しかしながら、発明者らの確認によれば、上記のように永久磁石と磁性材料とを用いた逆止弁は、弁体座面が弁座座面から離座する際の圧力差、つまり開弁圧のばらつきが大きい。このため、容量可変型斜板式圧縮機がこのような逆止弁を備えている場合には、起動時や低容量運転時のトルクの増大を招き、起動不良や動力損失を生じる恐れがある。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、圧力損失を低減できるとともに、開弁圧のばらつきが小さい圧縮機用逆止弁を提供することを解決すべき課題としている。また、本発明は、永久磁石と磁性材料とを用いた圧縮機用逆止弁を備えた容量可変型斜板式圧縮機において、起動時や低容量運転時に安定した起動及び動力低減を実現することを解決すべき課題としている。
本発明の圧縮機用逆止弁は、流体が通過する弁孔が形成された弁座と、前記弁座に対して下流側に位置し、上流側と下流側との圧力差に応じて前記弁座に対して着座又は離座することにより、前記弁孔を開閉する弁体とを備え、
前記弁座は、磁性材料からなり、前記弁孔回りに弁座座面が形成された弁座本体を有し、
前記弁体は、磁性材料からなり、前記弁座座面と着座又は離座する弁体座面が形成された弁体本体を有し、
前記弁座及び前記弁体の一方には、前記弁座本体と前記弁体本体とを吸引力により互いに接近するように付勢する永久磁石が設けられた圧縮機用逆止弁であって、
前記弁体が前記弁座に着座している時に前記永久磁石によって形成される前記弁座本体及び前記弁体本体の一方を含む磁気回路の磁束密度が飽和磁束密度の90%以上であるように形成され、
前記弁座本体及び前記弁体本体の一方における磁束線が通る部分の断面積は、前記永久磁石における磁束線が通る部分の断面積に対し、小さくされていることを特徴とする。
本発明の圧縮機用逆止弁は、弁座と弁体とを吸引力により互いに接近するように付勢する永久磁石を採用していることから、弁体が弁座から離れるほど永久磁石の吸引力が弱くなり、バネによる逆止弁と比較して、弁孔の開放時に弁体が弁座から離れ易い。このため、この逆止弁は、圧力差が小さくても、弁孔を確実に開放でき、流体が上流側から弁孔を介して下流側に流れる際の圧力損失を低減できる。
ところで、発明者らの確認によれば、バネのみによって弁体を弁座に付勢する逆止弁においては、図13に符号Sの許容範囲で示すように、バネの取付寸法、バネ荷重の差によって開弁圧にばらつきは生じるが、開弁圧のばらつきに温度はほとんど影響を与えていない。温度変化によってバネの取付寸法やバネの弾性係数が僅かに変化するだけであり、温度差による開弁圧のばらつきは無視できる程度である。
一方、発明者らの確認によれば、永久磁石は、寸法公差等の体格の差の他、温度により、磁束密度が変化する。すなわち、磁束密度に対する温度係数は、例えば、ネオジム磁石が−0.1%/°C程度、サマコバ磁石が−0.05%/°C程度、フェライト磁石が−0.2%/°C程度である。
また、吸引力をF(N)、吸引面の磁束密度をB(T)、吸引面の面積をS(m2)、真空透磁率をμ0(4×π×10-7H/m)、吸引面の磁界の強さをH(A/m)とすると、
F=B2S/2μ0
B=μ0H
が成立する。ここで、吸引面とは、弁座座面又は弁体座面のうち、磁束線が通過する面である。
このため、永久磁石と磁性材料とを用いた逆止弁においては、永久磁石の取付寸法によって開弁圧にばらつきを生じる他、温度差によって開弁圧にばらつきを生じる。取付寸法による開弁圧のばらつきよりも、温度差による開弁圧のばらつきの方が大きな変動幅を有し、温度差による開弁圧のばらつきは無視できない。
この点、本発明の逆止弁では、永久磁石を弁座及び弁体の一方に設けつつ、弁体が弁座に着座している時に永久磁石によって形成される弁座本体及び弁体本体の一方を含む磁気回路の磁束密度が飽和磁束密度の90%以上であるように形成されている。飽和磁束密度の90%以上である状態とは、磁束密度が飽和磁束密度又は飽和磁束密度と近似できる状態である。発明者らの確認によれば、磁束密度が飽和磁束密度の90%以上であれば、磁束密度の変化率が無視できる程度に小さい。このため、弁座本体及び弁体本体の一方は、永久磁石によって磁界が上昇しても、磁束密度がほとんど変化しない磁気特性を発揮する。このため、弁座座面及び弁体座面を通過する磁束線の量の増加は僅かであり、弁座本体と弁体本体との間に作用する吸着力の増加は少なく、開弁圧の上昇が抑制される。なお、磁束密度が飽和磁束密度の90%以上であるか否かはシミュレーションによって確認できる。
したがって、本発明の圧縮機用逆止弁は、圧力損失を低減できるとともに、開弁圧のばらつきを小さくすることが可能である。
弁座は弁座本体を有する。弁座本体は磁性材料からなる。また、弁座本体は、弁孔回りに弁座座面が形成されている。また、弁体は弁体本体を有する。弁体本体は磁性材料からなる。また、弁体本体は、弁座座面と着座又は離座する弁体座面が形成されている。磁性材料としては、S45C等の高炭素鋼、SCM435及びSCM440等のクロムモリブデン鋼等の鉄系材料、磁性を持つマルテンサイト系ステンレス鋼等を採用することができる。弁座が弁座本体そのものでもよく、弁体が弁体本体そのものでもよい。弁座本体や弁体本体が摺動性等のために樹脂によって包まれることにより、弁座や弁体とされてもよい。
磁気回路の磁束密度が飽和磁束密度の90%以上である逆止弁とするためには、以下の手段を採用することができる。
(1)永久磁石の残留磁束密度を上げる。永久磁石の材質としては、例えば、ネオジム磁石、サマコバ磁石、フェライト磁石の順で先のものの方が後のものよりも残留磁束密度が高い。永久磁石が同一の材質であれば、保磁力の低い永久磁石ほど磁束密度が高い。但し、保磁力が低い永久磁石は高温不可逆減磁を起こしやすい。
(2)永久磁石の体格を大きくする。
(3)磁気回路中の磁束密度が最も高い部分(磁束線が集中している部分)の断面積を小さくする。
すなわち、永久磁石の材質、永久磁石の体積及び磁気回路の断面積を設定することにより、磁束密度が飽和磁束密度の90%以上である逆止弁を得ることができる。
本発明の圧縮機用逆止弁では、より具体的には、磁気回路の磁束密度が飽和磁束密度の90%以上であるように形成されている。磁束密度を飽和磁束密度にすることは製造上困難な場合があるためである。すなわち、磁束密度を飽和磁束密度とするには、(1)永久磁石自身をより体格の大きいものにする、(2)より磁束密度の高い永久磁石を採用する、(3)磁気回路の断面積をより小さくする、等の手段が考えられる。しかし、(1)の手段は逆止弁内により大きなスペースが必要となる。また、(2)の手段は永久磁石が高額となる。さらに、(3)の手段は断面積を通過する磁束の量(磁束密度×断面積)が減り、必要な吸着力が確保できなくなる場合がある。このため、磁気回路の磁束密度が飽和磁束密度の90%であるように逆止弁を形成すれば、その逆止弁は、安価であり、さほどのスペースを必要とせず、必要な吸着力を確保できるので、圧縮機への搭載に適するものとなる。
本発明の圧縮機用逆止弁では、磁気回路の磁束密度が飽和磁束密度であるように形成されていることが好ましい。磁束密度が飽和磁束密度であれば、圧縮機での温度変化の影響を受けない逆止弁とすることができる。
弁座本体及び弁体本体の一方における磁束線が通る部分の断面積は、永久磁石の断面積に対し、小さくされている。この場合、上記(3)の手段により、その部分の磁束密度が確実に飽和磁束密度の90%以上になる。また、その部分が弁座座面又は弁体座面を構成し易いことから、開弁圧が安定し易い。
永久磁石は弁座及び弁体の一方に設けられる。弁座及び弁体の他方には永久磁石を設けない。例えば、弁座に永久磁石を設ければ、弁座本体は永久磁石と磁気回路を構成する。弁座に弁体が着座すれば、弁体本体はその磁気回路に含まれる。
具体的には、永久磁石は弁孔と同心の環状であり得る。そして、弁座本体は、先端が弁座座面とされて筒状に形成され、外周又は内周に永久磁石が固定される切欠きが形成され得る。この場合、弁体本体は、先端が弁体座面とされて筒状に形成される凸部を有し得る。弁座本体が永久磁石を保持すれば、弁体の重量を軽くできるので、上流側と下流側との圧力差の変動に対する弁体の作動性が向上する。
また、永久磁石は弁孔と同心の環状であり得る。そして、弁体本体は、先端が弁体座面とされて凸状に形成され、外周又は内周に永久磁石が固定される切欠きが形成され得る。この場合、弁座本体は、先端が弁座座面とされて筒状に形成される凸部を有し得る。永久磁石が弁体本体に固定されている場合、永久磁石の重量によって弁体を付勢することができる。
さらに、永久磁石は弁孔と同心の柱状であり得る。そして、弁体本体は、先端が弁体座面とされて筒状に形成され、内部に永久磁石が固定される切欠きが形成され得る。この場合、弁体本体は、先端が弁体座面とされて筒状に形成される凸部を有し得る。永久磁石が弁体本体に固定されている場合、永久磁石の重量によって弁体を付勢することができる。この場合、弁体本体は筒状に形成されていてもよい。
本発明の圧縮機用逆止弁は、弁座に固定され、弁体を案内する非磁性材料からなる案内部材を備えていることが好ましい。この場合、永久磁石の磁束線が案内部材に向かって流れ難くなる。このため、弁座本体と弁体本体との間の磁束密度が高くなるので、開弁圧が安定する。非磁性材料としては、樹脂、アルミニウム系材料等を採用することができる。
本発明の圧縮機用逆止弁は、弁体を弁座に向かって付勢するバネを備えていることができる。永久磁石の吸引力は弁体が弁座から離れるほど弱くなる。このため、バネによって弁体を弁座に向かって付勢すれば、弁体が弁座から大きく離反しても、弁体を確実に弁座に着座させることができる。バネは、SUS316、樹脂又はFRP等の非磁性材料からなることが好ましい。
本発明の圧縮機用逆止弁は、弁体を弁座に向かって付勢するバネを備えていなくてもよい。この場合、弁体は、永久磁石と磁性材料との間に作用する吸引力のみによって弁座に向かって付勢される。このため、この逆止弁は、バネが不要となるので、部品点数の削減及び組み付け作業の簡素化を実現できる。
永久磁石は接着剤を用いて弁座本体及び弁体本体の一方に設けられ得る。また、永久磁石を圧入や嵌合によって弁座本体及び弁体本体の一方に設けてもよい。圧入や嵌合によって永久磁石を設ければ、永久磁石を接着剤で設けるよりも、組み付け作業の簡素化を実現できる。また、永久磁石が接着剤を用いて設けられる場合には、接着剤が高温により劣化して永久磁石が剥がれるおそれがあるのに対し、圧入や嵌合によって設ければ、永久磁石が高温の影響を受け難く、耐久性を向上させることができる。
永久磁石としては、(1)バリウムフェライト磁石、ストロンチウムフェライト磁石等のフェライト磁石、(2)アルニコ磁石や希土類磁石である金属磁石、(3)ゴム磁石やプラスチック磁石であるボンド磁石等を採用することが可能である。希土類磁石としては、1−5系磁石や1−17磁石等のサマリウム−コバルト磁石の他、ネオジム磁石を採用することができる。ゴム磁石としては、フェライトゴム磁石、ネオジムゴム磁石を採用することができる。プラスチック磁石としては、フェライトプラスチック磁石、ネオジムプラスチック磁石を採用することができる。サマリウム−コバルト磁石は、ネオジム磁石と比べて磁力はやや低下するが、磁力の温度変化率(温度低下率)がネオジム磁石より小さく、温度特性に優れているとともに、錆びにくい。
本発明の圧縮機用逆止弁は、着座時に流体の逆流を防止する逆止弁として具体化できる他、着座時に弁座と弁体との間に一定の隙間を確保して圧力差を制御するものとして具体化することもできる。
本発明の容量可変型斜板式圧縮機は、圧縮室、クランク室、吸入室及び吐出室を形成するハウジングと、前記ハウジングに回転可能に支持された駆動軸と、前記駆動軸の回転によって前記クランク室内で揺動可能に設けられた斜板と、前記斜板の揺動によって前記圧縮室に容積変化を生じしめるピストンとを備え、前記圧縮室の容積変化によって前記吸入室内の流体を前記圧縮室に吸入した後、圧縮し、前記吐出室に吐出するとともに、前記クランク室の圧力であるクランク圧を変更することによって前記斜板の傾斜角が変化して吐出容量が変更可能に構成された容量可変型斜板式圧縮機であって、
前記吐出室又は前記吐出室に連通する吐出通路に上記圧縮機用逆止弁を備え、
前記圧縮機用逆止弁は、圧縮機の温度変化にかかわらず、前記斜板が最小傾斜角から復帰する時に開くように設定されていることを特徴とする。
本発明の容量可変型斜板式圧縮機では、吐出室又は吐出通路における上流側と下流側との圧力差に応じて、圧縮機用逆止弁が弁孔を開閉する。具体的には、クランク圧が最大となり、斜板が最小傾斜角となれば、上流側と下流側との圧力差は設定された開弁圧より小さく、逆止弁が弁孔を閉鎖する。その結果、吐出通路から吐出室又は吐出室から圧縮室への流体の逆流が防止される。このため、容量可変型斜板式圧縮機はいわゆるオフ運転を継続する。ここで、オフ運転とは、圧縮機への冷媒の吸入と、圧縮機からの冷媒の吐出が行われない状態をいう。圧縮機に電磁クラッチが取り付けられない場合、駆動軸が回転することにより斜板は揺動するが、実質的な圧縮を行わず、内部で極少量の冷媒が循環する状態がオフ運転である。また、圧縮機に電磁クラッチが取り付けられる場合、電磁クラッチがOFFされることにより駆動軸が回転されない状態もオフ運転である。
一方、クランク圧が小さくなり、斜板が最小傾斜角から復帰すれば、上流側と下流側との圧力差は設定された開弁圧より大きくなり、逆止弁が弁孔を開放する。その結果、圧縮室から吐出された流体が吐出室から吐出通路へと流れる。このため、容量可変型斜板式圧縮機はいわゆるオフ運転から復帰する。
この際、この容量可変型斜板式圧縮機は、圧縮機の温度変化にかかわらず、本発明の圧縮機用逆止弁が圧力損失を低減できるとともに、開弁圧のばらつきを小さくできるため、起動時や低容量運転時に安定した起動及び動力低減を実現することができる。
本発明の圧縮機用逆止弁は、圧力損失を低減できるとともに、開弁圧のばらつきが小さい。また、本発明の容量可変型斜板式圧縮機は、起動時や低容量運転時に安定した起動及び動力低減を実現することができる。
以下、本発明を具体化した実施例1〜4を図面を参照しつつ説明する。
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の車両用空調装置に搭載される圧縮機用逆止弁600は容量可変型斜板式圧縮機(以下、単に「圧縮機」という。)に組み付けられて逆止弁として機能するものである。
この圧縮機は、シリンダブロック1に複数個のシリンダボア1aが同心円状に等角度間隔でそれぞれ平行に形成されている。シリンダブロック1は、前方に位置するフロントハウジング3と後方に位置するリヤハウジング5とに挟持され、この状態で締結されている。シリンダブロック1、フロントハウジング3及びリヤハウジング5がハウジングに相当する。シリンダブロック1とフロントハウジング3とによって内部にクランク室9が形成されている。クランク室9の圧力がクランク圧である。ここで、図1における紙面左側が前方であり、紙面右側が後方である。図2〜図5も同様である。
フロントハウジング3には軸孔3aが形成され、シリンダブロック1には軸孔1bが形成されている。軸孔3a、1bには軸封装置9a及び軸受装置9b、9cを介して駆動軸11が回転可能に支持されている。フロントハウジング3には軸受装置3bを介してプーリ13が設けられている。プーリ13は駆動軸11に固定されている。プーリ13には車両のエンジンやモータによって駆動されるベルト13cが巻き掛けられている。なお、プーリ13の代わりに電磁クラッチを設けることも可能である。
クランク室9内では、駆動軸11にラグプレート15が圧入されている。ラグプレート15とフロントハウジング3との間には軸受装置9d、9eが設けられている。また、駆動軸11には斜板17が挿通されている。ラグプレート15と斜板17との間には、駆動軸11回りで傾斜角縮小バネ19が設けられている。また、クランク室9内では、駆動軸11にサークリップ11aが固定されている。駆動軸11の周りには、サークリップ11aと斜板17との間に復帰バネ21が設けられている。また、ラグプレート15と斜板17とは、斜板17を傾斜角変動可能に支持するリンク機構23によって接続されている。
各シリンダボア1a内にはピストン25が往復動可能に収納されている。各ピストン25と斜板17との間には前後で対をなすシュー27a、27bが設けられている。各対のシュー27a、27bによって斜板17の揺動運動が各ピストン25の往復動に変換されるようになっている。
シリンダブロック1とリヤハウジング5との間には弁ユニット29が設けられている。各シリンダボア1aはピストン25と弁ユニット29との間が圧縮室31となっている。リヤハウジング5内には、径方向内側に位置する吸入室5aと、径方向外側に位置する環状の吐出室5bとが形成されている。吸入室5aには、熱交換用の流体としての冷媒が供給される。
弁ユニット29は、ピストン25が吸入行程にあるときに吸入室5a内の冷媒を圧縮室31に吸入し、ピストン25が吐出工程にあるときに圧縮室31内の冷媒を圧縮し、吐出室5bに吐出する。
クランク室9と吸入室5aとは抽気通路42によって接続されている。クランク室9と吐出室5bとは給気通路44、46によって接続されている。リヤハウジング5内には、吸入室5aと検圧通路48によって連通するとともに、給気通路44、46と連通する容量制御弁2が収納されている。
容量制御弁2は、検圧通路48により検圧される冷媒の流量差圧等に基づいて給気通路44、46を開閉する。吐出室5b内の高圧の冷媒が給気通路44、46を介してクランク室9に供給され、クランク圧が所望の値に調整される。その結果、斜板17の傾斜角が変化して、所望の吐出容量に変更される。
リヤハウジング5内には、吐出室5bに連通するとともに、リヤハウジング5の後面に開口する吐出通路50が形成されている。圧縮機が車両用空調装置に搭載される際、吐出通路50におけるリヤハウジング5の後面側の開口5cは、図示しない凝縮器に接続される。
図2に拡大して示すように、吐出通路50は、前後方向と平行な軸線X1を中心軸として、吐出室5bの内壁面から後方に向かって凹設された大径穴部50aと、大径穴部50aと開口5cとを連通させる小径穴部50bとからなる。大径穴部50a内に逆止弁600が配設されている。
逆止弁600は、弁座610と、案内部材630と、弁体620とを備えている。逆止弁600は、これらが組み付けられてユニット化されている。そして、逆止弁600は、吐出室5b側から大径穴部50aに挿入されて段部50cに弁座610が当て止まった状態で、図示しないサークリップ等により抜け止めされる。弁座610の外周面にはOリング140が設けられている。こうして、逆止弁600は、吐出室5bと、吐出通路50とを区分けした状態でリヤハウジング5内に固定されている。吐出室5bが吐出通路50の上流側であり、大径穴部50aにおける弁座610を挟んで吐出室5bとは反対側が吐出通路50の下流側である。
弁座610は、軸線X1を中心軸とする基部613と、基部613に対して同心かつ小径の円筒形状とされて、基部613に対して後方に位置する円筒部614とからなる。実施例1では、弁座610は、磁性材料としての鉄鋼(S45C焼なまし材)からなる弁座本体そのものとされている。
基部613及び円筒部614には、軸線X1を中心軸とする弁孔611が貫設されている。弁孔611は吐出室5bと吐出通路50の下流側とを連通させている。円筒部614は、先端側に位置する小径の凸部615と、凸部615と基部613との間に位置し、凸部615よりやや大径の案内部材保持部616とからなる。凸部615の外周が切欠き615bとされている。凸部615の後方を向く先端は弁座座面615aとされている。弁座座面615aは、軸線X1と直交する平面と平行である。
案内部材630は、軸線X1を中心軸とする円筒形状とされた円筒部633と、円筒部633の後端縁を塞ぐ円盤形状とされた円盤部634とからなる。実施例1では、案内部材630は、非磁性材料である樹脂(ナイロン樹脂等)からなる。円筒部633の前端縁633aが案内部材保持部616の外周面に対して外側から嵌合することにより、案内部材630が弁座610に固定されている。
円筒部633における前後方向の中間には、円筒部633の内部と外部とを連通させる複数の窓633bが軸線X1を中心とする円周上に並ぶように貫設されている。各窓633bは軸線X1と平行な四角形に形成されている。
弁体620は、弁座610の円筒部614と、案内部材630とにより囲まれた空間内に収容されて、弁座610に対して吐出通路50の下流側に位置している。弁体620は、軸線X1を中心軸とする円盤形状とされた円盤部625と、円盤部625を前端に位置させて円盤部625と一体成形された円筒形状の円筒部621とからなる。実施例1では、円盤部625が鉄鋼(S45C焼なまし材)からなる弁体本体である。また、円筒部621は、案内部材630と同種の樹脂からなる。
弁体620の円筒部621の外周面と、案内部材630の円筒部633の内周面との間には、弁体620を前後方向に摺動可能とするクリアランスが確保されている。これにより、弁体620は、案内部材630に案内されて、前後方向に変位可能となっている。
円盤部625の外径は凸部615の外径とほぼ等しくされ、円盤部625の前端面の外周域は弁体座面625aとされている。弁体座面625aも、軸線X1と直交する平面と平行である。弁体620が前方に変位して、弁体座面625aが弁座座面615aに当接することにより、弁体620が弁座610に着座して弁孔611を閉鎖する。この際、弁体620の円筒部621は窓633bを閉じている。その状態から弁体620が後方に変位することにより、弁体620が弁座610から離反して弁孔611を開放する。この際、円筒部621は窓633bを開放する。そして、弁体620がさらに後方に変位して、円筒部621の後端が案内部材630の円盤部634に当て止まることにより、弁孔611が全開状態となる。この際、円筒部621は窓633bを全開にする。この逆止弁600は、弁体620を弁座610に向かって付勢するバネを備えていない。
弁座610の切欠き615bには永久磁石650が圧入等によって固定されている。永久磁石650は、軸線X1を中心軸とし、弁孔611と同心の環状である。実施例1では、永久磁石650はネオジム磁石である。この位置に設けられた永久磁石650は、弁座610と弁体620とを磁力に基づく吸引力により互いに接近するように付勢する。これによって、永久磁石650は、図3に示すように、弁座610の凸部615を含む磁気回路MCを構成する。弁体620が弁座610に着座すれば、磁気回路MCは弁体620の円盤部625も含まれる。永久磁石650は、弁体620と弁座610との間の吸引力、吸着力とともに、開弁時の磁束密度との関係により設定される。
特に、弁座610の凸部615における磁束線が通る部分の断面積は、永久磁石650の断面積に対し、小さくされている。この永久磁石650は、寸法公差が最小(体格が最小)のものである。この永久磁石650は、図7に符号A1で示す特性を有している。すなわち、圧縮機の使用温度域0〜Tのうち、温度域0〜T1において、永久磁石650によって形成される磁気回路MCの磁束密度が実質的に飽和している。ここで、圧縮機の使用温度域0〜Tとは、圧縮機が使用されている間における圧縮機の温度変化の幅である。最低使用温度0は、圧縮機が使用されている間の圧縮機の最低温度であり、圧縮機の使用温度域の下限である。また、最高使用温度Tは、圧縮機が使用されている間の圧縮機の最高温度であり、圧縮機の使用温度域の上限である。この場合、使用温度域0〜Tの全域において、圧縮機用逆止弁600が圧力損失を低減できるとともに、開弁圧のばらつきを小さくすることが可能であるため、起動時や低容量運転時に安定した起動及び動力低減を実現することができる。磁気回路MCの磁束密度が実質的に飽和しているか否かは、図4及び図5と同様のシミュレーションによって確認できる。
図7において、最高使用温度Tから温度T1までは、永久磁石650によって形成される磁気回路MCの磁束密度は、飽和磁束密度の90%以上、100%未満である。使用温度が最高使用温度Tから温度T1まで低下すれば、磁界が僅かに強くなり、図10に示すように、磁束密度も磁界が強くなるに従って僅かに上昇し、弁体座面625aが弁座座面615aから離座する際の圧力差である開弁圧は、徐々に僅かに上昇するが、許容範囲S内に収まっている。なお、図7に示す開弁圧の許容範囲Sの下限値は斜板17が最小傾斜角から復帰する時に開くように設定されている。
また、永久磁石650は、図2に示すように、弁座座面615aから段差Dをもって奥まった位置に配置されている。切欠き615bのうち、永久磁石650の先端面650aから弁座座面615aまでの空間が第1異物収容部615cとされている。円盤部625の外周には、閉弁時に第1異物収容部615cと一体になる第2異物収容部625bが形成されている。永久磁石650の先端面650aは凹設されている。より詳細には、永久磁石650の先端面650aは、弁座座面615a及び弁体座面625aに近い方が弁座座面615a及び弁体座面625aから遠い方よりも段差Dが大きいテーパ状に形成されている。
この逆止弁600では、図4及び図5に示すように、離座時の第1、2異物収容部615c、625bにおける磁束密度が着座時の第1、2異物収容部615c、625bにおける磁束密度よりも高くなるように、永久磁石650が配置されている。また、離座時の第1、2異物収容部615c、625bにおける磁束密度が離座時の弁座座面615a及び弁体座面625aにおける磁束密度よりも高くなるように、永久磁石650が配置されている。また、弁座座面615aと第1、2異物収容部615c、625bとの磁束密度の差を大きくしている。
以上のように構成された圧縮機は、車両用空調装置において、吐出室5bが吐出通路50を介して凝縮器に接続され、凝縮器が膨張弁を介して蒸発器に接続され、蒸発器が吸入室5aに接続される。そして、エンジン等によって駆動軸11が回転駆動されれば、斜板17の傾斜角に応じた吐出容量で吸入室5a内の冷媒を圧縮室31で圧縮して吐出室5bに吐出する。
この間、例えば、搭乗者による空調温度の変更指令や、車両のエンジン等の回転数の変化等に対応して容量制御弁2が作動する。そして、吐出室5b内の高圧の冷媒が給気通路44、46を介してクランク室9に供給されれば、クランク圧が上がり、斜板17の傾斜角が減少して、吐出容量が小さくなる。逆に、吐出室5b内の高圧の冷媒が給気通路44、46を介してクランク室9に供給され難くなれば、クランク圧が下がり、斜板17の傾斜角が増加して、吐出容量が大きくなる。こうして、この圧縮機では、吐出容量が適宜変更され得ることとなる。
ここで、逆止弁600は以下のように動作する。斜板17の傾斜角が小さくなって圧縮機の吐出容量が小さくなり、吐出室5bから吐出される冷媒の流量が少なくなると、吐出室5bと吐出通路50の下流側との圧力差が所定値ΔP1以下となる。そうすると、図2に示すように、永久磁石650と弁体620との間に作用する吸引力により、弁体620が弁座610に向かって付勢されて弁座610に着座し、弁体620が弁孔611を閉鎖する。そして、その状態が永久磁石650と弁体620との間に作用する吸着力により維持される。その結果、吐出通路50が閉鎖状態となり、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器間の冷媒循環が停止する。この時、圧縮機は、圧縮機への冷媒の吸入と、圧縮機からの冷媒の吐出が行われないオフ運転の状態となる。この状態においては、斜板17は回転するが圧縮は行われず、圧縮機内部で極少量の冷媒が循環する。
その一方、斜板17の傾斜角が増加すると、圧縮機の吐出容量が大きくなり、吐出室5bから吐出される冷媒の流量も増加し、吐出室5bと吐出通路50の下流側との圧力差が所定値ΔP2を超える。そうすると、永久磁石650と弁体620との間に作用する吸着力がその圧力差に負けて、弁体620が弁孔611を閉鎖できなくなり、弁体620が案内部材630に案内されて弁座610から離反する。そうすると、図6に実線S1で示すように、永久磁石650と弁体620との間に作用する吸引力が急激に低下するので、弁孔611を通過する冷媒に弁体620がさらに押される。このため、弁体620が弁座610から大きく離反して、弁体620が窓633bを開放する。その結果、吐出通路50が速やかに全開状態に切り替わり、圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器間の冷媒循環が行われる。
ここで、弁体の変位量と、弁体を弁座に付勢する付勢力又は磁力との関係を図6に示す。実線S1は実施例1における弁体620の変位量と磁力との関係を示している。磁力は、弁体620の変位量が0の場合は吸着力であり、変位量が0より大きい場合は吸引力である。一方、実線S2は、バネのみによって弁体を弁座に付勢する逆止弁において、弁体の変位量と付勢力との関係を示している。この例では、実施例1の逆止弁600から永久磁石650を除き、弁体を弁座に向かって付勢するバネを採用した逆止弁を想定している。
実施例1の逆止弁600は、弁座610と弁体620とを吸引力により互いに接近するように付勢する永久磁石650を採用している。このため、図6に実線S1で示すように、弁孔611の開放時、すなわち、弁体620の変位量が0より大きくなる場合、永久磁石650と弁座610との間に作用する吸引力が急激に低下する。一方、バネによる逆止弁は、図6に実線S2で示すように、弁孔の開放時、すなわち、弁体の変位量が0より大きくなる場合、バネが弁体を弁座に付勢する付勢力が比例的に増加する。このため、実施例1の逆止弁600は、バネによる逆止弁と比較して、弁孔611の開放時に弁体620が弁座610から離れ易い。このため、この逆止弁600は、特に低流量時に、吐出室5bと吐出通路50の下流側との圧力差が小さくても、弁孔611を確実に開放でき、冷媒が吐出室5bから弁孔611を介して吐出通路50の下流側に流れる際の圧力損失を低減できる。
また、この逆止弁600では、永久磁石650を弁座610に設けつつ、その永久磁石650として、弁座610を含む磁気回路MCの磁束密度が飽和磁束密度の90%以上である状態が圧縮機の使用温度域0〜Tで存在するものを採用している。磁束密度が飽和磁束密度の90%以上である状態は、永久磁石650の材質、体格及び磁気回路MCの磁束密度が最も高い部分の断面積を設定することで得られる。この場合、弁座610は、永久磁石650によって磁界が上昇しても、磁束密度がほとんど変化しない磁気特性を発揮する。このため、圧縮機の温度が変化しても、弁座座面615a及び弁体座面625aを通過する磁束線の量の増加は僅かであり、弁座610と弁体620との間に作用する吸着力の増加は少なく、開弁圧の上昇が抑制される。
したがって、この逆止弁600は、圧力損失を低減できるとともに、開弁圧のばらつきを小さくすることが可能である。すなわち、この逆止弁600は、バネによる逆止弁と同等の開弁圧のばらつきに調整され得る。そして、逆止弁600全体の体格の他、各部品の寸法や構成の設計により、永久磁石650の体格の差及び温度差による開弁圧のばらつきを無視できるようにすることも可能である。
また、この圧縮機は、逆止弁600が圧力損失を低減できるとともに、開弁圧のばらつきを小さくできるため、起動時や低容量運転時に安定した起動及び動力低減を実現することができる。
特に、この逆止弁は、非磁性材料からなる案内部材630を備えているため、永久磁石650の磁束線が案内部材630に向かって流れ難い。このため、弁座610と弁体620との間の磁束密度が高くなるので、開弁圧が安定する。
また、この逆止弁では、弁座610が永久磁石650を保持しているため、弁体620の重量は軽く、上流側と下流側との圧力差の変動に対する弁体620の作動性が向上している。
さらに、この逆止弁では、冷媒に含まれ得る磁性材料からなる異物が弁座610側の第1異物収容部615c及び弁体620側の第2異物収容部625bに収容される。このため、閉弁時には、当接する弁座座面615aと弁体座面625aとの間にその異物は吸着し難く、弁座座面615aと弁体座面625bとの間に異物が噛み込み難い。このため、この逆止弁では、着座時に弁座座面615aと弁体座面625bとの間に隙間を生じ難く、弁孔611をより確実に閉じることができる。
また、この逆止弁は、弁体620を弁座610に向かって付勢するバネを備えていないため、部品点数の削減及び組み付け作業の簡素化を実現している。
なお、弁体620及び弁座610は、全体が磁性材料でなくともよい。永久磁石650と弁体620又は弁座610との間に磁束集中領域を発生させて異物を吸引できればよいので、弁体620及び弁座610は、少なくとも永久磁石650の側面に配置される部分が磁性材料であればよい。また、弁座座面615a及び弁体座面625a自体が磁性材料でなくともよい。弁体620及び弁座610を磁性材料で形成し、弁座座面615a及び弁体座面625aに樹脂コートをしてもよい。
(実施例2)
実施例2として、図8に符号A2で示す特性を有する永久磁石を採用することも可能である。この永久磁石は、圧縮機の使用温度域0〜Tの全域において、磁気回路MCの磁束密度が実質的に飽和している。圧縮機が最低使用温度0から最高使用温度Tを超え、温度T2になるまで、磁気回路MCの磁束密度が実質的に飽和している。この場合、温度が変化しても磁束密度が変化し難く、開弁圧のばらつきを確実に小さくできる。実施例2の永久磁石も寸法公差が最小のものである。
(実施例3)
実施例3として、図9に符号A3で示す特性を有する永久磁石を採用することも可能である。圧縮機の最高使用温度Tにおいて、この永久磁石によって形成される磁気回路MCの磁束密度は飽和磁束密度の90%以上であり、開弁圧HA3は許容範囲Sの下限である。圧縮機の最低使用温度0における磁気回路MCの磁束密度は飽和磁束密度の90%以上であり、開弁圧LA3は許容範囲S内である。圧縮機の使用温度が最高使用温度Tから最低使用温度0まで低下すれば、磁界が僅かに強くなり、磁束密度も磁界が強くなるに従って僅かに上昇し、開弁圧も僅かに上昇するが、圧縮機の使用温度域0〜Tにおいて、磁気回路MCの磁束密度は飽和磁束密度の90%以上であり、許容範囲S内に収まっている。実施例3の永久磁石も寸法公差が最小のものである。
(実施例4)
実施例4として、図9に符号A4で示す特性を有する永久磁石を採用することも可能である。圧縮機の最高使用温度Tにおいて、この永久磁石によって形成される磁気回路MCの磁束密度は飽和磁束密度の90%以上であり、開弁圧HA4は許容範囲S内である。圧縮機の最低使用温度0における磁気回路MCの磁束密度は飽和磁束密度の90%以上であり、開弁圧LA4は許容範囲Sの上限である。圧縮機の使用温度が最高使用温度Tから最低使用温度0まで低下すれば、磁界が僅かに強くなり、磁束密度も磁界が強くなるに従って僅かに上昇し、開弁圧も僅かに上昇するが、圧縮機の使用温度域0〜Tにおいて、磁気回路MCの磁束密度は飽和磁束密度の90%以上であり、許容範囲S内に収まっている。実施例4の永久磁石も寸法公差が最小のものである。
(比較例1)
比較例1として、図9に符号B1で示す特性を有する永久磁石を採用することは好ましくない。比較例1の永久磁石は、例えば、温度変化率の高い材料を選択した場合であり、グラフの傾斜が大きくなっており、圧縮機の最低使用温度0においても、最高使用温度Tにおいても、磁気回路MCの磁束密度は飽和磁束密度の90%未満である。したがって、最低使用温度0における開弁圧LB1は許容範囲S内であっても、最高使用温度Tにおける開弁圧HB1は許容範囲Sの下限を下回っている。
(比較例2)
比較例2として、図9に符号B2で示す特性を有する永久磁石を採用することも好ましくない。比較例2の永久磁石は、例えば、温度変化率が適切な材料を選択しているが、永久磁石の体格が大きすぎる場合である。この永久磁石は、圧縮機の使用温度域0〜Tにおいて許容範囲S内に収まっていない。
(変形例)
上記実施例1では、弁座610及び弁体620の円盤部625として、S45C焼なまし材からなる鉄鋼を採用した。この場合の磁化特性、つまり磁界の強さH(A/m)と磁束密度B(T)との関係は図10のようになる。また、磁界の強さH(A/m)と磁束密度の傾き(ΔB/ΔH)との関係は図11のようになる。
図10及び図11において、磁界の強さがHs(A/m)の時の磁束密度が実質的に飽和していると考えれば、磁束密度が飽和磁束密度の90%において、磁界の強さはH1(A/m)、磁束密度の傾きは1.5×10-4となる。また、磁束密度が飽和磁束密度の95%において、磁界の強さはH2(A/m)、磁束密度の傾きは0.5×10-4となる。磁束密度の変化率が1.5×10-4より小さければ、実質的に飽和状態と言える。このため、圧縮機の使用温度域に磁束密度が飽和磁束密度の90%以上である状態が存在すれば妥当である。
図12に種々の磁性体の磁化曲線を示す。Aは焼なまし材であることを示し、Qは焼入れ材であることを示す。弁座610及び弁体620の円盤部625として、他の磁性体を採用する場合には、磁束密度の変化率が1.5×10-4より小さくなる範囲で磁束密度が飽和磁束密度の90%以上であるようにすることが可能である。
以上において、本発明を実施例1〜4及び変形例に即して説明したが、本発明は上記実施例1〜4及び変形例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、逆止弁600の向きを上下方向に向けてもよいし、リヤハウジング5以外の位置に設けてもよい。
実施例1〜4では逆止弁600を吐出側に搭載しているが、逆止弁600を吸入側に搭載してもよい。
また、磁気回路MCの磁束密度が実質的に飽和状態になる永久磁石650とするためには、実施例1〜4の手段の他、永久磁石650の残留磁束密度を上げる、永久磁石650の体格を大きくする等の手段を採用することができる。