JP5957641B2 - 擬似便組成物 - Google Patents
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Description
また、本発明の疑似便を使用することによって、従来、採取された疑似便量の誤差が大きいために不可能であった便潜血項目の精度管理が、疑似便量の誤差が補正できる本発明により、測定試薬および測定機器の誤差そのものが判るようになり、標準化やサーベイランスに大きく前進できる環境が整う事になる。また、さらに採便器の形状や希釈液のさらなる改良も、本発明の疑似便を使用することにより、採便量の誤差を小さくする改良研究の目安として使用できる事も大きなメリットになる。
また、第3の物質として4−アミノアンチピリンを使用した場合は、その測定はさらに簡単になり、ペルオキシダーゼおよびトリンダー試薬と過酸化水素を使用すれば良い。
第3の物質としてグルコース、マルトース、トレハロース、スクロースの場合は、たとえば、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン、トリンダー試薬、必要であれば、2糖類の分解酵素を使用すればよい。
第3の物質として、リン酸塩の場合は、イノシン、プリンヌクレオチドホスホリラーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、4−アミノアンチピリン、トリンダー試薬などにより測定される。
擬似便に、第3の物質を添加する方法としては、一般的に粉体に溶液を含浸させる方法でよいが、米粉や小麦粉、トウモロコシ粉、ジャガイモデンプンなどの粉体に、第3の物質が溶液に溶解した状態でその溶液を添加することが良い。均質になるよう良く混ぜ、時々数カ所の部位をサンプリングして、均質かどうか第3の物質の濃度を検定することにより確認できる。
豆平社製上用粉10gに脱イオン水3倍量を加えて撹拌、静止後、上清を捨ててゴミなどを取り除く工程を2回繰り返し、グラスフィルターで濾過した。さらにこれを24時間減圧下に室温乾燥して上用粉の洗浄品を作成した。一方、20mMのMOPS緩衝液(同仁化学社製、PH=7)にヘモグロビンの安定化剤として和光純薬社製牛血清アルブミンを5mg/mL、 和光純薬社製スクロースを10mg/mL、和光純薬社製アジ化ナトリウムを0.1%含有させた水溶液にシグマアルドリッチ社製人ヘモグロビンA0を0.08mg/mL、和光純薬社製グリセロールを10%になる様添加混合した溶液(これを添加溶液とする)を作成した。
擬似便は、上記洗浄された上用粉と添加溶液を1:1.1重量比で混合し、冷温下、均一になるまでよく撹拌、混合してペースト状の擬似便を作成した。
実施例1の擬似便の数カ所から、約10mgのサンプルを取り、その重量(Sa)を量り、2mLの脱イオン水が入った試験管に入れて震倒撹拌してサンプルを分散させた。
試験管を3000rpmで5分間遠心分離してその上清をグリセロール測定のために供した。グリセロール測定試薬は協和メデックス社製、デタミナーL TGの試薬1と試薬2を容積比3:1の比であらかじめ混合した試薬を用意した。この試薬3mLに上清を50μL添加し、37℃10分間加温した後、555nmにおける吸光度を測定した。グリセロール濃度(Ga)の算出は、グリセロールの標準液を同時に測定し、その比較から算出した。測定されたグリセロール濃度は、擬似便が均一であれば、サンプリングした重量に比例するはずであり、Ga/Sa比は、ほぼ一定であれば均一と言える。結果を表1に示す。98.8%から101.1%の間に入る良好な均質性が示された。
5人の実験者を用意し、実施例1の擬似便を使用し、栄研(株)社製のヘモの採便器と測定試薬、測定機器を使って、擬似便中のヘモグロビン濃度(Hb)を測定した。結果を表2に示す。それぞれ得られた値は、希釈液中の濃度で示され、128.6ng/mL〜181.4ng/mLと広い範囲に広がり、標準誤差は14.2%となった。擬似便採取者がかなり注意深く採取したにも拘わらず、採取する者によりかなり測定値が変動した。測定されたヘモグロビン濃度の表示が1gの便量当たりのヘモグロビン量となっているが、これはこの採便器で一定量の便量を採取することが前提になって計算されており、その一定量の便量から計算された数字であるため、誤差の真実は採取された擬似便量の誤差が大きく影響していると思われた。これでは、測定試薬や測定機器の誤差はほとんど判らない状況であった。
の式に代入して、採便量(Sa)を計算した。
ただし、Aは擬似便中のグリセロールの添加量で、ここでは52.4mg/gであり、Gbは別途測定したグリセロールの濃度(mg/dL)、C:希釈液の量(mL) ここでは、2mLである。
結果を表2と合わせて表3にまとめた。
擬似便量をグリセロール濃度から算出して、その値を用いてヘモグロビン測定値を補正したところ、標準誤差が4.7%と補正なしの結果と比較して、約3分の1になり、この誤差範囲であれば、採取した擬似便量の誤差が実質上ほぼ無くなり、ヘモグロビン測定に於ける試薬と測定機器の標準化が可能になる程度になった。
5人の実験者を用意し、実施例3と同様に採便器と希釈液およびヘモグロビン測定試薬を使用し、擬似便が分散、溶解した希釈液中のヘモグロビン濃度(Hb)を測定した。一方、希釈液中のトレハロース濃度を下記に示す測定試薬を使用して測定した。
トレハロース測定試薬
50mM リン酸緩衝液(pH7)
トレハラーゼ(シグマ社製) 5U/mL
ムタロターゼ(シグマ社製) 2U/mL
グルコースオキシダーゼ (天野エンザイム社製)10U/mL
ペルオキシダーゼ (東洋紡(株)製) 10U/mL
TOOS(同仁化学(株)製) 0.2mg/mL
4−アミノアンチピリン(和光純薬製) 0.1mg/mL
測定は試験管にトレハロース測定試薬3mLを入れ、37℃で予備加温した後、希釈液の検体20μLを添加して撹拌し、37℃加温10分後に550nmにおける吸光度を測定した。トレハロースの10mg/dLの標準液を比較対照として希釈液中のトレハロース濃度を算出した。ただし、Aは擬似便中のトレハロースの添加量で、ここでは49.8mg/gであり、Gbは別途測定したトレハロースの濃度(mg/dL)、C:希釈液の量(mL) ここでは、2mLである。結果を表4に示す。
従来の方法で擬似便中のヘモグロビン濃度(Hb)を測定した場合、得られた値(希釈液中の濃度)は、122.8ng/mL〜179.3ng/mLと広い範囲に広がり、標準誤差は15.5%となった。擬似便採取者がかなり注意深く採取したにも拘わらず、採取する者によりかなり測定値が変動した。しかし、別途トレハロースを測定して採取便量を算出し便量で補正したところ、5.1%と非常に良好な誤差範囲になった。
A 採便棒
B 希釈容器
C 擦りきられ、口に残った疑似便
D ヘモグロビン測定器の検体ノズル
1は採便器の採便棒を外した状態。
2は採便棒を使って疑似便を採取した様子。
3は希釈容器の入り口から希釈容器の内部に採便棒を差し入れた様子。
4は疑似便が希釈容器の中の希釈液に溶解した様子。
5は容器を逆さまにして背後から分析装置の検体採取のノズルが注入された様子。
Claims (12)
- 粉体に水溶液を浸潤させて作成する疑似便において、ヘモグロビン及び・またはトランスフェリンおよび酵素反応によって検出可能な無色の第3の物質(以下第3物質という)を含有し、疑似便が器具によって採取され、分散・希釈された溶液部分をそのまま検体として第3物質の濃度を測定する事により疑似便の採取量を算出可能である事を特徴とする疑似便。
- 請求項1の擬似便を器具によって採取し、希釈溶液に分散・希釈する工程を持つ便中ヘモグロビンまたはトランスフェリンを測定する方法において、擬似便を分散・希釈した溶液中の第3物質濃度を測定することにより擬似便の採取量を算出する事を特徴とする採取量の測定方法。
- 請求項1の第3物質が、酸化還元酵素とペルオキシダーゼまたはジアホラーゼを使用して測定可能な物質である。請求項1の擬似便。
- 請求項1の第3物質が、4−アミノアンチピリンである。請求項1の擬似便。
- 請求項2の第3物質が、酸化還元酵素とペルオキシダーゼを使用して測定可能な物質である。請求項2の方法。
- 請求項2の第3物質が、4−アミノアンチピリンである。請求項2の方法。
- 請求項3の酸化還元酵素とペルオキシダーゼまたはジアホラーゼを使用して測定可能な物質が、グリセロールまたはグリセロール−3―リン酸、乳酸である請求項3の擬似便。
- 請求項5の酸化還元酵素とペルオキシダーゼまたはジアホラーゼを使用して測定可能な物質が、グリセロールまたはグリセロール−3―リン酸、乳酸である請求項5の方法。
- 請求項3の酸化還元酵素とペルオキシダーゼまたはジアホラーゼを使用して測定可能な物質がグルコースまたはリン酸塩である請求項3の疑似便。
- 請求項5の酸化還元酵素とペルオキシダーゼまたはジアホラーゼを使用して測定可能な物質がグルコースまたはリン酸塩である請求項5の方法。
- 請求項1、請求項3、請求項4、請求項7、又は請求項9のいずれか一項に記載の疑似便を使用し、採便器またはヘモグロビンまたはトランスフェリンの精度管理を行う方法。
- 請求項2、請求項5、請求項6、請求項8、又は請求項10のいずれか一項に記載の疑似便を使用し、採便器またはヘモグロビンまたはトランスフェリンの精度管理を行う方法。
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