JP5943624B2 - 被覆正極活物質、および該被覆正極活物質を用いてなる全固体リチウム二次電池 - Google Patents

被覆正極活物質、および該被覆正極活物質を用いてなる全固体リチウム二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、電池特性に優れる被覆正極活物質、および該被覆正極活物質を用いてなる全固体リチウム二次電池に関するものである。
近年、携帯電話、デジタルカメラ、ノートパソコンなどの情報関連機器や通信機器の電源として、リチウムイオン伝導性に基づく電池特性が発現されたリチウム二次電池が多く用いられている。リチウム二次電池としては、電解塩が非水系溶媒に溶解された溶解液が電解質として含有されているものが広く知られている。しかしながら、非水系溶媒は可燃性であるため、このようなリチウム二次電池は安全性の観点から好ましくない場合がある。
上記のような問題に対し、安全性を確保することを目的として、非水系溶媒を含有しない電解質、つまり、固体材料からなる電解質(固体電解質)が用いられた全固体リチウム二次電池が広く用いられている。しかしながら、固体中におけるリチウムイオン伝導性は液体中におけるリチウムイオン伝導性よりも劣っているため、固体リチウム二次電池の電池特性は、非水系溶媒である電解質が用いられたリチウム二次電池の電池特性と比較すると劣るという問題があった。
固体リチウム二次電池の電池特性を向上させるため、正極活物質の表面に対してリチウムイオン伝導性を有する物質で被覆することが検討されている。例えば、特許文献1には、LiCoO、LiMn、Feから選択される原料粒子の表面に、ニッケル、マンガン、鉄、コバルトから選択される金属の硫化物による被膜を備えた正極活物質が用いられた全固体リチウム二次電池が記載されている。また、特許文献2には、全固体リチウム二次電池において、正極活物質の表面をLiNbOでコーティングして用いることが記載されている。
また、特許文献3には、正極活物質表面に抵抗層形成抑制コート層を形成することが記載されている。さらに、特許文献3には、該コート層において、正極活物質および固体電解質材料に対する反応性を有さず、かつリチウムイオン伝導性を有する材料が用いられることが記載されている。
また、非特許文献1には、正極活物質の表面を、リチウムイオン伝導性を有する酸化物(例えば、LiTi12、LiNbO、LiTaOなど)で被覆する技術が記載されている。
特開2008−251520号公報 国際公開2011/040118号パンフレット 特開2009−266728号公報
Advanced materials 2006.18,(第2226頁−第2229頁)
しかしながら、特許文献1〜3および非特許文献1にて記載された正極活物質を用いた場合であっても、全固体リチウム二次電池とされた場合の電池特性が、いまだ十分ではないという問題がある。
本発明は、上記のような問題に鑑み、全固体リチウム二次電池の電池特性を顕著に向上させ得る正極活物質を提供することを目的とする。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意検討した結果、表面が硫化リチウムを主成分とする被覆剤層で被覆された正極活物質(被覆正極活物質)は、全固体リチウム二次電池に用いられた場合に、該正極活物質と固体電解質との接触界面における抵抗を十分に低減させることができることを見出し、さらに、このような正極活物質が用いられた全固体リチウム二次電池は、電池特性(放電容量、およびハイレート特性)に顕著に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の内容を要旨とするものである。
(1)酸素原子を有する正極活物質と、無機固体硫化物複合体からなる固体電解質層とを備える全固体リチウム二次電池に使用される被覆正極活物質であって、前記正極活物質の表面が、下記一般式(I)にて示される化合物を80質量%以上含有する被覆剤層にて被覆されていることを特徴とする被覆正極活物質。
Li2Sn (I)
なお、上記式(I)中、nは1以上の数を示す。
(2)被覆剤層の被覆量が、正極活物質の表面に対して2〜50mg/mであることを
特徴とする(1)の被覆正極活物質。
(3)被覆剤層が導電助剤を含有し、その含有割合が正極活物質100質量部に対して0.5〜8質量部であることを特徴とする(1)または(2)の被覆正極活物質。
(4)(1)〜(3)のいずれかの被覆正極活物質、および無機固体硫化物複合体である固体電解質が用いられたことを特徴とする全固体リチウム二次電池。
(5)(1)〜(3)のいずれかの被覆正極活物質を製造する方法であって、下記の工程(i)および(ii)をこの順に含むことを特徴とする被覆正極活物質の製造方法。
(i)上記一般式(I)にて示される化合物を有機溶媒に溶解させて、被覆剤層の前駆体溶液を得る工程。
(ii)上記(i)で得られた前駆体溶液を正極活物質の表面に付与した後、表面に前駆体溶液が付着した状態の正極活物質を乾燥させる工程。
(6)(1)〜(3)のいずれかの被覆正極活物質を製造する方法であって、下記一般式(II)で示される化合物を正極活物質とし、該正極活物質の表面に硫化水素を暴露する工程を含むことを特徴とする製造方法。
LiQaRbScO2 (II)
なお、上記式(II)中、Q、R、Sは、それぞれ異なるものであり、ニッケル、コバルト、アルミニウム、マグネシウム、バナジウム、クロム、カルシウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タングステンおよびマンガンから選択される元素を示す。また、a、bおよびcは各々独立して0以上1以下の数値を示し、かつa+b+c=1を満足するものである。
本発明によれば、リチウムイオン伝導性を有しないためリチウムイオン二次電池用の正極活物質を被覆する材料としては効果的でないと考えられる硫化リチウムを用いたにもかかわらず、電池特性に優れた被覆正極活物質を得ることができる。より具体的には、正極活物質が硫化リチウムを主成分とする被覆剤層で被覆されているため、全固体リチウム二次電池に用いられた場合に、該正極活物質と固体電解質との接触界面における抵抗を顕著に低減させることができる。そのため、この被覆正極活物質が用いられた本発明の全固体リチウム二次電池は、電池特性に顕著に優れるという効果が奏される。
本発明の被覆正極活物質が用いられた全固体リチウム二次電池を充電する際の化学反応と、リチウムイオンおよび電子の移動の一例を示す概略図である。 本発明の実施例および比較例において、評価を行うための全固体リチウム二次電池の概略図である。 本発明の実施例1および比較例1で得られた被覆正極活物質が用いられた全固体リチウム二次電池の充放電曲線を示す図である。 本発明の実施例8および比較例3で得られた被覆正極活物質が用いられた全固体リチウム二次電池の充放電曲線を示す図である。 本発明の実施例8および比較例3にて得られた被覆正極活物質表面をX線光電子分光(XPS)にて確認し、該表面において硫化物イオン(S2−)の検出を行った測定結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の被覆正極活物質は、正極活物質の表面が、下記一般式(I)にて示される化合物を主成分とする被覆剤層にて被覆されてなるものである。
Li (I)
なお、上記式(I)中、nは1以上の数を示す。nは自然数であってもよいし、小数であってもよい。例えば、LiSおよびLiが等量で存在する場合には、Li1.5と示される。
本発明において、被覆とは、正極活物質表面の一部または全部において被覆剤層が形成されていることを示す。
正極活物質について、以下に述べる。
正極活物質としては、特に限定されず、具体的には、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、LiNiaCobAlc(ここで、a+b+c=1である)(以下、本発明においては、「NCA」と称する場合がある)などが挙げられる。なかでも、全固体リチウム二次電池とされた場合の電池特性に特に優れる観点から、コバルト酸リチウム(LiCoO)、NCAが好ましい。
正極活物質は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて導電剤などの添加剤と混合されて用いられてもよい。
上記式(I)で示される化合物としては、LiS(一硫化リチウムあるいは硫化リチウム)、多硫化リチウムであるLi(二硫化リチウム)、Li(三硫化リチウム)などが挙げられる。本発明においては、上記式(I)で示される化合物を、「硫化リチウム」と総称する場合がある。
上記式(I)で示される化合物(硫化リチウム)は、リチウムイオン伝導性を有しないものである。これは、上記式(I)で示される化合物のインピーダンスを測定することにより確認することができる。
上述のような硫化リチウムを主成分とする被覆剤層で正極活物質を被覆することにより、優れた電池特性を発現しうる被覆正極活物質を得ることができるという本発明の効果について、被覆剤層が設けられていない正極活物質、および硫化リチウム以外の物質を主成分とする被覆剤層により被覆された正極活物質における従来技術の問題点とともに、以下に詳述する。
被覆剤層が設けられていない正極活物質を用いた場合には、電池とされる際に、正極活物質と硫化物系固体電解質などの固体電解質との接触界面において、以下のようなメカニズムにより抵抗層が生じる。
イオン伝導性と電子伝導性を有する導電体である酸化物系正極活物質と固体電解質とが接触すると、該接触界面において、酸素原子と硫黄原子との電気陰性度の差から、リチウムイオン吸引性に差が生じる。その結果、リチウムイオンは、より電子吸引性の高い酸素原子を有する正極活物質側に引き寄せられ、これにより、固体電解質側にはイオン欠乏層(イオンが欠乏している部分)ができ、正極活物質側にはリチウムイオンが過多となる電荷層ができる。つまり、固体電解質におけるリチウムイオン濃度は低くなり、正極活物質におけるリチウムイオン濃度が高くなるため、接触界面においてリチウムイオンの濃度勾配が発生するのである。ここで、正極活物質は電子伝導性を有するものであるため、濃度勾配を解消する方向にリチウムイオンが移動する傾向にある。よって、正極活物質側における、固体電解質から移動したリチウムイオンが過多に存在する部分では、該リチウムイオンが正極活物質全体に拡散していく。
しかしながら、固体電解質は電子伝導性を有しないものであるため、イオン欠乏層はそのまま維持される。そして、正極活物質側へのリチウムイオンの移動が引き続き起こり、固体電解質側でのイオン欠乏層のみが大きく発達する。イオン欠乏層においてはイオン伝導性が低下しているため、電池とされた場合の出力性能が顕著に低下するものと考えられる。すなわち、被覆剤層が形成されていない正極活物質を用いた場合には、固体電解質におけるリチウムイオン欠乏層が抵抗層として作用し、電池特性を低下させていると考えられる。
このような電池特性の低下を解消するために、上記の非特許文献1にて記載されているように、リチウムイオン伝導性を有するが電子伝導性は有しない酸化物を被覆剤として用い、正極活物質を被覆する技術が知られている。酸化物からなる被覆剤層と正極活物質との間では、リチウムイオン濃度勾配は発現しない。一方で、被覆剤層と固体電解質との接触界面においては、上述のようなリチウムイオン濃度勾配が発現する。ここで、被覆剤層が何ら設けられていない場合と大きく異なる点は、酸化物からなる被覆剤層と固体電解質とはいずれも電子伝導性を有しない物質であるため、リチウムイオンの拡散が発生せず、リチウムイオンの濃度勾配が維持されることである。このような状態であると、被覆剤層が設けられておらず、イオン欠乏層のみが大きく発達する正極活物質のみの状態と比較して、電池特性の低下はある程度は抑制されている。しかしながら、イオン欠乏層が存在することに起因する電池特性の低下の抑制は、いまだ不十分であるという問題がある。
それに対して、本発明においては、被覆剤層に用いられる被覆剤として、酸化物ではなく硫化リチウムが用いられているため、被覆剤層および固体電解質のいずれも、アニオン構成元素が同じ硫黄原子を有している。その結果、被覆剤層および固体電解質において電子吸引性に差が発生せず、リチウムイオンの移動が起きない。さらに、被覆剤層と正極活物質の接触界面においても、被覆剤層自体がリチウムイオン伝導性を有するものではないため、リチウムイオンが移動せず、リチウムイオン濃度勾配自体がそもそも発生しない。その結果、電池特性の低下が十分に抑制されるのである。
本発明の技術的思想、構成および作用効果について、さらに述べる。
リチウム二次電池が作動するためには、正極活物質と固体電解質との間において、リチウムイオンの移動が必須である。そのため、従来の技術常識では、正極活物質を被覆する材料は、リチウムイオン伝導性を有する物質でなければならないとされてきた。これに対し、本発明は従来技術とは全く異なる思想によりなされたものであり、「リチウムイオン伝導性を有しない物質であっても、別の機構により、リチウムイオンの移動が発生すれば電池として成立する」という新たな見地から達成されたものである。
より具体的には、本発明の被覆正極活物質は、レドックスを伴う化学反応系でリチウムイオンの受け渡しがなされることにより、リチウム二次電池とされた場合に電池特性を発現させるものである。これにより、リチウムイオン伝導性を有しない被覆剤層が形成された場合であっても、リチウムイオンの移動が発生する。すなわち、本発明においては、充放電に伴う電位変化により生起するレドックス反応を利用し、その電位勾配からリチウムイオンの移動に方向性を持たせて電池としての機能を発現させている。
この原理について、図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の被覆正極活物質が用いられた全固体リチウム二次電池を充電する際の、リチウムイオンと電子の移動を示したものである。
充電をおこなうと、正極から負極方向にリチウムイオンが移動するためのドライビングフォース(推進力)がかかる。そして、図1に示されるように、被覆剤層2と固体電解質層3との接触界面において、被覆剤層2から固体電解質3へのリチウムイオンの引き抜き反応が起こる。その際に、電子が放出されるが、固体電解質3には電子伝導性が無いため、電子は被覆剤層2にとどまる。すると、被覆剤層2においては電荷的に不安定になるため、電荷的な安定を図ろうとして、電子軌道が隣接する分子(硫化リチウム)からリチウムイオンを引き抜くと考えられる。このような反応が連鎖し、最終的に、正極活物質1と被覆剤層2との接触界面において、リチウムイオンの引き抜きが起きると考えられる。すなわち、本発明においては、電気化学的反応が起きることにより、隣接する分子に対して、リウムイオンが次ぎ次ぎに受け渡されることにより、リチウムイオン伝導性を有しない物質を用いていても、リチウムイオンが移動するのである。なお、被覆剤層2においては、充電のための印加電圧により生じる電場勾配(電位勾配)により、リチウムイオンの進行方向が決定する。
つまり、本発明においては、従来技術のようにリチウムイオン伝導性を利用して電池特性を発現させるのではなく、正極活物質の表面に、リチウムイオン伝導性を有しない特定の被覆剤層を設けることにより、図1に示されるように、正極活物質、被覆剤層および固体電解質の各々の層において、電気化学反応をともなって段階的にリチウムイオンが受け渡されることにより、電池特性を発現させている。そのため、固体電解質層と被覆剤層との接触界面におけるリチウムイオン濃度は常に一定となり、リチウムイオンが過多な部分やリチウムイオン欠乏層が発現せず、つまり、リチウムイオン濃度勾配が発現しない。そして、本発明の被覆正極活物質を全固体リチウム二次電池に用いられた場合においては、リチウムイオン伝導性を利用した従来の全固体リチウム二次電池と比較すると、該接触界面における抵抗が低減され、電池特性に顕著に優れるものとなる。
すなわち、本発明においては、特定の被覆剤層にて被覆されることで、リチウムイオン伝導性を有しない物質を用いても全固体リチウム二次電池の特性を発現させることがで、きる。さらに、正極活物質と固体電解質との接触界面における抵抗を低減させることができ、ひいては電池特性の向上が達成されるという効果を奏するのである。
なお、理論的には、レドックス反応によるリチウムイオンの受け渡しの際においても、若干の電気抵抗が発生すると考えられる。しかしながら、この電気抵抗はリチウムイオン欠乏層に起因する電気抵抗と比較すると低いものであるため、電池特性の向上が達成されるのである。また、図1において、dは数十程度の数を示すものであるが、dの値が小さいものほど、リチウムイオンの受け渡しに起因する電気抵抗が小さくなる傾向にある。つまり、電気抵抗をより低減させる観点からは、被覆剤層における硫化リチウムの分子数は少ないほうが好ましいものである。
被覆剤層は、上記のような硫化リチウムを主成分とするものである、すなわち、被覆剤層は上記のような硫化リチウムを80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましい。
被覆剤層には、正極活物質の導電性をより向上させ、ひいては電池特性を向上させることを目的として、導電助剤が含有されていてもよい。導電助剤の含有量は、正極活物質100質量部に対して、0.5〜8質量部であることが好ましい。導電助剤の含有量が0.5質量部未満であると、用いられる正極活物質の種類によっては、良好な電池特性が発現しない場合がある。一方、導電助剤の含有量が8質量部を超えると、正極活物質の結着性が低下する場合がある。
導電助剤としては、例えば、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバーなどが挙げられる。なかでも、導電性に優れる観点から、カーボンファイバーが好ましい。
正極活物質に対する被覆剤層の被覆量は、2〜50mg/mであることが好ましく、4〜30mg/mであることがより好ましい。4mg/m未満であると、正極活物質と固体電解質との接触界面における抵抗を十分に低減させることができない場合があり、良好な電池特性が発現しない場合がある。一方、50mg/mを超えると、被覆剤中の分子数が多くなってしまうことにより、上記の連続的なレドックス反応を生起させるための電気抵抗が無視できない程度に大きくなってしまう場合があるため好ましくない。より具体的には、被覆量が大きくなり過ぎると、被覆剤層中の硫化リチウムの分子の数が多くなりすぎるため、図1の被覆剤層におけるリチウムイオンの受け渡しの回数が多くなり、その結果、電気抵抗が大きくなり電池特性が低下する場合がある。なお、本発明においては、正極活物質表面の一部に被覆剤層が形成されていてもよいし、該表面の全部に被覆剤層が形成されていてもよい。
なお、上記の被覆量を被覆剤層の厚みに換算した場合は、該厚みは1〜30nm程度であることが好ましく、2〜20nm程度であることが好ましい。
被覆正極活物質の平均粒径は、特に限定されず、通常0.1〜50μm程度の範囲である。
被覆剤層を正極活物質に被覆させて、本発明の被覆正極活物質を製造する方法について、以下に述べる。すなわち、該製造方法としては、(a)被覆剤層の前駆体溶液中に正極活物質を浸漬し、次いで乾燥する方法、(b)被覆剤層の前駆体溶液を正極活物質に噴霧し、次いで流動層にて乾燥する方法、(c)被覆剤層の前駆体溶液と正極活物質とを混合して攪拌して混合物とし、攪拌を継続しながら該混合物を乾燥する方法などが挙げられるが、特に(b)(c)が好ましい。なお乾燥とは自然乾燥、真空常温乾燥、加熱常圧乾燥、加熱真空乾燥を含み、浸漬、噴霧、攪拌および乾燥の方法や条件は、特に限定されるものではない。
上記の前駆体溶液を用いる方法のうち、(c)の湿式法について、以下に詳述する。
湿式法は、下記の工程(i)および(ii)をこの順に含むものである。
(i)上記一般式(I)にて示される化合物を有機溶媒に溶解させて、被覆剤層の前駆体溶液を得る工程。
(ii)上記(i)で得られた前駆体溶液を正極活物質の表面に付与した後、表面に前駆体溶液が付着した状態の正極活物質を乾燥する工程。
より具体的には、まず、硫化リチウム、必要に応じて導電助剤やその他の添加剤を、エタノールなどの有機溶媒に溶解させて前駆体溶液を調製する。なお、調製に際して、溶解方法や溶解条件については、特に限定されるものではない。
次いで、適宜の正極活物質と前駆体溶液とを混合して攪拌し、得られた湿粉にある程度の流動性が発現するまで攪拌しながら有機溶媒を自然蒸発させる。その後、加熱しながら真空にて乾燥させると、正極活物質の表面に被覆剤層が付着した状態(つまり、正極活物質の表面が被覆剤層にて被覆された状態)の本発明の被覆正極活物質を得ることができる。攪拌条件や乾燥条件は特に限定されず、適宜選択することができる。有機溶媒が完全に除去されるまで攪拌を継続すれば二次凝集粒子の発生を抑制することができるが、条件により二次凝集粒子が発生したとしても必要に応じてスクリーンを用いたり乳鉢で解砕したりして、二次凝集粒子が存在しない被覆正極活物質とすることもできる。
前駆体溶液を用いる方法以外の製造方法としては、気相法が挙げられる。
気相法は、下記一般式(II)で示される化合物を正極活物質とし、該正極活物質の表面に硫化水素を暴露する工程を含むことを特徴とする製造方法である。
LiQ (II)
上記式(II)中、Q、R、Sは、それぞれ異なるものであり、ニッケル、コバルトアルミニウム、マグネシウム、バナジウム、クロム、カルシウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タングステンおよびマンガンから選択される元素を示す。なかでも、ニッケル、コバルト、アルミニウムであることが好ましい。また、a、bおよびcは各々独立して0〜1の数値を示し、かつa+b+c=1を満足するものである。
なお、気相法における暴露方法や条件は特に限定されず、適宜調整することができる。
本発明においては、気相法により、正極活物質表面に被覆剤層を形成することが好ましい。気相法の機構、および気相法を採用することにより奏される効果について、以下に述べる。
一般的に、上記(III)で示される化合物である正極活物質の表面においては、大気中に存在する水分により、下記式(1)のような反応が起こり、正極活物質の表面に水酸化リチウムが析出してしまう。これにより、電池特性が著しく低下した電池しか得られないという問題がある。
Figure 0005943624
特に正極活物質中にニッケルが含まれる場合には、水酸化リチウムの析出を回避することを目的とし、水分を除去するために、前処理としての酸素雰囲気下での熱処理が行われる。しかしながら、水分が完全に除去されなかったり、熱処理後に、再度大気中の水分と反応したりしてしまうと、水酸化リチウムは完全に除去されず、正極活物質の表面に依然として残存してしまう。その結果、前処理ごとに電池特性のバラツキが大きい電池しか得られない場合がある。つまり、従来技術においては、正極活物質表面の水分量を制御するという、煩雑な操作が別途必要となる。
また、正極活物質合成に際して原料の水酸化リチウムを過剰量として使用した場合には、未反応の水酸化リチウムが正極活物質の表面に残存してしまい、電池特性の低下につながる。そのため、この場合においても、未反応の水酸化リチウムを除去するための操作が別途必要となる。
しかしながら、気相法を採用すると、正極活物質の表面において、大気中の水分などにより自然に析出する不純物としての水酸化リチウムに対して、硫化水素を反応させるという簡便な操作により、下記式(2)のような反応を進行させることができる。その結果、正極活物質の表面に硫化リチウムが生成される。
Figure 0005943624
つまり、気相法を用いると、正極活物質表面の水分量を制御したり、未反応の水酸化リチウムを除去したりするという煩雑な操作を用いることなく、正極活物質の表面に硫化水素を暴露させるという簡易な工程で、硫化リチウムを主成分とする被覆剤層を形成することができるという効果が奏される。特に、低露点管理された雰囲気下においては、生成水が生成しても順次除去されるので、上記式(2)のような反応が進行しやすくなる。
さらに、気相法を用いると、湿式法を用いた場合と比較して、得られた被覆正極活物質を全固体リチウム二次電池とした場合に、高い電流密度においても電池特性にも優れるという効果が奏される。
硫化リチウムを用いることにより奏される、本発明の被覆正極活物質の製造方法における効果を、以下に述べる。
従来技術においては、チタンやニオブなどの酸化物という溶媒に対し溶解性の乏しい物質を正極活物質に被覆させるものであった。そのため、該酸化物を直接に正極活物質に被覆させることができず、まず、チタンやニオブなどの金属から、エチルアルコキシドなどのアルコキシドを生成した後、該アルコキシドを含むアルコール溶液を正極活物質にコーティングした後に、乾燥・熱処理させるという工程が必要であった。つまり、正極活物質へ被覆剤層を被覆させる工程が非常に煩雑であり、実用的ではない場合があった。一方、本発明においては、揮発性有機溶媒に可溶な物質である硫化リチウムを用いているため、簡易な工程で、正極活物質を被覆させることが可能である。
本発明の全固体リチウム二次電池は、上記のような本発明の被覆正極活物質を含む正極層を用いるものである。さらに、本発明の全固体リチウム二次電池は、無機固体硫化物複合体からなる固体電解質層を用いるものである。該固体電解質層は、下記一般式(III)で示されるものが好ましく用いられる。
LiS−M (III)
なお、上記式(III)中、Mは、リン、珪素、ゲルマニウム、ガリウム、ホウ素またはアルミニウムを示すものであり、xおよびyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える任意の整数である。なかでも、合成の簡便性およびコストの観点から、Mはリンであることが好ましい。なお、xおよびyは、Mの種類に応じて、化学量論比を与える任意の整数である。
このような無機固体硫化物複合体としては、本発明の効果を発現させるものであれば特に制限されないが、合成の簡便性により優れる観点から、LiS−Pなどが特に好ましく用いられる。
上記のような無機固体硫化物複合体を、プレス処理することで、ペレット形状の固体電解質層を得ることができる。
本発明の全固体リチウム二次電池においては、上記の正極活物質により得られる正極層、および上記の無機固体硫化物複合体からなる固体電解質層のほか、公知の負極活物質により得られる負極層、正極集電体、負極集電体、などが用いられる。なお、正極層および負極層は、上記の無機固体硫化物複合体が含有された合材層とされてもよい。
本発明の全固体リチウム二次電池の製造法は、特に限定されず、例えば、薄膜電池や金型を用いたペレット電池などが挙げられる。
本発明の全固体リチウム二次電池の形状は、特に限定されず、例えば、コイン型、ラミネート型、角型、円筒型などの形状が挙げられる。
本発明の全固体リチウム二次電池の用途は、特に限定されるものではないが、例えば、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ノートパソコン、電気自動車、ハイブリッド自動車などの電源が挙げられる。
本発明の技術的思想、構成および効果について、再度述べる。
本発明においては、硫化リチウムを主成分とする被覆剤層にて正極活物質を被覆させることを必須の構成とする。それにより、正極活物質と固体電解質との接触界面に生じる抵抗を低減させることが可能となり、電池特性に優れた被覆正極活物質および全固体リチウム二次電池を得ることが可能となる。この様な正極活物質の被覆による界面抵抗の低減による電池特性の向上に関しては、今までに多数の検討がなされてきたが、リチウムイオンの移動機構がレドックス反応によるものは、本発明において初めて達成される。これにより、上述のようなリチウムイオン欠乏層の発生により生じる電池特性の低下を効果的に抑制することが可能となり、その結果、従来技術と比較すると、さらに電池特性を向上させることが可能となる。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれらによって限定されるものではない。
本発明の被覆正極活物質および全固体リチウム二次電池の評価を、以下の方法によりおこなった。
(1)電池特性評価(放電容量、放電エネルギー密度)
図2に示すような構造を有する全固体リチウム二次電池を、以下のようにして作製し、電池特性評価用電池とした。
すなわち、固体電解質として、LiS−Pで示される無機固体硫化物複合体を使用した。負極活物質としては、黒鉛(容量:360mAhr/g)を使用した。窒素雰囲気(露点:−80℃以下)のグローブボックス内で、乳鉢を用いて正極活物質および負極活物質を、各々、固体電解質と所定の比率で混合して、正極合材および負極合材とした。その混合比率は、質量比で、(正極活物質):(固体電解質)=7:3、(負極活物質):(固体電解質)=6:4であった。
次いで、直径が10mmである金型に、50mgの固体電解質を入れてプレスし、ペレットとした。さらに、固体電解質ペレットの片面に負極合材15mgを置いてプレスし、さらに、もう一方の面に正極合材20mgを置いて、プレスした後(最大加圧:10t/cm)、金型から打ち抜き、図2に示すように、固体電解質層6の両側に正極合材層4および負極合材層5が配されたペレットを得た。そして、図2に示すように、正極集電体7としてのアルミ箔、負極集電体8としての銅箔を、それぞれ、正極合材層4および負極合材層5に接触するように配した。さらに、正極集電体7に絶縁フィルム10を配し、正極集電体7および負極集電体8の両側にステンレス製支持板9、9を配置させた。次いで、ラミネートフィルム11を用い、電気導出タグ12を挟み込んだ状態で、両端をラミネートすることで真空封印し、評価用の全固体リチウム二次電池を得た。
この評価用のペレットを、(東陽システム社製、商品名「TOSCAT−3000」)を用い、大気中にて600kgf/cmの圧力をかけながら、放電容量および放電エネルギー密度を測定した。なお、測定条件として、カットオフ電圧を2−4.3V、電流密度を0.1mA/cmとした。
(実施例1)
以下のようにして、湿式法により被覆剤層が設けられた被覆正極活物質を得た。
すなわち、露点を−80℃以下に調整したグローブボックス中にて、硫化リチウム(LiS)135mgにエタノール5gを添加し、10分間攪拌して溶解させ、被覆剤層の前駆体溶液を得た。次いで、真空下、200℃で24時間乾燥させた正極活物質としての粉粒体状のコバルト酸リチウム(0.23m/g)(LiCoO)20gを、丸底ステンレス容器(容量:200ml)に投入し、さらに、上記の前駆体溶液2.9gを添加して、スパーテルにて攪拌した。攪拌を継続すると、エタノールが自然蒸発し、正極活物質であるコバルト酸リチウムの表面に前駆体溶液が付着した状態の、ある程度の流動性を有する湿粉となった。
この湿粉を、コック付きナスフラスコ(容量:200ml)に移し、密閉状態でグローブボックスの外に排出し、70℃の湯浴で加熱しながら、真空にて、40分間震盪乾燥させ、流動性の高い乾粉を得た。この乾粉を、再度グローブボックスに投入し、ナスフラスコから出してアルミナ皿に広げた。そして、該乾粉を大気に接触させないように、グローブボックスに接続された乾燥炉に移し、真空下、200℃で12時間乾燥させて粉体である被覆正極活物質を得た。その後、該被覆正極活物質をスクリーン(目開き:45μm)にかけた。オーバーサイズであるものを乳鉢で解砕し、再度スクリーンにかけた。なお、被覆量は正極活物質に対し0.38質量%であり、16.6mg/mであった。実施例1の被覆正極活物質を用いた全固体リチウム二次電池の電池特性の評価結果を表1に示す。
Figure 0005943624
(実施例2)
露点を−80℃以下に調整したグローブボックス中で、硫化リチウム79mgと硫黄56mgにエタノールを5g添加し、10分間攪拌して溶解させることにより、二硫化リチウムの溶液を調整した。さらに、この溶液を用いて、実施例1と同様にして被覆正極活物質を得た。被覆量は正極活物質に対し0.38質量%であり、16.6mg/mであった。実施例2の被覆正極活物質を用いた全固体リチウム二次電池の電池特性の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
表1に示す組成とした以外は、実施例2と同様にして被覆正極活物質および全固体リチウム二次電池を作製し、電池特性の評価をおこなった。評価結果を表1に示す。
(実施例4)
表1に示す組成とした以外は、実施例2と同様にして被覆正極活物質および全固体リチウム二次電池を作製し、電池特性の評価をおこなった。被覆量は正極活物質に対し1.09質量%であり、47.2mg/mであった。評価結果を表1に示す。
(実施例5)
表1に示す組成とした以外は、実施例2と同様にして被覆正極活物質および全固体リチウム二次電池を作製し、電池特性の評価をおこなった。なお、被覆剤層は正極活物質表面の一部に形成されており、該被覆量は正極活物質に対し0.12質量%であり、5.0mg/mであった。評価結果を表1に示す。
(実施例6)
導電助剤としての気相成長炭素繊維(昭和電工社製、商品名「VGCF」)を、正極活物質100質量部に対して4質量部の割合となるように、0.8gの量で被覆剤層に配合した以外は、実施例1と同様にして被覆正極活物質および全固体リチウム二次電池を作製し、電池特性の評価をおこなった。評価結果を表1に示す。
(実施例7)
正極活物質として、コバルト酸リチウムに代えてLiNi0.8Co0.15Al0・05(NCA)(比表面積:0.44m/g)を用い、硫化リチウムの仕込み量を表1に示したように変更した以外は、実施例2と同様にして被覆正極活物質および全固体リチウム二次電池を作製し、電池特性の評価をおこなった。被覆量は正極活物質に対し0.38質量%であり、16.2mg/mであった。評価結果を表1に示す。
(実施例8)
気相法により得られた被覆正極活物質を用い、全固体リチウム二次電池を作製した。
すなわち、実施例7で用いた正極活物質と同様のNCA10gをアルミナ皿に広げ、露点が−80℃以下、かつ硫化水素濃度が200ppmに調整された窒素雰囲気下で、室温にて4ヶ月暴露し、被覆正極活物質を得た。
この被覆正極活物質を用い、実施例1と同様の手法で全固体リチウム二次電池とし、電池特性を評価した。なお、評価の際には、カットオフ電圧を2−4Vとし、電流密度を10mA/cmとした。
(比較例1)
真空下、200℃で24時間乾燥させた20gのコバルト酸リチウム(0.23m/g)を未処理のまま正極活物質として用いた以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し、電池特性の評価をおこなった。評価結果を表1に示す。
(比較例2)
硫化リチウムにエタノール5gを添加して得られた溶液に代えて、エタノール2.9gを用いて処理を施した正極活物質を用いた(つまり、硫化リチウムを用いない)以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し、電池特性の評価をおこなった。評価結果を表1に示す。
(比較例3)
正極活物質として実施例7で使用したNCAを未処理のまま正極活物質として用いた(つまり、硫化リチウムを用いない)以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し、電池特性の評価をおこなった。評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜7で得られた被覆正極活物質を用いた全固体リチウム二次電池は、電池特性に優れるものであった。
実施例7で得られた被覆正極活物質は、正極活物質としてNCAを用いたため、電池特性に顕著に優れるものであった。
実施例1および比較例1の電池の充放電曲線を図3に、実施例8および比較例3の充放電曲線を図4に示す。図3および図4から、硫化リチウムを主成分とする被覆剤層にて被覆された正極活物質を用いた場合は、充電時の放電容量が低く放電時の電気容量が高くなっており、優れた電池特性を発現しうる全固体リチウム二次電池が得られることが明らかである。なお、図4から明らかなように、気相法にて得られた被覆正極活物質が用いられた実施例8においては、10mA/cmという高い電流密度で放電させた場合においても、電池特性に優れていることが明らかである。
また、比較例1と比較例2との対比から、比較例2のようにアルコールが用いられた正極活物質が含まれた全固体リチウム二次電池においては、アルコールに含有される水分に起因して、得られる全固体リチウム二次電池の電池特性がより低下することが明らかである。
さらに、実施例8および比較例3にて得られた正極活物質表面を、X線光電子分光(XPS)にて確認し、硫化物イオン(S2−)の検出をおこなった。このXPS測定結果を図5に示す。図5から明らかなように、実施例8においては硫化物イオンのピークが得られている。つまり、実施例8においては、硫化水素を暴露するという簡易な操作のみで該正極活物質表面に硫化物が生成し、被覆剤層が形成されていることが明らかである。
なお、XPSによれば表面から数nmの深度の元素組成分析結果が得られるものであるが、実施例8においては、正極活物質の構成元素であるNi、Co、Alの分析結果がバルクの構成比率で得られた。この結果より、形成された硫化リチウムを主成分とする被覆剤層の厚みは数nmよりも小さく、つまり、被覆剤層の厚みが薄くても電池特性に優れる正極活物質が得られることが明らかである。
1 正極活物質
2 被覆剤層
3 固体電解質層
4 正極合材層
5 負極合材層
6 固体電解質層
7 正極集電体
8 負極集電体
9 ステンレス製支持板
10 絶縁フィルム
11 ラミネートフィルム
12 電気導出タグ

Claims (6)

  1. 酸素原子を有する正極活物質と、無機固体硫化物複合体からなる固体電解質層とを備える全固体リチウム二次電池に使用される被覆正極活物質であって、
    前記正極活物質の表面が、下記一般式(I)にて示される化合物を80質量%以上含有する被覆剤層にて被覆されていることを特徴とする被覆正極活物質。
    Li2Sn (I)
    なお、上記式(I)中、nは1以上の数を示す。
  2. 被覆剤層の被覆量が、正極活物質の表面に対して2〜50mg/mであることを特徴とする請求項1に記載の被覆正極活物質。
  3. 被覆剤層が伝導助剤を含有し、その含有割合が正極活物質100質量部に対して0.5〜8質量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の被覆正極活物質。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆正極活物質、および無機固体硫化物複合体である固体電解質が用いられたことを特徴とする全固体リチウム二次電池。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆正極活物質を製造する方法であって、下記の工程(i)および(ii)をこの順に含むことを特徴とする被覆正極活物質の製造方法。(i)上記一般式(I)にて示される化合物を有機溶媒に溶解させて、被覆剤層の前駆体溶液を得る工程。
    (ii)上記(i)で得られた前駆体溶液を正極活物質の表面に付与した後、表面に前駆体溶液が付着した状態の正極活物質を乾燥させる工程。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の被覆正極活物質を製造する方法であって、下記一般式(II)で示される化合物を正極活物質とし、該正極活物質の表面に硫化水素を暴露する工程を含むことを特徴とする製造方法。
    LiQaRbScO2 (II)
    なお、上記式(II)中、Q、R、Sは、それぞれ異なるものであり、ニッケル、コバルト、アルミニウム、マグネシウム、バナジウム、クロム、カルシウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タングステンおよびマンガンから選択される元素を示す。また、a、bおよびcは各々独立して0以上1以下の数値を示し、かつa+b+c=1を満足するものである。
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