JP5950395B2 - 卵白アルブミン分解物を含有する脂質代謝改善剤 - Google Patents

卵白アルブミン分解物を含有する脂質代謝改善剤 Download PDF

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Description

本発明は、脂質代謝改善作用を有する卵白アルブミン分解物、該卵白アルブミン分解物を含有する脂質代謝改善剤、ならびに飲食品、医薬品、または飼料に関する。
近年、偏った食生活や運動不足が原因で、肥満、高脂血症(高トリグリセリド血症や高コレステロール血症)、高血圧症、糖尿病などのいわゆる生活習慣病の発症率が高くなることが報告されており、大きな社会問題となっている。
上記の生活習慣病の発症には、体脂肪量や内臓脂肪量の増加、血中のトリグリセリドやコレステロールの上昇が認められ、いずれも脂質代謝異常に関連している。これまで脂質代謝改善手段として、フィブラート系薬剤、ニコチン酸系薬剤、HMG-CoA還元酵素阻害剤、等の薬剤を用いる方法があるが、治療域まで至っていない状態を改善する目的には適さない。また、薬剤の投与により下痢や吐き気、食欲不振、血管浮腫等の副作用をもたらす場合があり、その使用は医師の管理下に限られている。よって、日常的に簡便に摂取でき、副作用がなく安全性の高い食品素材を用いて脂質代謝を改善することが望まれており、またそのような食品素材が模索されている。
一方、卵白は脂質代謝改善効果を有する食品素材の一つとして知られており、これまで100〜150℃で乾熱処理を施した乾燥卵白からなる血中コレステロール低下材(特許文献1)、乳酸発酵卵白を含む血清コレステロール低下材(特許文献2)、卵白を有効成分とする体脂肪・内臓脂肪蓄積抑制剤、肝臓中・血中トリグリセリド上昇抑制剤(特許文献3)が報告されている。しかしながら、これらの脂質代謝改善に関与する卵白中の成分については解明されていない。
特開2000-16943 WO2006/93013 特開2011-225496
本発明の課題は、卵白が有する脂質代謝改善作用を有効に発揮させるために、その活性本体となる成分を解明し、これを脂質代謝改善剤として提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、卵白アルブミン(オボアルブミン)をペプシンにより消化し、熱処理することによって得られる卵白アルブミン分解物は、血中中性脂肪およびコレステロール濃度の低下作用、腹腔内脂肪量の低減作用を有するとともに、脂肪酸合成酵素(FAS)の阻害活性を有することを見出した。また、上記の卵白アルブミン分解物にはTrp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドが含まれ、当該ペプチドは精製脂肪酸合成酵素(FAS)に対して直接的な阻害活性を示し、培養肝臓細胞の脂肪酸合成酵素速度を減少させることを確認した。本発明はかかる知見により完成されたものである。
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1) 卵白アルブミンをペプシンにより消化し、熱処理することによって得られる卵白アルブミン分解物。
(2) Trp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを含有する、(1)に記載の卵白アルブミン分解物。
(3) (1)に記載の卵白アルブミン分解物、またはTrp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを有効成分として含有する脂質代謝改善剤。
(4) (1)に記載の卵白アルブミン分解物、またはTrp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを有効成分として含有する脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤。
(5) (1)に記載の卵白アルブミン分解物、またはTrp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを含む飲食品。
(6) 前記飲食品が、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品である、(5)に記載の飲食品。
(7) (1)に記載の卵白アルブミン分解物、またはTrp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを含む医薬品。
(8) (1)に記載の卵白アルブミン分解物、またはTrp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを含む飼料。
本発明によれば、卵白アルブミン(オボアルブミン)をペプシンで消化し、熱処理した卵白アルブミン分解物を含有する脂質代謝改善剤および脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤が提供される。本発明の脂質代謝改善剤および脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤は、飲食品、医薬品、および飼料などの組成物に含有させて利用できる。上記の卵白アルブミン分解物は、血中脂質(血中トリグリセリドや血中コレステロール)濃度の低下作用、脂肪酸合成酵素(FAS)の阻害活性、腹腔内脂肪量の低減作用を有し、脂質代謝を改善することができるので、脂質代謝異常を呈する肥満、高脂血症(高コレステロール血症や高トリグリセリド血症)、高血圧症などの疾患の予防および治療に有効である。また、本発明の脂質代謝改善剤および脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤の有効成分である卵白アルブミン分解物およびそれに含まれるペプチドは、天然の食品素材を由来とするためそれらを摂取したヒトや動物の成育を阻害するなどの副作用がなく、安全である。
本発明の卵白アルブミン分解物(PHOVA)の調製方法のスキームを示す。 被験ラットの給餌・飼育スケジュールを示す。 卵白アルブミン分解物(PHOVA)区、カゼイン(Casein)区のラットにおける腹腔内脂肪重量(図3A)、肝臓FAS活性(図3B)、血中中性脂肪(図3C)、および血中総コレステロール(図3D)を示す(Casein対照区に対する統計学的有意差あり:* p<0.05, *** p<0.005,)。 カゼイン(Casein)+普通脂肪(7%)食区、卵白アルブミン分解物(PHOVA)+普通脂肪(7%)食区、カゼイン(Casein)+高脂肪(27%)食区、卵白アルブミン分解物(PHOVA)+高脂肪(27%)食区の肝臓総脂質含量を示す(異なる英文字間に統計学的有意差あり: p<0.05)。 卵白アルブミン分解物(PHOVA)を逆相HPLCにより分画して得られたFAS阻害画分のMS/MSスペクトル(図5A)、およびアミノ酸分析結果(図5B,C)を示す。 WTSSNペプチドを添加した培地で培養したHepG2肝細胞の脂肪酸合成速度を示す(無添加(DMSO):対照、セルレニン:陽性対照、対照に対する統計学的有意差あり:** p<0.01, *** p<0.005)。 WTSSNペプチドを添加した反応系における精製脂肪酸合成酵素(FAS)活性を示す(無添加(DMSO):対照)。
本発明は、卵白の主要タンパク質である卵白アルブミン(オボアルブミン)をペプシンで消化し、熱処理した卵白アルブミン分解物(Pepsin and Heat-processed Ovalbumin:PHOVA)、ならびに当該卵白アルブミン分解物を含有する脂質代謝改善剤または脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤に関する。
本発明において卵白アルブミンの種類は、いずれの家禽類の卵白アルブミンであってもよいが、鶏の卵白アルブミンが好ましい。また、卵白アルブミンの調製は公知の手法にて行うことができ、例えば以下のようにして行えばよい。卵を割卵し卵黄と分離した卵白を攪拌し不純物を除去した後、リン酸生理食塩水等の中性緩衝液を加えて希釈して均一に混合し、遠心分離または濾過により沈澱を除去する。次に、上澄み液に硫酸アンモニウム飽和溶液を添加して攪拌し、静置した後、生じた沈澱を除去し、その上澄み液を卵白アルブミン含有液として得る。この卵白アルブミン含有液は、適宜殺菌、凍結、濃縮、希釈、噴霧乾燥、凍結乾燥等の処理を行ってよい。また、市販の卵白アルブミンを用いてもよい。
卵白アルブミンのペプシンによる消化は、好ましくは卵白アルブミンの乾燥物に水を加え、pHを1.5〜2.0に調整した後、ペプシンを添加し反応させることによる行う。
卵白アルブミンへの加水量は、卵白アルブミンの乾燥物に対して13〜14倍量が好ましい。pHの調整は、緩衝液やpH調整剤を用いて行うことができる。
ペプシンは、卵白アルブミンを効率よく分解できるものであれば、いかなるものでもよく、例えば、市販のブタ胃粘膜由来等のペプシン(シグマ社製)を用いることができる。ペプシンの添加量としては、例えば、上記の卵白アルブミンの加水液1Lあたり、ペプシンを1g程度添加すればよい。
卵白アルブミンのペプシンによる分解反応は、35〜45℃、好ましくは37〜40℃で、1〜30時間、好ましくは10〜24時間行う。
反応終了後、反応液を90〜95℃、好ましくは95℃で、5〜30分、好ましくは10〜20分熱処理した後、遠心分離して熱凝固画分を除去し、上澄み液を本発明の卵白アルブミン分解物(以下、本明細書において「PHOVA」と称する場合がある)として得ることができる。得られたPHOVAは、液状の形態でそのまま用いてもよいが、保存性や取り扱いの容易性に鑑みて減圧濃縮し、凍結乾燥して粉砕または粗砕して乾燥粉末状に加工することが好ましい。粉砕は既知の方法に従い、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダーなどを用いて行う。また、必要に応じて、得られた粉末を、加熱殺菌、高圧殺菌などの当業者に公知の技術により殺菌してもよい。
このようにして得られた卵白アルブミン分解物(PHOVA)は、脂肪酸合成酵素(FAS)の阻害活性を有するTrp-Thr-Ser-Ser-Asn(配列番号1)からなるペプチドを含む。よって、当該卵白アルブミン分解物は、限界ろ過等で処理することによって、上記ペプチドの単離精製物とすることもできる。具体的には、前記卵白アルブミン分解物を、カットオフメンブレン(ミリポア PLAC02510)用いて窒素ガス圧力による限界ろ過を行い、低分子量画分(1kDa以下)を調製し、この低分子量画分を高速液体クロマトグラフィー(トリフルオロ酢酸(TFA)/アセトニトリル系、コスモシルカラムC18-AR-II(10mm×250mm、ナカライテスク))に供して阻害画分の分取を行う。FAS阻害活性を示すピーク画分の分取を繰り返すことで、上記ペプチドを単離することができる。
本発明の卵白アルブミン分解物(PHOVA)は、脂質代謝改善作用、具体的には、血中の中性脂肪濃度・コレステロール濃度の低下作用、腹腔内脂肪量の低減作用、脂肪酸合成酵素(FAS)の阻害活性を有する。また、当該卵白アルブミン分解物(PHOVA)に含まれるTrp-Thr-Ser-Ser-Asn(配列番号1)からなるペプチド(以下、本明細書において「WTSSN」または「WTSSNペプチド」と称する場合がある)は、精製脂肪酸合成酵素(FAS)を直接的に阻害する活性を有する。従って、当該PHOVAおよびWTSSNは、脂質代謝改善剤または脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤として使用できる。
本発明の脂質代謝改善剤または脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤は、そのまま投与することも可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲で適宜他の成分を配合し、飲食品、医薬品、飼料等の各種組成物として提供することが好ましい。
本発明において、飲食品とは、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品を含む意味で用いられる。
飲食品の形態は、食用に適した形態、例えば、固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状、ペースト状のいずれであってもよい。
飲食品の種類としては、具体的には、食パン、菓子パン等のパン類;そば、うどん、はるさめ、中華麺、即席麺等の麺類;飴、チューインガム、キャンディー、グミ、ガム、キャラメル、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット等の焼き菓子、ゼリー、ジャム、クリーム等の菓子類;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;加工乳、発酵乳、ヨーグルト、バター、チーズ等の乳製品;かまぼこ、ちくわ、ハンバーグ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;しょうゆ、ソース、酢、みりん等の調味料;清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳飲料など飲料(これらの飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む)が挙げられるが、これらに限定はされない。
本発明の飲食品は、その種類に応じて通常使用される添加物を適宜配合してもよい。添加物としては、食品衛生上許容されうる添加物であればいずれも使用できるが、例えば、砂糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、アスパルテーム、ステビア等の甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料;デキストリン、澱粉等の賦形剤;結合剤、希釈剤、香料、着色料、緩衝剤、増粘剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤などが挙げられる。
本発明の飲食品における脂肪代謝改善剤または脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤の配合量は、その脂質改善作用、FAS阻害作用が発揮できる量であればよいが、対象飲食品の一般的な摂取量、飲食品の形態、効能・効果、呈味性、嗜好性およびコストなどを考慮して適宜設定すればよい。例えば、固形状食品の場合にはPHOVA含量が10重量%〜100重量%、好ましくは20重量%〜80重量%になるように調製する。
本発明の飲食品は、脂質代謝改善作用を有するので、生活習慣、体質、または遺伝素因に起因して脂質代謝異常を呈する高脂血症など疾患を発症する傾向のある人はもとより、正常人であっても、それらの疾患の予防または改善を目的として日常的に摂取することができる。
また、本発明の脂質代謝改善剤または脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤を医薬品として提供する場合は、PHOVAまたはWTSSNペプチドに、医薬上許容され、かつ剤型に応じて適宜選択した基材や担体、ならびに添加物(例えば、賦形剤、希釈剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、可溶化剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、増量剤、分散剤、滑沢剤、湿潤化剤 、緩衝剤、香料等)を用いて、公知の種々の方法にて経口又は非経口的に全身又は局所投与することができる各種製剤形態に調製すればよい。なお、本発明の医薬品には、動物に用いる薬剤、即ち獣医薬も包含されるものとする。
本発明の医薬品は、経口または非経口的に投与することができるが、好ましくは経口投与である。本発明の医薬品を経口投与する場合は、錠剤(糖衣錠を含む)、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等に製剤化するか、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。また、本発明の医薬品を非経口投与する場合は、注射剤(例えば、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤)、点滴剤、坐剤などに製剤化し、注射用製剤の場合は単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態で提供される。製剤化に当たっては、本発明の上記有効成分以外の1種以上の有効成分を更に配合してもよい。
本発明の医薬品は、脂質代謝異常を呈する疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いることができる。ここで、「脂質代謝異常」とは、脂質の代謝経路になんらかの異常をきたし、血中濃度が適切な範囲に保たれない状態(多くは、血中濃度が適正範囲を超えた状態)を意味する。
従って、本発明の医薬品による予防及び/又は治療対象となる疾患としては、例えば、高脂血症(高トリグリセライド血症、高コレステロール血症、低HDL血症、食後高脂血症等)、肥満(例えば内臓脂肪蓄積、皮下脂肪蓄積)、脂肪肝、高血圧症、動脈硬化症、糖尿病、メタボリックシンドローム(内臓脂肪型肥満を共通の要因として、高血糖、脂質異常、高血圧の2つ以上を呈する病態)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脳血管障害(脳梗塞、脳出血)などが挙げられるが、これらに限定はされない。本発明の医薬品は上記疾患の発症を抑制する予防薬として、及び/又は、正常な状態に改善する治療薬として機能する。
また、脂肪酸合成酵素(FAS)は、食道癌、胃癌、大腸癌、乳癌、肺癌などの多くの癌に高発現していることから、本発明の医薬品は、そのFAS阻害活性に基づいて、癌の予防及び/又は治療用医薬として用いることができる。
本発明の医薬品は、前述の各疾患の予防及び/又は治療用医薬として用いる場合、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ等の哺乳動物に対して経口または非経口的に安全に投与することができる。本発明の医薬品の投与量は、疾患の種類、投与対象の年齢、性別、体重、症状の程度、投与方法などに応じて適宜決定することができる。例えば、高脂血症患者に経口投与する場合には、WTSSNペプチド質量に換算して、成人(体重60kg)一日あたり100mg〜1000mgの範囲で1日1回から数回に分けて投与する。
また、上記の脂質代謝改善剤または脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤は飼料用添加物として飼料に配合してもよい。本発明の飼料には、上記の脂質代謝改善剤または脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤のほか、通常の配合飼料に使用される原料を動物の種類、発育ステージ、地域などの飼育環境に応じて適宜配合してもよい。かかる原料としては、例えば穀物類または加工穀物類(とうもろこし、マイロ、大麦等)、糟糠類(ふすま、米糠、コーングルテンフィード等)、植物性油粕類(大豆油粕、ごま油粕、綿実油粕等)、動物性原料(脱脂粉乳、魚粉、肉骨粉等)、ミネラル類(炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、食塩、無水ケイ酸等)、ビタミン類、アミノ酸類、ビール酵母などの酵母類、無機物質の微粉末(結晶性セルロース、タルク、シリカ等)などが挙げられる。
本発明の飼料は、上記の飼料原料に、配合飼料に通常使用される賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料等の飼料用添加剤、所望によりその他の成分(抗生物質や殺菌剤、駆虫剤、防腐剤等)を配合してもよい。
本発明の飼料の形態は特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、ペースト状、ペレット状、カプセル剤(ハードカプセル,ソフトカプセル)、錠剤等が挙げられる。
本発明の飼料の給与対象となる動物は、特に限定されるものではないが、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シカ、ウサギ等の家畜類;ニワトリ(ブロイラー、採卵鶏の両方を含む)、七面鳥、アヒル、マガモ、合鴨、キジ、ウズラ、またはガチョウ等の家禽類;マウス、ラット、モルモット等の実験動物;イヌ、ネコなどのペットなどが挙げられる。
本発明の飼料中のPHOVAの配合量は特に限定されるものではなく、例えば、飼料全体の5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%の範囲である。しかしながら、上記配合量は、対象動物の種類、体重、飼育条件、給与方法等により適宜調節すればよい。
本発明の飼料は、給与対象となる動物の血中中性脂肪・コレステロールを低下させることができる。よって、本発明の飼料は、給与された動物の脂質代謝機能の改善し、腹腔脂肪の過剰蓄積による生産性の低下を抑制することができるほか、その生産物(肉、卵、乳)において、例えば、低コレステロール含量などの多様な機能を付与できる。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
(実施例1)卵白アルブミン分解物(PHOVA)の調製
卵白アルブミン(OVA;Wako)75gを蒸留水1000mlに懸濁し、HClでpHを2.0に調整した。この液にペプシン(Sigma)1gを添加し、37℃にて3時間攪拌した後、6N-HClでpHを再調整し、さらに37℃にて3時間攪拌しながら反応させた。消泡剤を反応液1000mlに対して0.165g添加し、Na2CO3にてpHを5に調整した後、95℃にて10分間加熱処理し、遠心分離(3000回転、10分間)して不溶性の熱凝固画分を除去した。次いで、上澄み液を減圧濃縮し、凍結乾燥・粉末化して本発明の卵白アルブミン分解物(PHOVA)を得た(図1)。
(実施例2)卵白アルブミン分解物(PHOVA)の評価
図2に示す給餌・飼育スケジュールに示すとおり、AIN-93配合に準拠したラット用基礎飼料で7日間予備飼育を行なったSD 系ラット(35日齢、オス)をカゼイン(Casein)区(対照)およびPHOVA 区に分け(各区につき7頭)、それぞれ下記表1に示す組成の試験飼料を自由摂取させ、試験飼料給与10日目にラットを解体した。
Figure 0005950395
解体したラットについて腹腔内脂肪重量(腹腔内の腎臓周囲に蓄積した脂肪をとり秤量)、肝臓FAS活性、ならびに血中の中性脂肪(トリグリセリド)および総コレステロールの各濃度の測定を行なった。肝臓FAS 活性の測定は、Nepokroeff et al.ら(Nepokroeff CM, Lakshmanan MR, Porter JW. Fatty-acid synthase from rat liver. Methods Enzymol. 1975;35:37-44. )の方法に準じて行った。血中の中性脂肪濃度、血中の総コレステロール濃度は酵素法にて測定した。血中の中性脂肪は市販の測定キット(富士ドライケムスライド トリグリセライドキット:富士フィルム株式会社)、また、血中の総コレステロールは市販の測定キット(富士ドライケムスライド コレステロールキット:富士フィルム株式会社)をそれぞれ用い、各キットの指示書に従って測定した。
その結果、卵白アルブミン分解物(PHOVA)給与により、腹腔内脂肪重量は40%、肝臓FAS 活性は38%、血中中性脂肪濃度は23%、血中総コレステロール濃度は16%それぞれ有意に低減した(図3A〜D)。なお、全てのラットは正常に成長し、異常は観察されなかった。また主要臓器および骨格筋重量等に区間差は無かった。
(実施例3)高脂肪食給与ラットの肝臓総脂質含量に対するPHOVAの効果
給餌・飼育スケジュール、ラット系統・性・日齢等は実施例2に準じている。予備飼育後にラットをCasein+普通脂肪(7%)食区、PHOVA+普通脂肪(7%)食区、Casein+高脂肪(27%)食区、PHOVA+高脂肪(27%)食区に分け(各区につき6頭)、それぞれ下記表2に示す組成の試験飼料を自由摂取させ、試験飼料給与10日目にラットを解体した。肝臓脂質の定量はFolch法により行った。1gの肝臓片を酢酸緩衝液中でポリトロンホモジナイザーを用いてホモジナイズし、ホモジネートにクロロホルム:メタノール(2:1)溶液を添加して抽出操作を行い、溶媒画分をナシ型フラスコに回収、ロータリーエバポレータを用いて減圧乾固により溶媒を除去後、脂質重量の測定を行った。
Figure 0005950395
図4に示すとおり、高脂肪食給与では肝臓脂質蓄積が増加するが、PHOVAはそれを43 %抑制することが確認できた。よって、PHOVAは脂肪肝の発生予防や症状改善に有効であるといえる。
(実施例4)卵白アルブミン分解物(PHOVA)に含まれるペプチドのアミノ酸配列の同定
実施例1で調製した卵白アルブミン分解物(PHOVA)を、カットオフメンブレン(ミリポア PLAC02510)用いて窒素ガス加圧による限界ろ過を行い、低分子量画分(分子量1kDa以下)を調製し、5 mgを1 mlの蒸留水に溶解して使用した。FAS阻害ペプチドの分離・精製は逆相での高速液体クロマトグラフィー(日本分光LC-2000Plusシステム;カラム、コスモシルC18-AR-II(10mm×250mm)ナカライテスク)で行った。移動相としてA液(0.1%TFA)およびB液(0.1%TFA/80%アセトニトリル)を用いたリニアグラジエント溶出(流速4.0 ml/分、35分:A液100%→53.4%、B液0→46.6%)を行い、溶出液の220nmにおける吸光度を測定し、ペプチドを分取した。まず、13〜18分に溶出されたピーク群画分にFAS阻害活性が認められたので、この画分の分取を繰り返し、凍結乾燥粉末を得た。次に、この画分をさらに分画するため、リニアグラジエント溶出(流速2.0 ml/分、57分:A液91.9%→90.7%、B液8.1→9.3%)に供し、36〜37分に単一ピークとして溶出したピークを回収して質量分析に供した。
そのペプチド画分をQ-TOF LC/MS で精密質量を測定し、オボアルブミン由来のペプチド候補を検索した。次にQQQ LC/MS(Agilent Technologies製)でMS/MS スペクトルを測定し、そのフラグメントパターン(図5A)より配列を同定した。その結果、当該ペプチドはオボアルブミン分子中267〜271 番目に存在するトリプトファン・トレオニン・セリン・セリン・アスパラギン(Trp-Thr-Ser-Ser-Asn:WTSSN、分子量593.245)であることが判明した(図5B、C)。
(実施例5)卵白アルブミン分解物(PHOVA)に含まれるWTSSNペプチドの評価
(1) HepG2培養肝細胞の脂肪酸合成速度に対するWTSSNの影響
WTSSN(300μg/mL)およびポジティブコントロールとして代表的な脂肪酸合成酵素阻害剤であるセルレニン(15μg/mL)をDMSO(1%)に溶解してHepG2培養肝細胞の培養液に添加した。無添加区(対照)にはDMSOのみ添加した。合成WTSSN を培地に添加(300μg/mL)して3 時間培養後、[14C]acetate を添加して更に1.5 時間培養し、細胞を回収した。回収した細胞より脂質を抽出し、液体シンチレーションカウンターによる[14C]取込量の測定を行い、これを脂肪酸合成速度とした。その結果、無添加区と比較して、脂肪酸合成速度はWTSSN添加区で30%減少した(図6)。
(2) 精製ニワトリFASに対するWTSSNの直接的な阻害作用
ArslanianとWakilの方法(Arslanian MJ & Wakil SJ, Methods in Enzymology, Vol 35, 59-65, 1975)に準じて、ニワトリ肝臓より脂肪酸合成酵素(FAS)を単離・精製した。このFASを用いて、Zhaoらの報告(Zhao YX, Liang WJ, Fan HJ, Ma QY, Tian WX, Dai HF, Jiang HZ, Li N, Ma XF. Carbohydr Res. 346(11):1302-1306. 2011)に準じてFAS活性ならびにWTSSNのFAS阻害活性の評価を行った。FASは脂肪酸合成時にNADPHを還元剤として定量的に消費するため、NADPHの吸光度(340nm)の減少(消費)速度からFAS活性の評価を行うことができる。具体的には、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、1mM EDTA、1mMジチオスレイトール、3μMアセチル-CoA、35μM NADPH、5μg 精製ニワトリFASを含む反応系(1mL)の340nmにおける吸光度を分光光度計(島津製作所UV-1800)でモニターし、まず、FAS非依存的な吸光度の減少を測定した(ブランク反応)。次いで、マロニル-CoA(終濃度10μM)の添加により酵素反応を開始して吸光度の測定を行い、ブランク反応を差し引き、340nmにおけるNADPHの分子吸光係数(6.22×103 M-1cm-1)で除して単位時間あたりのNADPH消費量を算出し、添加したFASタンパク質量で除した値をFAS比活性とした。上記の反応系に、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したWTSSNを添加(1.5mg)して酵素反応を行い、上記のようにして求めたFAS比活性により直接的な阻害活性の評価を行った。その結果、無添加区と比較して、FAS活性はWTSSN添加区で42%減少した(図7)。
本発明は飲食品、医薬品、または飼料等の製造分野において利用できる。

Claims (7)

  1. Trp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチド。
  2. Trp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを有効成分として含有する脂質代謝改善剤。
  3. Trp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを有効成分として含有する脂肪酸合成酵素(FAS)阻害剤。
  4. Trp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを含む飲食品。
  5. 前記飲食品が、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、または特定保健用食品である、請求項に記載の飲食品。
  6. Trp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを含む医薬品。
  7. Trp-Thr-Ser-Ser-Asnからなるペプチドを含む飼料。
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