JP5942289B2 - 抗菌剤及び抗菌性製品 - Google Patents

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Description

本発明は抗菌作用を有する新規物質、及びその抗菌剤としての用途に関する。また本発明は、上記物質を用いた抗菌性製品及びその製法に関する。
プロタミンは、魚類の精巣に大量に含まれる天然由来の塩基性タンパク質であり、サケ科やニシン科の白子から抽出されたものが一般的に流通している。プロタミンは、抗菌活性を持つことが知られており、化粧品や医薬用組成物、空気浄化フィルター等の抗菌剤などの用途が知られている(特許文献1〜4参照)。
一方、珪藻殻形成反応を模倣し、シリカとシラフィンとを用いたバイオシリカの製造例も報告されており(特許文献5参照)、タンパク質上の表面電荷がバイオシリカ形成に深く関わっていることも示されている。
これまでプロタミンとケイ酸化合物との混合物や、ケイ酸化合物を含む特定の構造物にプロタミンを結合させたものはいくつか知られているが(例えば、特許文献6〜11)、プロタミンとケイ酸化合物との反応によりケイ酸化合物が自己組織化または自己集合することによって生成される、プロタミンとケイ酸化合物との反応生成物に関する報告はない。
特開2009−91322号公報 WO2004/035173号公報 WO98/04334号公報 特開2003−166155号公報 特開2009−126745号公報 特開平02−241510号公報 特開平07−248442号公報 特開2003−160693号公報 特開昭62−201825号公報 特開平05−032700号公報 特開平10−160719号公報
プロタミンをそのまま抗菌剤として抗菌性製品に用いた場合、水にさらされた場合など、プロタミンが流出し、このため抗菌性が低下乃至消失し、再利用ができないといった問題があった。本発明は、塩基性タンパク質であるプロタミンやその塩とケイ酸化合物とを反応させることにより得られる新規な反応生成物を提供すること、また当該反応生成物の抗菌作用を利用して、持続的で、広域スペクトラムの抗菌作用を有する抗菌剤、抗菌性製品、及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決することを主な目的として鋭意検討した結果、ケイ酸化合物が、プロタミン又はその塩と反応することにより、当該プロタミン又はその塩を取り込みながら自己組織化又は自己集合することによって生じる物質(以下、この反応生成物を本明細書中では単に「反応生成物」ともいう。)に、プロタミン又はその塩とは異なる抗菌スペクトルを示す抗菌性能があること、また当該反応生成物は持続的な抗菌作用を奏する抗菌剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の実施形態を有するものである。
(I)反応生成物
(I-1)(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物。
(I-2)(A)プロタミン又はその塩との反応により、(B)ケイ酸化合物が自己組織化または自己集合することにより生成される、(I-1)に記載する反応生成物。
(I-3)(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物が、(A)及び(B)が溶解または分散してなる溶液中における反応によって生じる生成物である、(I-1)または(I-2)に記載する反応生成物。
(I-4)(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物が、塩基性条件下での(A)と(B)との反応生成物である、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する反応生成物。
(II)抗菌剤
(II-1)(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する反応生成物を有効成分とする抗菌剤。
(II-2)(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物からなる(II-1)に記載する抗菌剤。
(II-3)防かび剤である、(II-1)または(II-2)に記載する抗菌剤。
(II-4)植物病害防除用及び/又は植物病害駆除用の抗菌剤である、(II-1)または(II-2)に記載する抗菌剤。
(III)抗菌性製品
(III-1)(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載の反応生成物が基材に担持されてなる抗菌性製品。
当該抗菌性製品には、特に、(II-1)または(II-2)に記載の抗菌剤がフィルター基材に担持されてなる抗菌性フィルターが含まれる。
(IV)抗菌性製品の製造方法
(IV-1)原料として、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載の反応生成物または(II-1)または(II-2)に記載する抗菌剤を用いて、抗菌性製品を製造する工程を有する、(III)に記載する抗菌性製品の製造方法。
(IV-2)(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物であって、(A)との反応により(B)が自己組織化または自己集合してなる反応生成物を、基材に担持してなる、(III-1)に記載する抗菌性製品の製造方法であって、
(1)基材に(A)プロタミン又はその塩を接触させる工程、及び、
(2)(1)で得られた基材に、ケイ酸化合物を接触させる工程
を含む方法。
特に、抗菌性製品が上記抗菌性フィルターである場合、当該抗菌性フィルターは下記の工程を有する方法で製造できる:
(1)フィルター基材にプロタミン又はその塩を接触させる工程、及び、
(2)(1)で得られたフィルター基材に、ケイ酸化合物を接触させる工程。
当該方法は、下記のように規定することができる。
(IV-3)(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物であって、(A)との反応により(B)が自己組織化または自己集合してなる反応生成物を、フィルター基材に担持してなる、(III-1)に記載する抗菌性フィルターの製造方法。
(V)反応生成物の使用
(V-1)(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物の、抗菌剤を調製するための使用。
(V-2)上記抗菌剤が、防かび剤、植物病害防除用抗菌剤、及び植物病害駆除用抗菌剤からなる群から選択されるいずれかである、(V-1)に記載する使用。
(V-3)抗菌処理する対象物に、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する反応生成物を接触させる工程を有する、上記対象物の抗菌処理方法。
(V-4)上記抗菌処理が、防かび処理、植物病害防除処理、及び植物病害駆除処理からなる群から選択されるいずれかの処理である、(V-3)に記載する抗菌処理方法。
本発明の反応生成物は、プロタミンまたはその塩と反応することによりケイ酸化合物が自己組織または自己集合し、その結果、プロタミンまたはその塩がケイ酸化合物に不溶化または固定化してなるものである。特に、塩基性条件下で反応させることによって生成した反応生成物は、酸性〜中性条件下で反応させることによって生成する反応生成物とは異なり、抗かび作用を含む広域抗菌性能を有することを特徴とする。以下、本明細書中では、必要に応じて、抗菌性能を有しない反応生成物と区別するために、当該抗菌性能を有する反応生成物を便宜上「プロタミンシリカ」と称する場合がある。つまり、本発明において「反応生成物」とは、抗菌性能の有無に関わらず、上記プロタミンまたはその塩とケイ酸化合物との反応生成物を包括的に意味するが、その中でも抗菌性能を有する「反応生成物」を「プロタミンシリカ」と称する場合がある。
当該プロタミンシリカは、プロタミンまたはその塩とは異なる抗菌スペクトルの抗菌性能を有する。具体的には、当該反応生成物は、プロタミンまたはその塩が抗菌性能を有しない真菌〔黒カビ(Aspergillus niger)〕に対しても有効な抗菌性能を発揮する。このため、かかる反応生成物は、抗菌剤として、特に防かび剤、植物病害防除用抗菌剤、または植物病害駆除用抗菌剤として有用である。本発明の抗菌剤は、前述するようにケイ酸化合物にプロタミンまたはその塩が不溶化又は固定化してなるプロタミンシリカを有効成分とするものである。このため、抗菌性を付与したい対象物に安定乃至長期的な抗菌性を付与することができる。また本発明の抗菌性製品は、上記抗菌剤を担持するものであることから、安定乃至長期的な抗菌作用を奏することが可能である。更に、本発明の製造方法によれば、安定乃至長期的な抗菌性を備えた抗菌性製品を簡便かつ容易に製造することができる。
プロタミン硫酸塩とケイ酸ソーダとの反応生成物を電子顕微鏡で観察した結果を示す図面である(実施例1)。上段は倍率×30,000倍の画像、下段は倍率×150,000倍の画像である。 プロタミン硫酸塩0.05gと各種濃度のケイ酸ソーダ(5000ppm/40ml、1%/40ml、2.5%/40ml、5%/40ml、10%/40ml)との反応生成物(プロタミンシリカ)を電子顕微鏡で観察した結果を示す(実施例4)。 プロタミン硫酸塩0.1gと各種濃度のケイ酸ソーダ(5000ppm/40ml、1%/40ml、2.5%/40ml、5%/40ml、10%/40ml)との反応生成物(プロタミンシリカ)を電子顕微鏡で観察した結果を示す(実施例4)。 プロタミン硫酸塩0.5gと各種濃度のケイ酸ソーダ(5000ppm/40ml、1%/40ml、2.5%/40ml、5%/40ml、10%/40ml)との反応生成物(プロタミンシリカ)を電子顕微鏡で観察した結果を示す(実施例4)。 実施例9における抗菌性フィルター(プロタミンシリカフィルター)の作製試験において、各処理を行ったフィルター1をデジタルカメラで撮影した画像を示す図面である。下段は拡大像(倍率:×2倍)である。1Cは、いずれの処理も行わなかったフィルターを示す。1Wは、水洗処理のみを行ったフィルターを示す。1Pは、プロタミン処理後、ケイ酸ソーダ処理を行い、更に水洗処理したフィルターを示す。 実施例9における抗菌性フィルター(プロタミンシリカフィルター)の作製試験において、各処理を行ったフィルター1を光学顕微鏡(倍率:×50)で観察した画像を示す図面である。左図(1P)中に示す白抜きの矢印は、プロタミンシリカと考えられる白色粉体を示す。 実施例9における抗菌性フィルター(プロタミンシリカフィルター)の作製試験において、各処理を行ったフィルター2をデジタルカメラで撮影した画像を示す図面である。下段は拡大像(倍率:×2倍)である。2Cは、いずれの処理も行わなかったフィルターを示す。2Wは、水洗処理のみを行ったフィルターを示す。2Pは、プロタミン処理後、ケイ酸ソーダ処理を行い、更に水洗処理したフィルターを示す。 実施例9における抗菌性フィルター(プロタミンシリカフィルター)の作製試験において、各処理を行ったフィルター2を光学顕微鏡(倍率:×50)で観察した画像で示す図面である。左図(2P)中に示す白抜きの矢印は、プロタミンシリカと考えられる白色粉体を示す。 実施例9における抗菌性フィルター(プロタミンシリカフィルター)の作製試験において、フィルター3をデジタルカメラで撮影した画像を示す図面である。下段は拡大像(倍率:×2倍)である。3Cは、いずれの処理も行わなかったフィルターを示す。3Wは、水洗処理のみを行ったフィルターを示す。3Pは、プロタミンによる処理後、ケイ酸ソーダによる処理を行い、更に水洗処理したフィルターを示す。 実施例9における抗菌性フィルター(プロタミンシリカフィルター)の作製試験において、各処理を行ったフィルター3の試験結果を光学顕微鏡(倍率:×50)で観察した画像を示す図面である。各段左側の図(3P)中の矢印は、プロタミンシリカと考えられる白色粉体を示す。なお、フィルター3は2層構造になっており、プロタミンシリカ作製後に2層構造を1層目と2層目に分けて、1層目の外面と内面、2層目の外面と内面の合計4箇所について観察した。図10は上から順番に、1層外面及び内面、2層内面及び外面を、光学顕微鏡で観察した画像である。 実施例11の抗菌性紙製品(プロタミンシリカ紙製品)の作製試験において、各処理を行った後の紙製品をデジタルカメラで撮影した画像を示す図面である。各サンプルの処理方法については、表17を参照のこと。 実施例12における、プロタミンシリカのRhizoctonia solaniに対する防かび作用を示す結果である。 実施例12における。プロタミンシリカのAspergillus nigerに対する防かび作用を示す結果である。 プロタミン塩とプロタミンシリカの黒カビ(Aspergillus niger)に対する菌糸体形成抑制期間を対比した図である。縦軸は培地への各被験試料の添加濃度(終濃度)、横軸は菌糸体形成を抑制した日数を示す(図15も同じ)。 (A)プロタミン塩酸塩、並びにプロタミン塩酸塩と各種金属(硝酸銀、硫酸銅)との混合物について、黒カビに対する菌糸体形成抑制期間を対比した図である。(B)プロタミンシリカと金属プロタミンシリカについて、黒カビに対する菌糸体形成抑制期間を対比した図である。
1.抗菌剤
本発明が対象とする抗菌剤は、(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物からなるか、または当該反応生成物を有効成分とする。好ましくは、本発明の抗菌剤は、(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物とを反応させることにより得られる抗菌性の反応生成物(プロタミンシリカ)からなるか、または当該プロタミンシリカを有効成分として含有するものである。
(A)プロタミン又はその塩
プロタミンは、サケ、マス、ニシン、サバ等の精子核中にデオキシリボ核酸と結合して存在する高アルギニン含量の塩基性蛋白質であり、サケ由来のものはサルミン、ニシン由来のものはクルペインとも称される。食品添加物として用いられており、物質名でしらこたん白、しらこたん白抽出物等と表示される。また、プロタミン硫酸塩は止血剤やヘパリンの中和剤など医薬品分野で用いられている。プロタミンおよびその塩は、従来、食品や医薬として使用されてきており、その安全性は高い。このため、かかるプロタミン又はその塩から形成される本発明のプロタミンシリカは安全性が高く、これにより、安全性の高い抗菌剤や抗菌性製品の提供が可能となる。
プロタミン又はその塩は、魚類の白子、主にサケ科またはニシン科の魚の白子から抽出したものを使用できるが、市販品を使用してもよい。但し、本発明に用いられるプロタミンは核酸と分離された状態のものであることが好ましい。
また、プロタミンの塩の種類も特に限定されないが、例えばプロタミンの硫酸塩、プロタミンの塩酸塩などの無機酸塩があげられる。
プロタミンの分子量も特に限定されないが、重量平均分子量で通常3000〜10000程度、特に4000〜5000程度の分子量の範囲のものが用いられる。
プロタミンをケイ酸化合物と反応させる際、溶媒への溶解性を高めるために、塩酸、硫酸等の強酸を含む酸あるいは塩(例.塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)を含む水溶液にプロタミンを添加し、煮沸、マイクロ波、又は超音波処理などにより予めプロタミンを完全に溶解させた状態で反応させることが好ましい。あるいはプロタミンの塩を用いて、予め完全に溶解させた状態で反応させることが好ましい。
(B)ケイ酸化合物
本発明で用いられるケイ酸化合物としては、ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルが挙げられる。これらは1種単独であってもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。換言すると、本発明が対象とするケイ酸化合物は、ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。中でも、ケイ酸化合物は、ケイ酸塩及びコロイダルシリカから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ケイ酸塩の種類は特に限定されないが、例えば、ケイ酸のリチウム、ナトリウム若しくはカリウム等のアルカリ金属塩、ケイ酸のカルシウム若しくはマグネシウム等のアルカリ土類金属塩、またケイ酸アルミニウム等が挙げられる。好ましくはケイ酸ナトリウムである。
コロイダルシリカは、水性溶媒(例えば、水等)、非水性溶媒(例えばメタノール、プロパノール、エチレングリコール等)、又はこれらの混合溶媒からなる分散媒体中に、二酸化ケイ素(シリカ)の微粒子が分散してなるコロイドである。コロイド粒子(シリカ微粒子)の粒子径は特に限定されるものではないが、通常1nm〜5μm程度、特に1nm〜100nm程度である。なお、かかる粒子径の測定は、走査電子顕微鏡(SEM,Scanning Electron Microscope)観察により行うことができる。またコロイダルシリカは、酸性コロイダルシリカや塩基性コロイダルシリカの別を問わず、いずれのコロイダルシリカをも使用することができる。好ましくは塩基性コロイダルシリカである。
ケイ酸エステルの種類も特に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−t−ブトキシシラン等のアルコキシシラン化合物及びこれらのアルコキシシラン化合物の部分縮合物が挙げられる。
これらケイ酸化合物は公知のものを使用することができ、また市販品を使用することもできる。
(C)反応生成物
本発明において、反応生成物とは、プロタミン又はその塩とケイ酸化合物とが反応することにより得られる生成物であって、反応結合物、反応複合体を含む概念である。具体的には、本発明の反応生成物は、プロタミン又はその塩とケイ酸化合物の単なる混ぜ物や、ケイ酸化合物を成分とする特定の構造物にプロタミン又はその塩が結合してなるものとは異なり、ケイ酸化合物が散乱または散逸した状態で、プロタミンまたはその塩と反応して、自己組織(self-organization)または自己集合(self-assembling)することにより、プロタミンまたはその塩がケイ酸化合物に不溶化または固定化してなるものである。当該ケイ酸化合物のは自己組織化または自己集合化は、後述するようにプロタミンまたはその塩とケイ酸化合物が溶解または分散してなる溶液中における反応によって生じる。中でも抗菌性能を有するプロタミンシリカは、pHが7より高い塩基性溶液中でプロタミンまたはその塩とケイ酸化合物を反応させることによって生成取得することができる。
反応生成物において、ケイ酸化合物は、ケイ酸化合物が重合してなる重合物(以下、これを「ケイ酸重合物」ともいう)の形で含まれていてもよい。換言すると、反応生成物には、プロタミン又はその塩とケイ酸化合物とを反応させることによって、プロタミン又はその塩とケイ酸化合物、又はプロタミン又はその塩とケイ酸重合物とが、相互作用により一体化している生成物が含まれる。
後者の態様の反応生成物には、プロタミンの表面電荷によりケイ酸化合物の重合反応が生じ、その結果生じたケイ酸重合物とプロタミンとが相互作用している反応生成物が含まれる。また、本発明の反応生成物には、プロタミンと、ケイ酸化合物又はケイ酸重合物とが、特定の原子又は反応性部位において結合している化合物が含まれる。なお、このような特定の原子又は反応部位としては、例えばアルギニンのアミノ基とケイ素との間の化学的結合及び静電気的結合、側鎖の酸素原子とケイ素との化学結合などが挙げられる。また、プロタミンのアミノ酸配列における2以上の連続する塩基性アミノ酸で構成される反応性部位と、ケイ酸化合物又はケイ酸重合物とが結合している化合物が含まれる。
(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応割合、反応条件等は、ケイ酸化合物の種類等によって適宜設定される。以下、ケイ酸化合物が、ケイ酸塩又はコロイダルシリカの場合を用いて説明する。なお、ケイ酸エステルは、ケイ酸塩と同様の方法でプロタミン又はその塩と反応させることができる。
なお、プロタミンまたはその塩とケイ酸化合物との反応は、当該反応系に第三成分を配合した状態で行うこともできる。かかる第三成分を配合した状態で、プロタミンまたはその塩とケイ酸化合物とをこれらが溶解または分散してなる溶液中で反応させると、ケイ酸化合物が自己組織または自己集合し、その結果、プロタミンまたはその塩及び第三成分がケイ酸化合物に固定化される。かかる第三成分としては、抗菌性を有することが知られている金属化合物、例えば硝酸銀やチオスルファト銀錯体などの銀化合物;硫酸銅などの銅化合物;硫酸亜鉛や塩化亜鉛などの亜鉛化合物;同じく抗菌性が知られている天然抽出物、例えばヒノキチオール、カテキン、フェルラ酸、リモネン等を例示することができる。その他、本発明の効果を妨げないことを限度として、第三成分として、木材防腐防黴剤、繊維抗菌防臭加工剤、接着剤若しくは塗料用の防菌防黴剤、環境用殺菌剤、または食品工場用殺菌剤として使用される各種の化合物を用いることもできる。かかる化合物の具体例は後述する「抗菌性製品」の欄に記載のとおりである。
(i)ケイ酸化合物がケイ酸塩である場合
ケイ酸化合物がケイ酸塩(例えば、ケイ酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩またはケイ酸アンモニウム塩等)である場合、(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物の反応割合は、重量比で、(A):(B)=1:1〜0.1、特に3:1程度である。当該割合は、反応生成物自体の(A)と(B)の構成割合ともなり得る。
この場合、反応液中のプロタミン又はその塩の濃度は0.1〜15重量%、特に1〜10重量%程度に設定することが好ましい。また反応液中のケイ酸化合物の濃度は0.1〜40重量%、特に0.2〜30重量%程度に設定することが好ましい。
反応溶媒としては、水、アルコール、又はその混合溶媒(例えば含水アルコール)等が挙げられ、特に水が好ましく用いられる。なお、アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどを好適に用いることができる。
また反応液のpHは反応生成物を調製するうえでは特に制限されず、例えばpH7〜14程度の範囲を挙げることができるが、抗菌性を有するプロタミンシリカを調製するうえではpH7より高い塩基性領域のpHであることが必要である。具体的にはpH8〜14、好ましくはpH9〜13、より好ましくはpH11〜13程度である。反応温度としては、0〜100℃の程度、通常20〜70℃、例えば20〜40℃程度が好ましい。
(ii)ケイ酸化合物がコロイダルシリカである場合
ケイ酸化合物がコロイダルシリカである場合、(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応割合は、重量比で、(A):(B)=1:1〜10、特に=1:4程度である。当該割合は、反応生成物自体の(A)と(B)の構成割合ともなり得る。
この場合、反応液中のプロタミン又はその塩の濃度は、0.1〜15重量%、特に1〜10重量%程度に設定することが好ましい。また反応液中のケイ酸化合物の濃度は0.1〜40重量%、特に0.2〜30重量%程度に設定することが好ましい。
反応溶媒としては、水、アルコール水溶液、又はその混合溶媒等が挙げられ、特に水が好ましく用いられる。なお、アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが好ましい。
また反応液のpHは反応生成物を調製するうえでは特に制限されず、例えばpH7〜14程度の範囲を挙げることができるが、抗菌性を有するプロタミンシリカを調製するうえではpH7より高い塩基性領域のpHであることが必要である。具体的にはpH8〜14、好ましくはpH9〜13、より好ましくはpH11〜13程度である。反応温度としては、0〜100℃の程度、通常通常20〜70℃、例えば20〜40℃程度が好ましい。
また、反応方法も適宜設定することができ、特に限定されないが、一般に、(A)プロタミン又はその塩の水溶液と、(B)ケイ酸又はその塩の水溶液とを混合し、必要に応じて攪拌し、反応させる。そして、生成する沈殿物又は不溶物を回収することにより、反応生成物を得ることができる。より具体的には、実施例に記載の方法に従って、反応を行うことができる。
反応後は、公知の手段に従って、反応生成物の精製・分離を行うことができる。例えば、反応後、水洗、乾燥等の処理を行うことができる。斯くして調製される反応生成物のうち、pH7よりも高いpH条件(塩基性条件)で反応して生成されたプロタミンシリカは、抗菌性能を有している。このためかかる反応生成物(プロタミンシリカ)は、下記に説明するように、抗菌剤として、また抗菌性製品の抗菌成分として有効に利用される。
(D)抗菌剤
本発明の抗菌剤は、上記反応生成物(プロタミンシリカ)自体からなるものであってもよいし、また必要に応じて、当該プロタミンシリカに加えて製剤学的に許容可能な担体等を含むものであってもよい。また、抗菌剤の剤形も特に限定されず、固形形態であってもよく、液状形態であってもよい。
本発明の抗菌剤は、その効果が奏される限り、細菌及び真菌の何れにも適用可能である。
真菌としては、カビ、酵母等が挙げられる。具体的には、カビ(子嚢菌亜門):Aspergillus fumigatus(アスペルギルス・フミガタス)、Aspergillus niger(アスペルギルス・ニガー)、酵母(不完全菌亜門):Candida albicans(カンジダ・アルビカンス)、Cryptococcus neoformans(クリプトコッカス・ネオフォルマンス)、Dermatophytes(皮膚糸状菌)、Trichophyton(白癬菌)、Microsporum(表皮菌) などが挙げられる。更に、カビを含む真菌として、べと病をもたらすPeronosperceae科のカビ、Cercospora beticolaなどの真菌で代表される灰色カビ病、さび病、褐斑病、黄斑病、黒斑病などの植物の各種病害原因菌となるカビなどの真菌が挙げられる。
また、細菌としては、グラム陽性菌又はグラム陰性菌が挙げられる。
グラム陰性菌としては、S. dysenteria(赤痢菌A亜群),S. flexneri(赤痢菌B亜群),S. boydii(赤痢菌C亜群),S. sonnei(赤痢菌D亜群)等の赤痢属(Shigella)細菌:ブルセラ属(Brucella)細菌:E. coli.O157等の大腸菌群(Escherichia coli):S.typhi(チフス菌),S. paratyphi A(パラチフスA菌),S. paratyphi B(パラチフスB菌),S. Typhimurium(ネズミチフス菌)S. Enteritidis(ゲルトネル菌)等のサルモネラ属(Salmonella)細菌:V. cholerae(コレラ菌),V. parahaemolyticus(腸炎ビブリオ)等のビブリオ属(Vibrio)細菌:緑膿菌(P. aeruginosa)等のシュードモナス属(Pseudomonas)細菌等が挙げられる。
また、グラム陽性菌としては、枯草菌(B.subtilis)、炭疽菌(B. anthracis)、セレウス菌(B.cereus)等のバシラス属(Bacillus)細菌:リステリア・モノサイトゲネス菌(L. monocytogenes)リステリア・イバノヴィ菌(L. ivanovii)、リステリア・シーリゲリー菌(L. seeligeri)等のリステリア属(Listeria)細菌:Al. acidoterrestris(旧B. acidoterrestris)等のアリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)細菌:S. aureus(黄色ブドウ球菌),S. pyogenes等のブドウ球菌属(Staphylococcus)細菌:C. botulinum(ボツリヌス菌),C. perfringens(ウェルシュ菌),C. difficile, C. sporogens等のクロストリジウム属(Clostridium)細菌:Leuconostocmesenteroides等のリューコノストック属(Leuconostoc)細菌:Desulfotomaculum nigrificans等のデスルフォマクルム属(Desulfotomaculum)細菌:Enterococcus faecalis等のエンテロコッカス属(Enterococcus)細菌等が挙げられる。
特に、本発明の抗菌剤は、グラム陽性菌に対して、優れた抗菌効果を奏する。
本発明の抗菌剤は、プロタミンがケイ酸化合物又はその重合物により不溶化あるいは固定化されており、その結果、抗菌作用の持続性に優れ、抗菌性を付与したい対象物に、長期的な抗菌性を付与することができる。
2.抗菌性製品
本発明の抗菌性製品は、上記プロタミンシリカまたは抗菌剤を含有し、その結果、抗菌性を有する製品である。
(1)製品
抗菌性製品には、本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を含有する抗菌性組成物や、本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤が基材に担持されてなる抗菌性製品、また本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤が製品表面に付与処理されている抗菌性製品が挙げられる。尚、本明細書において、基材にプロタミンシリカまたは抗菌剤が「担持」されてなるとは、基材にプロタミンシリカまたは抗菌剤が「付着」又は「含有」されてなることを含む概念である。
具体的に、プロタミンシリカまたは抗菌剤を含有する抗菌性製品としては、例えば、抗菌性塗料、抗菌性プラスチック製品、抗菌性紙製品、抗菌性繊維、抗菌性壁紙、抗菌性不織布、抗菌性加工木材、抗菌性梱包材、抗菌性台所用品、抗菌性食料工場用製品、抗菌性環境浄化用製品、植物病害防除若しくは駆除用の抗菌製剤(例えば、農薬)、抗菌性掃除用製品等が挙げられる。
植物病害防除若しくは駆除用の抗菌製剤としては、果樹(ブドウ、カンキツなど)、野菜または果物(イチゴ、すいか、トマトなど)、草花、花木などの植物におけるカビ性の病気である灰色カビ病、晩腐病、ベト病(露菌病:卵菌(ミズカビ)による)等の病害の防除若しくは駆除用の抗菌剤が含まれる。このような植物病害防除若しくは駆除用の抗菌製剤は、原体のまま植物に使用してもよく、また常法に従い、鉱物質微粉などの希釈剤で希釈して、粉剤や粒剤として使用してもよい。また、水その他溶媒などに懸濁あるいは溶解させて水和剤、水溶剤、乳剤、液剤、油剤などとして用いることもできる。とりわけ、水和剤などとして用いるのが好都合である。希釈するにあたっては、剤形や対象病害にもよるが、通常500ppm〜5000ppm程度、好ましくは1000ppm〜3000ppm程度に水で希釈して用いるのが好適である。これらの剤形の抗菌製剤を、対象とする病害や植物に応じて、農作物、草花または樹木に、散布して用いてもよく、エアゾルなどで噴霧して適用してもよく、また直接塗布してもよい。本発明の植物病害防除若しくは駆除用の抗菌製剤は、合成化学農薬に比べ、安全性が高いため、残留農薬や土壌の蓄積の問題が避けられる。また、従来の農薬を用いた場合に伴いがちな果実や果実を用いた製品(ワインやジュースなどの果実加工品)の風味や品質の低下の問題も解消できる場合が多い。このように本願発明の植物病害防除若しくは駆除用の抗菌製剤は、従来の農薬分野のunmet needsを満たす画期的な農薬として有用である。なお、下記する他の抗菌性製品と同様、本発明の植物病害防除若しくは駆除用の抗菌製剤は、単独で用いてもよく、また従来慣用されている植物病害防除剤(ボルドー液あるいは化学農薬)と適宜併用してもよい。ただし、果実や果実を用いた製品(果実加工品)の風味や品質の低下を回避する観点および環境への負荷を低減する観点からは、化学農薬などと併用することなく、本願の植物病害防除若しくは駆除用の抗菌製剤単独で用いるのが好ましい。
抗菌性製品における本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤の含有割合は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜設定することができる。
また、抗菌性製品には、用途に応じ、本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤以外の他の抗菌剤や公知の添加物等を配合することができる。
他の抗菌剤としては、例えば、木材防腐防黴剤、繊維抗菌防臭加工剤、接着剤若しくは塗料用の防菌防黴剤、環境用殺菌剤、食品工場用殺菌剤等を挙げることができる。
木材防腐防黴剤としては、硫酸銅、フッ化ナトリウム、クレオソート油、有機スズ化合物、シクロペンタン誘導体、一価フェノール誘導体、フェニル誘導体、フェノールエーテル誘導体、フェノールエステル誘導体、スルホン誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体、二トリル誘導体、ナフタリン類、ピロール誘導体、キノリン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体等を挙げることができる。
繊維抗菌防臭加工剤としては、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド等の第4アンモニウム塩、α-ブロムシンナムアルデヒド等の単環炭化水素誘導体、5-クロル-2-(2,4-ジクロルフェノキシ)フェノール等の一価フェノール誘導体、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール等のイミダゾール誘導体、2-(3,5-ジメチルピラゾリル)-4-ヒドロキシ-6-フェニルピリミジン等のピリミジン誘導体を挙げることができる。
接着剤若しくは塗料用の防菌防黴剤としては、3-ヨード-2-プロピニルブチルカルバメート等の第2アミン類、ジチオ-2,2’-ビス(ベンズメチルアミド) 等のフェニル誘導体、o-フェニルフェノール、p-クロル-m-キシレノール等の一価フェノール類、10,10'-オキシビスフェノキサアルシン等のフェノールエーテル誘導体、ジヨードメチル-p-トリルスルホン、1-[(ジヨードメチル)スルホニル]-4-メチルベンゼン等のスルホン誘導体、テトラクロルイソフタロニトリル等のニトリル誘導体、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、1-(ブチルカルバモイル)-2-ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル等のイミダゾール誘導体、1-(3-クロルアリル)-3,5,7-トリアザ-1-アゾニアアダマンタンクロリド等の1,3,5-トリアジン誘導体、2-(4-チアシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール誘導体、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾール誘導体、3,5-ジメチルテトラヒドロ-1,3,5,2H-チアジアジン-2-チオン等のチアジアゾール誘導体が挙げられる。
プラスチック用防菌防黴剤としては、10,10’-オキソビスフェノキサアルシン等のフェノールエーテル誘導体、N,N-ジメチル-N’-フェニル-N’-(フルオロジクロルメチルチオ)スルファミド等のスルホン誘導体、3,4’,5-トリブロムサリチルアニリド等のアニリド誘導体、N-(トリクロルメチルチオ)フタルイミド、N-(フルオロジクロムメチルチオ)フタルイミド、N-トリクロルメチルメルカブト-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシイミド、N-1,1,2,2-テトラクロルエチルチオテトラヒドロフタルイミド等のピロール誘導体、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール等のイミダゾール誘導体が挙げられる。
環境用殺菌剤には、無機化合物類、脂肪族化合物、芳香族化合物が含まれる。
無機化合物類としては、二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウム、オゾン、亜塩素酸ナトリウム、塩素ガス、過マンガン酸カリウム、過酢酸、さらし粉、過酸化水素等が挙げられる。
脂肪族化合物としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等の一価アルコール類、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド(1,5-ペンタンジアール)等の飽和アルデヒド類、エチレンオキシド、プロピレシオキシド等の不飽和エーテル類、ドデシル(アミノエチル)グリシン塩酸塩、テトラデシルジ(アミノエチル)グリシン塩酸塩、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン塩酸塩、ラウリルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム等のアミノ酸誘導体、塩素化シアヌール酸等のシアヌール酸誘導体、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、ドデシルグアニジン塩酸塩等のグアニジン誘導体が挙げられる。
芳香族化合物としては、フェノール、クレゾール、p-クロル-m-クレゾール、2’,4’,5-トリクロル-2-フェノキシフェノール、o-フェニルフェノール、o-フェニルフェノールナトリウム、ヘキサクロルフェン等の一価フェノール誘導体、ベンジルアルコール、スルホン誘導体:N-クロル-p-トルエンスルホンアミドナトリウム(クロラミンT) 等の芳香族アルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のアンモニウム塩誘導体、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等のグアニジン誘導体が挙げられる。
食品工場用殺菌剤には、無機化合物、脂肪酸化合物、芳香族化合物が含まれる。
無機化合物としては、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過酸化ピロリン酸ナトリウム、ヨード、ヨードホール(ボビドンヨード、ボロキサマヨード、グリシンヨード)、塩素ガス、さらし粉、高度さらし粉、次亜塩素酸カルシウム、二酸化塩素、オゾン等が挙げられる。
脂肪酸化合物としては、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール等の一価アルコール、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド等の飽和アルデヒド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の不飽和エーテル、β-オキシプロピオラクトン等のラクトン、ドデシル(アミノエチル)グリシン塩酸塩、テトラデシルジ(アミノエチル)グリシン塩酸塩、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン塩酸塩、ラウリルジ(アミノエチル)グリシンナトリウム等のアミノ酸誘導体、1,3-ジクロル-5,5-ジメチルヒダントイン等のヒダントイン、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4アンモニウム塩、ポリクロルイソシアヌール酸塩等のシアヌール酸誘導体、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、ドデシルグアニジン塩酸塩、1,6-ビス(2-エチルヘキシルビグアジニノ)ヘキサン等のグアニジン誘導体が挙げられる。
芳香族化合物としては、α-ブロムシンナムアルデヒド等の単環炭化水素誘導体、フェノール、クレゾール、キシレノール、クロルフェノール、p-クロム-m-クレゾール、p-クロム-m-キシレノール、o-フェニルフェノール、ヘキサクロルフェン、2’,4’,5’-トリクロム-2-フェノキシフェノール(イルガサンDP300)、ジクロルメタキシレノール等の一価フェノール誘導体、N-クロル-p-トルエンスルホンアミドナトリウム(クロラミンT)、N-クロルベンゼンスルホンアミドナトリウム(クロラミンB)、ジクロル-p-スルホンアミド安息香酸(パラゾーン)等のスルホン誘導体、塩酸クロルヘキシジン等のグアニジン誘導体、ジアルキル(C12〜C18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、メチルオキシエチルドデシルオキシエチルベンジルアンモニウムクロリド等の第4アンモニウム塩、アルキルピリジニウムハライド等のピリジン誘導体、アルキルイソキノリニウムハライド等のイソキノリン誘導体が挙げられる。
その他天然系の、ヒノキチオール、カテキン、ヨモギエキス、アロエエキス、シソの葉エキス、ドクダミ、甘草エキス、ヒバオイルなども用いることができる。他の抗菌剤と併用する場合、とりわけ、これら天然系の抗菌剤との併用は、環境への付加の低さや安全性の観点から好適である。
本発明において基材としては、シリカとの反応に先立って、プロタミン分子を吸着し、バイオシリカ形成の反応場を提供し得る表面あるいはマトリクス構造を有する固体であれば適宜用いることができる。逆に、プロタミンまたはその塩との反応に先立って、シリカを付着乃至吸着などし、固着でき、バイオシリカ形成の反応場を提供できるものも用いることができる。
かかる基材の材質は特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、またはポリエチレン等の合成樹脂;或いは、綿、麻、またはパルプ等のセルロース繊維;又は羊毛、獣毛、絹などの動物由来の繊維等の天然系物質を用いたものであってよい。
(2)製造方法
本発明の抗菌性製品の製造方法は、製品の種類等によって適宜設定することができる。例えば、抗菌性製品を製造するに際し、製造原料に本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を含有させる方法が挙げられる。具体的に、本発明の抗菌性製品が抗菌性塗料である場合は、塗料の原料に、本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を配合し、定法に従って混合し、抗菌性を有する塗料製品を調製する方法が挙げられる。また本発明の抗菌性製品が抗菌性プラスチックであれば、プラスチックの原料(プラスチック材料)に本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を配合し、定法に従って混合、成形して抗菌性を有するプラスチック製品を製造する方法が挙げられる。
また、他の抗菌性製品の製造方法としては、例えば、対象とする製品の表面に本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を付与する方法が挙げられる。例えば、製品表面に本発明のプロタミンシリカ、抗菌剤又はこれらを含む組成物を塗布、吹きつけ等によって抗菌性を付与する方法が挙げられる。
また、本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を、対象とする製品の一部に担持させる方法が挙げられる。例えば、対象とする製品が一部に前述する基材を有する場合、本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を当該基材に担持させる方法が挙げられる。この場合、基材にプロタミンシリカまたは抗菌剤を担持させる方法としては、(a)基材を本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤で表面処理する方法、(b)基材を構成する原料に本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を含有させて基材を作製する方法、(c)基材にプロタミン又はその塩を接触させ、次いでケイ酸化合物を接触させて、基材上で本発明の抗菌剤を製造する方法、或いは(d)基材にケイ酸化合物を接触させ、次いでプロタミン又はその塩を接触させて、基材上で本発明の抗菌剤を製造する方法等が挙げられる。(c)及び(d)において、基材にプロタミン又はその塩を接触させる方法としては、例えばプロタミン又はその塩を含む塩基性溶液に基材を浸漬する方法が挙げられる。また基材にケイ酸化合物を接触させる方法としては、例えばケイ酸化合物を含む塩基性溶液に基材を浸漬する方法等が挙げられる。ここで塩基性溶液としては、プロタミン又はその塩やケイ酸化合物と相溶性があるpH7より高い塩基性領域の溶液、具体的にはpH8〜14、好ましくはpH9〜13、より好ましくはpH11〜13程度の溶液を挙げることができる。かかる溶媒としては、水、アルコール水溶液、又はその混合溶媒等が例示される。なお、アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどが好ましい。
(3)本発明の抗菌性製品の特性
本発明の抗菌性製品は、上記本発明のプロタミンシリカ又は抗菌剤を含有してなり、これによりプロタミンが本来有する抗菌作用を安定的に持続させることができるものである。このことから、本発明の抗菌性製品は、従来のプロタミンを用いた抗菌性製品に比べ長期的かつ安定した抗菌作用を奏する。
また、本発明の抗菌性製品は、製品を製造する原料に上記プロタミンシリカ又は抗菌剤を配合して、製品を製造したり、上記プロタミンシリカ又は抗菌剤を製品表面に付与したりすることにより製造することができる。また、本発明の抗菌性製品は、プロタミン又はその塩とケイ酸化合物との反応生成物(プロタミンシリカ)を利用するものであるから、抗菌性を付与したい製品をプロタミン又はその塩によって処理し、且つケイ酸化合物によって処理することによっても製造することができる。これにより、長期的な抗菌作用を有する抗菌性製品を簡便かつ容易に製造できる。
3.抗菌性フィルター
本発明の抗菌性製品の具体例としては、上記(A)プロタミン又はその塩と、(B)ケイ酸化合物との反応生成物(プロタミンシリカ)が、フィルター基材に担持されてなる抗菌性フィルターが挙げられる。
ここでフィルター基材としても、前記したような、シリカとの反応に先立って、プロタミン分子を吸着し、バイオシリカ形成の反応場を提供し得る表面あるいはマトリクス構造を有する固体であれば用いることができる。特に、各種布などで代表される繊維或いは網目構造を有する膜状のものなどが好ましい。
フィルター基材の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のオレフィン系樹脂;ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエーテル・ケトン系樹脂;ポリスルフォン(PSU)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)等のサルファイド・サルフォン系樹脂;ポリカーボネイト(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のエステル系樹脂;ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン12(N12)、ナイロン46(N46)等のアミド系樹脂;ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)等のイミド系樹脂;エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂等の合成樹脂;綿、麻、レーヨンまたはパルプ等のセルロース繊維;又は羊毛、獣毛または絹などの動物由来の繊維等の天然系物質が挙げられる。
また、フィルターの用途も特に限定されず、例えば、換気扇フィルター、空気清浄フィルター、水処理用フィルター等が挙げられる。
フィルターには、本発明の抗菌剤やプロタミン以外の他の抗菌性化合物が配合されていてもよい。他の抗菌性化合物としては、例えば、抗菌性を有するイミダゾール系化合物、柑橘系化合物(柑橘性植物抽出成分)、また、上記2の項目に記載した抗菌性化合物等が挙げられる。
抗菌性フィルターの製造方法も、特に限定されないが、例えば、(1)フィルター基材にプロタミン又はその塩を接触させる工程、次いで(2)(1)で得られたフィルター基材にケイ酸化合物を接触させる工程を含む方法が挙げられる。また(1)フィルター基材にケイ酸化合物を接触させる工程、次いで(2)(1)で得られたフィルター基材にプロタミン又はその塩を接触させる工程を含む方法が挙げられる。これらの方法は、好ましくは塩基性条件下で実施される。具体的には、実施例に記載の方法が挙げられる。
基材にプロタミン又はその塩を接触させる方法としては、例えば、プロタミン又はその塩を含む、好ましくは塩基性の水溶液に基材を浸す方法が挙げられる。この場合、水溶液におけるプロタミン又はその塩の濃度は、通常、0.1〜15重量%程度、特に1〜10重量%程度である。
また基材にケイ酸化合物を接触させる方法としては、例えばケイ酸化合物を含む、好ましくは塩基性の水溶液に基材を浸す方法が挙げられる。この場合、ケイ酸化合物の濃度は0.1〜40重量%程度、特に1〜30重量%が好ましい。
上記抗菌性フィルターは、抗菌作用の安定性に優れ、長期的な抗菌作用が奏される。更に、上記抗菌性フィルターの製造方法によれば、安定した抗菌性を有し、かつ長期的な抗菌作用が付与されたフィルターを簡便に製造することが可能になる。
以下、本発明をより詳細に説明するために、実施例及び比較例を用いて説明を行うが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。尚、本明細書において、「%」は特に断らない限り、「重量%」を意味する。また、「ppm」は特に断らない限り、「重量ppm」を意味する。また、下記においてプロタミン又はその塩とケイ酸化合物との反応生成物のうち、特に抗菌性を有する反応生成物を「プロタミンシリカ」とも称する。
実施例1.プロタミン硫酸塩とケイ酸ソーダとの反応
A液は、4号珪酸ソーダ〔富士化学(株)製、SiO:24.12%、NaO:7.49%、SiO/NaO(モル比)=3.4、d=1.313(20℃)〕11.21g に蒸留水を加えて45ml とすることにより調製した。B液は、水5ml にプロタミン硫酸塩(サケ由来、和光純薬工業(株)製)0.05gを加えて煮沸溶解して調製した。A液(室温)にB液(80〜100℃)を添加し(pH11〜12)、3時間程度撹拌して反応させた。得られた生成物を、80℃で乾燥後、電子顕微鏡写真により観察した。結果を図1に示す。図1の上段及び下段はそれぞれ倍率を30,000倍及び150,000倍に拡大した画像である。
図1に示されるように、塩基性水溶液中におけるプロタミンとケイ酸ソーダとの反応により粒子状の生成物が形成されていることが確認された。
実施例2.反応生成物の抗菌性(細菌に対する最小発育阻止濃度)
プロタミン硫酸塩、並びにプロタミン硫酸塩とケイ酸ソーダとの反応から得られる反応生成物について、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、及び枯草菌(Bacillus Subtilis)のそれぞれの細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)を検討した。
反応生成物は、実施例1と同様に、4号ケイ酸ソーダ(富士化学(株)、SiO:24.12%,NaO:7.49%,SiO/NaO(モル比)=3.40,d=1.313)11.45gに蒸留水を加えて45mlにしたもの(室温)に、蒸留水5ml にプロタミン(サケ由来、和光純薬工業(株)製)0.05gを加えて煮沸溶解したもの(80〜100℃)を加えて(pH11〜12)、3時間程度撹拌して反応させ、得られた生成物を、水洗して80℃で乾燥させたものを使用した。
接種菌液として、試験に使用する培地(MHB培地:Mueller Hinton Broth培地(DIFCO製))と同じ培地で前培養した後、菌数調整した下記液を使用した。
大腸菌(Escherichia coli、NBRC 3972) 1.5×10CFU/ml
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732) 4.0×10CFU/ml
枯草菌(Bacillus Subtilis、NBRC No.3009) 1.0×10CFU/ml。
滅菌済み24 穴マルチウェルプレートの1番目以外の穴にMHB培地(DIFCO製)1ml を入れ、1番目の穴に、2000ppmのプロタミン硫酸塩または2000ppmのプロタミンシリカを分散させたMHB培地を2ml入れた。
1番目の穴の液を1ml 取り、2番目の穴に入れて分散させ2倍希釈液とした。同様に続く穴に分散させて順次2倍希釈を行い、プロタミン硫酸塩またはプロタミンシリカを2000、1000、500、250、125、62.5、31.3、15.6、7.8、3.9、2.0、0.98、0.49、0.24、0.12、0.061、0.031、0.015、0.0076、0.0038、0.0019、0.00095、0.00048、及び0.00024ppm の各濃度に調製した液を作製した。得られた各濃度液に、上記接種菌液を、各100μl添加した。その後、37℃の恒温器中の振とう器(100rpm)に設置し、24 時間培養を行った。
結果を表1に示す。
Figure 0005942289
表1に示されるように、プロタミン硫酸塩の各細菌に対する最小発育阻止濃度は、大腸菌に対しては5.6ppm、黄色ブドウ球菌に対しては3.9ppm、枯草菌に対しては3.9ppm であった。また、反応生成物の各細菌に対する最小発育阻止濃度は、大腸菌に対しては31.3ppm、黄色ブドウ球菌に対しては7.8ppm、枯草菌に対しては7.8ppm であった。
当該結果から、上記方法で調製した反応生成物は、プロタミン硫酸塩に匹敵する抗菌性を有していることがわかった。
実施例3.プロタミン硫酸塩及びプロタミンシリカの抗菌活性持続試験
プロタミン硫酸塩、及び本発明の反応生成物(プロタミンシリカ)について、抗菌活性の持続性を評価した。
反応生成物として、抗菌性を確認した実施例2と同様の方法で作製した反応生成物(プロタミンシリカ)を使用した。
接種菌液としては、NA スラント培地(Nutrient Agar(日水製薬(株)製))で前培養した枯草菌(Bacillus Subtilis:NBRC No.3009)を、1/100NB培地(Nutrient Broth(栄研化学(株)製))で10CFU/mlとなるように菌数調整した液を用いた。
試験区としては、下記(a)〜(c)を用意した。
(a)対照区:50ml容量の樹脂製遠沈管にMHB培地(DIFCO 製)30mlのみ添加
(b)プロタミン硫酸塩区:50ml容量の樹脂製遠沈管にいれたMHB 培地 30ml にプロタミン硫酸塩15mgを添加
(c)プロタミンシリカ区:50ml容量の樹脂製遠沈管にいれたMHB 培地 30ml にプロタミンシリカ15mgを添加。
各試験区に、接種菌液10CFU/ml を1ml 加え、室温(約23℃)で、100rpmにて振とう培養を行った。培養24時間後に各試験区(培養菌液約30ml)から1mlずつ培養菌液を採取し、SA 培地(Standard Method Agar(日水製薬(株)製))で固めて培養し菌数測定を行った。また各試験区の残りの培養菌液(約29ml)を遠心分離(3000rpm、10min)し、上澄み液を廃棄した。その遠沈管に新たにMHB 培地30ml と接種菌液10CFU/mlを1ml 加え、室温(約23℃)で振とう(100rpm)培養を行った。この操作(洗い出し)を10 回繰り返した。
結果を下記表2に示す。
Figure 0005942289
表2に示されるように、プロタミン硫酸塩の抗菌活性は1 回目の洗い出しで消失した。一方、プロタミンシリカの抗菌活性は7回目まで持続された。プロタミンシリカについては洗い出し操作によっても抗菌活性が持続した理由としては、抗菌活性を有するプロタミンがケイ酸化合物に担持され、固定化されたことによるものと考えられた。
実施例4.プロタミン硫酸塩量とケイ酸ソーダ濃度を変えて調製したプロタミンシリカの抗菌性
実施例2及び3の結果からプロタミン硫酸塩とケイ酸ソーダを反応させると、抗菌性を有する反応生成物(プロタミンシリカ)が得られることが明らかになった。そこで、反応に使用するプロタミン硫酸塩量やケイ酸ソーダ濃度により、生成するプロタミンシリカの量やその抗菌性に差異があるかを調べた。
(1)プロタミンシリカの製造方法
A液として、3号ケイ酸ソーダ〔SiO:29.1%、NaO:9.39%、SiO/NaO(モル比)= 3.2、d=1.405(20℃)〕に蒸留水を加えて、5000ppm、1%、2.5%、5%、10%濃度のケイ酸ソーダ水溶液を40ml 作製した。
B液として、水5ml にプロタミン硫酸塩(サケ由来、分子量3,000〜10,000)を0.05g、0.1g、0.5gを加えて、レンジ加熱(煮沸)により溶解させてプロタミン硫酸塩水溶液を作製した。 A液(室温)にB液(80〜100℃)を添加して(pH10〜12)、3時間程度撹拌して反応させた。
得られた反応液を遠心分離(3000rpm,10分間)にかけた後、上澄み液を廃棄し、沈殿残渣(プロタミンシリカ)に蒸留水を加えて撹拌した。この操作を5回繰り返した。その後、沈殿残渣(プロタミンシリカ)を乾燥器(80℃)で48 時間乾燥を行い、重量を測定した。その後、乳鉢で粉砕して、電子顕微鏡観察をするとともに、下記の抗菌性試験を行った。
(2)抗菌性試験(最小発育阻止濃度:MIC)
接種菌液として、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)(4.0×10CFU/ml)を100μl 用いた。当該接種菌液は、試験に使用する液体培地(MHB培地、DIFCO社製)と同じ培地で前培養したものを1/100NB で菌数調整して用いた。
滅菌済み24 穴マルチウェルプレートの1 番目以外の穴にMHB培地1mlを入れ、1番目の穴に12800ppmのプロタミンシリカを分散したMHB培地を2ml 入れた。
1番目の液を1ml 取り、2番目に入れて分散させ2倍希釈液とした。同様に順次2倍希釈を行い、プロタミンシリカの12800,6800,3200,1600,800,400,200,100,50,25,12.5,6.25,3.13,1.56,0.78,0.39,0.20,0.098,0.049,0.024,0.012,0.006,0.003,0.0015ppm濃度の液を作製した。各濃度液に上記接種菌液を100μl 添加した。その後、これを37℃の恒温器中で振とう器に設置し、24 時間、振盪培養(100rpm)を行い、最小発育阻止濃度(MIC値)を測定した。
結果を、下記表3〜5に示す。
Figure 0005942289
プロタミン硫酸塩0.05gとケイ酸ソーダ(0.5〜10%/40ml)との反応によって生成したプロタミンシリカを電子顕微鏡で観察した結果を図1に示す。図1に示すように、水溶液中にプロタミン硫酸塩とともに溶解または分散させたケイ酸ソーダは、粒子径100nm〜1μm程度のサブミクロンサイズの球状粒子を形成しており(電子顕微鏡観察による目視測定)、これからケイ酸ソーダが散乱若しくは散逸した状態から自己組織化または自己集合していることが確認された。
Figure 0005942289
プロタミン硫酸塩0.1gとケイ酸ソーダ(0.5〜10%/40ml)との反応によって生成したプロタミンシリカを電子顕微鏡で観察して結果を図2に示す。
Figure 0005942289
プロタミン硫酸塩0.5gとケイ酸ソーダ(0.5〜10%/40ml)との反応によって生成したプロタミンシリカを電子顕微鏡で観察して結果を図3に示す。
上記表3〜5の結果から、反応生成物の量は、ケイ酸ソーダよりもむしろプロタミン硫酸塩の量に依存することが分かった。また、反応液中のケイ酸ソーダの濃度が1%以上では、反応生成物の量は、反応に使用したプロタミン硫酸塩の重量の約1.3倍であることがわかった。また、S.aureusに対する抗菌性は、反応に使用するケイ酸ソーダやプロタミン硫酸塩の量に依存せず、一定で高い抗菌性を示すことがわかった。また、プロタミン硫酸塩の量によっても異なるが、2.5%以下のケイ酸ソーダを用いることで球形のプロタミンシリカが生成する傾向が認められた。
実施例5.プロタミン硫酸塩と塩基性コロイダルシリカの反応
ここではケイ酸化合物としてコロイダルシリカを用いてプロタミンの塩と反応を行い、生成したプロタミンシリカの抗菌性を評価した。
(1)材料
コロイダルシリカとして、以下のシリカゾルを用いた。また対照のため、3号ケイ酸ソーダも用いた。
1)スノーテックスS (日産化学工業製) 粒子径8〜11 nm, pH 9.5 〜10.5
2)スノーテックスXS (日産化学工業製) 粒子径4〜6 nm, pH 9.0 〜10.0
3)3号ケイ酸ソーダ (富士化学製) モル比(SiO2 / Na2O) 3.2, pH > 12。
(2)実験方法
(2−1)プロタミンシリカの製造
A液として、ケイ酸濃度を1%あるいは10%に調整した各種ケイ酸化合物溶液を作製した。 B液として、蒸留水5ml にプロタミン硫酸塩(サケ由来、分子量3,000〜10,000)0.1gを加えて、レンジ加熱(煮沸)により溶解し、プロタミン硫酸塩の水溶液を作製した。
A液40 mL(室温)に上記B液(80〜100℃)を添加し(pH11〜12)、3時間程度撹拌して反応させた。得られた反応液を3,000 rpm, 10分間遠心し、上清を除いたあと、沈殿残渣(反応生成物)を蒸留水で撹拌しながら洗浄した。この操作を3回行った。続いて、沈殿残渣(反応生成物)を99.5 容量%の エタノール含有水溶液で2回洗浄した。その後、得られた沈殿残渣(反応生成物)を乾燥器(80℃)で15時間乾燥し、重量を測定した。その後、乳鉢で粉砕して抗菌性試験に用いた。
(2−2)抗菌性試験(最小発育阻止濃度:MIC)
接種菌として、大腸菌(Escherichia coli、NBRC 3972)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)を用いた。各菌は、試験に使用する液体培地(MHB培地、DIFCO社製)で前培養したものを1/100NB培地で菌数調整した。具体的には、Escherichia coli (NBRC 3972)は、2.3×105 CFU/mLに調整し、またStaphylococcus aureus(NBRC 12732)は、 5.0×105CFU/mLに調整した。
滅菌済み24 穴マルチウェルプレートの1番目以外の穴にMHB培地1mLを入れ、1番目の穴に12800 ppm のプロタミンシリカを分散したMHB培地を2 mL入れた。1番目の液1 mL 取り、2番目に入れて分散させ2倍希釈液とした。同様に順次2倍希釈を行い、プロタミンシリカの12800,6400,3200,1600,800,400,200,100,50,25,12.5,6.25,3.13,1.56,0.78,0.39,0.20,0.098,0.049,0.024,0.012,0.006,0.003,0.0015ppm濃度の液を作製した。各濃度に調整した液にE. coli,またはS. aureus の接種菌液を100μLずつ添加した。その後、37℃の恒温器中の振とう器に設置し、24 時間振とう培養(100rpm)を行い、最小発育阻止濃度(MIC値)を測定した。
(3)結果
反応生成物(プロタミンシリカ)の収量を表6に示す。
Figure 0005942289
また、大腸菌、及び黄色ブドウ球菌のそれぞれに対するMIC値を表7に示す。
Figure 0005942289
(4)考察
ケイ酸化合物としてコロイダルシリカを用いた場合でも、ケイ酸濃度に関わらず、抗菌性を示すプロタミンシリカが得られることがわかった。但し、ケイ酸化合物としてコロイダルシリカを用いた場合、ケイ酸濃度が高い方がMIC値が高くなる傾向があった。これは、ケイ酸濃度が高いコロイダルシリカのほうが、生成するプロタミンシリカ単位重量あたりのプロタミンの含有率が少ないためと考えられた。
実施例6.プロタミン硫酸塩と酸性コロイダルシリカの反応
上記でプロタミンシリカと塩基性コロイダルシリカにより、抗菌性を有するプロタミンシリカが得られることがわかった。
そこで、ここでは酸性コロイダルシリカを用いてプロタミンシリカを作製し、その抗菌性を評価した。
(1)材料
コロイダルシリカとして、以下の酸性のシリカゾルを用いた。また対照のため、3号ケイ酸ソーダも用いた。
1)スノーテックスOS (日産化学工業製) :粒子径 8〜11nm, pH 2.0 〜 4.0
2)スノーテックスOXS (日産化学工業製) :粒子径 4〜6nm, pH 2.0 〜 4.0
3)3号ケイ酸ソーダ (富士化学製) :モル比(SiO2 / Na2O) 3.2, pH > 12 。
(2)実験方法
(2−1)プロタミンシリカの製造
スノーテックスOS をNaOHでpH9.5又は9.6に調整した。また、スノーテックスOXSをNaOHでpH9.4又は9.5に調整した。
A液として、ケイ酸濃度を1%に調整し、上記するようにNaOHでpH9.4〜9.6に調整した溶液を作製した。
B液として、蒸留水5ml にプロタミン硫酸塩(サケ由来、分子量3,000〜10,000)0.5gを加えて、レンジ加熱(煮沸)により溶解し、プロタミン硫酸塩の水溶液を作製した。
A液40 mL(室温)にB液(80〜100℃)を添加し(pH11〜12)、3時間程度撹拌して反応させた。得られた反応液を3,000 rpm, 10分間遠心し、上清を除いたあと、沈殿残渣(反応生成物)を蒸留水で撹拌しながら洗浄した。この操作を3回行った。その後、沈殿残渣(反応生成物)を乾燥器(80 ℃)で15時間乾燥し、重量を測定した。その後、乳鉢で粉砕して下記の抗菌性試験に用いた。
(2−2)抗菌性試験(最小発育阻止濃度:MIC)
接種菌として、大腸菌(Escherichia coli、NBRC 3972)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)を用いた。各菌は試験に使用する液体培地(MHB培地、DIFCO社製)で前培養したものを1/100 NB培地で菌数調整した。具体的には、Escherichia coli (NBRC 3972)は 3.8×105 CFU / mLに、Staphylococcus aureus(NBRC 12732)は 4.5×105CFU / mLに調整した。
滅菌済み24 穴マルチウェルプレートの1番目以外の穴にMHB培地1 mL を入れ、1番目の穴に6400 ppm のプロタミンシリカを分散したMHB培地を2 mL 入れた。1番目の液1 mL 取り、2番目に入れて分散させ2倍希釈液とした。同様に順次2倍希釈を行い、プロタミンシリカの6400,3200,1600,800,400,200,100,50,25,12.5,6.25,3.13,1.56,0.78,0.39,0.20,0.098,0.049,0.024,0.012,0.006,0.003,0.0015ppm濃度の液を作製した。各濃度の液にE.coliまたはS. aureus の接種菌液を100μLずつ添加した。その後、37℃の恒温器中の振とう器に設置し、24 時間振とう培養(100rpm)を行い、最小発育阻止濃度(MIC値)を測定した。
(3)結果
反応生成物(プロタミンシリカ)の収量を表8に示す。
Figure 0005942289
また、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対するMIC試験結果を表9に示す。
Figure 0005942289
(4)考察
上記結果から、ケイ酸化合物として酸性コロイダルシリカを用いた場合でも、抗菌性を有するプロタミンシリカが得られることがわかった。但し、プロタミンとの反応には、pH9.4〜9.6程度に調整したものを使用しており、この塩基性の反応条件がプロタミンシリカの構造や抗菌性に関係することが示唆された。
実施例7.プロタミン硫酸塩とコロイダルシリカの反応
上記実施例5及び6の結果より、反応生成物は塩基性環境下で生成させることが抗菌性を持つために重要であることが示唆された。
条件を更に検討するため、コロイダルシリカをNaOHで予めpH12以上の強塩基性に調整し、プロタミンとの反応を行い、得られた反応生成物の抗菌性(最小発育阻止濃度:MIC)を評価した。
(1)材料
コロイダルシリカとしては、以下のシリカゾルを用いた。
1) スノーテックスS (日産化学工業製) 粒子径8〜11 nm, pH 9.5〜10.5
2) スノーテックスOS (日産化学工業製) 粒子径8〜11 nm, pH 2.0〜4.0
3) スノーテックスXS (日産化学工業製) 粒子径4〜6 nm, pH 9.0〜10.0
4) スノーテックスOXS (日産化学工業製) 粒子径4〜6 nm, pH 2.0〜4.0 。
(2)実験方法
(2−1)pH調整
下記表10に示すとおり、各種シリカゾルをNaOHでpH12以上の強塩基性にpH調整をした。pHメーターはsartorius製Docu-pH Meterを使用した。
Figure 0005942289
(2−2)プロタミンシリカの製造
A液として、上記コロイダルシリカを、SiO2濃度が1%、pHが上記(2−1)に示す値になるように調整した溶液を作製した。
B液として、蒸留水5ml にプロタミン硫酸塩(サケ由来、分子量3,000〜10,000)0.1gを加えてレンジ加熱(煮沸)することにより溶解し、プロタミン硫酸塩の水溶液を作製した。
A液40 mL(室温)にB液(80〜100℃)を添加し、3時間程度撹拌して反応させた。反応液を3,000 rpmで10分間遠心し、上清を除いたあと、沈殿残渣(プロタミンシリカ)を蒸留水で撹拌しながら洗浄した。この操作を3回行った。その後、沈殿残渣(プロタミンシリカ)を乾燥器(80 ℃)で15時間乾燥し、重量を測定した。その後、乳鉢で粉砕して下記の抗菌性試験に用いた。
(2−3)抗菌性試験(最小発育阻止濃度:MIC)
接種菌として、大腸菌(Escherichia coli、NBRC 3972)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)を用いた。各菌は使用する液体培地(MHB培地、DIFCO社製)で前培養したものを1/100 NB培地(Nutrient Broth(栄研化学(株)製))で菌数調整して使用した。具体的には、Escherichia coli (NBRC 3972)は 3.8×105 CFU / mLに、Staphylococcus aureus(NBRC 12732)は 4.5×105 CFU / mLを100 μL を接種した。
滅菌済み24 穴マルチウェルプレートの1番目以外の穴にMHB培地1 mL を入れ、1番目の穴に12800 ppm のプロタミンシリカを分散したMHB培地を2 mL 入れた。1番目の液1 mL取り、2番目に入れて分散させ2倍希釈液とした。同様に順次2倍希釈を行い、プロタミンシリカの12800, 6400,3200,1600,800,400,200,100,50,25,12.5,6.25,3.13,1.56,0.78,0.39,0.20,0.098,0.049,0.024,0.012,0.006,0.003,0.0015ppm濃度の液を作製した。各濃度液にE. coli,または S. aureus の各接種菌液を100 μLずつ添加した。その後、これを37℃の恒温器中の振とう器に設置し、24 時間振とう培養(100rpm)し、最小発育阻止濃度(MIC値)を測定した。
(3)結果
反応生成物の収量を表11に示す。
Figure 0005942289
また、大腸菌、黄色ブドウ球菌に対するMIC値を表12に示す。
Figure 0005942289
上記結果から、ケイ酸化合物として強塩基性にしたコロイダルシリカを用いて得られた反応生成物が、良好な抗菌性を示すことがわかった。
実施例6と7の結果から、塩基性環境の条件下でプロタミンまたはその塩とケイ酸化合物とを反応することで抗菌性を有する反応生成物(プロタミンシリカ)が得られることが確かめられ、またpH12程度の強塩基性条件では、より良好な抗菌作用を奏するプロタミンシリカが得られることがわかった。
実施例8.反応pH条件と反応生成物の抗菌性との関係
実施例5〜7の結果から、抗菌作用を有する反応生成物(プロタミンシリカ)の生成には、反応液のpHが重要であることが示唆された。このため、ここではpH2〜12の各条件でプロタミンとケイ酸化合物を反応させて、反応生成物の生成量とその抗菌性(最小発育阻止濃度:MIC)について評価した。
(1)材料
1)プロタミン塩
プロタミン硫酸塩(サケ由来)、分子量3,000〜10,000
2)ケイ酸化合物
シリカゾル溶液(スノーテックスXS:日産化学工業(株)製)、SiO含有量20%、粒子径4〜6nm、pH9.0〜10.0
(2)実験方法
(2-1) 反応生成物の製造及び生成量の測定
A液として、シリカゾル溶液に塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて、pH2、4、6、7、8、9、10、11または12に調整した後、蒸留水を加えてケイ酸濃度が1%になるように調整した溶液を40mL作成した。B液として水5mlにプロタミン硫酸塩を100mg加えてレンジ加熱(煮沸)により溶解し、プロタミン硫酸塩の水溶液を調製した。A液40mL(室温)にB液(80〜100℃)を添加して撹拌して反応させた。
各反応液を室温で放置し、3日経過後の上澄液を採取し、上澄液中に残存するプロタミン硫酸塩の量をピロガロールレッドによる吸光光度分析により測定した。また、沈殿物(プロタミンシリカ)は洗浄液が中性になるまで水洗した後、80℃の乾燥機で乾燥し、重量を測定した。
(2-2)抗菌性試験(最小発育阻止濃度:MIC)
接種菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)を用いて、実施例7に記載する方法に従って、生成した反応生成物の最小発育阻止濃度(MIC値)を測定した。
(3)結果
各反応条件下での反応生成物の生成量を表13、抗菌性能を表14に示す。
Figure 0005942289
Figure 0005942289
以上の結果より、酸性〜アルカリ性のpH条件に関わらず反応生成物の生成が確認された。反応時のケイ酸化合物のpHが強アルカリ性になればなるほど生成する反応生成物中のプロタミン含有量が増え、pHが9以上では、反応に使用したほぼ100%のプロタミンが反応生成物中に組み込まれていた。また、反応生成物中のプロタミンとシリカの比率は、pHにより異なるがプロタミン1に対してシリカ5〜9であった。また、黄色ブドウ球菌に対する抗菌性能は、pH7より高いpH条件、好ましくはpH8以上、より好ましくはpH9以上のアルカリ性条件下で反応生成させた反応生成物に固有に認められ、pH7(中性)よりも低いpH条件で反応生成させた反応生成物には認められなかった。
実施例9.プロタミンシリカフィルターの作製
抗菌性反応生成物(プロタミンシリカ)の用途について、フィルターを用いて検討を行った。
(1)材料
フィルターは、下記市販のフィルター3種を用いた。
フィルター1:
用途:換気扇フィルター、販売元:オーム電機、材質:PE(ポリエチレン) 不織布
フィルター2:
用途:空気清浄フィルター、販売元:住友スリーエム、材質:PP(ポリプロプレン)
フィルター3:
用途:空気清浄フィルター、販売元:アイム、材質: PP(1層)と PE(2層)とからなる積層シート(備考:抗菌化合物(イミダゾール系・柑橘系化合物)配合)。
実験では、各フィルターについて、4cm×4cmのサンプルを用意した。
10mg/mlプロタミン硫酸塩水溶液は、蒸留水300mlにプロタミン硫酸塩(和光純薬工業株式会社)3gを添加後、煮沸溶解することで調製した。10%ケイ酸ソーダ水溶液は、3号ケイ酸ソーダ〔富士化学(株)製、(SiO:29.1%、NaO:9.39%、d=1.405)171.8gに蒸留水を加えて500gとすることにより調製した。
(2)実験方法
フィルター1〜3の各サンプル(4cm×4cm)を、それぞれ下記に示す各処理条件で処理し、プロタミンシリカの付着状態を比較した。
C(Control):いずれの処理も行なわない
W(Water):水洗処理のみを行う
P(Protamin):プロタミン処理後、ケイ酸ソーダ処理し、最後に水洗処理を行う。
プロタミン処理は、プロタミン硫酸塩水溶液(室温、pH7)に各フィルター片を1分間程度浸すことにより行った。
ケイ酸ソーダ処理は、上記プロタミン処理した各フィルター片について、水を切った後、10%ケイ酸ソーダ液(室温、pH11〜12)に1分間程度浸すことにより行った。
水洗処理は、各フィルター片を水道流水でよく洗浄した後、水を切り50 ℃で乾燥させることにより行った。
(3)各フィルターにおけるプロタミンシリカの付着
上記処理をしたフィルター1(1C、1W、1P)をデジタルカメラで撮影した画像を図2に、光学顕微鏡で観察した画像を図3に示す。またフィルター2(2C、2W、2P)をデジタルカメラで撮影した画像を図4に、光学顕微鏡で観察した画像を図5に示す。さらにフィルター3(3C、3W、3P)をデジタルカメラで撮影した画像を図6に、光学顕微鏡で観察した画像を図7に示す。なお、図7は上から順番に、1層外面及び内面並びに2層内面及び2層外面を光学顕微鏡で観察した画像である。
図5〜10に示される結果から、プロタミン処理及びケイ酸ソーダ処理を行ったフィルター1〜3(1P、2P、3P)において、いずれも反応生成物と考えられる白色の粉体が付着していることが確認できた。
実施例10.プロタミンシリカフィルターの抗菌性試験
実施例9でフィルター(1P、2P、3P)に反応生成物の付着が確認できたことから、その抗菌性、及び抗菌性の持続性について検証を行った。
(1)材料
フィルターとして、上記実施例9で用いたフィルターと同じフィルター1〜3を用いた。 また、10mg/mLプロタミン硫酸塩水溶液、及び10%ケイ酸ソーダ溶液も、上記実施例9と同様の方法で調製した。
(2)実験方法
(2−1)サンプルフィルターの作製
以下の各処理方法を組み合わせてフィルター1〜3を処理し、サンプルフィルターを作製した。
プロタミン処理(P)は、プロタミン硫酸塩水溶液(室温)にフィルター片(4cm×4cm)を1分間程度浸すことにより行った。
ケイ酸ソーダ処理(S)は、10%ケイ酸ソーダ液(室温)にフィルター片(4cm×4cm)を1分間程度浸すことにより行った。
水洗処理(水洗)は、水道流水でフィルター片(4cm×4cm)をよく洗浄し、水を切った後50 ℃で乾燥させることにより行った。
(2−2)抗菌性試験
1)大腸菌(Escherichia coli (NBRC 3972))、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(NBRC 12732)をそれぞれスラントに植菌し、37℃で24 時間培養した。
2)1)で得られたスラントに1/100 NB培地をおよそ1 mL 加えピペッティングでコロニーを濯ぎ落とした。
3)2)で得られた懸濁液を1/100 NB培地の入ったバイアルに移し、懸濁した。懸濁液の濁度を眼で見て判断し、菌液が108CFU/mLになるように添加量を調節した。
4) 3)で調製した菌液1 mL を9 mL の1/100 NB培地に混合し、102 CFU/mL まで段階希釈した。
5)前記(2-1)で作製したサンプルフィルター(4cm×4cm)を50 mL 容の遠心管に入れ、これに30 mL のMHB培地と1 mLの105CFU/mL 菌液を加え、100 rpm、室温(25℃)で24 時間振盪培養した。
6)その後、培養した菌液1 mL を滅菌済みシャーレに移し、残りの菌液を廃液した。
7) 6)のシャーレに約15 mL のSA培地(Standard Method Agar(日水製薬(株)製))を添加し、よく混ぜた後、静置して培地を固化させた。これを37℃で24 時間培養した。
8) 7)で作製したプレートのコロニー数をカウントした。
9) 5)から8)の工程を1回の抗菌性試験とし、これを繰り返した。
また、下記の方法で植菌量を決定した。
10)1 mL の102 CFU/mL 菌液を滅菌済みシャーレに移し、7)と同様にSAプレートを作製した。
11)10)で作製したプレートのコロニー数をカウントし、5)での植菌量を決定した。
(2−3)植菌量
各試験に用いた菌体量を、下記表15に示す。
Figure 0005942289
(3)結果
大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌性試験結果を下記表16に示す。
なお、表16において、Pとはプロタミン処理、Sとはケイ酸ソーダ処理、水洗は水洗処理を行ったことを示す。また、植菌番号は表15に対応する。
Figure 0005942289
上記結果からわかるように、プロタミン処理後にケイ酸ソーダ処理することで生成した反応生成物が付着したフィルター(P+S+水洗)に、抗菌性が認められた。また、グラム陰性菌である大腸菌と、グラム陽性菌である黄色ブドウ球菌では、後者の黄色ブドウ球菌に対してより高い抗菌効果があることがわかった。これは上記実施例2における反応生成物の最小発育阻止濃度(MIC)の検証と同様の傾向である。
また、フィルターそれ自体に抗菌化合物が配合されているフィルター3では、未処理のものでも抗菌性は認められたが、プロタミン処理(P+水洗)、およびプロタミン及びケイ酸ソーダ処理(P+S+水洗)により抗菌性が向上することが分かった。特にプロタミン及びケイ酸ソーダ処理を行うことにより抗菌性が一層向上し、かつその抗菌性も持続することがわかった。
実施例11.プロタミンシリカ紙製品の作製
上記実施例9及び10では、合成樹脂を用いた基材(フィルター)上でプロタミンシリカを反応生成させることでプロタミンシリカを担持させたフィルターについて抗菌性を確認した。ここでは、更に、綿、パルプ等の天然系物質からなる製品への適用を検討した。
(1)材料(基材)
基材として、下記3種の材料を用いた。
・ガーゼ(販売元:白十字、材質:綿)
・キムワイプ(販売元:日本製紙クレシア、材質:パルプ、備考:不溶性紙)
・段ボール(材質:古紙パルプ、備考:無地の段ボール)
各材料について、2cm×5cm のサンプルを用意した。
10mg/mlプロタミン硫酸塩水溶液は、蒸留水300mlにプロタミン硫酸塩(和光純薬工業株式会社)3gを添加後、煮沸溶解して調製した。
10%ケイ酸ソーダ水溶液は、3号ケイ酸ソーダ〔富士化学(株)製、(SiO:29.1%、NaO:9.39%、d=1.405)171.8gに蒸留水を加えて500gとすることにより調製した。
(2)処理方法
上記基材を、以下の各処理を適宜組み合わせて処理した。
プロタミン処理(P)は、プロタミン硫酸塩水溶液(室温、pH7)にサンプル片(2cm×5cm〕を1分間程度浸すことにより行った。
ケイ酸ソーダ処理(S)は、10%ケイ酸ソーダ水溶液(室温、pH11〜12)にサンプル片(2cm×5cm〕を1分間程度浸すことにより行った。
水洗処理(W)は、水道流水でサンプル片(2cm×5cm)をよく洗浄し、水を切った後50 ℃で乾燥させることにより行った。
処理方法に応じて付したサンプル名と、処理の内容を下記表17に示す。
Figure 0005942289
各種処理を施して得られたサンプルの外観をデジタルカメラで撮影した画像を図11に示す。図11に示されるように、いずれの基材においても、プロタミン処理+ケイ酸ソーダ処理を行った場合において(4PSW、5PSW、6PSW)、白い粉が確認され、反応生成物が生成付着していることが確認できた。
実施例12.プロタミンシリカ紙製品の抗菌性試験
実施例11において、紙製品上で反応生成物を反応生成させることで反応生成物の付着を確認した紙製品について、その抗菌性を調べた。
(1)試験方法
(1−1)サンプル(基材)
サンプルは、上記実施例11で得られた処理後のサンプルのうち、サンプル4(ガーゼ)及びサンプル5(キムワイプ)を用いた。
(1−2)抗菌性試験
1)大腸菌(Escherichia coli (IFO 3972))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(IFO 12732)をそれぞれスラントに植菌し、37℃で24 時間培養した。
2)1)で得られたスラントに1/100 NB培地(Nutrient Broth:普通ブイヨン) をおよそ1 mL加えピペッティングでコロニーを濯ぎ落とした。
3)2)の懸濁液を1/100 NB培地の入ったバイアルに移し、懸濁した。懸濁液の濁度を眼で見て判断し、菌液が108CFU/mLになるように添加量を調節した。
4) 3)で調製した菌液1 mL を9 mL の1/100 NB培地に混合し、102 CFU/mL まで段階希釈した。
5)前記実施例11で作製したサンプル4及び5を、それぞれ50 mL 容遠心管に入れ、30mLのMHB培地、1 mL の105 CFU/mL 菌液を加え、100 rpm、室温(25℃)で24 時間振盪培養した。
6)培養した菌液1 mL を滅菌済みシャーレに移し、残りの菌液を廃液した。
7) 6)のシャーレに約15 mL のSA培地(Standard Method Agar(日水製薬(株)製))を添加し、よく混ぜた後静置して培地を固化させた。これを37℃で24 時間培養した。
8) 7)で作製したプレートのコロニー数をカウントした。
9) 5)から8)の工程を1回の抗菌性試験とした。
また、下記の方法で植菌量を決定した。
10)1 mL の102 CFU/mL 菌液を滅菌済みシャーレに移し、7)と同様にSAプレートを作製した。11)10)で作製したプレートのコロニー数をカウントし、5)での植菌量を決定した。
(1−3)植菌量
各試験に用いた菌体量を、下記表18に示す。
Figure 0005942289
(2)結果
大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌性試験結果を下記表19に示す。
Figure 0005942289
上記結果に示されるように、実施例11で反応生成物の生成が確認されたサンプルP4及びP5において、抗菌性が確認できた。
実施例13.金属入りプロタミンシリカの調製とその抗菌性
抗菌剤として用いられる各種金属を、プロタミンまたはケイ酸化合物のいずれか一方に配合して反応し、金属入りのプロタミンシリカを調製し、その抗菌性を調べた。
(1)材料
1)プロタミン硫酸塩(サケ由来)(和光純薬工業製)分子量3,000 〜 10,000
2)3号ケイ酸ソーダ(富士化学製)SiO2/Na2O = 3.2
3)銀標準液(原子吸光分析用)(和光純薬工業製)1000ppm Cu(NO3)2in 0.1 M HNO3
4)亜鉛標準液(同上) 1000ppm Zn(NO3)2 in 0.1 M HNO3
5)銅標準液(同上) 1000ppm AgNO3 in 0.1 M HNO3
6)金標準液(同上) 1000ppm HAuCl4 in 0.1M HCl
7)硫酸銅五水和物(同上)。
(2)接種菌および接種菌数
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus (NBRC 12732))4.1×104 CFU/mL。
(3)実験方法
(3-1)プロタミンシリカ及び金属入りプロタミンシリカの調製
プロタミン硫酸塩、ケイ酸ソーダ、及び金属溶液を下記の4種類の方法で混合して反応させ、プロタミンシリカまたは金属入りプロタミンシリカを調製した。
a)プロタミン硫酸塩0.1 g当たり5 mLの蒸留水を加え、電子レンジで加熱溶解したものをA液とする。3号ケイ酸ソーダをSiO2 1%濃度になるように蒸留水で希釈したものをB液とする。A液5 mLにB液 40 mLを混合し反応させた(pH10〜11.5程度)。
b)プロタミン硫酸塩0.1 gに各種金属標準液5 mLを加え、電子レンジで加熱溶解したものをC液とする。B液はa)で調製したものと同じである。C液5 mLにB液40 mLを混合し反応させた(pH10〜11.5程度)。
c)A液はa)で調製したものと同じである。金属標準液5 mLに1% SiO2濃度になるように蒸留水で希釈した3号ケイ酸ソーダ35 mLを加えたものをD液とする。A液5 mLにD液40 mLを混合し、反応させた(pH10〜11.5程度)。
d)硫酸銅五水和物0.1g, 0.5g, 1gまたは5gそれぞれに0.1g/5mlのプロタミン硫酸塩水溶液(プロタミン硫酸塩0.1gを純水5mLに溶解したもの)5 mLを加えたものをE液とする。B液はa)で調製したものと同じである。E液5 mLにB液40 mLを混合し、反応させた(pH10〜11.5程度)。
各反応液について、反応後5分程度放置した後、3,000rpm、室温で10分間遠心分離を行った。沈殿を30 mLの蒸留水で洗浄する操作を3回繰り返した。恒温器で80℃、24時間乾燥し、乳鉢・乳棒で粉末にした。
(3-2)プロタミンシリカ及び金属入りプロタミンシリカの抗菌性(最小発育阻止濃度:MIC)
滅菌済み24穴マルチウェルプレートの1番目以外の穴にMueller Hinton Broth培地1 mLを入れ、1番目の穴に上記で生成したプロタミンシリカまたは金属入りプロタミンシリカ12800ppmを分散させたMueller Hinton Broth培地を2 mL入れた。1番目の液1 mL取り、2番目に入れて分散させ2倍希釈液とした。同様に順次2倍希釈を行い、プロタミンシリカまたは金属入りプロタミンシリカの12800、6400、3200、1600、800、400、200、100、50、25、12.5、6.25、3.13、1.56、0.78、0.39、0.20、0.10 ppm濃度液を作成した。各濃度液にS. aureusの接種菌を100μL添加した。その後、37℃の恒温器中で振とう器(100 rpm)に設置し、24時間培養を行った。
(4)実験結果
(4-1)プロタミンシリカ及び金属入りプロタミンシリカの生成
方法a)により、プロタミンシリカ(収量0.125g)が生成した。また方法b)及びc)により、金属標準液に応じて、銀プロタミンシリカ(b:収量0.148g、c: 収量0.126g)、亜鉛プロタミンシリカ(b:収量0.093g、c: 収量0.143g)、銅プロタミンシリカ、及び金プロタミンシリカが生成した。さらに方法d)により、銅プロタミンシリカ(硫酸銅五水和物0.1g:収量0.144g、0.5g:収量0.158g、1g:収量0.292、または5g:収量0.505g)が生成した。金属プロタミンシリカは、金属の添加の順番に拘わらず反応生成した。つまり、金属イオンはケイ酸とプロタミンの双方に相互作用することが分かった。また金属の配合により金属特有の有色のプロタミンシリカが得られたことから、生成するプロタミンシリカは金属を何らかの形で含有していることが確認された。
(4-2)抗菌作用
方法a)で調製したプロタミンシリカ、方法b)で調製した金プロタミンシリカ、及び方法d)で調製した銅プロタミンシリカについて抗菌性(最小発育阻止濃度:MIC)を比較した表を下記に示す。
Figure 0005942289
上記に示すように、グラム陽性菌に対するプロタミンシリカ自体の抗菌性は高いが、これに金や銅を含有させたものはさらに高い抗菌性を示すことが確認された。
実施例14.プロタミンシリカの防カビ試験
本発明のプロタミンシリカの真菌(Rhizoctonia solani、Aspergillus niger)に対する防カビ作用を評価した。
(1)プロタミンシリカ
実施例1に記載する方法に従って、ケイ酸ソーダとプロタミン硫酸塩を反応させてプロタミンシリカ(粉末)を調製した。
(2)接種菌
(a) Rhizoctonia solani
リゾクトニア属の菌は、野菜類だけでなく普通作物、花卉、牧草、材木などを侵すことが知られている。病原菌には多くの系統があるため、被害を受ける作物の種類や病徴は複雑であるが、日本では特にRhizoctonia solaniによる被害が多い。作物の種類によっても若干異なるが、自然発病では次のような病徴が確認されている。
・紋枯れ:イネ、ショウガ
・芽枯れ:イチゴ
・株枯れ(地際枯れ):ハクサイ、ホウレンソウ、レタス
・苗立枯れ:ナス科野菜、ウリ科野菜、アブラナ科野菜、ネギ類、ニンジン、ゴボウ
・黒あざ:ジャガイモ、ゴボウ
・根腐れ:ニンジン、ナガイモ、テンサイ
(b) Aspergillus niger
Aspergillus niger は、モモやリンゴの麹カビ病や、タマネギやチューリップの貯蔵中の鱗茎の黒カビ病を引き起こすことが知られている。
(3)実験方法
円状のシャーレにPotate Dextrose Agarを適量入れて、定法に従って平面培地を作製した。かかる培地に、培地の円を2つに均等に区画するように、上記で調製した被験試料(プロタミンシリカ)を破線状に配置した。次いで、培地の両区画にRhizoctonia solani、及びAspergillus nigerのそれぞれを接種し、25℃で4日間培養した。
(4)実験結果
Rhizoctonia solaniに対する抗カビ効果を図9に、Aspergillus nigerに対する抗カビ効果を図13にそれぞれ示す。この結果からわかるように、被験試料の周辺にハロー(生育阻止帯)が形成され、プロタミンシリカに、Rhizoctonia solani及びAspergillus nigerのそれぞれに対して抗カビ作用があることが確認された。このことから、本発明のプロタミンシリカは、リゾクトニア属やAspergillus属などの真菌(カビ)に対して抗菌作用(抗カビ作用)を有し、これらの菌に起因する植物の病気を駆逐または防止するための農薬の有効成分として有用であると考えられる。
実施例15.プロタミンシリカ及び金属入りプロタミンシリカの黒カビに対する防カビ作用
(1)実験
(1-1)材料
1)プロタミン塩酸塩(サケ由来)(マルハニチロ食品製)分子量4,000〜5,000
2)プロタミン硫酸塩(サケ由来)(和光純薬工業製)分子量3,000 〜 10,000
3)3号ケイ酸ソーダ(富士化学製) SiO2/Na2O(モル比) = 3.2
4)硝酸銀(和光純薬工業製)
5)銀標準液(原子吸光分析用)(和光純薬工業製)1000ppm Cu(NO3)2 in 0.1 M HNO3
6)亜鉛標準液(同上) 1000ppm Zn(NO3)2 in 0.1 M HNO3
7)銅標準液(同上) 1000ppm AgNO3 in 0.1 M HNO3
8)硫酸銅五水和物(同上)。
(1-2)接種菌および接種菌数
Aspergillus niger (NBRC 3009) 胞子1.0 ×105 個/mL。
(2)被験試料の調製
(2-1)プロタミンシリカの調製
プロタミン硫酸塩またはプロタミン塩酸塩0.1 g当たり5 mLの蒸留水を加え、電子レンジで加熱溶解したものをA液とした。3号ケイ酸ソーダをSiO2 1%濃度になるように蒸留水で希釈したものをB液とした。A液5 mLにB液40mLを混合して反応させて(pH11〜12)、プロタミンシリカを調製した。
(2-2)金属入りプロタミンシリカの調製
金属入りプロタミンシリカは下記の2通りの方法で調製した。
(a法)プロタミン硫酸塩0.1 gに各種金属(銀、亜鉛、銅)標準液5 mLを加え、電子レンジで加熱溶解したものをC液とする(プロタミン+金属)。3号ケイ酸ソーダをSiO2 1%濃度になるように蒸留水で希釈したものをB液とした。C液5 mLにB液40 mLを混合し反応させて(pH10〜11.5)、金属入りプロタミンシリカを調製した。
(b法)プロタミン硫酸塩またはプロタミン塩酸塩0.1 g当たり5 mLの蒸留水を加え、電子レンジで加熱溶解したものをA液とした。各種金属(銀、亜鉛、銅)標準液5 mLに1% SiO2濃度になるように蒸留水で希釈した3号ケイ酸ソーダ35 mLを加えたものをD液とする(ケイ酸ソーダ+金属)。A液5 mLにD液40 mLを混合し反応させて(pH10〜11.5)、金属入りプロタミンシリカを調製した。
(2-3)プロタミンシリカと金属(硝酸銀または硫酸銅)の混合
(a)硝酸銀との混合
銀の最終濃度が2.5, 5.0, 10.0重量%になるように、硝酸銀とプロタミン塩酸塩とを粉体混合した。プロタミン塩酸塩におけるプロタミンと塩酸の組成比が仮にプロタミン:塩酸 = 1:1であるとすると、プロタミンと銀の混合物100重量%に含まれる銀濃度は、4.9、9.5、18.2重量%となる。
(b)硫酸銅との混合
銅の最終濃度が2.5、5.0、10.0重量%になるように、硫酸銅とプロタミン塩酸塩とを粉体混合した。
(3)抗カビ性(MIC)試験
下記の被験試料を用いて抗カビ性をMIC試験により評価した。
(3-1)被験試料
プロタミン塩酸塩、
プロタミン硫酸塩、
プロタミン塩酸塩+硝酸銀(Ag:2.5%、5.0%、10.0%)
プロタミン塩酸塩+硫酸銅(Cu:2.5%、5.0%、10.0%)
プロタミン塩酸塩を用いて調製したプロタミンシリカ、
プロタミン硫酸塩を用いて調製したプロタミンシリカ、
銀プロタミンシリカ(a法:プロタミン+Ag、b法:ケイ酸ソーダ+Ag、いずれもAg濃度11ppm)
亜鉛プロタミンシリカ(a法:プロタミン+Zn、b法:ケイ酸ソーダ+Zn、いずれもZn濃度11ppm)
銅プロタミンシリカ(a法:プロタミン+Cu、Cu濃度500ppm、1000ppm)。
(3-2)MIC試験
滅菌済み50 mL容遠心管にPotato Dextrose Broth (以下「PDB」という)18.9 mLを入れ、そこに被験試料の終濃度が1280、640、320、160、80、40ppmとなるようにPDBに溶解、懸濁または希釈した被験試料を1mL加えた。斯くして調製した各遠心管のそれぞれにA. nigerの接種胞子を100 μL添加した。その後、25℃の恒温器中で振とう器(100 rpm)に設置し、培養を行った。24時間ごとに240時間後まで菌糸の発芽の有無を観察した。
(4)結果
各被験試料について抗カビ性を評価するために、各被験試料が黒カビの菌糸体形成を抑制した日数を対比した結果を図14〜15に示す。
図14は、プロタミン塩酸塩と当該プロタミン塩酸塩を用いて調製したプロタミンシリカ、及びプロタミン硫酸塩と当該プロタミン硫酸塩を用いて調製したプロタミンシリカについて黒カビの菌糸体形成抑制期間を対比した結果である。これから分かるようにプロタミン硫酸塩やプロタミン硫酸塩等のプロタミンの塩には黒カビに対する抗カビ性がほとんどないが、これらにケイ酸化合物を反応させて生成するプロタミンシリカには黒カビに対して高い抗カビ性が認められた。つまり、本発明が対象とするプロタミンシリカには、プロタミンやその塩が持っていない新しい特性がある。これはプロタミンシリカが単にプロタミン塩とケイ酸化合物の混合物ではなく、プロタミン塩とケイ酸化合物が反応することでプロタミン塩とは別の新しい物質が生成していることを意味する。
図15(A)は、プロタミン塩酸塩、及びプロタミン塩酸塩と各種金属(硝酸銀、硫酸銅)との混合物について黒カビの菌糸体形成抑制期間を示す結果である。図15(B)は、プロタミン硫酸塩を用いて調製したプロタミンシリカ、及び各種金属(銀、亜鉛、銅)入りプロタミンシリカについて黒カビの菌糸体形成抑制期間を示す結果である。
これから分かるように、プロタミン塩酸塩には黒カビに対する抗カビ性がほとんどなく、これに銀や銅を混合しても抗カビ性の増強はほとんど認められなかった(図15(A))。一方、プロタミンシリカには黒カビに対して高い抗カビ性が認められたが、金属を含む金属プロタミンシリカとすることで抗カビ性が増強することが認められた。

Claims (14)

  1. (A)プロタミン又はその塩、並びに(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物との反応生成物であって、(A)及び(B)が溶解または分散してなるpH9〜14の溶液中で生じる反応生成物。
  2. (A)が(B)またはその重合物に不溶化または固定化してなる反応生成物である、請求項1記載の反応生成物。
  3. 反応生成物が抗真菌作用を有する、請求項1又は2に記載の反応生成物。
  4. (A)プロタミンまたはその塩に加えて抗菌性金属化合物を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の反応生成物。
  5. 下記の工程を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載する反応生成物の調製方法:(1)(A)プロタミン又はその塩、及び(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物を溶解または分散してなるpH9〜14の溶液中で(A)及び(B)を反応させる工程、
    (2)工程(1)で生じる反応生成物を回収する工程。
  6. 下記の工程を有する請求項4に記載する反応生成物の調製方法:
    (1)抗菌性金属化合物を配合した状態で、(A)プロタミン又はその塩、及び(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物が溶解または分散してなるpH9〜14の溶液中で(A)及び(B)を反応させる工程、
    (2)工程(1)で生じる反応生成物を回収する工程。
  7. 請求項1乃至4のいずれかに記載する反応生成物からなるか、または当該反応生成物を有効成分とする抗菌剤。
  8. 防かび剤である、請求項7に記載する抗菌剤。
  9. 植物病害防除用及び/または植物病害駆除用の抗菌剤である、請求項8に記載する抗菌剤。
  10. 請求項1乃至4のいずれかに記載の反応生成物を基材に担持してなる抗菌性製品。
  11. 原料として請求項1乃至4のいずれかに記載の反応生成物または請求項5若しくは6に記載する調製方法によって得られる反応生成物を用いて、抗菌性製品を製造する工程を有する、請求項10に記載する抗菌性製品の製造方法。
  12. 請求項10に記載する抗菌性製品の製造方法であって、
    (1)基材に(A)プロタミン又はその塩を含有する水溶液を接触させる工程、及び、(2)(1)で得られた基材に(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物を含有する水溶液を接触させる工程を含み、(A)と(B)との接触をpH9〜14の塩基性条件で行うことを特徴とする製造方法;または
    (1’)基材に(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物を含有する水溶液を接触させる工程、及び、
    (2’)(1’)で得られた基材に(A)プロタミン又はその塩を含有する水溶液を接触させる工程を含み、(A)と(B)との接触をpH9〜14の塩基性条件で行うことを特徴とする製造方法。
  13. 抗菌処理する対象物に、請求項1乃至4のいずれかに記載する反応生成物または請求項5若しくは6に記載する調製方法によって得られる反応生成物を接触させる工程を有する、上記対象物の抗菌処理方法。
  14. 上記抗菌処理が、防かび処理、植物病害防除処理、及び植物病害駆除処理からなる群から選択されるいずれかの処理である、請求項13に記載する抗菌処理方法。
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JPN6010072363; Materials Science and Engineering C29 Vol. 29, No. 6. P.2029-2035, 2009 *

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