周波(Radio frequency:RF)信号処理回路や光機械量子複合回路(非特許文献3)などのシステム全体に及ぶと思われる。
特に、信号を処理するシステムにおいてフォノニック導波路の役割を考えた場合、機械振動を確実に導くために必要な輸送能力(具体的には、機械振動伝搬波の振幅と消振動比の増幅能力)と、振動特性が異なる複数の機械素子をダイナミックに結合させるために必要な周波数制御能力(具体的には、機械振動伝搬波の周波数変換能力)が求められる。しかしながら、これまで提案されてきたフォノニック導波路において、上記機能に関する考察はほぼなされていなかった(非特許文献4、非特許文献5)。
J.Chaste et al.,"A nanomechanical mass sensor with yoctogram resolution",Nature Nanotechnology,Vol.7,p.301-304,2012 O.Y.Loh and H.D.Espinosa,"Nanoelectromechanical contact switches",Nature Nanotechnology,Vol.7,p.283-295,2012 C.A.Regal and K. W. Lehnert,"From cavity electromechanics to cavity optomechanics",Journal of Physics Conference Series 264,012025,2011 S.Mohammadiet al.,"Demonstration of large complete phononic band gaps and waveguiding in high-frequency silicon phononic crystal slabs",Freq.Contr.Symp.,2008 IEEE International S.Mohammadi and A. Adibi,"On chip complex signal processing devices using coupled phononic crystal slab resonators and waveguides",AIP Advances 1,041903,2011
以上のように、従来は、フォノニック導波路において機械振動を確実に導くために必要な機械振動輸送能力の向上と周波数制御とを実現する技術は提案されていなかった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、フォノニック導波路を伝搬する機械振動の周波数変換、増幅、再生成を実現するパラメトリック制御方法を提供することを目的とする。
本発明の機械振動のパラメトリック制御方法は、基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、シグナル機械振動と、このシグナル機械振動と周波数が異なるポンプ機械振動とを誘起する振動誘起ステップを含み、縮退/非縮退四波混合による機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記シグナル機械振動と前記ポンプ機械振動の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するシグナル機械振動およびポンプ機械振動と周波数が異なるアイドラ機械振動を生成することを特徴とするものである。
また、本発明の機械振動のパラメトリック制御方法は、基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、ポンプ機械振動を誘起する振動誘起ステップを含み、三次高調波生成、二次高調波生成またはパラメトリック下方変換といった機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記ポンプ機械振動の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するポンプ機械振動と周波数が異なるアイドラ機械振動を生成することを特徴とするものである。
また、本発明の機械振動のパラメトリック制御方法は、基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、シグナル機械振動と、このシグナル機械振動と周波数が異なるポンプ機械振動とを誘起する振動誘起ステップを含み、縮退/非縮退四波混合、三次高調波生成、二次高調波生成またはパラメトリック下方変換といった機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記シグナル機械振動と前記ポンプ機械振動の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するシグナル機械振動の振幅を増強することを特徴とするものである。
また、本発明の機械振動のパラメトリック制御方法は、基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、シグナル機械振動と、このシグナル機械振動と周波数が異なるポンプ機械振動パルス列とを誘起する振動誘起ステップを含み、縮退/非縮退四波混合による機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記シグナル機械振動と前記ポンプ機械振動パルス列の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するシグナル機械振動およびポンプ機械振動パルス列と周波数が異なり、前記ポンプ機械振動パルス列の消振動比よりも大きな消振動比を有するアイドラ機械振動パルス列を生成することを特徴とするものである。
また、本発明の機械振動のパラメトリック制御方法は、基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、ポンプ機械振動パルス列を誘起する振動誘起ステップを含み、三次高調波生成、二次高調波生成またはパラメトリック下方変換といった機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記ポンプ機械振動パルス列の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するポンプ機械振動パルス列と周波数が異なり、前記ポンプ機械振動パルス列の消振動比よりも大きな消振動比を有するアイドラ機械振動パルス列を生成することを特徴とするものである。
また、本発明の機械振動のパラメトリック制御方法の1構成例において、前記薄膜は、圧電特性をもつ物質からなり、前記振動誘起ステップは、前記シグナル機械振動を誘起するための電圧と前記ポンプ機械振動を誘起するための電圧とを、前記薄膜の一部の上に形成された電極に印加することにより、前記フォノニック導波路に前記シグナル機械振動と前記ポンプ機械振動とを誘起するステップを含むことを特徴とするものである。
また、本発明の機械振動のパラメトリック制御方法の1構成例において、前記薄膜は、圧電特性をもつ物質からなり、前記振動誘起ステップは、前記ポンプ機械振動を誘起するための電圧を、前記薄膜の一部の上に形成された電極に印加することにより、前記フォノニック導波路に前記ポンプ機械振動を誘起するステップを含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、縮退/非縮退四波混合による機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、シグナル機械振動とポンプ機械振動の周波数および振幅と、フォノニック導波路の寸法を設定しておくことにより、フォノニック導波路を伝搬するシグナル機械振動およびポンプ機械振動と周波数が異なるアイドラ機械振動を生成することができ、フォノニック導波路を伝搬する機械振動を異なる周波数をもつ新たな機械振動へ変換可能となる。フォノニック導波路を伝搬する機械振動の周波数変換技術の確立によって、異なる周波数特性を有する機械素子間のダイナミックな結合や機械振動の長距離かつ効果的な伝送が可能となる。それゆえ、本発明は、様々な機械素子とフォノニック導波路から構成されるフォノンネットワークの制御性を高めることができ、フォノンを制御キャリアとして用いた新しい高性能RF信号処理システムの構築が期待される。
また、本発明では、三次高調波生成、二次高調波生成またはパラメトリック下方変換といった機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、ポンプ機械振動の周波数および振幅と、フォノニック導波路の寸法を設定しておくことにより、フォノニック導波路を伝搬するポンプ機械振動と周波数が異なるアイドラ機械振動を生成することができる。
また、本発明では、縮退/非縮退四波混合、三次高調波生成、二次高調波生成またはパラメトリック下方変換といった機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、シグナル機械振動とポンプ機械振動の周波数および振幅と、フォノニック導波路の寸法を設定しておくことにより、フォノニック導波路を伝搬するシグナル機械振動の振幅を増強することができる。フォノニック導波路を伝搬する機械振動の増幅技術の確立によって、機械素子間のダイナミックな結合や機械振動の長距離かつ効果的な伝送が可能となる。それゆえ、本発明は、フォノンネットワークの制御性を高めることができ、フォノンを制御キャリアとして用いた新しい高性能RF信号処理システムの構築が期待される。
また、本発明では、縮退/非縮退四波混合による機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、シグナル機械振動連続波とポンプ機械振動パルス列の周波数および振幅と、フォノニック導波路の寸法を設定しておくことにより、フォノニック導波路を伝搬するシグナル機械振動連続波およびポンプ機械振動パルス列と周波数が異なり、ポンプ機械振動パルス列の消振動比よりも大きな消振動比を有するアイドラ機械振動パルス列を生成することができる。
また、本発明では、三次高調波生成、二次高調波生成またはパラメトリック下方変換といった機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、ポンプ機械振動パルス列の周波数および振幅と、フォノニック導波路の寸法を設定しておくことにより、フォノニック導波路を伝搬するポンプ機械振動パルス列と周波数が異なり、ポンプ機械振動パルス列の消振動比よりも大きな消振動比を有するアイドラ機械振動パルス列を生成することができる。
フォノニック導波路を伝搬する機械振動の増幅技術、周波数変換技術、再生成技術の確立によって、機械素子間のダイナミックな結合や機械振動の長距離かつ効果的な伝送が可能となる。それゆえ、本発明は、フォノンネットワークの制御性を高めることができ、フォノンを制御キャリアとして用いた新しい高性能RF信号処理システムの構築が期待される。
三次高調波生成過程、非縮退四波混合過程、および縮退四波混合過程のエネルギーダイアグラムである。 三次高調波生成による増幅過程、非縮退四波混合による増幅過程、および縮退四波混合による増幅過程のエネルギーダイアグラムである。 縮退四波混合による周波数変換過程、非縮退四波混合による周波数変換過程、および三次高調波生成による周波数変換過程のエネルギーダイアグラムである。 パラメトリック効果によって発生する出力機械振動の振動エネルギーの、入力機械振動の振動エネルギー依存性を示す図である。 二次の非線形弾性効果を用いた二次高調波生成過程、およびパラメトリック下方変換過程のエネルギーダイアグラムである。 本発明の第1の実施の形態に係るフォノニック導波路の平面図および断面図である。 本発明の第1の実施の形態に係るフォノニック導波路の製造方法を説明する工程図である。 本発明の第1の実施の形態に係るフォノニック導波路の製造方法を説明する工程図である。 本発明の第1の実施の形態に係るフォノニック導波路の製造方法を説明する工程図である。 本発明の第1の実施の形態に係るフォノニック導波路による機械振動の発生方法を説明する図である。 本発明の第1の実施の形態に係るフォノニック導波路による振動増幅方法、周波数変換方法、信号再生成方法を説明する図である。
[発明の原理]
本発明では、機械振動輸送と周波数制御の実現を目指し、フォノニック導波路が有する非線形パラメトリック効果(文献「I.Mahboob and H.Yamaguchi,“Bit storage and bit flip operations in an electromechanical oscillator”,Nature Nanotechnology,Vol.3,p.275-279,2008」参照)を利用した機械振動の増幅法や再生成法、周波数変換法について提案する。
機械振動のパラメトリック制御法はすでに梁状の機械素子において報告されているが、梁状の機械素子特有のバンド帯域の狭さのため変換可能な機械振動周波数に制限があった。本発明では、広帯域なバンドを有するフォノニック導波路においてこのパラメトリック制御法を運用することにより、既存手法の限界を打破することが可能となる。導波路が有する三次の非線形性を用いれば、三次の高調波生成プロセスや縮退・非縮退四波混合プロセス、二次の非線形性を用いれば、二次の高調波生成やパラメトリック下方変換プロセスなど、そのパラメトリック制御手法は複数存在し、導波路や機械素子の周波数特性を考慮して最良のものを自由に選択できる。
本発明のパラメトリック制御法は、導波路を強く加振した際に現れる三次、もしくは二次の非線形弾性効果を利用しており、その振動部にかかる復元力をFとすると、次式のように表すことができる。
Figure 0006105498
式(1)では、二次の非線形効果については考慮していない。ここで、Kはバネ定数、xは振動振幅、Aは三次の非線形係数を表している。三次の非線形効果によって復元力Fは、振動振幅xの三乗に比例し変化することが分かる。この現象は、フォトンの増幅や波長変換等に用いられている非線形光学現象の弾性的なアナロジーである。式(1)の復元力Fを分極Pと置き換え、バネ定数Kを誘電率ε0と一次の感受率χ(1)の積に置き換え、振動振幅xを電場強度Eに置き換え、非線形係数Aを誘電率ε0と三次の感受率χ(3)の積と置き換えれば、光の分極と電場の関係式が得られる。
Figure 0006105498
式(1)と式(2)の対応関係をみると明らかなように、光のパラメトリック素子で既に実現されている波長変換や増幅、信号再生成は原理的に機械振動等の弾性波においても実現可能であることが判る。
ここからはまず、機械振動制御に用いられる三次の非線形パラメトリック効果に関して簡単に検討する(文献「C.P.Agrawal,“Nonlinear Fiber Optics”,Academic Press,p.389-397,San Diego,2001」参照)。まず、三次の非線形性を有する導波路に四つの機械振動伝搬波を入力した場合を考える。それらの合成波xtotは、次式のように表される。
Figure 0006105498
ここで、kjはj番目の機械振動の波数、ωjはj番目の角振動数、zは導波路長である。式(3)を式(1)に代入して、四番目の機械振動に寄与する復元力(F4)のうち、非線形弾性効果に関連する項のみを抜き出し注目すると、次式が得られる。
Figure 0006105498
ここで、式(4)のθ+とθ-は次式のように定義される。
Figure 0006105498
式(4)の第三項と第四項はそれぞれパラメトリック効果を司る二種類のθ+とθ-を含んでいる。θ+は三次の高調波生成を表し、θ-は四波混合過程を表している。一方で、式(4)の第一項は自己位相変調効果を表し、第二項は相互位相変調効果を表している。以下では、三次高調波生成と四波混合過程に関して簡単に説明する。図1(A)〜図1(C)は三次高調波生成過程、非縮退四波混合過程、および縮退四波混合過程のエネルギーダイアグラムである。なお、図1(A)〜図1(C)の各々においては、左側が導波路の入力側を示し、右側が導波路の出力側を示している。
[三次高調波]
式(5)中の三次高調波生成過程では、ω1,ω2,ω3の三つのフォノンが混合し、それら三つの周波数の和に等しい周波数をもつ四番目のフォノンω4へと変換される(図1(A))。式(4)と(5)より、この三次高調波の生成効率を高めるためには、式(6)かつ式(7)の関係を満たす必要がある。
Figure 0006105498
Figure 0006105498
式(6)はエネルギー保存則を表し、式(7)は位相整合条件を表す。通常、ω1とk1,ω2とk2,ω3とk3の三つのフォノンの振動数と波数は等しく(ω1=ω2=ω3、k1=k2=k3)、入力としては単一の機械振動のみが用いられる。
[四波混合]
式(5)中の四波混合過程では、ω1,ω2の二つのフォノンがω3,ω4という周波数の異なる二つのフォノンへと変換される(図1(B)、図1(C))。そのため、その変換効率は、式(4)と(5)より、式(8)かつ式(9)の関係を満足するときに最大となる。特に、ω1とω2が同種の機械振動の場合を縮退四波混合(図1(C))、ω1とω2が異なる機械振動の場合を非縮退四波混合(図1(B))と呼ぶ。
Figure 0006105498
Figure 0006105498
上記の三次高調波や縮退四波混合、非縮退四波混合の各種パラメトリック効果を用いれば、導波路を伝搬する機械振動の周波数変換や増幅、再生成が可能である。次からは、これらパラメトリック制御法について一つ一つ議論する。図2(A)〜図2(C)は三次高調波による増幅過程、非縮退四波混合による増幅過程、および縮退四波混合による増幅過程のエネルギーダイアグラム、図3(A)〜図3(C)は縮退四波混合による周波数変換過程、非縮退四波混合による周波数変換過程、および三次高調波による周波数変換過程のエネルギーダイアグラムである。図2(A)〜図2(C)、図3(A)〜図3(C)においても、左側が導波路の入力側を示し、右側が導波路の出力側を示している。
[振動増幅]
振動増幅では、周波数ωを有する弱機械振動を増幅する場合を考える。導波路に、増幅したい弱機械振動と、それと異なる周波数と波数を有する強機械振動を一つもしくは二つ入力すると、その強機械振動により三次の非線形弾性効果が誘起され、三次高調波や、異周波数振動が一つならば縮退四波混合、異周波数振動が二つならば非縮退四波混合が発現する。その結果、元の弱機械振動によりその四波混合過程から同じ周波数ωをもつフォノンが新たに誘導放出され、周波数ωの機械振動は増幅される(図2(A)〜図2(C))。これにより、フォノニック導波路においてその伝搬による損失から振幅強度を保ちつつ目的の機械振動を長距離輸送することができる。
図2(A)は周波数ωを有する弱機械振動とこれと異なる周波数ωaを有する一つの強機械振動を導波路に入力したときの三次高調波による増幅の過程を表している。図2(B)は周波数ωを有する弱機械振動とこれと異なる周波数ωa,ωbを有する二つの強機械振動を導波路に入力したときの非縮退四波混合による増幅の過程を表している。図2(C)は周波数ωを有する弱機械振動とこれと異なる周波数ωaを有する一つの強機械振動を導波路に入力したときの縮退四波混合による増幅の過程を表している。
[信号周波数変換]
信号周波数変換では、周波数ωを有する機械振動の振動が小さい場合は、それとは異なる周波数ωaを有する強機械振動、つまり非線形領域の振動を同時に導波路へ入力して縮退四波混合を誘起することで、周波数ωを有する機械振動による誘導放出から式(8)と式(9)が満足する新しい機械振動(ωc=2ωa−ω)をつくることができる(図3(A))。また、周波数ωの機械振動自身が非線形振動を有していれば、非縮退四波混合や第三次高調波を介しても周波数変換ができる(図3(B)、図3(C))。図3(B)は非縮退四波混合による周波数変換の過程を表し、図3(C)は三次高調波による周波数変換の過程を表している。以上のような非線形弾性効果を用いた周波数変換技術により、周波数の異なる機械素子間の導波路を介したダイナミックな結合が可能となる。
[信号再生成]
信号再生成では、パラメトリック効果において発現する入力振動エネルギーに対する出力エネルギーの非線形応答を用いて、入力機械振動パルス列の消振動比(ER比)の増大を行う。新しく発生する周波数ωoutの機械振動の振動エネルギーをJout、入力として用いる周波数ωinの非線形機械振動の振動エネルギーをJinとすると、それらの関係は次式のように表され、図4のように、周波数ωoutの機械振動のER比(ERout)は周波数ωinの機械振動のER比(ERin)に対して増加する領域を有する。
Figure 0006105498
そのため、入力ER比(図4のERin)を有するパルス列から成る周波数ωinの強機械振動が導波路に入力されると、パラメトリック変換され、発生した周波数ωoutの機械振動パルス列のER比(図4のERout)はERinと比べて大きくなる(文献「R.Salem et al.,“Signal regeneration using low-power four-wave mixing on silicon chip”,Nature Photonics,Vol.2,P.35-38,2008」参照)。この信号再生成技術は、三次高調波や縮退四波混合の何れの効果を用いても実現可能であり、伝搬損失や他振動との混合によってON/OFF比の質を落としやすいパルス列の輸送において有用である。
上述の各種パラメトリック現象では三次の非線形効果を考えていたが、以下に簡単に説明するように二次の非線形効果を介しても似た現象を誘起することは可能である。但し、その場合、三次の高調波が二次高調波となり、さらに四波混合は発生せず、その代わりに三つのフォノンのみが寄与するパラメトリック下方変換が代わりに用いられる。
[二次高調波とパラメトリック下方変換]
図5(A)は二次の非線形弾性効果を用いた二次高調波生成過程のエネルギーダイアグラム、図5(B)はパラメトリック下方変換過程のエネルギーダイアグラムである。上述した三次の高調波生成や四波混合過程に対応する二次高調波やパラメトリック下方変換現象では、式(6)、式(8)における周波数ω1,ω2および式(7)、式(9)における波数k1,k2を有する二つのフォノンを周波数ω12および波数k12を有する一つのフォノンで置き換えることで、二次高調波生成は式(11)で、パラメトリック下方変換は式(12)で表すことができる。
Figure 0006105498
Figure 0006105498
二次高調波生成とパラメトリック下方変換も、式(11)と(12)で示されるようにエネルギー保存則と位相整合条件をそれぞれ満たさなければならない。但し、第二次高調波の場合、ω12=ω3であるため、入力としては単一の機械振動が用いられる。二次高調波生成によれば、周波数ω12,ω3の二つのフォノンから周波数が異なる一つのフォノン(ω4)を生成することができ、パラメトリック下方変換によれば、周波数ω12の一つのフォノンから周波数が異なる二つのフォノン(ω3,ω4)を生成することができる。
以上の各種パラメトリック現象のうち一般的に四波混合過程が最も高効率で発現する。一方、高調波生成とパラメトリック下方変換は寄与する機械振動の間で周波数に大きな違いがあるため、波数における位相整合条件を満たすことが一般的に困難である。しかしながら、メンブレン振動子を基にしたフォノニック結晶導波路を利用すれば、メンブレン間の距離やメンブレン直径を調整することで構造分散から波数を自在に制御することができるので、上述の条件を満たすよう意図的に設計すれば、高調波生成やパラメトリック下方変換の高効率な誘起も容易になると思われる。
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図6(A)は本発明の第1の実施の形態に係るフォノニック導波路の平面図、図6(B)は図6(A)のA−A線断面図、図6(C)は図6(A)のB−B線断面図である。
本実施の形態では、フォトリソグラフィ法もしくは電子ビーム(EB)リソグラフィ法、リン酸またはフッ化水素酸を用いたウェットエッチング法、及び反応性イオンエッチング等の技術を用いて、化合物半導体であるガリウムヒ素(GaAs)/アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)のヘテロ構造から成るフォノニック導波路108を作製した。
図7(A)〜図7(C)、図8(A)〜図8(C)、図9(A)〜図9(C)は本実施の形態に係るフォノニック導波路の製造方法を説明する工程図である。図7(A)、図8(A)、図9(A)はフォノニック導波路の製造方法を説明する平面図、図7(B)、図8(B)、図9(B)はそれぞれ図7(A)、図8(A)、図9(A)のA−A線断面図、図7(C)、図8(C)、図9(C)はそれぞれ図7(A)、図8(A)、図9(A)のB−B線断面図である。
本実施の形態では、GaAs基板100上のGaAs/AlXGa1-XAs多層膜を、フォトリソグラフィ法もしくはEBリソグラフィ法によるレジストパターンニングと、リン酸によるウェットエッチング法もしくは反応性イオンエッチングによるドライエッチング法により加工して、図7(A)〜図7(C)に示すようにフォノニック導波路の土台となるメサ構造を形成する。ここでは、GaAs基板100上に形成するGaAs/AlXGa1-XAs多層膜として、Al0.65Ga0.35As層101と、Al0.65Ga0.35As層101上に形成されたSiドープGaAs層102と、SiドープGaAs層102上に形成されたAl0.27Ga0.73As層103とからなる構造を用いた。
次に、機械振動の誘起・検出で用いる電極105a,105bを、フォトリソグラフィ法もしくはEBリソグラフィ法と、真空蒸着法と、リフトオフ法によってメサ構造のGaAs/AlXGa1-XAs多層膜上(Al0.27Ga0.73As層103上)に形成する(図8(A)〜図8(C))。
そして、機械振動が伝搬する導波路部を作製する。具体的には、フォトリソグラフィ法もしくはEBリソグラフィ法と、リン酸によるウェットエッチング法もしくは反応性イオンエッチングによるドライエッチング法によって、メサ構造のGaAs/AlXGa1-XAs多層膜の表面(Al0.27Ga0.73As層103)からAl0.65Ga0.35As層101(犠牲層)まで届く孔106を複数個形成する(図9(A)〜図9(C))。
その後、希フッ化水素酸によって犠牲層であるAl0.65Ga0.35As層101のみを、孔106を中心にして等方的にエッチングすることで、SiドープGaAs層102とAl0.27Ga0.73As層103とからなる多層膜は、GaAs基板100と離間し、残ったAl0.65Ga0.35As層101によって支持される状態となる(図6(A)〜図6(C))。すなわち、エッチング後に残ったAl0.65Ga0.35As層101は、多層膜を支える支持部となる。Al0.65Ga0.35As層101をエッチングによって削る距離Dを、孔106の間隔S1よりも長くすると、孔106の位置のAl0.65Ga0.35As層101に平面視略矩形の空間107が形成され、この空間107上の多層膜が平面視略矩形のフォノニック導波路108(導波路部)となる。
以上の製造方法により、フォノニック導波路の作製が可能である。この製造方法によれば、化合物半導体の単結晶構造を用いることで、耐久性や振動特性に優れたフォノニック導波路が実現できる。本実施の形態では、Al0.65Ga0.35As層101の厚さを3.0μm、SiドープGaAs層102の厚さを100nm、Al0.27Ga0.73As層103の厚さを100nm、Auからなる電極105a,105bの厚さを80nmとしている。また、フォノニック導波路108の長さとしてmmスケール、フォノニック導波路108の幅dとして数十μm、孔106の間隔S1として数μm〜数十μmスケールを想定している。
このように、本実施の形態では、フォノニック導波路108として一次元メンブレンアレイを用いる。このメンブレンアレイはガリウムヒ素(GaAs)/アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)のヘテロ構造から構成されているため、圧電特性を有している。図10に示すように、メンブレン上に設置した電極105aとSiドープGaAs層102との間に信号発生器110から交流電圧を印加すると、電極105aとSiドープGaAs層102との間に強力な電界(106〜107V/m)が発生するため、圧電効果を介してメンブレンに歪が加わり、その結果生じた曲げモーメントによって機械振動が発生する。このようにして、電極105aから機械振動をフォノニック導波路108上に誘起することができる。
また、発現する機械振動の周波数は、電極105aに印加する交流電圧の周波数で決まるため、任意の周波数を有する機械振動を自由に誘起することができる。この機械振動は、ピエゾ電気効果によって電圧に変換されるので、他端に配置された電極105bを介して電気的に検出することができる。あるいは、ドップラー干渉計を用いて反射光のドップラーシフトを測定することで、ナノメータからピコメータ(10-9〜10-12m)にまで至る導波路上の微小な機械振動を検出することも可能である。本実施の形態では、これら振動励起・検出技術を用いた機械振動の増幅について説明する。
[縮退四波混合による振動増幅]
図11に示すように、フォノニック導波路108の一端に設置した電極105aとSiドープGaAs層102との間に信号発生器110から周波数ωの交流電圧(シグナル)と、周波数ωと異なる周波数ωa(ω≠ωa)の交流電圧(ポンプ)とを同時に印加し、ポンプ機械振動とシグナル機械振動をフォノニック導波路108内に誘起する。シグナル機械振動の振幅強度は、電極105aに印加する周波数ωの交流電圧の振幅によって設定可能である。同様に、ポンプ機械振動の振幅強度は、周波数ωaの交流電圧の振幅によって設定可能である。
本実施の形態では、増幅したいシグナル機械振動の振幅強度と比較してポンプ機械振動の振幅強度は十分に大きく、さらに、ポンプ機械振動がフォノニック導波路108の非線形弾性効果を誘起するために十分な振幅強度をもつようにポンプの印加電圧を設定している。それ故、ポンプ振動がフォノニック導波路108を伝搬するにつれて非線形弾性効果によって縮退四波混合(図2(C))が発生し、周波数ωcのアイドラ機械振動と共に周波数ωのシグナル機械振動が新しく生成され、並行して伝搬する元のシグナル機械振動の振幅強度が増幅される。
このようにして縮退四波混合による振動増幅が可能となる。そして、式(8)と式(9)を満足するように、周波数ωのシグナル機械振動と周波数ωaのポンプ機械振動の各周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い増幅効率が得られる。
図11の例では、フォノニック導波路108の他端に設置した電極105bにヘリウムネオンレーザ111からレーザ光を照射し、電極105bからの反射光をフォトダイオード112で受光して、フォトダイオード112の出力をベクトル・シグナル・アナライザ(VSA)113で受けることで、フォノニック導波路108を伝搬した機械振動を電気信号に変換して検出している。
また、その他の三次高調波生成や非縮退四波混合、さらには二次高調波生成、パラメトリック下方変換過程による振動増幅においても、図2(A)、図2(B)、図5(A)、図5(B)に示したエネルギーダイアグラムと位相整合条件を満足するようにポンプ機械振動の周波数を選択すれば振動増幅が観測される。
三次高調波生成による振動増幅では、式(6)と式(7)を満足するように、周波数ωのシグナル機械振動と周波数ωaのポンプ機械振動の各周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い増幅効率が得られる。
非縮退四波混合による振動増幅では、縮退四波混合の場合と同様に、式(8)と式(9)を満足するように、周波数ωのシグナル機械振動と周波数ωa,ωb(ωa≠ωb≠ω)のポンプ機械振動の各周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い増幅効率が得られる。但し、非縮退四波混合の場合は、周波数ωaとωbの二種類のポンプ機械振動が必要で、この二つのポンプ機械振動が両方とも非線形弾性効果の誘起が可能なほど十分に大きい振幅強度、つまり非線形振動を有する必要がある。
二次高調波生成やパラメトリック下方変換では、二次高調波生成により、式(11)を満足するように、周波数ω(図5(A)のω12)のポンプ機械振動の周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、同時に伝搬する周波数ωのシグナル振動の高い増幅効果が得られる。パラメトリック下方変換による振動増幅では、式(12)を満足するように、周波数ω(図5(B)のω12)のポンプ機械振動の周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、同時に伝搬する周波数ωのシグナル振動の高い増幅効果が得られる。
こうして、本実施の形態では、薄膜から構成されるフォノニック導波路を伝搬する機械振動の振動振幅を増幅することが可能となる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、機械振動の周波数変換について説明する。本実施の形態においても、フォノニック導波路の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図6(A)〜図6(C)の符号を用いて説明する。
[縮退四波混合による周波数変換]
振動増幅の場合と同様に、図11に示すように、フォノニック導波路108の一端に設置した電極105aとSiドープGaAs層102との間に信号発生器110から周波数ωの交流電圧(シグナル)と、周波数ωと異なる周波数ωaの交流電圧(ポンプ)とを同時に印加し、ポンプ機械振動とシグナル機械振動をフォノニック導波路108内に誘起する。
本実施の形態では、ポンプ機械振動はフォノニック導波路108の非線形弾性効果を引き起こすために十分な強度をもつように非線形振動である必要があり、かつその周波数ωaは、周波数変換前のシグナル機械振動の周波数ωと変換後のアイドラ周波数ωc(ω≠ωc)との中点付近に来るように設定する。ポンプ振動がフォノニック導波路108を伝搬するにつれて縮退四波混合過程が引き起こされ、並行して伝搬しているシグナル機械振動との相互作用の結果、ポンプ機械振動から周波数ωのシグナル機械振動と周波数ωcのアイドラ機械振動のフォノン対が誘導放出される。
このようにして、フォノニック導波路108の出力端においてシグナル機械振動から周波数変換されたアイドラ機械振動を新しく得ることができる。図11の例では、フォノニック導波路108の他端に設置した電極105bにヘリウムネオンレーザ111からレーザ光を照射し、電極105bからの反射光をフォトダイオード112で受光して、フォトダイオード112の出力をVSA113で受けることで、アイドラ機械振動を電気信号に変換して検出することができる。
本実施の形態においても、高い変換効率を得るためには、式(8)と式(9)を満足するように、周波数ωのシグナル機械振動と周波数ωaのポンプ機械振動と周波数ωcのアイドラ機械振動の各周波数と振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整しなければならない。
また、その他の三次高調波生成や非縮退四波混合、さらには二次高調波生成、パラメトリック下方変換過程による周波数変換においても、図3(B)、図3(C)、図5(A)、図5(B)に示したエネルギーダイアグラムと位相整合条件を満足するようにポンプ機械振動の周波数を選択すれば、高効率な周波数変換が得られる。
但し、高次高調波生成過程を用いる場合は、ポンプ機械振動自身がその振幅強度によって引き起こされる非線形弾性効果を介して異なる高次の機械振動へと変化するため、シグナル機械振動は不要となり、ポンプ機械振動のみを誘起すればよい。すなわち、三次高調波生成による周波数変換では、式(6)と式(7)を満足するように、周波数ωのポンプ機械振動の周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い周波数変換効率が得られる。二次高調波生成による周波数変換では、式(11)を満足するように、周波数ω(図5(A)のω12)のポンプ機械振動の周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い周波数変換効率が得られる。
非縮退四波混合による周波数変換では、式(8)と式(9)を満足するように、周波数ωのシグナル機械振動と周波数ωaのポンプ機械振動の各周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い周波数変換効率が得られる。但し、非縮退四波混合の場合は、シグナル機械振動も非線形弾性プロセスに寄与するため、十分に大きな振幅強度、つまり非線形振動を有していなければならない。
パラメトリック下方変換による周波数変換では、式(12)を満足するように、周波数ω(図5(B)のω12)のポンプ機械振動の周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い周波数変換効率が得られる。
こうして、本実施の形態では、薄膜から構成されるフォノニック導波路を伝搬する機械振動を異なる周波数をもつ新たな機械振動へ変換可能となる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態では、機械振動の再生成について説明する。本実施の形態においても、フォノニック導波路の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図6(A)〜図6(C)の符号を用いて説明する。
[縮退四波混合による信号再生成]
振動増幅の場合と同様に、図11に示すように、フォノニック導波路108の一端に設置した電極105aとSiドープGaAs層102との間に信号発生器110から周波数ωの交流電圧(シグナル)と、周波数ωと異なる周波数ωaの交流電圧(ポンプ)とを同時に印加し、微弱な振幅をもつシグナル機械振動と大きい振幅をもつポンプ機械振動をフォノニック導波路108内に誘起する。
本実施の形態の場合、ポンプ機械振動は任意のビット列情報を運んでいることを想定しているため、時間領域で観ると、ポンプ機械振動はある一定のER比を有するパルス列を形成している。このようなビット列情報は、周波数ωaの交流電圧によって入力できることは言うまでもない。そして、本実施の形態では、ポンプ機械振動の最大振幅強度と最小振幅強度とが図4と式(10)に記す急峻なスロープ内にあるように調整する。上記のとおり、ポンプ機械振動の振幅強度は、周波数ωaの交流電圧の振幅によって設定可能である。
一方で、シグナル機械振動は連続波で与えられる。フォノニック導波路108を伝搬するポンプ機械振動は縮退四波混合を引き起こし、ポンプ機械振動のパルス列と同じアイドラ機械振動パルス列(周波数ωc)が発生する。新しく発生したアイドラ機械振動パルス列のER比(ERout)は、図4の関係によりポンプ機械振動のER比(ERin)より大きくなるため、パルス信号の再生成がアイドラ周波数ωcにおいて可能となる。
振動増幅や周波数変換と同様、信号再生成の高効率化を求めるのであれば、式(8)と式(9)を満足するように、周波数ωのシグナル機械振動と周波数ωaのポンプ機械振動の各周波数と振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整することが望ましい。
また、その他の三次高調波生成や非縮退四波混合、さらには二次高調波生成、パラメトリック下方変換過程による信号再生成においても、図2(B)、図3(C)、図5(A)、図5(B)に示したエネルギーダイアグラムと位相整合条件を満足するようにポンプ機械振動の周波数を選択すれば、高効率な信号再生成が得られる。
但し、高次高調波生成過程を用いる場合は、ポンプ機械振動自身がその振幅強度によって引き起こされる非線形弾性効果を介して異なる高次の機械振動へと変化するため、シグナル機械振動は不要となり、ポンプ機械振動のみを誘起すればよい。すなわち、三次高調波生成による周波数変換では、式(6)と式(7)を満足するように、周波数ωのポンプ機械振動の周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い信号再生成効率が得られる。二次高調波生成による周波数変換では、式(11)を満足するように、周波数ω(図5(A)のω12)のポンプ機械振動の周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い信号再生成効率が得られる。
パラメトリック下方変換による振動増幅では、式(12)を満足するように、周波数ω(図5(B)のω12)のポンプ機械振動の周波数や振幅強度、フォノニック導波路108の構造分散を調整すれば、高い信号再生成効率が得られる。
こうして、本実施の形態では、薄膜から構成されるフォノニック導波路を伝搬する機械振動パルス列のER比を改善させることが可能となる。
なお、第1〜第3の実施の形態において、周波数変換と増幅、再生成は原理的には切り分け不可能である。ただし、シグナル機械振動からアイドラ機械振動への周波数変換が目的の場合、アイドラ機械振動を誘起できさえすればよいので、シグナル機械振動の振幅が同時に増幅されたとしても、このシグナル機械振動が周波数の異なるアイドラ機械振動へ悪影響を及ぼすことは基本的にないので、シグナル機械振動の増幅が問題になることはない。
また、シグナル機械振動の増幅が目的の場合、アイドラ機械振動が誘起されたとしても、ここで対象としているものは周波数の異なるシグナル機械振動の振幅なので、アイドラ機械振動が発生しても問題になることはない。周波数変換過程におけるシグナル機械振動の増幅、シグナル機械振動増幅過程におけるアイドラ機械振動の生成を避けたいのであれば、シグナル機械振動とアイドラ機械振動の周波数が異なることを考慮して、除きたい方の機械振動の周波数をカバーしたフィルタを使用することで目的外の機械振動を排除することができる。
再生成は、言い換えると周波数変換を、任意のパルス列を持つ機械振動に適用することと同義なので、パルス列に対して周波数変換を実施すると、得られるアイドラ機械振動パルス列のER比は原理的に必ず入力の機械振動パルス列よりも大きくなる。したがって、再生成は周波数変換過程において必ず発生すると言えるが、周波数変換過程においてアイドラ機械振動パルス列のER比が改善されることが問題になることはない。
本発明は、機械振動の増幅技術、周波数変換技術、再生成技術に適用することができる。
100…GaAs基板、101…Al0.65Ga0.35As層、102…SiドープGaAs層、103…Al0.27Ga0.73As層、105a,105b…電極、106…孔、107…空間、108…フォノニック導波路、110…信号発生器、111…ヘリウムネオンレーザ、112…フォトダイオード、113…ベクトル・シグナル・アナライザ。

Claims (7)

  1. 基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、シグナル機械振動と、このシグナル機械振動と周波数が異なるポンプ機械振動とを誘起する振動誘起ステップを含み、
    縮退/非縮退四波混合による機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記シグナル機械振動と前記ポンプ機械振動の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するシグナル機械振動およびポンプ機械振動と周波数が異なるアイドラ機械振動を生成することを特徴とする機械振動のパラメトリック制御方法。
  2. 基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、ポンプ機械振動を誘起する振動誘起ステップを含み、
    三次高調波生成、二次高調波生成またはパラメトリック下方変換といった機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記ポンプ機械振動の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するポンプ機械振動と周波数が異なるアイドラ機械振動を生成することを特徴とする機械振動のパラメトリック制御方法。
  3. 基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、シグナル機械振動と、このシグナル機械振動と周波数が異なるポンプ機械振動とを誘起する振動誘起ステップを含み、
    縮退/非縮退四波混合、三次高調波生成、二次高調波生成またはパラメトリック下方変換といった機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記シグナル機械振動と前記ポンプ機械振動の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するシグナル機械振動の振幅を増強することを特徴とする機械振動のパラメトリック制御方法。
  4. 基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、シグナル機械振動と、このシグナル機械振動と周波数が異なるポンプ機械振動パルス列とを誘起する振動誘起ステップを含み、
    縮退/非縮退四波混合による機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記シグナル機械振動と前記ポンプ機械振動パルス列の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するシグナル機械振動およびポンプ機械振動パルス列と周波数が異なり、前記ポンプ機械振動パルス列の消振動比よりも大きな消振動比を有するアイドラ機械振動パルス列を生成することを特徴とする機械振動のパラメトリック制御方法。
  5. 基板との間に空間をあけて配置された薄膜からなる導波路部と、前記基板上に形成され、機械振動の伝搬方向と垂直な方向から前記導波路部を支える支持部とを備えたフォノニック導波路に、ポンプ機械振動パルス列を誘起する振動誘起ステップを含み、
    三次高調波生成、二次高調波生成またはパラメトリック下方変換といった機械振動のパラメトリック現象を実現する非線形弾性効果が誘起されるように、前記ポンプ機械振動パルス列の周波数および振幅と、前記フォノニック導波路の寸法が設定されることにより、前記フォノニック導波路を伝搬するポンプ機械振動パルス列と周波数が異なり、前記ポンプ機械振動パルス列の消振動比よりも大きな消振動比を有するアイドラ機械振動パルス列を生成することを特徴とする機械振動のパラメトリック制御方法。
  6. 請求項1、3、4のいずれか1項に記載の機械振動のパラメトリック制御方法において、
    前記薄膜は、圧電特性をもつ物質からなり、
    前記振動誘起ステップは、前記シグナル機械振動を誘起するための電圧と前記ポンプ機械振動を誘起するための電圧とを、前記薄膜の一部の上に形成された電極に印加することにより、前記フォノニック導波路に前記シグナル機械振動と前記ポンプ機械振動とを誘起するステップを含むことを特徴とする機械振動のパラメトリック制御方法。
  7. 請求項2、5のいずれか1項に記載の機械振動のパラメトリック制御方法において、
    前記薄膜は、圧電特性をもつ物質からなり、
    前記振動誘起ステップは、前記ポンプ機械振動を誘起するための電圧を、前記薄膜の一部の上に形成された電極に印加することにより、前記フォノニック導波路に前記ポンプ機械振動を誘起するステップを含むことを特徴とする機械振動のパラメトリック制御方法。
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