JP5941107B2 - 乳化香料組成物を高濃度アルコール中に安定的かつ透明に分散させる方法 - Google Patents
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Description
これらの油溶性成分は水には溶けないため、直接飲料に添加することができない。
そこで、予め保護コロイド物質や乳化剤により水分散を可能とした乳化香料として添加
されることがある。
乳化香料はアルコール飲料に独特の呈味感を付与できるばかりでなく、乳化粒子の光散乱効果による濁りを付与し、果汁感を印象付けることが可能であり、近年、スポーツドリンクや果汁飲料などの他、チューハイやカクテル飲料などの低アルコール飲料にも使用されている。
また、その独特の呈味感は、エッセンス香料で賦香することが難しいことから、外観が透明なチューハイやリキュール類にも使用される機会が増えている。
濃縮の度合いは様々であるが、濃縮倍率が高いほど工程が簡易になり、結果的にコストダウンに繋がるため、なるべく高い濃縮率のアルコール含有組成物を用いることが好ましい。
この際の濃縮されたアルコール含有組成物のアルコール濃度は、例えば最終商品のアルコール濃度が7%のチューハイ飲料の場合、5倍濃縮では35%のアルコール濃度となる。
この場合には、高いアルコール濃度に耐性のある乳化香料組成物が必要となってくる。
また、チューハイ飲料などの商品は、透明な外観が商品価値を高めるものであり、そのためフレーバーを付与する目的で使用される乳化香料組成物は、透明に溶解するものである必要がある。
さらに、このようなリキュール類には嗜好性を高めるために、柑橘類やフルーツの果汁を加えることが一般的であり、これらの成分に対する安定性も重要な課題となっている。
しかしながら、これらの界面活性剤を用いて調製した乳化組成物、およびこれを配合したアルコール性飲料は、その製造工程中又は製造後に殺菌の目的で加熱されたり、高濃度のアルコール溶液と混合した場合には乳化状態が壊れ、充分に透明状態を維持できなくなるという問題点があり、特にアルコール性飲料に果汁が配合された場合には、乳化状態を正常に保つことのできるアルコール濃度上限が低くなる。
項1.ガティガム及び/又はアラビアガムを含有し、乳化粒子の平均粒子径が0.4μm以下である乳化香料組成物とすることにより、アルコール濃度が30〜60v/v%のアルコール含有組成物中に、当該乳化香料組成物を安定的かつ透明に分散させる方法。
項2.アルコール含有組成物がさらに果汁を含有するものである、項1記載の乳化香料組成物を安定的かつ透明に分散させる方法。
乳化香料組成物中の脂溶性香料の含有量は、その種類などによって異なるが、0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%である。
ガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia WALL.)の幹の分泌液を乾燥して得られる、多糖類を主成分とする天然由来の植物性ガム質であり、増粘安定剤として公知のものである。
ガティガムは商業的に入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ(株)のガティガムSDやGATIFOLIA RDなどが利用される。
乳化香料組成物中のガティガムの含有量は、1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、より好ましくは3〜6重量%である。
乳化香料組成物中のアラビアガムの含有量は、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%である。
アラビアガムは商業的に入手可能であり、例えば三栄源エフエフアイ(株)のアラビアガムSD等が挙げられる。
アラビアガムの重量平均分子量及びアラビノガラクタンタンパク質含量は、MALLS(多角度光散乱光度計)、RI(屈折率)を検出器としてオンラインで接続したゲル濾過クロマトグラフィー法(GPC−MALLS)により求めることができる。
当該改質アラビアガムは、天然から得られるアラビアガムに、他の添加剤の添加や化学的な修飾することなく、加熱などの加工処理によりアラビアガムの分子同士が自己重合することにより、上記重量平均分子量やアラビノガラクタンタンパク質含量範囲の規定を満たした乳化性に優れたアラビアガムのことである。
改質アラビアガムの製造方法については、上記規定を満たすものが得られる製造方法であれば特に限定されないが、例えば、特表2006−522202号公報に記載された方法、即ちアラビアガムを110℃以上で10時間以上加熱することにより得ることができる。
この改質アラビアガムも商業的に入手可能であり、例えば、三栄源エフエフアイ株式会社のSUPER GUMなどが利用される。
これらの乳化剤の添加量は、乳化香料組成物中に0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。
これらの中では、グリセリンが好ましい。
乳化香料組成物中の多価アルコールの添加量は、20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%である。
その際、乳化香料組成物を高濃度のアルコールに安定的かつ透明に分散させるために、乳化香料組成物中の乳化粒子の平均粒子径は、0.4μm以下にする必要があり、好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下にする。
アルコールとしては、エタノールが使用される。
アルコール含有組成物には、果汁、各種糖類、高甘味度甘味料、クエン酸、クエン酸ナトリウムなどを添加しても良い。
アルコール含有組成物に使用される果汁としては、レモン、グレープフルーツ、ライム、オレンジなどの柑橘系以外に、グレープ、アップル、マンゴ、パイナップル、ストロベリー、バナナなどが挙げられる。果汁濃度としては、ストレート換算で1〜100重量%である。
糖類としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖などが挙げられる。
高甘味度甘味料としては、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ネオテーム、ステビア抽出物などが挙げられる。
ガティガム及び/又はアラビアガムを含有し、乳化粒子の平均粒子径が0.4μm以下である乳化香料組成物とすることにより、アルコール濃度が30〜60v/v%という高濃度のアルコール含有組成物中に、当該乳化香料組成物を安定的かつ透明に分散させることができ、更にその飲料が果汁を含む場合も乳化状態を損なうことなく、透明に分散させることができる。
透明性の基準としては、水にアルコール含有組成物を1%濃度で希釈した液の水を対照とした際の吸光度(測定波長720nm、セル幅1cm)が0.05以下、好ましくは0.03以下である。
例えば、最終商品のアルコール濃度が7%の飲料の場合では、35%濃度のアルコール含有組成物を、水(炭酸を含んでいてもよい)などで5倍に希釈すればよい。
最終製品としてのアルコール飲料は、アルコール濃度が3〜12重量%、好ましくは4〜8重量%となるように希釈される。
これらのアルコール飲料としては、チュウハイ、サワー、カクテル、リキュール、甘味果実酒などが挙げられる。
なお、以下の表1の処方中で、特に記載のない限り単位は質量部である。
また、「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ社製であることを意味する。
実施例1
表1の処方に従い、レモン香料(レモン果皮より抽出された精油)、トコフェロール、レシチンを均一に混合し、ガティガム4%、クエン酸及びグリセリンを含む水相部に添加混合してプレミックスした溶液を、APV Gaulin社製高圧ホモジナイザー15MR-8TAを用いて、圧力350kg/cm2で4回処理し、平均粒子径0.15μmの乳化香料組成物を得た。
レモン香料の代わりにグレープフレーバーコンパウンドを配合し、レシチンを溶解する為にMCTを1%配合した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.15μmの乳化香料組成物を得た。
ガティガムの代わりに改質したアラビアガムを19%配合した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.15μmの乳化香料組成物を得た。
ガティガムの代わりに改質したアラビアガムを19%配合した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.15μmの乳化香料組成物を得た。
乳化基材としてガティガムの替りにグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンモノオレエートとポリグリセリンモノステアレートの2:1併用)4%を配合使用した以外は実施例1と同様にして、平均粒子径0.15μmの乳化香料組成物を得た。
比較例2
乳化基材としてガティガムの替りにグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンモノオレエートとポリグリセリンモノステアレートの2:1併用)4%を配合使用した以外は実施例2と同様にして、平均粒子径0.15μmの乳化香料組成物を得た。
*2:ガムアラビックSD
*3:スーパーガムEM10
得られた乳化香料組成物を40℃にて1週間保存し、保存後の組成物の状態観察を肉眼にて実施した。結果を表2に示す。
これらの乳化香料組成物を用いて、下記表3及び表4の処方にてアルコール含有組成物を調製し、20℃で1週間保存後の状態観察を行なった。結果を表5に示す。
表3に記載のアルコール濃度21%(v/v)の3倍濃縮物処方をベースとして、表4に記載の4倍濃縮物(アルコール濃度28%)、5倍濃縮物(アルコール濃度35%)、6倍濃縮物(アルコール濃度42%)及び7倍濃縮物(アルコール濃度49%)を、それぞれ調製した。
調製直後及び20℃1週間保存後に、水にアルコール含有組成物を1%濃度で希釈した液の720nmにおける吸光度を測定し、濁り度合いの評価を行なった。結果を表6に示す。
※測定不能:吸光度が高くなりすぎて、信頼できる測定範囲(1.5以上)を超えたり、肉眼で確認できる大きさの浮遊物があったもの。
Claims (4)
- 希釈してアルコール飲料を製造するために使用される乳化香料粒子含有高濃度アルコール透明組成物の製造方法であって、
[1]香料、ガティガム及び/又はアラビアガム、並びに水を含有し、
前記香料を含有する乳化香料粒子が、前記水を含有する水性溶液に分散しており、
前記乳化香料粒子の平均粒子径が0.4μm以下である
乳化香料粒子含有組成物;及び
[2]アルコールを30〜60v/v%濃度で含有する高濃度アルコール含有組成物;
を混合して、
前記乳化香料粒子を当該高濃度アルコール含有組成物中に透明且つ安定に分散させることを特徴とする、製造方法。 - アルコール飲料の製造方法であって、
前記請求項1に記載の製造方法によって得られる乳化香料含有高濃度アルコール透明組成物を水で希釈することを特徴とする、製造方法。 - 前記高濃度アルコール含有組成物が更に果汁を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
- 希釈してアルコール飲料を製造するために使用される乳化香料粒子含有高濃度アルコール透明組成物であって、
香料、ガティガム及び/又はアラビアガム、水、並びにアルコールを含有し、
前記香料を含有する平均粒子径0.4μm以下の乳化香料粒子が、前記水、及び前記アルコールを30〜60v/v%濃度で含有する高濃度アルコール含有組成物中に、透明且つ安定に分散していることを特徴とする、
乳化香料粒子含有高濃度アルコール透明組成物。
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