JP5942289B2 - 抗菌剤及び抗菌性製品 - Google Patents
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Description
(I-1)(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物。
(II-1)(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する反応生成物を有効成分とする抗菌剤。
(III-1)(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載の反応生成物が基材に担持されてなる抗菌性製品。
(IV-1)原料として、(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載の反応生成物または(II-1)または(II-2)に記載する抗菌剤を用いて、抗菌性製品を製造する工程を有する、(III)に記載する抗菌性製品の製造方法。
(1)基材に(A)プロタミン又はその塩を接触させる工程、及び、
(2)(1)で得られた基材に、ケイ酸化合物を接触させる工程
を含む方法。
(1)フィルター基材にプロタミン又はその塩を接触させる工程、及び、
(2)(1)で得られたフィルター基材に、ケイ酸化合物を接触させる工程。
(IV-3)(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物であって、(A)との反応により(B)が自己組織化または自己集合してなる反応生成物を、フィルター基材に担持してなる、(III-1)に記載する抗菌性フィルターの製造方法。
(V-1)(I-1)乃至(I-4)のいずれかに記載する(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物の、抗菌剤を調製するための使用。
本発明が対象とする抗菌剤は、(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応生成物からなるか、または当該反応生成物を有効成分とする。好ましくは、本発明の抗菌剤は、(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物とを反応させることにより得られる抗菌性の反応生成物(プロタミンシリカ)からなるか、または当該プロタミンシリカを有効成分として含有するものである。
プロタミンは、サケ、マス、ニシン、サバ等の精子核中にデオキシリボ核酸と結合して存在する高アルギニン含量の塩基性蛋白質であり、サケ由来のものはサルミン、ニシン由来のものはクルペインとも称される。食品添加物として用いられており、物質名でしらこたん白、しらこたん白抽出物等と表示される。また、プロタミン硫酸塩は止血剤やヘパリンの中和剤など医薬品分野で用いられている。プロタミンおよびその塩は、従来、食品や医薬として使用されてきており、その安全性は高い。このため、かかるプロタミン又はその塩から形成される本発明のプロタミンシリカは安全性が高く、これにより、安全性の高い抗菌剤や抗菌性製品の提供が可能となる。
本発明で用いられるケイ酸化合物としては、ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルが挙げられる。これらは1種単独であってもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。換言すると、本発明が対象とするケイ酸化合物は、ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。中でも、ケイ酸化合物は、ケイ酸塩及びコロイダルシリカから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本発明において、反応生成物とは、プロタミン又はその塩とケイ酸化合物とが反応することにより得られる生成物であって、反応結合物、反応複合体を含む概念である。具体的には、本発明の反応生成物は、プロタミン又はその塩とケイ酸化合物の単なる混ぜ物や、ケイ酸化合物を成分とする特定の構造物にプロタミン又はその塩が結合してなるものとは異なり、ケイ酸化合物が散乱または散逸した状態で、プロタミンまたはその塩と反応して、自己組織(self-organization)または自己集合(self-assembling)することにより、プロタミンまたはその塩がケイ酸化合物に不溶化または固定化してなるものである。当該ケイ酸化合物のは自己組織化または自己集合化は、後述するようにプロタミンまたはその塩とケイ酸化合物が溶解または分散してなる溶液中における反応によって生じる。中でも抗菌性能を有するプロタミンシリカは、pHが7より高い塩基性溶液中でプロタミンまたはその塩とケイ酸化合物を反応させることによって生成取得することができる。
ケイ酸化合物がケイ酸塩(例えば、ケイ酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩またはケイ酸アンモニウム塩等)である場合、(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物の反応割合は、重量比で、(A):(B)=1:1〜0.1、特に3:1程度である。当該割合は、反応生成物自体の(A)と(B)の構成割合ともなり得る。
ケイ酸化合物がコロイダルシリカである場合、(A)プロタミン又はその塩と(B)ケイ酸化合物との反応割合は、重量比で、(A):(B)=1:1〜10、特に=1:4程度である。当該割合は、反応生成物自体の(A)と(B)の構成割合ともなり得る。
本発明の抗菌剤は、上記反応生成物(プロタミンシリカ)自体からなるものであってもよいし、また必要に応じて、当該プロタミンシリカに加えて製剤学的に許容可能な担体等を含むものであってもよい。また、抗菌剤の剤形も特に限定されず、固形形態であってもよく、液状形態であってもよい。
本発明の抗菌性製品は、上記プロタミンシリカまたは抗菌剤を含有し、その結果、抗菌性を有する製品である。
抗菌性製品には、本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を含有する抗菌性組成物や、本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤が基材に担持されてなる抗菌性製品、また本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤が製品表面に付与処理されている抗菌性製品が挙げられる。尚、本明細書において、基材にプロタミンシリカまたは抗菌剤が「担持」されてなるとは、基材にプロタミンシリカまたは抗菌剤が「付着」又は「含有」されてなることを含む概念である。
本発明の抗菌性製品の製造方法は、製品の種類等によって適宜設定することができる。例えば、抗菌性製品を製造するに際し、製造原料に本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を含有させる方法が挙げられる。具体的に、本発明の抗菌性製品が抗菌性塗料である場合は、塗料の原料に、本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を配合し、定法に従って混合し、抗菌性を有する塗料製品を調製する方法が挙げられる。また本発明の抗菌性製品が抗菌性プラスチックであれば、プラスチックの原料(プラスチック材料)に本発明のプロタミンシリカまたは抗菌剤を配合し、定法に従って混合、成形して抗菌性を有するプラスチック製品を製造する方法が挙げられる。
本発明の抗菌性製品は、上記本発明のプロタミンシリカ又は抗菌剤を含有してなり、これによりプロタミンが本来有する抗菌作用を安定的に持続させることができるものである。このことから、本発明の抗菌性製品は、従来のプロタミンを用いた抗菌性製品に比べ長期的かつ安定した抗菌作用を奏する。
本発明の抗菌性製品の具体例としては、上記(A)プロタミン又はその塩と、(B)ケイ酸化合物との反応生成物(プロタミンシリカ)が、フィルター基材に担持されてなる抗菌性フィルターが挙げられる。
A液は、4号珪酸ソーダ〔富士化学(株)製、SiO2:24.12%、Na2O:7.49%、SiO2/Na2O(モル比)=3.4、d=1.313(20℃)〕11.21g に蒸留水を加えて45ml とすることにより調製した。B液は、水5ml にプロタミン硫酸塩(サケ由来、和光純薬工業(株)製)0.05gを加えて煮沸溶解して調製した。A液(室温)にB液(80〜100℃)を添加し(pH11〜12)、3時間程度撹拌して反応させた。得られた生成物を、80℃で乾燥後、電子顕微鏡写真により観察した。結果を図1に示す。図1の上段及び下段はそれぞれ倍率を30,000倍及び150,000倍に拡大した画像である。
プロタミン硫酸塩、並びにプロタミン硫酸塩とケイ酸ソーダとの反応から得られる反応生成物について、大腸菌(Escherichia coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、及び枯草菌(Bacillus Subtilis)のそれぞれの細菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)を検討した。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732) 4.0×105CFU/ml
枯草菌(Bacillus Subtilis、NBRC No.3009) 1.0×102CFU/ml。
プロタミン硫酸塩、及び本発明の反応生成物(プロタミンシリカ)について、抗菌活性の持続性を評価した。
(a)対照区:50ml容量の樹脂製遠沈管にMHB培地(DIFCO 製)30mlのみ添加
(b)プロタミン硫酸塩区:50ml容量の樹脂製遠沈管にいれたMHB 培地 30ml にプロタミン硫酸塩15mgを添加
(c)プロタミンシリカ区:50ml容量の樹脂製遠沈管にいれたMHB 培地 30ml にプロタミンシリカ15mgを添加。
実施例2及び3の結果からプロタミン硫酸塩とケイ酸ソーダを反応させると、抗菌性を有する反応生成物(プロタミンシリカ)が得られることが明らかになった。そこで、反応に使用するプロタミン硫酸塩量やケイ酸ソーダ濃度により、生成するプロタミンシリカの量やその抗菌性に差異があるかを調べた。
A液として、3号ケイ酸ソーダ〔SiO2:29.1%、Na2O:9.39%、SiO2/Na2O(モル比)= 3.2、d=1.405(20℃)〕に蒸留水を加えて、5000ppm、1%、2.5%、5%、10%濃度のケイ酸ソーダ水溶液を40ml 作製した。
接種菌液として、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)(4.0×105CFU/ml)を100μl 用いた。当該接種菌液は、試験に使用する液体培地(MHB培地、DIFCO社製)と同じ培地で前培養したものを1/100NB で菌数調整して用いた。
ここではケイ酸化合物としてコロイダルシリカを用いてプロタミンの塩と反応を行い、生成したプロタミンシリカの抗菌性を評価した。
コロイダルシリカとして、以下のシリカゾルを用いた。また対照のため、3号ケイ酸ソーダも用いた。
1)スノーテックスS (日産化学工業製) 粒子径8〜11 nm, pH 9.5 〜10.5
2)スノーテックスXS (日産化学工業製) 粒子径4〜6 nm, pH 9.0 〜10.0
3)3号ケイ酸ソーダ (富士化学製) モル比(SiO2 / Na2O) 3.2, pH > 12。
(2−1)プロタミンシリカの製造
A液として、ケイ酸濃度を1%あるいは10%に調整した各種ケイ酸化合物溶液を作製した。 B液として、蒸留水5ml にプロタミン硫酸塩(サケ由来、分子量3,000〜10,000)0.1gを加えて、レンジ加熱(煮沸)により溶解し、プロタミン硫酸塩の水溶液を作製した。
接種菌として、大腸菌(Escherichia coli、NBRC 3972)、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)を用いた。各菌は、試験に使用する液体培地(MHB培地、DIFCO社製)で前培養したものを1/100NB培地で菌数調整した。具体的には、Escherichia coli (NBRC 3972)は、2.3×105 CFU/mLに調整し、またStaphylococcus aureus(NBRC 12732)は、 5.0×105CFU/mLに調整した。
反応生成物(プロタミンシリカ)の収量を表6に示す。
ケイ酸化合物としてコロイダルシリカを用いた場合でも、ケイ酸濃度に関わらず、抗菌性を示すプロタミンシリカが得られることがわかった。但し、ケイ酸化合物としてコロイダルシリカを用いた場合、ケイ酸濃度が高い方がMIC値が高くなる傾向があった。これは、ケイ酸濃度が高いコロイダルシリカのほうが、生成するプロタミンシリカ単位重量あたりのプロタミンの含有率が少ないためと考えられた。
上記でプロタミンシリカと塩基性コロイダルシリカにより、抗菌性を有するプロタミンシリカが得られることがわかった。
コロイダルシリカとして、以下の酸性のシリカゾルを用いた。また対照のため、3号ケイ酸ソーダも用いた。
1)スノーテックスOS (日産化学工業製) :粒子径 8〜11nm, pH 2.0 〜 4.0
2)スノーテックスOXS (日産化学工業製) :粒子径 4〜6nm, pH 2.0 〜 4.0
3)3号ケイ酸ソーダ (富士化学製) :モル比(SiO2 / Na2O) 3.2, pH > 12 。
(2−1)プロタミンシリカの製造
スノーテックスOS をNaOHでpH9.5又は9.6に調整した。また、スノーテックスOXSをNaOHでpH9.4又は9.5に調整した。
接種菌として、大腸菌(Escherichia coli、NBRC 3972)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)を用いた。各菌は試験に使用する液体培地(MHB培地、DIFCO社製)で前培養したものを1/100 NB培地で菌数調整した。具体的には、Escherichia coli (NBRC 3972)は 3.8×105 CFU / mLに、Staphylococcus aureus(NBRC 12732)は 4.5×105CFU / mLに調整した。
反応生成物(プロタミンシリカ)の収量を表8に示す。
上記結果から、ケイ酸化合物として酸性コロイダルシリカを用いた場合でも、抗菌性を有するプロタミンシリカが得られることがわかった。但し、プロタミンとの反応には、pH9.4〜9.6程度に調整したものを使用しており、この塩基性の反応条件がプロタミンシリカの構造や抗菌性に関係することが示唆された。
上記実施例5及び6の結果より、反応生成物は塩基性環境下で生成させることが抗菌性を持つために重要であることが示唆された。
コロイダルシリカとしては、以下のシリカゾルを用いた。
1) スノーテックスS (日産化学工業製) 粒子径8〜11 nm, pH 9.5〜10.5
2) スノーテックスOS (日産化学工業製) 粒子径8〜11 nm, pH 2.0〜4.0
3) スノーテックスXS (日産化学工業製) 粒子径4〜6 nm, pH 9.0〜10.0
4) スノーテックスOXS (日産化学工業製) 粒子径4〜6 nm, pH 2.0〜4.0 。
(2−1)pH調整
下記表10に示すとおり、各種シリカゾルをNaOHでpH12以上の強塩基性にpH調整をした。pHメーターはsartorius製Docu-pH Meterを使用した。
A液として、上記コロイダルシリカを、SiO2濃度が1%、pHが上記(2−1)に示す値になるように調整した溶液を作製した。
接種菌として、大腸菌(Escherichia coli、NBRC 3972)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)を用いた。各菌は使用する液体培地(MHB培地、DIFCO社製)で前培養したものを1/100 NB培地(Nutrient Broth(栄研化学(株)製))で菌数調整して使用した。具体的には、Escherichia coli (NBRC 3972)は 3.8×105 CFU / mLに、Staphylococcus aureus(NBRC 12732)は 4.5×105 CFU / mLを100 μL を接種した。
反応生成物の収量を表11に示す。
実施例5〜7の結果から、抗菌作用を有する反応生成物(プロタミンシリカ)の生成には、反応液のpHが重要であることが示唆された。このため、ここではpH2〜12の各条件でプロタミンとケイ酸化合物を反応させて、反応生成物の生成量とその抗菌性(最小発育阻止濃度:MIC)について評価した。
1)プロタミン塩
プロタミン硫酸塩(サケ由来)、分子量3,000〜10,000
2)ケイ酸化合物
シリカゾル溶液(スノーテックスXS:日産化学工業(株)製)、SiO2含有量20%、粒子径4〜6nm、pH9.0〜10.0
(2-1) 反応生成物の製造及び生成量の測定
A液として、シリカゾル溶液に塩酸又は水酸化ナトリウムを用いて、pH2、4、6、7、8、9、10、11または12に調整した後、蒸留水を加えてケイ酸濃度が1%になるように調整した溶液を40mL作成した。B液として水5mlにプロタミン硫酸塩を100mg加えてレンジ加熱(煮沸)により溶解し、プロタミン硫酸塩の水溶液を調製した。A液40mL(室温)にB液(80〜100℃)を添加して撹拌して反応させた。
接種菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、NBRC 12732)を用いて、実施例7に記載する方法に従って、生成した反応生成物の最小発育阻止濃度(MIC値)を測定した。
各反応条件下での反応生成物の生成量を表13、抗菌性能を表14に示す。
抗菌性反応生成物(プロタミンシリカ)の用途について、フィルターを用いて検討を行った。
フィルターは、下記市販のフィルター3種を用いた。
フィルター1:
用途:換気扇フィルター、販売元:オーム電機、材質:PE(ポリエチレン) 不織布
フィルター2:
用途:空気清浄フィルター、販売元:住友スリーエム、材質:PP(ポリプロプレン)
フィルター3:
用途:空気清浄フィルター、販売元:アイム、材質: PP(1層)と PE(2層)とからなる積層シート(備考:抗菌化合物(イミダゾール系・柑橘系化合物)配合)。
フィルター1〜3の各サンプル(4cm×4cm)を、それぞれ下記に示す各処理条件で処理し、プロタミンシリカの付着状態を比較した。
C(Control):いずれの処理も行なわない
W(Water):水洗処理のみを行う
P(Protamin):プロタミン処理後、ケイ酸ソーダ処理し、最後に水洗処理を行う。
上記処理をしたフィルター1(1C、1W、1P)をデジタルカメラで撮影した画像を図2に、光学顕微鏡で観察した画像を図3に示す。またフィルター2(2C、2W、2P)をデジタルカメラで撮影した画像を図4に、光学顕微鏡で観察した画像を図5に示す。さらにフィルター3(3C、3W、3P)をデジタルカメラで撮影した画像を図6に、光学顕微鏡で観察した画像を図7に示す。なお、図7は上から順番に、1層外面及び内面並びに2層内面及び2層外面を光学顕微鏡で観察した画像である。
実施例9でフィルター(1P、2P、3P)に反応生成物の付着が確認できたことから、その抗菌性、及び抗菌性の持続性について検証を行った。
フィルターとして、上記実施例9で用いたフィルターと同じフィルター1〜3を用いた。 また、10mg/mLプロタミン硫酸塩水溶液、及び10%ケイ酸ソーダ溶液も、上記実施例9と同様の方法で調製した。
(2−1)サンプルフィルターの作製
以下の各処理方法を組み合わせてフィルター1〜3を処理し、サンプルフィルターを作製した。
1)大腸菌(Escherichia coli (NBRC 3972))、及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(NBRC 12732)をそれぞれスラントに植菌し、37℃で24 時間培養した。
2)1)で得られたスラントに1/100 NB培地をおよそ1 mL 加えピペッティングでコロニーを濯ぎ落とした。
3)2)で得られた懸濁液を1/100 NB培地の入ったバイアルに移し、懸濁した。懸濁液の濁度を眼で見て判断し、菌液が108CFU/mLになるように添加量を調節した。
4) 3)で調製した菌液1 mL を9 mL の1/100 NB培地に混合し、102 CFU/mL まで段階希釈した。
5)前記(2-1)で作製したサンプルフィルター(4cm×4cm)を50 mL 容の遠心管に入れ、これに30 mL のMHB培地と1 mLの105CFU/mL 菌液を加え、100 rpm、室温(25℃)で24 時間振盪培養した。
6)その後、培養した菌液1 mL を滅菌済みシャーレに移し、残りの菌液を廃液した。
7) 6)のシャーレに約15 mL のSA培地(Standard Method Agar(日水製薬(株)製))を添加し、よく混ぜた後、静置して培地を固化させた。これを37℃で24 時間培養した。
8) 7)で作製したプレートのコロニー数をカウントした。
9) 5)から8)の工程を1回の抗菌性試験とし、これを繰り返した。
また、下記の方法で植菌量を決定した。
10)1 mL の102 CFU/mL 菌液を滅菌済みシャーレに移し、7)と同様にSAプレートを作製した。
11)10)で作製したプレートのコロニー数をカウントし、5)での植菌量を決定した。
各試験に用いた菌体量を、下記表15に示す。
大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌性試験結果を下記表16に示す。
上記実施例9及び10では、合成樹脂を用いた基材(フィルター)上でプロタミンシリカを反応生成させることでプロタミンシリカを担持させたフィルターについて抗菌性を確認した。ここでは、更に、綿、パルプ等の天然系物質からなる製品への適用を検討した。
基材として、下記3種の材料を用いた。
・ガーゼ(販売元:白十字、材質:綿)
・キムワイプ(販売元:日本製紙クレシア、材質:パルプ、備考:不溶性紙)
・段ボール(材質:古紙パルプ、備考:無地の段ボール)
各材料について、2cm×5cm のサンプルを用意した。
上記基材を、以下の各処理を適宜組み合わせて処理した。
プロタミン処理(P)は、プロタミン硫酸塩水溶液(室温、pH7)にサンプル片(2cm×5cm〕を1分間程度浸すことにより行った。
実施例11において、紙製品上で反応生成物を反応生成させることで反応生成物の付着を確認した紙製品について、その抗菌性を調べた。
(1−1)サンプル(基材)
サンプルは、上記実施例11で得られた処理後のサンプルのうち、サンプル4(ガーゼ)及びサンプル5(キムワイプ)を用いた。
1)大腸菌(Escherichia coli (IFO 3972))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(IFO 12732)をそれぞれスラントに植菌し、37℃で24 時間培養した。
10)1 mL の102 CFU/mL 菌液を滅菌済みシャーレに移し、7)と同様にSAプレートを作製した。11)10)で作製したプレートのコロニー数をカウントし、5)での植菌量を決定した。
各試験に用いた菌体量を、下記表18に示す。
大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌性試験結果を下記表19に示す。
抗菌剤として用いられる各種金属を、プロタミンまたはケイ酸化合物のいずれか一方に配合して反応し、金属入りのプロタミンシリカを調製し、その抗菌性を調べた。
1)プロタミン硫酸塩(サケ由来)(和光純薬工業製)分子量3,000 〜 10,000
2)3号ケイ酸ソーダ(富士化学製)SiO2/Na2O = 3.2
3)銀標準液(原子吸光分析用)(和光純薬工業製)1000ppm Cu(NO3)2in 0.1 M HNO3
4)亜鉛標準液(同上) 1000ppm Zn(NO3)2 in 0.1 M HNO3
5)銅標準液(同上) 1000ppm AgNO3 in 0.1 M HNO3
6)金標準液(同上) 1000ppm HAuCl4 in 0.1M HCl
7)硫酸銅五水和物(同上)。
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus (NBRC 12732))4.1×104 CFU/mL。
(3-1)プロタミンシリカ及び金属入りプロタミンシリカの調製
プロタミン硫酸塩、ケイ酸ソーダ、及び金属溶液を下記の4種類の方法で混合して反応させ、プロタミンシリカまたは金属入りプロタミンシリカを調製した。
滅菌済み24穴マルチウェルプレートの1番目以外の穴にMueller Hinton Broth培地1 mLを入れ、1番目の穴に上記で生成したプロタミンシリカまたは金属入りプロタミンシリカ12800ppmを分散させたMueller Hinton Broth培地を2 mL入れた。1番目の液1 mL取り、2番目に入れて分散させ2倍希釈液とした。同様に順次2倍希釈を行い、プロタミンシリカまたは金属入りプロタミンシリカの12800、6400、3200、1600、800、400、200、100、50、25、12.5、6.25、3.13、1.56、0.78、0.39、0.20、0.10 ppm濃度液を作成した。各濃度液にS. aureusの接種菌を100μL添加した。その後、37℃の恒温器中で振とう器(100 rpm)に設置し、24時間培養を行った。
(4-1)プロタミンシリカ及び金属入りプロタミンシリカの生成
方法a)により、プロタミンシリカ(収量0.125g)が生成した。また方法b)及びc)により、金属標準液に応じて、銀プロタミンシリカ(b:収量0.148g、c: 収量0.126g)、亜鉛プロタミンシリカ(b:収量0.093g、c: 収量0.143g)、銅プロタミンシリカ、及び金プロタミンシリカが生成した。さらに方法d)により、銅プロタミンシリカ(硫酸銅五水和物0.1g:収量0.144g、0.5g:収量0.158g、1g:収量0.292、または5g:収量0.505g)が生成した。金属プロタミンシリカは、金属の添加の順番に拘わらず反応生成した。つまり、金属イオンはケイ酸とプロタミンの双方に相互作用することが分かった。また金属の配合により金属特有の有色のプロタミンシリカが得られたことから、生成するプロタミンシリカは金属を何らかの形で含有していることが確認された。
方法a)で調製したプロタミンシリカ、方法b)で調製した金プロタミンシリカ、及び方法d)で調製した銅プロタミンシリカについて抗菌性(最小発育阻止濃度:MIC)を比較した表を下記に示す。
本発明のプロタミンシリカの真菌(Rhizoctonia solani、Aspergillus niger)に対する防カビ作用を評価した。
実施例1に記載する方法に従って、ケイ酸ソーダとプロタミン硫酸塩を反応させてプロタミンシリカ(粉末)を調製した。
(a) Rhizoctonia solani
リゾクトニア属の菌は、野菜類だけでなく普通作物、花卉、牧草、材木などを侵すことが知られている。病原菌には多くの系統があるため、被害を受ける作物の種類や病徴は複雑であるが、日本では特にRhizoctonia solaniによる被害が多い。作物の種類によっても若干異なるが、自然発病では次のような病徴が確認されている。
・紋枯れ:イネ、ショウガ
・芽枯れ:イチゴ
・株枯れ(地際枯れ):ハクサイ、ホウレンソウ、レタス
・苗立枯れ:ナス科野菜、ウリ科野菜、アブラナ科野菜、ネギ類、ニンジン、ゴボウ
・黒あざ:ジャガイモ、ゴボウ
・根腐れ:ニンジン、ナガイモ、テンサイ
(b) Aspergillus niger
Aspergillus niger は、モモやリンゴの麹カビ病や、タマネギやチューリップの貯蔵中の鱗茎の黒カビ病を引き起こすことが知られている。
円状のシャーレにPotate Dextrose Agarを適量入れて、定法に従って平面培地を作製した。かかる培地に、培地の円を2つに均等に区画するように、上記で調製した被験試料(プロタミンシリカ)を破線状に配置した。次いで、培地の両区画にRhizoctonia solani、及びAspergillus nigerのそれぞれを接種し、25℃で4日間培養した。
Rhizoctonia solaniに対する抗カビ効果を図9に、Aspergillus nigerに対する抗カビ効果を図13にそれぞれ示す。この結果からわかるように、被験試料の周辺にハロー(生育阻止帯)が形成され、プロタミンシリカに、Rhizoctonia solani及びAspergillus nigerのそれぞれに対して抗カビ作用があることが確認された。このことから、本発明のプロタミンシリカは、リゾクトニア属やAspergillus属などの真菌(カビ)に対して抗菌作用(抗カビ作用)を有し、これらの菌に起因する植物の病気を駆逐または防止するための農薬の有効成分として有用であると考えられる。
(1)実験
(1-1)材料
1)プロタミン塩酸塩(サケ由来)(マルハニチロ食品製)分子量4,000〜5,000
2)プロタミン硫酸塩(サケ由来)(和光純薬工業製)分子量3,000 〜 10,000
3)3号ケイ酸ソーダ(富士化学製) SiO2/Na2O(モル比) = 3.2
4)硝酸銀(和光純薬工業製)
5)銀標準液(原子吸光分析用)(和光純薬工業製)1000ppm Cu(NO3)2 in 0.1 M HNO3
6)亜鉛標準液(同上) 1000ppm Zn(NO3)2 in 0.1 M HNO3
7)銅標準液(同上) 1000ppm AgNO3 in 0.1 M HNO3
8)硫酸銅五水和物(同上)。
Aspergillus niger (NBRC 3009) 胞子1.0 ×105 個/mL。
(2-1)プロタミンシリカの調製
プロタミン硫酸塩またはプロタミン塩酸塩0.1 g当たり5 mLの蒸留水を加え、電子レンジで加熱溶解したものをA液とした。3号ケイ酸ソーダをSiO2 1%濃度になるように蒸留水で希釈したものをB液とした。A液5 mLにB液40mLを混合して反応させて(pH11〜12)、プロタミンシリカを調製した。
金属入りプロタミンシリカは下記の2通りの方法で調製した。
(a法)プロタミン硫酸塩0.1 gに各種金属(銀、亜鉛、銅)標準液5 mLを加え、電子レンジで加熱溶解したものをC液とする(プロタミン+金属)。3号ケイ酸ソーダをSiO2 1%濃度になるように蒸留水で希釈したものをB液とした。C液5 mLにB液40 mLを混合し反応させて(pH10〜11.5)、金属入りプロタミンシリカを調製した。
(b法)プロタミン硫酸塩またはプロタミン塩酸塩0.1 g当たり5 mLの蒸留水を加え、電子レンジで加熱溶解したものをA液とした。各種金属(銀、亜鉛、銅)標準液5 mLに1% SiO2濃度になるように蒸留水で希釈した3号ケイ酸ソーダ35 mLを加えたものをD液とする(ケイ酸ソーダ+金属)。A液5 mLにD液40 mLを混合し反応させて(pH10〜11.5)、金属入りプロタミンシリカを調製した。
(a)硝酸銀との混合
銀の最終濃度が2.5, 5.0, 10.0重量%になるように、硝酸銀とプロタミン塩酸塩とを粉体混合した。プロタミン塩酸塩におけるプロタミンと塩酸の組成比が仮にプロタミン:塩酸 = 1:1であるとすると、プロタミンと銀の混合物100重量%に含まれる銀濃度は、4.9、9.5、18.2重量%となる。
(b)硫酸銅との混合
銅の最終濃度が2.5、5.0、10.0重量%になるように、硫酸銅とプロタミン塩酸塩とを粉体混合した。
下記の被験試料を用いて抗カビ性をMIC試験により評価した。
プロタミン塩酸塩、
プロタミン硫酸塩、
プロタミン塩酸塩+硝酸銀(Ag:2.5%、5.0%、10.0%)
プロタミン塩酸塩+硫酸銅(Cu:2.5%、5.0%、10.0%)
プロタミン塩酸塩を用いて調製したプロタミンシリカ、
プロタミン硫酸塩を用いて調製したプロタミンシリカ、
銀プロタミンシリカ(a法:プロタミン+Ag、b法:ケイ酸ソーダ+Ag、いずれもAg濃度11ppm)
亜鉛プロタミンシリカ(a法:プロタミン+Zn、b法:ケイ酸ソーダ+Zn、いずれもZn濃度11ppm)
銅プロタミンシリカ(a法:プロタミン+Cu、Cu濃度500ppm、1000ppm)。
滅菌済み50 mL容遠心管にPotato Dextrose Broth (以下「PDB」という)18.9 mLを入れ、そこに被験試料の終濃度が1280、640、320、160、80、40ppmとなるようにPDBに溶解、懸濁または希釈した被験試料を1mL加えた。斯くして調製した各遠心管のそれぞれにA. nigerの接種胞子を100 μL添加した。その後、25℃の恒温器中で振とう器(100 rpm)に設置し、培養を行った。24時間ごとに240時間後まで菌糸の発芽の有無を観察した。
各被験試料について抗カビ性を評価するために、各被験試料が黒カビの菌糸体形成を抑制した日数を対比した結果を図14〜15に示す。
Claims (14)
- (A)プロタミン又はその塩、並びに(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物との反応生成物であって、(A)及び(B)が溶解または分散してなるpH9〜14の溶液中で生じる反応生成物。
- (A)が(B)またはその重合物に不溶化または固定化してなる反応生成物である、請求項1記載の反応生成物。
- 反応生成物が抗真菌作用を有する、請求項1又は2に記載の反応生成物。
- (A)プロタミンまたはその塩に加えて抗菌性金属化合物を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の反応生成物。
- 下記の工程を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載する反応生成物の調製方法:(1)(A)プロタミン又はその塩、及び(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物を溶解または分散してなるpH9〜14の溶液中で(A)及び(B)を反応させる工程、
(2)工程(1)で生じる反応生成物を回収する工程。 - 下記の工程を有する請求項4に記載する反応生成物の調製方法:
(1)抗菌性金属化合物を配合した状態で、(A)プロタミン又はその塩、及び(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物が溶解または分散してなるpH9〜14の溶液中で(A)及び(B)を反応させる工程、
(2)工程(1)で生じる反応生成物を回収する工程。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載する反応生成物からなるか、または当該反応生成物を有効成分とする抗菌剤。
- 防かび剤である、請求項7に記載する抗菌剤。
- 植物病害防除用及び/または植物病害駆除用の抗菌剤である、請求項8に記載する抗菌剤。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の反応生成物を基材に担持してなる抗菌性製品。
- 原料として請求項1乃至4のいずれかに記載の反応生成物または請求項5若しくは6に記載する調製方法によって得られる反応生成物を用いて、抗菌性製品を製造する工程を有する、請求項10に記載する抗菌性製品の製造方法。
- 請求項10に記載する抗菌性製品の製造方法であって、
(1)基材に(A)プロタミン又はその塩を含有する水溶液を接触させる工程、及び、(2)(1)で得られた基材に(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物を含有する水溶液を接触させる工程を含み、(A)と(B)との接触をpH9〜14の塩基性条件で行うことを特徴とする製造方法;または
(1’)基材に(B)ケイ酸塩、コロイダルシリカ及びケイ酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のケイ酸化合物を含有する水溶液を接触させる工程、及び、
(2’)(1’)で得られた基材に(A)プロタミン又はその塩を含有する水溶液を接触させる工程を含み、(A)と(B)との接触をpH9〜14の塩基性条件で行うことを特徴とする製造方法。 - 抗菌処理する対象物に、請求項1乃至4のいずれかに記載する反応生成物または請求項5若しくは6に記載する調製方法によって得られる反応生成物を接触させる工程を有する、上記対象物の抗菌処理方法。
- 上記抗菌処理が、防かび処理、植物病害防除処理、及び植物病害駆除処理からなる群から選択されるいずれかの処理である、請求項13に記載する抗菌処理方法。
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