以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが、本発明に必須とは限らない。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る撮像装置100の概略構成を示すブロック図である。図1において、撮影レンズ110は、フォーカスレンズやズームレンズ等、複数のレンズ群、絞り機構などから構成される。レンズ制御部111は、システム制御回路180による制御に基づいて、撮影レンズ110のフォーカスやズーム、絞りを制御する。撮像素子120は、光電変換により入射光量に応じた電荷を生成して出力するCMOSセンサであり、全画素の信号を読み出す以外に、特定の画素の加算及び特定の行又は列おきに間引いて電荷を読み出すこともできる。
撮像素子駆動回路121は、システム制御回路180による制御に基づいて撮像素子120を駆動する。撮像素子駆動回路121の制御に基づいて電子シャッタタイミング等を制御することにより、撮像素子120の撮影時の露光時間、信号読み出しレート(撮像レート)、及び信号増幅量などを変更することができる。
撮像素子120から出力された画像信号は、ダイナミックレンジ拡大回路200を内包する画像処理回路130に取り込まれる。ダイナミックレンジ拡大回路200は、予めメモリ140に保存された高露出画像及び低露出画像を用いて、ダイナミックレンジ拡大画像を生成する機能を備えている。また、動き検出回路210は、必要に応じて、処理対象フレーム及び前フレームの画像から主被写体の動き量を検出する処理を行い、検出結果をシステム制御回路180に伝達する。
画像処理回路130は、画像信号をデジタル変換するとともにガンマ処理、色信号処理、露出補正処理などの各種信号処理を行う。また、画像処理回路130は、ズーム操作に伴う拡大、縮小といった画像変倍処理(所謂、電子ズーム処理)も行う。この際に、画像処理回路130は、メモリ140との間で画像信号の書き込み/読み出し処理を行う。また、画像処理回路130の出力は、LCD150に表示することも可能である。
画像処理回路130で画像処理が施された画像データは、画像変換回路160により圧縮され、メモリカード170に書き込まれる。画像変換回路160は、画像処理回路130からの画像データを圧縮してメモリカード170へ出力する機能と、メモリカード170より読み出した画像データを伸長して画像処理回路130へ出力する機能とを有している。
システム制御回路180は、画像処理回路130にて処理された信号を用いて、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のオートフォーカス(AF)処理、自動露出(AE)処理、フラッシュプリ発光(EF)処理等を行う。なお、画像撮影時の露出条件については、システム制御回路180は、自動露出(AE)処理の結果やダイナミックレンジ拡大に必要な条件などから任意の条件を算出し、レンズ制御部111や撮像素子駆動回路121に指示することができる。
操作部190は、ユーザが撮像装置100に指示を入力するための操作部であり、例えば、レリーズ釦やモード切り換えダイヤル、ズーム操作レバーなどを含む。操作部190を介したユーザ入力は、システム制御回路180に通知される。
操作部190を介したズーム操作が行われる場合、ズーム操作を指示するユーザ入力がシステム制御回路180に入力される。システム制御回路180は、このユーザ入力に従い、ズーム制御を行う。システム制御回路180は、ズーム倍率と、ズーム倍率の値により振り分けられる光学ズームか電子ズームかを示す光学ズームステータスフラグFLGと、ズームスピードsとを算出する。光学ズームステータスフラグFLGは、光学ズームの場合は「1」にセットされ、電子ズームの場合は「0」にセットされる。システム制御回路180は、システム制御回路180内部のパラメータ記憶領域(不図示)に、光学ズームステータスフラグFLG及びズームスピードsを一時的に記憶する。
続いて、第1の実施形態に係る動画像撮影処理について、図2乃至図5を参照して説明する。図2は、第1の実施形態に係る動画像撮影処理を示すフローチャートである。図3は、動画像撮影時の撮像素子120の駆動タイミングを示すタイミングチャートである。図4は、光学ズームステータスフラグ及びズームスピードの値に応じた撮像制御の変化を定義する撮像制御テーブルである。図5は、HDR画像を生成する様子を模式的に説明する図である。
本実施形態の動画像撮影処理では、システム制御回路180は、露光量の異なる複数の画像を所定の撮像レートで撮像する制御を行う。また、画像処理回路130(生成出力手段)は、こうして撮像された複数の画像からハイダイナミックレンジ(HDR)画像を生成し、動画像を構成するフレーム画像として出力する。システム制御回路180は、ズームの状態に応じて、合成対象画像(露光量の異なる複数の画像)の撮像タイミングを制御する。撮像タイミングの制御の具体例として、本実施形態では、システム制御回路180は、合成対象画像の撮像レートを制御する。
図3において、判別信号は、システム制御回路180が撮像素子駆動回路121に出力する制御信号である。システム制御回路180は、光学ズームステータスフラグFLG及びズームスピードsの値に基づいて判別信号を出力する。図4に示すように、光学ズームステータスフラグFLGが1の場合、ズームスピードsが所定の閾値s0未満(閾値未満)であれば論理レベルLoの判別信号が、所定の閾値s0以上であれば論理レベルHiの判別信号が、それぞれ出力される。また、光学ズームステータスフラグFLGが0の場合には、ズームスピードsの値によらず論理レベルLoの判別信号が出力される。撮像素子駆動回路121は、判別信号に応じて、撮像レートを切り換える。
ズームスピードsの判定の閾値s0は、ズームレンズの移動距離によって低露出画像と高露出画像の2枚の画像間で生じる画角差が、HDR合成時に画像ぶれとして認知されるか否かの境界値に設定される。
なお、図示しないが、システム制御回路180は、光学ズームステータスフラグFLGが1の場合、ズームスピードに関わらず論理レベルHiの判別信号を出力してもよい。また、システム制御回路180は、光学ズームステータスフラグの代わりに、光学ズームと電子ズームとを区別しないズームステータスフラグに基づいて判別信号を決定してもよい。この場合、ズームステータスフラグは、(光学ズームであれ電子ズームであれ)ズーム動作中は「1」にセットされ、非ズーム動作中は「0」にセットされる。
再び図3を参照すると、出力同期信号は、合成後の画像を出力するタイミングを指示する同期信号であり、この周期が動画像のフレームレートに対応する。また、撮影同期信号は、1枚の画像(合成対象画像)を撮像するタイミングを指示する同期信号であり、この周期が、撮像素子120による撮像のフレームレート(撮像レート)に対応する。図3の例では、出力同期信号の周期は(1/30)秒である。また、撮影同期信号の周期は、判別信号=Loの場合(ズーム倍率が変更中でない場合、又はズームスピードが低速の場合)は(1/60)秒であり、判別信号=Hiの場合は(1/120)秒である。
また、図3は、撮像画像及び合成後の出力画像を、撮像タイミング及び合成タイミングを示す概念図として表しており、低露出画像をL、高露出画像をH、これらの画像の合成後のHDR画像をHDR(LH)として記号表記している。
低露出画像Lと高露出画像Hの露出条件は、絞り制御や撮像素子120の信号増幅量の条件設定の他に、撮像素子駆動回路121によって撮影時露光時間を設定することで決定される。この例では、適正露光条件における露光時間として、時間パラメータTを1/2000〜1/250秒の間で設定し、撮影時露光時間を低露出画像Lでは(T/2)、高露出画像Hでは(2*T)となるように、適正露光条件からそれぞれ露出量をシフトしている。
低露出画像Lと高露出画像Hとの間の撮影の時間間隔は、通常の撮像レートの場合に対して、2倍速度の撮像レートの際には半分の長さに短縮される。そのため、撮像レートを2倍に上げることで、ズームレンズの移動距離によって画像間で生じる画角差を半分に抑えることができる。換言すると、撮像レートを高速化することにより、合成対象画像の最初の撮像タイミングと最後の撮像タイミングとの差が小さくなり、合成対象画像間の画角差も小さくなる。また、図3の例では合成対象画像は2枚であるが、何枚であっても、合成対象画像の最初の撮像タイミングと最後の撮像タイミングとの差を小さくすれば、合成対象画像間の画角差を小さくすることができる。
ここで図5を参照して、HDR画像の生成の具体例を説明する。図5には、低露出画像及び高露出画像それぞれの露出条件と撮影信号の入出力レンジとの関係が示されている。
低露出画像Lを撮像する場合、システム制御回路180は、適正より1段アンダーの低露出条件によりフルレンジ−1段のレンジを用いて画像の撮像処理を行う。そして、画像処理回路130は、撮像された画像を、露出補正処理により+1段のゲインアップで適正レンジとなるように補正する。この際のゲインアップにより、出力レンジの下位側ではノイズや階調精度の劣化による黒潰れや画質劣化が生じやすい。
高露出画像Hを撮像する場合、システム制御回路180は、適正より1段オーバーの高露出条件によりフルレンジ+1段のレンジを用いて画像の撮像処理を行う。そして、画像処理回路130は、撮像された画像を、露出補正処理により−1段のゲインダウンで適正レンジとなるように補正する。この際に、出力レンジの上位半分は、レンジオーバーにあるため正しく再現できない階調領域(所謂、白飛びが発生する領域)となる。
HDR合成画像(LH)は、それぞれ適正露出部分として、低露出画像Lから抽出した上位半分のレンジの画像データと、高露出画像Hから抽出した下位半分のレンジの画像データとを合成して生成される。なお、段数はスケールの単位を表し、+1段は2倍、−1段は(1/2)倍に相当する。
次に、図2を参照して、本実施形態の動画像撮影処理について説明する。操作部190のレリーズ釦やモード切り換えダイヤル等を介して動画撮影の開始指示がシステム制御回路180に入力されると、動画像撮影処理が開始する。図2のフローチャートにおいて、各ステップの処理は、特に断らない限り、システム制御回路180が制御プログラムを実行することにより実現される。
S201で、システム制御回路180は、既定の露出条件にて1フレームの撮影を行い、撮像画像をメモリ140に保存する。S202で、システム制御回路180は、メモリ140に保存された撮像画像に基づく自動露出(AE)処理を行い、被写体の適正露出条件を算出する。
次に、システム制御回路180は、システム制御回路180の内部に設けられた図4に示すような撮像制御テーブルを参照して、S203乃至S212の処理を実行する。具体的には、S203で、システム制御回路180は、ズーム倍率が変更中であるか否かを判定する。この判定のために、システム制御回路180は、光学ズームステータスフラグFLGをチェックする。FLG=0の場合(即ち、ズーム倍率が変更中でない場合)、処理はS205に進む。S205で、システム制御回路180は、論理レベルLoの判別信号を撮像素子駆動回路121へ出力する。その結果、撮像素子駆動回路121は、通常の撮像レートで撮像を行うために、撮影同期信号の周期を(1/60)秒に設定する。
次にS206で、システム制御回路180は、S202で算出された適正露出条件より1段アンダーの低露出条件にて1フレームの撮影を行い、低露出画像Lをメモリ140に保存する。続いてS207で、システム制御回路180は、適正露出条件より1段オーバーの高露出条件にて1フレームの撮影を行い、高露出画像Hをメモリ140に保存する。
一方、S203においてFLG=1であった場合(即ち、ズーム倍率が変更中であった場合)、処理はS204に進む。
S204で、システム制御回路180は、ズームスピードsの値をチェックする。s<s0の場合(即ち、ズーム倍率の変更の速度が閾値未満の場合)、処理はS205に進む。この場合、S203においてFLG=0であった場合と同様に、通常の撮像レートでの撮像が行われる。
一方、S204においてs≧s0であった場合、処理はS208に進む。S208で、システム制御回路180は、論理レベルHiの判別信号を撮像素子駆動回路121へ出力する。その結果、撮像素子駆動回路121は、通常の撮像レート(所定の撮像レート)よりも高速な撮像レートで撮像を行うために、撮影同期信号の周期を(1/120)秒に設定する。
S209乃至S212で、システム制御回路180は、S206及びS207と同様に、低露出画像L及び高露出画像Hの撮像を行う。但し、S206及びS207の場合と異なり、撮像レートが通常の2倍であるため、低露出画像L及び高露出画像Hは2セット撮像される。即ち、S209及びS210において1セット目の低露出画像L及び高露出画像Hが撮像され、S211及びS212において2セット目の低露出画像L及び高露出画像Hが撮像される。システム制御回路180は、2セット目の低露出画像L及び高露出画像Hについては、メモリ140に保存せずに破棄してもよい。
S207又はS212に続いて、S213で、画像処理回路130は、メモリ140に記憶された低露出画像L及び高露出画像Hをダイナミックレンジ拡大回路200で合成することにより、HDR合成画像(LH)を生成する。
S214で、画像処理回路130は、S213で得られたHDR合成画像(LH)に対して各種の画像処理を施し、このHDR合成画像(LH)をLCD150又は画像変換回路160に対して出力する。このように、S203乃至S214の処理により、ズームの動作状態に応じた撮像レートで撮像された低露出画像L及び高露出画像Hから生成されたHDR合成画像(LH)が、動画像の1フレーム分の画像として出力される。
S215で、システム制御回路180は、操作部190のレリーズ釦やモード切り換えダイヤル等を介して動画撮影の終了指示が入力されたか否かを判定する。終了指示が入力されるまで、S202乃至S214の処理が繰り返される。換言すると、終了指示が入力されるまで、システム制御回路180は、ズームの動作状態に応じた撮像レートで低露出画像L及び高露出画像Hを撮像する処理(撮像制御)を繰り返す。そして、画像処理回路130は、HDR合成画像(LH)を出力する。
なお、図4を参照して前述した通り、システム制御回路180は、光学ズームステータスフラグFLGが1の場合、ズームスピードに関わらず論理レベルHiの判別信号を出力してもよい。この場合、S204の判定処理は省略され、S203においてFLG=1であった場合、処理はS203からS208に進む。また、システム制御回路180は、光学ズームステータスフラグの代わりに、光学ズームと電子ズームとを区別しないズームステータスフラグに基づいて判別信号を決定してもよい。この場合、システム制御回路180は、光学ズームだけでなく電子ズームによるズーム倍率の変更も考慮し、ズーム倍率の変更中は処理をS203からS204に進める。
また、図2のフローチャートにおいては、システム制御回路180が所定期間内に2枚の画像(低露出画像L及び高露出画像H)を撮像するものとしたが、撮像枚数は2枚に限定されず、露光量の異なる3枚以上の画像を撮像してもよい。
また、システム制御回路180は、S211及びS212で撮像された2セット目の低露出画像L及び高露出画像Hを破棄せずに、例えばオートフォーカス(AF)処理や自動露出(AE)処理のために利用してもよい。或いは、システム制御回路180は、S211及びS212では画像を撮像する制御を行わず、省電力化を図ってもよい。
また、本実施形態では、説明を簡単にするため低露出条件及び高露出条件をそれぞれ適正露出条件のプラスマイナス1段としたが、これらの条件は適宜変更可能である。
以上説明したように、本実施形態によれば、撮像装置100は、ズーム倍率が変更中でない場合は露光量の異なる複数の画像を所定の撮像レートで撮像する。また、撮像装置100は、ズーム倍率が変更中の場合は所定の撮像レートよりも高速な撮像レートで撮像を行うことにより、HDR画像合成の合成対象画像の最初の撮像タイミングと最後の撮像タイミングとの差を小さくする。その結果、ズーム倍率の変更に起因する合成対象画像間の画角差を小さくすることができる。
従って、撮像装置によりHDR画像合成を行いながら動画を撮影中にズーム動作が行われる場合に、出力される画像のぶれを、ズーム速度を制限せずに抑制することが可能となる。
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、撮像装置100は、HDR画像合成のための複数の合成対象画像の最初の撮像タイミングと最後の撮像タイミングとの差を小さくするために、撮像レートを高速化した。しかしながら、撮像タイミングの差を小さくする制御は、これに限定されない。
そこで、第2の実施形態では、撮像タイミングの別の制御例として、低露出画像と高露出画像との間のシャッタ位相タイミングを変える構成について説明する。なお、本実施形態において、撮像装置100の構成は第1の実施形態(図1参照)と同様であるため、その説明を省略する。また、HDR画像の生成方法も第1の実施形態(図5参照)と同様であるため、その説明を省略する。
第2の実施形態に係る動画像撮影処理について、図6乃至図11を参照して説明する。図6は、第2の実施形態に係る動画像撮影処理を示すフローチャートである。図7は、動画像撮影時の撮像素子120の駆動タイミングを示すタイミングチャートである。図8は、光学ズームステータスフラグ及びズームスピードの値に応じた撮像制御の変化を定義する撮像制御テーブルである。図9は、電子シャッタ回路の基本構成の一例を示す図である。図10は、1行単位の電子シャッタの基本動作を説明するタイミングチャートである。
図9に示すように、撮像素子120内に含まれる電子シャッタ回路は、画素配列から特定の読み出し行を選択する垂直走査回路900と、フォトダイオードに蓄積された光信号電荷をリセットするリセットトランジスタ901とを含む。また、電子シャッタ回路は、フォトダイオードに蓄積された光信号電荷をフローティングディフフュージョンに転送する転送トランジスタ902と、光電変換素子であるフォトダオード(PD)903とを含む。また、電子シャッタ回路は、光信号電荷をFD電位に転換するフローティングディフュージョン(FD)904と、特定行を選択して画素ソースフォロアを作動させてFD電位を垂直出力線に読み出すための行選択トランジスタ905とを含む。また、電子シャッタ回路は、FD電位を垂直出力線に読み出すバッファアンプである画素ソースフォロア(SF)906と、各列で共通の垂直出力線907と、読み出し回路の1画素信号の構成単位である画素908とを含む。
垂直走査回路900からは、転送トランジスタ902を制御して光信号電荷を読み出すための転送信号909、及び、行選択トランジスタ905を制御して特定行を選択するための行選択信号910が出力される。また、垂直走査回路900からは、リセットトランジスタ901を制御してPD903をリセットするためのPDリセット信号911が出力される。そして、これらの制御信号は行ごとに独立して制御可能なように行数分だけ設けられており、垂直走査回路900から各画素908へ供給される。
図10において、行選択信号がHiレベル期間に選択された行に対して、PDリセット信号のHiレベル期間の終了から転送信号のHiレベル期間の終了までの期間のタイミングを制御することで、各行単位の露光時間が決定される。これがシャッタ位相タイミングとなって1行単位のシャッタ動作を為している。垂直走査回路900は、これらのシャッタ動作を選択行を変えながら順次実行していくことで、全行1フレーム分のシャッタ動作を為している(所謂、ローリングシャッタ方式)。
図7において、判別信号は、システム制御回路180が撮像素子駆動回路121に出力する制御信号である。システム制御回路180は、光学ズームステータスフラグFLG及びズームスピードsの値に基づいて判別信号を出力する。図8に示すように、光学ズームステータスフラグFLGが1の場合、ズームスピードsが所定の閾値s0未満(閾値未満)であれば論理レベルLoの判別信号が、所定の閾値s0以上であれば論理レベルHiの判別信号が、それぞれ出力される。また、光学ズームステータスフラグFLGが0の場合には、ズームスピードsの値によらず論理レベルLoの判別信号が出力される。撮像素子駆動回路121は、判別信号に応じて、シャッタ位相タイミングを切り換える。
ズームスピードsの判定の閾値s0は、ズームレンズの移動距離によって低露出画像と高露出画像の2枚の画像間で生じる画角差が、HDR合成時に画像ぶれとして認知されるか否かの境界値に設定される。
なお、図示しないが、第1の実施形態と同様、システム制御回路180は、光学ズームステータスフラグFLGが1の場合、ズームスピードに関わらず論理レベルHiの判別信号を出力してもよい。また、システム制御回路180は、光学ズームステータスフラグの代わりに、光学ズームと電子ズームとを区別しないズームステータスフラグに基づいて判別信号を決定してもよい。この場合、ズームステータスフラグは、(光学ズームであれ電子ズームであれ)ズーム動作中は「1」にセットされ、非ズーム動作中は「0」にセットされる。
再び図7を参照すると、出力同期信号は、合成後の画像を出力するタイミングを指示する同期信号であり、この周期が動画像のフレームレートに対応する。また、撮影同期信号は、1枚の画像(合成対象画像)を撮像するタイミングを指示する同期信号であり、この周期が、撮像素子120による撮像のフレームレート(撮像レート)に対応する。図7の例では、出力同期信号の周期は(1/30)秒である。また、撮影同期信号の周期は、(1/60)秒である。
また、図7は、撮像画像及び合成後の出力画像を、撮像タイミング及び合成タイミングを示す概念図として表しており、低露出画像をL、高露出画像をH、これらの画像の合成後のHDR画像をHDR(LH)として記号表記している。
低露出画像Lと高露出画像Hの露出条件は、絞り制御や撮像素子120の信号増幅量の条件設定の他に、撮像素子駆動回路121の持つ電子シャッタ機能を利用して撮影時露光の開始時間と終了時間とを設定することで決定される。この例では、適正露光条件における露光時間として、時間パラメータTを1/2000〜1/250秒の間で設定し、撮影時露光時間を低露出画像Lでは(T/2)、高露出画像Hでは(2*T)となるように、適正露光条件からそれぞれ露出量をシフトしている。
低露出画像L及び高露出画像Hは、通常はそれぞれ撮影同期信号に同期して所定のタイミングで露光が開始されている。従って、低露出画像Lと高露出画像Hとの間の撮像の時間間隔t1は、撮影同期信号の周期である(1/60)秒にほぼ等しい。本実施形態では、低露出画像Lと高露出画像Hとの間の撮像の時間間隔を短縮するために、低露出画像Lの露光開始タイミングを時間dl0だけ遅延させて、時間間隔t2(=t1−dl0)を得る。換言すると、複数の合成対象画像の最初の撮像タイミングを遅らせて、2番目の撮像タイミングに近づける。これにより、ズームレンズの移動距離によって合成対象画像間で生じる画角差を、遅延時間dl0に応じて小さくすることができる。
図11は、図7に示すシャッタ位相タイミングの制御を具体的に実現するための詳細な制御タイミングチャートである。図11において、シャッタ位相タイミングはPDリセット信号と転送信号とで決定されており、これらの制御を垂直行方向に、行ごとに順次走査していくことで1フレームのシャッタ動作を為している。そのために、フレームの上部の行と下部の行とでは露光タイミングが少しずつ異なる。
判別信号がLoの場合、低露出撮影、高露出撮影ともに転送信号は撮影同期信号に同期して所定のタシミングで出力される。そして、PDリセット信号は、低露出撮影で露光時間が(T/2)、高露出撮影で露光時間が(2*T)となるように転送信号から時間を遡ったタイミングで出力される。
判別信号がHiに変わると、PDリセット信号と転送信号は、高露出撮影のフレームはそのままで、低露出撮影のフレームのみ共に時間dl0だけ遅延させられる。これにより、露光時間(T/2)を変えずに、高露出撮影と低露出撮影の時間間隔が短縮される(時間間隔がt1からt2に短縮される)。
次に、図6を参照して、本実施形態の動画像撮影処理について説明する。操作部190のレリーズ釦やモード切り換えダイヤル等を介して動画撮影の開始指示がシステム制御回路180に入力されると、動画像撮影処理が開始する。図6のフローチャートにおいて、各ステップの処理は、特に断らない限り、システム制御回路180が制御プログラムを実行することにより実現される。また、図6のフローチャートにおいて、図2と同一又は同様の処理が実行されるステップには同一の符号を付し、その説明を省略する。図6のフローチャートにおいて、図2のフローチャートからの変更点は、S205及びS208がS605及びS606に置き換わった点、及び、S605からだけでなくS606からも処理がS206へ移行する点である。
システム制御回路180は、システム制御回路180の内部に設けられた図8に示すような撮像制御テーブルを参照して、S203、S204、S605、及びS606の処理を実行する。
S203においてFLG=0であった場合、及び、S203においてFLG=1であったがS204においてズームスピードsが閾値s0未満(閾値未満)であった場合、S605の処理が行われる。S605で、システム制御回路180は、撮像素子駆動回路121を制御してシャッタ位相タイミング設定を行う。そして、低露出画像Lと高露出画像Hとの間の撮影時間間隔tを、通常時の時間間隔であるt1に設定する。
一方、S203においてFLG=1でありS204においてズームスピードsが閾値s0以上であった場合、S606で、システム制御回路180は、撮像素子駆動回路121を制御してシャッタ位相タイミング設定を行う。そして、低露出画像Lと高露出画像Hとの間の撮影時間間隔tを、t1よりも短いt2に設定する。これにより、HDR画像合成のための複数の合成対象画像の最初の撮像タイミングと最後の撮像タイミングとの差が小さくなる。
以上の処理により、S215において終了指示が入力されるまで、ズームの動作状態に応じたシャッタ位相タイミングでの画像の撮像が行われる。
なお、本実施形態では、シャッタ位相タイミングを、通常のt1と、これより短いt2との間で切り替えた。しかしながら、ズームスピードsに応じてシャッタ位相タイミングの3段階以上の切り替えを行っても構わない。例えば、システム制御回路180は、s0≦s<s1(s0<s1)の場合、シャッタ位相タイミングをt2に設定し、s≧s1の場合、シャッタ位相タイミングをt3(t3<t2)に設定する。これにより、ズームスピードが更に高速化した場合であっても、HDR画像のぶれを低減することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、撮像装置100は、ズーム倍率が変更中でない場合は露光量の異なる複数の画像を所定の撮像レートで撮像する。また、撮像装置100は、ズーム倍率が変更中の場合は、これら複数の画像の最初の撮像タイミングを遅らせて2番目の撮像タイミングに近づけることにより、HDR画像合成の合成対象画像の最初の撮像タイミングと最後の撮像タイミングとの差を小さくする。その結果、ズーム倍率の変更に起因する合成対象画像間の画角差を小さくすることができる。
従って、撮像装置によりHDR画像合成を行いながら動画を撮影中にズーム動作が行われる場合に、出力される画像のぶれを、ズーム速度を制限せずに抑制することが可能となる。
[その他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。