以下に添付図面を参照して、この発明に係る磁気共鳴イメージング装置および受信経路切り替え方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例では、パラレルイメージングの感度プレスキャンが行われる場合を想定して、PAコイルおよびWBコイルに関する受信経路の切り替えを中心に説明する。
まず、図1を用いて、本実施例に係るMRI装置の構成について説明する。図1は、本実施例に係るMRI装置の全体構成を示す図である。同図に示すように、このMRI装置100は、架台部10、傾斜磁場電源20、送信部30、受信部40、シーケンス制御部50、寝台部60、寝台制御部70および計算機システム80を備える。
架台部10は、静磁場中に置かれた被検体に高周波磁場を照射し、当該被検体から発せられるNMR信号を検出する。この架台部10は、特に、静磁場磁石11と、傾斜磁場コイル12と、WBコイル13と、PAコイル14とを有する。
静磁場磁石11は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生させる。この静磁場磁石11としては、例えば永久磁石、超伝導磁石などが用いられる。
傾斜磁場コイル12は、中空の円筒形状に形成されており、静磁場磁石11の内側に配置される。この傾斜磁場コイル12は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されている。これら3つのコイルは、傾斜磁場電源20から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
かかる傾斜磁場コイル12によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、たとえば、リードアウト用傾斜磁場Gr、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびスライス選択用傾斜磁場Gsにそれぞれ対応する。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてNMR信号の周波数を変化させるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じてNMR信号の位相を変化させるために利用される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。
WBコイル13は、傾斜磁場コイル12の内側に配置され、送信部30から高周波パルスの供給を受けて高周波磁場を発生させる。このWBコイル13は、発生した高周波磁場の影響で被検体Pから発せられるNMR信号を受信するためにも用いられ、受信したNMR信号を受信部40へ送信する。また、このWBコイル13は、他のコイルとのデカップリングを制御するためのスイッチとなるピンダイオードを有している。
PAコイル14は、傾斜磁場コイル12の内側に配置され、WBコイル13によって発生した高周波磁場の影響で被検体Pから放射されるNMR信号を受信する。このPAコイル14は、複数のコイルエレメントから構成されており、各コイルエレメントによってNMR信号が受信されると、受信されたNMR信号を受信部40へ送信する。また、このPAコイル14は、他のコイルとのデカップリングを制御するためのスイッチとなるピンダイオードを有している。
傾斜磁場電源20は、傾斜磁場コイル12に電流を供給する。
送信部30は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを有し、これら各部の動作の結果として、ラーモア周波数に対応する高周波パルスをWBコイル13に送信する。ここで、発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生させる。また、位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。また、振幅変調部は、周波数変調部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。
受信部40は、WBコイル13およびPAコイル14から送信されるNMR信号を増幅・位相検波・デジタル変換して生データを生成し、生成した生データをシーケンス制御部50に送信する。
シーケンス制御部50は、計算機システム80から送信されるシーケンス情報に基づいて、傾斜磁場電源20、送信部30および受信部40を駆動することによって、被検体Pのスキャンを行う。ここで、シーケンス情報とは、傾斜磁場電源20が傾斜磁場コイル12に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部30がWBコイル13に送信する高周波パルスの強さや高周波パルスを送信するタイミング、受信部40がNMR信号を検出するタイミングなど、スキャンを行うための手順を定義した情報である。
なお、シーケンス制御部50は、傾斜磁場電源20、送信部30および受信部40を駆動して被検体Pをスキャンした結果、受信部40から生データが送信されると、その生データを計算機システム80へ転送する。
寝台部60は、被検体Pが載置される天板61を備えた装置であり、寝台制御部70による制御のもと、天板61を、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル12の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台部60は、長手方向が静磁場磁石11の中心軸と平行になるように設置される。
寝台制御部70は、寝台部60を制御する装置であり、寝台部60を駆動して、天板61を長手方向および上下方向へ移動する。
計算機システム80は、MRI装置100の全体制御や、データ収集、画像再構成などを行う装置であり、インタフェース部81、画像再構成部82、記憶部83、入力部84、表示部85および制御部86を有している。
インタフェース部81は、シーケンス制御部50との間で授受される各種信号の入出力を制御する処理部である。たとえば、このインタフェース部81は、シーケンス制御部50に対してシーケンス情報を送信し、シーケンス制御部50から生データを受信する。
ここで、インタフェース部81によって受信された生データは、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場GrによりPE方向、RO方向、SE方向の空間周波数の情報が対応付けられたk空間データとして、記憶部83に格納される。
画像再構成部82は、記憶部83によってk空間データとして記憶された生データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する処理部である。
記憶部83は、インタフェース部81によって受信された生データと、画像再構成部82によって生成された画像データなどを、被検体Pごとに記憶する記憶部である。
入力部84は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける装置である。この入力部84としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切り替えスイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
表示部85は、制御部86による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する装置である。この表示部85としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
制御部86は、CPU(Central Processing Unit)やメモリなどを有し、MRI装置100の全体制御を行う処理部である。具体的には、この制御部86は、入力部84を介して操作者から入力される撮像条件に基づいてシーケンス情報を生成し、生成したシーケンス情報をシーケンス制御部50に送信することによってスキャンを制御したり、スキャンの結果としてシーケンス制御部50から送られるk空間データに基づいて行われる画像の再構成を制御したりする。
また、制御部86は、パラレルイメージングにおける感度マップを作成する機能も備える。具体的には、制御部86は、パラレルイメージングの感度プレスキャンが行われる場合には、操作者から入力された撮像条件に基づいて、PAコイルを用いたスキャンとWBコイルを受信コイルとして用いたスキャンとを続けて行うシーケンス情報を生成する。
そして、制御部86は、感度プレスキャンが行われた結果、PAコイル14により受信されたNMR信号に基づくPAコイル画像およびWBコイル13により受信されたNMR信号に基づくWBコイル画像が再構成されると、両画像を比較することによって、PAコイル14が有する各コイルエレメントの感度分布を推定し、感度マップを作成する。かかる感度マップの作成方法については、一般的に知られている各種の方法が用いられる。
以上、本実施例に係るMRI装置の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施例では、シーケンス制御部50が、撮像に際して設定される撮像条件に基づいて、スキャン中に受信経路の切り替えを指示するイベントコードを発生させ、当該イベントコードが発生した場合に、架台部10が、WBコイル13やPAコイル14と、受信部40が有する受信回路とを接続する受信経路を切り替えるようにしている。
そこで、以下では、図2〜7を用いて、主に架台部10、受信部40およびシーケンス制御部50によって行われる受信経路の切り替えについて詳細について説明する。
まず、図2を用いて、架台部10、受信部40およびシーケンス制御部50の構成について説明する。図2は、架台部10、受信部40およびシーケンス制御部50の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、シーケンス制御部50は、たとえば、ハブおよびLAN(Local Area Network)を介して計算機システム80に接続される。また、架台部10やWBコイル13、PAコイル14などは、外部からの高周波(RF波)の混入を防ぐシールドルーム内に設置される。
シーケンス制御部50は、特に、CPU基板51と、イベント発生基板52と、架台部制御基板53とを有する。
CPU基板51は、計算機システム80から送信されるシーケンス情報に基づいて、シーケンス制御部50が有する各種の制御基板を制御する。
イベント発生基板52は、CPU基板51によりイベントの種類やタイミングが設定されたタイムテーブルにしたがって、スキャン中にイベントコードを発生させ、発生したイベントコードを架台部制御基板52に送信する。
ここで、イベント発生基板52により発生するイベントコードには、受信経路の切り替えを指示するイベントコードが含まれている。具体的には、イベント発生基板52は、エコー収集の単位ごとに、受信経路の切り替えを指示するイベントコードを発生させる。
また、受信経路の切り替えを指示するイベントコードには、所定のタイミングで発生する優先コードが含まれている。具体的には、イベント発生基板52は、他のコイルと比べて優先的に用いられる受信コイル(以下、「優先コイル」と呼ぶ)を用いるタイミングで、優先コードを発生させる。
架台部制御基板53は、CPU基板51により設定される設定データを記憶部に保持し、記憶部に保持した設定データをシリアル通信によって架台部10に送信する。具体的には、架台部制御基板53は、イベント発生基板52から受信経路の切り替えを指示するイベントコードが送信された場合には、送信されたイベントコードに対応する設定データをあらかじめ記憶されている設定データの中から選択して、架台部10に送信する。
なお、ここでいう設定データには、受信経路の設定に必要な情報である「受信経路情報」や、WBコイル13やPAコイル14が有するピンダイオードのオン/オフを切り替えるための情報である「ピンダイオード情報」が含まれている。
また、架台部制御基板53は、イベント発生基板52によって優先コードが発生した場合には、架台部10に優先経路切り替え信号を送信する。
なお、上記で説明した各基板は、ローカルバス54およびイベントコードビットによって互いに通信可能に接続されている。
架台部10は、特に、RFスイッチマトリクス基板15と、ピンダイオードドライブ基板16とを有する。この架台部10は、たとえば光通信によって、架台部制御基板53と接続される。
RFスイッチマトリクス基板15は、架台部制御基板53からシリアル通信によって設定データを受信し、受信した設定データに含まれる受信経路情報を用いて受信経路を変更する。これにより、RFスイッチマトリクス基板15は、WBコイル13やPAコイル14から受信部40へ送信されるNMR信号を選択することができる。
具体的には、RFスイッチマトリクス基板15は、架台部制御基板53から送信された設定データを記憶するための記憶部を有しており、この記憶部に各種の設定データを記憶させることによって、その設定データに応じたパターンの受信経路を設定する。すなわち、記憶部に記憶させる設定データを変化させることによって、複数パターンの受信経路を可変的に設定することができる。
なお、かかるRFスイッチマトリクス基板15は、PAコイル14と受信回路との間に受信経路を設定する場合には、1つのコイルエレメントに対して受信回路が接続されるように受信経路を設定することもできるし、2つ以上のコイルエレメントを組み合わせたコイルエレメント群(全体で一つのコイルエレメントとしてみなされる)に対して受信回路が接続されるように受信経路を設定することもできる。
また、RFスイッチマトリクス基板15は、架台部制御基板53から優先経路切り替え信号を受信する。ここで、RFスイッチマトリクス基板15は、設定データによって可変的に設定される受信経路とは別に、優先コイルと受信回路とを接続する受信経路を「優先経路」としてあらかじめ有している。そして、RFスイッチマトリクス基板15は、優先経路切り替え信号を受信した場合には、設定データを用いて設定した受信経路から優先経路に切り替える。
ピンダイオードドライブ基板16は、架台部制御基板53により受信された設定データを取得し、取得した設定データに含まれるピンダイオード情報に基づいて、WBコイル13およびPAコイル14が有するピンダイオードのオン/オフを制御する。
受信部40は、受信基板41を有する。受信基板41は、複数の受信回路から構成されており、RFスイッチマトリクス基板15により設定される受信経路あるいは優先経路を介してWBコイル13やPAコイル14からNMR信号を受信する。
次に、図3を用いて、通常撮影時の受信経路切り替え方法について説明する。図3は、通常撮影時の受信経路切り替え方法を説明するための図である。ここで説明する受信経路切り替え方法は、従来用いられていた方法と同じである。
同図に示すように、通常撮影時には、スキャン前に設定された撮像条件に含まれるコイル情報(ユーザによって選択されたコイルに関する情報)に基づいて、CPU基板51が、ローカルバス54経由で架台部制御基板53に設定データを送信する。架台部制御基板53は、設定データを受信すると、受信した設定データを記憶部53aに保持する。
その後、架台部制御基板53は、CPU基板51からの送信命令に応じて、記憶部53aに保持されている設定データをシリアル通信によりRFスイッチマトリクス基板15に送信する。そして、RFスイッチマトリクス基板15が、送信された設定データを用いて受信経路を設定する。
次に、図4を用いて、スキャン中に受信経路を切り替える場合の受信経路切り替え方法について説明する。図4は、スキャン中に受信経路を切り替える場合の受信経路切り替え方法を説明するための図である。
同図に示すように、スキャン中に受信経路を切り替える場合には、イベント発生基板52が、CPU基板51によって設定されたタイムテーブルにしたがって、エコー収集の単位の区切りで、受信経路の切り替えを指示するイベントコードを発生させ、架台部制御基板53に送信する。
架台部制御基板53は、イベントコードを受信すると、受信したイベントコードに対応する設定データをあらかじめ記憶部53aに記憶されている設定データの中から選択して、架台部10に送信する。
図5は、架台部制御基板53の記憶部53aにより記憶される設定データの一例を示す図である。たとえば、同図に示すように、設定データには、イベントコードに対応付けられて、受信経路情報およびピンダイオード情報が設定される。同図に示す例では、設定データは、「0001」、「0010」、「1110」などに対応付けられて記憶されている。
さらに、設定データには、優先コイルを用いるタイミングでイベント発生基板52が発生させる優先コードに対応付けられて、優先経路切り替え信号も設定される。同図に示す例では、「1111」を優先コードとしている。
たとえば、架台部制御基板53は、イベント発生基板52からイベントコード「0010」が送信された場合には、受信経路情報2およびピンダイオード情報2を含む設定データを架台部10に送信する。
架台部制御基板53から設定データが送信されると、架台部10では、RFスイッチマトリクス基板15が、送信された設定データに含まれている受信経路情報を用いて受信経路を設定する。また、ピンダイオードドライブ基板16が、設定データに含まれているピンダイオード情報に基づいてピンダイオードのオン/オフを切り替える。
なお、WBコイル13が高周波磁場を発生している間や、WBコイル13またはPAコイル14がNMR信号を受信している間にイベント発生基板52と架台部制御基板53との間でシリアル通信が行われると、再構成される画像にノイズが生じることが知られている。そのため、イベント発生基板52が架台部制御基板53に設定データをシリアル通信で送信するタイミングは、WBコイル13が高周波磁場を発生している間と、WBコイル13またはPAコイル14がNMR信号を受信している間とを除いたタイミングで行われる。
次に、図6を用いて、受信経路を優先経路へ切り替える場合の受信経路切り替え方法について説明する。図6は、受信経路を優先経路へ切り替える場合の受信経路切り替え方法を説明するための図である。なお、ここでは、WBコイル13が優先コイルとして設定されており、架台部制御基板53の記憶部53aには、図5に示した設定データが記憶されているとする。
同図に示すように、受信経路を優先経路へ切り替える場合には、イベント発生基板52が、エコー収集の単位の区切りで、優先コード「1111」を発生させ、発生した優先コード「1111」を架台部制御基板53に送信する。
架台部制御基板53は、優先コード「1111」を受信すると、記憶部53aにより記憶されている設定データの中から、優先コード「1111」に対応付けられている設定データを取得する。図5に示したように、優先コード「1111」に対応付けられている設定データには優先経路切り替え信号が設定されているので、架台部制御基板53は、その優先経路切り替え信号を架台部10に送信する。
架台部制御基板53から優先経路切り替え信号が送信されると、架台部10では、RFスイッチマトリクス基板15が、記憶部15aに記憶されている設定データによって設定されていたPAコイル14の受信経路を解除し、あらかじめ設定されている優先経路、すなわち、優先コイルであるWBコイル13と受信回路とを接続する受信経路を設定する。
なお、上記で説明した優先経路への切り替えで用いられる優先経路切り替え信号は、単に切り替えを指示するためのものであるので、少ないビット数の信号でよい。その一方で、設定データは、切り替えの対象となる受信経路が増えるにしたがって、優先経路切り替え信号と比べてより多くのビット数が必要となる。
また、近年では、各種の撮像法が開発されるとともに、PAコイル14を構成するコイルエレメントの数や受信基板41を構成する受信回路の数が増加する傾向にある(多チャンネル化)。コイルエレメントの数や受信回路の数が増加すると、設定可能な受信経路のパターンも増えるため、設定データに必要なビット数はさらに増加する。
このように、設定データのビット数が増えた場合には、架台部制御基板53から架台部10にシリアル通信で設定データを送信する際の通信時間の増大が懸念される。しかし、上記で説明した優先経路切り替え信号を用いた切り替えでは、あらかじめ優先経路を有するようにRFスイッチマトリクス基板15を構成しておくことによって、ビット数が少ない優先経路切り替え信号のみで受信経路を切り替えることができるので、受信経路の切り替えにかかる時間を短くすることができる。
なお、ここではRFスイッチマトリクス基板15が一つの優先経路のみを有する場合について説明したが、複数の優先経路を有するようにしてもよい。その場合には、優先経路切り替え信号のビット数を、優先経路の数に合わせて増やすようにする。
以上、説明したように、本実施例では、イベント発生基板52が、スキャン中にエコー収集の単位の区切りでイベントコードを発生させることによって、エコー収集の単位ごとに受信経路(優先経路を含む)を自在に切り替えることができる。すなわち、スキャン中に、エコー収集の単位ごとに、NMR信号を受信させる受信コイルを自在に切り替えることができる。
ここで、通常、MRI装置によるデータ収集では、1回のスキャンの中で、高周波磁場による励起から受信コイルによるエコー収集までの処理が、k空間のラインごとに繰り返し行われる。そのため、たとえば、パラレルイメージングにおける感度プレスキャンでは、1回目のスキャンで、WBコイルによるエコー収集が繰り返し行われたのちに、2回目のスキャンで、PAコイルによるエコー収集が繰り返し行われる。
しかし、本実施例では、上述したように、スキャン中に、エコー収集の単位ごとに受信コイルを切り替えることができるので、たとえば、感度プレスキャンにおいて、WBコイル13とPAコイル14とをエコー収集ごとに交互に切り替えることも可能である。すなわち、本実施例では、k空間のラインごとに、WBコイル画像用のデータとPAコイル画像用のデータとを交互に収集することができる。
これにより、感度プレスキャンにおいて、1回のスキャンでWBコイル13によるエコー収集とPAコイル14によるエコー収集とをまとめて行うことができるので、被検体の動きによる影響を減らすことができる。さらに、k空間のラインごとにWBコイル13とPAコイル14とを切り替えることによって、ラインごとにみた場合に、WBコイル画像用のデータとPAコイル画像用のデータとの間で、収集タイミングの時間のずれが少なくなるので、両画像間のミスレジストレーションを減らすことが可能になる。
次に、本実施例に係る受信経路切り替え方法の一連の処理手順について説明する。図7は、本実施例に係る受信経路切り替え方法の一連の処理手順を説明するためのフローチャートである。なお、ここでは、パラレルイメージングの感度プレスキャンが行われる場合の受信経路の切り替えについて説明する。
同図に示すように、操作者によって感度プレスキャンの撮像条件が設定されたのちに、入力部84がスキャンの開始指示を受け付けると(ステップS101,Yes)、CPU基板51による制御のもと、まず、WBコイル13が、被検体Pに高周波磁場を照射し、その後、イベント発生基板52が、優先経路に対応するイベントコード(優先コード)を発生させ、架台部制御基板53に送信する(ステップS102)。
続いて、架台部制御基板53が、送信された優先コードに対応する設定データを記憶部53aに記憶されている設定データの中から取得し、取得した設定データに設定されている優先経路切り替え信号を架台部10に送信する(ステップS103)。
架台部制御基板53から優先経路切り替え信号が送信されると、架台部10では、RFスイッチマトリクス基板15が、優先経路(WBコイル13に接続されている受信経路)を設定する(ステップS104)。これにより、WBコイル13によってエコー収集が行われる(ステップS105)。
続いて、CPU基板51による制御のもと、WBコイル13が、被検体Pに高周波磁場を照射し、その後、イベント発生基板52が、PAコイル14の受信経路に対応するイベントコードを発生させ、架台部制御基板53に送信する(ステップS106)。
続いて、架台部制御基板53が、送信されたイベントコードに対応する設定データを記憶部53aに記憶されている設定データの中から選択して、シリアル通信で架台部10に送信する(ステップS107)。
架台部制御基板53から設定データが送信されると、架台部10では、RFスイッチマトリクス基板15が、送信された設定データに基づいて、PAコイル14の受信経路を設定する(ステップS108)。これにより、PAコイル14によってエコー収集が行われる(ステップS109)。なお、このとき、ピンダイオードドライブ基板16も、設定データに基づいてピンダイオードのオン/オフを切り替える。
こうして、k空間の全てのラインについてデータが収集されるまでの間は、上述したステップS102〜S109の処理が繰り返し実行される。そして、k空間の全てのラインについてデータが収集されると、画像再構成部82が、PAコイル14によって収集されたデータとWBコイル13によって収集されたデータとを分離する(ステップS111)。
続いて、画像再構成部82は、PAコイル14によって収集されたデータからPAコイル画像を再構成し(ステップS112)、さらに、WBコイル13によって収集されたデータからWBコイル画像を再構成する(ステップS113)。
そして、制御部86が、再構成されたPAコイル画像およびWBコイル画像を比較することによってPAコイル14の感度分布を推定し、感度マップを作成する(ステップS114)。
このように、本実施例に係る受信経路切り替え方法によれば、パラレルイメージングの感度プレスキャンにおいて、WBコイル13とPAコイル14とがエコー収集の単位(k空間のライン)ごとに自動的に切り替えられるので、1回のスキャンで感度マップを作成することができる。
上述してきたように、本実施例によれば、シーケンス制御部50のイベント発生基板52が、撮像に際して設定される撮像条件に基づいて、スキャン中に受信経路の切り替えを指示するイベントコードを発生させる。そして、当該イベントコードが発生した場合に、架台部10のRFスイッチマトリクス基板15が、受信コイルと受信回路とを接続する受信経路を切り替える。したがって、本実施例によれば、スキャン中に受信経路を切り替えることを可能にして、画像のミスレジストレーションを減少させることができる。
また、本実施例によれば、架台部制御基板53の記憶部53aが、受信経路の設定に必要な情報を含む設定データとイベントコードとを対応付けて記憶する。また、架台部制御基板53が、イベント発生基板52によって発生したイベントコードに対応する設定データを記憶部53aにより記憶された設定データの中から選択する。そして、架台部10のRFスイッチマトリクス基板15が、架台部制御基板53によって選択された設定データを用いて受信経路を設定する。したがって、受信コイルの数が増えた場合でも、設定可能な受信経路の数だけあらかじめ設定データを用意しておくことによって、撮像法の種類に応じてより柔軟に受信経路を切り替えることができるようになる。
また、本実施例によれば、シーケンス制御部50のイベント発生基板52により発生するイベントコードには、所定のタイミングで発生する優先コードが含まれている。そして、架台部10のRFスイッチマトリクス基板15が、優先的に用いられる受信コイルと前記受信回路とを接続する受信経路を優先経路としてあらかじめ有するとともに、イベント発生基板52によって優先コードが発生した場合には、当該優先経路に受信経路を切り替える。したがって、特定の受信コイルを優先的に用いた撮像が行われる場合に、効率よく受信経路の切り替えを行うことができるようになる。
また、本実施例によれば、架台部制御基板53の記憶部53aにより記憶される設定データには、受信コイルが有するピンダイオードの動作を制御するためのピンダイオード情報が含まれている。そして、ピンダイオードドライブ基板16が、シーケンス制御部50のイベント発生基板52によって発生したイベントコードに対応する設定データに含まれるピンダイオード情報に基づいて、架台部10のRFスイッチマトリクス基板15によって設定される受信経路により接続される受信コイルが有するピンダイオードの動作を制御する。したがって、受信経路の切り替えに合わせてコイル間のデカップリングを自動的に制御することが可能になり、より高い精度でNMR信号を検出することができるようになる。
また、本実施例によれば、スキャン中にエコー収集の単位ごとに受信コイルの切り替えができるため、パラレルイメージングにおける感度マップ作成のためのWBコイル画像とPAコイル画像との間のミスレジストレーションを減少させ、エコー収集の単位以上での動き(腸の動き、呼吸性の動き)に起因する感度推定不良を改善することができる。
なお、本実施例では、パラレルイメージングが行われる場合を想定して、PAコイルおよびWBコイルに関する受信経路の切り替えを説明したが、本発明はこれに限られるわけではなく、他の撮像法が行われる場合や他の種類の受信コイルが用いられる場合にも同様に適用することができる。
たとえば、被検体全体を覆うことができるPAコイルを用いて、天板を移動しながら撮像が行われる場合には、撮像領域の中心付近に位置するコイルエレメントまたはコイルエレメント郡によってNMR信号が受信されるように、天板の移動量に合わせて、コイルエレメントまたはコイルエレメント郡に接続された受信経路を切り替えるようにする。
ここで、上記実施例で説明したMRI装置100によるパラレルイメージングについて説明する。図8は、従来のMRI装置によるパラレルイメージングを説明するための図である。また、図9は、本実施例に係るMRI装置によるパラレルイメージングを説明するための図である。
従来のMRI装置は、パラレルイメージングを行う場合、図8に示すように、まず、感度マップ作成用スキャンとして、PAコイル(PAC)を用いたスキャン(PAC収集)とWBコイルを用いたスキャン(WBコイル収集)とをそれぞれ行う。続いて、従来のMRI装置は、PAコイルによって収集されたデータからPAコイル画像を再構成し、WBコイルによって収集されたデータからWBコイル画像を再構成する。そして、従来のMRI装置は、再構成したPAコイル画像およびWBコイル画像を用いて感度マップを作成する。その後、従来のMRI装置は、本スキャンとしてPACを用いたスキャン(PAC収集)を行ったうえで、感度マップを用いてPAC画像を展開する。すなわち、従来のMRI装置によるパラレルイメージングでは、合計で3回のスキャンが行われている。
これに対し、本実施例に係るMRI装置100は、パラレルイメージングを行う場合、図9に示すように、感度マップ作成用スキャンとして、PAコイル(PAC)14とWBコイル13とをエコー収集の単位ごとに切り替えながらデータを収集する(インライン収集)。これにより、MRI装置100の記憶部83には、PAコイル14によって収集されたデータとWBコイル14によって収集されたデータとが交互に格納される。
続いて、MRI装置100は、PAコイル14によって収集されたデータとWBコイル14によって収集されたデータとを分離する。これにより、PAコイル14によって収集されたデータについては、4つの受信経路ごとにデータが得られる。また、WBコイル14によって収集されたデータについては、1つの受信経路のデータが得られる。
そして、MRI装置100は、PAコイル14によって収集されたデータからPAコイル画像を再構成し、WBコイル13によって収集されたデータからWBコイル画像を再構成する。さらに、MRI装置100は、再構成したPAコイル画像およびWBコイル画像を比較することによって感度マップを作成する。
その後、MRI装置100は、本スキャンとしてPAコイル14を用いたスキャン(PAC収集)を行ったうえで、感度マップ作成用スキャンによって作成された感度マップを用いてPAコイル画像を展開する。すなわち、MRI装置100によるパラレルイメージングでは、合計で2回のスキャンが行われる。
このように、本実施例に係るMRI装置100は、感度マップ作成用スキャンおよび本スキャンの2回のスキャンでパラレルイメージングを行うことができる。また、MRI装置100によれば、エコー収集の単位ごとにPAコイル14とWBコイル13との間で受信経路を切り替えることによって、1回のスキャンで感度マップ作成用スキャンを行うことができる。したがって、スキャンとスキャンとの間で被検体が動くことによる画像のミスレジストレーションを減少させることができる。
なお、上述した実施例では、感度マップ作成用スキャンにおいて、1つの受信経路が接続されるWBコイルが用いられる場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。たとえば、WBコイルの代わりに、複数の受信経路が接続される局所コイル(例えば、頭部コイルや脊椎コイルなど)が用いられる場合にも同様に適用することが可能である。
図10は、複数の受信経路が接続される局所コイルを用いて感度マップ作成用スキャンが行われる場合を説明するための図である。なお、図10は、PAコイル(PAC)14に接続される受信経路の数が「4」であり、局所コイルに接続される受信経路の数が「3」である場合を示している。
図10に示すように、この場合には、MRI装置100は、感度マップ作成用スキャンとして、PAコイル14と局所コイルとをエコー収集の単位ごとに切り替えながらデータを収集する(インライン収集)。これにより、MRI装置100の記憶部83には、PAコイル14によって収集されたデータと局所コイルによって収集されたデータとが交互に格納される。
続いて、MRI装置100は、PAコイル14によって収集されたデータと局所コイルによって収集されたデータとを分離する。これにより、PAコイル14によって収集されたデータについては、4つの受信経路ごとにデータが得られる。また、局所コイルによって収集されたデータについては、3つの受信経路ごとにデータが得られる。
さらに、MRI装置100は、PAコイル14によって収集されたデータからPAコイル画像を再構成し、局所コイルによって収集されたデータから局所コイル画像を再構成する。そして、MRI装置100は、再構成したPAコイル画像および局所コイル画像を用いて感度マップを作成する。
その後、MRI装置100は、本スキャンとしてPAコイル14を用いたスキャン(PAC収集)を行ったうえで、感度マップを用いてPAコイル画像を展開する。すなわち、PAコイル14と局所コイルとを用いてパラレルイメージングを行う場合も、合計で2回のスキャンが行われる。
このように、本実施例に係るMRI装置100によれば、複数の受信経路が接続される局所コイルを用いて感度マップ作成用スキャンが行われる場合でも、1回のスキャンで感度マップ作成用スキャンを行うことができる。なお、ここでは、PAコイル14に接続される受信経路の数と局所コイルに接続される受信経路の数とが異なる場合について説明したが、それぞれの受信経路の数が同じであってもよい。
また、上記実施例では、感度マップ作成用スキャンにおいて受信経路を切り替える場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、本スキャンにおいて受信コイルを切り替えることも可能である。
図11は、本スキャンにおいて受信経路を切り替える場合を説明するための図である。なお、図11は、2つのPAコイル(PAC)の間で受信経路を切り替える場合を示しており、第一のPAコイルに接続される受信経路の数が「4」であり、第二のPAコイルに接続される受信経路の数が「3」である場合を示している。
図11に示すように、この場合には、MRI装置100は、本スキャンとして、第一のPAコイル14と第二のPAコイルとをエコー収集の単位ごとに切り替えながらデータを収集する。これにより、MRI装置100の記憶部83には、第一のPAコイルによって収集されたデータと第二のPAコイルによって収集されたデータとが交互に格納される。
続いて、MRI装置100は、第一のPAコイルによって収集されたデータと第二のPAコイルによって収集されたデータとを分離する。これにより、第一のPAコイルによって収集されたデータについては、4つの受信経路ごとにデータが得られる。また、第二のPAコイルによって収集されたデータについては、3つの受信経路ごとにデータが得られる。そして、MRI装置100は、第一のPAコイルによって収集されたデータからPAコイル画像を再構成し、第二のPAコイルによって収集されたデータからPAコイル画像を再構成する。
このように、本実施例に係るMRI装置100によれば、複数の受信コイルの間で受信経路を切り替えながら本スキャンを行うことが可能である。したがって、MRI装置100が有する受信経路の数が限られているような場合でも、1回のスキャン中に複数の受信コイルの間で受信経路を切り替えることによって、実際の受信経路の数よりも多い数のデータを収集することができる。例えば、図11に示した例では、MRI装置100が有する受信経路の数が「4」であったとしても、第一のPAコイルおよび第二のPAコイルに交互に受信経路を接続することによって、7つの受信経路のデータを収集することができる。
すなわち、この方法によれば、MRI装置が有する受信経路の数を擬似的に増やすことが可能になる。これにより、例えば、MRI装置が、撮像に用いるコイルエレメントの選択を受け付ける機能を有していた場合には、実際の受信経路の数よりも多い数のコイルエレメントを操作者から受け付けることができるようになる。
図12は、コイルエレメントの選択を受け付けるためのコイル選択用画面の一例を示す図である。例えば、MRI装置が有する受信経路の数が「4」であったとする。その場合、従来のMRI装置は、図12の左側に示すように、操作者は最大で4つのコイルエレメントしか受け付けることができない。しかし、本実施例に係るMRI装置100は、複数のコイルエレメントの間で受信経路を切り替えることができるので、図12の右上または右下に示すように、最大で8つのコイルエレメントを受け付けることができる。