JP5959191B2 - 無フラックスろう付け用ブレージングシート及びその製造方法 - Google Patents

無フラックスろう付け用ブレージングシート及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱交換器、電子機器冷却用の構造体等の製造に有用なアルミニウム合金ブレージングシートに関する。特に、非酸化性ガス雰囲気下でフラックスを用いずに安定的にろう付け接合することを可能とするためのアルミニウム合金ブレージングシート及びその製造方法に関する。
熱交換器、電子機器冷却用の構造体等の製造に、アルミニウム合金ブレージングシートが用いられている。アルミニウム合金ブレージングシートとは、Al−Mn系合金等からなる心材にAl−Si系合金等からなるろう材を設けたクラッド板であり、ろう材により接合部材への接合がなされる。ここで、アルミニウム合金ブレージングシートを適用する、ろう付け方法としては、窒素等の非酸化性ガス雰囲気炉中でフラックスを用いて行われるノコロック法(NB法)が現在の主流となっている。NB法における非酸化性ガス雰囲気炉は真空炉等と比べて連続式生産設備としやすいため、量産性に優れる点が広く用いられる理由となっている。
もっとも、NB法にもいくつかの問題点はある。例えば、NB法では、フラックスでアルミニウム表面の酸化皮膜を破壊することにより、ろう付けによる接合を可能とするものであるが、このフラックスはMgと反応して高融点の物質となりその効果を失う可能性がある。そのため、Mgを添加したAl合金のろう付けには適さないという問題がある。また、フラックス及びその塗布工程にコストがかかること、処理後の接合部や他の表面にフラックスの残渣が存在するといった問題もある。
そこで、非酸化性ガス雰囲気炉でフラックスを用いずにろう付け接合を可能とする無フラックスろう付け技術が従来から検討されている。特許文献1には、Al−Si−Mg系合金ろう材を中間とし、ろう材より融点の高いAl合金からなる心材と、同じくろう材より融点の高いAl合金からなる薄皮材(薄皮材)からなるブレージングシート、及び、これを用い無フラックスろう付けを可能とする技術が開示されている。
この薄皮材を備える無フラックスろう付け用ブレージングシートを適用するろう付け接合では、ろう溶融時に薄皮材の結晶粒界等からろうが滲みだし、ろう材に含まれるMgが、相手材となるアルミニウム合金の表面を改質することで、フラックスが無くてもろうの濡れ広がりを確保し健全な接合を可能とする。この従来技術では、薄皮材としてはMgが含有されない純アルミニウム系合金等が好適であり、ろう溶融前に表面のMg酸化物形成を抑え、ろう溶融時には速やかに粒界等からろうが滲出できるようになっていることが求められる。このような保護皮膜付きのブレージングシートも通常の方法、即ち心材のスラブと各層の材料を組み合わせ、熱間圧延時にクラッド接合され、冷間圧延等後工程を経て作製される。尚、この薄皮材の作用については、薄皮材が無くMg含有ろう合金が露出されている場合、ろう付けの昇温時にMgを含む酸化物が表面に多く形成されて、ろう溶融後の濡れやろう流れを阻害することが予測される。
本発明者等は、工業的規模の熱間圧延機を用い、上記の無フラックスろう付け用ブレージングシートを作製して追検討している。その結果、この構成のブレージングシートを用いることで非酸化性ガス雰囲気炉での無フラックスろう付けが可能であり、この従来技術が有効であることを確認している。しかしながら、各部材の組成や厚さ等を共通とする構成のブレージングシートであっても、場合によってはろう付け性に差異が生じることがあり、密着部の接合率が低いものや欠陥が生じる場合があった。かかるろう付け性の不均一性は、熱交換器等の最終製品の品質低下や歩留まりの悪化の要因となり、無フラックスろう付け用ブレージングシートの信頼性に影響を及ぼすこととなる。
特許第3780380号明細書
そこで、本発明は薄皮材を有する無フラックスろう付け用ブレージングシートについて、均一なろう付け性が確保され安定的な接合を可能なものを提供する。また、かかる無フラックスろう付け用ブレージングシートの製造方法も提供する。
発明者等は上記課題解決のため鋭意検討を行い、薄皮材を有する無フラックスろう付け用ブレージングシートの接合工程による不安定性の主原因として、薄皮材表面に形成される酸化皮膜にあると考えた。上記の通り、従来の無フラックスろう付け用ブレージングシートにおけるろう付け工程では、ろう溶融時に薄皮材の結晶粒界等からろうが滲みだすことがその有用性の基礎となっている。この点につき本発明者等は、ろう付け性に影響を与える要因として、薄皮材表面の酸化皮膜がろうの滲みだしを阻害し、酸化皮膜の厚さによっては相手材となるアルミニウム合金の表面を改質するだけの十分なろうが得られないと考察した。
上記考察に基づけば、酸化皮膜の厚さは、薄いほどろう付け性が向上するのは当然といえるが、単に酸化皮膜の厚さを薄くすれば良いという対応は好適ではない。工業的生産における製造条件等を考慮すれば、ブレージングシート表面の酸化皮膜を一定数値以下でコンスタントに制御することを要求するのは現実的ではないからである。その一方で、本発明者等はろう材中のMgには上記した相手材の表面改質作用に加えて、薄皮材の酸化皮膜に対しても有効な作用を有すると考えた。そして、薄皮材表面に多少厚みのある酸化皮膜が形成されていても、これに対するろう材中のMgの作用を考慮することで、酸化皮膜によるろう付け性の安定化を図ることができると考えた。
即ち、Al−Si−Mg系合金ろう材を適用する無フラックスろう付け用ブレージングシートにおいては、ろう材中のMgがろう付け加熱の開始段階から薄皮材に拡散し始め、ろう付け温度に達する頃には薄皮材表面の酸化皮膜(Al)の酸素と結合し酸化皮膜を還元し易くするものと推察される。このMgの酸化皮膜破壊作用が有効に作用すれば、ろう材溶融時のろう材の滲みだしも問題なく生じ、ろう付けが可能となると考えた。この考察によれば、ろう材から酸化皮膜へのMgの供給が十分にある場合、多少の酸化皮膜が形成されていても接合性の確保に支障はないといえる。そこで、本発明者等は薄皮材の酸化皮膜破壊のためにはろう材中のMg量と薄皮皮膜中の酸素量とのバランス(比率)に適切な範囲が存在すると推定した。そして、ろう材中のMg量と薄皮皮膜中の酸素量の比率について詳細な実験・検討を行い、本発明に想到した。
本願発明は、心材と、前記心材の少なくとも片面に配されるろう材と、前記ろう材上に配される薄皮材とからなる無フラックスろう付け用ブレージングシートであって、前記心材は前記ろう材より融点が高いアルミニウム合金からなり、前記ろう材はAl−Si−Mg系合金からなり、25〜250μmの厚さを有し、前記薄皮材は前記ろう材より溶融開始温度が高く実質的にMgを含有しないアルミニウム合金からなり、5〜30μmの厚さを有し、ろう付け加熱前の状態における、前記ろう材のMg濃度をX(mass%)、ろう材厚さをh(μm)、前記薄皮材表面の酸化皮膜厚さαを(Å)としたとき、下記関係式で求められるZの値が0.12以上であることを特徴とする無フラックスろう付け用ブレージングシートである。
Figure 0005959191
以下本発明について詳細に説明する。本願明細書において、材料組成に関する「%」は、「mass%」を意味する。上記の通り、本発明に係る無フラックスろう付け用ブレージングシートでは、安定してろう付けを行うため、ろう付け加熱前のろう材中のMg量と薄皮皮膜中の酸素量の比としてZを用い、その値を0.12以上に規定する。上記関係式において、X、h、αの意義は上記の通りであり、(X×h)はブレージングシート中のMgを、αは薄皮材表面の酸化皮膜中の酸素を表している。 そして、Zはろう材の厚さ、ろう材Mg濃度、酸化皮膜厚さで決定される。つまり、ろう材中のMg量はろう材の厚さ及びろう材Mg濃度により、酸化皮膜中の酸素量は酸化皮膜厚さにより規定される。
ろう材が厚く、Mg濃度が大きいほど酸化皮膜破壊に必要なMgが多く供給されるためろう付けに有利となるが、ろう材の厚さとろう材のMg濃度の値は、製品ごとの板厚や必要強度等の要求特性により制限を受けることから、むやみにこれらを大きくすることは好ましくない。このため、ろう付けにはZの値を制御することが重要となる。
本発明に係る無フラックスろう付け用ブレージングシートでは、安定してろう付けを行うためZが0.12以上となるように制御する。0.12以上という閾値は実験より求めた値である。上記数値を下回った場合、酸化皮膜破壊に十分なMg量が供給されずろう付け不良が生じる。この閾値について、ろう材中のMgが全て薄皮材表面の酸化皮膜の還元に使用され、ろう付け加熱中の酸化皮膜成長も無いと仮定すれば、理論上Zは0.12以下であってもろう付け可能といえる。しかし、ろう材中のMgは、その一部のみしか酸化皮膜の破壊に関与せず、また炉中に含まれる数十ppm程度の酸素によりろう付け加熱中にも酸化皮膜は成長する。そのため、安定したろう付けのためには、Zは0.12以上としなければならない。
一方、Zの上限については19とするのが好ましい。この数値は、ろう付け性が最も良好となるような条件、例えば、薄皮材表面に対して水酸化ナトリウム溶液による洗浄後、硝酸にてデスマットするといった場合のようにアルミニウムの自然酸化皮膜を最小となるような処理を行い、ろう材のMg濃度とろう材厚さを規定された範囲の中で最大とした場合を想定して求められる値である。
尚、上記のようにしてアルミニウムの自然酸化皮膜の厚さを最小にする処理を行った場合、その値は20Å程度である。そして、薄皮材表面の酸化皮膜の厚さの範囲は、20〜1000Åであることが好ましい。厚さを20Å未満に制御することは困難であり、1000Åを超えると如何にろう材中のMgの作用を考慮しても接合性に支障をきたすこととなる。尚、本発明における酸化皮膜の厚さは、20〜300Åの範囲であることがより好ましい。
ここで、本発明を構成する薄皮材、ろう材、心材の内容について詳細に説明する。まず、薄皮材について説明する。薄皮材は、材料製造時やろう付けの加熱中に表面でMg酸化物を多く含む酸化皮膜が形成されるのを防ぐ働きをする。更に、ろう溶融開始温度ではこの薄皮材の結晶粒界等から滲みだしたAl−Si−Mg溶融ろうが継ぎ手接合に寄与する。薄皮材は最終的にはろうに溶融する。
薄皮材の材質としては、Al−Si−Mg合金ろうの溶融開始温度(約580℃)に対して、より高い溶融開始温度を有する純Al系合金又はAl−Mn系合金が好適である。特に限定はしないが、JIS合金記号の1080、1070、1050、1100あるいは3003合金等が使用可能である。
また、薄皮材はMgを実質的に含有しないものであることが必要である。Mgを含有すると、Mg酸化物を多く含む酸化皮膜が形成されろう付け性を阻害する。但し、未規定の不純物元素の一般的な許容量である0.05%未満の含有は許容される。
薄皮材の厚さの適正範囲は5〜30μmである。この厚さが5μm未満では、ろう付け加熱時にろう材からのMgの拡散が容易になり、薄皮材表面にMgを含む酸化物が多く形成されるためろう流れを阻害する。逆に薄皮材の厚さが30μmを超えると、ろう付け時に薄皮材が溶け残って接合のばらつきを引き起こすおそれがある。また、薄皮材は、部位による厚さのばらつきが小さいものが好ましく、同一材の中で薄皮材の厚のばらつきは、平均厚さの30%以内に管理されたものが好ましい。
次に、ろう材について説明する。本発明のろう材はAl−Si−Mg系合金からなり、薄皮材の内側に配される。ろう材の合金組成としては、Si5〜13%、Mg0.2〜1.5%を含むものが好適である。
Siは融点を下げ、ろうとしての特性を与える必須元素であり、5%未満の含有量であると、ろう流れ性が低下する。また、Siが13%を超えると、ろう材組織中に粗大なSi粒子が形成され、ろう付け時に心材あるいは接合の相手材を部分的に侵食することがある。
Mgはろう材溶融時に薄皮材から滲みだし蒸発することで、酸化皮膜を破る効果あるいは接合部直近の酸素量を下げる効果により、無フラックスでのろう付けを可能とする必須元素である。Mgが0.2%未満ではその効果が不十分である。Mgが1.5%以上であると、クラッド材(ブレージングシート)製造のための熱間圧延の際、ろう材と薄皮材の界面にMgを含む酸化物を形成する傾向があり、この酸化物が接合を阻害する原因になることがある。但し、Mgは薄皮材の酸化皮膜破壊にも供される成分でありMg濃度を高くすることはZの値を増大させることとなることから、クラッド材の製造工程を改良することにより、ろうと薄皮材との界面に酸化物が生成し難くすることができるのであれば、Mg濃度の上限を増加させることができる。
また、ろう材はSi及びMgに加え、Bi0.01〜0.5%を添加しても良い。Biはろう流れ性を向上させる効果があり、上記範囲より少なければその効果が得られず、範囲を超える量を添加してもそれ以上のろう流れ性向上につながらない。
更に、ろう材には、Zn:0.1〜5%、In:0.01〜0.1%、Sn:0.01〜0.1%、Cu:0.05〜0.5%を添加してもよい。これらは、ろう付け後のろう材の電位を調整して防食効果を発揮するために適宜添加される元素であり、上記範囲で添加してもろう付け性は確保される。
また、アルミニウムの鋳造時の結晶微細化剤としてTi:0.001〜0.1%、B:0.0001〜0.02%を添加してもよい。その他、ろう材は不可避的不純物として0.6%までのFeの含有を許容する。
ろう材の厚さは25〜250μmが好適である。25μmより薄い場合、ろうの不足によりろう付け接合が不十分になる。また、ろう厚さが250μmを超える場合、ろう過多による心材や相手材のろう侵食が顕著になるので不適当である。尚、薄皮材はろう付け時にろうに溶け込むことから、ろう材厚さは薄皮材厚さより十分に厚いことが好ましく、具体的には5倍以上であることが好ましい。
心材は、ろう材より融点が高いアルミニウム合金からなる。例えば、JIS合金分類の3000系合金(Al−Mn系合金)、例えば3003、3005、3004等が好適である。また、6000系合金(Al−Mg−Si系合金)も適用可能である。但し、これらに限定するものではない。
以上の通り、本発明は心材にろう材と薄皮材を配するブレージングシートであり、心材の片面にこれらを配した3層構成であってもよく、心材の表裏両面にろう材と薄皮材を配した5層構成でも良い。尚、本発明ブレージングシートの板厚は0.4〜6mmが好適である。
次に、本発明に係る無フラックスろう付け用ブレージングシートの製造方法について説明する。本発明に係る製造方法は、基本的には従来の無フラックスろう付け用ブレージングシートの製造工程と同様である。ここで、従来の製造方法としては、心材のスラブと各層の材料を組み合わせて熱間圧延時にクラッド接合され、冷間圧延等の工程を経て作製される。また、最終熱処理工程として最終焼鈍がなされることが一般的である。
本発明に係るブレージングシートを製造するにあたっては、上記従来工程において、ろう材中のMg量と酸化皮膜中の酸素量の比を適正な範囲に調整することを主題事項とする。即ち、心材となるアルミニウム合金からなる板材と、ろう材となるAl−Si−Mg系合金からなる板材と、薄皮材となる実質的にMgを含有しないアルミニウム合金からなる板材と、を接合してクラッド材を得るクラッド工程と、前記クラッド工程の後、クラッド材を焼鈍する最終焼鈍工程を含みつつ、これに薄皮材表面の酸化皮膜の厚さを調整する方法を付加したものである。ここで、薄皮材表面の酸化皮膜厚さの調整法としては、以下の2つの工程が挙げられる。
薄皮材表面の酸化皮膜厚さの第1の調整法は、上記ブレージングシートの製造工程の最終工程である最終焼鈍の熱処理雰囲気を調整して薄皮材の酸化皮膜成長を抑制し、Zが0.12以上となるように制御するものである。ここで、最終焼鈍の熱処理雰囲気としては、不活性雰囲気又は真空とする。不活性雰囲気の例としては、窒素等の不活性ガス雰囲気、天然ガスやプロパン等の炭化水素ガスと空気とを混合して酸素濃度が調整されたいわゆるDXガス等が挙げられる。このDXガスの一例として、酸素3〜6%、露点−30℃以下がある。また、本発明における真空とは10Pa以下の条件をいう。
最終焼鈍の他の条件については、従来の工程が適用できる。ここで、通常の最終焼鈍温度は、300〜500℃である。また、処理時間は、1〜8時間とする。尚、この最終焼鈍の温度、時間は、後述する酸化皮膜厚さの第2の調整法においても適用される。
薄皮材表面の酸化皮膜厚さの第2の調整法は、クラッド工程後のクラッド材の薄皮材表面の酸化皮膜を機械的又は化学的に除去し、Zが0.12以上となるように、薄皮材表面の酸化皮膜厚さを制御するものである。
具体的な酸化皮膜除去方法は、機械的方法としては切削やブラシ等による研磨等が適用される。また、化学的方法としては酸やアルカリによるエッチングが適用できる。これらの内、化学的方法がより効果的である。また、切削を行う場合には、切削油の付着の影響を除くために化学的なエッチングを併用することが好ましい。
機械的に又は化学的に酸化物除去を行うのは、クラッド工程後に行うことが必要であり、最終焼鈍の前後いずれで行っても良いが、最終焼鈍の後に行うことが好ましい。
尚、酸化皮膜の厚さ調整は、第1の方法である最終焼鈍の熱処理雰囲気を調整する工程を組み合わせても良い。即ち、最終焼鈍の熱処理雰囲気を調整して薄皮材の酸化皮膜成長を抑制し、その後、酸化皮膜を機械的又は化学的に除去してZが0.12以上となるようにしても良い。
また、本発明に係る無フラックスろう付け用ブレージングシートの製造方法は、上記の酸化皮膜の厚さ調整の工程以外は従来の方法と同様である。よって、クラッド工程前後に冷間圧延、焼鈍等を組み合わせて、目的の板厚及び調質のブレージングシートを得ることができる。また、レべリング、トリミング、スリッティング、カッティング等も適宜行うことができる。
本発明に係る無フラックスろう付け用ブレージングシートを適用する接合工程では、接合する相手材と組み合わせて組み上げられた後、非酸化性ガス雰囲気にてフラックスを用いずにろう付けされる。ブレージングシート及び相手材は、必要形状にプレス等で成形しても良い。ろう付け前の各素材は、油分等を表面から除去するために洗浄を行うことが好ましい。ろう付けの雰囲気ガスとしては、窒素や不活性ガスが使用可能であり、ろう付け炉内の酸素濃度を100ppm以下とすることが好ましい。ろう付け炉は、工業的に普及しているフラックスブレージングの一種であるノコロックブレージング用の窒素雰囲気炉が適用でき、ろう付け温度は590〜610℃とするのが好ましい。
以上説明したように、本発明に係る無フラックスろう付け用ブレージングシートは、薄皮材の表面酸化皮膜を制御し、ろう材中のZを規制するものである。これにより、非酸化性ガス雰囲気での無フラックスろう付けで安定した接合が可能となる。
各実施例・比較例のブレージングシートのろう付け性評価のための継ぎ手形状を説明する図。
本発明の実施形態について、以下に記載する実施例に基づいて説明する。本実施形態では、複数の心材、ろう材、薄皮材を組み合わせて無フラックスろう付け用ブレージングシートを製造し、その接合性を評価した。
まず、心材、ろう材、薄皮材の各構成部材を、半連続鋳造法で表1の組成の合金の鋳塊を作製した。
Figure 0005959191
ブレージングシートの製造にあたって、心材鋳塊を均質化処理し、上下両面を面削した。ろう材は、鋳塊を熱間圧延して厚さを調節した。薄皮材は、鋳塊を熱間圧延及び冷間圧延して厚さを調節した。そして、心材鋳塊と厚さ調節後のろう材及び薄皮材を組み合わせて予備加熱した後、熱間圧延を行いクラッド材とした。熱間圧延の予備加熱は、露点5℃以下の乾燥空気雰囲気で470〜500℃に1〜2時間保持する条件とした。熱間圧延により板厚を5.0mmとし、その後冷間圧延により最終厚とし380℃×1時間の最終焼鈍を行った。以上の工程により表2の組み合わせのブレージングシートを作製した。尚、3層材は片面にのみろう材と薄皮材が接合されたもの、5層材は心材の両面にろう材と薄皮材が接合されたものである。5層材では両面のろう材と薄皮材の厚さを同一に設定している。
Figure 0005959191
ブレージングシートのサンプルは、最終圧延板の長さ位置で8箇所、幅位置で中央及び圧延板両端から40mm位置で採取した(合計24箇所)。実施例1〜19、比較例1〜5の評価元材は、幅500mm、長さ60〜80mの元材サイズであった。薄皮材及びろう材の厚さは圧延方向に垂直な断面を光学顕微鏡で観察することにより測定した。尚、実施例17、18、19と比較例5は同一板からサンプルを採取している。
実施例1〜16は最終焼鈍の雰囲気調整することで薄皮材表面の酸化皮膜厚さを調整している。実施例1〜13、及び実施例16は酸素濃度5%程度、露点−30℃のDXガス中で行い、実施例14は酸素濃度100ppm程度の窒素ガス中で行い、実施例15は10−3Paの真空雰囲気で行った。
また、実施例16〜19については最終焼鈍後の薄皮材表面の酸化皮膜除去を行い薄皮材表面の酸化皮膜厚さ調整している。実施例16は酸素濃度5%程度のDXガス中で最終焼鈍を行い、実施例17〜19は大気中で最終焼鈍を行い、いずれも最終焼鈍後の薄皮材表面の酸化皮膜を除去した。酸化皮膜の除去は、製造したブレージングシートからサンプルを採取し、実施例16、17は10g/l水酸化ナトリウム溶液に55℃で30sec浸漬、その後250g/l硝酸にてデスマットを施し、水洗、乾燥を行った。また、実施例18は150g/l硫酸に60℃で60sec浸漬後水洗、乾燥を行った。更に、実施例19はスチールワイヤーブラシで表面研磨し硫酸エッチングを施した。
以上の実施例1〜19、比較例1〜5の各サンプルについては、ろう付け性評価の前に酸化皮膜の厚さを測定した。表面酸化皮膜厚さはX線光電子分光分析(ESCA)にて測定した。
各ブレージングシートのろう付け性の評価は、図1のような継ぎ手接合をし、接触長さLの接合面の接合率とフィレットの形成程度で評価している。ろう付けは、酸素濃度50ppm以下の窒素ガス雰囲気で、600℃×5minの加熱で実施している。ブレージングシートと相手材は溶剤洗浄で脱脂し、乾燥した後、所定サンプル形状にくみ上げ、ステンレス治具で固定してろう付け試験に供した。各材料24個の継ぎ手試験片のろう付け後、密着部の幅中央断面の組織観察から、ボイドを除いた部分の率(%)を接合率として算出した。評価基準として、接合率として96%以上をOKとした。また、24個のサンプルのうち密着部周囲のフィレットが全周途切れずに存在しているかを調べ、切れのないサンプル数で評価した。これは、全サンプルでフィレットが健全な場合をOKとした。このろう付け性の評価結果を表2に示した。
この評価結果からZを0.12以上とした実施例1〜19は、Zが0.12未満である比較例に対して無フラックスですべて良好なろう付け性を有することがわかる。
各実施例においてZの調整は、最終焼鈍の雰囲気調整(実施例1〜16)又は最終焼鈍後の薄皮材の酸化皮膜除去(実施例16〜19)のいずれかにより行われているが、両者を対比すると酸化皮膜の厚さは相違する傾向があるものの(酸化皮膜除去を行った方が薄くなっている)、いずれの方法によっても良好な接合性が得られることがわかる。また、最終焼鈍の雰囲気については、DXガス(実施例1〜13、16)、窒素ガス(実施例14)、真空(実施例15)のいずれにおいても同等の効果がある。更に、酸化皮膜除去方法についても、化学的方法(アルカリ洗浄(実施例16、17)、酸洗浄(実施例18))でも機械的方法(ブラシ研磨(実施例19))でもいずれも有効であることがわかる。尚、最終焼鈍の雰囲気調整と薄皮材の酸化皮膜除去の双方を行うことも有用であるといえる(実施例16)。
そして、Zが0.12以上で調整された無フラックスろう付け用ブレージングシートは、ろう材の組成についても広く対応可能であるといえる。これは、ろう材中の各元素の含有量を本発明が規定する範囲内に制御し良好な結果が得られたことから確認できる。尚、ブレージングシートの構成も3層構成、5層構成のいずれについても対応可能である。
逆に、比較例1及び比較例2は、Mgの含有量が好適範囲(0.2〜1.5%)から外れていたため良好なろう付け性は得られなかった。更に、比較例1はZが0.12未満であったためろう付け接合率が際立って悪かった。
また、比較例3及び比較例4は、Siの含有量が好適範囲(5〜13%)から外れていたため良好なろう付け性は得られなかった。
また、比較例5は最終焼鈍を大気中で行った後、酸化膜除去工程を行わなかったため良好なろう付け性は得られなかった。
本発明は、無フラックスで均一なろう付け性を有する無フラックスろう付け用ブレージングシートである。本発明は、熱交換器等のろう付け構造体の製造に有用であり、これらの製造において安定的な接合を可能とし、製品品質の確保に資する。

Claims (5)

  1. 心材と、前記心材の少なくとも片面に配されるろう材と、前記ろう材上に配される薄皮材とからなる無フラックスろう付け用ブレージングシートであって、
    前記心材は前記ろう材より融点が高いアルミニウム合金からなり、
    前記ろう材は、5〜13mass%のSiと0.2〜1.5mass%のMgを含むAl−Si−Mg系合金からなり25〜250μmの厚さを有し、
    前記薄皮材は前記ろう材より溶融開始温度が高いMg濃度0.05mass%未満のアルミニウム合金からなり5〜30μmの厚さを有し、
    ろう付け加熱前の状態における、前記ろう材のMg濃度をX(mass%)、ろう材厚さをh(μm)、前記薄皮材表面の酸化皮膜厚さをα(Å)としたとき、αが20〜300Åであり、下記関係式で求められるZの値が0.12以上であることを特徴とする無フラックスろう付け用ブレージングシート。
    Figure 0005959191
  2. 薄皮材は、純Al系合金又はAl−Mn系合金である請求項1に記載の無フラックスろう付け用ブレージングシート。
  3. 心材となるアルミニウム合金からなる板材と、ろう材となるAl−Si−Mg系合金からなる板材と、薄皮材となるMg濃度0.05mass%未満のアルミニウム合金からなる板材と、を接合してクラッド材を得るクラッド工程と、
    前記クラッド工程の後、クラッド材を焼鈍する最終焼鈍工程と、を含む請求項1又は請求項2に記載の無フラックスろう付け用ブレージングシートの製造方法であって、
    前記最終焼鈍工程は、その熱処理を不活性雰囲気又は真空中で行い、請求項1に記載のZが0.12以上となるように薄皮材の表面酸化皮膜厚さを制御する無フラックスろう付け用ブレージングシートの製造方法。
  4. 心材となるアルミニウム合金からなる板材と、ろう材となるAl−Si−Mg系合金からなる板材と、薄皮材となるMg濃度0.05mass%未満のアルミニウム合金からなる板材と、を接合してクラッド材を得るクラッド工程とを含む請求項1又は請求項2に記載の無フラックスろう付け用ブレージングシートの製造方法であって、
    前記クラッド工程後のクラッド材の薄皮材表面の酸化皮膜を機械的又は化学的に除去し、請求項1に記載のZが0.12以上となるように、薄皮材の表面酸化皮膜厚さを制御する無フラックスろう付け用ブレージングシートの製造方法。
  5. クラッド工程の後、クラッド材を焼鈍する最終焼鈍工程を含み、
    前記最終焼鈍工程は、その熱処理雰囲気を不活性雰囲気又は真空中で行うものである請求項4記載の無フラックスろう付け用ブレージングシートの製造方法。
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