JP5963185B1 - ピロリン酸第二鉄含有粉末及びその製造方法 - Google Patents

ピロリン酸第二鉄含有粉末及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】経口用鉄剤の主成分として高い鉄分吸収性が得られるピロリン酸第二鉄含有粉末を提供する。【解決手段】ピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含む粉末であって、(1)ピロリン酸第二鉄の含有量が95重量%以上であり、(2)(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0である、ことを特徴とするピロリン酸第二鉄含有複合粉末に係る。【選択図】なし

Description

本発明は、経口により鉄分を体内に補給するための鉄補給用食品等に用いられるピロリン酸第二鉄含有粉末とその製造方法に関する。
近年、人体の疾病予防又は健康維持に関して、ミネラルの摂取不足が原因の一つとして指摘されており、それに関連して種々のミネラルの役割が研究・分析により解明されつつある。その中でも、鉄分は、人体内の鉄の約70%が酸素運搬を行っているヘモグロビンのヘム鉄に存在している。鉄不足になるとヘモグロビンの量が減少して酸素運搬能が減少し、貧血を発症する。貧血等の鉄欠乏症は、全人口のうち20億人が罹っているといわれている。鉄欠乏症になると、貧血の発症だけでなく、妊婦においては低体重児の出生、小児では発達遅延、異常行動等を引き起こすといわれている。これらの疾患に対する治療方法の一つとしては、鉄分を経口的に補給する手法がとられている。
経口的に取り込まれた鉄の体内への吸収は、二価の鉄イオン(Fe2+)が十二指腸で吸収されるとされている。このメカニズムを考慮し、鉄欠乏症を緩和ないしは治癒するための食品又は医薬品が開発されている。例えば、清涼飲料水、粉ミルク、サプリメント、医薬品等に鉄剤が配合された製品が提供されている。鉄剤としては、可溶性鉄塩又は水不溶性鉄塩を主成分とするものが使用されているが、特に可溶性塩が汎用されている。ところが、可溶性鉄塩は、鉄味が強く、経口用として嗜好性に問題があることに加え、イオン化した鉄の胃壁への侵襲による副作用が問題となる。このため、近年においては、不溶性鉄塩が使用されるようになり、その中でもピロリン酸第二鉄が脚光を浴びている。
鉄の吸収性に関係する作用は、胃及び十二指腸での鉄の溶出である。胃での鉄の溶出を抑制し、十二指腸で溶出することができれば、十二指腸で溶出する量が増えて生体吸収性の向上が期待できる。さらには、可溶性鉄塩と異なり、胃への侵襲の問題を緩和ないしは防止できると言える。一方、ピロリン酸第二鉄のような不溶性鉄塩は、比較的に胃での障害を引き起こしにくいものの、鉄の溶出性が悪いため、生体吸収性が低い。このような問題を解消するために、例えばピロリン酸第二鉄を可溶化するようにキレート鉄製剤が開発されているが、胃で鉄の溶出が生じる結果、嘔吐、下痢及び食欲不振の原因になるおそれがある。このため、ピロリン酸第二鉄を含む鉄剤に対して種々の改良技術が提案されている。
このような鉄剤としては、例えば食品添加物として使用されているピロリン酸第二鉄に分散剤を添加してピロリン酸第二鉄の微粒子を調製することにより、分散性を向上させて鉄の風味を抑制したピロリン酸第二鉄製剤が提案されている(特許文献1)。
また、微粒子にしたピロリン酸第二鉄にカゼインナトリウムを添加することにより、保存時の二次凝集を効果的に防止した鉄強化乳飲料も知られている(特許文献2)。
さらに、ピロリン酸第二鉄の溶解性を高めるために、ピロリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等を配合してなる混合物の形態とした溶解性ピロリン酸第二鉄も提案されている(特許文献3、段落0016)。
その他にも、ピロリン酸第二鉄の生体吸収性に関する研究も報告されている。例えば、強熱減量を変化させたピロリン酸第二鉄の生体吸収性の評価(非特許文献1)、平均粒子径を変化させたピロリン酸第二鉄の生体吸収性の評価(非特許文献2)、可溶性ピロリン酸第二鉄の生体吸収性の評価(非特許文献3)が行われている。
特願平8−514448号 特開2012−100615 特開2009−108027
H.Tsuchita,et al.,J. Argric.Food Chem.,39,316−321(1991) R.Wegmuller,et al.,J.Nutr.,134,3301−3304(2004) L.Zhu,et al.,J.Argric. Food Chem.,57,5014−5019(2009)
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術では、食品添加物製剤に含まれるピロリン酸第二鉄の配合量が少ないため、鉄を摂取する際には大量の食品添加物製剤を服用しなければならない。さらには、微粒子化するために、ビーズミル等を用いて粉砕していることから、ビーズ又は装置からのコンタミネーションのリスクが高くなる。
また、非特許文献1では、ピロリン酸第二鉄の強熱減量が高いほど生体吸収性は高くなるものの、その生体吸収性はなお十分ではない。非特許文献2では、ピロリン酸第二鉄の平均粒子径を小さくするほど生体吸収性は高くなるものの、生体吸収性の劇的な改善には至っていない。非特許文献3では、細胞を用いて生体吸収性を評価したところ、他の水溶性鉄塩よりも生体吸収性が高くなるものの、実際に服用すると鉄味を引き起こし、ひいては胃に障害をもたらすおそれがある。
特許文献3に示されている溶解性ピロリン酸第二鉄では、クエン酸等の有機酸によってキレート化されることにより、一般的な溶解性は高められるものの、人体に対する鉄分吸収性という点はなお改善の余地がある。すなわち、人体における鉄分の吸収は主に十二指腸で行われるが、鉄剤が胃で大量に溶解してしまうと胃での障害を起こし、ひいては胃内の夾雑物により鉄イオンが反応して、不溶性の鉄塩になり、十二指腸で鉄分をうまく吸収できなくなる結果、十分な鉄分吸収性が得られなくなる。それゆえに、溶解性ピロリン酸第二鉄といえども、人体における鉄分吸収性という点ではなお改善すべき点がある。
従って、本発明の主な目的は、経口用鉄剤の主成分として高い鉄分吸収性が得られるピロリン酸第二鉄含有粉末を提供することにある。
本発明者らは、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の組成からなるピロリン酸第二鉄含有粉末が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記のピロリン酸第二鉄含有粉末及びその製造方法に係る。
1. ピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含む粉末であって、
(1)ピロリン酸第二鉄の含有量が95重量%以上であり、
(2)(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0である、
ことを特徴とするピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
2. モード径(最頻細孔直径)が500nm以下である、前記項1に記載のピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
3. 色味としてCIE LAB表色系のb値が16以下である、前記項1に記載のピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
4. Naを0.5〜4.5重量%含む、前記項1に記載のピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
5. Naを1〜4.5重量%含む、前記項1に記載のピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
6. 比表面積が15m/g以上である、前記項1に記載のピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
7. 前記項1〜5のいずれかに記載の複合粉末を含む鉄補給食品。
8. 前記項1〜5のいずれかに記載の複合粉末を含む医薬組成物。
9. ピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含むピロリン酸第二鉄含有複合粉末を製造する方法であって、
水性溶媒中で水溶性鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を反応させることにより反応生成物を得るに際し、前記反応生成物の(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0となるように添加及び混合することにより、前記反応生成物を含む水性スラリーを調製する工程
を含むことを特徴とするピロリン酸第二鉄含有複合粉末の製造方法。
10. 炭酸塩が炭酸ナトリウムである、前記項8に記載の製造方法。
11. 予め水溶液の形態で水溶性鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが2.7〜3.1で添加及び混合する、前記項8に記載の製造方法。
本発明粉末は、特に(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0の範囲内に制御された複合粉末であることから、鉄の溶出性に関し、pH1.2の水に対する溶出を低く抑える一方、pH3.0の水に対する溶出性を高めることができる。すなわち、本発明粉末を経口により服用した際、胃内では鉄イオンの溶出を効果的に抑制しつつ、十二指腸では胃内と比較して鉄の溶出性が高いことにより高い吸収性を得ることが期待できる。これにより、胃での障害が少なく、体内に鉄分がより吸収されやすい経口型粉末を提供することができる。
このような特徴を有する本発明粉末は、そのまま経口摂取・経口投与できるほか、例えば食品又はサプリメント、医薬品、医薬部外品等の各種の製品に配合して使用することもできる。
また、本発明の製造方法では、特に所定量の炭酸塩を反応系に存在させることにより、特定量のナトリウムがピロリン酸第二鉄と複合化された本発明粉末をより確実かつ効率的に製造することができる。
1.ピロリン酸第二鉄含有粉末
本発明のピロリン酸第二鉄含有複合粉末(本発明粉末)は、ピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含む粉末であって、
(1)ピロリン酸第二鉄の含有量が95重量%以上であり、
(2)(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0である、
ことを特徴とする。
一般に、ピロリン酸第二鉄は化学式Fe(Pで示される化合物である一方、溶解性ピロリン酸第二鉄と呼ばれる化合物は確定した化学式をもたず、ピロリン酸第二鉄とピロリン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等との混合物として扱われており、これらナトリウム化合物自身の溶解特性が反映され、水に対する溶解性が高く、ナトリウムがほぼ全量溶解する。これに対し、本発明粉末は、ピロリン酸第二鉄と特定量のナトリウムとが複合化(一体的に固定化)した成分から構成されるものであるので、本発明粉末における水に対するナトリウムの溶出量も極めて低く、通常0.30mg/mL以下(90℃)、特に0.20mg/mL以下(90℃)である。従って、本発明粉末は、上記のような混合物とは明確に区別されるものである。
また、本発明粉末では、本発明粉末を構成する個々の粒子中にピロリン酸第二鉄と特定量のナトリウムとが複合化した成分が含まれる。このような粉末は、後記に示すような製造方法によってよりいっそう確実に製造することができる。
前記のピロリン酸第二鉄とナトリウム成分とが複合化した成分は、通常は非晶質体である。従って、例えばX線回折分析ではナトリウム化合物による明確なピークは認められない。
本発明粉末におけるピロリン酸第二鉄の含有量は通常95重量%以上であり、特に98重量%以上であることが好ましい。ピロリン酸第二鉄の含有量の上限値は限定的でないが、通常は99重量%程度とすれば良い。
本発明粉末に含まれるナトリウムは、特に本発明粉末の製造時の出発原料(ナトリウム供給源)由来のナトリウムであることが上記複合化という点から望ましい。その含有量は、用いる出発原料の種類等に応じて適宜調整することができるが、特に(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0程度、好ましくは0.82〜0.99となるように設定する。上記モル比が0.8未満の場合は、pH3.0の水に対する鉄の溶出性が低いため、十二指腸での鉄の溶出性が低くなる。上記モル比が1.0を超える場合は、pH1.2の水に対する溶出性が高いため、十二指腸までに到達する粉末中のピロリン酸第二鉄の含有量が少なくなり、十二指腸での鉄の溶出量が少なくなる。
また、本発明粉末中におけるナトリウムの含有量は、上記モル比を満たす限りは限定されないが、通常は0.5〜4.5重量%であり、特に1〜4.5重量%程度とし、特に1〜4重量%とすることが好ましい。このような範囲内に設定することによって、より高い鉄分吸収性を得ることができる。
本発明粉末の性状は、通常は粉末(乾燥粉末)の形態をとり得るが、この場合の平均粒径は限定されないが、通常は1〜100μm程度とし、特に1〜50μmとすれば良い。なお、必要に応じて、水等を含む液状媒体に本発明粉末を分散させることにより分散液、ペースト等の液体の形態で使用することもできる。なお、平均粒径は、試料を3分間超音波攪拌(超音波出力40W)した後に水中に分散させてレーザー回折法により水溶媒中にて測定を行った。測定装置としてMicrotrac社製「MICROTRAC MT3300EXII」を用いて測定した値とする。
本発明粉末の比表面積は限定的でないが、通常は10m/g以上であり、特に15m/g以上とすることが本発明の効果の見地より好ましい。さらに、本発明粉末(粒子)が有する細孔におけるモード径(最頻細孔直径)も限定されないが、一般的には600nm以下であり、特に500nm以下とすることが本発明の効果の見地より好ましい。
本発明粉末の色味は、通常は白色を呈するが、食品、医薬品等への配合等を考慮すれば、黄色から青色を表すCIE LAB表色系のb値が16.5以下であり、特に16以下であることが好ましい。すなわち、本発明粉末は、黄色味がかった色ではなく、白色又はそれ近い色を呈することが好ましい。
本発明粉末は、経口用として好適に用いることができる。従って、そのまま経口型鉄剤(鉄補給用)として使用することができるほか、他の成分(溶媒、増粘剤、賦形剤、着色料、香料等の添加物)とともに製剤化して鉄補給製剤として使用することもできる。また、一般的な食品、サプリメント、医薬品等の補助成分として用いることもできる。
2.ピロリン酸第二鉄含有粉末の製造方法
本発明は、ピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含むピロリン酸第二鉄含有複合粉末を製造する方法であって、
水性溶媒中で水溶性第二鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を反応させることにより反応生成物を得るに際し、前記反応生成物の(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0となるように添加及び混合することにより、前記反応生成物を含む水性スラリーを調製する工程(反応工程)を含む、
ことを特徴とする製造方法を包含する。
反応工程
反応工程では、水性溶媒中において、水溶性第二鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を反応させることにより反応生成物を得るに際し、前記反応生成物の(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0となるように添加及び混合することにより、前記反応生成物を含む水性スラリーを調製する。
水溶性鉄塩としては、特に限定されるものではなく、例えば塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、硝酸第二鉄、臭化第二鉄、ギ酸第二鉄、酢酸第二鉄、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム等が挙げられる。特に、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄等の少なくとも1種が好ましく、その中でも塩化第二鉄及び硫酸第二鉄の少なくとも1種がより好ましい。最も好ましいのは塩化第二鉄である。
ピロリン酸塩としては、特に限定されるものではなく、例えばピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸リチウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム等が挙げられる。特に、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム等の少なくとも1種が好ましく、さらにはピロリン酸ナトリウム及びピロリン酸カリウムの少なくとも1種が好ましく、ピロリン酸ナトリウムが最も好ましい。
炭酸塩は、特に限定されず、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素リチウム等が挙げられる。その中でも、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の少なくとも1種が好ましく、特に炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムの少なくとも1種がより好ましく、炭酸ナトリウムが最も好ましい。
本発明の製造方法では、水溶液鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を反応生成物の(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0となるように添加及び混合するので、特に前記ピロリン酸塩及び炭酸塩の少なくとも一方をナトリウム塩とする。特に、本発明では、ナトリウム供給源として炭酸塩を用いることが好ましい。
水性媒体としては、水及び水溶性有機溶媒の少なくとも1種を好適に使用することができる。水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を好ましく使用することができる。本発明では、特に水を用いることが好ましい。水性媒体の使用量は特に制限されず、通常は反応生成物の固形分濃度が0.1〜40重量%、さらに好ましくは0.3〜50重量%程度となるように適宜調製すれば良い。
本発明の製造方法では、水性媒体に水溶液鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を配合する方法であっても良いし、これらを予め水溶液の形態としたうえで添加及び混合しても良い。この場合の各水溶液の濃度は限定的ではないが、通常は水溶液鉄塩では1〜2mol/L、ピロリン酸塩では0.1〜1mol/L、炭酸塩では0.01〜0.15mol/L程度の範囲内とすれば良い。
また、本発明では、必要に応じて水性媒体中にpH調整剤等を適宜配合することもできる。pH調整剤としては、例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、塩化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等を用いることができる。
本発明の製造方法においては、これら所定の割合となるように秤量された出発原料を水性媒体中で混合し、反応させることによって、所望の反応生成物を含む水性スラリーを得ることができる。原料仕込み量として、例えば(Fe+Na)/Pモル比が2.7から3.1となるように設定することが望ましい。これによって、より確実に所望のピロリン酸第二鉄含有粉末を調製することが可能となる。
反応温度は、特に限定的ではなく、例えば5〜50℃、特に15〜35℃の範囲内で適宜設定すれば良い。また、反応雰囲気としては特に限定的ではないが、大気中(大気圧下)とすれば良い。
反応時(反応中)における反応系のpHは特に限定されないが、粒子径を制御できるという点において通常1.0〜5.0程度とし、特に1.5〜3.0とすることが好ましく、さらには1.6〜2.2とすることがより好ましい。また、本発明の製造方法において、すべての出発原料を添加した後の反応生成物を含む水性スラリーのpHは、水酸化鉄のような副生成物の生成を抑制するという点において、2.0〜5.0の範囲内となるように調整することが好ましい。なお、これらのpH調整は、各原料の添加速度を調節する方法のほか、公知のpH調整剤(例えばフッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、塩化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等)の添加による方法等を採用すれば良い。
このようにして反応生成物を含む水性スラリーが得られるが、必要に応じてさらに熟成工程を実施することもできる。熟成工程では、出発原料の添加がすべて完了した後の混合液を一定時間撹拌し続けることによって実施することができる。これにより、ピロリン酸第二鉄の生成反応を促進することができる。熟成工程の温度は通常5〜80℃程度とすれば良く、特に10〜50℃とすることが好ましい。また、熟成時間は、出発原料の添加がすべて完了した直後から0.15〜5時間程度とすれば良く、特に0.15〜1時間とすることが好ましい。
なお、熟成工程における上記水性スラリーの固形分濃度は特に限定されないが、通常は1〜20重量%程度とし、特に3〜15重量%とすることが好ましい。固形分濃度を調整するために脱水又は水の添加を適宜実施することもできる。
その他の工程
前記の水性スラリーは、通常は反応生成物である本発明粉末が分散した液体であるので、そのまま使用することもできるが、必要に応じて固液分離工程、水洗工程、乾燥工程、粉砕・分級工程等のいずれかの工程に供することもできる。
固液分離工程
固液分離工程では、前記水性スラリーを固液分離することによって固形分を回収する。固液分離方法は、公知の方法に従えば良く、例えばろ過、遠心分離等の各種の脱水方法を採用することができる。
水洗工程
前記水性スラリーは、固液分離工程の前工程及び/又は後工程として水洗工程を適宜実施することもできる。水洗工程により、反応生成物中に含まれる副生成物、不純物等が含まれる場合、これらを効果的に除去することができる。
水洗工程は、固液分離工程と交互に繰り返すことにより好適に実施することができる。従って、水洗工程は、例えば加圧ろ過、減圧濾過、真空ろ過、自然ろ過、遠心ろ過等の一般的なろ過方法により水性スラリーを脱水し、得られた固形分を一般的な水洗設備を用いることにより水で洗浄を行った後、例えばフィルタープレス、遠心分離機等を用いることにより固液分離するという一連の工程を1回又は2回以上実施すれば良い。
なお、水洗工程の終点は限定的ではないが、例えばフィルタープレス等による場合、水洗ろ液の導電率(22℃)を100〜200μS/cmとすれば良く、さらに好ましくは100〜150μS/cmとすれば良い。
乾燥工程
固液分離後又は水洗工程後の固形分は、必要に応じて乾燥工程に供することができる。乾燥温度は20〜400℃の範囲内で適宜設定すれば良いが、特に80〜120℃で行うのが好ましい。乾燥時間は、乾燥温度により適時設定することができるが、強熱減量で30%以下、特に好ましくは20%以下になるように乾燥時間を設定することが好ましい。
乾燥方法としては限定的でなく、例えば温風乾燥、赤外線乾燥、ホットプレート乾燥、真空乾燥、吸引乾燥と蒸気乾燥、温純水引上げ乾燥・マランゴニ乾燥・エアナイフ水切り・スピン乾燥、ロール乾燥が「液きり」等の一般的な方法を用いることにより乾燥することができ、例えば、静置式の棚段・箱形乾燥機、スプレードライヤー、バンド乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機、マイクロ波乾燥機、ドラムドライヤー、流動乾燥機等の一般的な乾燥設備を用いることができる。
粉砕工程
生成した本発明粉末は、必要に応じて粉砕することができる。粉砕方法としては、例えば乾式粉砕、湿式粉砕、凍結粉砕等の一般的な方法を用いることができる。粉砕装置としても、例えばジェットミル、フェザーミル、ハンマーミル、パルペライザー、ボールミル、ビーズミル等一般的な設備で粉砕を行うことができる。粉砕の程度は適宜調整できるが、一般的には粉砕後の平均粒子径が1〜100μm程度、特に1〜50μmとすることが好ましい。なお、所望の粒子径に調整するために、粉砕物を適宜分級することもできる。
分散工程
前記1.で説明したように、本発明粉末を液体の形態(分散体)で使用する場合は、固液分離工程、水洗工程、乾燥工程、粉砕工程等のいずれかの工程で得られた本発明粉末又はその水性スラリーを用いて、その分散体を調製すれば良い。分散体の調製に際しては、例えば撹拌機、乳化機、湿式粉砕機、遊星ボールミル等の公知の装置を用いることができる。また、分散性を高めるための分散剤のほか、各種の添加剤を適宜配合しても良い。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。なお、実施例中に記載の「%」「ppm」はそれぞれ「重量%」「重量ppm」を意味する。
実施例1
1Lの容器に240mLの水を量りとり、1.81mol/Lの塩化第二鉄水溶液、0.56mol/Lのピロリン酸ナトリウム水溶液及び0.13mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液を原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが2.90になるように前記水に添加して400rpmで撹拌した。この場合、反応系のpHは1.6〜1.7となるように、各原料の添加速度を調節した。添加終了後、室温で10分間攪拌して熟成を行い、反応生成物を含む水性スラリーを得た。熟成終了後の最終pHは3.6であった。熟成後、この水性スラリーをろ過して脱水し、水洗した。得られた反応生成物を乾燥器に入れ、105℃にて16時間乾燥し、乾燥品を卓上ミルにて粉砕することにより試料1を得た。
実施例2
炭酸ナトリウム水溶液を0.19mol/Lにして、原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが3.02になるように調整したほかは、実施例1と同様にして試料2を得た。熟成終了後のpHは4.5であった。
実施例3
炭酸ナトリウム水溶液を0.06mol/Lにして、原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが2.78になるように調整したほかは、実施例1と同様にして試料3を得た。熟成終了後のpHは2.4であった。
実施例4
炭酸ナトリウム水溶液を0.04mol/Lにして、原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが2.73になるように調整したほかは、実施例1と同様にして試料4を得た。熟成終了後のpHは2.0であった。
実施例5
炭酸ナトリウム水溶液を0.06mol/Lにして、原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが2.78になるように調整し、マイクロ波乾燥機TWINBIRD社製DR−Y21に入れ、700にて90分間乾燥したほかは、実施例1と同様にして試料5を得た。熟成終了後のpHは2.2であった。
比較例1
炭酸ナトリウム水溶液は添加せず、原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが2.67になるように調整したほかは、実施例1と同様にして比較試料1を得た。熟成終了後のpHは1.7であった。
比較例2〜3
比較例2として、富田製薬株式会社製「食品添加物 ピロリン酸第二鉄」(Lot No.:L20816)(比較試料2)を用いた。比較例3として、米山化学工業株式会社製「ピロリン酸第二鉄」(Lot No.:408044)(比較試料3)を用いた。
試験例1
実施例及び比較例の各試料について、鉄、リン及びナトリウム含有量によるモル比、CIE LAB表色系のb値、BET比表面積、モード径(最頻細孔直径)、ピロリン酸第二鉄含量、可溶性ナトリウム量をそれぞれ測定した。その結果を表1〜2に示す。なお、各測定は、以下に記載する方法に従って実施した。
(1)鉄含有量
<試料溶液の調製>
試料1gをビーカーに精密に量りとり、塩酸(1→2)10mLを加え、加熱溶解し、溶解液をメスフラスコに移した後に超純水で正確に50mLとした。この調製した溶液をメスフラスコに5mL正確に量りとり、超純水で正確に100mLにして、1000倍希釈試料溶液にした。
<標準溶液の調製>
イットリウム標準液(100ppm):
原子吸光分析用イットリウム標準液(1000ppm)10mL、及び希硝酸1mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加えて100mLとした。
鉄標準液(100ppm):
原子吸光分析用鉄標準液(1000ppm)10mL、及び希硝酸1mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加えて100mLとした。
標準添加溶液(a)(Fe:0ppm):
イットリウム標準液(100ppm)1mL、希硝酸1mL、及び1000倍希釈溶液1mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加え50mLとした。
標準添加溶液(b)(Fe:2ppm):
イットリウム標準液(100ppm)1mL、希硝酸1mL、1000倍希釈溶液1mL、及び鉄標準液(100ppm)1mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加え50mLとした。
標準添加溶液(c)(Fe:8ppm):
標準溶液として鉄標準液(100ppm)4mLを正確に量りとったほかは、標準添加溶液(b)と同様にして調製した。
<測定方法>
誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)標準添加法
検出波長:259.941nm
標準添加溶液(a)、(b)、(c)の順に強度を測定し、検量線を作成した。次に標準添加溶液(a)の強度を測定し、本品1gあたりの鉄含有量を次式1により計算した。
Fe(%)=a/採取量×50×1000 (式1)
(但し、 a=測定液中の鉄濃度 (%))
ICP: Vista−PRO(セイコーインスツルメント株式会社)
原子吸光分析用鉄標準液:和光純薬工業株式会社
(2)リン含有量
標準溶液としてリン標準液(100ppm)用い、検出波長を177.495nmにて測定を行ったほかは、試験例1(1)に準拠してリンの含有量を測定した。
(3)ナトリウム含有量
<標準溶液の調製>
ナトリウム標準液(50ppm):
原子吸光分析用ナトリウム標準液(1000ppm)5mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加えて100mLとした。
標準添加溶液(d)(Na:0ppm):
イットリウム標準液(100ppm)1mL、及び1000倍希釈溶液5mLをメスフラスコに正確にとり、超純水を加え50mLとした。
標準添加溶液(e)(Na:0.5ppm):
イットリウム標準液(100ppm)1mL、1000倍希釈溶液5mL、及びナトリウム標準液(50ppm)0.5mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加え50mLとした。
標準添加溶液(f)(Na:5ppm):
標準溶液としてナトリウム標準液5mLを正確に量りとったほかは、標準添加溶液(e)と同様に調製した。
<測定方法>
誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)標準添加法
検出波長:589.592nm
標準添加溶液(d)、(e)、(f)の順に強度を測定し、検量線を作成した。次に標準添加溶液(d)の強度を測定し、本品1gあたりのナトリウム含有量を次式2により計算した。
Na(%)=b/採取量×10×1000 (式2)
(但し、b=測定液中のナトリウム濃度 (%))
ICP: Vista−PRO(セイコーインスツルメント株式会社)
原子吸光分析用ナトリウム標準液:和光純薬工業株式会社
(4)ピロリン酸第二鉄含有粉末中の(Fe+Na)/Pモル比
試験例1(1)、(2)及び(3)において得られた含有量に基づいてピロリン酸第二鉄含有粉末中の(Fe+Na)/Pモル比を次式3により計算した。
(Fe+Na)/P=(Fe(%)/55.85+Na(%)/22.99)/(P(%)/30.97) (式3)
(5)CIE LAB表色系のb値
食品添加物規格公定書にはピロリン酸第二鉄の性状として色の規格がある。規格は黄色から黄褐色である。そこで、黄色を数値化するため、CIE LAB表色系のb値を測定することとした。b値は黄から青色を表しており、b値がプラスであれば黄色を示し、マイナスであれば青色を示している。さらに絶対値が大きくなると、強い色を示す。そこで、実験方法を以下に記載する方法に従って実施した。
測定セルに約0.5gを量り入れ、日本電色工業株式会社製「Color meter ZE6000」にてCIE LAB表色系のb値の測定を行った。
(6)モード径(最頻細孔直径)
水銀ポロシメータ(Quantachrome社製「PoreMaster 60GT」)にて以下の条件で測定を行った。
測定及び解析:試料0.05gを正確に量り、測定セルに封入し、水銀圧入下で水銀の吸着等温線を求め、モード径を算出した。
(7)BET比表面積
高速比表面積細孔分布測定装置(Quantachrome社製「NOVA−4200e」)にて以下の操作条件で測定を行った。
前処理:試料0.8gを正確に量り、吸着管に封入し、105℃で1時間脱気した。
測定及び解析:液体窒素ガス温度下で窒素ガスの吸着等温線を求め、その吸着等温線を用いて多点BET法により比表面積を算出した。
(8)ピロリン酸第二鉄含量
試料を強熱し、直ちにその約0.3gを精密に量り、塩酸(1→2)20mLを加えて溶かし、水20mLで共栓フラスコに移した。次に、ヨウ化カリウム3gを加え、直ちに密栓して暗所に15分間放置した後、水100mLを加え、デンプン試液を加えて遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した。その滴下量をc(mL)とした。
別に、共栓フラスコに塩酸(1→2)20mLと水20mLを入れて、ヨウ化カリウム3gを加え、直ちに密栓して暗所に15分間放置した後、水100mLを加え、デンプン試液を加えて遊離したヨウ素を0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、これを空試験とした。滴定量から次式を用いて、ピロリン酸第二鉄含有粉末1g中のピロリン酸第二鉄含量を算出した。その滴下量をd(mL)とした。
ピロリン酸第二鉄含量(%)=((c−d)×0.01863/採取量)×100
(9)可溶性ナトリウム量
ビーカーに試料5gを精密に量りとり、続いて超純水で100mL加えた。調製した懸濁液をホットスターラーにて90℃で15分間加熱し、加熱終了後に水浴を用いて懸濁液を冷やした。続いて、メスフラスコに移して超純水で正確に100mLとし、この調製した懸濁液を遠心分離機で20分間遠心分離を行い、上澄み液を採取した。この上澄み液を用い、試験例1(3)の標準溶液の調製方法と測定方法に準拠して、ナトリウム溶出量を測定した(e%)。下記の式にて、水1mL中に1gからの溶出量を算出した。
可溶性ナトリウム量(mg/mL)=(5×e/100)/100×1000
試験例2
各試料について鉄の溶出性を評価した。溶出試験は、表3に示すような試験条件に従って実施した。なお、測定方法等については、以下に記載する方法に従って実施した。
<試料溶液の調製>
溶出試験採取液4mL、希硝酸1mL、及びイットリウム標準液(100ppm)1mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水で正確に20mLとし、これを試料溶液とした。
<標準溶液の調製>
鉄標準液(10ppm):
原子吸光分析用鉄標準液(100ppm)5mL、及び希硝酸1mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加えて50mLとした。
鉄標準液(1ppm):
調製した鉄標準液(10ppm)5mL、及び希硝酸1mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加えて50mLとした。
標準溶液(a)(ブランク):
イットリウム標準液(100ppm)1mL、及び希硝酸1mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加え20mLとした。
標準溶液(b)(Fe:0.1ppm):
イットリウム標準液(100ppm)1mL、希硝酸1mL、鉄標準液(1ppm)2mLをメスフラスコに正確に量りとり、超純水を加え20mLとした。
標準溶液(c)(Fe:0.5ppm):
標準液として、鉄標準液(10ppm)1mLを正確に量りとったほかは、標準溶液(b)と同様にして調製した。
標準溶液(d)(Fe:1ppm): 標準液として、鉄標準液(10ppm)2mLを正確に量りとったほかは、標準溶液(b)と同様にして調製した。
標準溶液(e)(Fe:5ppm):
標準液として、原子吸光分析用鉄標準液(100ppm)1mLを正確に量りとったほかは、標準溶液(b)と同様にして調製した。
標準溶液(f)(Fe:15ppm):
標準液として、原子吸光分析用鉄標準液(100ppm)3mLを正確に量りとったほかは、標準溶液(b)と同様にして調製した。
<測定方法>
誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)検量線法
検出波長:259.941nm
標準溶液(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)の順に強度を測定し、検量線を作成した。次に、試料溶液の強度を測定し、得られた強度から測定液中の鉄濃度に換算し、溶出率を次式4で算出した。表4に溶出試験液第1液(pH 1.2)の結果、及び薄めたMcIlvaine(pH 3.0)の結果を示す。
溶出率(%)=((f×20/4)/(試験仕込量(mg)×(ピロリン酸第二鉄含量/100×4×55.85/745.22)/0.9)×100 (式4)
(但し、f=測定液中の鉄濃度 (ppm))
ICP: SPECTRO ARCOS(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社)
原子吸光分析用鉄標準液:和光純薬工業株式会社
一般に、鉄は、イオンの状態で十二指腸から吸収されること、及び鉄イオンが胃で溶出すると吸収量の低下を引き起こすことが報告されている。そこで、本発明では、鉄分吸収率(%)を次式5で規定し、その吸収率を確認した。その結果を表4に示す。
鉄分吸収率(%)=(100−pH1.2での60分後の溶出率)×pH3.0での60分後の溶出率/100 (式5)
表4の結果からも明らかなように、比較例(比較試料1〜3)の鉄分吸収率が45%以下となっているのに対し、本発明品(試料1〜5)はpH1.2での鉄の溶出が抑制される一方、pH3.0では高い溶出率を発揮する結果、50%以上の鉄分吸収率が得られることがわかる。すなわち、ピロリン酸第二鉄含有粉末中の(Fe+Na)/Pモル比が特定の範囲に制御されている場合には、このような特異的な効果が達成されることがわかる。このように、本発明品では、pH1.2での溶出を抑制し、pH3.0での溶出を向上させているため、口腔内及び胃では鉄の溶出を抑制し、十二指腸で鉄分を効果的に溶出することが可能となり、ひいては鉄分の高い生体吸収性が期待できる。
試験例3
試料5及び比較試料2を用い、鉄の吸収性を動物試験により評価した。4週齢のSD系雄ラット1群5匹に低Fe飼料(AIN‐93Gベース)粉末飼料(日本クレア株式会社製)を2週間摂食させ、鉄欠乏状態にした。低Fe飼料(AIN‐93Gベース)粉末飼料摂食2週間後、麻酔下にて鎖骨下静脈から採血を行い、血清分離を行った後、血清中における鉄濃度(血清鉄)、総鉄結合能(TIBC)及び末梢血の指標として使用される鉄飽和率(TSAT)を測定した。また、血液中のヘモグロビン濃度(Hb)も測定したところ、血清鉄32.6μg/dL、TIBC749.5μg/dL、Hb9.0g/dL、TSAT4.4%、Hb9.0g/dLであり、鉄欠乏ラットであることを確認した。その後、低Fe飼料(AIN‐93Gベース)粉末飼料に試料5及び比較試料2をラット1匹あたり300mg鉄/kg相当量になるように混ぜ、この混餌飼料を7日間自由摂食させ、自由摂食後、3日と7日経過後に麻酔下にて鎖骨下静脈から採血を行った。採取された血液の血清分離を行った後、血清中における血清鉄、TIBCを測定した。また、血液中のHbを測定した。これらの結果を表5及び表6にそれぞれ示す。
表5の結果からも明らかなように、試料5は比較試料2に比べると同等以上になっていることがわかる。また、表6の結果からも明らかなように、試料5は比較試料2と比較してTSATが低いことがわかる。この理由は、試料5は比較試料2に比べて鉄の吸収速度が速く、吸収された鉄が造血系の合成に使用され、定常状態に達する期間が短く、貧血状態からの回復時間が短縮されることに起因するものと考えられる。これらのことから、本発明品は、高い鉄吸収量だけでなく、高い鉄吸収速度も期待できることがわかる。
本発明粉末では、高い鉄分吸収性が得られるので、各種製剤の製剤化の簡便化、使用量の低減及び鉄欠乏症患者への投与量の低減が可能となる。さらには、本発明粉末を用いることによって、嗜好性及び胃での障害の問題が緩和ないしは回避された食品、医薬品、化粧品等を提供することができる。

Claims (10)

  1. ピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含む粉末であって、
    (1)ピロリン酸第二鉄の含有量が95重量%以上であり、
    (2)(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0である、
    ことを特徴とするピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
  2. モード径(最頻細孔直径)が500nm以下である、請求項1に記載のピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
  3. 色味としてCIE LAB表色系のb値が16以下である、請求項1に記載のピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
  4. Naを0.5〜4.5重量%含む、請求項1に記載のピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
  5. 比表面積が15m/g以上である、請求項1に記載のピロリン酸第二鉄含有複合粉末。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の複合粉末を含む鉄補給食品。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載の複合粉末を含む医薬組成物。
  8. ピロリン酸第二鉄及びナトリウム成分を含むピロリン酸第二鉄含有複合粉末を製造する方法であって、
    水性溶媒中で水溶性鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を反応させることにより反応生成物を得るに際し、前記反応生成物の(Fe+Na)/Pモル比が0.8〜1.0となるように添加及び混合することにより、前記反応生成物を含む水性スラリーを調製する工程
    を含むことを特徴とするピロリン酸第二鉄含有複合粉末の製造方法。
  9. 炭酸塩が炭酸ナトリウムである、請求項8に記載の製造方法。
  10. 予め水溶液の形態で水溶性鉄塩、ピロリン酸塩及び炭酸塩を原料仕込みモル比(Fe+Na)/Pが2.7〜3.1で添加及び混合する、請求項8に記載の製造方法。
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