以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、三相の平衡状態を維持するようにした三相交流配電線等に適用することを想定しており、三角結線したタップ切換型三相変圧器(以下、三角結線変圧器ともいう)を備えて構成されている。したがって、特に注釈のない電圧は、全て三相の線間電圧を意味し、ベクトル量である。
図1は本発明の実施形態に係る三角結線変圧器の回路図である。図1に示す三角結線変圧器120は、辺延長三角結線(以下、単に三角結線という)された3組の単巻変圧器1a、1b、1cと、これら各相の単巻変圧器1a、1b、1cのタップを選択するタップ切換手段Ta、Tb、Tcと、を備えて構成されている。3組の単巻変圧器1a、1b、1cは、それぞれ複数タップ1、k、nを有し、タップ切換手段Ta、Tb、Tcが、相別独立タップ切換制御することにより、変圧比を三相独立に変更することが可能である。
なお、三角結線変圧器120は、一般的に、タップ切換手段Ta、Tb、Tcを一括して切換て各相の単巻変圧器の同一タップを選択し、同一変圧比を形成することも可能である。しかし、ここでは、三角結線変圧器120のタップを、相別に独立して切換制御することにより、相別に異なる変圧比のタップを選択し、相別に異なる電圧変化させる場合のみを考える。
図1に示す、単巻変圧器1a、1b、1cは、大部分の巻線を一次側と二次側で兼用している。この単巻変圧器1a、1b、1cは、それぞれの巻線から複数タップ1〜nを引き出しており、これら複数タップ1〜nは、択一的に二次側端子a、b、cに接続されるように構成されている。これらの単巻変圧器1a、1b、1cを、辺延長三角結線することにより三角結線変圧器120が構成されている。
なお、辺延長とは、単巻変圧器1a、1b、1cそれぞれの巻線のうち、タップ1〜kに接続された部分に該当する。また、三角形の頂点である三角結線の接続点は、各相の単巻変圧器のタップkが該当する。三角形の辺は、タップk〜nおよび非タップ端zまでの巻線が該当する。タップ切換手段Ta、Tb、Tcは、各相の単巻変圧器1a、1b、1cのそれぞれのタップ1〜nのうち1つのタップを選択して各相の二次側端子a、b、cに接続する。
ここで、タップ切換型三相変圧器120の構成を、以下のとおり確認する。タップ切換型三相変圧器120は、複数タップ1〜nを有する切換タップ付単巻変圧器1a、1b、1cの非タップ端zと素通しタップkの間に形成された一次巻線Na1と、非タップ端zと複数タップ1〜nの何れかの間に形成される二次巻線Na1+Na2と、一次巻線Na1対二次巻線Na1+Na2による所望の変圧比(Na1+Na2)/Na1を形成するように複数タップ1〜nを切換接続するタップ切換手段Ta、Tb、Tcと、を複数組備えて三相結線されたタップ切換型三相変圧器120であって、第1の切換タップ付単巻変圧器1aの非タップ端zに第2の切換タップ付単巻変圧器1bの素通しタップkを接続し、第2の切換タップ付単巻変圧器1bの非タップ端zに第3の切換タップ付単巻変圧器1cの素通しタップkを接続し、第3の切換タップ付単巻変圧器1cの非タップ端zに第1の切換タップ付単巻変圧器1aの素通しタップkを接続することにより三角結線した3組の切換タップ付単巻変圧器1a、1b、1cと、それら3組の切換タップ付単巻変圧器1a、1b、1cそれぞれの非タップ端zまたは素通しタップkに接続された三相の一次側端子A、B、Cと、3組の切換タップ付単巻変圧器1a、1b、1cそれぞれの複数タップ1〜nの何れかにタップ切換手段Ta、Tb、Tcを介して接続された三相の二次側端子a、b、cと、を備え、3組の切換タップ付単巻変圧器1a、1b、1cは独立にタップ切換制御される。
各相のタップ切換手段Ta、Tb、Tcは、上述したように相別で独立にタップ切換制御ができるように、後述する制御手段により制御されるように構成されている。一次側端子A、B、Cは、各相の単巻変圧器1a、1b、1cのタップkの位置から引き出された三相交流の接続端子である。二次側端子a、b、cは、タップ切換手段Ta、Tb、Tcが、3組の単巻変圧器1a、1b、1cから、それぞれ複数タップ1〜nの何れかを択一的に接続した三相交流の接続端子である。なお、単巻変圧器1a、1b、1cはそれぞれa相、b相、c相の単巻変圧器とする。
図2は、本発明の実施形態に係る三角結線変圧器の電流計算用の等価回路図である。図2に示す三相配電系統100は、三相電源210と、三角結線変圧器120と、三相負荷230が非接地型で接続構成されている。三相電源210は、三角結線変圧器120の一次側端子A、B、Cに入力するように接続されている。
三相負荷230は、三角結線変圧器120の二次側端子a、b、cに三相接続された負荷ZA、ZB、ZCである。この負荷ZA、ZB、ZCは、三相平衡負荷に限らず、相別に性質の異なる単相負荷として、例えば、不図示の太陽光発電システム等が接続されることもあり、不平衡電圧の原因が含まれている。
また、三相電源210の電源中性点211と、三相負荷230の二次負荷中性点231は、どちらも接地されておらず、これら電源中性点211と二次負荷中性点231との間で流れる電流はない。なお、各相で変圧比の異なるタップが選択された場合、各相の単巻変圧器1a、1b、1cの巻数は、a相がNa1、Na2、b相がNb1、Nb2、c相がNc1、Nc2である。これらの巻数は、一次側が単巻変圧器の分路巻線の巻数、二次側は直列巻線の巻数に相当する。
図2に示す三相配電系統100において、三角結線変圧器120の一次側端子A、B、Cの電流IA、IB、ICと、二次側端子a、b、cの電流Ia2、Ib2、Ic2の関係は、下式に示すとおりである。
(2−2)式の右辺と左辺のそれぞれを加算すると、Ia1、Ib1、Ic1には関係なく、加算した両辺は、(2−1)式から共に0となる。すなわち、次式の条件は不要となる。
なお、理想変圧器の電流と巻数には以下の関係がある。
上式の各辺に加算したものは次式となる。
上式には、上述した0となる条件は必要ない。以上から、三角結線変圧器120であれば、a、b、c相のタップ1〜nを、相別独立に切換ることにより、各相の変圧比が相違しても変圧器の電流に関する原理を満足するので、負荷電流を流すことができる。なお、電圧に関しては図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施形態に係る三角結線変圧器120の電圧計算用の等価回路図である。なお、図3は、図2と同じ回路であり、電圧に着目したものである。したがって、重複する説明は避ける。
図3から、三角結線変圧器120の二次側の電圧は、以下となる。
以上から、三角結線変圧器120の二次側端子a、b、cの電圧Vab、Vbc、Vcaは次式で表すことができる。
また、上式の右辺を三角結線変圧器120の一次側端子A、B、Cの電圧V
AB、V
BC、V
CAで表すと次式となる。
上式から、一次側端子A、B、Cの電圧VAB、VBC、VCAは、a、b、c相で相違するタップを選択することにより、他相の電圧は影響を受けるが、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを各相独立に調整できる。このことは、一次側が不平衡電圧であっても、各相独立に適切なタップを選択すれば、二次側を平衡電圧にできることになる。
以上は、三角結線変圧器120の二次側端子a、b、cに負荷ZA、ZB、ZCが接続された場合である。これとは逆に一次側端子A、B、Cに負荷が接続された場合も、同様に負荷に電流を流すことが可能であり、一次側が不平衡電圧であっても、各相独立に適切なタップを選択すれば、二次側を平衡電圧にできる。なお、三角結線変圧器120の一次側端子A、B、Cの電圧VAB、VBC、VCAは、上式(2−9)より導出した次式から求められる。
(第1実施形態)
つぎに、図4に沿って、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを調整する場合を説明する。図4は本発明の第1実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の概略構成図である。なお、図4に示す電圧調整装置300は、三角結線変圧器120の二次側を出力側とし、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを電圧調整する場合を示している。
図4において、電圧調整装置300は、三角結線変圧器120と、制御部320を備えて構成される。制御部320は、計測手段21と、抽出手段22と、タップ切換制御手段23を備えて構成される。計測手段21は、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを計測する。抽出手段22は、計測手段21で計測した二次側電圧Vab、Vbc、Vcaの中から最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出する。
タップ切換制御手段23は、抽出手段22で抽出した最大値が、上限管理値を超えている場合、最大値発生相(以下、当該相ともいう)のタップを電圧が減少する方向へ、三角結線変圧器120のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。逆に抽出手段22で抽出した最小値が、下限管理値未満の場合、最小値発生相(以下、当該相ともいう)のタップを電圧が増加する方向へ、三角結線変圧器120のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。なお、タップ切換制御手段23は、不図示のコンピュータ、それによって実行されるプログラム、およびコンピュータの指示に応じて動作する不図示のアクチュエータ等によりタップ切換手段Ta、Tb、Tcが、適切に動作するように構成されている。
以下、図5、6に沿って、三角結線変圧器120により、一次側の不平衡電圧を二次側で是正する動作を説明する。図5は、三角結線変圧器120により、一次側の不平衡電圧を二次側で是正する回路図である。この図5は、図4に示した三角結線変圧器120における、一次側電圧と二次側電圧の関係を示している。
また、図6は、本発明の第1実施形態に係る三角結線変圧器による不平衡電圧の是正を説明するベクトル図であり、タップ切換前後の電圧変化を示している。図6(a)は、a相のタップ切換、図6(b)は、b相のタップ切換、図6(c)は、c相のタップ切換を示している。
まず、各a、b、c相、それぞれのタップを切換制御した時の電圧変化を説明する。図5において、三角結線変圧器120の一次側端子A、B、Cに三相平衡電圧を印加している条件で、1相のみタップを切換、他の相のタップは変圧比1となる素通しタップkを選択した場合、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaの変化は以下のとおりである。
・a相のタップ切換をした場合、VabとVcaの電圧が変化する。
・b相のタップ切換をした場合、VbcとVabの電圧が変化する。
・c相のタップ切換をした場合、VcaとVbcの電圧が変化する。
すなわち、ある相のタップ切換をすると、当該相とその相に対して進み相の電圧が変化することになる。これをベクトル図で示すと、図6のようになる。ΔVab、ΔVbc、ΔVcaは、それぞれの相のタップ切換による電圧変化量である。また、Vab´、Vbc´、Vca´は、タップ切換後の電圧を表す。
ここで、タップ切換前の三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaは、素通しタップkのため、三角結線変圧器120の一次側端子A、B、Cの電圧VAB、VBC、VCAと等しくなる。したがって、Vab=VAB、Vbc=VBC、Vca=VCAとなるため、一次側電圧の表示を省略している。
上述したように1つの相のタップ切換を行うと、他の相の電圧も変化することになるが、このベクトル図から、タップ切換を行った相の電圧の変化が、他の相の電圧の変化より大きいことになるため、ある相の電圧の調整を行う場合、当該相のタップ切換を優先して行えばよいことになる。
つぎに、図7に沿ってタップ切換前後の電圧について説明する。図7は、本発明の第1実施形態に係る三角結線変圧器による不平衡電圧の是正を説明するベクトル図である。三角結線変圧器120は、一次側端子A、B、Cの線間電圧が、電圧VAB、VBC、VCAである。すなわち、三角結線変圧器120に印加される不平衡電圧をVAB、VBC、VCAとする。ここでも、一次側電圧は変圧比1の素通しタップkに印加されるため、二次側電圧は一次側電圧VAB、VBC、VCAと等しくなる。したがって、一次側電圧の表示を省略し、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaのみを図7に示している。
また、三角結線変圧器120の各相において、1タップ分を切換制御した時の二次側電圧の変化量をΔVab、ΔVbc、ΔVcaとする。なお、これらの電圧変化量の位相は前記不平衡電圧の位相と同じである。
ここで、三角結線変圧器120において、二次側電圧をタップ切換により1タップ分増加させる方向に調整する。この場合、タップ切換後の二次側電圧の二次側電圧Vab´、Vbc´、Vca´は、そのベクトルが、図7のベクトル図に示すとおりであるとともに、下式(3−1)に示すとおりである。なお、(3−1)式は、前式(2−9)のα、β、γが、1タップ分変化した場合の電圧変化量に相当する。
さらに1タップ分増加させた場合、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab´´、Vbc´´、Vca´´は、下式に示すとおりである。
つぎに、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaの電圧調整について説明する。上述したように、不平衡電圧を管理値範囲で三相平衡させる。そのためには、二次側電圧Vab´´、Vbc´´、Vca´´が、下限管理値以上かつ上限管理値以下の範囲に収まるように各相のタップを切換て電圧調整すればよい。
以下、その電圧調整の動作の流れを示す。なお、以下に示す段階1〜3あるいは段階1〜8などの表記は、図12、15、17、19および、それらに沿った説明で示すステップS1〜S34の表記とは一致していない。
・段階1(計測手段)
・変圧器二次側電圧を測定する。
・段階2(抽出手段)
・測定した電圧の絶対値の中から、最大値、最小値、最大値発生相および最小値発生相を抽出する。
・段階3(タップ切換制御手段)
・予め設定された管理値範囲(下限管理値、上限管理値)と前記段階2の抽出結果とを判定し、タップ切換を行う相および電圧を増加させるか減少させるかの切換方向(1タップ分の電圧変化量の正負)の決定を行う。
・この判定により、管理値範囲と測定電圧の最大、最小値との関係として以下の結果が得られる。
(1)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値以上である場合
(2)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値未満である場合
(3)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値未満である場合
(4)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値以上である場合
・前記の各結果に対して以下のように電圧を調整する。
(1)の場合
最大値の相を電圧変化量が負となる方向に1タップ分切換を行う。
(2)の場合
最小値の相を電圧変化量が正となる方向に1タップ分切換を行う。
(3)の場合
最大値の相を電圧変化量が負、最小値の相を電圧変化量が正となる方向に1タップ分切換を行う。
(4)の場合
全ての相の電圧が管理値範囲の上下限管理値内に調整されたことになり、タップ切換を終了する。
以上の調整で測定した電圧の最大値および最小値が管理値範囲に収まらない場合、電圧調整後の電圧が段階1で計測されるため、以下、同様に段階2、段階3に進み、段階3の判定で(4)の場合になるまで段階1〜3を繰り返すことになる。
つぎに、タップ切換制御手段23の具体例について説明する。タップ切換制御手段23は、不図示の上限判定手段と、下限判定手段を備えている。上限判定手段は、抽出手段22で抽出した最大値が、上限管理値を超えているか否かを判定し、上限管理値を超えている場合、「1」、そうでない場合、「0」と判定する。また、下限判定手段は、抽出手段22で抽出した最小値が下限管理値未満であるか否かを判定し、下限管理値未満の場合、「1」、そうでない場合、「0」と判定する。
これらの上限判定手段の結果と下限判定手段の結果の組合せにより、以下のとおりタップ切換を行う。
(1)上限判定手段の結果が「1」、かつ下限判定手段の結果が「1」の場合、最大値の相の電圧を下げる方向に当該相をタップ切換するとともに、および最小値の相の電圧を上げる方向に当該相のタップ切換を行う。
(2)上限判定手段の結果が「1」、かつ下限判定手段の結果が「0」の場合、最大値の相の電圧を下げる方向に当該相のタップ切換を行う。
(3)上限判定手段の結果が「0」、かつ下限判定手段の結果が「1」の場合、最小値の相の電圧を上げる方向に当該相のタップ切換を行う。
(4)上限判定手段の結果が「0」、かつ下限判定手段の結果が「0」の場合、全ての相の電圧が管理値範囲に調整されたことになり、タップ切換を終了する。このように、制御部320のタップ切換制御手段23が、プログラムを不図示のコンピュータに実行させて一連の制御を行うことにより、不平衡電圧を平衡させることができる。以上、三角結線変圧器120の二次側を出力側とし、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを調整する場合を説明した。
(第2実施形態)
つぎに、図8、9に沿って、三角結線変圧器120の一次側を出力側とし、一次側端子A、B、Cの電圧VAB、VBC、VCAを調整する場合について説明する。図8は、本発明の第2実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の概略構成図である。図9は、本発明の第2実施形態に係る三角結線変圧器により二次側の不平衡電圧を一次側で是正する回路図である。図8に示すように、電圧調整装置310は、三角結線変圧器120と、それを制御する制御部320を備えて構成される。
制御部320は、計測手段21と、抽出手段22と、タップ切換制御手段23を備えて構成される。計測手段21は、三角結線変圧器120の一次側電圧VAB、VBC、VCAを計測する。抽出手段22は、計測手段21で計測した一次側電圧VAB、VBC、VCAの絶対値の中から最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出する。タップ切換制御手段23は、図4に沿って説明したとおりである。
ここで、図4、8に示した電圧調整装置300、310の構成を、以下のとおり確認する。電圧調整装置300、310は、三角結線変圧器120と、三角結線変圧器120の出力電圧を管理値範囲に収めるように制御する制御部320と、を備えた電圧調整装置300、310であって、制御部320は、一次側端子A、B、Cまたは二次側端子a、b、cのうち出力側の出力電圧を三相ともに計測する計測手段21と、その計測手段21の計測した出力電圧を相別で比較することにより最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出する抽出手段22と、その抽出手段22の抽出結果および管理値範囲に基づいて、タップ切換手段Ta、Tb、Tcを、最大値発生相は降圧方向へ、最小値発生相は昇圧方向へ、相別で独立に制御するタップ切換制御手段23と、を備えたことを特徴とする。
つぎに、図8、9に図10も加えて第2実施形態の動作を説明する。図10は、本発明の第2実施形態に係る三角結線変圧器による不平衡電圧の是正を説明するベクトル図である。この図10は、図9に示した回路において、三角結線変圧器120のa、b、c相のそれぞれのタップを、切換制御した時の電圧ベクトル図である。この電圧ベクトル図は、三角結線変圧器120の一次側電圧VAB、VBC、VCAを減少させる方向に、タップ切換した場合を示している。
まず、各a、b、c相、それぞれのタップを切換制御した時の電圧変化を説明する。図9において、三角結線変圧器120の二次側端子a、b、cに、三相平衡電圧を印加している条件で、1相のタップのみを切換て、他の2相のタップは、変圧比1となる素通しタップkを選択した場合、三角結線変圧器120の一次側電圧VAB、VBC、VCAの変化は、以下のとおりである。
三角結線変圧器120の一次側電圧VAB´、VBC´、VCA´は、各相でタップを切換た時、それらのベクトルは、図10に示すベクトル図のとおりであるとともに、下式(3−3)〜(3−7)に示すとおりである。
ただし、
Vab、Vbc、Vca:二次側電圧
VAB´、VBC´、VCA´:各相タップ切換後の一次側電圧
ΔVAB´、ΔVBC´、ΔVBC´:各相タップ切換による一次側各相の電圧変化量
上式から、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaは一定であり、各相独立にタップ切換をすると変圧比が相別に相違するため、一次側電圧VAB、VBC、VCAは、タップ切換前後で大きさおよび位相が変化する。また、電圧変化量ΔVAB´、ΔVBC´、ΔVBC´も、タップ切換後の電圧と、その時の変圧比で決まる電圧となる。
ここで、電圧変化量ΔVAB´、ΔVBC´、ΔVBC´を、次式で表す。なお、α、β、γは、a相、b相、c相の単巻変圧器1a、1b、1cにおける変圧比の変化量に相当する。
これを用いて(3−3)式からタップ切換後の電圧は次式で表すことができる。
ここで、例えば、a相の素通しタップkから、切換た変化量をαとする。また、b、c相は、素通しタップkのままに固定した場合の電圧は、下式に示すとおりである。
ここで、タップ切換前の電圧は、素通しタップkのため、変圧比1である。二次側の各相において、電圧Vab、Vbc、Vcaであったから、電圧変化量は、下式のとおりである。
上式で、a相のタップを切換た場合、VABとVCAの電圧に影響し、その電圧変化量は、VABとVCAは、正負の符号を除けば同じである。しかし、この電圧変化量はベクトル的に加算されるため、Vabと同位相であるVABに大きく影響することになる。したがって、上述した三角結線変圧器120の二次側電圧調整の場合と同様、ある相の電圧を調整する場合、当該相のタップ切換を優先して行えばよいことになる。
また、三角結線変圧器120の一次側電圧調整、およびタップ切換制御手段23の具体的な動作に関しては、第1実施形態で説明した二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを調整する場合と同様であるため、さらなる説明は省略する。以上、第2実施形態において、逐次電圧調整について説明した。この逐次電圧調整とは、電圧調整する側の出力電圧を測定しながら、相別に1ステップずつタップ切換を行う都度、三角結線変圧器120の出力電圧を改めて測定し、各相のタップを調整する必要があるか否かを判断してタップ切換を1回ずつ行って、三相ともに管理値範囲に収める方法である。
(第3実施形態)
つぎに、図11〜図13に沿って、第3実施形態の説明をする。第3実施形態は、上述した第1実施形態に例示したように、三角結線変圧器120の二次側から出力を得る場合であって、その二次側出力電圧を、管理値範囲で三相平衡させるために、必要なタップ切換量を、事前に算出し、その結果に基づいて、タップ切換するようにしたものである。その効果は、余分なタップ切換動作を省略することにより、迅速に電圧調整できるようにすることである。なお、二次側電圧と二次側出力電圧との表記を適宜に用いている。
図11は、本発明の第3実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の概略構成図である。図11に示す電圧調整装置400は、三角結線変圧器120の二次側を出力側とし、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを電圧調整する場合を示している。図11において、電圧調整装置400は、三角結線変圧器120と、制御部420を備えて構成される。制御部420は、計測手段21と、一次側計測手段221と、タップ切換制御手段23と、電圧記憶手段24と、タップ切換量演算手段30を備えて構成される。
計測手段21は、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを計測する。一次側計測手段221は、一次側電圧VAB、VBC、VCAを計測する。電圧記憶手段24は、電圧調整開始時に計測手段21で計測した電圧を記憶する。タップ切換量演算手段30は、一次側計測手段221と電圧記憶手段24からの電圧に基づいて、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを、三相ともに管理値範囲に収めるための各相のタップ切換量を求める。タップ切換制御手段23は、タップ切換量演算手段30の結果に基づいて、タップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。
ここで、電圧調整装置400の構成を、以下のとおり確認する。電圧調整装置400は、三角結線変圧器120と、三角結線変圧器120の出力電圧を管理値範囲に収めるように制御する制御部420と、を備えた電圧調整装置400であって、制御部420は、二次側端子の出力電圧を三相ともに計測する計測手段21と、一次側端子の電圧を計測する一次側計測手段221と、電圧調整開始時に計測手段21で計測した電圧を記憶する電圧記憶手段24と、出力電圧を三相ともに管理値範囲に収める最終的な相別のタップ切換量を出力するタップ切換量演算手段30と、そのタップ切換量演算手段30からのタップ切換量に基づいてタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御するタップ切換制御手段23と、を備え、タップ切換量演算手段30は、一次側計測手段221で計測した電圧と同位相の電圧変化量を加えた場合の出力電圧を、電圧変化量と電圧記憶手段24で記憶した電圧を用いて演算式により算出し、その算出された出力電圧に基づいて最終的な相別のタップ切換量に相当する電圧変化量を算出することを特徴とする。
つぎに、電圧調整装置400の動作を説明する。図11に示すタップ切換量演算手段30は、以下の手順で計算した結果を、各相のタップ切換量として出力する。まず、一次側計測手段221により電圧計測する。その計測された電圧と同位相の電圧変化量と、電圧記憶手段24で記憶した電圧と、を用いて、予め設定された演算式により二次側電圧を算出し、全ての相の電圧を管理値範囲に収めるための各相の最終的な電圧変化量を算出する。ここで算出された最終的な電圧変化量を、各相のタップ切換量として出力する。結果的に、「最終的タップ切換量」を、事前に算出することができる。
このタップ切換量は、例えば、a相は2タップ分増加、b相は3タップ分増加、c相は1タップ分減少という量である。タップ切換制御手段23は、このように算出されたタップ切換量に応じてタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。
このように、事前に算出した「最終的タップ切換量」に基づいた単一制御は、第1実施形態で説明した逐次電圧調整する場合に比べ、迅速に制御目的を達成することが可能である。つまり、不平衡電圧を短時間で三相平衡状態にすることができる。なお、タップ切換量演算手段30の演算式は、(3−2)式と同じであるが、ここでは次式を用いる。
上式は、電圧変化量を加減した場合の二次側電圧Vab´´、Vbc´´、Vca´´は、上式に示すとおりである。電圧変化量を加減した場合とは、例えば、1タップ分増減させた場合などを意味する。(4−1)式のVab´、Vbc´、Vca´は、電圧調整開始時の二次側電圧を、計測手段21によって計測した計測値である。この計測値Vab´、Vbc´、Vca´は、電圧記憶手段24に記憶した電圧に相当する。
なお、三角結線変圧器120の電圧調整開始時に、タップ切換手段Ta、Tb、Tcの全てが、素通しタップkが選択されているとは限らない。したがって、素通しタップk以外のタップが選択されている場合も考慮する必要がある。その場合、電圧調整開始時の電圧は、素通しタップkが選択されている時の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaに対して、ある電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaが加算されているものとし、Vab´、Vbc´、Vca´としている。
電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaは、一次側計測手段221で計測した電圧と同位相の電圧変化量である。したがって、(4−1)式の右辺の電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaを加減することにより、左辺の電圧Vab´´、Vbc´´、Vca´´の絶対値の全てを、管理値範囲に収めることができる各相の最終的な電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaを求める。
このようにして算出した最終的な電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaを、各相の1タップ分の電圧変化量で除すれば、各相のタップ切換量が算出できる。タップ切換量演算手段30は、これらのタップ切換量をタップ切換制御手段23へ出力する。
電圧調整装置400は、タップ切換制御手段23が、タップ切換量演算手段30の出力するタップ切換量に基づいて、三角結線変圧器120のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。この制御により、二次側の出力電圧を、管理値範囲に三相平衡させることができる。
以下、タップ切換量演算手段30の具体例について説明する。上式(4−1)を、下式(4−2)のように表し、タップ切換量演算手段30の演算式として用いる。
また、Pa、Pb、Pcは、−1、0、1の3値の何れかに設定される。すなわち、3とおりの場合に分けて、電圧を減少させる側の電圧変化量とする場合は−1、電圧変化量を与えない場合は0、電圧を増加させる側の場合は1とする。
また、電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaは、一次側計測手段221で計測した三角結線変圧器120の一次側電圧ΔVab、ΔVbc、ΔVcaと同位相の電圧変化量である。電圧変化量とは、例えば1タップ分の電圧変化量を意味する。この電圧変化量を(4−2)式のΔVab、ΔVbc、ΔVcaに代入しておく。
以下に動作の流れを説明する。なお、ここで、PPa、PPb、PPcはa相、b相、c相のPa、Pb、Pcの加算累積値である。また、PPa´、PPb´、PPc´は、過去の加算累積値であり、開始時は0に設定する。
・段階1
・電圧記憶手段24で記憶した変圧器二次側電圧を(4−2)式のVab´、Vbc´、Vca´に代入する。なお、下記段階5で示すとおり、以下の段階4の演算式により一度計算した後は、演算式で計算した電圧が代入される。
・段階2
・段階1で代入した電圧Vab´、Vbc´、Vca´の絶対値の中から最大値、最小値、最大値発生相および最小値発生相を抽出する。
・段階3
・予め設定された電圧の下限管理値および上限管理値と、前記段階2の抽出結果とを判定し、タップ切換を行う相および電圧を増加と減少の何れの切換方向にするかを決定する。切換方向とは、電圧変化量の正負の何れかを意味する。
・この判定により、管理値範囲と段階2の抽出結果の最大値、最小値との関係として以下の何れかの結果が得られる。
(1)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値以上である場合
(2)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値未満である場合
(3)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値未満である場合
(4)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値以上である場合
・前記の各結果に対して以下のようにPa、Pb、Pcを決める。
(1)の場合:最大値の相のPxを−1、それ以外の相のPxは0にする。
(2)の場合:最小値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(3)の場合:最大値の相のPxを−1、最小値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(4)の場合:全ての相のPxを0にする。
ただし、xはa、b、cを意味する。
・段階4
PPa、PPb、PPcはa相、b相、c相の加算累積値である。
・前記のPa、Pb、Pcを演算式(4−2)式に代入し、電圧Vab´´、Vbc´´、Vca´´を求める。
・相別にPa、Pb、Pcを加算累積する。
すなわち、過去の加算累積値をPPa´、PPb´、PPc´とすると、PPa=PPa´+Pa、PPb=PPb´+Pb、PPc=PPc´+Pcとして累積する。
・段階5
・段階3の結果が(1)、(2)、(3)の場合、段階1に戻ると共に、段階1の(4−2)式のVab´、Vbc´、Vca´に前記段階4で演算式での計算後のVab´´、Vbc´´、Vca´´を代入する。なお、この時、段階4で求めた加算累積値を過去の加算累積値に変更する。すなわち、PPa´=PPa、PPb´=PPb、PPc´=PPcとする。
・段階6
・段階3の結果が(4)の場合になるまで段階1〜5を繰り返し、(4)の場合になれば、管理値範囲で三相平衡したことになる。ここで、その繰り返しを終了し、段階4での加算累積PPa、PPb、PPcを出力する。
以上により出力されたタップ切換量に基づいて、タップ切換制御手段23により各相のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御し、必要なタップ切換を行う。
第3実施形態によれば、制御部420が、三角結線変圧器120の現在のタップ位置を、認識できずに変圧比がわからない場合であっても、管理値範囲で三相平衡させることができる。なお、前記のタップ切換後に再度三相不平衡となった場合、段階1で新たに計測した電圧が(4−2)式に代入され、以下同様の動作となり、管理値範囲で三相平衡した電圧に調整できる。
図12は、本発明の第3実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の動作を示すフローチャートである。図12に示すように、電圧調整装置400は、電圧調整を開始すると、まず初期化するステップを実行する。ここで、PPa、PPb、PPcはa相、b相、c相のPa、Pb、Pcの加算累積値である。また、PPa´、PPb´、PPc´は、過去の加算累積値であり、開始時は0に設定する(S1)。つぎに、測定された各相の電圧を記憶するステップを実行する(S2)。そして、最大値と当該相、および最小値と当該相を抽出するステップを実行する(S3)。つぎに、上限管理値と最大値、下限管理値と最小値をそれぞれ比較するステップを実行する(S4)。そして、最大値および最小値が管理値範囲に収まっているか否かを判断するステップを実行する(S5)。
ステップS5がYESならPPa、PPb、PPcを出力するステップを実行する(S6)。つぎに、PPa、PPb、PPc相当のタップ切換するステップにより電圧調整を終了する(S7)。一方、ステップS5がNOなら、最大値のみが管理値範囲から外れているか否かを判断するステップを実行する(S8)。ステップS8がYESなら最大値発生相のみPx=−1、それ以外の相はPx=0に設定するステップを実行する(S9)。なお、図12、15、17、19に示すフローチャートにおいて、最大値発生相を最大値相、最小値発生相を最小値相、と略して記載している。
つぎに、演算式にPa、Pb、Pcを代入して電圧計算するステップを実行する(S10)。そして、相別にPxを加算累積するステップを実行する。すなわち、過去の加算累積値をPPa´、PPb´、PPc´とすると、PPa=PPa´+Pa、PPb=PPb´+Pb、PPc=PPc´+Pcとして累積する(S11)。一方、ステップS8がNOなら、最小値のみが管理値範囲から外れているか否かを判断するステップを実行する(S12)。ステップS12がYESなら最小値発生相のみPx=1、それ以外の相はPx=0に設定するステップを実行する(S13)。
ステップS12がNOなら最大値発生相のPx=−1、最小値発生相のPx=1、それ以外の相はPx=0に設定するステップを実行する(S14)。なお、xはa、b、またはc相である。そして、ステップS9、S13、S14の後にステップS10へと進む。ステップS10の後にステップS11へと進む。ステップS11からステップS2へ戻る。このステップS2以降、ステップS5がYESとなることにより、ステップS7に至って電圧調整を終了するまでは、再びステップS2に戻って、同様のルーチンを繰り返し実行する。
以上の動作についてシミュレーションを行った結果例を図13に示す。図13は、本発明の第3実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置によるシミュレーション結果を示すベクトル図である。図13に示すとおり、電圧調整前の電圧をVab´(大きさ:120%、位相:0度)、Vbc´(大きさ:70%、位相:−150度)、Vca´(大きさ:69%、位相:149度)としている。また、上限管理値を102%、下限管理値を98%、電圧変化量を1%としている。不平衡電圧としては極端な例であるが、電圧調整後の電圧は、図13に示された電圧Vab´´、Vbc´´、Vca´´となり、これらの絶対値は、三相平衡したところで、ほぼ100%の電圧となる。
また、図13には、管理値範囲の平衡電圧に調整されるまでの軌跡を示している。この軌跡は、図4、8に示した第1実施形態に係る電圧調整装置300、400において、逐次電圧調整と同様の調整過程を経て、管理値範囲に調整されることを示している。
このシミュレーションでは、タップ切換量はa、b、c相のそれぞれが−56、41、74タップ分であり、前記段階6で示す(4)の結果になるまでの繰り返し回数は115回であった。このことから、図4、8に示した第1実施形態に係る電圧調整装置300、310において、逐次電圧調整する場合には、115回分相当の時間が必要であったところを、図11に示した第3実施形態に係る電圧調整装置400であれば、事前演算型の電圧調整により、74回分相当の時間で電圧調整できる。したがって、逐次電圧調整よりも迅速に管理値範囲の三相平衡電圧にすることが可能であるという効果が確認できた。なお、事前演算型の電圧調整とは管理値範囲に収めるために必要なタップ値を、実際にタップ切換を実行する前に、演算手段によって相別に算出し、その結果に基づいて、最小回数のタップ切換を実行する電圧調整方法である。
(第4実施形態)
つぎに、図14および図15に沿って第4実施形態について説明する。図14は、本発明の第4実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の概略構成図である。図14に示す電圧調整装置500は、三角結線変圧器120の二次側を出力側とし、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを電圧調整する場合を示している。図14において、電圧調整装置500は、三角結線変圧器120と、制御部520を備えて構成される。制御部520は、計測手段21と、一次側計測手段221と、タップ切換制御手段23と、電圧記憶手段24と、タップ切換量演算手段30を備えて構成される。
計測手段21は、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを計測する。一次側計測手段221は、三角結線変圧器120の一次側電圧を計測する。電圧記憶手段24は、電圧調整開始時に計測手段21で計測した電圧を記憶する。タップ切換量演算手段30は、一次側計測手段221の計測結果と、電圧記憶手段24が記憶している電圧に基づいて、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを、管理値範囲に収めるためのタップ切換量を算出する。タップ切換制御手段23は、タップ切換量演算手段30の算出結果に基づいて、三角結線変圧器120のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。
タップ切換量演算手段30は、一時記憶手段33と、演算式設定手段31と、電圧変化量決定手段39と、演算手段34と、電圧変化量累積記憶手段35と、出力手段36を備えて構成される。一時記憶手段33は、電圧記憶手段24で記憶した電圧を、一時的に記憶する。演算式設定手段31は、三角結線変圧器120の二次側の電圧を増加する方向に各相の変圧比を変化させた場合の電圧変化量と、電圧記憶手段24で記憶した電圧とにより、電圧変化量を与えた後の二次側の電圧を求める演算式を設定する。電圧変化量決定手段39は、一次側計測手段221で計測した電圧と同位相の所定の電圧変化量を決定する。
演算手段34は、一時記憶手段33で記憶した三相電圧の中から最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出して不平衡電圧の実態を把握する。演算手段34は、不平衡電圧を是正するための最終的な電圧調整量を、以下の手順で算出する。演算手段34は、抽出した最大値が上限管理値を超えている場合、電圧変化量決定手段39で決定した電圧変化量を当該相の電圧を減少させる側に、すなわち、負方向の電圧変化量に設定する。また、抽出した最小値が下限管理値未満の場合、電圧変化量決定手段39で決定した電圧変化量を当該相の電圧を増加させる側に、すなわち正方向の電圧変化量に設定する。
演算手段34は、電圧変化量を与えた後の電圧を計算する都度、相別に前記設定した電圧変化量を加算累積する。演算手段34は、それらの各相の加算累積した電圧変化量と、電圧記憶手段24で記憶した電圧を、演算式設定手段31で設定した演算式に代入する。演算手段34は、電圧変化量を与えられた後の電圧を算出する。演算手段34は、一時記憶手段33で記憶されている電圧を、電圧変化量を与えられて算出された電圧に記憶更新する。電圧変化量累積記憶手段35は、演算手段34が加算累積した電圧変化量を、計算する都度に記憶更新する。
演算手段34および電圧変化量累積記憶手段35は、三相電圧平衡するまで、加算累積した電圧変化量を、計算する都度に記憶更新することを繰り返す。なお、三相電圧平衡するとは、演算手段34で算出した電圧の全てが上限管理値以下かつ下限管理値以上に収まったことを意味する。
出力手段36は、三相電圧の全てが管理値範囲に収まって、三相電圧平衡した場合に、電圧変化量累積記憶手段35が、記憶した相別の加算累積した電圧変化量に相当するタップ切換量を、相別に出力する。なお、この時、電圧変化量累積記憶手段35には、前述した最終的な電圧調整量が記憶されていることになる。タップ切換制御手段23は、タップ切換量演算手段30の内部にある出力手段36が出力するタップ切換量に基づいて、タップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。
ここで、図14に示した電圧調整装置500の構成を、以下のとおり確認する。この電圧調整装置500は、図11に記載の電圧調整装置400における、タップ切換量演算手段30を、以下のように構成したものである。このタップ切換量演算手段30は、電圧記憶手段24で記憶した電圧を一時的に記憶する一時記憶手段33と、出力電圧を増加する方向に各相の変圧比を変化させた場合の電圧変化量と電圧変化量を与える前の電圧とから電圧変化量を与えた後の電圧を求める演算式を設定する演算式設定手段31と、一次側計測手段221で計測した電圧と同位相の電圧変化量を決定する電圧変化量決定手段39と、演算式設定手段31で設定した演算式により電圧変化量を与えた後に算出した電圧に一時記憶手段33を記憶更新する演算手段34と、演算手段34の算出した電圧が三相ともに管理値範囲に収まるまで繰り返し計算される都度に加算累積した電圧変化量を記憶更新する電圧変化量累積記憶手段35と、電圧変化量累積記憶手段35で累積した電圧変化量に相当する各相のタップ切換量を出力する出力手段36と、を備えたことを特徴とする。
最終的なタップ切換量(以下、電圧調整量ともいう)の算出手順および動作について、数式に基づいて説明する。電圧調整量とは、電圧を管理値範囲内に収めて三相平衡するために電圧調整する量を意味する。三角結線変圧器120の各相タップを、独立して切換た場合、二次側電圧は、次式(5−1)で表される。左辺は電圧調整して三相平衡となった時の電圧とすると、右辺の電圧調整開始時の電圧Vab、Vbc、Vcaに対する最終的な電圧調整量ΔVabL、ΔVbcL、ΔVcaLを求めればよい。
電圧調整量ΔVabL、ΔVbcL、ΔVcaLを求めるには、前記(4−1)式の電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaを変えて、左辺の電圧の絶対値が管理値範囲に収まるように、繰り返して計算することである。したがって、演算式設定手段31は、(4−1)式を設定する。(4−1)式は、電圧調整開始時の電圧に、三角結線変圧器120の一次側電圧と同位相の電圧変化量を加算させた後の電圧を求める式である。
このため、電圧変化量決定手段39は、一次側計測手段221で計測した三角結線変圧器120の一次側電圧と同位相の電圧変化量を決定する。上述したように、演算手段34は、決定された電圧変化量と、一時記憶手段33で記憶されている電圧により、電圧変化量を与えた後の電圧を算出し、その算出された電圧を、一時記憶手段33に記憶更新する。
電圧変化量累積記憶手段35は、演算手段34が加算累積した電圧変化量を、計算する都度に記憶更新する。なお、決定された電圧変化量とは、例えば、1タップ分の電圧変化量を意味する。電圧記憶手段24は、(4−1)式の初期値である電圧調整開始時の電圧を相別に記憶する。それと同時に、一時記憶手段33でも電圧調整開始時の電圧を一時的に記憶する。
演算手段34が、最終的に必要なタップ切換量を算出すれば、実際のタップ切換回数を減らして、迅速に三相平衡できることを、以下の2段階に分けて説明する。
(第1段階)
一時記憶手段33で記憶した電圧の中から最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出する。演算手段34は、抽出した最大値が上限管理値を超えている場合、電圧変化量決定手段39で決定した電圧変化量を当該相の電圧を減少させる側に、すなわち、負方向の電圧変化量に設定する。また、抽出した最小値が下限管理値未満の場合、電圧変化量決定手段39で決定した電圧変化量を当該相の電圧を増加させる側に、すなわち正方向の電圧変化量に設定する。
電圧変化量累積記憶手段35が、加算累積した電圧変化量と、電圧記憶手段24が記憶した電圧調整開始時の電圧を(4−1)式に代入して計算する。この算出結果は、電圧変化量を1回与えた後の電圧である。この電圧を一時記憶手段33で記憶するとともに、演算手段34が、(4−1)式に代入した電圧変化量を、相別に電圧変化量累積記憶手段35で記憶更新する。なお、電圧変化量累積記憶手段35が、加算累積した電圧変化量は、第1段階が最初であり累積値は0であるから、加算した電圧変化量そのものとなる。
(第2段階)
第1段階と同様に、一時記憶手段33に記憶されている、1回目の電圧変化量を与えた後の電圧の中から、最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出する。演算手段34は、抽出した最大値が上限管理値を超えている場合、電圧変化量決定手段39で決定した電圧変化量を当該相の電圧を減少させる側に、すなわち、負方向の電圧変化量に設定する。また、抽出した最小値が下限管理値未満の場合、電圧変化量決定手段39で決定した電圧変化量を当該相の電圧を増加させる側に、すなわち正方向の電圧変化量に設定する。
第1段階で加算累積した電圧変化量に、第2段階で決定された電圧変化量を、さらに加算して累積する。この加算累積した電圧変化量と、電圧記憶手段24で記憶した電圧を(4−1)式に代入して電圧を求める。それと同時に一時記憶手段33の内容を、(4−1)式で求めた電圧に記憶更新する。また、演算手段34で代入した加算累積した電圧変化量を電圧変化量累積記憶手段35で記憶更新する。
この算出結果は電圧変化量を2回与えた後の電圧であり、一時記憶手段33には2回分の電圧変化量を与えた後の電圧、電圧変化量累積記憶手段35には2回分の加算累積した電圧変化量を記憶することになる。そして、演算手段34および電圧変化量累積記憶手段35は、2回に限らず、三相電圧平衡するまで、加算累積した電圧変化量を、計算する都度に記憶更新することを繰り返す。三相電圧平衡した場合、電圧変化量累積記憶手段35に記憶されている電圧変化量は、(5−1)式に示される最終的な電圧調整量ΔVabL、ΔVbcL、ΔVcaLである。
出力手段36は、最終的な電圧調整量ΔVabL、ΔVbcL、ΔVcaLに相当するタップ切換量を、タップ切換制御手段23へ出力する。タップ切換制御手段23は、タップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御することにより、三角結線変圧器120の二次側電圧を三相平衡させ、かつ管理値範囲に収めることができる。以上のように、演算手段34が、最終的に必要なタップ切換量を算出すれば、実際のタップ切換回数を減らして、迅速に三相平衡できる。
以下、タップ切換量演算手段30の具体例について説明する。演算式設定手段31で設定する演算式は、(4−2)式を変形した次式を用いる。
ただし、(5−3)式のPa、Pb、Pcは、−1、0、1の3値の何れかをとるものであり、電圧を減少させる側の電圧変化量とする場合、−1、電圧変化量を与えない場合、0、電圧を増加させる側の電圧変化量とする場合、1とする。
また、(5−2)式の電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaは、一次側計測手段221で計測した電圧調整開始時の三角結線変圧器120の一次側電圧Vab、Vbc、Vcaと同位相の電圧変化量である。この電圧変化量は電圧変化量決定手段39で決定される。なお、電圧変化量とは、例えば、1タップ分の電圧変化量を意味する。
以下、その電圧調整の動作の流れを示す。
・段階1
・電圧変化量決定手段39で決定した電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaを(5−2)式に代入する。
・電圧変化量累積記憶手段35の記憶を0にする。すなわちPPa´、PPb´、PPc´、およびPa、Pb、Pcを0とし、(5−3)式の左辺PPa、PPb、PPcを0にする。
・計測手段21で計測した三角結線変圧器120の二次側電圧を、電圧調整開始時に電圧記憶手段24で記憶し、それを一時記憶手段33で一時的に記憶する。
・電圧記憶手段24で記憶した電圧を(5−2)式のVab´、Vbc´、Vca´に代入する。
・段階2
・一時記憶手段33で記憶した電圧Vab´、Vbc´、Vca´の絶対値の中から最大値、最小値、最大値発生相および最小値発生相を抽出する。
・段階3
・予め設定された管理値範囲(下限管理値、上限管理値)と前記段階2の抽出結果とを判定し、タップ切換を行う相および電圧を増加させるか減少させるかの切換方向(電圧変化量の正負)の決定を行う。
・この判定により、管理値範囲と段階2の抽出結果の最大値、最小値との関係として以下の何れかの結果が得られる。
(1)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値以上である場合
(2)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値未満である場合
(3)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値未満である場合
(4)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値以上である場合
・前記の各結果に対して以下のようにPa、Pb、Pcを決める。
(1)の場合:最大値の相のPxを−1、それ以外の相のPxは0にする。
(2)の場合:最小値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(3)の場合:最大値の相のPxを−1、最小値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(4)の場合:全ての相のPxを0にする。
ただし、xはa、b、cを意味する。
・段階4
・前記Pxを相別に加算累積し、それをPPxとする。
すなわち、過去のPPa´、PPb´、PPc´に前記段階3で求めたPa、Pb、Pc加算する。この加算したものは(5−3)式のPPa、PPb、PPcとなる。
・このPPa、PPb、PPcを電圧変化量累積記憶手段35で記憶する。
・このPPa、PPb、PPcを演算式(5−2)式に代入し、電圧Vab、Vbc、Vcaを求める。
・一時記憶手段33は、この求めた電圧Vab、Vbc、Vcaに記憶更新する。
・段階5
・段階3の結果が(1)、(2)、(3)の場合、段階2に戻る。
・この時、過去の加算累積値PPa´、PPb´、PPc´を段階4で求めたPPa、PPb、PPcに変更する。
・段階6
・出力手段36は前記段階3の結果が(4)の場合になるまで段階2〜5を繰り返し、(4)の結果になった場合、管理値範囲で三相平衡となったことになり、その繰り返しを終了し、段階4で加算累積した、すなわち電圧変化量累積記憶手段35で記憶したPPa、PPb、PPcを出力する。
ここで、PPa・ΔVab、PPb・ΔVbc、PPc・ΔVcaのそれぞれは(5−1)式の最終的な電圧変化量ΔVabL、ΔVbcL、ΔVcaLになる。
以上により出力されたタップ切換量に基づいてタップ切換制御手段23により各相のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御し、必要なタップ切換を行う。
図14に示す電圧調整装置500によれば、三角結線変圧器120における各相のタップ位置が不明で、変圧比を認識できない場合でも、管理値範囲で三相平衡させることができる。なお、タップ切換後に再度三相不平衡となった場合でも、段階1に戻って同様に調整動作を繰り返すことにより、管理値範囲で三相平衡させることができる。
以上の動作の流れをフローチャートで図15に示す。図15は、本発明の第4実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の動作を示すフローチャートである。図15に示すように、電圧調整装置500は、電圧調整を開始すると、まず初期化するステップを実行する。ここで、PPa、PPb、PPcはa相、b相、c相のPa、Pb、Pcの加算累積値である。また、PPa´、PPb´、PPc´は、過去の加算累積値であり、開始時は全て0に設定する(S21)。つぎに、演算式に所定の電圧変化量ΔVab、ΔVbc、ΔVcaを代入するステップを実行する(S22)。演算式中のVab´、Vbc´、Vca´に一時記憶した電圧を代入するステップを実行する(S23)。そして、算出された電圧Vab、Vbc、Vcaを、一時記憶するステップを実行する(S24)。このステップS24のつぎに進むステップS3〜S7において、ステップS5がYESならステップS7まで進んで電圧調整を終了する。なお、ステップS3〜S14は、図12と同じなので、説明を省略する。
一方、ステップS5がNOで、進んだステップS8がYESならステップS9〜S10へと進み、ステップS10により、演算式にPPa、PPb、PPcを代入して電圧計算した結果として、PPa´=PPa、PPb´=PPb、PPc´=PPcを得るステップに至る(S25)。ステップS25のつぎは、ステップS25で得られた電圧を、ステップS24に戻って一時記憶する。このステップS24以降、ステップS5がYESとなることにより、ステップS7に至って電圧調整を終了するまでは、再びステップS24に戻って、同様のルーチンを繰り返し実行する。
(第5実施形態)
つぎに、図16および図17に沿って第5実施形態について説明する。図16は、本発明の第5実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の概略構成図である。図16に示す電圧調整装置600は、三角結線変圧器120の二次側を出力側とし、二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを電圧調整する場合を示している。図16において、電圧調整装置600は、三角結線変圧器120と、制御部620を備えて構成される。制御部620は、計測手段21と、タップ切換制御手段23と、電圧記憶手段24と、変圧比認識手段25と、タップ切換量演算手段130を備えて構成される。
計測手段21は三角結線変圧器120の一次側電圧VAB、VBC、VCAを計測する。電圧記憶手段24は、電圧調整開始時に計測手段21の計測した電圧を記憶する。変圧比認識手段25は、電圧記憶手段24で電圧を記憶した時の三角結線変圧器120の変圧比を相別に認識して記憶する。タップ切換量演算手段130と、このタップ切換量演算手段130の計算結果である各相タップ切換量に基づいて、タップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御するタップ切換制御手段23とで構成される。
タップ切換量演算手段130は、電圧記憶手段24からの電圧と、変圧比認識手段25で記憶した変圧比により、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを、三相ともに管理値範囲に収めるための各相のタップ切換量を求める。タップ切換制御手段23は、タップ切換量演算手段130の計算結果に基づいて、三角結線変圧器120のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。
タップ切換量演算手段130は、三角結線変圧器120の変圧比を相別に変化させた後の二次側出力電圧Vab、Vbc、Vcaを三相ともに管理値範囲に収めることができる変圧比変化量を求めた後、各相のタップ切換量を求める。このタップ切換量演算手段130は、3つの要素に基づいて変圧比変化量および各相のタップ切換量を求めるように構成されている。3つの要素の、第1は各相の変圧比変化量、第2は変圧比認識手段25で記憶した変圧比、第3は電圧記憶手段24で記憶した電圧である。
最終的な変圧比変化量TTa、TTb、TTcの算出手順および動作について、数式に基づいて説明する。そして、後述する(6−1)式に示す最終的な変圧比変化量TTa、TTb、TTcを算出するとともに、得られたタップ切換量に基づいて、タップ切換制御手段23により各相のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御し、必要なタップ切換を行う。
三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaは、前記(2−9)式で求められる。すなわち、三角結線変圧器120の一次側電圧VAB、VBC、VCAと単巻変圧器1a、1b、1cの各相の変圧比1+α、1+β、1+γを、前記(2−9)式に与えれば、三角結線変圧器120の二次側電圧を求めることができる。
前記(2−9)式において、電圧調整開始時の各相のタップが、素通しタップk以外の場合、各相のα、β、γをAa、Ab、Acとし、変圧比変化量をTTa、TTb、TTcとすると、前記(2−9)式は以下のように表すことができる。なお、α、β、γは、a相、b相、c相の単巻変圧器1a、1b、1cにおける変圧比の変化量に相当する。
タップ切換量演算手段130の演算式として、(6−1)式を使用する。(6−1)式の右辺の電圧VAB、VBC、VCAは、三角結線変圧器120の一次側電圧であり、その一次側電圧を、電圧調整開始時に電圧記憶手段24で記憶する。また、その時の各相の変圧比1+Aa、1+Ab、1+Acを、変圧比認識手段25で認識するとともに記憶する。
三角結線変圧器120において、その変圧比を変化させた後の二次側出力電圧Vab、Vbc、Vcaは、タップ切換量演算手段130により算出することが可能である。タップ切換量演算手段130は、3つの要素を演算式(6−1)に代入することにより、二次側出力電圧Vab、Vbc、Vcaを算出する。3つの要素とは、第1に各相の変圧比を変化させた変圧比変化量TTa、TTb、TTc、第2に変圧比認識手段25で記憶した変圧比1+Aa、1+Ab、1+Ac、第3に電圧記憶手段24で記憶した電圧VAB、VBC、VCAである。
なお、(6−1)式において、右辺第2項のAa、Ab、Acは、各相の変圧比から1を差し引いたものであり、容易に求めることができる。したがって、(6−1)式の右辺のTTa、TTb、TTcを微調整しながら計算し、左辺の電圧の全てが管理値範囲に収めることができる各相の変圧比変化量TTa、TTb、TTcを求めればよい。
このようにして求めた変圧比変化量TTa、TTb、TTcに基づいて、タップ切換量演算手段130が、タップ切換量として演算出力する。タップ切換制御手段23は、タップ切換量に基づいて、タップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。その結果、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを、管理値範囲で三相平衡させることができる。
なお、変圧比認識手段25は、つぎのように実現できる。例えば、単巻変圧器1a、1b、1cの相別に設けられたタップ1〜nに付されたタップ番号のうち何れのタップ番号に、現在接続されているかを検出して認識する機能、または、初期状態のタップ番号を初期値とし、初期状態以降はタップ切換制御手段23でタップ切換制御を行う都度に、各相のタップ切換量をその初期値に加算累積して認識する機能、あるいは、三角結線変圧器120の一次側と二次側において、それぞれの電圧と電流を計測して現在の変圧比を求める機能などで実現できる。
変圧比認識手段25における前記第3番目の機能について詳細に説明する。すなわち、三角結線変圧器120の一次側と二次側において、それぞれの電圧と電流を計測して現在の変圧比を求める機能に関して説明する、電圧調整開始時の変圧比の変化量をα、β、γとすると、その時のa相、b相の電圧と、a相の電流について、三角結線変圧器120の一次側と二次側の関係は下式のとおりである。なお、電圧の関係は(2−7)式、電流の関係は(2−2)式と(2−4)式から求められる。
これを(6−2)式の第2式に代入すれば以下のようになる。
これを前式(6−3)式に代入すれば、α、β、γが求められる。すなわち、三角結線変圧器120の三相のうち2相の電圧と1相の電流を計測すれば、電圧調整開始時の変圧比を求めることができる。また、変圧比認識手段25は、算出された変圧比を認識し、記憶する。そして、変圧比認識手段25は、類似する別の方法として、1相または2相を電流で計測し、残る2相または1相の電圧を計測すれば、電圧調整開始時の変圧比を求めることができ、認識し、記憶することができる。
つぎに、タップ切換量演算手段130について、より具体例に説明する。三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを求める演算式は、前記(6−1)式におけるTTa、TTb、TTcを、Δt・PPa、Δt・PPb、Δt・PPcとし、次式に対応する。
ここで、Δtは、変圧比変化量である。また、PPa、PPb、PPcは、Pa、Pb、Pcの加算累積値に相当する。PPa´、PPb´、PPc´は、過去の加算累積値である。また、Pa、Pb、Pcは、−1、0、1の3値の何れかに適宜設定される。その設定は以下のとおりである。すなわち、電圧を減少させる側の変圧比変化量とする場合は−1とする。また、変圧比変化量を与えない場合は0とする。そして、電圧を増加させる側の変圧比変化量とする場合は1とする。
以下に動作の流れを示す。
・段階1
・(6−5)式のPPa、PPb、PPcを0にする。
・(6−6)式の左辺のPPa´、PPb´、PPc´、Pa、Pb、Pcを0にする。
・計測手段21で計測した三角結線変圧器120の一次側の各相電圧を、電圧調整開始時に電圧記憶手段24で記憶する。
・その時の各相の単巻変圧器1a、1b、1cの変圧比1+Aa、1+Ab、1+Acを変圧比認識手段25で認識して記憶する。
・段階2
・電圧記憶手段24で記憶した三角結線変圧器120の一次側電圧を(6−5)式のVAB、VBC、VCAを代入する。
・また、変圧比認識手段25で認識して記憶した変圧比のAa、Ab、Acを抽出して(6−5)式のAa、Ab、Acに代入する。
・段階3
・PPa、PPb、PPcを(6−5)式に代入して電圧Vab、Vbc、Vcaを計算する。
・段階4
・段階3で計算した電圧Vab、Vbc、Vcaの絶対値を比較して最大値、最小値、最大値発生相および最小値発生相を抽出する。
・段階5
・予め設定された管理値範囲(下限管理値、上限管理値)と前記段階4の抽出結果とを判定し、タップ切換を行う相および電圧を増加させるか減少させるかの切換方向(変圧比変化量の正負)の決定を行う。
・この判定により、管理値範囲と段階4の抽出結果の最大値、最小値との関係として以下の結果が得られる。
(1)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値以上である場合
(2)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値未満である場合
(3)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値未満である場合
(4)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値以上である場合
・前記の各結果に対して以下のようにPa、Pb、Pcを決める。
(1)の場合:最大値の相のPxを−1、それ以外の相のPxは0にする。
(2)の場合:最小値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(3)の場合:最大値の相のPxを−1、最小値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(4)の場合:全ての相のPxを0にする。
ただし、xはa、b、c相を意味する。
・段階6
・前記Pxを相別に加算累積し、それをPPxに記憶する。
・すなわち、(6−6)式でPa、Pb、Pcとこれを加算する前のPPa´、PPb´、PPc´とを加算し、PPa、PPb、PPcを求める。
・段階7
・段階6の結果が(1)、(2)、(3)の場合、段階6で計算したPPa、PPb、PPcを(6−6)式のPPa´、PPb´、PPc´に代入して、段階3に戻る。
・すなわち、PPa´=PPa、PPb´=PPb、PPc´=PPcにして段階3に戻る。
・段階8
・前記段階5で(4)の結果になるまで段階3〜7を繰り返し、(4)の結果になった場合、管理値範囲で三相平衡となったことになり、その繰り返しを終了し、段階6のPPa、PPb、PPcを出力する。
この出力である加算累積したPPa、PPb、PPcはタップ切換量となる。ここで、Δt・PPa、Δt・PPb、Δt・PPcは、(6−1)式の最終的な変圧比変化量TTa、TTb、TTcを求めたことになる。以上より出力されたタップ切換量に基づいてタップ切換制御手段23により各相のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御し、必要なタップ切換を行う。
以上の動作の流れをフローチャートで示したものを図17に示す。図17は本発明の第5実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の動作を示すフローチャートである。図17に示すように、電圧調整装置600は、電圧調整を開始すると、まず初期化するステップを実行する。すなわち、PPa、PPb、PPcと、PPa´、PPb´、PPc´と、Pa、Pb、Pcを全て0にする(S31)。つぎに、変圧比1+Aa、1+Ab、1+Ac、および入力側の電圧VAB、VBC、VCAを記憶するステップを実行する(S32)。そして、演算式にAa、Ab、Ac、およびVAB、VBC、VCAを代入するステップを実行する(S33)。つぎに、演算式にPPa、PPb、PPcを代入して、出力電圧の計算するステップを実行する(S34)。このステップS34のつぎに進むステップS3〜S7において、ステップS5が、YESなら電圧調整を終了する。
なお、ステップS3〜S25は、図15とほぼ同じなので、相違点のみを説明する。その図15に対する図17の相違点は、図15において、ステップS11とステップS25の間に挿入されていたステップS10が、図17には無いという点である。また、ステップS25のつぎは、そのステップS25の結果PPa´=PPa、PPb´=PPb、PPc´=PPcを、ステップS34に戻って、出力電圧計算をする。このステップS34以降、ステップS5がYESとなることにより、ステップS7に至って電圧調整を終了するまでは、再びステップS34に戻って、同様のルーチンを繰り返し実行する。
(第6実施形態)
つぎに、図18および図19に沿って第6実施形態について説明する。図18は、本発明の第6実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の概略構成図である。図18に示す電圧調整装置610は、三角結線変圧器120の一次側を出力側とし、一次側電圧VAB、VBC、VCAを電圧調整する場合を示している。図18において、電圧調整装置610は、三角結線変圧器120と、制御部620を備えて構成される。制御部620は、計測手段21と、タップ切換制御手段23と、電圧記憶手段24と、変圧比認識手段25と、タップ切換量演算手段130を備えて構成される。
計測手段21は三角結線変圧器120の入力側である二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを計測する。電圧記憶手段24は、電圧調整開始時に計測手段21の計測した電圧を記憶する。変圧比認識手段25は、電圧記憶手段24で電圧を記憶した時の三角結線変圧器120の変圧比を相別に認識して記憶する。タップ切換量演算手段130と、このタップ切換量演算手段130の算出した各相タップ切換量に基づいて、タップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御するタップ切換制御手段23とで構成される。
タップ切換量演算手段130は、電圧記憶手段24からの電圧と、変圧比認識手段25で記憶した変圧比により三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを、三相ともに管理値範囲に収めることができる各相のタップ切換量を求める。タップ切換制御手段23は、タップ切換量演算手段130の結果に基づいて、三角結線変圧器120のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御する。
タップ切換量演算手段130は、図16に沿って説明したとおりである。すなわち、タップ切換量演算手段130は、三角結線変圧器120の変圧比を相別に変化させた後の三角結線変圧器120の二次側出力電圧Vab、Vbc、Vcaを、三相ともに管理値範囲に収まる変圧比変化量を求めた後、各相のタップ切換量を求める。このタップ切換量演算手段130は、3つの要素に基づいて変圧比変化量および各相のタップ切換量を求めるように構成されている。3つの要素の、第1は各相の変圧比変化量、第2は変圧比認識手段25で記憶した変圧比、第3は電圧記憶手段24で記憶した電圧である。
ここで、図16、18に示した電圧調整装置600、610の構成を、以下のとおり確認する。図11に記載の電圧調整装置400における、タップ切換量演算手段30を、以下のように構成したものである。電圧調整装置600、610は、三角結線変圧器120と、その三角結線変圧器120の出力電圧を管理値範囲に収めるように制御する制御部620と、を備え、制御部620は、一次側端子または二次側端子のうち入力側の入力電圧を三相ともに計測する計測手段21と、電圧調整開始時に計測手段21の計測した電圧を記憶する電圧記憶手段24と、電圧記憶手段24で電圧を記憶した時の三角結線変圧器120の各相の変圧比を認識して記憶する変圧比認識手段25と、変圧比の変化に対応する出力電圧を管理値範囲に収めるためのタップ切換量を演算式に算出して出力するタップ切換量演算手段130と、タップ切換量演算手段130から出力されるタップ切換量に基づいて、タップ切換手段Ta、Tb、Tcを相別で独立に制御するタップ切換制御手段23と、を備え、タップ切換量演算手段130は、変圧比を変化させた場合の変化後の出力電圧を、各相の変圧比を変化させた変圧比変化量と、変圧比認識手段25で記憶した変圧比と、電圧記憶手段24で記憶した電圧と、に基づいて演算式により算出した結果、管理値範囲に収めることができる各相の変圧比変化量を求め、それを各相のタップ切換量として出力することを特徴とする。
つぎに、最終的な変圧比変化量TTa、TTb、TTcの算出手順および動作について、数式に基づいて説明する。三角結線変圧器120の一次側電圧VAB、VBC、VCAは、前記(2−10)式で求められる。すなわち、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaと単巻変圧器1a、1b、1cの各相の変圧比1+α、1+β、1+γを与えれば三角結線変圧器120の一次側電圧を求めることができる。(2−10)式において、電圧調整開始時の各相のタップが、素通しタップk以外であった場合、各相のα、β、γを、Aa、Ab、Acとし、変圧比変化量をTTa、TTb、TTcとすれば、(2−10)式は、以下のように表すことができる。
タップ切換量演算手段130の演算式として、(6−7)式および(6−8)式を用いる。(6−7)式において、右辺の電圧Vab、Vbc、Vcaは、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaであり、電圧調整開始時に電圧記憶手段24で記憶する。また、その時の各相の変圧比は、1+Aa、1+Ab、1+Acを、変圧比認識手段25が認識するとともに記憶する。
タップ切換量演算手段130では、三角結線変圧器120の変圧比を変化させた後、その出力側である一次側電圧VAB、VBC、VCAは、演算式(6−7)式および(6−8)式に、3つの要素を代入して算出する。3つの要素は、第1に、各相の変圧比を変化させた変圧比変化量TTa、TTb、TTc、第2に、変圧比認識手段25で記憶した変圧比1+Aa、1+Ab、1+Ac、第3に、電圧記憶手段24で記憶した電圧Vab、Vbc、Vcaである。
なお、(6−8)式のAa、Ab、Acは変圧比から1を差し引いて抽出したものである。したがって、(6−8)式において、右辺のTTa、TTb、TTcを、加減して微調整しながら計算する。これ算出されたTTa、TTb、TTcを、(6−7)式に代入して計算する。この(6−7)式において、左辺の電圧が全て管理値範囲に収まるように、相別の変圧比変化量TTa、TTb、TTcを算出する。
このようにして求めた変圧比変化量TTa、TTb、TTcを、タップ切換量演算手段130からタップ切換量として出力する。タップ切換制御手段23は、タップ切換量に基づいて各相のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御することにより、三角結線変圧器120の一次側電圧VAB、VBC、VCAを、管理値範囲で三相平衡させることができる。
つぎに、タップ切換量演算手段130の具体例を示す。三角結線変圧器120の一次側電圧VAB、VBC、VCAを求める演算式は、前記(6−8)式におけるTTa、TTb、TTcをΔt・PPa、Δt・PPb、Δt・PPcとし、次式のものを用いる。
また、PPa、PPb、PPcは次式とする。
ここで、Δtは変圧比変化量、PPa、PPb、PPcはPa、Pb、Pcの加算累積値に相当する。PPa´、PPb´、PPc´は過去の加算累積値である。また、Pa、Pb、Pcは、−1、0、1の3値の何れかに設定する。3値の定義は、第1に電圧を減少させる側の変圧比変化量とする場合は1、第2に変圧比変化量を与えない場合は0、第3に電圧を増加させる側の変圧比変化量とする場合は−1とする。
なお、三角結線変圧器120の一次側電圧VAB、VBC、VCAは、α、β、γがマイナスの場合に電圧が増加し、プラスの場合に電圧が減少するため、符号を変えている。
以下に動作の流れを示す。
・段階1
・(6−9)式のPPa、PPb、PPcを0にする。
・(6−10)式の左辺のPPa´、PPb´、PPc´、Pa、Pb、Pcを0にする。
・計測手段21で計測した三角結線変圧器120の二次側の各相電圧Vab、Vbc、Vcaを、電圧調整開始時に電圧記憶手段24で記憶する。
・その時の各相の単巻変圧器1a、1b、1cの変圧比の1+Aa、1+Ab、1+Acを変圧比認識手段25で認識して記憶する。
・段階2
・電圧記憶手段24で記憶した三角結線変圧器120の二次側電圧Vab、Vbc、Vcaを、(6−7)式のVab、Vbc、Vcaに代入する。
・また、変圧比認識手段25で認識して記憶した変圧比Aa、Ab、Acを抽出し、(6−9)式のAa、Ab、Acに代入する。
・段階3
・PPa,PPb,PPcを(6−9)式に代入して計算し、その結果を(6−7)式に代入して電圧VAB,VBC,VCAを計算する。
・段階4
・段階3で計算した電圧VAB,VBC,VCAの絶対値の中から最大値、最小値、最大値発生相および最小値発生相を抽出する。
・段階5
・予め設定された管理値範囲(下限管理値、上限管理値)と前記段階4の抽出結果とを判定し、タップ切換を行う相および電圧を増加させるか減少させるかの切換方向(変圧比変化量の正負)の決定を行う。
・この判定により、管理値範囲と段階4の抽出結果の最大値、最小値との関係として以下の結果が得られる。
(1)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値以上である場合
(2)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値未満である場合
(3)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値未満である場合
(4)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値以上である場合
・前記の各結果に対して以下のようにPa,Pb,Pcを決める。
(1)の場合:最大値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(2)の場合:最小値の相のPxを−1、それ以外の相のPxは0にする。
(3)の場合:最大値の相のPxを1、最小値の相のPxを−1、それ以外の相のPxは0にする。
(4)の場合:全ての相のPxを0にする。
ただし、xはa,b,cを意味する。
・段階6
・前記Pxを相別に加算累積し、それをPPxに記憶する。
・すなわち、(6−10)式でPa,Pb,Pcとこれを加算する前のPPa´,PPb´,PPc´とを加算し、PPa,PPb,PPcを求める。
・段階7
・段階5の結果で(1)、(2)、(3)の場合、段階6で計算したPPa,PPb,PPcを(6−10)式のPPa´,PPb´,PPc´に代入して、段階3に戻る。
・すなわち、PPa´=PPa,PPb´=PPb,PPc´=PPcにして段階3に戻る。
・段階8
・前記段階5で(4)の結果になるまで段階3〜7までを繰り返し、(4)の結果になった場合、管理値範囲で三相平衡となったことになり、その繰り返しを終了し、段階6のPPa,PPb,PPcを出力する。この出力である加算累積したPPa,PPb,PPcはタップ切換量となる。ここで、Δt・PPa,Δt・PPb,Δt・PPcは、(6−8)式の最終的な変圧比変化量TTa,TTb,TTcを求めたことになる。
以上の動作の流れを、図19に示すフローチャートを用いて説明する。図19は本発明の第6実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の動作を示すフローチャートであり、図17に沿って説明した内容に似ているので、相違点のみを説明する。その相違点として、図17において、ステップS32では、変圧比1+Aa,1+Ab,1+Ac、および入力側の電圧VAB,VBC,VCAを記憶し、そのつぎのステップS33で、演算式にAa,Ab,Ac、およびVAB,VBC,VCAを代入していた。それにともなう演算式は(6−5)を用いていた。
これに対して、図19において、ステップS320では、変圧比1+Aa,1+Ab,1+Ac、および入力側の電圧Vab,Vbc,Vcaを記憶し、そのつぎのステップS330で、演算式にAa,Ab,Ac、およびVab,Vbc,Vcaを代入する。それにともなう演算式は(6−7)、(6−9)を用いている。
以上の動作に関するシミュレーション結果を、図20に示す。図20は、本発明の第6実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置610によるシミュレーション結果を示すベクトル図である。図20において、×印でプロットされた3点は、電圧調整前の二次側電圧Vab´,Vbc´,Vca´である。この×印でプロットされた3点に示すように、電圧調整前の二次側電圧をVab´(大きさ:150%、位相:0度)、Vbc´(大きさ:120%、位相:−90度)、Vca´(大きさ:192%、位相:141度)、各相の変圧比のAa,Ab,Acを全て20%としている。
そして、著しく三相不平衡状態の一次側電圧VAB´、VBC´、VCA´を、上限管理値を102%、下限管理値を98%に収めることが条件である。また、変圧比変化量Δtは1%としている。図20に示すベクトル図は、極端な不平衡電圧の例であるが、電圧調整装置610による電圧調整後は、このように三相平衡することで、電圧VAB´´、VBC´´、VCA´´となり、その絶対値は、ほぼ100%の電圧となる。
また、図20には、管理値範囲の平衡電圧に調整されるまでの軌跡を示している。この軌跡は、図4,8に示した第1,2実施形態に係る電圧調整装置300,310において、逐次電圧調整する場合の調整過程と同様に、管理値範囲の三相平衡電圧に調整されることを示している。
図20に示すシミュレーション結果では、タップ切換量はa,b,c相のそれぞれが−35、36、−35タップ分であり、前記段階8で示す(4)の結果になるまでの繰り返し回数は71回であった。このことから、図4,8に示した第1,2実施形態に係る電圧調整装置300,400において、逐次電圧調整する場合には、71回分相当の時間が必要であったところを、図18に示した第6実施形態に係る電圧調整装置610であれば、36回分相当の時間で電圧調整できる。したがって、より迅速に管理値範囲の三相平衡電圧にすることが可能であるという効果が確認できた。
上述したシミュレーション結果に基づいた効果から、実機検証すれば、以下の効果も期待できる。すなわち、タップ切換を行う前に必要なタップ切換量を事前に算出してタップ切換制御を行うことにより、最小回数のタップ切換で足りるため、タップが橋絡された時に流れる循環電流、接点摩耗や油の汚損を最小限に抑制するとともに、迅速に電圧調整が可能となる。すなわち、余分なタップ切換動作を省略できるので、機器等の損耗を軽減して迅速に電圧調整することが可能となる。
(第7実施形態)
つぎに、図21に沿って第7実施形態について説明する。図21は、本発明の第7実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の概略構成図である。図21に示す電圧調整装置700は、三角結線変圧器120の二次側を出力側とし、二次側電圧Vab,Vbc,Vcaを電圧調整する場合を示している。図21において、電圧調整装置700は、三角結線変圧器120と、制御部720を備えて構成される。制御部720は、計測手段21と、タップ切換制御手段23と、電圧記憶手段24と、変圧比認識手段25と、タップ切換量演算手段130を備えて構成される。
計測手段21は、三角結線変圧器120の入力側である一次側電圧VAB,VBC,VCAを計測する。電圧記憶手段24は、電圧調整開始時に計測手段21の計測した電圧を記憶する。変圧比認識手段25は、電圧記憶手段24で電圧を記憶した時の三角結線変圧器120の変圧比を相別に認識して記憶する。
タップ切換量演算手段130は、演算式設定手段31、電圧一時記憶手段32、演算手段34、変圧比変化量累積手段37、出力手段36で構成される。演算式設定手段31は、3つの要素に基づいて、三角結線変圧器120の二次側出力電圧Vab,Vbc,Vcaを求める演算式を設定する。3つの要素とは、第1に、変圧比認識手段25で記憶した各相の変圧比、第2に、変圧比変化量累積手段37で加算累積して記憶した各相の変圧比変化量、第3に、電圧記憶手段24で記憶した電圧である。
タップ切換量演算手段130は、電圧記憶手段24からの電圧と、変圧比認識手段25で記憶した変圧比に基づいて、三角結線変圧器120の二次側電圧Vab,Vbc,Vcaを、三相ともに管理値範囲に収めることができる各相のタップ切換量を算出する。タップ切換制御手段23は、タップ切換量演算手段130の結果に基づいて三角結線変圧器120のタップ切換手段Ta,Tb,Tcを制御する。
また、電圧一時記憶手段32は、演算手段34で算出した二次側出力電圧Vab,Vbc,Vcaを、計算する都度に更新して一時的に記憶するものである。変圧比変化量累積手段37は、演算手段34が算出した変圧比変化量、すなわち変圧比を変化させる量を、相別に加算累積して記憶するものである。
演算手段34は、電圧一時記憶32で記憶した電圧の絶対値から最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出して不平衡電圧の実態を把握する。演算手段34は、不平衡電圧を是正するためのタップ切換量を以下の手順で算出する。演算手段34は、抽出した最大値が上限管理値を超えている場合、当該相の電圧を減少させる側の変圧比変化量にして変圧変化量累積手段37に加算累積して記憶させる。また、抽出した最小値が下限管理値未満の場合、当該相の電圧を増加させる側の変圧比変化量にして変圧変化量累積手段37に加算累積して記憶させる。これらは、演算手段34が二次側電圧を計算する都度、変圧比変化量を相別に変圧変化量累積手段37に加算累積して記憶させる。
そして、演算手段34は、3つの要素を演算式設定手段31で設定した演算式に代入することにより、変圧比変化後の二次側出力電圧を算出する。3つの要素とは、第1に変圧比認識手段35の各相の変圧比、第2に変圧比変化量累積手段37で記憶した各相の変圧比変化量、第3に電圧記憶手段24で記憶した電圧のことである。
それから、演算手段34は、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧を、前記演算式で求めた電圧に記憶更新する。演算手段34は、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧の全てが管理値範囲に収まるまで、前記演算式の計算および電圧一時記憶手段32の記憶更新を繰り返す。出力手段36は、電圧の全てが管理値範囲に収まった時、変圧比変化量累積手段37に基づいて、各相のタップ切換量を出力する。
最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLの算出手順および動作について、数式に基づいて説明する。最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLが算出されると、最終的なタップ切換量が算出される。三角結線変圧器120を、最終的なタップ切換量により、適切に電圧調整されることにより、管理値範囲で平衡電圧となる。
三角結線変圧器120の各相タップを独立して切換制御した時の二次側電圧は、次式(7−1)で表される。(7−1)の左辺は、電圧調整して管理値範囲で平衡電圧となった電圧VabL、VbcL、VcaLである。それに対する(7−1)の右辺により、最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLを算出する。最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLは、現在の各相の変圧比1+Aa,1+Ab,1+Acから算出する。
最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLを算出する手順は、前記(6−1)式の変圧比変化量TTa,TTb,TTcを変えて、(6−1)式の左辺の電圧の絶対値が、管理値範囲に収まるまで繰り返し計算する。そのために、演算式設定手段31は、(6−1)式の演算式を設定する。(6−1)式は、電圧調整開始時の電圧と変圧比を用いて、各相の変圧比変化量TTa,TTb,TTcを加算させた後の電圧を求める式である。
(6−1)式の初期値である電圧調整開始時の電圧VAB,VBC,VCAは電圧記憶手段24で記憶する。また、この時の各相の変圧比1+Aa,1+Ab,1+Acを変圧比認識手段25で認識し記憶する。演算手段34は以下のように動作する。なお、以下、変圧比変化量とは、例えば1タップ分の変圧比変化量である。
演算手段34が、最終的に必要なタップ切換量を算出すれば、実際のタップ切換回数を減らして、迅速に三相平衡できることを、以下の2段階に分けて説明する。
(第1段階)
まず、変圧比変化量累積手段37で変圧比変化量を加算累積した記憶を0に設定する。すなわち、変圧比変化量TTa,TTb,TTcを0に設定する。電圧調整開始時に電圧記憶手段24で記憶した電圧VAB,VBC,VCAと、変圧比認識手段25で記憶した各相の変圧比1+Aa,1+Ab,1+Acを、演算手段34で設定した演算式(6−1)式に代入して出力側電圧を計算する。その出力側電圧を電圧一時記憶手段32で記憶する。この演算式(6−1)式の計算により記憶された電圧は、電圧調整開始時の相別の変圧比における二次側出力電圧である。ここで、(6−1)式の右辺の第2項のAa,Ab,Acは、変圧比から1を差し引けば求められる。以下も同様である。
(第2段階)
つぎに、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧の絶対値の中から最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出する。抽出した最大値が上限管理値を超えている場合、当該相の電圧を減少させるような変圧比変化量を、変圧比変化量累積手段37に加算して記憶する。また、最小値が下限管理値未満の場合、当該相の電圧を増加させるような変圧比変化量を、変圧比変化量累積手段37に加算して記憶する。
演算式(6−1)式に、3つの要素を代入して変圧比変化後の電圧を算出する。3つの要素は、第1に変圧比認識手段25で記憶した各相の変圧比、第2に変圧比変化量累積手段37で記憶した各相の変圧比変化量、第3に電圧記憶手段24で記憶した電圧である。算出された変圧比変化後の電圧に、電圧一時記憶手段32の電圧記憶を更新する。
この算出結果は変圧比変化量を1回与えた後の電圧であり、変圧比変化量累積手段37には、1回分の変圧比変化量を相別に記憶する。さらに、電圧一時記憶手段32で記憶した1回目の変圧比変化量を与えた後の電圧の絶対値の中から、第2段階と同様に、最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出する。
抽出した最大値が上限管理値を超えている場合、当該相の電圧を減少させるような変圧比変化量を、変圧比変化量累積手段37で記憶した変圧比に加算して記憶する。最小値が下限管理値未満の場合、当該相の電圧を増加させるような変圧比変化量を、変圧比変化量累積手段37で記憶した当該相の変圧比に加算して記憶する。
演算式(6−1)式に、3つの要素を代入して変圧比変化後の電圧を算出する。3つの要素は、第1に変圧比認識手段25で記憶した各相の変圧比、第2に変圧比変化量累積手段37で記憶した各相の変圧比変化量、第3に電圧記憶手段24で記憶した電圧である。算出された変圧比変化後の電圧に、電圧一時記憶手段32の電圧記憶を更新する。この算出結果は変圧比変化量を2回与えた後の電圧であり、変圧比変化量累積手段37には、2回分の変圧比変化量を相別に加算累積して記憶する。
演算手段34は、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧の全てが管理値範囲に収まるまで、前記演算式の計算、変圧比変化量累積手段37の加算累積、および電圧一時記憶手段32の記憶更新を繰り返す。出力手段36は、電圧の全てが限管理値範囲に収まった時、変圧比変化量累積手段37に基づいて、各相のタップ切換量を出力する。
このようにして、最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLが算出される。すなわち、電圧一時記憶手段32で記憶された電圧の全てが管理値範囲に収まった時、変圧比変化量累積手段37で加算累積して記憶されている変圧比変化量は、前式(7−1)式に示される最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLとなる。
出力手段36は、最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLに相当する各相のタップ切換量を、タップ切換制御手段23に出力する。タップ切換制御手段23は、入力されたタップ切換量に基づいて各相のタップ切換手段Ta,Tb,Tcを制御する。その結果、三角結線変圧器120の二次側電圧を三相平衡状態に是正し、かつ管理値範囲に収めることができる。以上のように、管理値範囲に三相平衡させるための計算が終了するまでの間は、実際にタップ切換動作をすることなく、最終的に必要なタップ切換量を算出することができる。したがって、試行錯誤による不要なタップ切換を防止することができる利点がある。
また、前記第1段階を設けず、電圧調整開始時の出力電圧を求めない場合、電圧一時記憶手段32の内容は0である。このため、つぎの第2段階で、全ての相が下限管理値未満となり、電圧を増加させる側の変圧比変化量として演算式で計算され、それが電圧一時記憶手段32で記憶される。この記憶された電圧は、変圧比変化量が小さければ、ほぼ第1段階で求めた電圧と同じになる。以下、この電圧一時記憶手段32で記憶した電圧を用いて第2段階と同様の動作となる。したがって、第1段階を設けなくても実現は可能である。
最終的な変圧比変化量TTa,TTb,TTcの算出手順および動作について、数式に基づいて説明する。三角結線変圧器120の二次側出力電圧は、前記(6−5)式および(6−6)式を用い、TTa,TTb,TTcをΔt・PPa,Δt・PPb,Δt・PPcとして算出することもできる。ここで、Δtは変圧比変化量であり、例えば、1タップ分の電圧変化量を意味する。PPa,PPb,PPcはPa,Pb,Pcの加算累積値に相当する。
また、Pa,Pb,Pcは、−1,0,1の3値の何れかに設定される。すなわち、3とおりの場合に分けて、電圧を減少させる側の変圧比変化量とする場合は−1、変圧比変化量を与えない場合は0、電圧を増加させる側の場合は1とする。
以下に動作の流れを示す。
・段階1
・変圧比変化量累積手段37の記憶を0とする。すなわちPPa´,PPb´,PPc´、およびPa,Pb,Pcを0にし、(6−6)式の左辺PPa,PPb,PPcを0にする。
・計測手段21で計測した三角結線変圧器120の入力側(一次側)の各相電圧を、電圧調整開始時に電圧記憶手段24で記憶する。
・その時の各相の単巻変圧器の変圧比1+Aa,1+Ab,1+Acを、変圧比認識手段25で認識して記憶する。
・段階2
・電圧記憶手段24で記憶した三角結線変圧器120の一次側電圧を(6−5)式のVAB,VBC,VCAを代入する。
・また、変圧比認識手段25で認識して記憶した変圧比のAa,Ab,Acを抽出して(6−5)式のAa,Ab,Acに代入する。
・段階3
・PPa,PPb,PPcを(6−5)式に代入して電圧Vab,Vbc,Vcaを計算し、電圧一時記憶手段32でその結果に記憶更新する。
・段階4
前記段階3により電圧一時記憶手段32で記憶した電圧Vab,Vbc,Vcaの絶対値の中から、最大値、最小値、最大値発生相および最小値発生相を抽出する。
・段階5
・前記段階4の抽出結果が予め設定された管理値範囲に含まれるか否かを判定し、その判定結果に基づいて、タップ切換を行う相と、当該相の電圧増減方向を決定する。なお、電圧増減方向は、変圧比変化量の正負を意味する。
・前記段階5の判定により、管理値範囲と段階4の抽出結果の最大値、最小値との関係として以下の結果が得られる。
(1)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値以上である場合
(2)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値未満である場合
(3)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値未満である場合
(4)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値以上である場合
・前記の各結果に対して以下のようにPa,Pb,Pcを決める。
(1)の場合:最大値の相のPxを−1、それ以外の相のPxは0にする。
(2)の場合:最小値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(3)の場合:最大値の相のPxを−1、最小値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(4)の場合:全ての相のPxを0にする。
ただし、xはa,b,cを意味する。
・段階6
・前記Pxを変圧比変化量累積手段37で相別に加算累積し、それをPPxに記憶する。
・すなわち、変圧比変化量累積手段37で記憶したPPa´,PPb´,PPc´に前記段階5で求めたPa,Pb,Pcを加算して記憶する。この加算したものは(6−6)式のPPa,PPb,PPcとなる。
・段階7
・段階5の結果が(1)、(2)、(3)の場合、段階6で計算したPPa,PPb,PPcを(6−6)式のPPa´,PPb´,PPc´に代入して、段階3に戻る。すなわち、PPa´=PPa,PPb´=PPb,PPc´=PPcにして段階3に戻る。
・段階8
・出力手段36は、前記段階5の結果が(4)の場合になるまで段階3〜7を繰り返し、(4)の結果になった場合、管理値範囲で三相平衡となったことになり、その繰り返しを終了し、段階6のPPa,PPb,PPc、すなわち変圧比変化量累積手段37で加算累積したPPa,PPb,PPcを出力する。
この出力である加算累積したPPa,PPb,PPcはタップ切換量となる。以上により出力されたタップ切換量に基づいてタップ切換制御手段23により各相のタップ切換手段Ta,Tb,Tcを制御し、必要なタップ切換を行う。
(第8実施形態)
つぎに、図22に沿って第8実施形態について説明する。図22は、本発明の第8実施形態に係る三角結線変圧器を用いた電圧調整装置の概略構成図である。図22に示す電圧調整装置710は、三角結線変圧器120の一次側を出力側とし、電圧VAB,VBC,VCAを電圧調整する場合を示している。
図22において、電圧調整装置710は、三角結線変圧器120と、制御部720を備えて構成される。制御部720は、計測手段21と、タップ切換制御手段23と、電圧記憶手段24と、変圧比認識手段25と、タップ切換量演算手段130を備えて構成される。
計測手段21は、三角結線変圧器120の入力側である二次側電圧を計測する。電圧記憶手段24は、電圧調整開始時に計測手段21の計測した電圧を記憶する。変圧比認識手段25は、電圧記憶手段24で電圧を記憶した時の三角結線変圧器120の変圧比を相別に認識して記憶する。
タップ切換量演算手段130は、演算式設定手段31、電圧一時記憶手段32、演算手段34、変圧比変化量累積手段37、出力手段36で構成される。演算式設定手段31は、3つの要素に基づいて、三角結線変圧器120の一次側出力電圧を求める演算式を設定するものである。3つの要素は、第1に、変圧比認識手段25で記憶した各相の変圧比、第2に、変圧比変化量累積手段37で加算累積して記憶した各相の変圧比変化量、第3に、電圧記憶手段24で記憶した電圧である。なお、タップ切換量演算手段130は、図21に沿って説明した内容とほぼ同じであるため、同一符号130で図示している。ただし、三角結線変圧器120の二次側でなく一次側出力電圧を求めるための演算式を設定する点のみ異なる。なお、一次側電圧と一次側出力電圧との表記を適宜に用いている。
タップ切換量演算手段130は、電圧記憶手段24からの電圧と、変圧比認識手段25で記憶した変圧比に基づいて、三角結線変圧器120の一次側電圧を三相ともに管理値範囲に収めることができる各相のタップ切換量を算出する。タップ切換制御手段23は、タップ切換量演算手段130の結果に基づいて三角結線変圧器120のタップ切換手段Ta,Tb,Tcを制御する。
電圧一時記憶手段32は演算手段34で算出した出力側(一次側)の電圧を計算する都度に更新して一時的に記憶するものである。変圧比変化量累積手段37は、演算手段34において各相の変圧比を変化させる変圧比変化量を相別に加算累積して記憶するものである。
演算手段34は、電圧一時記憶32で記憶した電圧の絶対値から最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出して不平衡電圧の実態を把握する。演算手段34は、不平衡電圧を是正するためのタップ切換量を、以下の手順で算出する。演算手段34は、抽出した最大値が上限管理値を超えている場合、当該相の電圧を減少させる側の変圧比変化量にして変圧変化量累積手段37に加算累積して記憶させる。また、抽出した最小値が下限管理値未満の場合、当該相の電圧を増加させる側の変圧比変化量にして変圧変化量累積手段37に加算累積して記憶させる。これらは、演算手段34が二次側電圧を計算する都度、変圧比変化量を相別に変圧比変化量累積手段37に加算累積して記憶させる。
そして、演算手段34は、3つの要素を演算式設定手段31で設定した演算式に代入することにより、変圧比変化後の一次側出力電圧を算出する。3つの要素は、第1に変圧比認識手段35の各相の変圧比、第2に変圧比変化量累積手段37で記憶した各相の変圧比変化量、第3に電圧記憶手段24で記憶した電圧のことである。
それから、演算手段34は、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧を、前記演算式で求めた電圧に記憶更新する。演算手段34は、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧の全てが管理値範囲に収まるまで、前記演算式の計算および電圧一時記憶手段32の記憶更新を繰り返す。出力手段36は、電圧の全てが管理値範囲に収まった時、変圧比変化量累積手段37に基づいて、各相のタップ切換量を出力する。
ここで、図21,22に示した電圧調整装置700,710の構成を、以下のとおり確認する。これら電圧調整装置700,710は、図16,18に記載の電圧調整装置600,610における、タップ切換量演算手段130を、以下のように構成したものである。このタップ切換量演算手段130は、出力電圧を計算する都度に更新して一時的に記憶する電圧一時記憶手段32と、変圧比認識手段25で記憶した各相の変圧比、その変圧比を変化させた時の変圧比変化量、および電圧記憶手段24で記憶した電圧と、を用いて出力電圧を求める演算式を設定する演算式設定手段31と、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧から抽出した最大値および最小値を管理値範囲に収めるような変圧比変化量を加算累積して記憶する変圧比変化量累積手段37と、変圧比認識手段25の各相の変圧比、変圧比変化量累積手段37で記憶した各相の変圧比変化量、および電圧記憶手段24で記憶した電圧と、を演算式設定手段31で設定した演算式に代入して算出した出力電圧により電圧一時記憶手段32を記憶更新する演算手段34と、変圧比変化量累積手段37で累積した変圧比変化量に相当する各相のタップ切換量を出力する出力手段36と、を備え、演算手段34は、最大値および最小値が管理値範囲に収まるまで繰り返し計算した変圧比変化量を、変圧比変化量累積手段37に加算累積して記憶させ、変圧比認識手段25が認識し記憶する各相の変圧比、変圧比変化量累積手段37で記憶した各相の変圧比変化量、および電圧記憶手段24で記憶した電圧と、を演算式に代入して算出した変圧比変化後の出力電圧により、電圧一時記憶手段32を記憶更新することを特徴とする。
つぎに、最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLの算出手順および動作について、数式に基づいて説明する。最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLが算出されると、最終的なタップ切換量が算出される。三角結線変圧器120を、最終的なタップ切換量により、適切に電圧調整されることにより、管理値範囲で平衡電圧となる。
三角結線変圧器120の各相タップを独立して切換制御した時の一次側電圧は、次式(8−1)、(8−2)で表される。(8−1)の左辺は、電圧調整して管理値範囲で平衡電圧となった電圧VABL,VBCL,VCALである。それに対する(8−1)、(8−2)の右辺により、最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLを算出する。また、現在の各相の変圧比1+Aa,1+Ab,1+Acからの最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLを算出する。
その求め方は、前記(6−8)式の変圧比変化量TTa,TTb,TTcを変えて、前記(6−7)式に代入し、左辺の電圧の絶対値が管理値範囲に収まるまで、繰り返し計算することで求められる。したがって、演算式設定手段31は、(6−7)式および(6−8)式の演算式を設定する。
(6−7)式および(6−8)式は、電圧調整開始時の電圧と変圧比を用いて各相の変圧比変化量TTa,TTb,TTcを加算させた場合の加算後の電圧を求める式である。(6−7)式の初期値である電圧調整開始時の電圧Vab,Vbc,Vcaは、電圧記憶手段24で記憶する。この時変圧比認識手段25は、各相の変圧比1+Aa,1+Ab,1+Acを認識するとともに記憶する。演算手段34は、以下のように動作する。なお、変圧比変化量は、例えば1タップ分の変圧比変化量を意味する。
演算手段34が、最終的に必要なタップ切換量を算出すれば、実際のタップ切換回数を減らして、迅速に三相平衡できることを、以下の2段階に分けて説明する。
(第1段階)
まず、変圧比変化量累積手段37で変圧比変化量を加算累積した記憶を0に設定する。すなわち、変圧比変化量TTa,TTb,TTcを0に設定する。電圧調整開始時に、変圧比認識手段25は、各相の変圧比1+Aa,1+Ab,1+Acを記憶している。この変化比から1を差し引いたAa,Ab,Acを、演算手段34に設定された演算式(6−8)式に代入してα´、β´、γ´を求める。一方、電圧調整開始時に電圧記憶手段24は、電圧VAB,VBC,VCAを記憶している。演算手段34に設定された演算式(6−7)式に、前記α´、β´、γ´と、前記電圧VAB,VBC,VCAを代入して一次側出力電圧を算出し、その一次側出力電圧を一時記憶手段32で記憶する。この電圧一時記憶手段32に記憶された一次側出力電圧は、電圧調整開始時の各相の変圧比における一次側出力電圧である。
(第2段階)
つぎに、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧の絶対値の中から最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出する。抽出した最大値が上限管理値を超えている場合、当該相の電圧を減少させるような変圧比変化量を、変圧比変化量累積手段37に加算して記憶する。また、最小値が下限管理値未満の場合、当該相の電圧を増加させるような変圧比変化量を、変圧比変化量累積手段37に加算して記憶する。
演算式(6−8)式および(6−7)式に、3つの要素を代入して変圧比変化後の電圧を算出する。3つの要素は、第1に変圧比認識手段25で記憶した各相の変圧比Aa,Ab,Ac、第2に変圧比変化量累積手段37で記憶した各相の変圧比変化量、第3に電圧記憶手段24で記憶した電圧である。算出された変圧比変化後の電圧により、電圧一時記憶手段32を記憶更新する。
この算出結果は、変圧比変化量を1回与えた後の電圧であり、変圧比変化量累積手段37には、1回分の変圧比変化量を相別に記憶する。さらに、電圧一時記憶手段32で記憶した1回目の変圧比変化量を与えた後の電圧の絶対値の中から、第2段階と同様に、最大値、最大値発生相、最小値および最小値発生相を抽出する。
抽出した最大値が上限管理値を超えている場合、当該相の電圧を減少させるような変圧比変化量を、変圧比変化量累積手段37で記憶した変圧比に加算して記憶する。最小値が下限管理値未満の場合、当該相の電圧を増加させるような変圧比変化量を、変圧比変化量累積手段37で記憶した当該相の変圧比に加算して記憶する。
(6−1)式および(6−7)式に、3つの要素を代入して変圧比変化後の電圧を算出する。3つの要素は、第1に変圧比認識手段25で記憶した各相の変圧比、第2に変圧比変化量累積手段37で記憶した各相の変圧比変化量、第3に電圧記憶手段24で記憶した電圧である。算出された変圧比変化後の電圧に、電圧一時記憶手段32の電圧記憶を更新する。この算出結果は変圧比変化量を2回与えた後の電圧であり、変圧比変化量累積手段37には、2回分の変圧比変化量を相別に加算累積して記憶する。
演算手段34は、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧の全てが管理値範囲に収まるまで、前記演算式の計算および電圧一時記憶手段32の記憶更新を繰り返す。出力手段36は、電圧の全てが管理値範囲に収まった時、変圧比変化量累積手段37に基づいて、各相のタップ切換量を出力する。
このようにして、最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLが算出される。すなわち、電圧一時記憶手段32で記憶された電圧の全てが管理値範囲に収まった時、変圧比変化量累積手段37で加算累積して記憶されている変圧比変化量は、前式(8−1)式に示される最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLとなる。
出力手段36は、最終的な変圧比変化量TTaL,TTbL,TTcLに相当する各相のタップ切換量を、タップ切換制御手段23に出力する。タップ切換制御手段23は、入力されたタップ切換量に基づいて各相のタップ切換手段Ta,Tb,Tcを制御する。その結果、三角結線変圧器120の一次側電圧を三相平衡状態に是正し、かつ管理値範囲に収めることができる。以上のように、管理値範囲で三相平衡するまで計算が終了するまでの間は、実際にタップ切換動作をすることなく、最終的に必要なタップ切換量を求めることができる。したがって、試行錯誤による不要なタップ切換を防止することができる利点がある。
なお、変圧比認識手段25は上述と同様に実現することができる。また、前記第1段階を設けず、電圧調整開始時の出力電圧を求めない場合、電圧一時記憶手段32の内容は0である。このため、つぎの第2段階で、全ての相が下限管理値未満となり、電圧を増加させる側の変圧比変化量として演算式で計算され、それが電圧一時記憶手段32で記憶される。この記憶された電圧は、変圧比変化量が小さければ、ほぼ第1段階で求めた電圧と同じになる。以下、この電圧一時記憶手段32で記憶した電圧を用いて第2段階と同様の動作となる。したがって、第1段階を設けなくても実現は可能である。
最終的な変圧比変化量TTa,TTb,TTcの算出手順および動作について、数式に基づいて説明する。三角結線変圧器120の一次側出力電圧を求める演算式として、前記(6−8)式を(6−9)式と(6−10)式で表し、それを(6−7)式に代入して変圧比変化量TTa,TTb,TTcを算出する。
ここで、Δtは変圧比変化量、PPa,PPb,PPcはPa,Pb,Pcの加算累積値に相当する。また、Pa,Pb,Pcは、−1,0,1の3値の何れかに設定する。3値の定義は、第1に電圧を減少させる側の変圧比変化量とする場合は1、第2に変圧比変化量を与えない場合は0、第3に電圧を増加させる側の変圧比変化量とする場合は−1とする。
なお、三角結線変圧器120の一次側電圧は、α、β、γがマイナスの場合に電圧が増加し、プラスの場合に電圧が減少するため、符号を変えている。
以下に動作の流れを示す。
・段階1
・変圧比変化量累積手段37の記憶を0、すなわちPPa´,PPb´,PPc´を0にする。
・この時Pa,Pb,Pcは0であるから(6−10)式の左辺PPa,PPb,PPcは0になる。
・計測手段21で計測した三角結線変圧器120の入力側(二次側)の電圧を、電圧調整開始時に電圧記憶手段24で記憶する。
・その時の各相の単巻変圧器の変圧比1+Aa,1+Ab,1+Acを変圧比認識手段25で認識して記憶する。
・段階2
・電圧記憶手段24で記憶した三角結線変圧器120の入力側(二次側)の電圧を(6−7)式のVab,Vbc,Vcaを代入する。
・また、変圧比認識手段25で認識して記憶した変圧比のAa,Ab,Acを抽出して(6−9)式のAa,Ab,Acに代入する。
・段階3
・PPa,PPb,PPcを(6−9)式に代入して計算し、その結果を(6−7)式に代入して電圧VAB,VBC,VCAを計算し、電圧一時記憶手段32でその結果に記憶更新する。
・段階4
・段階3において、電圧一時記憶手段32で記憶した電圧VAB,VBC,VCAの絶対値の中から最大値、最小値、最大値発生相および最小値発生相を抽出する。
・段階5
・予め設定された管理値範囲(下限管理値、上限管理値)と前記段階4の抽出結果とを判定し、タップ切換を行う相および電圧を増加させるか減少させるかの切換方向(変圧比変化量の正負)の決定を行う。
・この判定により、管理値範囲と段階4の抽出結果の最大値、最小値との関係として以下の結果が得られる。
(1)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値以上である場合
(2)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値未満である場合
(3)最大値が上限管理値を超え、最小値が下限管理値未満である場合
(4)最大値が上限管理値以下で、最小値が下限管理値以上である場合
・前記の各結果に対して以下のようにPa,Pb,Pcを決める。
(1)の場合:最大値の相のPxを1、それ以外の相のPxは0にする。
(2)の場合:最小値の相のPxを−1、それ以外の相のPxは0にする。
(3)の場合:最大値の相のPxを1、最小値の相のPxを−1、それ以外の相のPxは0にする。
(4)の場合:全ての相のPxを0にする。
ただし、xはa,b,cを意味する。
・段階6
・前記Pxを変圧比変化量累積手段37で相別に加算累積し、それをPPxに記憶する。すなわち、変圧比変化量累積手段37で記憶したPPa´,PPb´,PPc´に前記段階5で求めたPa,Pb,Pcを加算して記憶する。この加算したものは(6−10)式のPPa,PPb,PPcとなる。
・段階7
・段階5の結果が(1)、(2)、(3)の場合、段階6で計算したPPa、PPb、PPcを(6−10)式のPPa´、PPb´、PPc´に代入して、段階3に戻る。すなわち、PPa´=PPa、PPb´=PPb、PPc´=PPcにして段階3に戻る。
・段階8
・出力手段36は、前記段階5の結果が(4)の場合になる段階3〜7までを繰り返し、(4)の結果になった場合、管理値範囲で三相平衡となったことになり、その繰り返しを終了し、段階6のPPa、PPb、PPcを出力する。すなわち変圧比変化量累積手段37で加算累積したPPa、PPb、PPcを出力する。この出力である加算累積したPPa、PPb、PPcはタップ切換量となる。以上により出力されたタップ切換量に基づいてタップ切換制御手段23により各相のタップ切換手段Ta、Tb、Tcを制御し、必要なタップ切換を行う。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏するタップ切換型変圧器およびそれを用いた電圧調整装置を提供することができる。すなわち、三角結線した単巻変圧器を相別で独立にタップ切換することにより、不平衡電圧の是正および三相電圧の一括調整という2段階分の装置と電圧調整工程を必要とせず、1段階の電圧調整で目標とする管理値範囲に収めることができる。
また、単相の単巻変圧器を3台でY結線した三相変圧器を各相の変圧比が相違するようにした場合、非接地系統においては負荷電流が原理的には流れないが、本実施の形態によれば、三角結線したタップ切換付単巻変圧器を相別で独立にタップ切換しても、原理的に電流を流すことができる。また、三脚鉄心等でY結線三相変圧器で実現できたとしても、励磁電流の高調波成分による電圧、あるいは電流の歪みを生じる可能性があるが、本実施の形態によれば、三角結線を有するため、そのような歪みを低減することができる。
さらに、タップ切換を行う前に必要なタップ切換量を事前に算出してタップ切換制御を行うことにより、無駄な動作をすることなく最小回数のタップ切換でタップ切換制御を行うため、目標とする管理値範囲内の平衡電圧に迅速に電圧調整が可能となる。
また、第1〜4実施形態によれば、三角結線変圧器120の現在のタップ位置を、認識できずに変圧比がわからない場合であっても、管理値範囲で三相平衡させることができることを説明した。
そして、図18に示した第6実施形態および図22に示した第8実施形態において、変圧比認識手段25について説明した。すなわち、二次側に電源が供給され、一次側出力電圧を調整する場合、電圧調整開始時の変化比を、変圧比認識手段25により、認識することで、一次側出力電圧を管理値範囲で三相平衡させることが可能である。