JP5938283B2 - ポリオール組成物、ポリウレタン樹脂形成性組成物及びポリウレタン樹脂 - Google Patents
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すなわち、ひまし油系ポリオールを含有するポリオール組成物を用いてポリウレタン樹脂を形成し、形成されたポリウレタン樹脂を高温高湿度環境下に保存した場合、該ポリウレタン樹脂における、ひまし油系ポリオールに由来するエステル結合が加水分解され、耐湿熱性が不十分となる場合があることを見出した。
また、かかるポリオール組成物中におけるひまし油系ポリオールの一部を、例えばプロピレンオキサイドがポリエーテルに付加されてなるポリエーテルポリオールに置き換えてポリオール組成物を作製し、これを用いてポリウレタン樹脂を形成した場合であっても、形成されたポリウレタン樹脂の耐湿熱性を十分に向上させることが困難であることを見出した。
そして、プロピレンオキサイドがポリエーテルに付加されてなるポリエーテルポリオールの代わりに、ブチレンオキサイドがポリエーテルに付加されてなるポリエーテルポリオールを用い、該ポリエーテルポリオールとひまし油系ポリオールとを含有するポリオール組成物を作製し、ポリウレタン樹脂を形成したところ、形成されたポリウレタン樹脂の耐湿熱性を向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
ポリウレタン樹脂を形成するために用いられるポリオール組成物であって、
ひまし油系ポリオール成分(a)と、ポリエーテルポリオール成分(b)とを含有しており、
前記ポリエーテルポリオール成分(b)が、水酸基を3つ以上有するポリオールにブチレンオキサイドが付加されてなるポリエーテルポリオール(b1)を含有していることを特徴とする。
また、ポリエーテルポリオール成分(b)がポリエーテルポリオール(b1)を含有していることによって、耐質熱性に優れたポリウレタン樹脂を形成することが可能となる。
従って、耐湿熱性に優れたポリウレタン樹脂を、環境への負荷を軽減しつつ安価に形成することが可能となる。
すなわち、例えば上記したような、プロピレンオキサイドがポリエーテルに付加されてなるポリエーテルポリオールは、プロピレンオキサイドに由来するメチル基を側鎖として有している。
これに対し、ブチレンオキサイドがポリエーテルに付加されてなるポリエーテルポリオール(b1)は、ブチレンオキサイドに由来するエチル基を側鎖として有し易くなる。
そして、エチル基は、メチル基よりも比較的疎水性が高いため、かかる側鎖の疎水性に起因して、ブチレンオキサイドが付加されてなるポリエーテルポリオール(b1)は、プロピレンオキサイドが付加されてなるポリエーテルポリオールよりも疎水性が高くなる。
そして、このようにポリエーテルポリオール(b1)は、疎水性が比較的高いため、これを用いてポリウレタン樹脂形成性組成物を形成した場合、これを硬化した硬化物たるポリウレタン樹脂の疎水性が高くなる。これにより、該ポリウレタン樹脂が高温高湿度環境下に保存された場合であっても、内部への水の浸入を抑制することができるため、該ポリウレタン樹脂における、ひまし油に由来するエステル結合の加水分解を防止することができ、その結果、該ポリウレタン樹脂が耐湿熱性に優れると推察される。
密度は、以下のようにして測定する。
すなわち、ポリウレタン樹脂形成性組成物の密度(g/cm3)の測定は、該ポリウレタン樹脂形成性組成物に含まれる各成分の密度を、25℃環境下でJIS K0061(浮ひょう法)に準じて測定し、得られた各成分の密度と各成分の混合割合とに基づいて、理論値としての密度を算出することによって行う。
また、ポリウレタン樹脂の密度(g/cm3、25℃)は、JIS K6911に準じて25℃環境下で測定する。
前記ひまし油系ポリオール成分(a)を用いることにより、透明性に優れたポリウレタン樹脂を形成することが可能となる。
より具体的には、前記ひまし油誘導体としては、例えば、ひまし油とポリオールとのエステル交換反応生成物、ひまし油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物、前記エステル交換反応生成物又は前記エステル化反応物にアルキレンオキサイドを付加させてなるポリオールなどが挙げられる。
従って、耐湿熱性に優れたポリウレタン樹脂を形成することが可能となる。
また、前記ポリウレタン樹脂形成性組成物中の水酸基とイソシアネート基とを反応させた際、発泡を抑制することが可能となる。また、硬化物たるポリウレタン樹脂の疎水性も比較的高くなるため、該ポリウレタン樹脂が高温高湿度環境下に曝されたされた場合であっても、内部への水の浸入を抑制することができる。これにより、外観に優れたポリウレタン樹脂を形成することも可能となる。
かかる重量比が、5/95〜90/10であることによって、ポリウレタン樹脂形成性組成物の耐湿熱性がより優れるという利点がある。
従って、耐湿熱性に優れたポリウレタン樹脂を、環境への負荷を軽減しつつ安価に形成することが可能となる。
ひまし油系ポリオール成分(a)は、ウレタン樹脂形成性組成物100重量部に対して1〜80重量部が好ましく、3〜70重量部がより好ましく、5〜60重量部がさらに好ましい。また、ポリエーテルポリオール(b1)は、ウレタン樹脂形成性組成物100重量部に対して1〜80重量部が好ましく、3〜70重量部がより好ましく、5〜60重量部がさらに好ましい。
前記活性水素基含有成分(A)が前記ポリオール組成物を用いて作製されている場合には、例えば、前記活性水素基含有成分(A)は、前記ポリオール組成物に加えて、さらに例えば上記したようなポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、アミンポリオール、ポリアミン化合物等を含有しているような構成であってもよい。また、この場合、前記ポリイソシアネート基含有成分(B)は、前記ひまし油系ポリオール(a)と前記イソシアネート成分(c)とを用いて作製されたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー、前記ポリエーテルポリオール成分(b)と前記イソシアネート成分(c)とを用いて作製されたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー、または、前記ひまし油系ポリオール(a)及びポリエーテルポリオール成分(b)と前記イソシアネート成分(c)とを用いて作製されたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有しているような構成が挙げられる。
また、前記活性水素基含有成分(A)が前記ポリオール組成物を含有していない場合には、前記活性水素基含有成分(A)としては、例えば、上記したようなポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、アミンポリオール、ポリアミン化合物等を含有しているような構成が挙げられる。この場合、前記ポリイソシアネート基含有成分(B)は、前記ひまし油系ポリオール(a)及びポリエーテルポリオール成分(b)と前記イソシアネート成分(c)とを用いて作製されたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有しているような構成が挙げられる。
さらに、前記ポリイソシアネート基含有成分(B)は、上記ウレタンプレポリマーに加えて、上記ポリイソシアネート成分(c)を含有しているような構成であってもよい。
また、一般のポリオール組成物、ポリウレタン樹脂形成性組成物及びポリウレタン樹脂において用いられる種々の態様を、本発明の効果を損ねない範囲において、採用することができる。
(a−1) ひまし油(商品名:URIC H−30、伊藤製油社製、平均水酸基価:160mgKOH/g、密度(25℃):0.96g/cm3)
(a−2) ひまし油系ポリオール(商品名:URIC H−52、伊藤製油社製、平均水酸基価:200mgKOH/g、密度(25℃):0.97g/cm3)
(b1−1) トリメチロールプロパンにブチレンオキサイド5モル付加したポリエーテルポリオール(平均水酸基価:341mgKOH/g、密度(25℃):1.00g/cm3)
(b1−2) トリメチロールプロパンにブチレンオキサイド7モル付加したポリエーテルポリオール(平均水酸基価:264mgKOH/g、密度(25℃):1.00g/cm3)
(b1−3) トリメチロールプロパンにブチレンオキサイド9モル付加したポリエーテルポリオール(平均水酸基価:215mgKOH/g、密度(25℃):1.00g/cm3)
(b1−4) グリセリンにブチレンオキサイド7.6モル付加したポリエーテルポリオール(平均水酸基価:264mgKOH/g、密度(25℃):1.00g/cm3)
(b1’−1) トリメチロールプロパンにプロピレンオキサイド8.7モルを付加したポリエーテルポリオール(平均水酸基価:264mgKOH/g、密度(25℃):1.00g/cm3)
(b1’−2) グリセリンにプロピレンオキサイド9.4モルを付加したポリエーテルポリオール(平均水酸基価:264mgKOH/g、密度(25℃):1.00g/cm3)
(c−1):カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート含有液状MDI
(商品名:ルプラネート MM−103、BASF INOAC ポリウレタン社製、密度(25℃):1.22g/cm3、遊離イソシアネート基含有量:29.5重量%)
(c−2)ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート
(商品名:ミリオネート MR−100、日本ポリウレタン工業社製、密度(25℃):1.24g/cm3、遊離イソシアネート基含有量:31.0重量%)
(c−3)ジフェニルメタンジイソシアネート
(商品名:ルプラネートMI、BASF INOAC ポリウレタン社製、密度(25℃):1.21g/cm3、遊離イソシアネート基含有量:33.6重量%)
(d−1):下記製造方法で得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、(a−2)20重量部、ポリイソシアネート成分(c)としての4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネート MT、日本ポリウレタン工業社製)80重量部を加え、90℃で1時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(密度(25℃):1.19g/cm3、遊離イソシアネート基含有量:24.0重量%)を得た。
(d−2):下記製造方法で得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、(b1−3)19.2重量部、ポリイソシアネート成分(c)としての4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネート MT、日本ポリウレタン工業社製)80.8重量部を加え、90℃で1時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(密度(25℃):1.19g/cm3、遊離イソシアネート基含有量:24.0重量%)を得た。
(d−3):下記製造方法で得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、(a−2)9.8重量部、(b1−3)9.8重量部、ポリイソシアネート成分(c)としての4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(商品名:ミリオネート MT、日本ポリウレタン工業社製)80.4重量部を加え、90℃で1時間反応させることにより、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(密度(25℃):1.19g/cm3、遊離イソシアネート基含有量:24.0重量%)を得た。
表1及び表2に示す配合量に従い、ひまし油系ポリオール成分(a)と、ポリエーテルポリオール成分(b)としてのポリエーテルポリオール(b1)とを混合してポリオール組成物を作製した。また、活性水素基含有成分(A)としての上記ポリオール組成物と、ポリイソシアネート含有成分(B)としてのポリイソシアネート成分(c)またはイソシアネート基末端ウレタンプレポリマー(d)とを混合し、これら2液を含有するポリウレタン樹脂形成性組成物を作製した。活性水素基含有成分(A)とポリイソシアネート基含有成分(B)との配合量は、活性水素基含有成分(A)の活性水素基に対するポリイソシアネート基含有成分(B)のモル比(NCO/OH比)が1.05となるように設定した。上記ポリウレタン樹脂形成性組成物に、活性水素基含有成分(A)とポリイソシアネート基含有成分(B)との合計量100重量部に対して、0.003重量部の硬化促進触媒(商品名:ネオスタンU−600、ビスマス含有量20重量%、日東化成社製、密度(25℃):1.13g/cm3)をさらに配合してさらに混合し、ガラス製の基材に膜厚2mmとなるように塗布した後、30℃65%RHで3日間養生することによって、ポリウレタン樹脂の塗膜を製造した。
下記に示す方法によってポリウレタン樹脂の各塗膜を評価した。評価項目は、以下に示
すように、外観、耐湿熱性、吸水率とした。評価結果を表1及び表2に示す。
得られた塗布膜を目視により観察し、発泡の有無を確認した。発泡の有無は、上記した各成分の密度(g/cm3)に基づいて活性水素基含有成分(A)およびポリイソシアネート含有成分(B)の混合割合から求めたポリウレタン樹脂形成性組成物の密度(理論値)を100%とした場合における塗膜(硬化物)の密度(g/cm3、25℃)の割合(百分率、%)で評価した。かかる割合が大きい程、気泡が少ないことを示す。
なお、塗膜の密度は、JIS K6911に準じて測定した。
得られた各塗膜のショアD硬度を測定した(初期)。121℃、100%RH、2気圧の環境下に90時間静置することによって耐湿熱性試験を行い、該試験後のショアD硬度を測定した。
ショアD硬度は、硬度計(高分子計器(株)製のASKER D型)を用い、JIS K6253に従って測定した。
かかるショアD硬度の低下が少ない程、塗膜が耐湿熱性に優れることを示す。
得られた各塗膜からそれぞれ試験片(3cm×1.5cm)を3つ切り出し、それぞれの試験片の重量を測定した。続いて、各塗膜から得られた3つの試験片を20℃の蒸留水に24時間浸漬した後、表面の水分を除いてからそれぞれの試験片の重量を測定した。そして、3つの試験片について重量増加率を算出し、その平均値を、各塗膜の吸水率とした。
かかる吸水率が小さい程、得られた塗膜の疎水性が高いことを示す。
Claims (7)
- ポリウレタン樹脂を形成するために用いられるポリオール組成物であって、
ひまし油系ポリオール成分(a)と、ポリエーテルポリオール成分(b)とを含有しており、
前記ポリエーテルポリオール成分(b)が、水酸基を3つ以上有するポリオールにブチレンオキサイドが付加されてなるポリエーテルポリオール(b1)を含有し、
前記水酸基を3つ以上有するポリオールが、トリメチロールプロパンまたはグリセリンであることを特徴とするポリオール組成物。 - 前記ひまし油系ポリオール成分(a)/前記ポリエーテルポリオール(b1)の重量比が、5/95〜90/10であることを特徴とする請求項1に記載のポリオール組成物。
- 請求項1または2に記載のポリオール組成物と、ポリイソシアネート成分(c)とを用いて作製されていることを特徴とするポリウレタン樹脂形成性組成物。
- 活性水素基含有成分(A)と、ポリイソシアネート基含有成分(B)とを含み、
前記活性水素基含有成分(A)と、前記ポリイソシアネート基含有成分(B)との少なくとも一方は、請求項1または2に記載のポリオール組成物を用いて作製されており、且つ、
前記ポリイソシアネート基含有成分(B)は、少なくとも前記ポリイソシアネート成分(c)を用いて作製されていることを特徴とする請求項3に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。 - 前記活性水素基含有成分(A)が、請求項1または2に記載のポリオール組成物を含有していることを特徴とする請求項4に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
- 前記ポリイソシアネート基含有成分(B)が、前記ひまし油系ポリオール成分(a)及び前記ポリエーテルポリオール成分(b)の少なくとも一方と前記ポリイソシアネート(c)とを反応させて作製されたイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有していることを特徴とする請求項5に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
- 請求項3〜6のいずれかに記載のポリウレタン樹脂形成性組成物を硬化してなるポリウレタン樹脂。
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