しかしながら、特許文献2の図1に記載されているように、永久磁石(1)が取り付けられた回転板(200)の回転方向の接線方向と鉄芯(21)(磁性素子)の長さ方向とが平行となるようにセンサコイル(2)(磁界検出部)を配置した回転検出装置には、次のような問題が生じ得る。
例えば、特許文献2の図2(a)に記載されているように、回転板(200)の回転により、N極の永久磁石(1)と、センサコイル(2)の一端(2a)側とが互いに接近したときには、永久磁石(1)により形成された磁界が、センサコイル(2)の一端(2a)側から他端(2b)側に向かって鉄芯(21)を通過するので、鉄芯(21)は一の方向に磁化される。また、特許文献2の図2(b)に記載されているように、回転板(200)の回転により、N極の永久磁石(1)と、センサコイル(2)の他端(2b)側とが互いに接近したときには、永久磁石(1)により形成された磁界が、センサコイル(2)の他端(2b)側から一端(2a)側に向かって鉄芯(21)を通過するので、鉄芯(21)は上記一の方向とは反対の方向に磁化される。そして、鉄芯(21)の磁化の方向の変化に応じたパルス信号がセンサコイル(2)のコイル線(22)から出力される。
このように、回転板(200)が回転する間、永久磁石(1)とセンサコイル(2)の一端(2a)側とが互いに接近した場合と、永久磁石(1)とセンサコイル(2)の他端(2b)側とが互いに接近した場合に限り、鉄芯(21)の磁化の方向が変化するのであれば、回転板(200)の回転状態を精度良く検出することができる。ところが、これら以外の場合に鉄芯(21)の磁化の方向が変化することがある。すなわち、回転板(200)の回転により、永久磁石(1)とセンサコイル(2)の長さ方向中間部とが互いに接近したとき、鉄芯(21)の磁化の状態が不安定になり、鉄芯(21)の磁化の方向が変化することがある。この磁化方向の変化は、永久磁石(1)とセンサコイル(2)の長さ方向中間部とが互いに接近したときに常に生じるのではなく、生じるときと生じないときがあり、この磁化方向の変化が生じるか否かを予測することは困難である。
このような鉄芯(21)の磁化方向の予測不能な変化が生じる原因は、永久磁石(1)により鉄芯(21)に付与される磁界の方向が、鉄芯(21)の中間部から一端部にかけての部分と中間部から他端部にかけての部分とで異なるからであると考えられる。鉄芯(21)に付与される磁界の方向が、鉄芯(21)の中間部から一端部にかけての部分と中間部から他端部にかけての部分とで異なると、鉄芯(21)の磁化の方向が全体的に変化する場合と変化しない場合があり、変化が生じるか否かは予測困難である。また、鉄芯(21)の中間部から一端部にかけての部分と中間部から他端部にかけての部分とで異なる方向の磁界が同時に付与されることにより、鉄芯(21)において磁化の方向が部分的変化することもある。この場合には、コイル線(22)からパルス信号が出力されるが、その出力レベルは低く、ばらつきを有する。このような低くばらついたパルス信号を後段の検出回路で正確に検出することは困難であり、結果的に、鉄芯(21)における磁化の方向の変化を正確に把握することができない。
このような磁化の方向の予測不能な変化が生じると、予測不能なタイミングでコイル線(22)からパルス信号が出力され、回転板(200)の回転状態を精度良く検出することが困難になる。
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、磁界検出部を構成する磁性素子の磁化の方向の予測不能な変化を防止して被検出物の回転の検出精度を良くすることができると共に、回転軸方向の寸法の小さい回転検出装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の第1の回転検出装置は、軸線の周囲に前記軸線方向に互いに離間して設けられ、いずれか一方が前記軸線を回転軸として回転する第1の支持体および第2の支持体と、前記第1の支持体に固定され、前記第2の支持体に臨み、前記軸線の周囲に周方向にそれぞれ離間して配置され、極性が互いに異なり、前記第1の支持体と前記第2の支持体との間の領域に磁界を形成する少なくとも2つの磁界形成部と、長さ方向における一の方向と他の方向との間で磁化の方向が変化する棒状またはワイヤ状の磁性素子にコイルを巻回することにより形成され、前記第2の支持体に固定され、前記第1の支持体に臨み、前記軸線を中心点とし前記少なくとも2つの磁界形成部のそれぞれと重なり合う円周の接線と前記磁性素子の長さ方向とが平行となるように配置され、前記磁界形成部により形成された磁界を検出する少なくとも1つの磁界検出部と、磁性材料により形成され、前記第2の支持体に固定され、前記磁界検出部の長さ方向の一端部および他端部において前記第1の支持体に臨む部分を覆わず、前記磁界検出部の長さ方向の中間部において前記第1の支持体に臨む部分を覆い、前記磁界検出部の長さ方向の一端部と他端部とにそれぞれ付与される互いに逆方向の磁界を抑制する隔壁部材とを備えていることを特徴とする。
本発明の第1の回転検出装置において、第1に支持体には、例えば、N極の第1の磁界形成部とS極の第2の磁界形成部とが軸線の周囲に周方向にそれぞれ離間して配置されている。これにより、第1の支持体と第2の支持体との間の領域には、第1の磁界形成部から第2の磁界形成部に向いた磁界が形成される。第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方が回転すると、相対的にみて、磁界検出部は、このような磁界が形成された領域中を周方向に移動する。
第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方の回転により、第1の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向一端部とが互いに接近し、かつ第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向他端部とが互いに接近すると、第1の磁界形成部から第2の磁界形成部に向いた磁界により、磁界検出部の磁性素子がその一端部から他端部に向いた方向に磁化される。また、第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方の回転により、第1の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向他端部とが互いに接近し、かつ第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向一端部とが互いに接近すると、第1の磁界形成部から第2の磁界形成部に向いた磁界により、磁界検出部の磁性素子がその他端部から一端部に向いた方向に磁化される。このように、第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方が回転するのに伴って磁性素子の磁化の方向が変化するので、磁性素子の磁化の方向の変化に基づき、第1の支持体または第2の支持体の回転状態を検出することができる。
ここで、磁界検出部はその長さ方向の一端部および他端部において第1の支持体に臨む部分が隔壁部材に覆われておらず、その長さ方向の中間部において第1の支持体に臨む部分が隔壁部材に覆われている。隔壁部材は磁性材料により形成されているので磁気シールド効果を発揮する。これにより、磁性素子の長さ方向一端部(または他端部)から入り込み、磁性素子を通過し、磁性素子の長さ方向他端部(または一端部)から抜け出る磁界が形成され易くなり、その一方で、磁性素子の長さ方向中間部から入り込み、磁性素子の長さ方向一端部(または他端部)から抜け出る磁界や、磁性素子の長さ方向一端部(または他端部)から入り込み、磁性素子の長さ方向中間部から抜け出る磁界は形成され難くなる。
したがって、第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方が回転している間に、第1の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向一端部とが互いに接近し、かつ第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向他端部とが互いに接近したとき、または、第1の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向他端部とが互いに接近し、かつ第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向一端部とが互いに接近したときには、磁性素子の磁化の方向を確実に変化させることができる。その一方で、第1または第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向中間部とが互いに接近したときには、磁性素子の磁化の方向が変化してしまうことを防ぐことができる。よって、第1の支持体または第2の支持体の回転の誤検出を防止することができる。
上記課題を解決するために、本発明の第2の回転検出装置は、上述した本発明の第1の回転検出装置において、前記隔壁部材は、前記円周の一部と対応する領域まで伸張していることを特徴とする。
本発明の第2の回転検出装置によれば、第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方が回転している間に、第1または第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向中間部とが互いに接近したとき、第1または第2の磁界形成部と磁界検出部の中間部との間を隔壁部材で確実に遮ることができる。これにより、第1または第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向中間部とが互いに接近したときに磁性素子の磁化の方向が変化してしまうことを効果的に防ぐことができる。したがって、第1の支持体または第2の支持体の回転の誤検出を効果的に防止することができる。
上記課題を解決するために、本発明の第3の回転検出装置は、上述した本発明の第2の回転検出装置において、前記隔壁部材は、前記円周の一部と対応する領域において当該円周に沿って周方向に拡がっていることを特徴とする。
本発明の第3の回転検出装置によれば、第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方が回転している間に、第1または第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向中間部とが互いに接近したとき、第1または第2の磁界形成部と磁界検出部の中間部との間を隔壁部材で広範囲に亘って遮ることができる。これにより、第1または第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向中間部とが互いに接近したときに磁性素子の磁化の方向が変化してしまうことをより効果的に防ぐことができ、第1の支持体または第2の支持体の回転の誤検出をより効果的に防止することができる。
上記課題を解決するために、本発明の第4の回転検出装置は、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの回転検出装置において、前記隔壁部材において、前記磁界検出部の中間部と対応する部分には、前記磁界検出部の長さ方向と一致する方向の寸法が他の部分よりも小さいくびれ部が形成されていることを特徴とする。
本発明の第4の回転検出装置によれば、磁界検出部の一端部を含む広い範囲、および磁界検出部の他端部を含む広い範囲を、各磁界形成部により形成される磁界に曝すことができる。これにより、第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方が回転している間に、第1の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向一端部とが互いに接近し、かつ第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向他端部とが互いに接近したとき、または第1の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向他端部とが互いに接近し、かつ第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向一端部とが互いに接近したときに、磁性素子に付与される磁界を強くすることができ、磁性素子の磁化の方向を確実に変化させることができる。したがって、第1の支持体または第2の支持体の回転の検出精度を高めることができる。
上記課題を解決するために、本発明の第5の回転検出装置は、上述した本発明の第1の回転検出装置において、前記隔壁部材は、前記各磁界形成部と軸線との距離以上の半径を有する円盤状に形成され、前記磁界検出部の長さ方向の一端部に対応する部分および前記磁界検出部の長さ方向の他端部に対応する部分のそれぞれに孔が形成されていることを特徴とする。
本発明の第5の回転検出装置によれば、第1の支持体および第2の支持体のいずれか一方が回転している間に、第1または第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向中間部とが互いに接近したとき、第1の磁界形成部と第2の磁界形成部との間の磁界の経路を隔壁部材の中に形成することができる。これにより、当該磁界は、隔壁部材中の経路を通過し、磁気素子中を通過しなくなる。したがって、第1または第2の磁界形成部と磁界検出部の長さ方向中間部とが互いに接近しても、このために磁性素子の磁化の方向が変化してしまうことをより一層効果的に防ぐことができ、第1の支持体または第2の支持体の回転の誤検出をより一層効果的に防止することができる。
本発明によれば、磁界検出部を構成する磁性素子の磁化の方向の予測不能な変化を防止して被検出物の回転の検出精度を良くすることができると共に、回転検出装置の回転軸方向の寸法を小さくすることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態による回転検出装置を示している。図1において、本発明の実施形態による回転検出装置1は、被検出物の回転状態、例えば回転数および回転方向を検出することができる装置である。回転検出装置1のハウジング2内には、第1の支持体11および第2の支持体12が収容されている。ハウジング2内において、第1の支持体11および第2の支持体12は、軸線Aがそれぞれの中心を貫くように相互に位置が定められている。また、第1の支持体11および第2の支持体12は、軸線Aの伸長方向、すなわち軸線方向に互いに離間するように配置されている。また、第1の支持体11は軸線Aを回転軸として回転することができる。一方、第2の支持体12はハウジング2に固定されており、回転しない。また、ハウジング2にはシャフト3が回転可能に支持されている。シャフト3は軸線Aを回転軸として回転することができる。シャフト3の一方の端部は図示しない被検出物に接続され、シャフト3の他方の端部はハウジング2内において第1の支持体11に接続されている。これにより、被検出物が回転すると、その回転がシャフト3を介して第1の支持体11に伝わり、第1の支持体11がハウジング2内で回転する。
図2は、回転検出装置1の第1の支持体11を図1中の矢示II−II方向から見た図である。図2に示すように、第1の支持体11には4つの磁界形成部としての磁石21、22、23、24が設けられている。各磁石21、22、23、24は例えば板状の永久磁石である。磁石21、22、23、24は第1の支持体11において第2の支持体12に臨む面11Aに固定されている。第1の支持体11の面11A上において、磁石21、22、23、24は、軸線Aの周囲に周方向にそれぞれ離間して配置されている。磁石21、22、23、24は、例えば周方向に等しい間隔をもって並べられている。磁石21、22、23、24は、例えば90度ごとに配置されている。磁石21、22、23、24は、周方向に極性が交互に異なるように配置されている。例えば、磁石21、22、23、24において第2の支持体12に臨む側の極性がそれぞれN極、S極、N極、S極となるように配置されている。磁石21、22、23、24は、第1の支持体11と第2の支持体12との間の領域に磁界を形成する。また、図2中の二点鎖線は、4つの磁石21、22、23、24のそれぞれと重なり合う円周Rを示している。第1の支持体11が回転すると、磁石21、22、23、24の回転の軌跡が円周Rと一致する。
図3は、回転検出装置1の第2の支持体12を図1中の矢示III−III方向から見た図であり、図4は隔壁部材41および円周Rを図3から抜き出した図である。図3に示すように、第2の支持体12には3つの磁界検出部31、32、33が設けられている。各磁界検出部31、32、33は、後述するワイヤ状または棒状の磁性素子35の周囲にコイル36を巻回することにより形成されている。磁界検出部31、32、33は、第2の支持体12において第1の支持体11に臨む面12Aに固定されている。第2の支持体12の面12A上において、磁界検出部31、32、33は、軸線Aの周囲に周方向にそれぞれ離間して配置されている。磁界検出部31、32、33は、例えば周方向に等しい間隔をもって並べられている。磁界検出部31、32、33は、例えば120度ごとに配置されている。また、各磁界検出部31、32、33は、磁性素子35の長さ方向が円周Rの接線と平行となるように位置が定められている。また、各磁界検出部31、32、33は、磁性素子35の一端および他端が円周Rと重なるように位置が定められている。また、各磁界検出部31、32、33は、磁性素子35の一端と軸線Aとの間の距離と、磁性素子35の他端と軸線Aとの間の距離とが互いに等しくなるように配置されている。また、各磁界検出部31、32、33は、磁石21、22、23、24により形成された磁界を検出する。
各磁界検出部31、32、33は磁性素子35として複合磁気ワイヤを採用している。一般に、複合磁気ワイヤは、細いワイヤ状の強磁性体である。複合磁気ワイヤは、その外周部は比較的小さな外部磁界の付与によって磁化の方向が変化するのに対し、中心部は比較的大きな外部磁界を付与しなければ磁化の方向が変化しないといった独特な磁気特性を有する一軸異方性の複合磁性体である。複合磁気ワイヤの長さ方向と平行な一の方向に、複合磁気ワイヤの中心部の磁化の方向を反転させるのに十分な比較的大きな外部磁界を付与すると、複合磁気ワイヤの中心部の磁化の方向と外周部の磁化の方向とが同じ方向に揃う。その後、複合磁気ワイヤの長さ方向と平行であり、上記一の方向とは逆である他の方向に、複合磁気ワイヤの外周部の磁化の方向だけを反転させることができる程度の比較的小さな外部磁界を付与すると、複合磁気ワイヤの中心部の磁化の方向は変化せず、外周部の磁化の方向だけが反転する。この結果、複合磁気ワイヤは、その中心部と外周部とで磁化の方向が異なる状態となり、この状態は外部磁界を取り除いても維持される。
ここで、中心部が上記一の方向に磁化され、外周部が上記他の方向に磁化された状態の複合磁気ワイヤに、上記一の方向に外部磁界を付与する。このとき、外部磁界の強さを始めは小さくし、その後、外部磁界の強さを徐々に増加させる。すると、外部磁界の強さがある強度を超えたときに、大バルクハウゼン効果が生じ、複合磁気ワイヤの外周部の磁化の方向が上記他の方向から上記一の方向へ急激に反転する。そして、複合磁気ワイヤの磁化方向の急激な反転により生じる起電力により、例えば正の方向に鋭く立ち上がるパルス状の電気信号が、複合磁気ワイヤに巻回されたコイルから出力される。
また、中心部および外周部がいずれも上記一の方向に磁化された状態の複合磁気ワイヤに、上記他の方向に外部磁界を付与する。このときも、外部磁界の強さを始めは小さくし、その後、外部磁界の強さを徐々に増加させる。すると、外部磁界の強さがある強度を超えたときに、複合磁気ワイヤの外周部の磁化の方向が上記一の方向から上記他の方向へ急激に反転する。そして、複合磁気ワイヤの磁化方向の急激な反転により生じる起電力により、例えば負の方向に鋭く立ち上がるパルス状の電気信号が、複合磁気ワイヤに巻回されたコイルから出力される。
このような複合磁気ワイヤを磁性素子35として採用している各磁界検出部31、32、33において、磁性素子35の磁化方向の変化が複合磁気ワイヤの外周部の磁化方向の変化を意味するものとすると、磁性素子35に外部磁界が付与され、これにより磁性素子35の磁化方向が変化すると、当該磁性素子35に巻回されたコイル36からパルス状の電気信号である検出信号が出力される。回転検出装置1において、磁性素子35に付与される外部磁界に相当するものは、磁石21と磁石22とにより形成される磁界、磁石22と磁石23とにより形成される磁界、磁石23と磁石24とにより形成される磁界、および磁石24と磁石21とにより形成される磁界である。いずれか1つの磁性素子35に着目すると、第1の支持体11が回転することにより、これら4つの磁界が当該磁性素子35に順次付与される。当該磁性素子35と磁石21、22、23、24との位置関係から、当該磁性素子35に付与される磁界が切り替わるごとに磁界の方向が切り替わるので、当該磁界が切り替わるごとに、当該磁性素子35の磁化方向が変化し、これに伴い当該磁性素子35に巻回されたコイル36から検出信号が出力される。
また、回転検出装置1において、磁石21、22、23、24は例えば90度間隔で配置されているのに対し、磁界検出部31、32、33は例えば120度間隔で配置されている。したがって、第1の支持体11が回転する間に、磁界検出部31、32、33から検出信号が出力されるタイミングが重なり合うことがない。磁界検出部31、32、33からそれぞれ異なるタイミングで出力される検出信号を用いて所定の処理を行うことにより、被検出物の回転数および回転方向を検出することができる。
一方、図3に示すように、第2の支持体12には隔壁部材41が設けられている。隔壁部材41は磁性材料により形成され、例えば、所定の形状に形成された1枚の鉄板を折り曲げることにより形成されている。隔壁部材41は第2の支持体12に固定されている。隔壁部材41は、各磁界検出部31、32、33の長さ方向の一端部および他端部において第1の支持体11に臨む部分を覆わず、各磁界検出部31、32、33の長さ方向の中間部において第1の支持体11に臨む部分を覆っている。また、図1に示すように、隔壁部材41は、各磁界検出部31、32、33の中間部に接近しているものの、接触はしておらず、また、磁石21、22、23、24とも接触しないように配置されている。
具体的に説明すると、隔壁部材41は、図3に示すように、磁界検出部31、32、33の個数に対する個数の隔壁部42と、各隔壁部42を連結する連結部43とを有している。連結部43は、第2の支持体12の面12Aの中央部であって、面12Aから離れた位置に配置されている。各隔壁部42は連結部43から第2の支持体12の外周側へ面12Aと平行に放射状に伸長し、第2の支持体12の外周部において、第2の支持体12に接近する方向に折れ曲がり、各隔壁部42において第2の支持体12の外周部に位置する端部が第2の支持体12に固定されている。
また、図4に示すように、各隔壁部42には拡張部44が形成されている。すなわち、各隔壁部42は円周Rの一部と対応する領域まで伸張している。そして、各隔壁部42において、円周Rの一部と対応する領域まで伸張した部分は、円周Rに沿って周方向に拡がっている。この拡がった部分が拡張部44である。拡張部44により、各磁界検出部31、32、33において、その中間部を含む広い部分が磁石21、22、23、24により形成される磁界から遮断される。
また、各隔壁部42にはくびれ部45が形成されている。すなわち、各隔壁部42において、磁界検出部31、32または33の中間部と対応する部分は、磁界検出部31、32または33の長さ方向と一致する方向の寸法が他の部分よりも小さくなり、くびれた形状となっている。このくびれた部分がくびれ部45である。くびれ部45により、各磁界検出部31、32、33において、その一端部および他端部を含む広い部分が磁石21、22、23、24により形成される磁界に曝される。
図5ないし図8は、磁界検出部31の周囲において、磁石21、22、23、24により磁界が形成される様子を示している。図5に示すように、第1の支持体11の回転により、磁石21と磁界検出部31の一端部とが互いに接近し、磁石22と磁界検出部31の他端部とが互いに接近したとき、磁石21と磁石22とにより形成された磁界が磁界検出部31の磁性素子35に付与される。この磁界は、図5中の矢印が示すように、磁石21から磁石22へ向かう磁界であり、この磁界の方向は当該磁性素子35の長さ方向と一致する。したがって、当該磁性素子35は、当該磁性素子35の一端部から他端部に向かう方向に磁化される。
また、磁界検出部31の一端部および他端部は、隔壁部材41で覆われておらず、第1の支持体11と第2の支持体12との間の領域に曝されているので、磁石21、22と磁界検出部31の一端部、他端部とがそれぞれ互いに接近したときには、磁石21、22と磁界検出部31の一端部、他端部との間を磁気的に隔てるものがない。したがって、磁石21、22により形成される磁界が磁界検出部31の磁性素子35の一端部から当該磁性素子35に入り込み易く、また、当該磁性素子35に入り込んだ磁界が、当該磁性素子35の他端部から外部へ抜け出易い。これにより、当該磁性素子35の磁化の方向を、磁石21、22により形成される磁界の方向と確実に一致させることができる。
さらに、隔壁部材41の隔壁部42に形成されたくびれ部45により、磁界検出部31の一端部における広い範囲、および磁界検出部31の他端部における広い範囲が、第1の支持体11と第2の支持体12との間の領域に曝されている。したがって、磁石21、22により形成される磁界が磁界検出部31の磁性素子35の一端部から当該磁性素子35に、より一層入り込み易く、また、当該磁性素子35に入り込んだ磁界が、当該磁性素子35の他端部から外部へ、より一層抜け出易い。これにより、当該磁性素子35の磁化の方向を、磁石21、22により形成される磁界の方向と、より一層確実に一致させることができる。
図5を参照しながら説明した以上の点は、磁石23、24と磁界検出部31の一端部、他端部とがそれぞれ互いに接近したときも同様である。また、他の磁界検出部32、33についても同様である。
また、図6に示すように、第1の支持体11の回転により、磁石22と磁界検出部31の一端部とが互いに接近し、磁石23と磁界検出部31の他端部とが互いに接近したときは、磁石22と磁石23とにより形成された磁界が磁界検出部31の磁性素子35に付与される。この磁界は、図6中の矢印が示すように、磁石23から磁石22へ向かう磁界であり、この磁界の方向は、図5に示す場合とは逆方向となるものの当該磁性素子35の長さ方向と一致する。この場合、当該磁性素子35は、当該磁性素子35の他端部から一端部に向かう方向に磁化される。また、この場合も、磁界検出部31の一端部および他端部は、隔壁部材41に覆われておらず、さらにくびれ部45により、第1の支持体11と第2の支持体との間の領域に広い範囲で曝されているので、当該磁性素子35の磁化の方向を、磁石22、23により形成される磁界の方向と確実に一致させることができる。この点については、磁石24、21と磁界検出部31の一端部、他端部とがそれぞれ互いに接近したときも同様である。また、他の磁界検出部32、33についての同様である。
一方、図7に示すように、第1の支持体11の回転により、磁石21と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときには、磁石21から磁界検出部31に付与される磁界が隔壁部材41により遮断または抑制される。すなわち、磁界検出部31の中間部は隔壁部材41により覆われているので、磁石21と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときには、磁石21と磁界検出部31の中間部との間は隔壁部材41により磁気的に隔てられる。したがって、磁石21により形成される磁界(主に、磁石21から磁石22へ向かう磁界、および磁石21から磁石24へ向かう磁界)は、磁界検出部31の磁性素子35の中間部から当該磁性素子35に入り込み難い。この場合、磁石21により形成された磁界は、その大部分が、図7中の矢印に示すように隔壁部材41を通って磁石22または磁石24へ向かい、磁界検出部31の磁性素子35を通過しない。これにより、磁石21が磁界検出部31の中間部を通過するときに、磁界検出部31の磁性素子35内にその中間部から一端部または他端部に向かう磁界が形成されるのを抑制することができ、このときに磁性素子35に付与される磁界の強さを、磁性素子35の磁化方向が変化しない程度の強さとなるように制限することができる。したがって、磁石21が磁界検出部31の中間部を通過するときに、磁性素子35の磁化の方向が予測不能に変化することを防止することができる。
さらに、隔壁部材41の隔壁部42に形成された拡張部44により、磁界検出部31の中間部は、磁石21の移動経路、すなわち円周Rに沿って広い範囲で覆われており、この結果、磁石21が磁界検出部31の中間部を通過するときには、磁石21と磁界検出部31の中間部との間の広い範囲が磁気的に遮断される。したがって、磁石21により形成される磁界は、磁界検出部31の磁性素子35の中間部から当該磁性素子35に、より一層入り込み難い。これにより、磁界検出部31の磁性素子35内にその中間部から一端部または他端部に向かう磁界が形成されるのを、より一層抑制することができ、このような磁界により磁性素子の磁化の方向が予測不能に変化することを効果的に防止することができる。
図7を参照しながら説明した以上の点は、磁石23と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときも同様である。また、他の磁界検出部32、33についても同様である。
また、図8に示すように、第1の支持体11の回転により、磁石22と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときには、磁石22により磁界検出部31に付与される磁界が隔壁部材41により遮断または抑制される。すなわち、磁石22と磁界検出部31の中間部との間は隔壁部材41により磁気的に隔てられているので、磁石23から磁界検出部31の磁性素子35の他端部へ入り込み、当該磁性素子35の一部を通過して当該磁性素子35の中間部から磁石22へ向かう磁界も、磁石21から磁界検出部31の磁性素子35の一端部へ入り込み、当該磁性素子35の一部を通過して当該磁性素子35の中間部から磁石22へ向かう磁界も形成され難い。さらに、このような磁界遮断効果が発揮される範囲は、拡張部44により拡張されている。この場合、磁石21、23のそれぞれから磁石22へ向かう磁界は、その大部分が、図8中の矢印に示すように、隔壁部材41を通って進み、磁界検出部31の磁性素子35を通過しない。これにより、磁石22が磁界検出部31の中間部を通過するときに、磁界検出部31の磁性素子35内にその一端部または他端部から中間部に向かう磁界が形成されるのを効果的に抑制することができ、このような磁界により磁性素子35の磁化の方向が予測不能に変化することを効果的に防止することができる。この点については、磁石24と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときも同様である。また、他の磁界検出部32、33についても同様である。
図9(1)は、隔壁部材41を取り除いた回転検出装置1において、磁界検出部31の磁性素子35の一端からの距離と、当該磁性素子35に付与される磁界の磁束密度との関係を示している。図9(2)は、隔壁部材41を設けた回転検出装置1において、磁界検出部31の磁性素子35の一端からの距離と、当該磁性素子35に付与される磁界の磁束密度との関係を示している。なお、図9(1)、(2)では、磁性素子35に付与される磁界のうち、磁性素子35の長さ方向成分の磁界の磁束密度のみを示している。
まず、隔壁部材41を取り除いた回転検出装置1につき、図9(1)を参照しながら検討する。隔壁部材41を取り除いた回転検出装置1を用意し、図5に示すように、磁石21、22と磁界検出部31の一端部、他端部とをそれぞれ互いに接近させ(回転角度θ=0度)、このときの磁界検出部31の磁性素子35に付与される磁界の磁束密度を測定した。当該磁性素子35に付与される磁界の磁束密度は、当該磁性素子35の一端から他端にかけての複数の異なる箇所で測定した。図9(1)中の特性線C1はこの測定結果を示している。特性線C1によれば、磁石21、22と磁界検出部31の一端部、他端部とがそれぞれ互いに接近したときには、当該磁性素子35に付与される磁界の方向が、当該磁性素子35の一端部から他端部にかけてほぼ一定であることがわかる。
また、隔壁部材41を取り除いた回転検出装置1を用い、図8に示すように、磁石22と磁界検出部31の中間部とを互いに接近させ(回転角度θ=45度)、このときの磁界検出部31の磁性素子35に付与される磁界の磁束密度を測定した。先の場合と同様に、当該磁性素子35に付与される磁界の磁束密度の測定は、当該磁性素子35の一端から他端にかけての複数の異なる箇所で行った。図9(1)中の特性線C2はこの測定結果を示している。特性線C2によれば、隔壁部材41がない場合において、磁石22と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときには、当該磁性素子35に付与される磁界の方向が、当該磁性素子35の一端部から中間部との間と、中間部から他端部との間とで逆になっていることがわかる。しかも、磁性素子35の一端部から中間部にかけて付与される磁界の磁束密度は正の方向に大きく、磁性素子35の磁化方向の正方向への変化が生じる基準となる磁束密度+Brを超えており、一方、磁性素子35の中間部から他端部にかけて付与される磁界の磁束密度は負の方向に大きく、磁性素子35の磁化方向の負方向への変化が生じる基準となる磁束密度−Brを負の方向に超えている。このため、このときの磁性素子35は磁気的に不安定であり、磁化の方向が変化することがあり、その変化の有無や変化のタイミングは予測することが困難である。このように、磁性素子35の中間部で磁界の極性に大きな変化が生じた原因は、隔壁部材41がないために、磁石22と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときに、磁石21から磁石22に向かう磁界が当該磁性素子35の一端部から中間部にかけて付与され、磁石23から磁石22に向かう磁界が当該磁性素子35の他端部から中間部にかけて付与されたからであると考えられる。
次に、隔壁部材41を設けた場合について図9(2)を参照しながら検討する。隔壁部材41を設けた回転検出装置1を用意し、図5に示すように、磁石21、22と磁界検出部31の一端部、他端部とをそれぞれ互いに接近させ(回転角度=0度)、このときの磁界検出部31の磁性素子35に付与される磁界の磁束密度を測定した。先に述べた場合と同様に、当該磁性素子35に付与される磁界の磁束密度の測定は、当該磁性素子35の一端から他端にかけての複数の異なる箇所で行った。図9(2)中の特性線C3はこの測定結果を示している。特性線C3によれば、隔壁部材41がある場合において、磁石21、22と磁界検出部31の一端部、他端部とがそれぞれ互いに接近したときには、当該磁性素子35に付与される磁界の方向が、当該磁性素子35の一端部から他端部にかけて一定であることがわかる。
また、隔壁部材41を設けた回転検出装置1を用い、図8に示すように、磁石22と磁界検出部31の中間部とを互いに接近させ(回転角度θ=45度)、このときの磁界検出部31の磁性素子35に付与される磁界の磁束密度を測定した。先の場合と同様に、当該磁性素子35に付与される磁界の磁束密度の測定は、当該磁性素子35の一端から他端にかけての複数の異なる箇所で行った。図9(2)中の特性線C4はこの測定結果を示している。特性線C4によれば、隔壁部材41がある場合において、磁石22と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときには、当該磁性素子35に付与される磁界の方向が、当該磁性素子35の一端部から中間部との間と、中間部から他端部との間とで逆になっていることがわかる。ところが、隔壁部材41がある場合には、隔壁部材41がない場合(図9(1)中の特性線C2)と比較して、磁性素子35の一端部から中間部にかけて付与される磁界の磁束密度は正の方向に小さく、磁性素子35の磁化方向の正方向への変化が生じる基準となる磁束密度+Brを超えていない。一方、磁性素子35の中間部から他端部にかけて付与される磁界の磁束密度も負の方向に小さく、磁性素子35の磁化方向の負方向への変化が生じる基準となる磁束密度−Brを負の方向に超えていない。したがって、このときの磁性素子35は磁気的に安定しており、現在設定される磁化の方向が保持される。このように磁性素子35の中間部で磁界の強さが小さく抑えられているのは、磁性素子35の中間部に付与される磁界が隔壁部材41により抑制されているからであると考えられる。
このように、本発明の実施形態による回転検出装置1によれば、第1の支持体11が回転している間に、磁石21、22、23、24と磁界検出部31、32、33の一端部および他端部とがそれぞれ互いに接近したときには、磁性素子35の磁化の方向を確実に変化させることができ、その一方で、磁石21、22、23、24と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときには、磁性素子35の磁化の方向が変化してしまうことを防ぐことができる。したがって、磁性素子35の磁化方向の予測不能な変化により予測不能な検出信号がコイル36から出力され、このために第1の支持体11の回転状態の検出に誤りが生じてしまうことを防止することができ、被検出物の回転の検出精度を高めることができる。また、回転検出装置1において、各磁界検出部31、32、33は、その長さ方向が第1の支持体11の回転方向の接線と平行となるように配置されているので、回転検出装置1の回転軸方向の寸法を小さくすることができる。
なお、本発明の回転検出装置において、隔壁部材の形状は図4に示す形状に限らない。例えば、図10に示す隔壁部材51のように、各隔壁部52がくびれ部55を有するものの拡張部を有していない形状としてもよい。また、図11に示す隔壁部材61のように、各隔壁部62が拡張部もくびれ部も有していない形状としてもよい。
また、図12に示す隔壁部材71のように、隔壁部材を円盤状に形成してもよい。隔壁部材71は、各磁石21、22、23、24と軸線Aとの距離以上の半径を有する円盤状に形成され、各磁界検出部31、32、33の一端部および他端部に対応する部分に孔76が形成されている。すなわち、隔壁部材71は、図4に示す隔壁部材41にリング状連結部77を追加し、各隔壁部72の外周側端部を当該リング状連結部77を介してそれぞれ連結した構成である。隔壁部材71によれば、例えば、磁石21と磁界検出部31の中間部とが互いに接近したときに、磁石21からの磁界が、図12中の矢印に示すように、隔壁部72および連結部73を辿る経路と、リング状連結部77を辿る経路とをそれぞれ通過して磁石22、24に至る。したがって、磁石21からの磁界が磁界検出部31の磁性素子35の中間部から当該磁性素子35内を通過するのを、より一層効果的に抑制することができる。
また、本発明の回転検出装置は、図13に示す回転検出装置101のように、第1の支持体111に2つの磁石121、122を設け、第2の支持体112に1つの磁界検出部131を設け、第2の支持体112に拡張部もくびれ部もリング状連結部も有していない単純な形状の隔壁部材141を設ける構成でも実現可能である。
一方、以上の述べてきたように、回転検出装置の磁界検出部の中間部を隔壁部材で覆うことにより、磁界検出部の磁性素子の中間部から当該磁性素子内に磁界が出入りして、このために磁性素子の磁化の方向が予測不能に変化することを防止するといった作用効果を得ることができるが、磁界検出部の中間部を隔壁部材で覆うことにより、以下に述べるような別の作用効果を得ることもできる。すなわち、図14は、(1)図1ないし図3に示す回転検出装置1から隔壁部材41を取り除いた場合、(2)図1ないし図3に示すように回転検出装置1に隔壁部材41を設けた場合、(3)図1ないし図3に示す回転検出装置1の隔壁部材41を図15に示す隔壁部材81に置き換えた場合について、第1の支持体11の回転角度と磁界検出部31に付与される磁界の磁束密度との関係を示している。なお、図14では、磁界検出部31に付与される磁界のうち、磁界検出部31の長さ方向成分の磁界の磁束密度のみを示している
ここで、回転検出装置1において、第1の支持体11の回転角度が0度のとき、磁石21、22と磁界検出部31の一端部、他端部とがそれぞれ互いに接近することとする。また、第1の支持体11の回転角度が90度のとき、磁石22、23と磁界検出部31の一端部、他端部とがそれぞれ互いに接近することとする。また、第1の支持体11の回転角度が180度のとき、磁石23、24と磁界検出部31の一端部、他端部とがそれぞれ互いに接近することとする。また、第1の支持体11の回転角度が270度のとき、磁石24、21と磁界検出部31の一端部、他端部とがそれぞれ互いに接近することとする。
上記第1の場合には、隔壁部材がないため、磁界検出部31はその全体が第1の支持体11と第2の支持体12との間の領域に曝されている。このため、磁界検出部31の磁性素子35の一端部から中間部に向かう広い範囲、および他端部から中間部に向かう広い範囲において、磁石21、22、23、24により形成された磁界が当該磁性素子35内に出入りする。この結果、図14中の特性線C11に示すように、第1の支持体11の回転角度が0度もしくは0度の前後の広い範囲内にあるとき、90度もしくは90度前後の広い範囲内にあるとき、180度もしくは180度前後の広い範囲内にあるとき、または270度もしくは270度前後の広い範囲内にあるときに、磁性素子35に磁界が付与される。この一方、特性線C11に示すように、磁性素子35に付与される磁界の磁束密度が比較的大きい。
上記第2の場合には、隔壁部材41により磁界検出部31の中間部が覆われているため、磁界検出部31の一端部の小さい範囲および他端部の小さい範囲が第1の支持体11と第2の支持体12との間の領域に曝されている。このため、磁石21、22、23、24により形成された磁界が磁界検出部31の磁性素子35内に出入りする場所は、当該磁性素子35の一端部の小さい範囲および他端部の小さい範囲に限定される。この結果、図14中の特性線C12に示すように、第1の支持体11の回転角度が0度もしくは0度の前後の狭い範囲内にあるとき、90度もしくは90度前後の狭い範囲内にあるとき、180度もしくは180度前後の狭い範囲内にあるとき、または270度もしくは270度前後の狭い範囲内にあるときに、磁性素子35に磁界が付与される。この一方、特性線C12に示すように、上記第1の場合と比較して、磁性素子35に付与される磁界の磁束密度が小さい。
上記第3の場合には、隔壁部材81により磁界検出部31の中間部が覆われている。図15に示すように、隔壁部材81の各隔壁部82の幅寸法(磁界検出部31、32または33の長さ方向に対応する方向の寸法)が、図3に示す隔壁部材41の各隔壁部42の幅寸法よりも大きい。このため、磁界検出部31の一端部のきわめて小さい範囲および他端部のきわめて小さい範囲が第1の支持体11と第2の支持体12との間の領域に曝されている。このため、磁石21、22、23、24により形成された磁界が磁界検出部31の磁性素子35内に出入りする場所は、当該磁性素子35の一端部のきわめて小さい範囲および他端部のきわめて小さい範囲に限定される。この結果、図14中の特性線C13に示すように、第1の支持体11の回転角度が0度もしくは0度前後のきわめて狭い範囲内にあるとき、90度もしくは90度前後のきわめて狭い範囲内にあるとき、180度もしくは180度前後のきわめて狭い範囲内にあるとき、または270度もしくは270度前後のきわめて狭い範囲内にあるときに、磁性素子35に磁界が付与される。この一方、特性線C13に示すように、上記第2の場合と比較して、磁性素子35に付与される磁界の磁束密度が小さい。
このように、回転検出装置1に図3に示す隔壁部材41を設けることにより、隔壁部材を設けない場合と比較して、磁石21、22、23、24が磁界検出部31(32、33)の一端部および他端部にそれぞれ接近したときに当該磁界検出部31(32、33)の磁性素子35の一端部と他端部との間に磁界が付与される期間を短くすることができる。これにより、例えば第1の支持体11の回転角度が正確に0度、90度、180度または270度となったときに磁界検出部31の磁性素子35の磁化方向を変化させ、磁界検出部31のコイル36から検出信号を出力させることができる。したがって、第1の支持体11の回転状態の検出精度を高めることができる。
また、上述したように回転検出装置1に図15に示す隔壁部材81を設けることにより、図3に示す隔壁部材41を設けた場合と比較して、磁石21、22、23、24が磁界検出部31(32、33)の一端部および他端部にそれぞれ接近したときに当該磁界検出部31(32、33)の磁性素子35の一端部と他端部との間に磁界が付与される期間を短くすることができる。これにより、例えば第1の支持体11の回転角度が、より一層正確に0度、90度、180度または270度となったときに磁界検出部31の磁性素子35の磁化方向を変化させ、磁界検出部31のコイル36から検出信号を出力させることができる。したがって、第1の支持体11の回転状態の検出精度を、より一層高めることができる。もっとも、図15に示す隔壁部材81を設けた場合には、第1の支持体11の回転角度が0度、90度、180度または270度となったときに磁性素子35に付与される磁界の磁束密度が小さいため、磁界検出部31(32、33)や、磁界検出部31(32、33)のコイル36が接続された後段の信号処理回路等に磁気的または電気的なノイズが発生した場合に、誤検出が生じるおそれがある。したがって、このような誤検出の発生のために回転検出精度が低下することのないように、隔壁部材81の形状等を設計することが望ましい。
また、上述した実施形態では、各磁界検出部31、32、33の磁性素子35として複合磁性ワイヤを採用する場合を例にあげたが、他のバルクハウゼン素子を採用することも可能である。また、上述した実施形態では、隔壁部材41、51、61、71、81、141を形成する磁性材料として鉄を例にあげたが、本発明はこれに限らず、他の磁性体ないし強磁性体、例えば、パーマロイ、電磁鋼板等を用いてもよい。
また、上述した実施形態では、図2に示すように、第1の支持体11の面11Aに磁石21、22、23,24を設ける場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば図16に示す支持体211のように、支持体自体を磁石により形成し、当該支持体自体に、周方向に90度ごとに極性が異なる4の磁界形成部221、222、223、224を形成してもよい。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う回転検出装置もまた本発明の技術思想に含まれる。