JP5937917B2 - L−アスコルビン酸製剤 - Google Patents
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一方、L−アスコルビン酸は、体内に高濃度に長くとどまることがなく、一定濃度以上を投与しても吸収されずに体外へ排泄される。特に、注射による投与は、速効性を期待する場合以外は、経口投与より更に体内残留時間が短く、投与方法が煩雑である等のため、L−アスコルビン酸の投与は経口投与が一般的とされている。しかし、経口投与の場合も投与量がある一定の濃度に達すると、それ以上の吸収は望めなくなり、その生物学的利用価値は低下する。
また植物油またはショ糖脂肪酸エステルとトウモロコシタンパク質の組み合わせでL−アスコルビン酸の持続性を改善する提案(特許文献3:特開平6−271465公報)がある。
これらの提案や製剤学的な処方でL−アスコルビン酸の吸収性を改善する試みは必ずしも有効ではない。
(1)L−アスコルビン酸とL−アスコルビン酸結晶又はL−アスコルビン酸顆粒を粉末油脂でコーティングしたアスコルビン酸コーティング物、及びL−アスコルビン酸パルミテートを含有する製剤であって、L−アスコルビン酸と、前記アスコルビン酸コーティング物ならびにL−アスコルビン酸パルミテート中に含まれるアスコルビン量の重量比率が1:2〜3:2である経口用製剤。
(2)L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート及びL−アスコルビン酸結晶又はL−アスコルビン酸顆粒を粉末油脂でコーティングしたアスコルビン酸コーティング物を含有する製剤であって、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート及びアスコルビン酸コーティング物の重量比がL−アスコルビン酸に換算したとき1:1:1の比率で含有している製剤。
(3)L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート及びL−アスコルビン酸結晶又はL−アスコルビン酸顆粒を粉末油脂でコーティングしたアスコルビン酸コーティング物を含有する製剤であって、製剤中のL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート及びL−アスコルビン酸結晶又はL−アスコルビン酸顆粒を粉末油脂でコーティングしたアスコルビン酸コーティング物の重量比がL−アスコルビン酸に換算したとき3:1:1の比率で含有している製剤。
本発明者らは、ビタミンCの経口投与における吸収性について研究をおこなったところ、水溶性ビタミンCと非水溶性ビタミンCを同時に投与するとビタミンCの吸収が高まることを見出し、吸収のよいアスコルビン酸製剤に係る特許出願(特願2011−170917号)を行った。本発明は、この先願発明をさらに推し進めることにより明らかとなった知見をもとになされたものである。
本発明の製剤は、L−アスコルビン酸とL−アスコルビン酸を水不溶性物質でコーティングしたアスコルビン酸コーティング物、及び/又はL−アスコルビン酸脂肪酸エステルを含有する製剤であって、L−アスコルビン酸と前記アスコルビン酸コーティング物L−アスコルビン酸脂肪酸エステル中に含まれるアスコルビン量の重量比率が1:2〜3:2である経口用製剤である。この比率とすることで、経口投与した製剤が腸管内で効率よく吸収されて血中に移行し、吸収効率を高める。アスコルビン酸脂肪酸エステルとしてはL−アスコルビン酸パルミテートが好ましく、アスコルビン酸コーティング物としては、L−アスコルビン酸を粉末食用油脂コーティングしたものが好ましく、さらにこの両者を併用すると、より好ましい。
例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート、及びアスコルビン酸コーティング物をL−アスコルビン酸換算で1:1:1の重量になるよう秤量し、高速撹拌混合機で混合後、所望の製剤の剤型に応じて造粒、あるいは打錠して製剤化する。必要に応じて各種の賦形剤や滑沢剤などの製剤用添加物を配合することができる。
あるいはまた、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート、及びアスコルビン酸コーティング物をL−アスコルビン酸換算で3:1:1の重量になるよう秤量し、混合後、所望の製剤の剤型に応じて造粒、あるいは打錠して製剤化する。必要に応じて各種の賦形剤や滑沢剤などの製剤用添加物を配合することができる。
L−アスコルビン酸(和光純薬製:AA)、L−アスコルビン酸パルミテート(DSMニュートリションジャパン製:AP)、アスコルビン酸食用油脂コーティング物(日油株式会社製:コート)を選択した。なおアスコルビン酸コーティング物は、特開2004−123636号公報に開示された方法に従ってL−アスコルビン酸結晶を食用油脂でコーティングし、L−アスコルビン酸含有率60%の粒子を調製し、これを用いた。
各剤を0.5%カルボキシメチルセルロース水溶液に分散又は溶解した液剤を調製した。これを経口投与したラットの投与後12時間までの血中濃度推移を測定し、バイオアベイラビリティを評価した。
・実験動物 ラット:SD系 雄、7週齢(体重約160〜180g)
・群設定 各群n=6
(1)AA 500mg投与群
(2)AA:AP:コート 1:1:1(L−アスコルビン酸換算500mg)投与群
(AA167mg、AP340mg、コート278mg投与)
(3)AA:AP:コート 3:1:1(L−アスコルビン酸換算500mg)投与群、
(AA300mg、AP204mg、コート167mg投与)
(4)非投与(Control)群
被験物質投与前に、ラットを保定板に貼り付け、頚静脈よりヘパリン処理済みの23G針付シリンジで250μL採血した。その後、被験物質を単回強制経口投与し、投与0.5〜24hr後に頸静脈から採血した。採取した血液はマイクロチューブに入れ遠心分離(3000×g、室温、5min)し、ピペットを用いて血漿を分取した。分取後、速やかにドライアイスで凍結し、−80℃で保存した。保存血漿のアスコルビン酸濃度は、解凍後ビタミンC定量キット(シマラボラトリー)を用いて測定した。
血中L−アスコルビン酸の血中濃度変化の経時測定結果を図1に示す。また図1より求めたAUC(血中濃度−時間曲線下面積)の結果を図2に示す。
本発明の組成を投与した群は、各測定時間でL−アスコルビン酸単独投与群と比較して高く、またAUCは約2倍の値を示した。したがって本発明の組成は、吸収性、持続性のいずれもL−アスコルビン酸単独投与より効率よく吸収利用されることが明らかとなった。
実施例1(AA:AP:コート=3:1:1品の製造)
L−アスコルビン酸2000g、L−アスコルビ酸パルミテート1360g、アスコルビンコーティング物1113g 、粉末還元麦芽糖水飴351g、結晶セルロース240.8gを流動層造粒機(FD−5S、パウレック)にて、6%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)水溶液2700gを噴霧することにより、流動層造粒する。
流動層造粒後、給気温度70℃で、排気温度48℃まで乾燥を行い、造粒末を得た。その後、整粒機(パワーミル、昭和化学機械)にて整粒し、整粒末を得た。得られた整粒末3318g、L−システイン640g、パントテン酸カルシウム タイプS184.8g、結晶セルロース345.2g、低置換度ヒドロキシプルピルセルロース240g、特殊ケイ酸カルシウム(フローライトRE)24g、ステアリン酸マグネシウム48gを混合機(タンブラー混合機、昭和化学機械)にて混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機で直径8.8mmの臼、曲率半径7.0mmのR面杵にて、1錠当たりの重量300mg、厚み5.2mmとなるように製錠し、素錠を得た。
上記の素錠3240gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5MW)120gを精製水1080gに溶解したコーティング液を用い、コーティング機(ドリアコーター DRC−500、パウレック)にて、給気温度70℃、給気風量4m3/min、注液速度10g/minのコーティング条件にて、素錠重量に対して2%量コーティングし、更にその上に、エリスリトール918.5g、タルク485.3g、酸化チタン34.7g、結晶セルロース(アビセルPH−F20)86.6g、アラビアゴム末207.9gを精製水2827gに溶解、懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(ドリアコーター DRC−500、パウレック)にて、給気温度60℃、給気風量4m3/min、注液速度20g/minのコーティング条件にて、素錠重量に対して38%量コーティングする。
更にその上に、エリスリトール540g、マクロゴール6000 60gを精製水980gに溶解したコーティング液を用い、コーティング機(ドリアコーター DRC−500、パウレック)にて、給気温度55℃、給気風量4m3/min、注液速度17g/minのコーティング条件にて、素錠重量に対して5%量コーティングし、薄層糖衣錠を得た。なお、薄層糖衣錠に、艶出し液(カルナウバロウ、白ロウを溶解させたエタノール−n−ヘキサン溶液)を微量、コーティングし、艶出しを行った。
L−アスコルビン酸1670g、L−アスコルビン酸パルミテート3400g、アスコルビン酸コーティング物2780g、カルボキシメチルセルロース151g、結晶セルロース251.1gを流動層造粒機(FD−5S、パウレック)にて、6%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC−L)水溶液2700gを噴霧することにより、流動層造粒する。
流動層造粒後、給気温度70℃で、排気温度48℃まで乾燥を行い、造粒末を得た。その後、整粒機(パワーミル、昭和化学機械)にて整粒し、整粒末を得た。得られた整粒末3512g、L−システイン640g、結晶セルロース336g、低置換度ヒドロキシプルピルセルロース240g、特殊ケイ酸カルシウム(フローライトRE)24g、ステアリン酸マグネシウム48gを混合機(タンブラー混合機、昭和化学機械)にて混合し、得られた混合末をロータリー式打錠機で直径8.8mmの臼、曲率半径7.0mmのR面杵にて、1錠当たりの重量300mg、厚み5.2mmとなるように製錠し、素錠を得た。
上記の素錠3240gに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(TC−5MW)120gを精製水1080gに溶解したコーティング液を用い、コーティング機(ドリアコーター DRC−500、パウレック)にて、給気温度70℃、給気風量4m3/min、注液速度10g/minのコーティング条件にて、素錠重量に対して2%量コーティングし、更にその上に、エリスリトール918.5g、タルク485.3g、酸化チタン34.7g、結晶セルロース(アビセルPH−F20)86.6g、アラビアゴム末207.9gを精製水2827gに溶解、懸濁したコーティング液を用い、コーティング機(ドリアコーター DRC−500、パウレック)にて、給気温度60℃、給気風量4m3/min、注液速度20g/minのコーティング条件にて、素錠重量に対して38%量コーティングする。
更にその上に、エリスリトール540g、マクロゴール6000 60gを精製水980gに溶解したコーティング液を用い、コーティング機(ドリアコーター DRC−500、パウレック)にて、給気温度55℃、給気風量4m3/min、注液速度17g/minのコーティング条件にて、素錠重量に対して5%量コーティングし、薄層糖衣錠を得た。なお、薄層糖衣錠に、艶出し液(カルナウバロウ、白ロウを溶解させたエタノール−n−ヘキサン溶液)を微量、コーティングし、艶出しを行った。
Claims (3)
- L−アスコルビン酸とL−アスコルビン酸結晶又はL−アスコルビン酸顆粒を粉末油脂でコーティングしたアスコルビン酸コーティング物、及びL−アスコルビン酸パルミテートを含有する製剤であって、L−アスコルビン酸と、前記アスコルビン酸コーティング物ならびにL−アスコルビン酸パルミテート中に含まれるアスコルビン量の重量比率が1:2〜3:2である経口用製剤。
- L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート及びL−アスコルビン酸結晶又はL−アスコルビン酸顆粒を粉末油脂でコーティングしたアスコルビン酸コーティング物を含有する製剤であって、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート及びアスコルビン酸コーティング物の重量比がL−アスコルビン酸に換算したとき1:1:1の比率で含有している製剤。
- L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート及びL−アスコルビン酸結晶又はL−アスコルビン酸顆粒を粉末油脂でコーティングしたアスコルビン酸コーティング物を含有する製剤であって、製剤中のL−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸パルミテート及びL−アスコルビン酸結晶又はL−アスコルビン酸顆粒を粉末油脂でコーティングしたアスコルビン酸コーティング物の重量比がL−アスコルビン酸に換算したとき3:1:1の比率で含有している製剤。
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