JP5952683B2 - 内燃機関用チタンバルブの製造方法 - Google Patents
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本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、内燃機関用チタンバルブにおいて、溶体化処理の際に形成される酸化スケールの厚さを小さくし、且つ、酸化スケールの厚さを容易に管理できるようにし、生産性を向上することを目的とする。
この構成によれば、内燃機関用チタンバルブは、Al:6.5〜7.5%、Mo:1.5〜2.5%、Si:0.16〜0.24、Nb:0.2〜0.3%、C:0.08〜0.15%、O:0.09%以下を含有し、残部がTi及び不可避不純物からなり、真空度の下限が1.3×10−2Paに真空炉内で溶体化処理が行われ、Nbの添加によってチタン合金の耐酸化性が向上するとともに、チタン合金の酸化量が真空中での溶体化処理によって低い量に制限されるため、酸化スケールの厚さを小さく、且つ、所定の厚さに管理できる。このため、酸化スケールを除去する際の加工量を低減できるとともに、除去する際の取り代の管理が容易になり、内燃機関用チタンバルブの生産性が向上する。
また、C及びOの添加によって、β変態点が上昇し、より高温で熱間加工できるため、熱間加工性が向上する。また、β変態点の上昇によって溶体化処理の温度が上昇するが、Nbの添加及び真空炉での処理によって、溶体化処理中の酸化スケールの生成を低減できるため、熱間加工性を向上し、且つ、酸化スケールの厚さも低減できる。また、Cの含有量の上限が0.15%であるため、β変態点が上がり過ぎることがなく、溶体化処理の温度が高くなり過ぎないため、酸化スケールの厚さを低減できる。また、Oを0.09%以下含有するため、β変態点が上がり過ぎることがなく、溶体化処理の温度が高くなり過ぎないため、酸化スケールの厚さを低減できる。
また、真空度は、溶体化処理の間に高く保たれ、溶体化処理の前後の真空度は、溶体化処理の間の真空度よりも低く保たれるため、真空引きに要する時間を短縮できるとともに、真空度が低い段階から加熱を開始でき、生産性を向上できる。
この場合、O及びCの添加によって、β変態点が上昇し、より高温で熱間加工できるため、熱間加工性が向上する。また、Oを0.09%以下含有するため、β変態点が上がり過ぎることがなく、溶体化処理の温度が高くなり過ぎないため、酸化スケールの厚さを低減できる。
また、前記溶体化処理の温度は、β変態点よりも30℃高い温度である構成としても良い。
この場合、溶体化処理の温度は、β変態点よりも30℃高い温度であるため、添加元素を確実に固溶させることができる。また、溶体化処理の温度が高すぎないため、酸化スケールの厚さを低減できる。
この場合、Nbの添加及び真空炉での溶体化処理によって、酸化スケール層の厚さが低減されるとともに一定化されるため、削り加工が容易になり、生産性が向上する。
また、C及びOの添加によって、β変態点が上昇し、より高温で熱間加工できるため、熱間加工性が向上する。また、β変態点の上昇によって溶体化処理の温度が上昇するが、Nbの添加及び真空炉での処理によって、溶体化処理中の酸化スケールの生成を低減できるため、熱間加工性を向上し、且つ、酸化スケールの厚さも低減できる。また、Cの含有量の上限が0.15%であるため、β変態点が上がり過ぎることがなく、溶体化処理の温度が高くなり過ぎないため、酸化スケールの厚さを低減できる。
さらに、O及びCの添加によって、β変態点が上昇し、より高温で熱間加工できるため、熱間加工性が向上する。また、Oを0.09%以下含有するため、β変態点が上がり過ぎることがなく、溶体化処理の温度が高くなり過ぎないため、酸化スケールの厚さを低減できる。
また、溶体化処理の温度は、β変態点よりも30℃高い温度であるため、添加元素を確実に固溶させることができる。また、溶体化処理の温度が高すぎないため、酸化スケールの厚さを低減できる。
さらに、Nbの添加及び真空炉での溶体化処理によって、酸化スケール層の厚さが低減されるとともに一定化されるため、削り加工が容易になり、生産性が向上する。
本実施の形態に係る内燃機関用チタンバルブ1は、化学成分重量比が、AL(アルミニウム):6.5〜7.5%、Mo(モリブデン):1.5〜2.5%、Si(珪素):0.16〜0.24%、Nb(ニオブ):0.2〜0.3%、C(炭素):0.08〜0.15%、及び、O(酸素):0.09%以下を含有し、残部がTi(チタン)及び不可避不純物からなるNear−α型のチタン合金である。
図1に示すように、内燃機関用チタンバルブ1は、内燃機関のバルブガイド(不図示)の内周面に接する軸部2と、軸部2の一端に設けられ、内燃機関のバルブシート(不図示)に当接する傘部3とを一体に有している。軸部2の他端には、環状のコッタ溝4が形成されている。内燃機関用チタンバルブ1は、排気バルブ及び吸気バルブの両方に使用可能である。
内燃機関用チタンバルブ1は、棒材形成工程S1によって上記組成の棒材から切り出されたロッドを、熱間加工工程S2によって熱間で鍛造(スエージング加工)することでエンジンバルブ形状に粗成形される。熱間加工工程S2は、熱間加工性の良い等軸結晶粒の組織を得るために、β変態点(例えば、1100℃)未満のα−β域で行われる。次に、粗成形品は、溶体化処理工程S3において、酸素分圧が制限された真空炉内で溶体化処理された後、焼鈍工程S4でそのまま炉冷により焼鈍され、その後、仕上げ加工工程S5で、機械加工や研削加工によって表面の酸化スケール層が取り除かれ、所定のバルブ形状に仕上げられる。仕上げ加工工程S5の後、内燃機関用チタンバルブ1は、酸化拡散処理工程S6によって、大気中で熱処理される。
ALは、Tiのα相に対する固溶強化能が高い元素であり、添加量を増やすと耐クリープ性及び0.2%耐力が増加し、耐熱強度を確保できる。エンジン用のバルブとして十分な耐熱強度を得るためには、6.5%以上の添加が必要である。
AL量が多すぎると脆性的な金属間化合物であるTi3AL(α2相)が生成されて高温時の靭性が低下するため、エンジン用のバルブとして十分な高温靭性を得るためには、ALの添加量は7.5%が上限である。
Moは、β安定化置換型元素であり、熱間加工性を向上させる働きをする。この効果を発現させるため、下限を1.5%以上とした。Mo量が多くなり、β相が過剰に存在すると耐クリープ性が低下するため、Mo添加量の上限は2.5%である。
Siは、耐クリープ性を向上させる働きをする。この効果を発現させるため、下限を0.16%以上とした。Si量が多くなると、TiとSiとの金属間化合物が析出し、チタン合金が脆化するため、Si添加量の上限を0.24%とした。
Nbは、チタン合金の耐酸化性を向上させる働きをし、Nbの添加により、熱間加工工程S2及び溶体化処理工程S3で生成される酸化スケールの量を低減できる。Nbが耐酸化性を向上させる理由は、表面に生成された酸化スケール中の酸素の拡散をNbが抑制し、酸化スケールの成長を抑えるためであると推察される。Nbの添加の効果を有効に発現させるためには、0.2%以上の添加が必要である。Nbの添加量が0.3%を超えると、チタン合金の表面の硬度が低下するため、Nbの添加量の上限を0.3%とした。このように、酸化スケールの生成量を抑えることで、仕上げ加工工程S5での内燃機関用チタンバルブ1の削り代を小さくできる。このため、工具の寿命や加工時間を改善できるとともに、チタン合金の材料の歩留まりを向上できる。
図3は、上記組成のチタン合金において、Nb量を変化させた場合の耐力を示す図である。ここで、図3の耐力の測定の際の試験温度は760℃である。
図3に示すように、Nbの添加量の増加に伴って高温時の耐力も増加するが、本実施の形態では、Nbの添加量は、Nbの添加がチタン合金の耐力にほとんど影響しない範囲である0.2〜0.3%に設定されている。
Cは、α安定化元素であり、β変態点を上昇させる働きをする。Cは、高温強度の向上に寄与するが、添加量を適切に制御することで、室温から500℃までの強度を確保しつつ、より高温の熱間加工温度域での強度上昇を抑え、変形抵抗を低下させることができる。
β変態点を1100℃以上にするためには、Cの添加量を少なくとも0.08%にする必要がある。β変態点を上昇させることで、α−β相が得られる温度も上昇し、α−β域においてより高い温度で熱間加工を行うことができるようになり、熱間加工性を向上できる。熱間加工の温度は、オーバーヒートを起こさず、且つ、できるだけ高い温度に設定され、通常、β変態点よりも50℃程度低い温度に設定される。このように、チタン合金の熱間加工性を向上することで、熱間加工中の割れや熱間加工の回数を低減でき、生産性を向上できる。
図4は、上記組成のチタン合金において、C量を変化させた場合の耐力を示す図である。ここで、図4の耐力の測定の際の試験温度は760℃である。
図4に示すように、Cの添加量が少ない範囲では、C量の変化は高温時の耐力にほとんど影響しない。本実施の形態では、Cの添加量は、Cの添加がチタン合金の高温時の耐力にほとんど影響しない範囲である0.08〜0.15%に設定されている。
Oは、α安定化元素であり、Cと同様にチタン合金のβ変態点を上昇させる。Oは、α相に固溶して高温強度及び耐クリープ性を向上させるが、添加量が多くなると、β変態点が高くなり過ぎるとともに、チタン合金が脆化するため、O添加量の上限を0.09%とした。Cの添加によってβ変態点が十分に上がる場合、Oの添加量は少なくて良いが、Cを0.05%以上添加することで、β変態点を1100℃以上に上昇させることができる。
また、溶体化処理の保持時間が長いと、生成される酸化スケールが厚くなるとともに、結晶粒が粗大化するため、保持時間の上限は15分である。一方、溶体化処理の保持時間が短いと、β相への変態が完了しない可能性があるため、保持時間の下限は5分である。
溶体化処理の処理条件は、好ましくは、処理温度はβ変態点よりも30℃高い1130℃であり、保持時間は10分である。このように、処理温度をβ変態点よりも30℃だけ高くすることで、酸化スケールの厚みを小さくできるとともに、溶体化処理の処理時間を短縮でき、生産性を向上できる。
本実施の形態では、チタン合金に耐酸化性を向上させるNbを0.2〜0.3%添加するとともに、真空度が管理された真空中で溶体化処理を行うため、溶体化処理の際に生成される酸化スケールの厚みを小さくできるとともに、酸化スケールの厚みを所定の厚み範囲に管理でき、溶体化処理の後に行われる仕上げ加工の際の削り代を小さく且つ一定化できるため、生産性を向上できる。
溶体化処理工程S3によって、チタン合金は、旧β粒内に針状α相が微細に析出した組織となる。このように、針状α相を主体とした組織となることで、内燃機関用のバルブに好適な高い耐クリープ性を得ることができる。
また、Oを0.09%以下含有するため、β変態点が上がり過ぎることがなく、溶体化処理の温度が高くなり過ぎないため、酸化スケールの厚さを低減できる。
また、溶体化処理の温度は、β変態点よりも30℃高い1130℃であるため、添加元素を確実に固溶させることができる。また、溶体化処理の温度が高すぎないため、酸化スケールの厚さを低減できる。
また、Nbの添加及び真空炉での溶体化処理によって、酸化スケール層の厚さが低減されるとともに一定化されるため、酸化スケールを除去するための削り加工が容易になり、生産性が向上する。
実施例では、図5に示すように、化学成分重量比が、AL:6.8%、Mo:1.9%、Si:0.19%、C:0.13%、Nb:0.20%、O:0.088%、残部がTi及び不可避不純物からなるチタン合金の棒材を用いて試験片を作製した。この試験片のβ変態点は1100℃である。
試験片は、内燃機関用チタンバルブ1の軸部2に対応するサイズを有する試験片TP1、及び、傘部3に対応するサイズを有する試験片TP2を複数本用意した。試験片TP1は、φ15.0mm×20mmの棒材であり、試験片TP2は、φ4.8mm×100mmの棒材である。
図6は、溶体化処理の温度パターンを示す図である。図7は、溶体化処理中の真空度を示す図である。
実施例1で用意した試験片TP1,TP2を真空炉中で加熱し、溶体化処理を行った。
溶体化処理の条件は、溶体化処理温度:1130℃、保持時間:10分、保持時間中の真空度:6×10−4〜6×10−5Paである。なお、本実施例では、2つの異なる真空炉A及び真空炉B(図8参照)で溶体化処理を行い、炉の違いによる影響も調査した。
図6に示すように、真空炉は、室温から1050℃程度までは、略一定の昇温速度で昇温され、その後、1130℃までゆっくりと昇温され、1130℃で10分保持された後、300℃まで炉冷が行われる。試験片TP1,TP2は、1130℃で10分の溶体化処理が行われた後、炉冷により焼鈍される。次いで、試験片TP1,TP2は、真空炉内の別室に移動され、Ar雰囲気中で室温まで冷却される。
図8は、酸化スケールの厚さを示す図である。図9は、酸化スケールの厚さを示す電子顕微鏡写真であり、図9(a)は、φ15mmの試験片の断面であり、図9(b)は、φ4.8mmの試験片の断面である。
実施例2で溶体化処理した試験片TP1,TP2を軸方向に直交する方向で切断し、断面を電子顕微鏡で観察することで、試験片TP1,TP2の表面に形成された酸化スケールの厚さを測定した。
図8に示すように、試験片TP1,TP2の両方で、酸化スケールM1の厚さが小さいことが確認された。20本以上の複数の試験片の内、酸化スケールM1の最大厚さは340μmであり、最小厚さは、230μmであり、研削加工等の削り加工によって容易に酸化スケールM1を除去可能であることが確認された。また、酸化スケールM1の厚さのバラツキが小さい範囲にあり、研削加工等の削り加工の際の取り代の管理が容易であることが確認された。
また、図9では、酸化スケールM1よりも内側の組織M2が、針状α相であることが確認できる。
上記の実施の形態では、内燃機関用チタンバルブ1は、軸部2と傘部3とを一体に備えるものとして説明したが、これに限らず、軸部と傘部とが別々に形成され、後で一体に結合されるものであっても良い。
M1 酸化スケール(酸化スケール層)
Claims (4)
- 重量%で、Al:6.5〜7.5%、Mo:1.5〜2.5%、Si:0.16〜0.24%、Nb:0.2〜0.3%、C:0.08〜0.15%、O:0.09%以下を含有し、残部がTi及び不可避不純物からなり、真空炉内で溶体化処理が行われ、前記真空炉内の真空度は、処理温度をβ変態点よりも高くする前記溶体化処理の間に高く保たれ、前記溶体化処理の前の昇温時及び前記溶体化処理の後の焼鈍時には、下限を1.3×10 −2 Paとして前記溶体化処理の間の真空度よりも低く保たれることを特徴とする内燃機関用チタンバルブの製造方法。
- 前記溶体化処理の前に、前記内燃機関用チタンバルブが熱間加工されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関用チタンバルブの製造方法。
- 前記溶体化処理の温度は、β変態点よりも30℃高い温度であることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関用チタンバルブの製造方法。
- 前記溶体化処理の後に、前記溶体化処理で生成された酸化スケール層が削り加工によって除去されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の内燃機関用チタンバルブの製造方法。
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