JP3916577B2 - 双ベルト鋳造用フィン用アルミニウム合金およびフィン材 - Google Patents

双ベルト鋳造用フィン用アルミニウム合金およびフィン材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、双ベルト鋳造用フィン用アルミニウム合金およびフィン材に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両にはフィンと通液管がろう付接合された各種のアルミニウム製熱交換器が装着されており、軽量化のために熱交換器を構成する各部材は年々薄肉化する傾向にある。そのため、薄肉でも十分な強度を維持できるように、ろう付後において高強度である部材が求められている。
【0003】
また、フィン材は強度ばかりでなく耐エロージョン性も必要である。すなわち、標準的なろう付け温度は590〜600℃であるが、実際のろう付温度が下方に外れるとろう付不良となるので、これを避けるために高めに設定する傾向がある。しかし、ろう付け温度が高めに外れると、Al−Si系ろう材によって侵食されやすくなる。従って、ろう付け温度が高めに外れても、ろう材に侵食され難い良好な耐エロージョン性が望まれる。
【0004】
従来、このような特性を持つフィン材は合金組成と製造方法の両面から検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1(WO 01/53553 A1公報)の請求項1には、Fe:1.2〜2.4wt%、Si:0.5〜1.1wt%、Mn:0.3〜0.6wt%およびZn:0〜1.0wt%を含有するAl合金を溶湯冷却速度を少なくとも300℃/sec 以上で凝固させ、その後、圧延と熱処理を施して製造されるフィン材が開示されている。
【0006】
また、特許文献2(特開2002−256402号公報)には、Mn:0.3〜2.0wt%、Si:0.5を超え1.5wt%以下、Fe:0.7〜2.0wt%を含有するAl合金溶湯を鋳造時の冷却速度を15〜1000℃/sec で鋳造し、熱延、冷延して製造されるフィン材が開示されている。
【0007】
【特許文献1】
WO 01/53553 A1 請求項1〜12、第6頁上1〜9行。
【0008】
【特許文献2】
特開2002−256402 請求項1、第6頁段落(0041)、
第7頁第4〜5行。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
連続鋳造(CC)はDC鋳造と異なって鋳造スラブ厚さも薄く、DC鋳造の場合に必須の均熱処理やその後の厚さ10mm程度までの熱延が省略できる等の生産上の利点があって、各種材料の製造に利用されている。
【0010】
例えばCC鋳造法には、相対峙する回転ロール間に溶湯を注湯し、強制冷却されているロール面で溶湯を急冷し、反注湯側より厚さの薄いスラブを連続的に取り出す双ロール鋳造法や、相対峙する回転ベルト間に溶湯を注湯し、強制冷却されているベルト面で溶湯を急冷し、反注湯側より厚さの薄いスラブを連続的に取り出す双ベルト鋳造法等が知られている。
【0011】
前記特許文献1(WO 01/53553 A1公報)記載の技術は、明細書の記載(第6頁上1〜9行)によれば、その鋳造方法は前記の双ロール鋳造法である。本発明者らの知見によれば、同公報請求項記載の上記合金組成範囲では、各元素含有量の上限値近傍域ではFe,Si,Mnの含有量が多く固液共存範囲が広いために、双ロール鋳造法で鋳造するには高度なテクニックが必要である。これに対して、同公報第10頁記載の実施例における組成は、Fe1.52wt%、Mn0.36wt%、Si0.83wt%、Zn0.48wt%であって、上記合金組成範囲のうちでも元素含有量の少ない固液共存範囲の狭い範囲で試験をしている。またこのような実施例の組成では、ろう付後に高強度材(140MPa 以上)とならない。
【0012】
前記特許文献2(特開2002−256402号公報)記載の技術もまた、明細書の記載(第6頁段落0041)によれば前記の双ロール鋳造法を挙げている。しかし、同公報第6頁記載の実施例では、双ロール鋳造法に替えて、第7頁第4〜5行に示されているように、幅:200mm×長さ:500mm×厚さ:7mmの鋳型に鋳造している。また実施例記載の組成では、ろう付後に高導電率材(50%IACS以上)とならない。ここで、導電率は、フィン材の重要な性質である熱伝導率の指標である。
【0013】
本発明の目的は、固液共存範囲が広くても容易に鋳造でき、ろう付後の強度と導電率が高く、しかも耐エロージョン性が高くろう付性に優れたフィン材の得られる双ベルト鋳造用フィン用アルミニウム合金と前記特性を有するフィン材を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、双ベルト鋳造法は固液共存範囲が広くても容易に鋳造でき、しかも得られたフィン材は上記の諸特性を備えたものであるとの知見を得て、本発明を完成したものである。
【0015】
即ち本発明は、Si:0.7〜1.3wt%、Fe:2.0を超え2.8wt%以下、Mn:0.6を超え1.2wt%以下、およびZn:0.02wt%を超え1.5wt%以下を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなることを特徴とする双ベルト鋳造用フィン用アルミニウム合金を提供する。元素含有量が多くても双ベルト鋳造法で容易に鋳造ができ、ろう付後の強度と導電率が高く、自然電位も低くしかもろう付性に優れたフィン材とすることができる。
【0016】
更に結晶粒微細化剤を0.2wt%以下含有することにより、鋳造時の鋳造割れを防止できる。
【0017】
また、本発明は、前記各組成からなり、最大径で0.1〜1.0μm以下の金属間化合物が11万個/mm2 以上存在し、ろう付後の結晶粒径が150μm以上であることを特徴とするアルミニウム合金フィン材をも提供する。このような化合物および結晶粒とすることで、フィン材は上記諸特性を備えることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明において採用する鋳造方法について説明する。
【0019】
双ベルト鋳造法は、上下に対峙し水冷されている回転ベルト間に溶湯を注湯してベルト面からの冷却で溶湯を凝固させてスラブとし、ベルトの反注湯側より該スラブを連続して引き出してコイル状に巻き取る連続鋳造方法である。溶湯の凝固時の溶湯冷却速度は40〜80℃/sec (板厚の1/4位置)であることが好ましく、ベルト接触領域内でスラブ厚さ全体にわたって凝固が完了することが望ましい。得られるスラブの厚さは5〜8mmであることが好ましく、この厚さであると板厚中央部の凝固速度も速く、均一組織でしかも本発明範囲の組成であると微細な化合物の多いおよびろう付後において結晶粒径の大きい優れた諸性質を有するフィン材とすることができる。
【0020】
DC鋳造法は凝固時の溶湯冷却速度が遅く晶出物が粗大化して薄板圧延を妨げ、化合物数も8万個/mm2 以下と少くなり、十分な粒子分散強化作用が得られないため、ろう付後の強度が低下する。
【0021】
次にアルミニウム合金組成について説明する。
【0022】
〔Si:0.7〜1.3wt%〕
〔Fe:2.0wt%を超え2.8wt%以下〕
〔Mn:0.6wt%を超え1.2wt%以下〕
Si,FeおよびMnは、固溶強化と共に、Al−Fe,Al−(Fe,Mn)−Si,Al−Mn系等の化合物粒子を晶出することにより分散強化の作用がある。また前記の条件で双ベルト鋳造し、冷間圧延して0.1mm以下、好ましくは0.04〜0.08mmに圧延することによって晶出物が分断し、最大径で0.1〜1.0μmの金属間化合物を11万個/mm2 以上存在させることができ、またろう付後の再結晶粒径を150μm以上とすることができる。
【0023】
Si含有量が下限値以下および/またはMn含有量が下限値以下であると、固溶強化による強度の向上作用が得られない。Fe含有量が下限値以下であると前記の化合物条件が得られないため、晶出する化合物粒子数が減少し、ろう付後の分散粒子による強度の向上作用が得られない。Fe含有量の好ましい下限値は2.07wt%である。
【0024】
一方、Si含有量が上限値を超えると、ろう材に対する耐エロージョン性が劣化し、導電率も低下する。Fe含有量が上限値を超えると晶出物が粗大化して薄板圧延を妨げ、Mn含有量が上限値を超えると導電率が低下する。
【0025】
〔Zn:0.02wt%を超え1.5wt%以下〕
Znは、フィン材の自然電位を卑に移行させ、アルミニウム製通液管と組み合わせた際に犠牲電極として作用することにより、通液管の耐食性を確保できる。
【0026】
この犠牲電極作用を得るには、Zn含有量が0.02wt%を超える必要がある。通常、フィン材にはZnを不可避的不純物として0.02wt%以下含有しているので、犠牲電極作用による耐食性向上効果を顕在化させるには0.02wt%を超えて含有させる。一方、Zn含有量が上限値を超えると導電率が低下してフィン材として好ましくない。好ましくは1.2wt%以下、更に好ましくは1.0wt%以下である。
【0027】
〔ろう付後の結晶粒径:150μm以上〕
ろう付温度が高めに外れたときに問題となるエロージョンによるフィン溶けおよび座屈は、溶融ろうがフィン材の結晶粒界を侵食することにより生ずる。これを防ぐには、ろう材が溶融する直前の温度において、フィン材の結晶粒界の数を少なくする必要がある。具体的には、中間焼鈍後の最終冷延率を適宜選択してろう付後の結晶粒径を150μm以上とすることにより、これを達成できる。ろう付後の結晶粒径が150μmより小さいと、フィン溶けおよび座屈の危険性が増大する。
【0028】
〔結晶粒微細化剤:0.2wt%以下〕
結晶粒微細化剤を必要に応じて含有させると鋳造割れを確実に防止し、安定して鋳造することができる。結晶粒微細化剤としてはTi,B等があり、Tiの0.2wt%以下またはTiとBの合計で0.2wt%以下含有させる。上限値を超えても顕著な効果の向上は得られない。
【0029】
上記組成の他Cu,Mg,Cr,Ni,Ga,V等が地金や返り材等から不可避的不純物として混入するが、各々0.2wt%以下、合計で0.3wt%以下までは本発明の効果を妨げないので許容できる。
【0030】
以上説明した組成のアルミニウム合金溶湯を脱酸化物、除滓、鎮静等の溶湯処理を施した後、必要に応じてフィルターを通過させ、上記した条件で双ベルト鋳造し、得られたスラブを連続、または一旦コイルにしリコイルして圧延して薄板を得る。この薄板は焼鈍と圧延を施して0.1mm以下、好ましくは0.04〜0.08mmに圧延して所定厚さのフィン材とする。
【0031】
このようにして作製されたフィン材はアルミニウム製通液管と組み合わせてろう付される。ろう付けは公知の方法でよく、限定するものではないが、例えば弗化物系のフラックスを用いるろう付法が適している。この弗化物系のフラックスを用いる場合は、ろう材がクラッドされている通液管にベアのフィン材を組付けた後フラックスを塗布してろう付温度に加熱保持してろう付けする方法と、ベアの通液管に弗化物系のフラックス粉末と金属Si粉末のスラリーを塗布し、ベアのフィン材を組付けてろう付温度に加熱保持して金属Siと通液管の極表面層とが反応してろう材を形成させてろう付けする方法等がある。
【0032】
【実施例】
表1に示した各種組成の合金溶湯を溶製し、セラミックス製フィルターを通過させて双ベルト鋳造鋳型に注湯し、引出速度8メートル/分で厚さ7mmのスラブを得た。溶湯の凝固時冷却速度は50℃/sec であった。また、合金番号1の組成の合金溶湯については、引出速度6メートル/分での双ベルト鋳造も行い、厚さ7mmのスラブを得た。このときの溶湯の凝固時冷却速度は70℃/sec であった。該スラブは連続して巻き取ってコイルとし、このコイルを表2に示した厚さ(「中間焼鈍板厚」と表示)まで冷間圧延し、400℃で焼鈍して軟化させた。その後更に冷延して厚さ0.06mmのフィン材とした。
【0033】
得られたフィン材について、下記の測定および試験を行なった。
【0034】
〔1〕圧延方向に平行な断面を走査型電子顕微鏡(反射電子像)で観察し、画像解析装置を用いて、各化合物の直径で最大の長さが0.1〜1.0μmの範囲に入る金属間化合物の個数(個/mm2 )を測定した。
【0035】
〔2〕ろう付温度を想定して595〜600℃×3分間加熱し、冷却後下記項目を測定した。
【0036】
(1)引張強度(N/mm2
(2)表面を電解研磨してバーカー法で結晶粒組織を現出後、切断法で圧延方向に平行な結晶粒径(μm)
(3)JIS−H0505記載の導電率試験法で導電率(%IACS)
(4)銀塩化銀電極を照合電極として、5%食塩水に60分浸漬後の自然電位(mV)
〔3〕弗化物系のノコロック(Nocolok:登録商標)フラックスを使用(塗布量5〜7g/m2 )し、ろう材クラッドアルミニウム通液管を想定して、厚さ0.25mmのブレージングシート(ろう材4045合金クラッド率8%)のろう材面上にコルゲート状に加工した前記フィン材を載置し、その上に厚さ1mmの3003合金片とダミーフィンと錘(合計132g)を載せてろう付試験体とした。この試験体を605℃で5分保持し、冷却後ろう付断面を観察し、溶融ろうによって生じるフィン材結晶粒界のエロージョンが一部でもフィン材厚さを貫通したものは座屈する知見があるので耐エロージョン性不良(×印)とし、フィン材厚さまで達していなかったものを良(○印)とした。なお、コルゲート形状は、高さ2.3mm×幅21mm×ピッチ3.4mmとした。
【0037】
上記の測定および試験の結果を表2に示す。
【0038】
表2の結果から、本発明例(試料番号1,2,3,4および5)はろう付後の引張強度、導電率、自然電位および耐エロージョン性がバランスよく良好であるのに対して、組成範囲の外れている比較例(試料番号6,7,8,9,10および11)は、上記特性のいずれかが劣っていることが判る。
【0039】
【表1】
Figure 0003916577
【0040】
【表2】
Figure 0003916577
【0041】
【発明の効果】
上述の如く本発明は、ろう付後の引張強度、導電率、自然電位およびろう材による耐エロージョン性が良好であるから、性能の良いろう付品が安定して得られる等の優れた効果のある発明である。なお、塩水噴霧試験による腐食減量が少なく、良好なフィン寿命を有する効果もある。

Claims (2)

  1. 下記組成:
    Si:0.7〜1.3wt%、
    Fe:2.0wt%を超え2.8wt%以下、
    Mn:0.6wt%を超え1.2wt%以下、
    Zn:0.02wt%を超え1.5wt%以下、および
    残部:Alおよび不可避的不純物
    から成ることを特徴とする双ベルト鋳造用フィン用アルミニウム合金。
  2. 更にTiを0.2wt%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の双ベルト鋳造用フィン用アルミニウム合金。
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