JP5954702B2 - 植物ホルモン関連物質を処理した忌避植物と植物ウイルスを接種したおとり植物の植栽配置による微小害虫アザミウマ類制御技術 - Google Patents

植物ホルモン関連物質を処理した忌避植物と植物ウイルスを接種したおとり植物の植栽配置による微小害虫アザミウマ類制御技術 Download PDF

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Description

本発明はアザミウマ防除方法及び防除キットに関わるものである。
微小昆虫であるアザミウマは、農業において防除の難しい害虫の一種である。アザミウマ及びそれらが媒介するトスポウイルスによる被害は、同一作物の広域栽培、種苗の広域流通などが一因となり、今では全国的な規模での被害へと拡大している。アザミウマの防除には、主に農薬散布などの化学的防除技術、防虫ネット、粘着トラップ及び紫外線カットフィルムなどを用いた物理的防除技術、さらには植物ホルモン関連物質又は天敵昆虫などによる生物的防除技術が研究又は開発されてきた。
しかし、アザミウマは、植物器官内又は器官間の狭い隙間を占拠する習性を持ち、農薬が届きにくいこともあり、アザミウマの防除に卓効を示す農薬は乏しい。また、かろうじて効果を示した農薬でも複数回の使用などにより抵抗性を示す耐性虫が容易に現れてくる。さらに、環境又は生態系保護の視点から、このような毒性の高い環境高負荷型の農薬の使用量を低減していくのが時代の趨勢である。
物理的防除技術としては、温室などの栽培施設において、側窓、天窓などの開口部に防虫ネット又は粘着トラップなどの資材を用いて、アザミウマの侵入を物理的に防除する方法等がある。しかし、資材の隙間から入り込むアザミウマを防ぎきれないため、効果は限定的である。また、物理的資材の設置は、施設内の通気性低下が原因で施設内が高温・高湿となるなどの弊害も生じる。
生物的防除技術は、上記化学的防除技術及び物理的防除技術にはない特性を示す可能性があるため注目されている。例えば、特許文献1には、植物ホルモン関連物質であるジャスモン酸メチル等を有効成分とするアザミウマ防除剤、及び上記アザミウマ防除剤を植物に散布してアザミウマを防除する方法が記載されている。
なお、アザミウマの生態に関わる報告として、非特許文献1には、Capsicum annuum(トウガラシの一種)のTSWV(トマト黄化えそウイルス、トスポウイルスの一種)感染株と非感染株とを近くに植栽した場合、有意に多くのF.Occidentalis(アザミウマの一種)がウイルス感染株に集結し、より多くの幼虫がウイルス感染株に見出されることが記載されている。しかし、非特許文献1は、その産業的な応用可能性を示唆するものではない。
特開2009−256311号公報(2009年11月5日公開)
P.C.Maris,N.N.Jppsten, et. al.,Phytopathology,Vol.94,No.7,2004,p706−p711
特許文献1の方法は、原則としてアザミウマを殺虫せずに防除する。アザミウマは飛翔性がありかつ繁殖力が旺盛である。そのため、植物の栽培環境等によっては、殺虫をせずに防除しても再度飛来して、次世代を残す可能性がある。よって、一般的に、より高い防除効率を実現するための改良が、より一層求められる技術分野でもある。しかし、特許文献1には、さらなる改良の示唆等がない。
上記事情に鑑みて、本発明の目的は、優れた効果を有するアザミウマ防除方法を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、優れた効果を有するアザミウマ防除キットを提供することにある。
本願発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、植物ウイルス感染株等のサリチル酸仲介防御応答系が亢進している植物をアザミウマの防除に利用するという新規な着想を得るに至った。さらに、ジャスモン酸又はその誘導体と併用することにより極めて高いアザミウマ防除効果を実現できることを見出し本願発明に想到するに至った。
本発明に係るアザミウマ防除方法は、上記の課題を解決するために、ジャスモン酸及びその誘導体のうち少なくとも一種を有効成分とする第一の薬剤によって処理された第一の植物と、サリチル酸仲介防御応答系が亢進している第二の植物とを近接して配置することによって、上記第一の植物におけるアザミウマ虫害を防除する方法である。
本発明に係るアザミウマ防除方法において、上記サリチル酸仲介防御応答系が亢進している第二の植物は、植物ウイルスに感染した植物であることが好ましい。
本発明に係るアザミウマ防除方法において、上記植物ウイルスは、変異型弱毒化ウイルスであることがより好ましい。
本発明に係るアザミウマ防除方法において、上記第一の植物は、ジャスモン酸アルキルエステルを有効成分とする薬剤によって処理されたものであることが好ましい。
本発明に係るアザミウマ防除方法において、上記第一の植物は、ジャスモン酸メチルを有効成分とする薬剤によって処理されたものであることがより好ましい。
本発明に係るアザミウマ防除方法において、上記第二の植物は、上記第一の植物が配置された区画の外周を囲むように配置されていることがより好ましい。
本発明はまた、1)ジャスモン酸及びその誘導体のうち少なくとも一種を有効成分とする薬剤と、2)サリチル酸仲介防御応答系が亢進している第二の植物と、を含むアザミウマ防除キットを提供する。当該キットにおける第二の植物は、植物ウイルスに感染した植物であることが好ましい。本発明はまた、1)ジャスモン酸及びその誘導体のうち少なくとも一種を有効成分とする薬剤と、2)植物ウイルスに感染した植物、又は植物ウイルスの何れか一方と、を含むアザミウマ防除キットを提供する。
本発明によれば、非常に効果的にアザミウマを防除することが可能であるという効果を奏する。
本発明の実施例1、参考例1、及び比較例1〜2における植物の配置を示す図である。 本発明の実施例1、参考例1、及び比較例1〜2における、0日目〜4日目のミカンキイロアザミウマ雌成虫分散率の観察結果を示したグラフである。 本発明の実施例2における植物の配置を示す図である。 本発明の実施例2における、0日目〜4日目のミカンキイロアザミウマ雌成虫分散率の観察結果を示したグラフである。 本発明の実施例3における植物の配置を示す図である。 本発明の実施例3における、0日目〜4日目のミカンキイロアザミウマ雌成虫分散率の観察結果を示したグラフである。
〔1.アザミウマ防除方法〕
(アザミウマ防除方法の概要)
本発明に係るアザミウマ防除方法は、後述するジャスモン酸及びその誘導体のうち少なくとも一種を有効成分とする第一の薬剤によって処理された第一の植物と、サリチル酸仲介防御応答系が亢進している第二の植物とを近接して配置することにより、第一の植物におけるアザミウマ虫害を防除する方法である。本発明に係る防除方法によれば、環境低負荷型の生物学的防除技術によりアザミウマの充分な防除を可能とする。
本発明において「アザミウマ虫害の防除」とは、本発明に係るアザミウマ防除方法を適用しない場合と比較して、アザミウマの活動を抑制することを広く指す。「アザミウマ虫害の防除」には、例えば、1)第一の植物へのアザミウマの飛来を抑制する(予防)、2)アザミウマが第一の植物にとどまることを抑制する、3)第一の植物でのアザミウマの産卵行動を抑制する、4)アザミウマによる第一の植物への食害を抑制する、5)第一の植物において、アザミウマが媒介するウイルス感染を抑制する、6)第一の植物における幼虫の成育を抑制する、等の少なくとも1つが含まれるが、特にこれらに限定されない。
なお、上記2)を指標に「アザミウマ虫害の防除」の程度を評価する場合、本発明の適用により、第一の植物にとどまり続けるアザミウマの割合が10%以下となることが好ましく、5%以下となることがより好ましく、3%以下となることが特に好ましい。
(アザミウマの例示)
本発明における防除の対象となるアザミウマの具体例としては、アザミウマ科のアザミウマ、例えば、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、グラジオラスアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、及びクダアザミウマ科のアザミウマが挙げられる。
(第一の薬剤の有効成分:ジャスモン酸及びその誘導体)
本発明における第一の薬剤の有効成分は、ジャスモン酸及びその誘導体のうち少なくとも一種である。ジャスモン酸の誘導体としては、ジヒドロジャスモン酸、ジャスモン酸又はジヒドロジャスモン酸のエステル、ジャスモン酸又はジヒドロジャスモン酸のアミド、及びジャスモン酸又はジヒドロジャスモン酸の塩が挙げられる。ジャスモン酸及びジヒドロジャスモン酸並びにそれらのエステルは、下記式(1)で表されるものである。また、ジャスモン酸又はジヒドロジャスモン酸のアミドは、下記式(2)で表されるものである。
Figure 0005954702
式中、Rはペンチル基又は2−ペンテニル基を示し、Rは水素原子又はアルキル基を示し、アルキル基の中で好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等の炭素数1〜10のアルキル基である。
Figure 0005954702
式中、Rはペンチル基又は2−ペンテニル基を示し、R及びRは、それぞれ水素原子又はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル等の炭素数1〜5のアルキル基を示す。
これらのうち特に好ましい成分は、Rがペンチル基又は2−ペンテニル基、Rが水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基である式(1)で表される化合物である。
(第一の薬剤による処理対象:第一の植物)
本発明における第一の薬剤の散布対象植物(第一の植物)は、アザミウマによる被害を受ける植物であり、代表的な植物としては、ウリ科(例えば、キュウリ、メロン、スイカ、カボチャ、シロウリ、マクワウリ、ヘチマ、ニガウリ)、ナス科(例えば、トマト、ナス、ピーマン、パプリカ、トウガラシ、ペチュニア、テリミノイヌホオズキ、ジャガイモ)、マメ科(例えば、インゲン、ソラマメ、アズキ、ダイズ、ササゲ、エンドウ)、キク科(例えば、マリーゴールド、ゴボウ、シュンギク、レタス、キク、ガーベラ、シネラリア)、アブラナ科(例えば、ハクサイ、キャベツ、ダイコン、カブ、コマツナ、ブロッコリー、チンゲンサイ、ストック)、アオイ科(例えば、オクラ、ワタ)、セリ科(例えば、セロリ、ニンジン、パセリ)、ゴマ科(例えば、ゴマ)、ユリ科(例えば、タマネギ、ニラ、アスパラガス、ネギ)、ナデシコ科(例えば、カスミソウ、カーネーション)、ミカン科(例えば、ミカン)、バラ科(例えば、バラ、イチゴ、リンゴ、ナシ、洋ナシ、モモ、ネクタリン)、ブドウ科(例えば、ブドウ)、シソ科(例えば、シソ)、アカザ科(例えば、ホウレンソウ)、リンドウ科(例えば、トルコギキョウ)、スミレ科(例えば、パンジー)、サクラソウ科(例えば、シクラメン)、キンポウゲ科(例えば、クレマチス)、トウダイグサ科(例えば、ポインセチア)等に属する植物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(第一の薬剤:有効成分以外の構成等)
本発明における第一の薬剤は上記有効成分のみを含有するものでもよいが、さらに助剤を含んでいてもよく、例えば、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンモノアリールエーテル等のポリオキシアルキレン系ノニオン界面活性剤を含む助剤を併用してもよい。
助剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(5)モノドデシルエーテル、ジグリセリンモノオレート:(ポリオキシエチレンフェニルエーテル+ドデシルベンゼンスルフォネート):ダイズ油(1:1:1)等が挙げられる。
これらの助剤の含有量は、有効成分100質量部に対して好ましくは5〜70質量部、さらに好ましくは20〜50質量部である。
本発明における第一の薬剤には、さらに、一般的な界面活性剤、タルク等の助剤を添加し、製剤化してもよい。本発明における第一の薬剤の剤型は特に限定されず、例えば、水和剤、乳剤、粉剤、フロアブル等が挙げられる。本発明における第一の薬剤にはさらに忌避剤、他の殺虫剤、殺菌剤、植物生長調整剤等を併用してもよい。
さらに製剤化のための界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤だけでなく、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等、通常の製剤に使用される一般的な界面活性剤を使用しても良い。
(第一の薬剤による処理)
本発明における第一の薬剤は、有効成分であるジャスモン酸及びジャスモン酸誘導体(或いは、有効成分)の濃度が好ましくは10〜500ppm、さらに好ましくは20〜200ppm程度となるように水等で希釈し、有効成分を5〜100g/10a(アール)、さらに好ましくは10〜50g/10a(アール)の単位面積当り散布量で植物に散布することが望ましい。
本発明における第一の薬剤の散布時期はアザミウマの飛来前が好ましいが、アザミウマの飛来を確認した後に散布しても有効である。第一の薬剤による処理を受けることで、第一の植物はアザミウマにとって忌避植物となる。
(第二の植物)
本発明における第二の植物の種類は特に限定されず、上記第一の植物と同一種の植物であっても、異なる種の植物であってもよい。第二の植物の役割の一つは、第一の植物に代わりアザミウマを集めるおとり植物としての役割である。
第二の植物は、サリチル酸仲介防御応答系が亢進している。すなわち、第二の植物は、所定の処理を受けることで、無処理の状態と比較してサリチル酸仲介防御応答系が亢進している。又は、第二の植物は、サリチル酸仲介防御応答系が亢進する遺伝子変異を有する。植物は、抗体に代表される適応性の免疫機能を備えていなく、一般に「植物免疫」と総称される防御応答システムを発達させてきている。植物免疫には、少なくとも二種類の生化学的防御応答システムが含まれている。一つの防御応答システムは「サリチル酸(SA)」をシグナル分子として仲介されるものであり、例えば病原体の侵入等により誘発される。本明細書中では「サリチル酸仲介防御応答系」と称する。病原体が植物に進入したとき、感染した細胞から感染した信号としてサリチル酸が産生され、他の感染していない細胞に病原菌の存在を知らせ、酸性PR蛋白質と呼ばれる抗病原体タンパク質を誘導する。もう一つの防御応答システムは「ジャスモン酸(JA)」をシグナル分子として仲介されるものであり、昆虫の摂食などの機械的な損傷等により誘発される。
(第二の植物に対する処理)
第二の植物のサリチル酸仲介防御応答系を亢進させる上記所定の処理は、特に限定されないが、例えば、植物体においてサリチル酸経路に関わる因子を過剰発現させる遺伝子組換え処理(遺伝子組換え植物を作成する)、BTH(ベンゾチアジアゾール)等のサリチル酸仲介防御応答系亢進候補薬剤処理、植物ウイルスの接種、等から選択される少なくとも一種が挙げられる。
(植物ウイルスの接種)
以下、上記所定の処理としての植物ウイルス接種についてより具体的に説明する。ここで使用可能な植物ウイルスの種類は、第二の植物への感染能を有すれば特に限定されず、第二の植物の種類等に応じて決定すればよい。植物ウイルスとして、特に限定されないが、例えば、タバコモザイクウイルス(TMV)、トマトモザイクウイルス(ToMV)、キュウリ緑斑モザイクウイルス(CGMMV)、トウガラシマイルドモットルウイルス(PMMoV)等のトバモウイルス属に属する植物ウイルス;トマト黄化えそウイルス(TSWV)、インパチェンスネクロティックスポットウイルス(INSV)、アイリスイエロースポットウイルス(IYSV)、キク茎えそウイルス(CSNV)、ピーマン退緑斑紋ウイルス(CaCV)、メロン黄化えそウイルス(MYSV)、スイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV)等のトスポウイルス属に属する植物ウイルス;キュウリモザイクウイルス等のククモウイルス属に属する植物ウイルス;等が挙げられる。アザミウマにより専ら媒介され、アザミウマ・ウイルス間の共生関係がアザミウマ防除効果を強める可能性があるという観点では、トスポウイルス属に属する植物ウイルスから選択されることが好ましい場合がある。また、トスポウイルス属に属する植物ウイルスは、汁液中での安定性は低く、短時間で感染性を失う。よって、圃場等における一般的農作業等を通じた、第二の植物から第一の植物へのトスポウイルス感染の虞は特に少ない。
また、上記植物ウイルスは、野生型ウイルスであってもよいが、第二の植物をより長期間維持する観点では、変異型弱毒化ウイルスであることがより好ましい場合がある。変異型弱毒化ウイルスを用いる場合、仮に、第一の植物へ当該弱毒化ウイルスが感染したとしても実質的に被害を受けない利点もある。なお、変異型弱毒化ウイルスとは、野生型ウイルスと比較して、そのビルレンスが低下した変異型ウイルスを広く指す。ウイルスの感染能の低下、及びウイルスの増殖能の低下も、ウイルスのビルレンスが低下した一例である。
変異型弱毒化ウイルスは、既に確立されたものを用いてもよい。例えば、トバモウイルス属に属する植物ウイルスの弱毒化ウイルスとして、トウガラシマイルドモットルウイルス、トマトモザイクウイルス、等(参考文献:Hagiwara et al. A single amino acid substitution in 126−kDa protein of Pepper mild mottle virus associates with symptom attenuation in pepper; the complete nucleotide sequence of an attenuated strain,C−1421 Arch Virol (2002) 147:833−840)が挙げられる。トスポウイルス属に属する植物ウイルスの弱毒化ウイルスとして、トマト黄化えそウイルス、等が挙げられる。また、植物ウイルスを異種宿主で継代培養する手法等を通じて弱毒化ウイルスを新たに作成してもよい。或いは、植物ウイルスの遺伝子におけるビルレンス関連領域特異的に、置換、付加、欠失等の遺伝子変異を人為的に導入することで、弱毒化ウイルスを新たに作成してもよい。
植物ウイルスを第二の植物に接種する方法は、特に限定されないが、例えば、機械的な接種、又はウイルス媒介生物を用いた接種、等が挙げられる。接種の確実性、及び操作の容易性の観点では、機械的な接種がより好ましい。機械的な接種の一例では、接種対象となる第二の植物の葉を機械的に傷つけて、そこに植物ウイルスを含む液体を接種する。より具体的な一例では、必要に応じてカーボランダム等の研磨剤を第二の植物の葉に供し、次いで植物ウイルスを含む液体を吸収させた脱脂綿等で葉を軽くこする。なお、植物ウイルスを含む液体は、当該植物ウイルスが感染した植物の葉を、リン酸緩衝液中で磨砕する等の方法で容易に作成可能である。
第二の植物において、植物ウイルスを接種する生育ステージは特に限定されないが、感染性の観点からは、本葉の展開数が5枚以下の幼苗期が好ましい場合もある。
(アザミウマ防除のための処理環境、処理条件、及び処理順序等)
第一の植物と第二の植物とは、アザミウマが両植物を比較して選択することが可能な程度の距離で近接して配置される。第一の植物と第二の植物との距離は特に限定されないが、例えば300cm以下、好ましくは200cm以下、より好ましくは150cm以下、さらに好ましくは100cm以下、特に好ましくは50cm以下である。第一の植物及び第二の植物は何れも、植木鉢、プランター等の栽培容器内に植えられて栽培容器ごと移動可能な形態であってもよく、又は、圃場等に直接植えつけられて栽培環境から移動不能な形態のものであってもよい。特に第二の植物に関して、第一の植物との配置関係を調整可能とし、かつ使用後の処分等が容易なように、栽培容器ごと移動可能な形態が好ましい場合がある。
また、アザミウマの防除効率に優れるという観点では、第一の植物に対する第二の植物の配置数をより多くすることが好ましい場合がある。
また、アザミウマの防除効率に優れるという観点では、上記第二の植物は、上記第一の植物が配置された区画の外周を囲むように配置されていることがより好ましい場合がある。ここで、「区画の外周を囲む」とは、当該区画の外周の一部を囲む場合も、外周の全部を囲む場合も含む概念である。
なお、本発明では、第一の植物において第一の薬剤による処理の効果が現れているタイミングで、第二の植物のサリチル酸仲介防御応答系が亢進していればよい。例えば、第一の植物及び第二の植物が栽培環境から移動不能な形態で植えつけられている場合、第一の植物を第一の薬剤で処理するタイミングと、第二の植物に植物ウイルス接種処理をするタイミングとは同時であっても前後していてもよい。但し、第二の植物に植物ウイルス接種処理をして所定の期間をおいた後(全身感染株かそれに近い状態とする)に、第一の植物を第一の薬剤で処理することがより好ましい。一方、サリチル酸仲介防御応答系が亢進している第二の植物が栽培容器ごと移動可能な形態の場合は、例えば、第一の植物を第一の薬剤で処理すると同時又はその直後に、第二の植物を第一の植物に近接して配置する。
本発明に係るアザミウマ防除方法は、屋外圃場等の開放環境で行ってもよく、温室等の閉鎖環境で行ってもよい。また、必要に応じて、第二の植物に集結したアザミウマを捕虫又は殺虫する方法を組合せて用いてもよい。特に、本発明に係る方法を閉鎖環境で行う場合は、第二の植物に集結したアザミウマを捕虫又は殺虫する方法を組合せることが好ましい場合がある。ここで、アザミウマを捕虫又は殺虫する方法は特に限定されないが、捕虫テープや捕虫網等の捕虫トラップの使用、又は、アザミウマ用の農薬の使用等が挙げられる。
〔2.アザミウマ防除キット〕
(キットの概要:必須構成)
本発明に係るアザミウマ防除キットは、1)ジャスモン酸及びその誘導体のうち少なくとも一種を有効成分とする薬剤と、2)植物ウイルスに感染した植物、又は植物ウイルスの何れか一方と、を含む。
上記アザミウマ防除用キットは、上記〔1.アザミウマ防除方法〕の欄で説明した用途に用いられる。すなわち、上記1)の薬剤は、第一の植物を処理する第一の薬剤に相当する。上記2)の植物ウイルスは、第二の植物のサリチル酸仲介防御応答系を亢進させる処理に用いられる。上記2)の植物ウイルスに感染した植物は、第二の植物に相当する。
(その他の構成)
アザミウマ防除キットは、必要に応じて、上記1)の薬剤を用いて上記第一の植物に対して処理を施すための器具(例えば、噴霧器)と、上記2)の植物ウイルスを用いて上記第二の植物に対して処理を施すための器具(例えば、研磨剤、脱脂綿、脱脂綿付の棒)とを備えていてもよい。また、上記〔1.アザミウマ防除方法〕の欄で説明した用途を記載した、取扱説明書が付されていてもよい。
(農薬)
上記アザミウマ防除キットは、1)ジャスモン酸及びその誘導体のうち少なくとも一種を有効成分とする薬剤と、2)植物ウイルス(変異型弱毒化ウイルスが好ましい)とを含む、アザミウマ防除用の農薬であってもよい。
以下、実施例及び比較例により、本発明をより詳細に説明する。
〔実施例1〕
図1(a)に示すとおり、温室1の中央部2にジャスモン酸処置株11を4株、株間の距離が50cmとなるように配置した。また、温室1の外周部3にトスポウイルス接種株10を4株、ジャスモン酸処置株11と、それと最も接近しているトスポウイルス接種株10との距離が50cmとなるように配置した。次いで、温室1の中央部2に配置した4株のジャスモン酸処置株11に、それぞれ20頭、計80頭のミカンキイロアザミウマ雌成虫を放飼し、試験を開始した。
ジャスモン酸処置株11は、チョウセンアサガオ(Datura stramonium)であり、試験開始の2日前に、100μMのジャスモン酸メチル水溶液を鉢受け皿に入れ、根から吸収させた。
トスポウイルス接種株10は、チョウセンアサガオ(Datura stramonium)であり、試験開始の10日前に、その第3・第4本葉2枚に野生型のトスポウイルス(学名Tomato spotted wilt virus)を接種した。接種法は、植物葉への一般的な擦りつけ接種(機械接種)を採用した。トスポウイルス接種株10は、試験開始時には、トスポウイルスの全身感染株となっていた。
試験の開始時点におけるジャスモン酸処置株11及びトスポウイルス接種株10の凡その生育ステージは第7本葉の展開ステージであった。また、ミカンキイロアザミウマ雌成虫を放飼した期間は、2010年6月11日〜2010年6月20日であり、この期間中の温室1内の温度条件は凡そ18.3℃〜38.9℃に保たれていた。
試験開始後、第0日目、1日目、2日目、3日目、4日目における、ミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率は、図2(a)のとおりである。
また、試験開始後第4日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率「アザミウマ雌成虫分散率(4日目)」を表1に示す。
また、試験開始後第9日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマの幼虫数「幼虫数比率(9日目)」を表1に示す。
また、試験開始後第9日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在する、ミカンキイロアザミウマによる食害痕数比率「食害痕数比率(9日目)」を表1に示す。
〔参考例1:無処理株の組合せ〕
図1(b)に示すとおり、温室1の中央部2に無処理株12を4株、株間の距離が50cmとなるように配置した。温室1の外周部3に無処理株12を4株、中央部2の無処理株12と、それと最も接近している外周部3の無処理株12との距離が50cmとなるように配置した。次いで、温室1の中央部2に配置した4株の無処理株12に、それぞれ20頭、計80頭のミカンキイロアザミウマ雌成虫を放飼し、試験を開始した。
無処置株12は、チョウセンアサガオ(Datura stramonium)であり、ジャスモン酸メチルによる処理、及びトスポウイルスによる処理を含めて一切の処理がなされていない。また、試験の開始時点における無処理株12の生育ステージ、ミカンキイロアザミウマ雌成虫の放飼期間、及び温室1内の温度条件は、実施例1と同じである。
試験開始後、第0日目、1日目、2日目、3日目、4日目における、ミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率は、図2(b)のとおりである。
また、試験開始後第4日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率を表1に示す。
また、試験開始後第9日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマの幼虫数を表1に示す。
また、試験開始後第9日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在する、ミカンキイロアザミウマによる食害痕数比率を表1に示す。
〔比較例1:無処理株/ウイルス接種株の組合せ〕
図1(c)に示すとおり、温室1の中央部2に無処理株12(参考例1と同じ)を4株、株間の距離が50cmとなるように配置した。温室1の外周部3にトスポウイルス接種株10(実施例1と同じ)を4株、無処理株12と、それと最も接近しているトスポウイルス接種株10との距離が50cmとなるように配置した。次いで、温室1の中央部2に配置した4株の無処理株12に、それぞれ20頭、計80頭のミカンキイロアザミウマ雌成虫を放飼し、試験を開始した。試験の開始時点における無処理株12及びトスポウイルス接種株10の生育ステージ、ミカンキイロアザミウマ雌成虫の放飼期間、及び温室1内の温度条件は、実施例1と同じである。
試験開始後、第0日目、1日目、2日目、3日目、4日目における、ミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率は、図2(c)のとおりである。
また、試験開始後第4日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率を表1に示す。
また、試験開始後第9日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマの幼虫数を表1に示す。
また、試験開始後第9日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在する、ミカンキイロアザミウマによる食害痕数比率を表1に示す。
〔比較例2:ジャスモン酸処置株/無処理株の組合せ〕
図1(d)に示すとおり、温室1の中央部2にジャスモン酸処置株11(実施例1と同じ)を4株、株間の距離が50cmとなるように配置した。温室1の外周部3に無処理株12(参考例1と同じ)を4株、ジャスモン酸処置株11と、それと最も接近している無処理株12との距離が50cmとなるように配置した。次いで、温室1の中央部2に配置した4株のジャスモン酸処置株11に、それぞれ20頭、計80頭のミカンキイロアザミウマ雌成虫を放飼し、試験を開始した。試験の開始時点における無処理株12及びトスポウイルス接種株10の生育ステージ、ミカンキイロアザミウマ雌成虫の放飼期間、及び温室1内の温度条件は、実施例1と同じである。
試験開始後、第0日目、1日目、2日目、3日目、4日目における、ミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率は図2(d)のとおりである。
また、試験開始後第4日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率を表1に示す。
また、試験開始後第9日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマの幼虫数を表1に示す。
また、試験開始後第9日目における、中央部2及び外周部3のそれぞれに存在する、ミカンキイロアザミウマによる食害痕数比率を表1に示す。
Figure 0005954702
表1に示す、「アザミウマ雌成虫分散率(4日目)」、「幼虫数比率(9日目)」、及び「食害痕数比率(9日目)」は何れも、中央部2に位置する4株の植物での合計値(合計虫数又は合計食害痕数)と、外周部3に位置する4株の植物での合計値(合計虫数又は合計食害痕数)との比を百分率で表したものである。また、表1で、外周部3のミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率(%)に上付きされているアルファベットは、異なるアルファベット間には有意差(p<0.05)が有ることを示す。
<1.ミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率>
図2及び表1に示すように、参考例1では、試験開始4日目になると、中央部2の植物と外周部3の植物との間で実質的な相違が見られなかった。
比較例1及び比較例2では何れも、放飼直後からミカンキイロアザミウマ雌成虫は中央部2から外周部3に飛散しはじめ、試験開始後3〜4日経過した時点で分散率が安定化した。しかし、試験開始4日目の時点で、依然、相当な割合のミカンキイロアザミウマ雌成虫が中央部2にとどまっていることがわかった。
一方、実施例1では、試験開始4日目で、ほぼ全てのミカンキイロアザミウマ雌成虫は中央部2から飛び去り、外周部3に移動していることがわかった。よって、実施例1では非常に効果的に、アザミウマからジャスモン酸処置株11を防除したことが明らかとなった。
アザミウマは繁殖力が非常に強いため、出来うる限り早期に次世代以降を維持可能な個体数以下に成虫数を抑制しなければ防除が難しい場合がある。アザミウマが産卵から羽化するまでは一般的に10日〜2週間程度を要するとされる。実施例1の結果は、極めて早期にほぼ全てのミカンキイロアザミウマ雌成虫を防除できているため、生物学的防除技術のみでもアザミウマの防除が可能なことを示す。
<2.ミカンキイロアザミウマ幼虫数比率>
表1に示すように、参考例1では、中央部2の植物と外周部3の植物との間で実質的な相違が見られなかった。
比較例1及び比較例2では何れも、ミカンキイロアザミウマ幼虫数は中央部2よりも外周部3の方が多かったが、依然、相当な割合のミカンキイロアザミウマ幼虫が中央部2に見られた。
一方、実施例1では、試験開始9日目には、ごく少ない割合のミカンキイロアザミウマ幼虫が中央部2の植物に見られるのみであった。よって、実施例1の結果は効果的に、アザミウマの幼虫数を減らすことができ、次世代以降のアザミウマの繁殖を抑えることにより、アザミウマによる虫害を低減できることを示す。したがって、より長期間で見れば、本実施例の防除効果と比較例の防除効果との差はより顕著になると想定される。
<3.食害痕数比率>
表1に示すように、参考例1では、中央部2の植物と外周部3の植物との間で実質的な相違が見られなかった。また、比較例1及び比較例2では何れも、食害痕数は中央部2よりも外周部3の方が多かったが、依然中央部2の植物にも多くの食害痕があった。
一方、実施例1では、試験開始9日目で、中央部2に位置する植物に見られる食害痕数の割合はかなり少なかった。
〔実施例2〕
次いで、ジャスモン酸処置株11とトスポウイルス接種株10との配置距離が与える影響について調べた。
図3に示すとおり、温室1の片側にジャスモン酸処置株11を4株、株間の距離が50cmとなるように一列に配置した(JA処理区4)。その列に平行でかつ各ジャスモン酸処置株11と対称な位置にトスポウイルス接種株10を4株、株間の距離が50cmとなるように一列に配置した(TSWV処理区5)。このとき、ジャスモン酸処置株11とトスポウイルス接種株10との距離が(a)50cm、(b)100cm、(c)200cm、又は(d)300cmとなるように配置した。次いで、温室1に配置した4株のジャスモン酸処置株11に、それぞれ20頭、計80頭のミカンキイロアザミウマ雌成虫を放飼し、試験を開始した。
ジャスモン酸処置株11は実施例1と同様の手順で準備した。トスポウイルス接種株10は、実施例1と同種であり、試験開始の8日前に、その第3・第4本葉2枚に野生型のトスポウイルス(学名Tomato spotted wilt virus)を接種した。接種法は、実施例1と同様である。
試験の開始時点におけるジャスモン酸処置株11及びトスポウイルス接種株10の凡その生育ステージは第7本葉の展開ステージであった。また、ミカンキイロアザミウマ雌成虫を放飼した期間は、2011年5月21日〜2011年5月30日であり、この期間中の温室1内の温度条件は凡そ9.8℃〜37.1℃に保たれていた。
試験開始後、第0日目、1日目、2日目、3日目、4日目における、ミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率は、図4のとおりである。
また、試験開始後第4日目における、JA処理区4及びTSWV処理区5のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率「アザミウマ雌成虫分散率(4日目)」を表2に示す。
また、試験開始後第9日目における、JA処理区4及びTSWV処理区5のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマの幼虫数「幼虫数比率(9日目)」を表2に示す。
また、試験開始後第9日目における、JA処理区4及びTSWV処理区5のそれぞれに存在する、ミカンキイロアザミウマによる食害痕数比率「食害痕数比率(9日目)」を表2に示す。
Figure 0005954702
表2に示す、「アザミウマ雌成虫分散率(4日目)」、「幼虫数比率(9日目)」、及び「食害痕数比率(9日目)」は何れも、JA処理区4に位置する4株の植物での合計値(合計虫数又は合計食害痕数)と、TSWV処理区5に位置する4株の植物での合計値(合計虫数又は合計食害痕数)との比を百分率で表したものである。また、表2で、TSWV処理区5のミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率、幼虫数比率、及び食害痕数比率に上付きされているアルファベットは、異なるアルファベット間には有意差(p<0.01)が有ることを示す。
<1.ミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率>
図4及び表2に示すように、a〜dは何れも、放飼直後からミカンキイロアザミウマ雌成虫はJA処理区4からTSWV処理区5に飛散しはじめた。JA処理区4の植物とTSWV処理区5の植物との距離が近いほど、TSWV処理区5におけるミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率が高くなった。特にa(50cm間隔)では、アザミウマの移動が顕著であった。
<2.ミカンキイロアザミウマ幼虫数比率>
表2に示すように、JA処理区4とTSWV処理区5との距離が近いほど、JA処理区4の植物に見られるミカンキイロアザミウマ幼虫の割合低下が顕著になる傾向が見られた。
<3.食害痕数比率>
表2に示すように、JA処理区4とTSWV処理区5との距離が近いほど、JA処理区4の植物に見られる食害痕数の割合低下が顕著になる傾向が見られた。
〔実施例3〕
次いで、ジャスモン酸処置株11に対するトスポウイルス接種株10の配置数が与える影響について調べた。
図5に示すとおり、温室1の片側にジャスモン酸処置株11を4株、株間の距離が50cmとなるように一列に配置した(JA処理区4)。また、JA処理区4に対面し、かつJA処理区4からの距離が50cmとなるようにトスポウイルス接種株10を配置した(TSWV処理区5)。このとき、配置したトスポウイルス接種株10の数は、(a)4株、(b)3株、(c)2株、又は(d)1株とし、複数のトスポウイルス接種株10を配置する場合は、ジャスモン酸処置株11の列に平行でかつ株間の距離が50cmとなるように一列に配置した。次いで、温室1に配置した4株のジャスモン酸処置株11に、それぞれ20頭、計80頭のミカンキイロアザミウマ雌成虫を放飼し、試験を開始した。
ジャスモン酸処置株11及びトスポウイルス接種株10は、実施例2と同様の方法で準備した。
試験の開始時点におけるジャスモン酸処置株11及びトスポウイルス接種株10の凡その生育ステージは第7本葉の展開ステージであった。また、ミカンキイロアザミウマ雌成虫を放飼した期間は、2011年6月20日〜2011年6月29日であり、この期間中の温室1内の温度条件は凡そ18.0℃〜39.4℃に保たれていた。
試験開始後、第0日目、1日目、2日目、3日目、4日目における、ミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率は、図6のとおりである。
また、試験開始後第4日目における、JA処理区4及びTSWV処理区5のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率「アザミウマ雌成虫分散率(4日目)」を表3に示す。
また、試験開始後第9日目における、JA処理区4及びTSWV処理区5のそれぞれに存在するミカンキイロアザミウマの幼虫数「幼虫数比率(9日目)」を表3に示す。
また、試験開始後第9日目における、JA処理区4及びTSWV処理区5のそれぞれに存在する、ミカンキイロアザミウマによる食害痕数比率「食害痕数比率(9日目)」を表3に示す。
Figure 0005954702
表3に示す、「アザミウマ雌成虫分散率(4日目)」、「幼虫数比率(9日目)」、及び「食害痕数比率(9日目)」は何れも、JA処理区4に位置する4株の植物での合計値(合計虫数又は合計食害痕数)と、TSWV処理区5に位置する植物(1〜4株)での合計値(合計虫数又は合計食害痕数)との比を百分率で表したものである。また、表3で、TSWV処理区5の食害痕数比率に上付きされているアルファベットは、異なるアルファベット間には有意差(p<0.01)が有ることを示す。
<1.ミカンキイロアザミウマ雌成虫の分散率>
図6及び表3に示すように、a〜dは何れも、放飼直後からミカンキイロアザミウマ雌成虫はJA処理区4からTSWV処理区5に飛散しはじめた。特にa(トスポウイルス接種株10:ジャスモン酸処置株11=4:4配置)、b(3:4配置)、c(2:4配置)では、何れもアザミウマの移動が顕著であった。また、d(1:4配置)でも、比較的高い割合でアザミウマの移動があった。
<2.ミカンキイロアザミウマ幼虫数比率>
表3に示すように、特にa〜cでは、試験開始9日目には、非常に少ない割合のミカンキイロアザミウマ幼虫がJA処理区4の植物に見られるのみであった。またdでも、やはり少ない割合のミカンキイロアザミウマ幼虫がJA処理区4の植物に見られるのみであった。
<3.食害痕数比率>
表3に示すように、特にa〜cでは、試験開始9日目で、JA処理区4の植物に見られる食害痕数の割合は非常に少なかった。またdでも、やはりJA処理区4の植物に見られる食害痕数の割合は少なかった。
本発明は、アザミウマ類の防除に好適に利用することができる。
1 ・・・温室
2 ・・・中央部
3 ・・・外周部
4 ・・・JA処理区
5 ・・・TSWV処理区
10 ・・・トスポウイルス接種株
11 ・・・ジャスモン酸処置株
12 ・・・無処理株

Claims (7)

  1. ジャスモン酸及びその誘導体のうち少なくとも一種を有効成分とする第一の薬剤によって処理された第一の植物と、
    サリチル酸仲介防御応答系が亢進している第二の植物とを近接して配置することによって、
    上記第一の植物におけるアザミウマ虫害を防除することを特徴とする、アザミウマ防除方法。
  2. 上記サリチル酸仲介防御応答系が亢進している第二の植物は、植物ウイルスに感染した植物であることを特徴とする、請求項1に記載のアザミウマ防除方法。
  3. 上記植物ウイルスは、変異型弱毒化ウイルスであることを特徴とする請求項2に記載のアザミウマ防除方法。
  4. 上記第一の植物は、ジャスモン酸アルキルエステルを有効成分とする薬剤によって処理されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアザミウマ防除方法。
  5. 上記第一の植物は、ジャスモン酸メチルを有効成分とする薬剤によって処理されたものであることを特徴とする請求項4に記載のアザミウマ防除方法。
  6. 上記第二の植物は、上記第一の植物が配置された区画の外周を囲むように配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のアザミウマ防除方法。
  7. アザミウマ防除キットであって、
    1)ジャスモン酸及びその誘導体のうち少なくとも一種を有効成分とする薬剤と、
    2)植物ウイルスに感染した植物、又は植物ウイルスの何れか一方と、を含むことを特徴とするアザミウマ防除キット。
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