本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る電動機の使用状態を説明する説明図である。図2は、搬送装置の一例を示す模式図である。図3は、回転中心と平行な方向から実施形態1の電動機の出力軸をみた平面図である。図1及び図2に示すように、搬送装置100は、電動機1と、搬送物53を移動させる搬送プレート52とを備えている。例えば搬送物53は、発光ダイオード、セラミックコンデンサ、チップ抵抗器、車載用集積回路などの電子部品である。搬送装置100は、例えば電子部品の供給装置、電子部品の選別装置、電子部品の外観検査装置または電気的特性検査(検査装置)などの用途に用いられる。
図2に示すように、電動機1は、固定部材55により支持部材51に取り付けられ、電動機の端部1b側が支持部材51に固定されている。図2及び図3に示す電動機1は、回転中心Zrを中心に、回転伝達部材である円環状のモータ出力軸12を回転させる。搬送プレート52は、モータ出力軸12にボルト等の固定部材57で固定されている。このため、図3に示す電動機1は、回転中心Zrを中心に、回転伝達部材である円環状のモータ出力軸12を回転させることで、支持部材51に対して搬送プレート52を図1に示すR方向に相対的に回転させることができる。なお、ボルト等の固定部材29については、後述する。
電動機1は、図2に示すように、中空部11が電動機1の端部1aと端部1bとの間を貫通している。この中空部11には、例えば図1に示すような搬送物53を搬送プレート52に吸着させる負圧を伝達する配管などの挿通部材54、及び搬送物53を搬送プレート52に着脱させる制御信号を伝達する配線などを通すことができる。図1に示すように、搬送装置100は、図2に示すモータ出力軸12の位置に応じて、搬送プレート52が搬送している搬送物53の位置を位置決めする。このように、電動機1は、ギヤ、ベルトまたはローラ等の伝達機構を介在させることなく負荷体50である搬送物53及び搬送プレート52に回転力をダイレクトに伝達し、搬送物53を回転させることができる。電動機1は、いわゆるモータ回転軸と負荷体50とを直結したダイレクトドライブモータである。これにより、電動機1は、高精度の搬送物53の位置決めをすることができる。
図2に示すように、ダストカバー60は、電動機1の端部1a側に、例えば図3に示すボルトなどの固定部材28Aで後述するモータステータに固定されている。図3に示すように、ダストカバー60は、ダストカバー本体61がモータ出力軸12の外周側に配置された円環状の部材である。ダストカバー60は、ダストカバー本体61(電動機1の端部1a側)の表面から突出し、かつ周方向に延在する凸部であるダストカバーフィン62を備えている。ダストカバーフィン62は、周方向に点在する凸部であってもよい。ダストカバーフィン62は、ダストカバー本体61の表面積を増加させるため、放熱効果を向上させることができる。また、ダストカバー60は、ダストカバー本体61の厚み方向に貫通する排熱穴排熱孔63を備えている。排熱孔63は、ダストカバー60の周方向に複数備えられ点在している。ダストカバー60は、電動機1の端部1a側から電動機1の内部に異物が入ることを抑制できる。排熱穴排熱孔63は、電動機1の内部の熱を排熱し、熱の蓄積を抑制することができる。
検出器カバー60Aは、例えば、ボルトなどの固定部材29で後述するハウジングフランジに固定されている。図3に示すように、検出器カバー60Aは、中空部11とモータ出力軸12との間に配置される、後述する回転角度検出器のカバーであり、モータ出力軸12の内周側に配置された円環状の部材である。
図1に示すように、外部のコンピュータからモータ回転指令iが入力されたとき、モータ制御回路90は、CPU(Central Processing Unit)91から3相アンプ(AMP:Amplifier)92に駆動信号を出力する。モータ制御回路90は、AMP92から電動機1に図2に示す配線95を介して駆動電流Miが供給する。電動機1は、駆動電流Miにより搬送プレート52を回転させ、搬送物53を移動させるようになっている。搬送プレート52が回転すると、後述する回転角度を検出したレゾルバ等の回転角度検出器から検出信号(レゾルバ信号)Srが出力される。モータ制御回路90は、図2に示す配線95を介して検出信号Srを受信し、受信した検出信号Srをレゾルバデジタル変換器(RDC:Resolver to Digital Converter)93でデジタル変換する。RDC93からの検出信号Srのデジタル情報に基づいて、CPU91は搬送物53が指令位置に到達したか否かを判断し、指令位置に到達する場合、AMP92への駆動信号を停止する。
図4は、回転中心を含む仮想平面で実施形態1の電動機を切って模式的に示す断面図である。図5は、実施形態1の電動機の構成を回転中心に直交する仮想平面で切ってモータロータを模式的に示す断面図である。電動機1は、静止状態に維持される固定子(以下、モータステータという)30と、モータステータ30に対して回転可能に配置された回転子(以下、モータロータという)40と、モータステータ30を固定して支持部材51に取り付けられるベース部材(ハウジング)20と、モータロータ40に固定されてモータロータ40とともに回転可能なモータ出力軸12とを含む。
モータロータ40とモータ出力軸12とは、後述するように連結され、モータ回転軸10となっている。ベース部材20は、略円板状のハウジングベース21と、中空部11が貫通し、中空部11を囲むようにハウジングベース21から凸状に突出した軸心となるハウジングインナ22と、後述するハウジングフランジ23とを備えている。そして、電動機1は、ベース部材20のハウジングインナ22とモータ回転軸10との間に介在されてモータ回転軸10をベース部材20に対して回転可能に支持する軸受14と、を含む。
図5に示すように、ハウジングインナ22、モータロータ40及びモータステータ30はいずれも環状の構造体である。ハウジングインナ22、モータロータ40及びモータステータ30は、回転中心Zrを中心に同心状に配置されている。また、電動機1は、回転中心Zrから外側へ、ハウジングインナ22、モータロータ40、モータステータ30が順に配置されている。このような電動機1は、インナーロータ型と呼ばれ、モータロータ40がモータステータ30よりも回転中心Zr寄りとなる。
図4に示すように、電動機1は、モータ出力軸12、モータロータ40及びモータステータ30がハウジングベース21の上に配置されている。ハウジングインナ22は、ハウジングベース21にボルト等の固定部材27を介して締結され固定されている。また、ハウジングフランジ23は、ボルト等の固定部材26に押圧され、ハウジングインナ22に軸受14の内輪を固定する。
図4及び図5に示すように、ハウジングベース21の外周縁には、モータステータ30がボルト等の固定部材28A、28Bによって締結されている。これにより、モータステータ30はハウジングベース21に対して位置決め固定されている。またダストカバー60も固定部材28Aによりハウジングベース21に対して位置決め固定されている。モータステータ30の中心軸は、モータロータ40の回転中心Zrと一致する。
モータステータ30は、筒状のステータコア31と、励磁コイル32とを含む。モータステータ30は、ステータコア31に励磁コイル32が巻きつけられる。モータステータ30には、電源からの電力を供給するための配線95(図2参照)が接続されており、この配線95を通じて励磁コイル32に対して電力が供給されるようになっている。
モータステータ30は、回転中心Zr側にモータロータ40を包囲するように筒状に設けられる。モータステータ30は、ステータコア31が上述した回転中心Zrを中心とした円周方向にティース31aが等間隔で並んで、バックヨーク31bが一体に配置される。モータステータ30は、このような一体コアに限られず、複数の分割されたステータコア31が上述した回転中心Zrを中心とした円周方向に等間隔で並んで配置される分割コアであってもよい。そして、ステータコア31は、固定部材28A、28Bによって図4に示すハウジングベース21に固定される。
また、ステータコア31は、略同形状に形成された複数のティース31aが回転中心Zr方向に積層されて束ねられることで形成される。ステータコア31は、電磁鋼板などの磁性材料で形成される。モータステータ30は、複数のステータコア31が組み合わされると、環状形状を形成する。
励磁コイル32は、線状の電線である。励磁コイル32は、ステータコア31のティース31aにインシュレータを介して集中巻きされる。この構成により、磁極数を低減でき、かつ分布巻きに比較してコイルエンドが短くなることからコイル量を低減できる。その結果、コストを低減でき、電動機1をコンパクトにすることができる。なお、インシュレータは、励磁コイル32とステータコア31とを絶縁するための部材であり、耐熱部材で形成される。
励磁コイル32は、ステータコア31のティース31aの複数の外周に分布巻きされていてもよい。この構成により、磁極数が増え、磁束の分布が安定することからトルクリップルを抑制することができる。励磁コイル32は、バックヨーク31bの外周にトロイダル巻きされていてもよい。この構成により、分布巻きと同等の磁束分布を発生することができる。その結果、トルクリップルを抑制することができる。このように構成されたステータコア31が周方向に複数組み合わされることにより、モータステータ30は、モータロータ40を包囲できる形状となる。
モータロータ40は、モータロータ40の外径がモータステータ30の内径寸法よりも小さな円筒状である。モータロータ40は、ロータヨーク41及びロータヨーク41の外周に貼り付けられたマグネット42を含む。モータステータ30とモータロータ40との間には、微小の磁気ギャップG(隙間)が介在している。ロータヨーク41は、筒状に形成される。ロータヨーク41は、電磁鋼板、冷間圧延鋼板などの薄板が、接着、ボス、カシメなどの手段により積層されて製造される。例えば、ロータヨーク41は、順次金型の型内で積層され、金型から排出される。ロータヨーク41は、軟磁性の磁性体の粉を成形する圧紛成型により製造される圧紛磁心であってもよい。
マグネット42は、ロータヨーク41の外周表面に沿って貼り付けられ、複数設けられている。マグネット42は、永久磁石であり、S極及びN極がロータヨーク41の円周方向に交互に等間隔で配置される。これにより、図5に示すモータロータ40の極数は、ロータヨーク41の外周側にN極と、S極とがロータヨーク41の円周方向に交互に配置された20極である。なお、モータロータ40の極数は、20極に限られず、例えば28極または36極でもよく、必要に応じて適宜変更できる。また、永久磁石は、例えばNd−Fe−B系磁石を用いることができる。
モータ出力軸12は、円環状の部材であり、ボルト等の固定部材29を介してモータロータ40に軸受14の外輪を固定するフランジとしても機能する。モータ出力軸12は、円環の中心軸が電動機1の回転中心Zrと同軸に形成されている。モータ出力軸12の円環の径方向の中心の回転半径は、図4に示す半径Brである。
また、軸受14は、外輪がモータ出力軸12とモータロータ40とに固定され、内輪がハウジングフランジ23とハウジングインナ22に固定されている。これにより、軸受14は、ハウジングベース21に対して、モータ出力軸12及びモータロータ40を回転自在に支持することができる。このため、電動機1は、モータ出力軸12及びモータロータ40をハウジングベース21及びモータステータ30に対して回転させることができる。
図6は、回転中心を含む仮想平面で軸受装置を切って模式的に示す断面図である。軸受14は、4点接触軸受と呼ばれ、回転中心Zrの周囲を囲む環状の外輪71及び内輪72と、外輪71及び内輪72の間の軌道溝に周方向一列に配置された複数の転動体73とを備えている。転動体73の中心を含む断面は円形となる球体である。
転動体73の曲率半径は、外輪71及び内輪72の間の軌道溝の曲率半径より僅かに小さい。これにより、転動体73は、外輪71及び内輪72の間の軌道溝に略点接触する。つまり、外輪71及び内輪72の間の軌道溝は、転動体73に略点接触するように凹んだ面を有している。なお、略点接触とは、転動体73が弾性変形により、外輪71及び内輪72の間の軌道溝に楕円状の接触面で接触する場合も含む。
転動体73が外輪71及び内輪72の間の軌道溝に略点接触する点を結んだ作用線74、75は、転動体73の中心で交わる。また、作用線74、75は、回転中心Zrと直交する仮想平面に対して、等しい角度で交差する。このため、複数の転動体73は、外輪71及び内輪72の間を周方向に沿って、相互に等しい角度分だけ向きを変えながら、転がり自在となる。これにより、軸受14は、一列の転動体で周方向(ラジアル方向)及び回転中心Zrと平行な方向(スラスト方向)の負荷または荷重を受けることができる。
軸受14は、転動体73が外輪71及び内輪72の間の軌道溝に点接触するので、軸受14におけるトルク損失が少ない。その結果、モータロータ40は、高速回転が可能となる。軸受14は、円筒ころを用いるクロスローラ軸受よりも転がり摩擦を低減でき、高速回転が可能である。なお転動体73は、球の他、断面形状が外輪71及び内輪72の間の軌道溝に略点接触する楕円形状を有する外形であってもよい。軸受14は、転動体73の姿勢、間隔を保持する保持器またはスペーサを備えていてもよい。
軸受14は、外輪71及び内輪72が一体で転動体73に予圧が付与されているようにしてもよい。また、軸受14は、転動体73をクロスローラとしたクロスローラ軸受としてもよい。
また、電動機1は、回転角度検出器24A、24Bを備えることが好ましい。回転角度検出器24A、24Bは、例えばレゾルバであって、モータロータ40及びモータ出力軸12の回転位置を高精度に検出することができる。
回転角度検出器24A、24Bは、ハウジングフランジ23と、モータ出力軸12と、軸受14と、検出器カバー60Aとで囲まれる空間に配置される。このため、上述したマグネット42及び励磁コイル32が引き起こす磁界変化の影響を抑制することができる。
回転角度検出器24A、24Bは、静止状態に維持されるレゾルバステータ25A、25Bと、レゾルバステータ25A、25Bと所定のギャップを隔てて対向配置され、レゾルバステータ25A、25Bに対して回転可能なレゾルバロータ15A、15Bを備えており、軸受14の上方に配設されている。
レゾルバステータ25A、25Bは、複数のステータ磁極が円周方向に等間隔に形成された環状の積層鉄心を有し、各ステータ磁極にレゾルバコイルが巻回されている。本実施形態の電動機1では、レゾルバステータ25A、25Bは、ハウジングインナ22に固定されている。
レゾルバロータ15A、15Bは、中空環状の積層鉄心により構成されており、モータ出力軸12の内側に固定されている。回転角度検出器24A、24Bの配設位置は、モータロータ40(モータ出力軸12)の回転を検出することが可能であれば特に限定されず、モータ出力軸12及びベース部材20の形状に応じて任意の位置へ配設することができる。
モータロータ40が回転すると、モータロータ40とともにモータ出力軸12が回転し、連動してレゾルバロータ15A、15Bも回転する。これにより、レゾルバロータ15A、15Bと、レゾルバステータ25A、25Bとの間のリラクタンスが連続的に変化する。レゾルバステータ25A、25Bは、リラクタンスの変化を検出し、レゾルバ制御回路によって電気信号(デジタル信号)に変換する。電動機1を制御する制御装置は、レゾルバ制御回路の電気信号に基づいて、単位時間当たりのレゾルバロータ15A、15Bと連動するモータ出力軸12及びモータロータ40の位置や回転角度を演算処理することができる。その結果、電動機1を制御する制御装置は、モータ出力軸12の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測することが可能となる。
なお、上述したレゾルバロータ15Aは、回転中心Zrに対して偏心させた内周中心を有する円環状となっている。このため、モータロータ40の回転に伴ってレゾルバロータ15Aが回転すると、レゾルバステータ25Aとの間の距離を円周方向に連続して変化させ、両者の間のリラクタンスがレゾルバロータ15Aの位置により連続的に変化する。レゾルバロータ15Aの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が1周期となる単極レゾルバ信号を出力しており、回転角度検出器24Aはいわゆる単極レゾルバとなる。
また、レゾルバロータ15Bは、突極状の複数の歯が円周方向に等間隔で形成される。このため、モータロータ40の回転に伴ってレゾルバロータ15Bが回転すると、レゾルバステータ25Bとの間の距離を円周方向に周期的に変化させ、両者の間のリラクタンスがレゾルバロータ15Bの歯の位置により連続的に変化する。レゾルバロータ15Bの1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分が多周期となる多極レゾルバ信号を出力しており、回転角度検出器24Bはいわゆる多極レゾルバとなる。
このように、電動機1は、モータロータ40の1回転につき、リラクタンス変化の基本波成分の周期が異なる回転角度検出器24A及び回転角度検出器24Bを備えることにより、モータ出力軸12の絶対位置を把握することができ、また、モータ出力軸12の回転状態(例えば、回転速度、回転方向あるいは回転角度など)を計測する精度を高めることができる。
図2及び図4に示すように、電動機1は、ハウジングベース21が固定部材55により支持部材51に取り付けられることで、支持部材51に対して位置決め固定される。ハウジングベース21は、支持部材51に取り付けられた状態において、支持部材51の取付面と接する支持部21aを少なくとも1つ有している。支持部21aは、電動機1の端部1bよりも突出する、周方向に延在する凸部である。図4に示すように、実施形態1の電動機1は、支持部21aの電動機1の端部1b側に、固定部材55のボルト穴である締結穴(第1の締結穴)21pを備えている。締結穴21pは、支持部21aの厚さ方向に向かって延在する。
図7は、モータ出力軸12にかかる負荷の力をハウジングベースで受けた場合、電動機の外側で支持する支持剛性を説明する説明図である。図8は、モータ出力軸にかかる負荷の力をハウジングベースで受けた場合、電動機1の内側で支持する支持剛性を説明する説明図である。図7に示すように、電動機1の自重やモータ回転軸10の回転時の振動などを支持部材51に分散して作用させるため、モータ出力軸にかかる負荷の力Fを、電動機1の外側の支持力F1で支持する考え方もある。
しかしながら、モータ出力軸にかかる負荷の力Fを、電動機1の外側で支持する場合、ハウジングベース21が径方向に大きくなる。ハウジングベース21の外形を小さくする場合、支持剛性を増加させるため、厚みを大きくする必要がでてくる。ハウジングベース21の厚みを増加させる場合、モータステータ30の励磁コイル32とハウジングベース21との間の絶縁距離を確保するため、電動機1の高さが増加してしまう。電動機1の高さが増加する場合、搬送装置100と連携して検査等を行う産業機器の高さが高くなり、安定した操作性に影響を及ぼす可能性がある。
そこで、電動機1は、図8に示すように、モータ出力軸12にかかる負荷の力Fを、電動機1の内側の支持力F2で支持する。実施形態1の電動機は、支持部21aが図4に示す電動機1の端部1b側、つまり厚さ方向の外側の表面からよりも突出し、支持部21aが電動機1の自重を支持部材51に受けるようにしている。そして、支持部21aでの支持剛性を高めるため、固定部材55がハウジングベース21に取り付けられる回転中心Zrからの距離Crは、回転中心Zrから軸受14(の外輪)の外周までの距離Qrより小さい。そして、締結穴21pは、軸受14の外周よりも径方向内側にある支持部21aに開けられている。その結果、モータ出力軸12にかかる負荷、つまりアキシャルモーメントを、軸受14よりも内側の支持部21aで集中的に支持することができる。これにより、励磁コイル32の周囲にあるハウジングベース21の厚み21tを部分的に低減し、モータステータ30の励磁コイル32とハウジングベース21との間の絶縁距離を確保する。その結果、電動機1の高さを抑制することができる。
電動機1は、電動機1の端部1b側の表面であって、ハウジングベース21の外周端近傍に、ボルト穴である締結穴(第2の締結穴)21qを備えている。締結穴21qは、軸受14の外周よりも径方向外側に開けられている。締結穴21qは、軸受14の外周よりも径方向外側にあり、かつ支持部21aの厚さ方向に向かって延在する。ボルトなどの固定部材56は、締結穴21qと締結され、ハウジングベース21を支持部材51に取り付ける締結構造となる。このため、ハウジングベース21の固定部材56にはモータ回転軸10の回転に伴う回転反力が加わるが、支持部21aがモータ出力軸12から加わる負荷体50の負荷を支えているので、固定部材56が支持する力は、モータ回転軸10の回転に伴う回転反力に抗する力だけあればよい。このため、支持部材51とハウジングベース21の電動機1の端部1b側の間には、空隙51Aを設けることができる。その結果、電動機1は、内部の熱を空隙51Aに伝達し放熱することができ、支持部材51の熱による支持位置の歪みを抑制することができる。このため、上述した図1に示す搬送装置100は、搬送物53の搬送精度を高めることができる。
モータロータ40とモータ出力軸12とは、例えばボルト等の固定部材29により連結され、固定されている。ロータヨーク41は、外周41Aよりも径方向外側に突出する出力軸固定部12Aを備えている。つまり、モータロータ40の端部には、磁気ギャップGに面している部分でのモータロータ40の表面41Aよりも径方向外側に突出してモータ出力軸12と連結される出力軸固定部12Aを備えている。締結穴Pは、モータ出力軸12と出力軸固定部12Aとを連通する雌ねじ穴である。ボルト等の固定部材29は、図2に示す電動機1の端部1a側から、図4に示す締結穴Pに挿入され、固定部材29のボルトの頭が座面12eで位置決めされた上で締結される。
電動機1は、出力軸固定部12Aが励磁コイル32から安全距離を保ちながら、外周41Aよりも径方向外側に突出している。電気的な信頼性(ショート、ノイズなど)を確保するため、安全距離は励磁コイル32と周辺部材の距離は一定以上確保することが望ましく、概ね印加電圧100Vあたり1mmである。電動機1は、出力軸固定部12Aを備えることにより、安全距離を保ちながら、モータの外形サイズは出来る限り小さく抑えることができる。出力軸固定部12Aの励磁コイル32側には、外周の半径が漸次小さくなるテーパ面12dがある。テーパ面12dは、コイルとの絶縁距離を確保するため、ボルト下端部には内周方向に励磁コイル32の巻回された外形と同じような角度で掘り込んでいる。これにより、例えば、ロータヨーク41は、励磁コイル32から安全距離を保つことができる。
軽量の負荷体50を狭角度で位置決めを行うためには、ロータに加える加速度(減速度)を大きくすることが有効である。このため、モータ回転軸10の慣性モーメントを軽くすることと、モータ回転軸10に大きなトルクを加えることとを両立する必要がある。軽量の負荷を長期間安定させつつ高速で位置決め動作させるためには、モータ回転軸10の強度(剛性)を高めておく必要がある。負荷体50により、所望の条件で動かすために必要な出力(トルク及び回転数)が要請される場合、負荷体50からモータ回転軸10に加わる力が定まり、この力に抗するために必要な固定部材29の締結力、例えばボルトサイズ、本数及び固定部材29の回転中心Zrからの距離Brの少なくとも1以上が要求される。ボルトサイズを増加させ、本数を減らすと、モータ高さが増え、この高さ分だけモータ回転軸10の慣性モーメントが増える。また、ボルトサイズを低減させると、ボルトの本数が増え、回転半径Brも大きくなる、その結果、モータ出力軸12の半径12Brが大きくなってしまうため、半径12Brの増加分だけモータ回転軸10の慣性モーメントが増える。
そこで、モータ出力軸12は、モータ出力軸12の外周の半径が漸次小さくなるテーパ面12bをモータ出力軸12の外周に備える。テーパ面12bは、モータ出力軸12の外周の半径が出力軸固定部12A側へ向かって減少する部分である。テーパ面12bは、段部であってもよい。モータ出力軸12は、座面12eを含み、回転中心Zrと直交する仮想平面におけるモータ出力軸12の外周12aの半径12Brよりも、座面12eより出力軸固定部12A側にあるモータ出力軸12の外周12cの半径12Arは小さくなる。なお、出力軸固定部12Aの外周12cの半径は半径12Arと同じである。そして、モータロータ40は、出力軸固定部12Aの半径がモータ出力軸12の最大外周である外周12aより小さい。その結果、固定部材29のボルト頭の部分(座面12e)より下側(支持部材51側)のモータ回転軸10の径を小さくすることができる。モータ回転軸10は、部分的に薄肉となり、モータ回転軸10の慣性モーメントを軽くすることができる。また、モータ出力軸12は、負荷体50からモータ回転軸10に加わる力に抗した固定部材29の締結力を備え、かつ座面12eの周囲の金属が破けない厚みを維持することができる。
電動機1は、モータロータ40が回転する場合、励磁コイル32から発熱する。この熱は、負荷体50に伝導されるのは好ましくない。このため、回転中心Zrと平行な方向における、ダストカバー60の配置位置は、円環状のダストカバー本体61がモータ出力軸12の外周12cの周囲に位置するようにしている。このため、図2に示すように、ダストカバー60とモータ出力軸12に固定される搬送プレート52との間に空間があり、励磁コイル32と負荷体50との間に熱的な距離を置き、熱の負荷体50への伝達を抑制している。
実施形態1の電動機1では、軸受14は、マグネット42のある回転中心Zrと直交する平面とは異なる回転中心Zrと直交する平面に配置し、マグネット42よりも電動機1の端部1a側にある。このため、ハウジングフランジ23とハウジングインナ22とが軸受14を一部に挟んで対向し、かつモータ出力軸12とロータヨーク41とが軸受14を一部に挟んで対向する。この構造により、マグネット42のある回転中心Zrと直交する平面では、ハウジングインナ22とロータヨーク41との間に、空間があるだけとなり、モータロータ40(ロータヨーク41)の回転半径Rrを小さくすることができる。ロータヨーク41の回転半径Rrを小さくする場合、モータ回転軸10の慣性モーメントを軽くすることができ、かつ励磁コイル32の巻線容積を確保することができることから、モータ回転軸10に大きなトルクを加えることができる。上述した中空部11は、検出用の信号配線または配管などの挿通部材54を通すため、できるだけ大きいことが要求されることがある。この場合でもハウジングインナ22の大きさに応じたロータヨーク41の回転半径Rrとすることができる。
モータロータ40(ロータヨーク41)の回転半径Rrを小さくする場合、磁気ギャップGの回転半径も小さくなる。このため、励磁コイル32の巻線を逃げるため、固定部材29の位置を逃がすことにより、固定部材29の高さが増加する可能性がある。しかしながら、実施形態1の電動機1は、出力軸固定部12Aが、励磁コイル32の巻線を逃げるように、モータロータ40のロータヨーク41の端部に、磁気ギャップGに面しているモータロータ40の表面41Aよりも径方向外側に突出するようにしている。このため、固定部材29の高さの増加を抑制することができ、モータ回転軸10の自己慣性モーメントを抑制することができる。
また、モータロータ40の内周面には、軸受14を固定する最低限の段差のみあればよく、モータロータ40の表面を滑らかな円筒面とすることができる。これにより、電動機1は、モータロータ40の回転時の空気抵抗を低減することができる。また、ロータヨーク41の加工がしやすいので、電動機1の製造コストを低減することができる。
以上説明したように、搬送装置100は、電動機1のモータ出力軸12の加減速による位置決め時間を短縮することができる。電動機1は、モータ回転軸10(モータ出力軸12)の自己慣性モーメントを極限まで小さくし、モータロータ40の外周に高出力な励磁コイル32の巻線を施すことができる。このため、電動機1は、目標回転速度に到達するまでの時間を短縮し、加減速性能を向上させることができる。
電動機1は、軸受14を作用点とする振れ回りを抑制することができる。搬送装置100は、搬送プレート52の回転送りの精度を高め、搬送物53の搬送精度を向上させることができる。さらに、電動機1は、モータロータ40の回転剛性を高めることで、搬送プレート52の振動を抑制することができる。また、電動機1は、搬送精度に悪影響を与えないように、電動機1内の熱が搬送プレート52に伝わりにくい。
以上説明したように電動機1は、ハウジングベース21と、ハウジングインナ22と、モータロータ40と、モータステータ30と、軸受14と、モータ出力軸12と、を含む。ハウジングインナ22は、ハウジングベース21に立設され、中空部11を含む中空円環状である。モータロータ40は、ハウジングインナ22を囲み、ハウジングインナ22の径方向外側に配置される。モータステータ30は、ハウジングベース21に固定され、かつモータロータ40の径方向外側に磁気ギャップGを介して対向配置される。軸受14は、ハウジングインナ22に回転自在にモータロータ40を支持する。モータ出力軸12は、円環状であって、固定部材29によりモータロータ40の端部に締結させて軸受14の一部をモータロータ40に固定し、かつ磁気ギャップGに面しているモータロータ40の回転半径Rrよりも大きな回転半径Brを有する。この構造により、電動機1は、モータロータ40の自己慣性モーメントを低減し、かつモータ出力軸12から伝達する出力トルクを向上させることができる。このため、電動機1は、モータ出力軸12が目標回転速度に到達するまでの時間を短縮し、加減速性能を高めることができる。
(実施形態2)
図9は、回転中心を含む仮想平面で実施形態2の電動機の構成を切って模式的に示す断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態2の電動機1Aは、ベース部材20が、略円板状のハウジングベース21と、中空部11が貫通し、中空部11を囲むようにハウジングベース21から凸状に突出した軸心となるハウジングインナ22Aと、ハウジングフランジ23とを備えている。ハウジングインナ22Aは、ハウジングベース21に立設され、かつハウジングベース21と一体で形成されている。
この構造により、電動機1Aは、ハウジングベース21と支持部材51とが固定された場合、支持部材51に対するハウジングインナ22Aの支持剛性を高めることができる。
(実施形態3)
図10は、回転中心を含む仮想平面で実施形態3の電動機の構成を切って模式的に示す断面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態3の電動機1は、ハウジングベース21が上述した締結穴21pを備えているが締結穴21qを備えていない。また、ハウジングベース21の電動機1の端部1b側は、平坦であり、実施形態1のような支持部21aを備えていない。そして、固定部材55がハウジングベース21に取り付けられる回転中心Zrからの距離Crは、回転中心Zrから軸受14(の外輪)の外周までの距離Qrより小さい。締結穴21pは、軸受14の外周よりも径方向内側に開けられている。その結果、モータ出力軸12にかかる負荷、つまりアキシャルモーメントを、軸受14よりも径方向内側の締結構造(固定部材55)で集中的に支持することができる。これにより、励磁コイル32の周囲にあるハウジングベース21の厚み21tを部分的に低減し、モータステータ30の励磁コイル32とハウジングベース21との間の絶縁距離を確保する。その結果、電動機1の高さを抑制することができる。
(実施形態4)
図11は、実施形態4の電動機のハウジングベースの表面を模式的に示す平面図である。なお、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
実施形態4の電動機1は、図11に示すように、ハウジングベース21の厚さ方向にを貫通する排熱穴排熱孔63Aを備えている。排熱穴排熱孔63Aは、ハウジングベース21の周方向に複数備えられ点在している。排熱穴排熱孔63Aは、電動機1の内部の熱を排熱し、熱の蓄積を抑制することができる。支持部21aが電動機1の自重を支えているので、図4に示すように、支持部材51とハウジングベース21の電動機1の端部1b側の間には、空隙51Aを設けることができる。排熱穴排熱孔63Aから放出された熱は、空隙51Aを通じて放出され、支持部材51の熱による支持位置の歪みを抑制することができる。このため、上述した図1に示す搬送装置100は、搬送物53の搬送精度を高めることができる。
(評価例)
上述した実施形態1の電動機1を製造し、評価例PXとした。特許文献1に記載のアウターロータ型の電動機を製造し、比較例PSとした。評価例PX及び比較例PSの電動機
の外形を直径160mmとした場合、例えば、中空部は直径35mmである。評価例PXのモータ回転軸10の質量は、1.4kg、かつモータ出力軸の自己慣性モーメントが0.0028kgm2である。比較例PSのモータ回転軸の質量は、8.3kg、かつモータ出力軸の自己慣性モーメントが0.024kgm2である。評価例PX及び比較例PSの電動機を同じ0.01kgm2慣性モーメントの負荷体に取り付け、回転角度30度を回転させる位置決め時間を計測した。計測結果は、図12から図14に示す。
図12は、評価例及び比較例の位置決め時間の評価結果を示す説明図である。図13は、図12の評価結果に対応する評価例及び比較例の電動機の出力トルクを示す説明図である。図14は、図12の評価結果に対応する評価例及び比較例の電動機の加速度を示す説明図である。図12に示すように、評価例PXの位置決め時間は、26msである。比較例PSの位置決め時間は、36msである。図13に示すように、評価例PXの電動機の出力トルクは最大40Nmであるのに対し、比較例PSの電動機の出力トルクは最大62Nmであり、比較例PSの電動機は評価例PXの電動機よりも最大の出力トルクは大きい。しかしながら、評価例PXの電動機は比較例PSの電動機よりも位置決め時間が短い。
図14に示すように、評価例PXは、比較例PSの約1.8倍の加速度を加えることができる。そして図14の評価は、評価例PX及び比較例PS毎に、電動機のモータ回転軸(モータロータ)を回転する仕事JRに使用した加速度と、負荷体を回転する仕事JLに使用した加速度とを比較する。評価例PXでは、JR/(JL+JR)×100を演算した結果、22%である。比較例PSでは、JR/(JL+JR)×100を演算した結果、71%である。このように、評価例PXは、比較例PSと比べて、負荷体を速く加速している。
図15は、評価例及び比較例の出力トルクと回転速度の関係を示すNT特性を説明する説明図である。図16は、負荷体の慣性モーメントに対応する評価例及び比較例の最高加速度を示す説明図である。図15に示すように、位置決め時間は、NT特性だけには依存しないことは分かる。そして、図16に示すように、軽量の負荷体である0.02kgm2慣性モーメントより慣性モーメントが小さい負荷体を狭角度で位置決めを行う場合、評価例PXの方が、比較例PSよりも最大加速度を大きくすることができる。このように、評価例PXの電動機は、モータ出力軸が0.01kgm2慣性モーメントの負荷体を回転させた場合の最大角加速度が3000rad/s2以上である。なお、図16に示す表かでは、評価例PXの電動機が出力トルク50Nm、比較例Psの電動機が出力トルク90Nmを発生させた場合に、発生可能な最大加速度(rad/s2)を、モータの出力トルク(Nm)/(モータの自己慣性モーメント+負荷体の慣性モーメント(kgm2)、の式を演算して求めている。