JP5937235B2 - 固視ずれを補正するためのプリズム処方値取得システム、取得方法、取得装置およびプログラム - Google Patents

固視ずれを補正するためのプリズム処方値取得システム、取得方法、取得装置およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、固視ずれを補正するためのプリズム処方値取得システム、取得方法、取得装置およびプログラムに関し、特に、被検者の固視ずれを眼鏡レンズにより矯正するためのプリズム処方値取得システム、取得方法、取得装置およびプログラムに関する。
装用者が眼鏡レンズを装用する際には、遠方視、近方視、乱視など、種々の要素が考慮に入れられる。種々の要素の中には、視覚的な症候群の要素も含まれている。この視覚的な症候群のとしては、例えば、斜視、斜位、不等像視、固視ずれに関する機能が挙げられる。
この中の固視ずれとは、対象を両眼同時に見る(固視する)ときに、一方または両方の眼の網膜の中心窩の位置に結像することができず、中心窩から少しずれた位置に結像するという現象である。別の言い方をすると、固視ずれとは、対象を両眼で固視する際に一方または両方の眼の視線が僅かに対象の方向とずれた方向を見てしまうという現象である。
正常な立体視能力を持った人の場合、固視ずれによる視線のずれの程度がPanum’s area(パーヌム野)領域内であれば、左右の網膜の中心窩でわずかにずれて結像されている像も融像という脳内の処理によって一つの像に知覚され、立体視が可能である。そのため、固視ずれがある人は、自分で固視ずれがあることを自覚することは無く、また、見え方がおかしいと自覚することも難しい。中心窩から少しでも離れた位置では視細胞の密度が急激に減少しているので、中心窩から僅かに離れた位置では良い視力は得られない。そのため、固視ずれによって左右の視線がそれぞれの眼の網膜中心窩からわずかにずれている固視ずれを持つ人は、両眼での視力がやや低下し、また、通常よりもぼやけた像を知覚することになる。片眼だけのぼやけであっても、両眼視の際には、もう片眼の像が鮮明なので、視力が落ちたと自覚することがほとんどない。そのため、自覚症状が無いまま、固視ずれの症状であるところの視力の低下ばかりでなく、眼の疲れ、頭痛、肩こり、めまいなどを発症する被検者が多い。
固視ずれの有無および固視ずれの程度を調べる方法としては、特許文献1(特にFIG.5(b)および6〜8)に記載の手法が知られている。特許文献1に記載の手法は、以下の通りである。
例えば、両眼に対してそれぞれの視線を固定させるための視標(符号50)を左右眼に共通の視標として表示部に表示しつつ、右眼には上側視標(符号43)のみを呈示し左眼には下側視標(符号45)のみを呈示する。このとき、表示部においては両視標(43,45)が上下方向で揃った位置に表示される。しかしながら、固視ずれを有する被検者に両視標(43,45)が呈示されると、FIG.6に示すように両視標(43,45)がずれているように知覚される。そして、被検者が上側視標(43)を操作部にて移動させることにより、被検者にとって両視標(43,45)がずれないような位置に知覚される様に両視標(44,45)を移動させる。こうすることにより、被検者にとっては両視標(43,45)がずれないように知覚される。その一方、実空間である表示部上では両視標(43,45)は被検者によって移動させられているため、表示部上では互いにずれた位置に表示されている。上記の表示部上の両視標(43,45)のずれ量(すなわち左右方向へのずれ量)が固視ずれ量に相当する。これにより左右方向(水平方向)の固視ずれ量が把握できる。同様に、左眼のみに呈示される左側視標(符号44)および右眼のみに呈示される右側視標(符号45)を用いることで、上下方向(天地方向)の固視ずれ量も把握できる。
一般的に、固視ずれを解消するために、その大きさと方向に応じたプリズム量とそのプリズムの基底方向のプリズムとが処方された眼鏡を装用させることが行われている。固視ずれを持つ人の多くは、このプリズムが処方された眼鏡の装用によって固視ずれが無い状態(両眼の視線が見ようとするものの方向に正確に方向づけられた状態)で見ることができるようになる。
ちなみに、従来では、固視ずれが解消するプリズム量を見出すために、プリズムを有するトライアルレンズを被検者に装用させて、固視ずれが解消された状態となるトライアルレンズが見つかるまで、固視ずれの有無に関する測定を繰り返していた。そして、見つかったトライアルレンズのプリズム量とその基底方向とを規定したものをプリズム処方値としていた。
このように、トライアルレンズ等を用いて模索されて得られたプリズム量とその基底方向であって、眼鏡レンズを装用した際に固視ずれが解消されるようになるプリズム量とその基底方向が規定されたもののことを「アライニングプリズム」と呼ぶ。アライニングプリズムは、最終的に眼鏡レンズに備わるプリズム処方値でもある。
翻って、特許文献1には、アライニングプリズムを求める方法の記載がない。そのため、特許文献1に記載の手法のように電気的手段による固視ずれ測定を行ったとしても、結局のところ、上記のようにトライアルレンズを用いた手法を採用してアライニングプリズムを求めることになる。すなわち、プリズムを有するトライアルレンズを被検者に装用させて、実空間上の表示部上で揃った位置に表示された両視標(43,45)または(44,45)の一対の視標が、被検者にとって揃った位置に知覚される様なプリズムを有するトライアルレンズが見つかるまで測定を繰り返すことになる。
また、近年、固視ずれ量とアライニングプリズムとの間には単純な関係しかないわけではなく、被検者個人によって両者の関係が大きく異なることが明らかとなっている。すなわち、固視ずれ量が同じであっても、その固視ずれを解消するために必要なプリズム量(アライニングプリズム)に個人差があることが確認されている(非特許文献1の図8、図9等を参照)。
米国特許5,026,151号公報
「Richard London etc.」著、「Fixation disparity analysis:Sensory and motor approaches」、Optometry、Vol77、No12、December 2006、p.590−608"
非特許文献1に、視標と被検者との間の距離に基づいて固視ずれ量を、単純に、基底方向を規定したプリズム量(以降、Δと言う。)に換算したからといって、最終的に眼鏡レンズに備わるべきアライニングプリズムにならないということが記述されている。このことは、「視標と被検者との間の距離に基づいて固視ずれ量から換算したプリズム量」と「アライニングプリズム」との間の関係が個人差によって大きく変化する以上、演算という手段では、固視ずれ量から正確なアライニングプリズムを算出することができないことにつながる。そうなると、結局のところ、固視ずれ量を求めたとしてもそれを活かしようがなく、従来の手法に倣い、固視ずれが解消するプリズム量を見出すためにトライアルレンズを使用してアライニングプリズムを地道に求める他ない。
優先権の基礎となる出願(German Patent Application 102013100516.0)においては、固視ずれ量を活かしてアライニングプリズムを求める、エキスパートシステムと称される以下の手法を行っている。なお、以下の記載は簡略化した記載であり、詳細については後述する。
すなわち、固視ずれ量を基に、次に使用すべきプリズム量のトライアルレンズについて、エキスパートシステムのソフトウェア(以降、ソフトウェアはプログラムを指すこともある)から検査員に対して指示を与える。そして、そのトライアルレンズを被検者が装用し、再度固視ずれ測定を行う。固視ずれが相変わらず認識される場合は、プリズム量を変更させた別のトライアルレンズを用い、更に再度固視ずれ測定を行う。そして、固視ずれが打ち消された状態になるまでプリズムを有するトライアルレンズを変更することが記載されている。
確かに、この手法ならば、ソフトウェアの指示に従ってトライアルレンズを選択し、かつ、ソフトウェアの指示に従って測定手順を進めればよくなり、従来のアライニングプリズムを求める手法に比べて、検査員にとっては測定が簡単になる。その結果、効率的に、固視ずれを解消可能なアライニングプリズムを求めることができる。
ただ、この手法においても、アライニングプリズムを見出すためのトライアンドエラーを避けることは困難であり、トライアルレンズの使用を避けることも困難となる。
トライアルレンズを用いてアライニングプリズムを求める場合、プリズム(例えば0.25Δ)を有する複数のトライアルレンズを被検者に順に装用させ、左右眼に対して別々に表示される視標がずれの無い揃った位置に見える様になった時のトライアルレンズのプリズム処方値を採用するという手法しか知られていない。この手法だと、検査員は種々のトライアルレンズを用意しなければならない。もちろん、被検者に対して種々のトライアルレンズを装用させなければならず手間がかかる。しかも、プリズム度数が0.25Δごとにトライアルレンズを用意した場合、例えば0.35Δのプリズム処方値が被検者には必要だった場合、被検者に合った眼鏡レンズを提供できず、被検者の固視ずれを眼鏡レンズにより充分に矯正することができない。
固視ずれを持つ眼鏡の使用者にとっては、固視ずれは、測定され処方されることによって解消してほしい対象である。それにもかかわらず、固視ずれを解消するためのアライニングプリズムを求める測定手段が複雑で測定に時間がかかる。そのため、実際には一部の検査員によってのみ測定されているだけで、一般的には固視ずれは測定されていない状況である。
そこで本発明は、眼鏡レンズにて固視ずれを矯正するのに必要なプリズム処方値を簡素、迅速および精度良く取得することを、主たる目的とする。
上記の課題を解決すべく、本発明者は鋭意検討を加えた。本発明者は、「固視ずれ量」と「アライニングプリズム」との関係について調査した。非特許文献1の記載を見る限り、両者の関係は個人差に大きく依存するように見える。しかしながら本発明者が調査を続けたところ、両者の間に一定の関係があることを見出した。そして、その関係を活かすことによって、固視ずれ量から、当該固視ずれ量を解消するためのプリズム量を算出できる、すなわち、固視ずれ量を用いた演算により、今まで固視ずれから演算することが不可能とされていたアライニングプリズムを求めることができる、すなわち、限定された範囲内の固視ずれ量において演算によって固視ずれ量をアライニングプリズムに変換できるという知見を得た。
以下、上記の知見に基づき想到された具体的な態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量(単位:角度)であって、当該固視ずれ量が±4分以内の場合に、当該固視ずれ量に係数を乗じ、当該固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する演算部を有する、プリズム処方値取得システムである。
なお、プリズム処方値は以下の式に基づいて演算する。
APver=kver*FDver
APhor=khor*FDhor
APverは、プリズム処方値における天地方向のプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指し、
APhorは、プリズム処方値における水平方向のプリズム量を指し、
FDverは、天地方向における固視ずれ量を指す。
FDhorは、水平方向における固視ずれ量を指し、
ただし、各係数khorおよびkverは、以下の条件を満たす。
0.3≦kver≦0.7
1.4≦khor≦2.0
本発明の第2の態様は、
固視ずれ量が±4分以内か否かを判定する判定部を有し、
前記判定部によって固視ずれ量が±4分以内と判定された場合に、前記演算部によって固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する、第1の態様に記載のプリズム処方値取得システムである。
本発明の第3の態様は、
固視ずれ量を測定する測定部と、
前記測定部にて測定された固視ずれ量を前記演算部に送信する送信部と、
を備え、
前記測定部においては、
固視ずれにおけるずれ方向を設定した上で、右眼のみに呈示される右眼用の視標、左眼のみに呈示される左眼用の視標、および被検者が両眼で固視する固視用視標を表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された右眼用の視標および左眼用の視標のうち少なくともいずれかを移動自在な入力手段と、
を有し、
右眼用の視標および左眼用の視標が移動する際には固視用視標は移動せず、被検者が固視用視標を固視し続ける状態において、前記表示手段上での当該両視標のずれ量から固視ずれ量を測定する、第1または第2の態様に記載のプリズム処方値取得システムである。
本発明の第4の態様は、
前記表示手段に表示される右眼用の視標、左眼のみに呈示される左眼用の視標、および被検者が両眼で固視する固視用視標は、一つの試験図に含まれており、
前記試験図は、複数の固視用視標を有する背景画像の前面の任意の場所に配置自在である、第3の態様に記載のプリズム処方値取得システムである。
本発明の第5の態様は、
前記表示手段は左右の眼に別々な画像を呈示可能な立体画像表示手段であり、右眼用の視標は被検者の右眼に呈示され、左眼用の視標は被検者の左眼に呈示される、第3または第4の態様に記載のプリズム処方値取得システムである。
本発明の第6の態様は、
被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量(単位:角度)であって、当該固視ずれ量が±4分以内の場合に、当該固視ずれ量に係数を乗じ、当該固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する、プリズム処方値取得方法である。
なお、プリズム処方値は以下の式に基づいて演算する。
APver=kver*FDver
APhor=khor*FDhor
APverは、プリズム処方値における天地方向のプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指し、
APhorは、プリズム処方値における水平方向のプリズム量を指し、
FDverは、天地方向における固視ずれ量を指す。
FDhorは、水平方向における固視ずれ量を指し、
ただし、各係数khorおよびkverは、以下の条件を満たす。
0.3≦kver≦0.7
1.4≦khor≦2.0
本発明の第7の態様は、
固視ずれ量の測定Aによって得られた固視ずれ量が所定角度以下か否かを判定し、固視ずれ量が所定角度以下と判定された場合には固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換し、固視ずれ量が所定角度を超えたと判定された場合には、当該固視ずれ量に応じた所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用して固視ずれ量の測定Bを再度行い、以下の工程1ないし3のいずれかを行う、 第6の態様に記載のプリズム処方値取得方法である。
(工程1)測定Bにおいて固視ずれが知覚されなくなった場合は、測定用眼鏡のプリズム量をプリズム処方値とする。
(工程2)測定Bにおいても被検者が未だに固視ずれを知覚し、かつ、測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した場合は、以下の(i)〜(iv)のいずれかを行う。
(i)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用していない場合は、測定Bでの測定用眼鏡のプリズム量の1/2をプリズム処方値とする。
(ii)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用している場合は、測定Aでの測定用眼鏡のプリズム量と測定Bでの測定用眼鏡のプリズム量との平均値をプリズム処方値とする。
(iii)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用していない場合は、以下の式によってプリズム処方値を得る。
AP=P2−P2*FD2/(FD2−FD1)
(iv)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用している場合は、以下の式によってプリズム処方値を得る。
AP=P2−(P2−P1)*FD2/(FD2−FD1)
APは、プリズム処方値におけるプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指す。
FD1とFD2は測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した時の移行前後の固視ずれ量である。
なお、FD1とFD2の符号は、固視ずれの方向が外方の時に正とし、内方の時に負とする。
P1とP2は測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した時の移行前後の装用したプリズム量である。
(工程3)測定Bにおいても被検者が未だに固視ずれを知覚し、かつ、測定Bにおいて内方固視ずれのまま、または、外方固視ずれのままの場合は、所定のプリズム量よりもプリズムを強くした測定用眼鏡を被検者が装用して再度固視ずれ量を測定し、(工程1)または(工程2)の状態となるまで測定用眼鏡のプリズムを強くしつつ固視ずれ量の測定を繰り返す。
本発明の第8の態様は、
被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量(単位:角度)であって、当該固視ずれ量が±4分以内の場合に、当該所定角度以下の固視ずれ量に係数を乗じ、当該固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する演算部 を有する、プリズム処方値取得装置である。
なお、プリズム処方値は以下の式に基づいて演算する。
APver=kver*FDver
APhor=khor*FDhor
APverは、プリズム処方値における天地方向のプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指し、
APhorは、プリズム処方値における水平方向のプリズム量を指し、
FDverは、天地方向における固視ずれ量を指す。
FDhorは、水平方向における固視ずれ量を指し、
ただし、各係数khorおよびkverは、以下の条件を満たす。
0.3≦kver≦0.7
1.4≦khor≦2.0
本発明の第9の態様は、
被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量(単位:角度)であって、当該固視ずれ量が±4分以内の場合に、当該所定角度以下の固視ずれ量に係数を乗じ、当該固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する演算部としてコンピュータを機能させる、プリズム処方値取得プログラムである。
なお、プリズム処方値は以下の式に基づいて演算する。
APver=kver*FDver
APhor=khor*FDhor
APverは、プリズム処方値における天地方向のプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指し、
APhorは、プリズム処方値における水平方向のプリズム量を指し、
FDverは、天地方向における固視ずれ量を指す。
FDhorは、水平方向における固視ずれ量を指し、
ただし、各係数khorおよびkverは、以下の条件を満たす。
0.3≦kver≦0.7
1.4≦khor≦2.0
本発明によれば、眼鏡レンズにて固視ずれを矯正するのに必要なプリズム処方値を簡素、迅速および精度良く取得することができる。
外方固視ずれの状態にある眼対を示す図である。 固視ずれを発見するためのノニウスラインを有する試験図を示す図である。(a)は内方固視ずれを有する場合に被検者が試験図を知覚した際の図であり、(b)は固視ずれを有さない場合に被検者が試験図を知覚した際の図であり、(c)は外方固視ずれを有する場合に被検者が試験図を知覚した際の図である。 図2に対応した別の試験図であって、固視ずれを発見するためのノニウスラインを有する試験図を示す図である。 (a)は、内方の固視ずれを持つ被検者がノニウスライン21と22が被検者によって揃った位置に見える様にノニウスライン21と22の位置が調整された、実空間での試験図である。(b)は、固視ずれを持っていない被検者がノニウスライン21と22を調整していない、実空間での試験図である。この被検者には、おのおののノニウスラインは揃った位置に見える。(c)は、外方の固視ずれを持つ被検者がノニウスライン21と22が被検者によって揃った位置に見える様にノニウスライン21と22の位置が調整された、実空間での試験図である。 固視ずれを測定するための装置構成を示す概略図である。 固視ずれを発見するためのノニウスラインを有する試験図を示す図である。(a)は垂直方向(天地方向)の固視ずれを発見するための試験図であり、(b)は水平方向の固視ずれを発見するための試験図である。 固視ずれを測定するためのステップの概略フローチャートである。 内方固視ずれが測定された場合のステップの概略フローチャート(その1)である。 内方固視ずれが測定された場合のステップの概略フローチャート(その2)である。 複数の固視用視標を有する背景画像の前面に試験図を配置した様子を示す図であり、(a)は、1回目の測定において試験図を表示手段の左側に表示した様子を示す図であり、(b)は、2回目の測定において試験図を表示手段の右側に表示した様子を示す図である。 固視ずれにおけるずれ量の算出の様子を示す試験図である。 固視ずれを測定している最中において、ノニウスラインを移動させる様子を示す試験図である。 立体視能力を確認するための試験図であって、(a)は被検者が試験図を知覚できない場合(単眼観察の場合)の図であり、(a)は被検者が試験図を知覚できた場合の図である。 (a)水平方向における固視ずれ量(横軸)とアライニングプリズム(縦軸)との間の関係を示す図である。(b)垂直方向における固視ずれ量(横軸)とアライニングプリズム(縦軸)との間の関係を示す図である。 本実施形態におけるプリズム処方値取得システムの概略ブロック図である。 本実施形態におけるプリズム処方値取得の手順を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、次の順序で説明を行う。
1.固視ずれについての説明
2.一般論としての固視ずれの測定メカニズム
3.従来における固視ずれの測定手法
4.本発明の課題以外の、固視ずれの測定に係る課題
5.プリズム処方値取得システム
5−A)発注側コンピュータ
5−A−a)測定部
5−A−a1)表示手段
5−A−a2)付属装置(3D眼鏡)
5−A−a3)選択手段
5−A−a4)入力手段
5−A−b)送信部
5−B)受注側コンピュータ
5−B−a)演算部
6.プリズム処方値取得装置
7.プリズム処方値取得プログラム
8.プリズム処方値取得方法
9.本実施形態の効果
10.変形例等
なお、本明細書においては、優先権の基礎となる出願(German Patent Application 102013100516.0)の内容が全て記載されているものとする。
<1.固視ずれについての説明>
作業用のスクリーン等に対し、両眼視を支障なく行うためには、両眼の視軸(視線)の間の輻輳角が外眼筋によって正確に調節されなければならない。そして、スクリーン上の注視された対象点、すなわち固視点が、両眼において中心小窩の同方向の場所、すなわち中心網膜位置へと、最大限の空間解像力を発揮して結像されるようにしなければならない。その場合、対象点の細部まで知覚がおよび、両眼の網膜像が脳内で最適に重なることができる。これを「同方向性」と呼ぶ。しかしながらこの同方向性からの逸脱は、正常な両眼視(良好な融像と良好な立体視)の持ち主においても起こりうる。つまり、両眼の視軸が網膜上の固視点の0.数ミリメートル後方(外方)または前方(内方)で交わることがある。
このとき両眼の視軸の輻輳角は、幾何学的に最適な輻輳角よりも数分(角度)小さい(外方)または大きい(内方)。この運動性輻輳調節の誤差が一定の許容範囲(パーヌム野)内に留まっていれば、感覚性融像によって、すなわち脳内の神経生理学的処理によって補償され、二重像の発生には至らない。そのような輻輳誤差は伝統的に「固視ずれ」と呼ばれ、パーヌム野内で両眼のそれぞれの固視点がずれて結像している状態で、両眼単視がなされている状態として定義されている。
<2.一般論としての固視ずれの測定メカニズム>
図1は、外方固視ずれの状態にある眼対を示している。図1においては、各眼で固視点11(十字の中心)は中心小窩10(小さい円)の中心に対して偏心して固視点11a,11bとして結像している。ただ、感覚性融像により観察者には単一像11cとして(すなわち二重像としてではなく)視られる。
固視ずれが視覚上の色々な問題と関係していることがわかっている。そのため、固視ずれの大きさを決定することは重要である。固視ずれを発見するためには、被検者の右眼かまたは左眼だけに呈示される視標、例えば左右眼の個々の眼に別々に呈示される線(nonius line=ノニウスライン)のような視標を有する試験図が必要とされる。これに加えて、感覚性融像を引き起こすための両眼に呈示する視標も必要である。両眼に呈示した指標が一つの指標として見えている状態でノニウスラインのずれ量から固視ずれの大きさを決定することができる。
そのような固視ずれを発見するためのノニウスライン21,22を有する試験図20が、図2(a)、図2(b)および図2(c)に示されている。ノニウスライン21,22は、図2(a)および図2(c)に示されているように、試験図20の画像面上で互いに反対方向に移動可能である。適当な付属装置23、例えばシャッター眼鏡(3D眼鏡)または偏光眼鏡を用いることにより、一方の眼には両ノニウスラインの一方だけが呈示され、他方の眼には他方のノニウスラインだけが呈示される。図2(a)〜(c)では左眼に下側のノニウスライン22が呈示され、右眼には上側のノニウスライン21が呈示される。
固視ずれを測定するために、ノニウスライン21,22が互いに種々異なる量移動している数種類の試験図20を被検者の前に置く。次に被検者は、ノニウスライン21,22が互いに上下にあるように見える試験図を選択する。
図2(a)は、眼の固視線が試験図20の面の前方で交わる、すなわち内方固視ずれを有する被検者のケース(内方固視ずれもしくは内方FD)を示す。この場合、図2(a)に示すように、眼の固視線が試験図20の面の前で交わる。そうなると、ノニウスライン21と下側のノニウスライン22が互いに上下に揃っているように知覚される試験図を被検者が選択しようとすると、図2(a)に示すように実空間では上側のノニウスライン21が左方に移動し下側のノニウスライン22が右方に移動した試験図を選択してしまう。また、ノニウスライン21,22が対応して移動している別の試験図30が図3(a)に示されている。なお、図3は、図2に対応した別の試験図であって、固視ずれを発見するためのノニウスラインを有する試験図を示す図である。図3(a)は、内方の固視ずれを持つ被検者がノニウスライン21と22が被検者によって揃った位置に見える様にノニウスライン21と22の位置が調整された、実空間での試験図である。図3(b)は、固視ずれを持っていない被検者がノニウスライン21と22を調整していない、実空間での試験図である。この被検者には、おのおののノニウスラインは揃った位置に見える。図3(c)は、外方の固視ずれを持つ被検者がノニウスライン21と22が被検者によって揃った位置に見える様にノニウスライン21と22の位置が調整された、実空間での試験図である。
図2(b)は、眼の固視線が試験図20の面上で交わる、すなわち固視ずれがない被検者のケースを示す。図2(b)に示すように、この場合被検者には試験図20でも互いに上下にあるノニウスライン21,22が上下に揃っているように見える。この場合、被検者により、上側のノニウスライン21と下側のノニウスライン22が、知覚上でも実空間上でも、互いに上下に揃った試験図が選択される。なお、ノニウスライン21,22が互いに上下にある別の試験図30も図3(b)に示されている。
最後に図2(c)は眼の固視線が試験図20の面の後方で交わる、すなわち外方固視ずれを有する被検者のケース(外方固視ずれもしくは外方FD)を示す。図2(c)に見られるように、この場合眼の固視線は試験図20の面の後方で交わる。そうなると、ノニウスライン21と下側のノニウスライン22が互いに上下に揃っているように知覚される試験図を被検者が選択しようとすると、図2(c)に示すように実空間では上側のノニウスライン21が右方に移動し下側のノニウスライン22が左方に移動した試験図を選択してしまう。また、ノニウスライン21,22が対応して移動した別の試験図30も図3(c)に示されている。
図2(a)および図2(c)に示されている水平方向の固視ずれと同様に、垂直方向の固視ずれも存在する。それに適した試験図が図5(a)に示されている。図5は、固視ずれを発見するためのノニウスラインを有する試験図を示す図である。(a)は垂直方向(天地方向)の固視ずれを発見するための試験図であり、(b)は水平方向の固視ずれを発見するための試験図である。
<3.従来における固視ずれの測定手法>
従来においては、固視ずれを補正するために、プリズム屈折力を備えたプリズムレンズを眼鏡レンズとして使用するのが通常である。
固視ずれ(水平および垂直)は共に生じ得るし、単独でも生じ得る。検眼の際および眼科での検診においては、固視ずれを補正するためのプリズム量を決定する方法が以前から使用されている。ただ、これらの方法は種々の欠点を有している。
検査員に対して必要な内容は、少なくとも視標を呈示するための装置、1個以上の試験図、および検査員がトライアルレンズを用いて補正値を得るための手順が挙げられる。
マレット、シーディーおよびハーゼの方法は数十年前から用いられている。イギリスではマレットが開発した、いわゆる「マレットユニット」が使用されている(キーラー社、ロンドン)。遠距離視(4m)用の装置と、近距離視(40cm)用の装置がある。固視ずれを補正するためのプリズム量を決定するためのテストは、水平の向きもしくは垂直の向きのノニウスラインおよび中央の融像対象物としてのマーク「OXO」からなる。改良として遠距離視用に「マレット二重固視ずれユニット」が構想された。
アメリカ合衆国ではシーディー固視ずれメーターが開発され、特に研究分野で使用されている。この固視ずれメーターは、中央の融像刺激物を含んでおらず、近距離視(40cm)および遠距離視(4m)用の装置を用いたテストとして構想されている。ノニウスラインは所定のずれを伴って呈示される。これらの線が一致して見えるプリズム値を決定するか、または種々のプリズム負荷でさらに固視ずれの分析を行うことができる[シーディー、ジェームズ・E.、米国特許明細書番号4222639、1980年9月16日]。
米国特許7597445に記載の発明においては、被検者との相互作用にある測定距離における解離性斜位(潜在的斜視)の検査を扱い、主としてフォロプターを利用する。しかし、その斜位の検査に対する当該発明の適性は、測定値がばらつきくために疑わしい。しかもそこで用いられたプリズム決定のためのシェアード法はFD法(マレット、シーディー、ハーゼ)と比較して短所がある。
ドイツ語圏ではH.J.ハーゼによって1960年頃開発された「ポラテスト」視機能検査システムが知られた。この視機能検査システムの原理は欧州特許0512443B1および米国特許5331358Aに記載されている。これはスクリーンの偏光と被検者用の偏光眼鏡を用いた遠距離視(5〜6m)用のテスト装置である。
ポラテスト視機能検査システムを用いて固視ずれを補正するためのプリズム量を決定するための方法は幾つかの論文に記されており、国際両眼視協会によって「潜在的斜視の修正ガイドライン」としてまとめられた(第3版、IVBV、2005年6月)。この方法はドイツ語圏ではかなり普及しているが、今日に至るまでその信頼性は科学的に証明されていない。また、この方法に対して次々と改良が行われたことにより、この方法は一層複雑なものとなった。
<4.本発明の課題以外の、固視ずれの測定に係る課題>
本発明の課題で述べた「固視ずれ量とアライニングプリズムとの関係性」に加え、上記に示した公知の方法は、様々な課題を有している。以下に、その幾つかを指摘する。
(1)トライアルレンズを用いてアライニングプリズムを決定するための従来の主観的な方法は、被検者の主観的知覚を把握するための口頭による質疑応答に基づいている。そのため誤解から誤りが生じる可能性がある。
(2)従来の方法は視線の動きがない静的な視状況を使用する。動いていない対象を長時間凝視することは自然の視状況に対応しておらず、両眼分離に(右眼と左眼それぞれ別に)呈示された試験図はしばしば抑制されることがある。抑制とは、判定される試験図が主観的知覚では薄れ、または完全に消滅し、それによって判定が非常に困難になるか、または全く不可能になることを指す。
(3)上に引用した従来の2つの方法は、時間がかかり、複雑である。シーディーとハーゼの方法は、それぞれ少なくとも20〜30分かかる。そのうえ従来の方法は検査員の高度な知見を必要とし、さもないと結果は役に立たないことになりかねない。
(4)プリズムによる補正ができない微小斜視(すなわち立体視不能)を前もって発見しておき、この様な被検者には固視ずれの検査を行わないようにすべきである。そうしなければ被検者にとって無駄な測定を行うことになってしまう。
本発明の課題に加え、上記の課題を解決すべく想到されたのが、本実施形態である以下の構成である。
<5.プリズム処方値取得システム>
まず、本実施形態におけるプリズム処方値取得システムの機能構成について説明する。図13は、本実施形態におけるプリズム処方値取得システム1の概略ブロック図である。本実施形態におけるプリズム処方値取得システム1は、大きく分けて、眼鏡レンズの発注側に設置された発注側コンピュータ2(測定側コンピュータとも言う。)、および、眼鏡レンズの受注側に設置された受注側コンピュータ3(演算側コンピュータとも言う。)を有している。そして、発注側コンピュータ2と受注側コンピュータ3との間は、通信回線4により接続されている。
なお、上記の記載においては、固視ずれの度合いを角度で表したものもスクリーン上での距離で表したものも、一律に「固視ずれ量」と称していた。ただ、以下の記載においては、説明の便宜上、固視ずれの度合いを角度(分)に換算したものを「固視ずれ量」と言う。一方、後述の図9に示すように、表示手段5a上での視標の距離的なずれ量を、単に「ずれ量」と言う。
また、プリズム量の単位であるΔ(すなわちプリズムディオプター)は、光の屈折度合いを表す単位である。光がプリズムを通過した後で、通過前の光の軸方向に1m進行した場合に、通過前の光の軸方向とは垂直方向に1cmずれた場合、プリズム量は1プリズムディオプターに相当する。この関係を用いると、「固視ずれ量(分)」または「ずれ量」は、単純に、プリズムディオプターに換算できる。詳細は後述するが、もちろん、本実施形態の大きな特徴の一つである「固視ずれ量(分)をアライニングプリズムに変換する」ことと、上記の単純な換算とは、全く異なる。本明細書においては、固視ずれ量(分)やずれ量を単にΔに変える「換算」と、固視ずれ量(単位:分)からアライニングプリズム(単位:Δ)を演算する「変換」を使い分けて使用する。
5−A)発注側コンピュータ2
発注側コンピュータ2は、眼鏡レンズの製造に必要なプリズム処方値(アライニングプリズム)の取得を依頼する側に設置されたコンピュータのことを指す。具体例を挙げると、眼鏡店に設置されたコンピュータである。眼鏡店に、眼鏡レンズの購入を検討している者(後の被検者)が来る。そして、測定部5を活用することにより、眼鏡レンズを発注するための情報(すなわち固視ずれ量)を、被検者から取得する。その後、送信部6を用いることにより、受注側コンピュータ3の演算部7へと固視ずれ量を送信する。
上記構成のプリズム処方値取得システム1において、発注側コンピュータ2と受注側コンピュータ3の対応関係は、1:1の対応関係、m:1の対応関係(mは2以上の自然数)、1:nの対応関係(nは2以上の自然数)、m:nの対応関係のうち、いずれの対応関係であってもよい。また、発注側コンピュータ2と受注側コンピュータ3とは、同じ国内に設置されていてもよいし、異なる国に設置されていてもよい。さらに、図示はしないが、通信回線4に各種のサーバ(たとえば、データサーバなど)を接続し、このサーバと発注側コンピュータ2または受注側コンピュータ3との間で、必要に応じて、データのやり取りを行う構成としてもよい。
なお、発注側コンピュータ2は、コンピュータとしての機能を有したものである。発注側コンピュータ2は、システム内に複数存在しても構わない。
また、発注側コンピュータ2には、アライニングプリズムを取得するために使用される種々の情報を管理および制御、並びに受注側コンピュータ3に設けられた各部を管理および制御するために、制御部が存在する。ただ、この制御部の具体的な構成は、公知技術を利用して実現すればよく、ここではその詳細な説明を省略する。
5−A−a)測定部5
発注側コンピュータ2の測定部5に含まれる構成としては、以下の構成が挙げられる。
(1)少なくとも1個の試験図を呈示するように設計されており、少なくとも1個の試験図はその呈示が種々異なる光学的性質を有する構成要素を含む表示手段5a(例えばスクリーン)。
(2)光学的性質に基づいて少なくとも1個の第1の構成要素(例えば右眼用の視標)が被検者の第1の眼(例えば右眼)に対してのみ呈示し、少なくとも1個の第2の構成要素(例えば左眼用の視標)が被検者の第2の眼(例えば左眼)に対してのみ呈示するように設計された付属装置(例えば3D眼鏡5bや偏光眼鏡)。
なお、本実施形態における試験図は、第1の構成要素(右眼のみに呈示される右眼用の視標)、第2の構成要素(左眼のみに呈示される左眼用の視標)、および第3の構成要素(例えば被検者が両眼で固視する固視用視標)を含む。
(3)被検者が選択信号を入力するように設計されており、この選択信号は、構成要素をスクリーン上に呈示する際に所定の基準を満たすようなパラメータ値を選択するように設計されている選択手段5c。
(4)制御信号に基づいて少なくとも1個の試験図の第1の構成要素および/または第2の構成要素の呈示のパラメータ、特に位置を変化させるように設計されている入力手段5d。具体的に言うと、制御信号を生じさせ、被検者が操作可能なように設計されている入力手段5d。
5−A−a1)表示手段5a
5−A−a2)付属装置(3D眼鏡5b)
表示手段5aは、右眼のみに呈示される右眼用の視標、左眼のみに呈示される左眼用の視標、および被検者が両眼で固視する固視用視標が表示されるようにする機能を有する。
更に具体的に言うと、表示手段5aの好適な例としては3D画像表示可能なスクリーンである。右眼用の視標は、3D眼鏡5bを介して被検者の右眼に呈示され、左眼用の視標は、3D眼鏡5bを介して被検者の右眼に呈示される。もちろん、被検者が両眼で固視する固視用視標は両眼に対して共通して呈示可能とする。
3D画像を含め、3D眼鏡5bについて具体例を挙げると、3D画像は左眼用の視標および右眼用の視標を含んでいるが、これらの画像は一定周期で交互に表示手段5aに表示される。
一方、本実施形態における3D眼鏡5bは、アクティブシャッターとしての機能を有している。つまり、3D眼鏡5bにおいて左眼だけが前方を視認できる状態、および、右眼だけが前方を視認できる状態となるよう、一定周期でシャッターの開閉を交互に切り替えている。
そして、3D画像における右眼用の視標の表示と、3D眼鏡5bにおける右眼部分のシャッター開状態とのタイミングを一致させるよう、3D画像の周期と3D眼鏡5bの周期を同期させる。こうすることにより、被検者の各眼に対して各眼用の視標を呈示することが可能となる。もちろん、立体画像表示装置で良く知られる様に、この3D眼鏡は偏光板を用いる方法でも良いし、その他の方法もある。例えば、ディスプレイにparallax filterを設けたものを使用しても構わない。この場合、3D眼鏡は不要となる。ただ、本実施形態においては、付属装置として3D眼鏡を用いる場合について述べる。
一方、被検者が両眼で固視する固視用視標は両眼に対して共通して呈示する。
本実施形態においては、表示手段5aにおける種々異なる領域(例えば右半分と左半分)に少なくとも1個の試験図を相次いで呈示するように設計されている。
本実施形態における試験図は、先ほど述べたように、第1の構成要素(右眼のみに呈示される右眼用の視標)、第2の構成要素(左眼のみに呈示される左眼用の視標)、および第3の構成要素(例えば被検者が両眼で固視する固視用視標)を含む。
本実施形態における「視標」は、固視ずれの固視ずれ量を客観的な数値として把握するために必要なものである。視標の形状は任意のもので構わず、棒状の記号でも構わないし、文字でも構わない。本実施形態においては、左眼用の視標には、画像中央の上寄りに縦線が形成されている一方、右眼用の視標には、画像中央の下寄りに縦線(ノニウスライン)が形成されている場合について述べる。本実施形態においては、右眼ノニウスライン、および、左眼ノニウスラインを使用する。ただ、固視用の視標は、被検者が固視しやすい形状(例えば点状や×印や□印や○印あるいはその組み合わせ)であるのが好ましいが、基本的には任意の形状で構わない。
また、被検者にとっても固視ずれのずれ量を認識することができるように、左眼用の視標および右眼用の視標に対して目盛りを設けておいても構わない。この場合、目盛りを両眼の固視用視標の代わりとしても構わないし、両眼の固視用視標とは別に目盛りを設けても構わない。
図5(a)は、垂直固視ずれに対する試験図を示し、図5(b)は水平固視ずれに対する試験図を示す。例えば図5(a)および5(b)に示されているように、固視ずれを補正するためのアライニングプリズムを決定するための試験図を使用できる。これらの試験図50,55の形態と寸法は、本発明者により、最近開発されたものである。これらはマレットテストに類似しており、比較的中央の融像対象53(両眼同時に見える)を「OXO」という文字の形で使用する。一方のノニウスラインは右眼だけに呈示され、他方のノニウスラインは左眼だけに呈示される。しかしマレットテストと異なる点(改良点)として、図5(a)、図5(b)に見られるように、ノニウスラインは中心(すなわち「OXO」)から各々離間されている。このことは、主観的固視ずれと客観的固視ずれの違いに関する重要な科学的知見に基づいている。より辺縁に位置するテスト部分は、客観的な固視ずれ量とより良く一致することが判明している。
なお、中央に示された融像対象「OXO」53の外周の寸法は、一実施形態において垂直および水平方向の視角13.7分に対応し、試験領域全体の高さは視角2.76°に対応する。
なお、表示手段5aに表示される右眼用の視標、左眼のみに呈示される左眼用の視標、および被検者が両眼で固視する固視用視標は、一つの試験図に含まれるようにするのが好ましい。その上で、この試験図は、複数の両眼の固視用視標を有する背景画像の前面に配置するのが好ましい。こうすることにより、表示手段5a上に両眼の固視用視標が多数存在することになり、後述するように移動させることになる左眼用の視標および右眼用の視標という2つの視標に対し、大多数の視標が両眼の固視用視標となるため、被検者にとってより確実に両眼で固視することが可能となる。その結果、精度良く固視ずれ量を測定することが可能となる 。
また、試験図は、複数の両眼の固視用視標を有する背景画像の前面の任意の場所に配置自在であるのが好ましい。固視ずれ量は、複数回測定される場合、背景画像の前面において、測定毎に試験図の場所を変更するのが好ましい。具体例を挙げると、例えば2回測定する場合、試験図は、表示手段5a(例えばモニタ)の右半分または左半分に、それぞれ判定された後で動的に交互に示す。
複数回測定する際に、表示手段5a上の同じ箇所で測定を行うと、被検者にとって試験図が残像として認識してしまい、測定精度に影響を与えかねない。そこで、複数の両眼の固視用視標を有する背景画像の前面の任意の場所に配置自在という構成を採用することにより、測定の度に背景画像上での試験図の位置を変更することが可能となる。そうなると、上記の残像の問題も解消されるし、測定の度に視線が移動することになるので、被検者にとって瞬きの回数が増え、眼の乾燥や測定中の疲労を軽減することが可能となる。また、自然の視課題に近く、抑制(すなわち知覚が薄れたり消滅したりする現象)のない試験図を安定して知覚することが可能となる視状況が達成される。
なお、上記の表示手段5aは、複数設けておいても構わない。一例を挙げると、1台の発注側コンピュータ2に対し、複数の表示手段5aを接続しておいても構わない。1台は、近方視における固視ずれ量の測定に用い、もう1台は、遠方視における固視ずれ量の測定に用いる。もちろん、中間視における固視ずれ量を取得するための表示手段5aを更に設けても構わない。
近方視用(近距離呈示用)の表示手段5aとしては、少なくとも1個の試験図を、好ましくは20cm〜100cmの距離で近距離呈示するように設計されている。そして、それとは別に、遠方視用の表示手段5a’が設けられる。遠方視用(遠距離呈示用)の表示手段5aは、少なくとも1個の試験図を、好ましくは3m〜6m(場合によっては4m〜8m)の距離で遠距離呈示するように設計されている。また、遠方視用の表示手段5a’を検査員が制御するために、近方視用の表示手段5aを備えた第1の発注側コンピュータ2とは別に、第2の発注側コンピュータ2’を別途設けても構わない。
本実施形態においては、近方視用の第1の発注側コンピュータ2、遠方視用の第2の発注側コンピュータ2’および遠方視用の表示手段5a’、という3つの電子装置を有する場合について述べる。なお、この場合、近方視用の第1の発注側コンピュータ2は、例えばタブレットPCであり、近方視用の表示手段5aを兼ねてもよい。本明細書においては遠方視用の表示手段5a’も近方視用の表示手段5aも共に単に「表示手段5a」とも言う。
5−A−a3)選択手段5c
まずは、選択手段5cによって、所定の構成要素(例えば右眼用視標)を選択して移動可能とする。そして、選択手段5cによって、選択信号を入力して移動単位を選択することによりパラメータ値を選択する。具体例を挙げると、キーボードの左カーソルを一回押すと角度で言うと0.5分変化する程度に右眼用視標を移動可能となるようにする。なお、選択手段5cによって、被検者と表示手段5aとの間の距離を選択して設定し、その距離にて固視ずれの測定を行っても構わない。
5−A−a4)入力手段5d
本実施形態における入力手段5dは、制御信号を生じさせ、表示手段5aに表示された左眼用の視標および/または右眼用の視標を移動させる機能を有する。もちろん、左眼用の視標および/または右眼用の視標を移動させる際には、両眼固視用の融像視標は動かさない。ただ、左眼用の視標および/または右眼用の視標を移動させない際には、固視用視標を移動させても構わない。また、操作部によって、左眼用の視標、右眼用の視標および固視用視標を含む試験図を、背景画像の前面の所定の位置に配置することが操作自在とする構成を採用しても構わない。
本実施形態における入力手段5dとしては、表示手段5a上で視標を動かすことができる構成を有していればよい。この構成としては、公知の構成を用いても構わない。例えば、表示手段5aに接続されたキーボード、マウス、ゲームに用いられるゲームコントローラー(ゲームパッド)、ジョイスティック、およびスクリーンの接触感知膜(タッチパネル)等が挙げられる。
被検者自身が視標を移動させる場合、視標が揃って見える状態を被検者自身に探させることが可能となる。そして、視標が揃って見える状態が被検者の感覚を反映させたものとすることが可能となる。その一方、表示手段5aの上では固視ずれ量を正確に取得することができる。更に、被検者自身が視標を移動させるというインタラクティブ(interactive)操作が可能となる。しかも、キーボードのキーを押したり、ゲーム用のコントローラーを操作したりという非常に簡単な操作により固視ずれ量を正確に取得することができ、ユーザーフレンドリーなシステムを提供することが可能となる。
以上の通り、被検者自らが、表示手段5aに表示された各々の視標を移動させることを自在とする構成を有する入力手段5dを設けることは、極めて有益である。もちろん、上記の内容は、被検者以外の者(例えば検査員)が入力手段5dを操作することを妨げるものではない。
5−A−a5)その他
発注側コンピュータ2に備わるのが好ましい構成または機能としては、以下のものが挙げられる。固視ずれを測定するための装置構成を示す概略図である図4を用いて説明する。これまでに挙げた構成と重複する内容もあるが、再掲する。
・遠距離および近距離呈示を制御するためのワイヤレスネットワーク接続
・シンプルなメニューによるタッチスクリーン
・操作者に次の検査ステップを告知する音声案内(例えば一方向のワイヤレスヘッドホン)
・タブレットPCを固定するためのベースステーション。後で、別の実施形態として述べるが、これにより検査員は、トライアルフレームの調整やトライアルレンズの交換のために両手を使える。
・市販のタブレットPC、ディスプレイサイズ7インチ〜12インチまたはラップトップ最大15インチディスプレイまたは類似の適当な電子装置
遠距離呈示用のコンピュータは、試験図を遠距離視(4〜8メートル、好ましくは4.5〜6メートル)において2Dおよび3Dで呈示する市販のモニタ付きコンピュータ(またはPC内蔵モニタ)であり、静的および動的な試験図を2Dおよび3Dで呈示するために用いられる。スクリーン43は、検査員用装置42により検査員のために制御され、被検者が操作した結果を表示するために被検者用装置41と接続されている。
なお、被検者用装置41は、発注側かつ被検者用のコンピュータであり、少なくとも、測定部のうち入力手段および送信部を備えている。また、検査員用装置42は発注側かつ検査員用のコンピュータであり、少なくとも、測定部のうち選択手段および送信部を備えている。スクリーン43は表示手段5aに該当する。
また、遠距離呈示用のコンピュータにおける表示手段5a(スクリーン43)にとって好適な構成または機能は、以下の通りである。
・少なくとも22インチ〜28インチの16×9TFT/LCD/LEDモニタを有する、検眼で通常用いられる視標呈示のための電子装置
・少なくとも1980×1080ピクセルの解像度
・ディスプレイの可視面は少なくとも50×29cm
・明度は少なくとも220cd/m
・例えば偏光またはシャッター技術による3D表示
・内蔵マイクロプロセッサによる運転、検査員は検査員用装置42によりワイヤレス制御可能、検査員用装置42は近距離呈示用の被検者用装置41とインタラクティブに接続
・観察距離4〜8メートル
一方、近距離呈示用のコンピュータは、試験図を近距離視において2Dおよび3Dで呈示するための市販の3D性能タブレットPCであり、同時に遠距離および近遠距離に対する両測定方法で被検者がインタラクティブに使用するために用いられる。具体的には、被検者が、遠距離または近距離に呈示された試験図のノニウスラインの位置を移動させる操作を、この近距離呈示用のコンピュータによって行うのである。被検者用装置41は、静的および動的な試験図を2Dおよび3Dで呈示するためのインタラクティブな近距離用固視ずれ測定装置であると同時に、例えばタッチスクリーンを用いた被検者のための操作装置でもある。
また、近距離呈示用のコンピュータにおける表示手段5a(スクリーン43)にとって好適な構成または機能は、以下の通りである。
・7インチ〜12インチかつ3D性能ディスプレイを備えた市販のタブレットPC
・例えば動的に修正された円筒グリッド、シャッター技術、カラーコードまたは偏光による3D表示
・ワイヤレスネットワーク接続により検査員用装置42から制御され、試験図のインタラクティブな判定のためにスクリーン43を備えたコンピュータと接続されている。
・少ないボタンによるシンプルなメニュー制御で試験図のパラメータ、特にノニウスラインの位置を変化させ、および試験図に対し「右または左」もしくは「上または下」および「センタリング(ノニウスラインが揃った状態)」の選択信号として判定する。
・被検者は接触感知可能なタッチパネルの表面を通しても操作可能である。装置の加速センサを使用して、被検者は相応の方向へセンサを動かすことによって、被検者は自身の知覚を外部に示すことができる。
・音声制御または身振りによって上記の操作を行うこともできる。
5−A−b)送信部6
上記の測定部5にて得られた固視ずれ量を、送信部6によって、受注側コンピュータ3に備えられた演算部7へと送信する。送信には、先にも述べたように、公衆回線を使用しても構わないし、専用回線を使用しても構わない。なお、本実施形態においては演算部7が受注側コンピュータ3に設けられた例を述べたが、もちろん、発注側コンピュータ2に演算部7が設けられていても構わない。この場合であっても、測定部5によって求められた固視ずれ量は、送信部6により演算部7へと送信されることに変わりはない。
以上が、発注側コンピュータ2に関する各部である。そして、発注側コンピュータ2に対し、通信回線4を介して接続される受注側コンピュータ3について、以下、説明する。
5−B)受注側コンピュータ3
受注側コンピュータ3は、眼鏡レンズの製造に必要なアライニングプリズムを取得する側に設置されたコンピュータのことを指す。具体例を挙げると、眼鏡レンズ製造工場に設置されたコンピュータである。眼鏡店から眼鏡レンズの製造の受注を受け、受注側コンピュータ3の演算部7にて、固視ずれ量から、被検者が装用する眼鏡レンズに必要なアライニングプリズムを演算および取得する。
なお、受注側コンピュータ3は、コンピュータとしての機能を有したものである。受注側コンピュータ3は、システム内に複数存在しても構わない。
また、受注側コンピュータ3には、アライニングプリズムを取得するために使用される種々の情報を管理および制御、受注側コンピュータ3に設けられた各部を管理および制御、並びにアライニングプリズムを演算および取得するために、制御部が存在する。ただ、この制御部の具体的な構成は、公知技術を利用して実現すればよく、ここではその詳細な説明を省略する。
5−B−a)演算部7
本実施形態における演算部7は、測定部5にて求められて送信部6により送信された固視ずれ量をアライニングプリズムへと変換する機能を有する。非特許文献1に記載されているように「固視ずれ」と「アライニングプリズム」との間の関係が個人差に依存するにもかかわらず、上記の変換により、各被検者にとって固視ずれを解消可能なアライニングプリズムを演算することが可能となる。
なお、アライニングプリズムは以下の式に基づいて演算する。
APver=kver*FDver
APhor=khor*FDhor ・・・(式1)
APverは、アライニングプリズムにおける垂直方向(天地方向)のプリズム量(単位:Δ)を指し、
APhorは、アライニングプリズムにおける水平方向のプリズム量を指し、
FDverは、垂直方向における固視ずれ量を指す。
FDhorは、水平方向における固視ずれ量を指し、
ただし、各係数khorおよびkverは、以下の条件を満たす。
0.3≦kver≦0.7
1.4≦khor≦2.0
ところで、FDverやFDhorとしては、例えば、近距離呈示用の表示手段により得られた結果をFDverやFDhorとしても構わないし、逆に、遠距離呈示用の表示手段により得られた結果をFDverやFDhorとしても構わない。ただ、以下の手法を用いてFDverやFDhorを算出することが好ましい。
この手法の概要としては、以下の通りである。
1.固視ずれ測定自体の信頼性(場合によっては被検者が視覚的な問題を有している可能性)を確認すべく、同一条件での測定を2回行い、各測定における固視ずれ量の間の標準偏差が規定値以内か否かを確認。
2.遠距離呈示の際の固視ずれ量と、近距離呈示の際の固視ずれ量との間にずれが大きすぎると、被検者が視覚的な問題を有している可能性があり正確な固視ずれ量を測定できない。そのため、遠距離呈示の際の固視ずれ量と、近距離呈示の際の固視ずれ量との間の差が規定値以内か否かを確認。
まず、上記の1.の手順について説明する。まず、固視ずれ測定自体の信頼性を確認するために、同一条件での測定を2回行う。この際、5−A−a1)表示手段5aにて説明したように、複数回測定される場合、背景画像の前面において、測定毎に試験図の場所を変更するのが好ましい。
なお、個別具体的な固視ずれ量の測定方法に関しては、後述の<8.プリズム処方値取得方法>に記載の通りである。
ここで、例えば、遠距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量の測定であって、複数回測定における1回目の測定で得られる固視ずれ量をFDFh1と称し、2回目の測定で得られる固視ずれ量をFDFh2と称す。
同様に、遠距離呈示の際の垂直方向の固視ずれ量の測定であって、複数回測定における1回目の測定で得られる固視ずれ量をFDFv1と称し、2回目の測定で得られる固視ずれ量をFDFv2と称す。
また、近距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量の測定であって、複数回測定における1回目の測定で得られる固視ずれ量をFDNh1と称し、2回目の測定で得られる固視ずれ量をFDNh2と称す。
同様に、近距離呈示の際の垂直方向の固視ずれ量の測定であって、複数回測定における1回目の測定で得られる固視ずれ量をFDNv1と称し、2回目の測定で得られる固視ずれ量をFDNv2と称す。
上記の1.の手順に入る前に、各固視ずれ量が大きすぎないかを判定する。仮に、各固視ずれ量が大きすぎると、被検者が斜視のような視覚的な問題を抱えている可能性があり、その場合、アライニングプリズムを適切に求めることができないためである。例えば、各固視ずれ量が5分を超えている場合はその値を除外するか測定自体を中止する。
上記の準備を経て、まず、遠距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量の測定を2回行う。そして、各測定における固視ずれ量の間の標準偏差を、以下の式により求める。
標準偏差(SD)(単位:分)=SQRT[{(FDFh1−M)+(FDFh2−M)}/2] ・・・(式2)
ただし、M=(FDFh1+FDFh2)/2
SDが1.25分以下の場合、固視ずれ測定自体の信頼性は確保できているとみなす。そして、2回の測定の平均値FDFhaを、「遠距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量の値」として保存する。なお、この作業は、後述の<8.プリズム処方値取得方法>における1回目および2回目の測定に該当する。
SDが1.25分を超えた場合、測定誤差が生じた可能性を鑑み、同様の測定を再度行う、すなわち、3回目および4回目の測定を行い、各測定における固視ずれ量(FDFh3およびFDFh4)を得る。そして再びSDを算出する。
この場合においても再びSDが1.25分を超えていた場合、固視ずれ測定自体の信頼性が確保できていないため、測定を中断する。また、被検者に視覚的な問題がある可能性も鑑み、被検者に対してその旨を伝えるメッセージが表示手段5aに表示される。
一方、SDが1.25分以下の場合、3回目の測定における固視ずれ量FDFh3と4回目の測定における固視ずれ量FDFh4の平均値FDFhaを、この作業(後述の<8.プリズム処方値取得方法>で言うところの1回目の作業)における「遠距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量の値」として保存する。
上記の測定の手順を、遠距離呈示の際の垂直方向、近距離呈示の際の水平方向、近距離呈示の際の垂直方向についても行う。なお、水平方向におけるSDの基準値は1.25分とし、垂直方向におけるSDの基準値は0.5分とする。
次に、上記の2.の手順について説明する。すなわち、遠距離呈示の際の固視ずれ量と、近距離呈示の際の固視ずれ量との間にずれが大きすぎると、被検者が視覚的な問題を有している可能性の有無について確認する。
上記の1.の手順により、遠距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量の値(FDFha)および近距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量の値(FDNha)、ならびに、遠距離呈示の際の垂直方向の固視ずれ量の値(FDFva)および近距離呈示の際の垂直方向の固視ずれ量の値(FDNva)が求まっている。
2.の手順に入るまでに、各固視ずれ量の値が、あまりにも大きい値でないか否かを確認する。あまりにも大きい値だと、正確なアライニングプリズムを得ることができないためである。つまり、FDFha、FDNha、FDFvaおよびFDNvaのいずれかが5分を超えたときは、被検者に視覚的な問題がある可能性も鑑み、被検者に対してその旨を伝えるメッセージが表示手段5aに表示される。
そして、2.の手順を行う。今度は、遠距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量の値(FDFha)と近距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量の値(FDNha)との差(ΔFDha)を求めて、以下の様に最終的な水平方向の固視ずれ量の値FDhorを求める。
なお、FDFhaとFDNhaの値がそれぞれゼロに近い場合は、最終的に得られるFDhorをゼロとして考えても構わない。具体例を挙げると、FDFhaの絶対値が0.15分未満、かつ、FDNhaの絶対値が0.15分以下である場合が挙げられる。
ΔFDhaが1.25分以下の場合、以下の内容に従って最終的に得られるFDhorを決定する。
[FDFhaとFDNhaとで符号(+−)が同じ場合]
まず、FDFhaとFDNhaとで、絶対値が大きい方をFDmax、絶対値が小さい方をFDminとし、以下の式にてFDhorを決定する。ここでは重み付けが行われている。
FDhor=(FDmax*0.6)+(FDmin*0.4) ・・・(式3)
なお、水平方向において、固視ずれ量における符号が正の時は外方固視ずれを表し、符号が負の時は内方固視ずれを表す。
また、垂直方向において、固視ずれ量における符号が正の時は、左眼が下方で右眼が上方の固視ずれを表し、符号が負の時は、左眼が上方で右眼が下方の固視ずれを表す。
[FDFhaとFDNhaとで符号(+−)が異なる場合]
以下の式にてFDhorを決定する。
FDhor=(FDFha*0.5)+(FDNha*0.5) ・・・(式4)
ΔFDhaが1.25分を超えて2.5分以下の場合、以下の内容に従って最終的に得られるFDhorを決定する。
[FDFhaとFDNhaとで符号(+−)が同じ場合]
まず、FDFhaとFDNhaとで、絶対値が大きい方をFDmax、絶対値が小さい方をFDminとし、以下の式にてFDhorを決定する。ここでは重み付けが行われている。
FDhor=(FDmax*0.6)+(FDmin*0.4) ・・・(式5)
[FDFhaとFDNhaとで符号(+−)が異なる場合であって、FDFhaが0.3分未満、かつ、FDNhaの符号が+の場合]
以下の式にてFDhorを決定する。
FDhor=FDNha*0.5 ・・・(式6)
なお、その際、加入度数が強すぎる可能性があるので、その旨の示唆を、表示手段5aに表示する。
[FDFhaとFDNhaとで符号(+−)が異なる場合であって、FDFhaが0.3分未満、かつ、FDNhaの符号が−の場合]
(式6)にてFDhorを決定する。
なお、その際、加入度数が弱すぎる可能性があるので、その旨の示唆を、表示手段5aに表示する。
[FDFhaとFDNhaとで符号(+−)が異なる場合であって、上記のいずれにも該当しない場合]
(式6)にてFDhorを決定する。
ΔFDhaが2.5分を超えた場合、測定を中止し、被検者に視覚的な問題がある可能性も鑑み、被検者に対してその旨を伝えるメッセージが表示手段5aに表示される。
次に、遠距離呈示の際の垂直方向の固視ずれ量の値(FDFva)と近距離呈示の際の垂直方向の固視ずれ量の値(FDNva)との差(ΔFDva)を求めて、以下の様に最終的な水平方向の固視ずれ量の値FDverを求める。
なお、FDFvaとFDNvaの値がそれぞれゼロに近い場合は、最終的に得られるFDverをゼロとして考えても構わない。具体例を挙げると、FDFvaの絶対値が0.2分未満、かつ、FDNvaの絶対値が0.2分以下である場合が挙げられる。
ΔFDvaが2.0分以下の場合、以下の(式7)に従って最終的に得られるFDverを決定する。
FDver=(FDFva*0.5)+(FDNva*0.5) ・・・(式7)
ΔFDvaが2.0分を超えた場合、測定を中止し、被検者に視覚的な問題がある可能性も鑑み、被検者に対してその旨を伝えるメッセージが表示手段5aに表示される。
以上のように、FDhorおよびFDverを求めるのが好ましい。
なお、上記の標準偏差、遠距離呈示と近距離呈示との間の固視ずれ量の値の差、固視ずれ量の値の判定、さらには後述のアライニングプリズムの値の判定を、後述の判定部8が行っても構わない。
再び(式1)に視点を移し、上記の(式1)(特に係数kverおよびkhor)は、本発明者の類まれなる努力により見出されたものである。この測定で得られた固視ずれ量とアライニングプリズムの関係を図12(a)と図12(b)に示す。
図12(a)は垂直方向の固視ずれ量(横軸:単位は分)と垂直方向のアライニングプリズム(縦軸:単位はΔ)の関係を表している。符号が正の時は、左眼が下方で右眼が上方の固視ずれを表し、符号が負の時は、左眼が上方で右眼が下方の固視ずれを表す。
一方、図12(b)は水平方向の固視ずれ量(横軸:単位は分)と水平方向のアライニングプリズム(縦軸:単位はΔ)の関係を表している。符号が正の時は外方の固視ずれを表し、符号が負の時は内方の固視ずれを表す。
各図ともに、被検者数を34人とした上で、各被検者に対して固視ずれ量の測定およびアライニングプリズムの測定を行っている。
また、固視ずれ量の測定は、上記のように右眼用の視標、左眼用の視標および両眼の固視用視標を用いて行っている。アライニングプリズムの測定は、トライアルレンズを用いて固視ずれが認識されなくなった際の、トライアルレンズのプリズム量を採用している。
図12(a)の図中に示されている直線のグラフは、垂直方向の固視ずれ量と垂直方向のアライニングプリズムとの関係から統計解析によって導出した、垂直方向の固視ずれ量とアライニングプリズムの関係を表す回帰直線である。この回帰直線は統計解析のロバスト回帰を用いて求めたものである。この垂直方向の固視ずれ量とアライニングプリズムの関係を表す回帰直線の相関係数は0.888である。
図12(b)の図中に示されている直線のグラフは、水平方向の固視ずれ量と水平方向のアライニングプリズムとの関係から統計解析によって導出した、水平方向の固視ずれ量とアライニングプリズムの関係を表す回帰直線である。この回帰直線は統計解析のロバスト回帰を用いて求めたものである。この水平方向の固視ずれ量とアライニングプリズムの関係を表す回帰直線の相関係数は0.776である。
また、これら垂直方向および水平方向の固視ずれ量とアライニングプリズムの関係を表す回帰直線を求めた際の統計解析上の検定力は1.000に達している。
これらの回帰直線から、次の関係式によって垂直および水平方向の固視ずれ量からアライニングプリズムを求めることが可能となった。回帰直線の傾きの値を、上記の演算式に適用した式は、以下の通りである。
APver=0.574*FDver
APhor=1.694*FDhor ・・・(式8)
なお、FDverもFDhorも、どちらもトライアルフレームにプリズムを備えたトライアルレンズを全く装着しない状態で測定した場合の固視ずれ量である。なお、プリズムを備えたトライアルレンズをトライアルフレームに設置したものを「測定用眼鏡」と言う。
なお、このとき、各アライニングプリズムが大きすぎないかを判定するのが好ましい。仮に、各アライニングプリズムが大きすぎると、被検者が斜視のような視覚的な問題を抱えている可能性があり、固視ずれを解消する以前の問題を被検者が抱えている可能性がある。例えば、各アライニングプリズムが5.0Δを超えている場合は測定自体を中止する。
(式8)に視点を移すと、もちろん、回帰直線の傾きの値を(式1)に適用した(式8)は、極めて好ましい例である。上記の値以外の値であってその近傍の値を係数に設定しても、トライアルフレームにプリズムレンズを使用しない状態で測定した固視ずれ量とその方向から、アライニングプリズムを計算によって求めることができる。
なお、全サンプル数のうち測定の信頼性が低く誤差が大きいと思われる固視ずれ量の小さなデータ0.5未満のデータを除外したものを基にkverの係数の範囲を想定すると、0.3≦kver≦0.7の範囲に集中している。そのため、0.3≦kver≦0.7の範囲だと、固視ずれ量をアライニングプリズムへと正確に変換することの信頼性が増す。
同様のことが図12(b)からも言える。全サンプル数のうち測定の信頼性が低く誤差が大きいと思われる固視ずれ量の小さなデータ0.5未満のデータを除外したものを基にkverの係数の範囲を想定すると、1.4≦khor≦2.0の範囲だと、固視ずれ量をアライニングプリズムへと正確に変換することの信頼性が増す。
いったんまとめると、結局、APverおよびAPhorに関する演算式が得られたことによって、固視ずれ量が所定角度(例えば、上記の測定によって示された、少なくとも±4分以内の範囲、以降、絶対値表記で「4分以下」と称する。)であればプリズムを備えたトライアルレンズを使用しない状態で測定した固視ずれ量とその方向から、アライニングプリズムを計算によって求めることが可能となるという知見が得られた。
この方法によれば、アライニングプリズムを求める過程でトライアルフレームにプリズムレンズを装着する必要が無いため、測定時間は数分と大幅に短くなる。また、測定の手順もプリズムレンズのトライアルフレームへの入れ替えや、被検者に対するトライアルフレームの掛け替えの必要が無くなるため、操作が非常に簡便になる。
なお、上記の演算は、被検者の固視ずれ量が所定角度以下であるのが好ましい。あまりにも固視ずれ量が大きい場合は、アライニングプリズムへと正確に変換する際の信頼性が低下してしまう。この「所定角度」としては、一例ではあるが、例えば4分以下が挙げられる。先に述べた図12(a)および図12(b)は、固視ずれ量が4分以下の被検者に対して上記の測定を行った結果を示している。もちろん、この所定角度は4分に限定されることはなく、絶対値で6分以下の範囲で適宜設定すれば、固視ずれ量をアライニングプリズムへと十分に精度良く変換することが可能である。
なお、上記の式は、固視ずれ量の単位を角度で表しているため、係数は上記の範囲となっている。仮に、固視ずれ量の単位を距離(例えばm)で表す、すなわち「ずれ量」を上記の式に当てはめた場合、係数は当然変化する。しかしながら、「ずれ量(単位:m)」を「固視ずれ量(単位:分)」へと単位を変えれば、式の係数の範囲は上記の通りとなる。つまり、ずれ量(単位:m)を用い、上記の範囲から逸脱した係数を用いた式を採用した場合であっても、ずれ量(単位:m)を固視ずれ量(単位:分)に換算した場合の式の係数が上記の範囲内にあれば、ずれ量(単位:m)を用いた場合であっても本発明の範囲に属する。
上述のように、表示手段5a上での視標の固視ずれ量を把握することにより、被検者に固視ずれが有るか無いかについて判別可能となるのはもちろんのこと、固視ずれの度合いを固視ずれ量としてデータ化し、この固視ずれ量を、眼鏡レンズにおけるアライニングプリズムへと変換することが可能となる。その結果、被検者の固視ずれを効果的に矯正可能な眼鏡レンズを提供することが可能となる。
なお、上記のAPverおよびAPhorを眼鏡レンズに反映させる手法としては、一例として、右眼用のレンズと左眼用のレンズとでAPverおよびAPhorを分配させる手法が挙げられる。
例えば、APhorに関して言うと、右眼用のレンズのプリズム処方値および左眼用のレンズのプリズム処方値は各々APhor/2とする。このとき、APhorの符号が正のときは、アライニングプリズムの基底方向は外方であり、一方、APhorの符号が負のときは、アライニングプリズムの基底方向は内方である。
同様に、APverについても右眼用のレンズと左眼用のレンズとで分配させる。このとき、APverの符号が正のときは、アライニングプリズムの基底方向は、右眼用のレンズだと基底下方かつ左眼用のレンズだと基底上方であり、一方、APverの符号が負のときは、アライニングプリズムの基底方向は、右眼用のレンズだと基底上方かつ左眼用のレンズだと基底下方である。
なお、(式8)を使用した場合であって、各固視ずれ量および各アライニングプリズムの具体的な数値の一例を以下に示す。

遠距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量(FDFha)=−1.0分
近距離呈示の際の水平方向の固視ずれ量(FDNha)=−1.8分
遠距離呈示の際の垂直方向の固視ずれ量(FDFva)= 0.9分
近距離呈示の際の垂直方向の固視ずれ量(FDNva)= 1.2分

FDhor=−1.48分
APhor=−2.51Δ
FDver= 1.05分
APver= 0.60Δ

右眼用レンズにおけるアライニングプリズム=1.25Δ(内方)&0.30Δ(下方)
左眼用レンズにおけるアライニングプリズム=1.25Δ(内方)&0.30Δ(上方)
また、演算部7は、暗号化されたアライニングプリズムを提供することが好ましい。 暗号化された最終結果によって、正式に認可された眼鏡レンズ製造業者のみが測定結果を利用できる。それにより精度良く固視ずれを矯正した眼鏡レンズのみが市場に供されるように図られる。
もちろん、上記の各部以外の構成を、本実施形態におけるプリズム処方値取得システム1に設けても構わない。例えば、既に述べたが各種の情報を記録する記録部やサーバ、通信回線4等を別途設けても構わない。
また、言うまでもないことではあるが、上記のアライニングプリズムは、「視標と被検者との間の距離に基づいて固視ずれ量をプリズム量に換算したもの」ではない。固視ずれ量(角度)を取得するためには、ずれ量とともに、被検者と表示手段5aとの間の距離が必要になる。しかしながら、ひとたび固視ずれ量(角度)を取得してしまえば、本実施形態の演算部7を活用する(式1や式8を活用する)ことにより、アライニングプリズムへの変換作業において、被検者と表示手段5aとの間の距離は不要となる。この点は、単に固視ずれ量をプリズム量に換算することとは全く異なる点である。
<6.プリズム処方値取得装置>
上記の実施形態においては、アライニングプリズムを取得するために、発注側コンピュータ2と受注側コンピュータ3とで役割を分担させた場合について述べた。その一方、本発明の特徴の一つは、固視ずれ量をアライニングプリズムへと変換し、これを取得することにある。そのため、固視ずれ量に基づいて算出されたアライニングプリズムを取得するプリズム処方値取得装置にも、本発明が反映されており、大きな技術的特徴を有している。
ここで言うプリズム処方値取得装置は、少なくとも演算部7を有していればよい。もちろん、演算部7以外の各部が適宜設けられていても構わない。更に言うと、当該各部を全て備えたものが好ましい。こうすることにより、眼鏡店においてアライニングプリズムを取得することが可能となり、眼鏡店は、アライニングプリズム以外の処方値と共に、眼鏡レンズの製造に必要な情報を眼鏡レンズ製造業者へと送信することが可能となる。
なお、プリズム処方値取得装置の好ましい形態は、プリズム処方値取得システム1を構成する各部における好ましい形態で述べた通りである。プリズム処方値取得システム1において好ましいとされた各部を備えたものが、プリズム処方値取得装置の好ましい形態となる。
<7.プリズム処方値取得プログラム>
更に言うと、固視ずれ量に基づいて算出されたアライニングプリズムを取得する演算部7として、コンピュータを機能させるプリズム処方値取得プログラムにも、本発明が反映されており、大きな技術的特徴を有している。もちろん、当該プリズム処方値取得プログラムが格納された記録媒体にも、本発明が反映されており、大きな技術的特徴を有している。
ここで言うプリズム処方値取得プログラムは、各コンピュータにインストールされ、制御部からの指令のもと、少なくとも演算部7としてコンピュータを機能させられればよい。もちろん、演算部7以外の各部としてコンピュータを適宜機能させても構わない。更に言うと、演算部7を含め、それ以外の各部としても、コンピュータを機能させるのが好ましい。
なお、プリズム処方値取得プログラムの好ましい形態は、プリズム処方値取得システム1を構成する各部における好ましい形態で述べた通りである。プリズム処方値取得システム1において好ましいとされた内容を備えたものが、プリズム処方値取得プログラムの好ましい形態となる。
<8.プリズム処方値取得方法>
以下、プリズム処方値取得の具体的な手順について説明する。この手順の概要としては、以下の通りである。
まず、固視ずれ量の測定の事前準備として、立体視テストを実施する。被検者が、正常な立体視を有さないと、固視ずれ量の測定が無駄になってしまうためである。
発注側コンピュータ2には、表示手段5a、3D眼鏡5b、選択手段5cおよび入力手段5dが設けられている。
そして、入力手段5dが操作されることにより、固視ずれ量が測定される。
そして固視ずれ量が演算部7に送信され、アライニングプリズムへと変換される。もちろん、それ以外の情報(眼鏡レンズに関する処方値等)を同時に送信しても構わない。
以下、ステップごとに分けて、プリズム処方値取得の具体的な手順について、図14を用いて説明する。図14は、本実施形態におけるプリズム処方値取得の手順を示すフローチャートである。
(S1 立体視テスト実施ステップ)
固視ずれ量の測定の事前準備として、最初に立体視テスト、例えばランダム・ドット・ステレオ・テストによって、三次元視が全体的立体視として存在することを確認することが合理的である。正常の立体視を持たない(斜視あるいは微小角斜視)ためにこのテストに合格しない人を発見して、別の専門家に回すことができる。その場合、眼鏡レンズとしてのプリズムレンズは、被検者には与えられない。なお、先に述べた試験図を傾けたり動かしたりしても、測定結果は損なわれない。なぜならば試験図は、傾けたり動かしたりしても単眼ではほとんど認識できないように形成されているからである。これにより被検者を誤って立体視と判定することが防止される。
別の例としては、近距離呈示に対するいわゆるラングステレオテストの改善されたバージョンを応用することが挙げられる。先に挙げたランダム・ドット・テストは、全体的立体視が存在してプリズム決定が有意かを迅速に区別、またはランダム・ドット立体視が存在せずプリズムによる見え方の悪化のリスクがあり得るかを迅速に区別するために用いられる。一方、ラングテストの利点は、最小限の装置コストでテストできるように、例えばテストカードに呈示された立体視対象を眼鏡なしで観察することである。逆に、ラングテストの欠点は、テストカードを動かしたり傾けたりすると、隠れていた立体視対象が見えてくることである。これは誤った結果を招く恐れがある。
ここでベースとなる課題は、カードを傾けたり動かしたりしても、立体視のない被検者は立体視対象を認識してはならないということである。
ランダム・ドット・パターン(ランダム・ドット立体視)における立体視知覚の最初の基礎は、B.ユレシュによって開発された。他の立体視テストとの違いは、対象に単眼で認識できる構造がないことである。立体視を達成するために、右眼と左眼に対して異なる像を作成する方法を必要とする。ランダム・ドット・ステレオ・テストは、偶然配置されたドットのパターン、いわゆるマトリックスからなる。このマトリックスの内部に形状定義されたドットエリア、すなわちサブマトリックスがある。マトリックス内ではドットが種々異なって配置されているが、サブマトリックスではドットは一様に配置されている。立体視を達成するために、両像でサブマトリックスを移動させる。立体視的に観察して初めて形状定義されたサブマトリックスの奥行の印象が認識される。サブマトリックスの互いの移動が少なければ少ないほど、立体視効果は小さくなる。
別の方法である円筒グリッド法はW.R.ヘスによって発明された。1912年にドイツで特許され(GB1912130347)、いわゆる「同様像」の作成に使用された。像の分離は平行に配置された多くの一様の平面円筒によって行われる。それぞれの平面円筒の下には2以上の連続画像がある。これらの連続画像は平面円筒によって種々異なって結像される。したがって右眼は左眼と異なる連続画像を見る。
なお、ラング立体視テストの改良版は、オリジナルと同様ランダム・ドット・サンプルを使用し、円筒グリッド法を用いて単純な試験像の立体視呈示を実現し、テスト結果の信頼性の改善をもたらす。ドット密度、対象の大きさ、および立体視平行軸を適当に選択することにより、カードを軽く動かしたり傾けたりした場合でも、対象は単眼ではほとんど認識できないように配慮される。テストを年齢や文化圏とは独立に実施できるように、シンプルで一般に理解しやすい対象が基礎に置かれる。例として、図11(a)に、ランダム・ドット・パターンからなる試験図を有する葉書サイズのカードを示す。ここでは単眼観察では対象が見えない。しかし立体視的に観察すると、図11(b)に略示されているように、サブマトリックスとして含まれた三次元の立体視対象が現れる。
被検者が立体視できると判断された場合は、さらに両眼について単眼屈折値を決定する。この場合、単眼矯正視力が少なくとも0.63あることが後続のステップのための前提である。
(S2 視標呈示ステップ)
本ステップにおいては、表示手段5aに視標を表示する。本実施形態においては、固視ずれを有する被検者にとっては視標が上下でずれて見えるが、表示手段5a上では揃っている状態を初期状態とする。そして、3D眼鏡5bを装着した被検者に対し、左眼用の視標および右眼用の視標を呈示する。もちろん各画像には視標が含まれている。両眼用の視標が表示された表示手段5aと3D眼鏡5bとの画像表示の同期については上述の通りである。
なお、選択手段5cにより、検査員用装置42上で検査員に種々の機能の選択メニューが提供される。これによりスクリーン43を備えたコンピュータ上の遠距離離呈示用または被検者用装置41上の近距離呈示用を選択できる。これには視力の決定、屈折の決定および両眼テストのために通常検眼で使用される試験図、ならびに、先に挙げた本実施形態の試験図が属する。
本実施形態の試験図を含む同じテスト用の試験図の選択が、被検者用装置41上の近距離呈示用としても被検者に提供される。そして、その結果は、通常使用される近距離視力検査により補完される。
なお、検査員用装置42、例えばタブレットPCまたはラップトップが、検査の制御に遠隔操作として用いられる。これによりインタラクティブな検査ステップの制御、例えば遠距離呈示から近距離呈示への切り替えおよび種々の検査手順の継続投入が可能になる。
(S3 視標移動ステップ)
本ステップにおいては、入力手段5dを被検者が操作することにより、左眼用の視標および/または右眼用の視標を移動させる。本実施形態においては、視標を移動させることにより、被検者にとっては揃っていると知覚されるが、表示手段5a上では視標が上下でずれて配置される例を挙げる。この作業のことを「センタリング」とも言う。
検査員用装置42は検査員によって操作され、検査員はソフトウェアの指示によって案内され、その情報を例えばディスプレイまたはヘッドホンを通した音声出力によって得る。
図6は、試験図を用いて被検者の眼の固視線の向きを測定するための方法全体の概観を示す。この方法は、主として4つのステップ61−64からなる。この方法の第1のステップ61では、遠距離呈示において垂直方向にセンタリングするプリズムを決定する。まず検査員は、あらかじめ屈折値が決定されている測定レンズをトライアルフレームに入れ、そのトライアルフレームを被検者に装着する。例えば、垂直固視ずれに対する試験図50(図5(a))が遠隔モニタに示されている。最初に検査員は被検者に対し「遠隔モニタを見て、2本の水平線51,52(ノニウスライン)がどのような配置なのか判定してください」と説明する。これらの線の高さが互いにずれて見える場合は、被検者が保持する被検者用装置41を用いて線を互いに調節する。このずれについて示したのが図9である。図9は、固視ずれにおけるずれ量の算出の様子を示す試験図である。
被検者がノニウスラインのずれを調整して(例えば図9のずれ)、主観的に知覚された一致状態(例えばノニウスラインが互いに上下に揃う状態)に至ることにより、このずれは両眼離反として次式により分(角度)で計算される。
arctan(θ)=d/観察距離(単位:m) ・・・(式9)
なお、θは固視ずれ量(単位:分)、dはずれ量(単位:m)を表す。
被検者によって調節されるノニウスラインのずれの方向は、両眼視の際に固視ずれが無い状態であったり誤差なくテスト距離に調整されている状態であったりするか(図2(b)参照)、または内方偏差=内方FD(図2(a)参照)または外方偏差=外方FD(図2(c)参照)であるかを示す。
例えば内方偏差(内方FD)の場合、被検者は上側の線を下側の線と相対的に左方に調整する。この方向は正のFD値として評価され、(式9)に従い分(角度)で計算される。
このために被検者用装置41は適当な調節装置、例えばマウス、ジョイスティック、キーボード、つまみ、調節スライダーまたはスクリーンの接触感知膜(タッチスクリーン)を備えている。調節装置を用いて水平線51,52(図5(a))を連続的に互いに移動できる。同様に図5(b)における垂直線21,22も連続的に互いに移動できる。
一実施形態において物理的キーボードまたはタッチスクリーンキーボードを用いて動的に線を移動させることができる。キーを短時間操作すると線はステップ0.5分(角)で移動し、キーをより長く操作するに連れて1〜20分(角)のより大きいステップで移動させることができる。また、線51,52は自動的に、連続的または段階的に移動させることもできる。
水平線のセンタリングまたは調節の作業は、上記の基準が満たされた(すなわち水平線が水平方向で同じ線上にある)ことを示す被検者の信号をもって完了する。このために被検者用装置41においては、例えばタッチスクリーン上の領域またはマウスクリック用の領域を有し、この領域から信号を送信しても構わない。この信号により同時に、特定のパラメータ、すなわち線51,52のずれが選択される。
なお、上記の測定は複数回行う。例えば2回測定する場合、試験図は、モニタの右半分または左半分に、それぞれ判定された後で動的に交互に示す。この例を示したのが、図8である。図8は、複数の固視用視標を有する背景画像の前面に試験図を配置した様子を示す図である。(a)は、1回目の測定において試験図を表示手段5aの左側に表示した様子を示す図であり、(b)は、2回目の測定において試験図を表示手段5aの右側に表示した様子を示す図である。
(S4 固視ずれ量取得ステップ)
入力手段5dを用いた操作により、表示手段5a上では、上下の視標がずれている様子が表示されている。このずれ量は自動算出する。そして、被検者と表示手段5aとの間の距離から、固視ずれ量(単位:角度)を算出する。算出の手法については前ステップで述べた通りである。
なお、水平方向の固視ずれ量を測定した後に、S1〜S4の手法を用い、垂直方向の固視ずれ量を測定する。もちろん、水平方向の固視ずれ量を測定するよりも先に、垂直方向の固視ずれ量を測定しても構わないし、特許文献1のFIG.5(b)および6に記載のように測定を行っても構わない。
そして、上記の測定を、遠方視および近方視の場合について行う。つまり、遠方視における水平方向の固視ずれ量および垂直方向の固視ずれ量を測定し、かつ、近方視における水平方向の固視ずれ量および垂直方向の固視ずれ量を測定する。
(S5 送信ステップ)
本ステップにおいては、固視ずれ量取得ステップ(S4)で得られた固視ずれ量が、発注側コンピュータ2から受注側コンピュータ3に設けられた演算部7へと送信される。
(S6 プリズム処方値演算ステップ)
本ステップにおいては、演算部7にて、当該固視ずれ量に基づきアライニングプリズム(プリズム処方値)の算出を行う。具体的な演算手法については、5−B−a)演算部7にて述べた通りである。
こうして、アライニングプリズムの取得に関する一連のステップが終了する。その後、当該アライニングプリズムを、眼鏡レンズの設計データへと反映させる。なお、アライニングプリズムを設計データに反映させる手法自体は、公知の手法を用いても構わない。その後、当該設計データを眼鏡レンズの加工機に送信し、眼鏡レンズの加工を行う。
<9.本実施形態の効果>
本実施形態においては、本発明の課題、および、<4.本発明の課題以外の、固視ずれの測定に係る課題>で説明した課題を解決するという効果を奏する。それ以外にも、以下の効果を奏する。
まず、本実施形態においては、固視ずれの程度を可能な限り客観的に把握し、固視ずれの程度を、表示手段5a上の距離(固視ずれ量)という形で把握している。そのため、従来技術とは異なり、固視ずれの程度を精度良く把握することが可能となる。
更に、表示手段5a上での視標の固視ずれ量を、ずれ方向を特定した上で把握することにより、被検者に固視ずれが有るか無いかについて判別可能となるのはもちろんのこと、固視ずれの度合いを固視ずれ量としてデータ化し、この固視ずれ量を、眼鏡レンズにおけるアライニングプリズムへと変換することが可能となる。その結果、被検者の固視ずれを効果的に矯正可能な眼鏡レンズを提供することが可能となる。
また、表示手段5aの具体的な構成としては、公知の3Dディスプレイを用いても構わない。そのため、本実施形態におけるプリズム処方値取得システム1を導入する際、新たな装置を購入する必要がなくなる。その結果、プリズム処方値取得システム1にかかる費用を抑えることが可能となる。
また、本実施形態においては、固視ずれ量のアライニングプリズムへの変換作業は、ソフトウェアによって案内および監視される。ソフトウェアの使用により、上記の新規に開発された試験図の呈示、被検者の測定へのインタラクティブな参加、および検査員の利用案内が可能になる。
更に、好適な実施形態により、被検者は電子装置(例えばタブレットPC)を用いて自分でインタラクティブに試験図の構成要素、例えばノニウスラインを主観的に正確にセンタリングされるように移動させる(例えば垂直線または水平線に沿って合わせることができる。このテスト線のセンタリングは何回も繰り返される。試験図の構成要素のインタラクティブな移動は、測定手順を著しく迅速なものとする。
更に、試験図の構成要素のインタラクティブな移動により検査員とのコミュニケーションにおける誤りの可能性を減らすことができ、それによりあまり熟練していない検査員の場合でも誤った結果を大幅に避けることができる。
一実施形態において制御信号はパラメータを連続的に変化させるように設計されている。これにより眼の固視線の向き(固視ずれ)の特に正確な測定が可能になる。なぜならば被検者が試験図の構成要素、例えば位置を連続的に変えることにより、所定の基準が満たされる点、例えば両ノニウスラインが互いに上下にある点を正確に規定できるからである。このやり方はプロジェクターまたはカメラの焦点を手動で調節することと、ある種、類似した手法である。また、制御信号は、第1のステップ幅と第2のステップ幅の各々に関しパラメータを変化させるように設計されている。種々異なるステップ幅により、所定の基準が満たされるパラメータの値が最初に大まかに見出される。次に両ステップ幅のうちより細かいステップ幅によって所望のパラメータ値がより正確に見出される。
以上の通り、本実施形態によれば、眼鏡レンズにて固視ずれを矯正するのに必要なアライニングプリズムを簡素、迅速および精度良く取得することができる。
<10.変形例等>
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、以下の変形例を適宜組み合わせてももちろん構わない。
(固視ずれ量が所定角度以下か否かを判定する判定部8)
上記の実施形態では、被検者の固視ずれ量が所定角度(例えば4分)以下である場合に、演算部7によって上記の演算を行うのが好ましいことを述べた。これに関連して、本実施形態に対し、固視ずれ量が所定角度以下か否かを判定する判定部8を別途設けても構わない。例えば、固視ずれ量が4分以下であれば、演算部7によって上記の演算を行うように制御手段に対して判定部8が指示を送る。一方、固視ずれ量が4分を超えている場合、[実施の形態2]で説明するエキスパートシステムと称されるシステムを用いて、アライニングプリズムを求める。こうすることにより、固視ずれ量が所定角度以下という条件にとらわれることなく、精度良くアライニングプリズムを取得することが可能となる。詳細については、後の[実施の形態2]で述べる。
(各部構成の設置場所)
上記の実施形態では、発注側コンピュータ2および受注側コンピュータ3のいずれかに、上記の各部構成が設置されている場合について述べた。その一方、上記の各部構成は、必ずしも発注側コンピュータ2および受注側コンピュータ3のいずれかに存在しなくても構わない。一例を挙げると、表示手段5aおよび入力手段5dは、眼鏡店に設置された発注側コンピュータ2になくとも構わない。例えば、眼科の病院に表示手段5aおよび入力手段5dを配置し、その結果(固視ずれ量)を眼鏡店に送信し、眼鏡店に設置された端末(発注側コンピュータ2)から、演算部7を有する受注側コンピュータ3へと、固視ずれ量を送信しても構わない。ただ、顧客となる被検者が眼鏡店にて視標位置の操作を行い、その結果を直接、発注側コンピュータ2へと送信する方が、手間がかからずに好ましい。
[実施の形態2]
以下、実施の形態1以外の例について述べる。なお、以下の実施の形態に対し、上記の変形例を適宜採用しても構わない。また、以下の実施の形態ではプリズム処方値取得システム1に関する例について述べるが、もちろん、プリズム処方値取得方法、プリズム処方値取得装置およびプリズム処方値取得プログラムにも応用可能である。なお、実施の形態1と重複する内容については、記載を省略する。
<エキスパートシステム>
本実施形態では、実施の形態1の内容に対し、変形例で述べた「判定部8」を活用する。そして、固視ずれ量が所定角度を超えている場合、エキスパートシステムと称されるシステムを用いて、アライニングプリズムを求める。以下、実施の形態1のプリズム処方値取得方法を基に説明する。なお、エキスパートシステムを用いることにより、約10分の所要時間で、アライニングプリズムを求めることが可能になる。
まず、(S4 固視ずれ量取得ステップ)までは、実施の形態1に記載の通りとするが、その先が異なる。この点については、図13および図14に記載されている。
(S7 判定ステップ)
本ステップにおいては、固視ずれ量が所定角度以下か否かを判定する。固視ずれ量が4分以下であれば、演算部7によって上記の演算を行うように制御手段に対して判定部8が指示を送る。その場合は、実施の形態1に記載のように(S5 送信ステップ)に進む。一方、固視ずれ量が4分を超えている場合、エキスパートシステムと称されるシステムを用いて、アライニングプリズムを求める。
(S8 エキスパートシステムによるアライニングプリズム取得ステップ)
エキスパートシステムの概要は、以下の通りである。
ソフトウェアにより、実施の形態1で挙げた試験図の表示、被検者による双方向での利用および検査員へのユーザガイドが可能となる。この測定方法は、ソフトウェアを用いたエキスパートシステムによって検査員にガイドされモニタリングされるようになっている。
このような全体システムは、上述した被検者の眼の固視線の向きを測定するための装置の他に第2の発注側コンピュータ2’を含んでいても構わない。この場合、検査員が第2の発注側コンピュータ2’を操作して、測定の全手順を制御するようになっている。例えば、ソフトウェアにより、測定の都度、プリズム値がいくらのトライアルレンズをトライアルフレームに設置すべきかが示される。つまり、エキスパートシステムを扱うからといってトライアルレンズやトライアルフレームを一新する必要はなく、通常使用されるトライアルレンズやトライアルフレームを引き続き使用できる。
エキスパートシステムにおいては、最初に、検眼における標準的検査として、遠距離および近距縦の主観的な屈折測定が終了している必要がある。
その他検限における標準的検査視機能が測定され、視力は両目とも0.63(20/32)以上とする。
エキスパートシステムを用いるにあたり、本実施形態、および、従来の方法に対して改良を加えたランダムドットステレオカード(例えば図11(a)および(b))を用いた検査結果が陽性で両眼視能力を有している被検者を対象とする。すなわち、以下の例において、被検者はカードに隠れたテストパターンを立体的に認識できる。これによって、高い確実性をもって、被検者が通常の両眼視能力を有し、斜視に罹患していないことを想定かつ確認することが可能となる。
以上を踏まえた上で、本ステップにおいては、以下のようなエキスパートシステムを用いる。以下、先に挙げた図6、内方固視ずれを測定する際のステップの概略フローチャートである図7Aおよび図7Bを用いて説明する。
2回にわたるセンタリング(固視ずれ量の測定)における1回目の作業(部分ステップ71)の後で、検査員は測定の結果として、それぞれの眼に対し、2回目の作業において用いるトライアルレンズに備えさせるプリズム値と基底方向上または下を、検査員用装置42上の表示または音声出力によって指示される(部分ステップ72)。検査員はこのプリズム値(以降、補正プリズムと言う。)、例えば右眼に対して基底方向で上0.5Δをトライアルレンズに採用し、このプリズムレンズをトライアルフレームに設置する。それから次の測定作業が続き、再びプリズム値が指示される。これはエキスパートシステムの指定に従い、補正プリズムの大きさと基底方向が求められ、次のステップが要求されるまで繰り返される。
追加的に通常検眼に用いられる次の構成要素を使用することが合理的である。すなわちトライアルフレーム、球面屈折力および乱視屈折力を有する検眼用トライアルレンズセット、そして若干の検眼用のトライアルレンズであるところのプリズムレンズである。なお、プリズムディオプター(単位はΔ):0.5/1.0/2.0/3.0/4.0/5.0/6.0のトライアルレンズを用意する。
この方法の第2のステップ62では、遠距離呈示において補正プリズムが水平方向で決定される。このために試験図55が水平固視ずれの測定に対して使用され(図5(b))、プリズム値によってプリズム基底方向内またはプリズム基底外方で補正される。
部分ステップ73では水平固視ずれに対する試験図(図5(b))がスクリーン43を有するコンピュータ上で遠距離呈示される。この試験図が被検者に水平方向で互いにずれて見える場合は、図6における第1のステップ61に関連して説明したように、試験図は被検者が保持する被検者用装置41によって調節される。水平線のセンタリングまたは調節の作業は、上記の基準が満たされた(すなわち垂直線が互いに上下に揃う)ことを示す被検者の信号をもって完了する。この信号により同時に特定のパラメータ、すなわち線51,52のずれが選択される。このセンタリングの作業は2回行われ、それぞれのセンタリング作業に対して試験図がモニタの右側または左側に現れる。試験図が第1のセンタリング作業で右側に現れたら、第2のセンタリングでは左側に現れ、またその逆である。当該測定は、本明細書においては測定Aに該当する。
なお、5−B−a)演算部7にて説明したように、固視ずれ測定自体の信頼性を確認すべく、同一条件での測定を2回行い、各測定における固視ずれ量の間の標準偏差や遠距離呈示と近距離呈示との間の固視ずれ量の値の差が規定値以内か否かを確認するのが好ましい。なお、その際、5−A−a1)表示手段5aにて説明したように、複数回測定される場合、背景画像の前面において、測定毎に試験図の場所を変更するのが好ましい。この2回測定は、上記で言うところの1回目の作業に含まれる。
2回のセンタリングの1回目の作業の後で検査員は測定の結果としてプリズム値と、それぞれの眼に対する基底方向上または下が、検査員用装置42上の表示または音声出力によって指示される(部分ステップ76)。検査員はこのプリズム値、例えば基底方向上1Δを測定用眼鏡に用いる(部分ステップ77)。同様のことは外方固視ずれがある場合も行われる(部分ステップ74,75)。それから次の測定作業(本明細書においては測定Bに該当)が続き、再びプリズム値が指示される(部分ステップ78)。その後で、新しく求めたプリズム値が従前のプリズム値に対してどのように変化しているか、それに基づいてこの方法をどのように続行すべきかチェックされる(部分ステップ79)。
図7Bに示すそれ以降の部分ステップは、例えば部分ステップ77でプリズム値1Δのプリズムを用いた後でもなお内方固視ずれが存在すると別の方法を指示する(部分ステップ80)。このときプリズム値2Δの補正プリズムを有するトライアルレンズを配置したトライアルフレームを用いる(部分ステップ81)。被検者は再び試験図を調節する(部分ステップ82)。固視ずれがゼロ、つまり被検者が試験図を調節しなかった場合であれば、プリズム値が見出される(部分ステップ83)。さらに内方固視ずれが存在すれば、さらに強いプリズム値で継続される(部分ステップ84)。外方固視ずれが存在する場合は、結果として生じるプリズム値は最後の2つのプリズム値の平均値である。
この方法の第3のステップ63および第4のステップ64では、垂直方向もしくは水平方向の補正プリズムが近距離呈示で決定される。
この場合、遠距離呈示(ステップ61および62)と同じステップは同じ試験図で実行されるが、このときは被検者によって遠隔操作に用いられる被検者用装置41は近距離視で呈示される。
上記の演算により、遠距離呈示に対応したアライニングプリズム(垂直および水平)が得られ、それとは別に、近距離呈示に対応したアライニングプリズム(垂直および水平)が得られる。つまり、4つのアライニングプリズムが得られる。そのため、最後に遠距離の結果と近距離の結果を評価し、ハーゼの方法を用いた実際の経験と、マレットおよびシーディーの方法の研究結果に基づいて得られた原理に従って重みづけが行われる。その結果として処方すべきプリズム値(垂直および水平)が得られる。このプリズム値はコード化して示され、眼鏡レンズ製造者の通常の注文システムを通して伝えることができる(ステップ65)。もちろん、5−B−a)演算部7にて示した手法で、4つのアライニングプリズムを取得しても構わないし、その方が好ましい。
補正プリズムによる修正は従来の方法では若干の事例において非常に大きいプリズム値に至り、修正眼鏡で非常に厚いレンズが必要とされるか、または外眼筋の手術が必要となる。それゆえこの方法は、プリズム値の検眼修正を最大6Δに制限する。これによりなおも試験図のセンタリングが達成されなければ、これをソフトウェアが認識して、被検者は所定の修正範囲内になく、専門家による診察が必要であることを指示する。
また、好適な実施形態により、試験図を呈示するための測定装置とソフトウェアに基づく評価との組み合わせを用いて修正するプリズム強度を決定する。検査員はソフトウェアによって、どのように検査手順を形成すべきか情報を与えられ、被検者は装置入力によって応答する。最後に結果がコード化されて、眼鏡レンズの製造業者が眼鏡レンズに応用できる。
<さらに好適なエキスパートシステム>
前記の検眼用トライアルフレームに反映されたプリズムによって2本の垂直方向の線が左右にずれが無く真っ直ぐに上下に並んで見える様になった時に、検眼用のトライアルフレームに反映されているプリズムが、遠距離呈示時および近距離呈示時の垂直方向および水平方向の固視ずれの補正プリズムの値として求められる。しかし、これは実物のトライアルレンズをトライアルフレームに装着した測定用眼鏡を被検者が装用することにより固視ずれが解消された際のプリズム値である。そのため、用意されたトライアルレンズのプリズム値がどれだけ細かいステップで用意して行ったかによって、求められる補正プリズムの値は変わってくる。通常、検眼用のプリズムレンズは0.25Δのステップで作成されているため、0.25Δよりも細かい値での補正プリズムを求めることはできない。
例えば内方FDが存在する場合、誤差を中和するために基底方向外の補正プリズムが与えられる。このシステムは被検者の第1の調整に基づき、この例の第1のステップでは1Δ基底方向外の補正プリズムを測定用眼鏡に用いるべきであるというメッセージを検査員に与える。これは例えば図10に示されている。図10の左側の試験図は、第1の検査ステップの最後に被検者によるノニウスラインの調整を示す。図10の右側の試験図は、第2の検査ステップの最後における、プリズムを測定用眼鏡に入れた後の被検者によるノニウスラインの調整を示す。これは垂直偏差における状況と比較可能である。
次に、補正プリズムが反映されたトライアルレンズが設置されたトライアルフレームを、被検者は装用する。その上で、再度主観的に調整された線のずれをFD値として測定する。次にFD値の変化に応じてエキスパートシステムは次のステップに関する決定を下す。ごくわずかなケースでのみ、おおまかなプリズムステップ0.5Δまたは1ΔグレーディングによってFDが正確にゼロに補正されることが期待される。ただ、これよりも頻繁に起こるのは所定のプリズムステップによる過剰修正であり、これはFD方向が反転することによって示される。この正負符号の交換はシーディーによる固視ずれ曲線の決定におけるのと比較可能に、センタリングするプリズムを平均値として算定できるようにするために用いられる。
上記の様な固視ずれを補正するための補正プリズムを求める方法の他に、次のような方法も可能である。
ソフトウェアのエキスパートシステムは、トライアルフレームに装着するプリズムの量を1.00Δステップの粗いステップで検査員に指示を出すようにする。そして、ソフトウェアによって指示されたプリズムによって、固視ずれ用のテストパターンの2本の線の位置合わせの方向が逆転した時の前と後に、前後の2本の線の位置合わせ量から求められるそれぞれの固視ずれ量と、前後の検眼用トライアルフレームに装着した二つのプリズムの値とから比例配分することによって固視ずれがゼロとなる補正プリズムの値を求めるのが好ましい。
比例配分の仕方を示す式は、以下の通りである。
AP=P2−(P2−P1)*FD2/(FD2−FD1) ・・・(式10)
APは、アライニングプリズムにおけるプリズム量(単位:Δ)を指す。
FD1は、固視ずれの方向が逆転する直前の固視ずれ量(単位:角度)を指す。
FD2は、固視ずれの方向が逆転した直後の固視ずれ量を指す。
なお、FD1とFD2の符号は、固視ずれの方向が外方の時に正とし、内方の時に負とする。
P1は、固視ずれの方向が逆転する直前のプリズム量を指す。
P2は、固視ずれの方向が逆転した直後のプリズム量を指す。
例えば、左右眼のどちらかに1.00Δ基底内方のプリズムを装着して固視ずれを測定した時に、固視ずれ量が0.7分外方であり、次に装着していたプリズムを2.00Δ基底内方に変更して測定した時の固視ずれ量が0.4分内方になり、固視ずれの方向が逆転した時、これらのプリズムと固視ずれ量の値からアライニングプリズムを、(式10)を用いて次のように求めることができる。
AP=2.00+(2.00−1.00)*(−0.40)/((−0.4)−0.70)=1.64 ・・・(式11)
このようにして、0.01Δの刻みでアライニングプリズムを求めることができる。
この方法では、アライニングプリズムを求めるまでの過程で使用するプリズムを有するトライアルレンズは1.00Δの刻みで使用する。そのため、アライニングプリズムが求まるまでのトライアルレンズの交換の回数が減少するため、測定時間が短縮できる。また、この様にして求められた補正プリズムの量は、比例配分されて求められる。そのため、1.00Δの刻みであっても、0.01Δの刻みでアライニングプリズムを求めることができる。
ところで、上記の実施形態ならば、本発明の効果にて述べたように、アライニングプリズムを精度良く求めることが可能である。ただ、その後、各々の眼鏡店が各々の眼鏡レンズの製造業者に眼鏡レンズの作製を依頼することになると考えられる。そうなると、いかに眼鏡店が正確にアライニングプリズムを求めたとしても、眼鏡レンズの製造業者によってはアライニングプリズムを正確に反映できておらず品質が低い眼鏡レンズが出来上がる可能性がある。そうなると被検者であった眼鏡レンズの購入者は、折角、固視ずれを補正するためのアライニングプリズムを正確に求めたにもかかわらず、固視ずれが相変わらず解消されない眼鏡レンズを購入する羽目になる。
それゆえ、上記の実施形態を用いてアライニングプリズムを精度良く求めた結果として、コード化された値(例えばバーコードの形式)が出力される。そこに含まれている情報は、対応する鍵がなければ利用できない。つまり、固視ずれを補正する補正プリズムを上記の実施形態を用いて眼鏡店が求めたとしても、補正プリズムはコード化されており、任意の眼鏡レンズの製造者では判別できないようになっている。こうすることにより、予め資格があると認定された眼鏡レンズの製造業者、すなわち可能な限り最高の固視ずれ補正能力を有し且つレンズ技術を備えた眼鏡レンズの製造業者にのみ注文できるようにしてもよい。
上記の構成やソフトウェアに基づく方法を組み合わせてエキスパートシステムに統合することも新規な事項である。これは、現在利用可能な電子装置を用いることにより、初めて実現されたものである。特色としては、既存の方法を統合および改良して、従来ある短所を回避するようにした点にある。それに加え、実用されている構成へと統合でき、かつ、市場性のある価格で提供でき、かつ、可能な限り簡単に取り扱えるエキスパートシステムを提供することへの期待が高まっている。
眼軸の誤差(固視ずれ)の測定および補正と関連したエキスパートシステムを使用することにより、検査員と被検者との直接的かつインタラクティブなやりとりが可能となる。これは、上記の実施形態で説明した通りである。検査員と被検者とのやりとりがなく、完全に自動化されたシステムだと、不自然な視刺激を生み出す可能性がある。それにより、信頼性が低い結果を生じることも考えられる。一方、エキスパートシステムには、この短所がない。なぜなら、本実施形態は、従来におけるアライニングプリズムを決定するための構成と同様の形で屋内に設置することが可能である上に、従来の測定用眼鏡を利用することも可能となるからである。
なお、本実施形態においては、固視ずれ量をアライニングプリズムに変換する実施の形態1に対し、判定部8を設けつつエキスパートシステムを組み合わせた例について述べている。その一方、エキスパートシステムは、実施の形態1に組み合わせるのではなく、単独で成立しうる発明でもある。その場合の課題としては、以下の通りである。
本発明者は、非特許文献1から、視標と被検者との間の距離に基づいて固視ずれ量を単純にΔ(すなわちプリズムディオプター)に換算したからといって、最終的に眼鏡レンズに備わるべきアライニングプリズムにならないという知見を得た。このことは、「視標と被検者との間の距離に基づいて固視ずれ量から換算したプリズム量」と「アライニングプリズム」との間の関係が個人差によって大きく変化する以上、演算という手段では、固視ずれ量から正確なアライニングプリズムを算出することができないことにつながる。そうなると、結局のところ、固視ずれ量を求めたとしてもそれを活かしようがなく、従来の手法に倣い、固視ずれが解消するプリズム量を見出すためにトライアルレンズを使用してアライニングプリズムを地道に求める他ない。
ただ、プリズム度数が0.25Δごとにトライアルレンズを用意した場合、例えば0.35Δのプリズム処方値が被検者には必要だった場合、被検者に合った眼鏡レンズを提供できず、被検者の固視ずれを眼鏡レンズにより矯正することができない。
そこで本実施形態は、眼鏡レンズにて固視ずれを矯正するのに必要なプリズム処方値を精度良く取得することを、主たる目的とする。
それを具体化した構成は、以下のようになる。なお、以下の構成に対して、本明細書で述べた各構成を組み合わせたり変形したりしても、もちろん構わない。
<エキスパートシステム>
被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量からプリズム処方値を取得する方法であって、
被検者に対して固視ずれ量の測定Aを行った後、当該固視ずれ量に応じた所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用して固視ずれ量の測定Bを再度行い、以下の工程1ないし3のいずれかを行う、プリズム処方値取得方法。
(工程1)測定Bにおいて固視ずれが知覚されなくなった場合は、測定用眼鏡のプリズム量をプリズム処方値とする。
(工程2)測定Bにおいても被検者が未だに固視ずれを知覚し、かつ、測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した場合は、以下の(i)〜(ii)のいずれかを行う。
(i)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用していない場合は、測定Bでの測定用眼鏡のプリズム量の1/2をプリズム処方値とする。
(ii)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用している場合は、測定Aでの測定用眼鏡のプリズム量と測定Bでの測定用眼鏡のプリズム量との平均値をプリズム処方値とする 。
なお、(ii)において平均値をとるところ、(i)においては、測定Aでのプリズム量をゼロとみなして計算しているため、測定Bでの測定用眼鏡のプリズム量の1/2をプリズム処方値としている。
(工程3)測定Bにおいても被検者が未だに固視ずれを知覚し、かつ、測定Bにおいて内方固視ずれのまま、または、外方固視ずれのままの場合は、所定のプリズム量よりもプリズムを強くした測定用眼鏡を被検者が装用して再度固視ずれ量を測定し、(工程1)または(工程2)の状態となるまで測定用眼鏡のプリズムを強くしつつ固視ずれ量の測定を繰り返す。
<さらに好適なエキスパートシステム>
被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量からプリズム処方値を取得する方法であって、
被検者に対して固視ずれ量の測定Aを行った後、当該固視ずれ量に応じた所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用して固視ずれ量の測定Bを再度行い、以下の工程1ないし3のいずれかを行う、プリズム処方値取得方法。
(工程1)測定Bにおいて固視ずれが知覚されなくなった場合は、測定用眼鏡のプリズム量をプリズム処方値とする。
(工程2)測定Bにおいても被検者が未だに固視ずれを知覚し、かつ、測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した場合は、以下の(iii)〜(iv)のいずれかを行う。
(iii)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用していない場合は、以下の式によってプリズム処方値を得る。
AP=P2−P2*FD2/(FD2−FD1)
(iv)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用している場合は、以下の式によってプリズム処方値を得る。
AP=P2−(P2−P1)*FD2/(FD2−FD1)
APは、アライニングプリズムにおけるプリズム量(単位:Δ)を指す。
FD1とFD2は測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した時の移行前後の固視ずれ量である。
なお、FD1とFD2の符号は、固視ずれの方向が外方の時に正とし、内方の時に負とする。
P1とP2は測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した時の移行前後の装用したプリズム量である。
なお、(iv)においては上記の式に値を入れるところ、(iii)においては、測定Aでのプリズム量であるP1をゼロとみなして計算している。
(工程3)測定Bにおいても被検者が未だに固視ずれを知覚し、かつ、測定Bにおいて内方固視ずれのまま、または、外方固視ずれのままの場合は、所定のプリズム量よりもプリズムを強くした測定用眼鏡を被検者が装用して再度固視ずれ量を測定し、(工程1)または(工程2)の状態となるまで測定用眼鏡のプリズムを強くしつつ固視ずれ量の測定を繰り返す。
本実施形態ならば、眼鏡レンズにて固視ずれを矯正するのに必要なプリズム処方値を精度良く取得することが可能となる。
なお、エキスパートシステムは、固視ずれ量に基づいてアライニングプリズムを得るための手法である。
[実施の形態3]
上記の実施形態においては、「固視ずれ量」に基づいてアライニングプリズムを取得する例について述べた。本実施形態においては、固視ずれ量に基づいてアライニングプリズムを取得するのではなく、固視ずれ量の測定を行うまでもなくダイレクトに「アライニングプリズム」を簡便に求める手法について述べる。なお、実施の形態1および2と重複する内容については、記載を省略する。
本実施形態における課題は、以下の通りである。
従来だと、固視ずれを矯正するためには、プリズムを有するトライアルレンズを使用してアライニングプリズムを地道に求める他ない。
トライアルレンズを用いてアライニングプリズムを求める場合、プリズム(例えば0.25Δおき)を有する複数のトライアルレンズを被検者に順に装用させ、左右眼に対して別々に表示される視標がずれの無い揃った位置に見える様になった時のトライアルレンズのプリズム処方値を採用するという手法しか知られていない。この手法だと、各眼鏡店において、種々のトライアルレンズを用意しなければならない。もちろん、被検者に対して種々のトライアルレンズを装用させなければならず手間がかかる。しかも、プリズム度数が0.25Δごとにトライアルレンズを用意した場合、例えば0.35Δのプリズム処方値が被検者には必要だった場合、被検者に合った眼鏡レンズを提供できず、被検者の固視ずれを眼鏡レンズにより矯正することができない。
そこで本発明は、眼鏡レンズにて固視ずれを矯正するのに必要なプリズム処方値(アライニングプリズム)を簡素、迅速および精度良く取得することを、主たる目的とする。
本実施形態における表示手段5aは、視標(ノニウスライン)および背景画像を含む左眼用画像、および、同じく視標(ノニウスライン)および背景画像を含む右眼用画像が表示されるようにする機能を有する。別の言い方をすると、本実施形態における表示手段5aは、左眼に対しては左眼用の画像を呈示可能とし、且つ、右眼に対しては右眼用の画像を呈示可能とする部分である。ただし、左右眼に呈示する視標(ノニウスライン)は、それぞれ片方の眼にのみ呈示する。本実施形態においては、水平の目盛線のある水平線の上側に呈示されている縦の線である視標(ノニウスライン)は右眼のみに呈示し、水平の目盛線のある水平線の下側に呈示されている縦の線である視標(ノニウスライン)は左眼のみに呈示する。一例を挙げると、風景や新聞記事などの背景となる画像に対して目盛線が加えられたものを、背景画像とする。この背景画像は、視標(ノニウスライン)を除いて同内容の状態で、各眼に呈示される。右眼用の視標(ノニウスライン)は右眼のみに呈示され、左眼用の視標(ノニウスライン)は左眼のみに呈示される。
なお、上記の場合、固視用視標は設けていない。また、左眼用の画像と右眼用の画像を各々移動可能としている。この構成により、被検者がプリズムレンズを装用した状態と同じ場面を再現できる。つまり、被検者がプリズムレンズを装用すると、例えば右眼においては右眼で知覚される視野全体が内方または外方にシフトする。これと同じ状況を、表示手段5a上で再現するのである。そのため、表示手段5aには少なくとも右眼用の画像及び左眼用の画像が表示され、各々の画像には視標に加え背景画像が含まれており、当該視標が互いにずれていないときには当該背景画像も互いにずれないように各々の背景画像は配置されている。
なお、右眼用の画像および左眼用の画像が表示され、各々の画像には視標(ノニウスライン)に加え背景画像が含まれている。本実施形態における「背景画像」は、その名の通り、右眼用の画像の背景を司る画像のことである。背景画像に表示されるものは図形でも文字でも構わない。
もちろん、本実施形態は背景画像を含まずに視標(ノニウスライン)のみを有する画像であっても適用可能であるが、特許文献1に記載の内容を鑑みると、右眼用の画像および左眼用の画像には、各々背景画像を有するのが好ましい。本実施形態においては、その場合について例示する。
本実施形態においては、表示手段5aの表示から得られる結果に基づき、固視ずれ量を求める必要なく、最終的に、眼鏡レンズに反映されるアライニングプリズムが取得されることになる。概要は以下の通りである。まず、表示手段5aの表示されることになる2つの状態において、ずれ方向を特定した上で視標の位置のずれ量を取得する。2つの状態とは以下の通りである。
(状態1)
固視ずれを有する被検者が、3D眼鏡5bを介し、表示手段5aに表示された右眼用の画像を右眼にて見、且つ、表示手段5aに表示された左眼用の画像を左眼にて見た際に被検者にとっては当該画像が互いにずれて知覚される一方、表示手段5a上では当該右眼用の画像と当該左眼用の画像とは互いにずれていない状態。
(状態2)
状態1と同じ被検者が、3D眼鏡5bを介し、表示手段5aに表示された右眼用の画像を右眼にて見、且つ、表示手段5aに表示された左眼用の画像を左眼にて見た際に被検者にとっては当該画像が互いにずれていないように知覚される一方、表示手段5a上では当該右眼用の画像と当該左眼用の画像とは互いにずれている状態。
つまり、状態1だと、両眼視すると、表示手段5a上で画像中の当該上下のノニウスラインが天地方向に揃っており、視標がずれていない。また、共通した内容となっている画像であって、かつ左右眼に別々に呈示される背景画像も、表示手段5a上のまったく同じ位置に表示されている。ところが、左右眼にて固視ずれを有する被検者が、3D眼鏡5bを介して表示手段5aを見ると、被検者にとっては当該上下のノニウスラインだけがずれて見えている。ノニウスライン以外の背景画像は脳内の融像処理によってずれの無い一つの画像として知覚される。
そして、状態1に対し状態2では逆に、両眼視すると、被検者にとっては当該上下のノニウスラインが天地方向に揃って見えている。ところが、表示手段5a上では、当該上下のノニウスラインが水平方向にずれて表示されている。また、左右眼に別々に表示される背景画像である一方、両背景画像には同じ内容が描かれている。そして、表示手段5a上では、左眼と右眼に呈示される背景画像の位置は、互いにずれた位置に表示されている。この場合、水平方向が「ずれ方向」として特定される。
つまり、状態1と状態2との間の、表示手段5a上での視標(画像)のずれ量およびずれ方向が、アライニングプリズムおよびその方向に該当する。そして、固視ずれを矯正可能なアライニングプリズム(プリズム処方値)を有する眼鏡レンズを被検者に提供することができる。
なお、本実施形態においては、入力手段5dにより、表示手段5aに表示された右眼用の視標(ノニウスライン)および背景画像、ならびに、左眼用の視標(ノニウスライン)および背景画像を、互いに同程度に近接または離反させる。別の言い方をすると、表示手段5aに表示された右眼用の画像全体および左眼用の画像全体を相対的に移動させる。本実施形態の場合、この相対移動量がずれ量に相当する。もちろん、図2の表示手段5aに表示された目盛りの半値(例えば上の視標が移動した距離)をずれ量として扱っても構わない。なお、本実施形態では「固視ずれ量」ではなく「アライニングプリズム」を取得する必要がある関係上、固視用視標は存在せず、右眼用の画像全体、そして左眼用の画像全体が動く。そのため、目盛りを各眼用画像の中に設けた場合も、各眼用画像を動かすと目盛りもつられて動く。
また、本実施形態においては、入力手段5dにより、右眼用の視標(ノニウスライン)および背景画像を含む右眼用画像、および、左眼用の視標(ノニウスライン)および背景画像を含む左眼用画像を、互いに同程度に近接または離反させる。視標がずれているか否かの確認の際に、指標とともに背景画像も相対移動させることにより、ずれ量を極めて精度よく取得することが可能となる。その理由は以下の通りである。
視標(ノニウスライン)がずれていないと、左眼用の背景画像と右眼用の背景画像もずれていないことにな
る。本実施形態の場合だと、上下の視標が天地方向で揃うと、被検者の視界には背景画像
が極めて鮮明に映る。仮に、上下の視標が天地方向で揃っているか否かを被検者がはっき
りと判別できない場合でも、背景画像が鮮明に見えたときには上下の視標が揃っていると
みなしても構わない。つまり、左眼用の背景画像と右眼用の背景画像は、視標がずれてい
るか否かの判別を補助する。本実施形態においては、状態1がずれ量の基準となるため、
状態1を正確に把握する必要がある。そこで、背景画像を採用することにより、視標がズ
レていない状況を被検者が確実に判別可能となり、状態1を精度良く把握することが可能
になり、ひいては精度良くずれ量を取得できる。そして、このずれ量を、被検者と表示手段5aとの間の距離に基づいて演算部7にてアライニングプリズムに換算すればよい。
なお、プリズムを備えたトライアルレンズを使用した上で、当該トライアルレンズが有するプリズムに対してずれ量に基づいて修正を加えることにより、アライニングプリズムを求める方法もある。トライアルレンズにより、被検者が必要とするアライニングプリズムの大体の範囲を把握しておき、その後で、上記の手法によりアライニングプリズムを精度良く求めるという手法である。ただ、本実施形態の特徴はトライアルレンズを使用せずともアライニングプリズムが取得できることであるため、トライアルレンズを使用しないのが好ましい。
また、表示手段5aに表示された視標を良好に視認するためには、表示手段5a以外のものが被検者の視界に入らないようにすることが効果的である。そこで、被検者の視界に表示手段5aが入る際には、表示手段5aが相対的に明るく見えるような構成を、プリズム処方値取得システムに設けるのも好ましい。具体的に言うと、実施の形態1におけるプリズム処方値取得システムに対し、被検者に対して表示手段5aを相対的に明るく表示するための明暗形成部を新たに設けるのも好ましい。
ここで言う明暗形成部とは、被検者の視界において画像(ひいては視標)が際立って明るく認識できるようにするための部分である。以下、明暗形成部の具体例を示す。
まず、明暗形成部が可視光遮蔽機能を有する3D眼鏡5bである場合が挙げられる。この3D眼鏡5bとしてはアクティブシャッター機能を有するサングラスが挙げられる。被検者が当該サングラスを装用してプリズム処方値取得システムを活用すれば、被検者の視界には、表示手段5aしか入らなくなる。なお、表示手段5aのバックライトの明るさを従来以上に上げておくのも効果的である。
そうなると、被検者にとっては表示手段5aがそれ以外の部分に比べて相対的に明るく視認され、被検者の視界には表示手段5aしか入らなくなる。その結果、被検者は、表示手段5aに表示された視標を良好に視認することが可能となり、精度良くずれ量を取得し、精度良くプリズム処方値を取得することが可能となる。また、表示手段5a以外のものが被検者の視界に入ると、遠用視の際のプリズム処方値に大きな影響を与えることが本発明者の調べにより明らかとなっている。そのため、遠用視の際のプリズム処方値を取得する際に、上記の手法が極めて効果的となる。
本実施形態により、表示手段5a上での画像のずれ量を把握することにより、アライニングプリズムを客観的に求めることが可能となる。すなわち、トライアルレンズ無しで、アライニングプリズムを求めることが可能となる。そのため、眼鏡店や被検者にかかる負担を著しく軽減することができる。その結果、眼鏡レンズにて固視ずれを矯正するのに必要なアライニングプリズムを簡素、迅速および精度良く取得することができる。
また、前述の実施の形態1や実施の形態2によって求められたアライニングプリズムによる、被検者の見え方を確認するための手段として、本実施形態の方法を用いても良い。
実施の形態1や実施の形態2で得られたアライニングプリズムの量に応じて、本実施形態3の方法によって、左眼と右眼に呈示する視野全体の画像の呈示位置をずらして呈示して、被検者が固視ずれの無い状態で見えていることを確認することができる。この方法では、プリズムレンズを用いることなく、簡便に被検者の固視ずれがアライニングプリズムによって補正されて固視ずれの無い状態で見えているかどうかが確認できる。
なお、本実施形態をまとめた構成は、以下の通りである。
被検者の左右眼の固視ずれを眼鏡レンズにより矯正するためのプリズム処方値を取得するシステムであって、
被検者が、3D眼鏡を介し、表示手段に表示された右眼用の画像を右眼にて見、
且つ、表示手段に表示された左眼用の画像を左眼にて見た際に被検者にとっては当該画像が互いにずれている一方、表示手段上では当該画像は互いにずれていない状態と、
被検者が、3D眼鏡を介し、表示手段に表示された右眼用の画像を右眼にて見、
且つ、表示手段に表示された左眼用の画像を左眼にて見た際に被検者にとっては当該画像が互いにずれていない一方、表示手段上では当該画像は互いにずれている状態と、
の間の、表示手段上での画像のずれ量及びずれ方向に基づいて演算された、固視ずれを有する被検者のための眼鏡レンズのプリズム処方値を取得するプリズム処方値取得部を有するプリズム処方値取得システム。
但し、前記画像は、視標および背景画像を含む。
なお、実施の形態1および実施の形態2に対して、本実施形態の構成の一部を適用しても構わない。
1……プリズム処方値取得システム
2……発注側コンピュータ
3……受注側コンピュータ
4……通信回線
5……測定部
5a…表示手段
5b…付属装置(3D眼鏡)
5c…選択手段
5d…入力手段
6……送信部
7……演算部
8……判定部

Claims (9)

  1. 被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量(単位:角度)であって、当該固視ずれ量が±4分以内の場合に、当該固視ずれ量に係数を乗じ、当該固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する演算部を有する、プリズム処方値取得システム。
    なお、プリズム処方値は以下の式に基づいて演算する。
    APver=kver*FDver
    APhor=khor*FDhor
    APverは、プリズム処方値における天地方向のプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指し、
    APhorは、プリズム処方値における水平方向のプリズム量を指し、
    FDverは、天地方向における固視ずれ量を指す。
    FDhorは、水平方向における固視ずれ量を指し、
    ただし、各係数khorおよびkverは、以下の条件を満たす。
    0.3≦kver≦0.7
    1.4≦khor≦2.0
  2. 固視ずれ量が±4分以内か否かを判定する判定部を有し、
    前記判定部によって固視ずれ量が±4分以内と判定された場合に、前記演算部によって固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する、請求項1に記載のプリズム処方値取得システム。
  3. 固視ずれ量を測定する測定部と、
    前記測定部にて測定された固視ずれ量を前記演算部に送信する送信部と、
    を備え、
    前記測定部においては、
    固視ずれにおけるずれ方向を設定した上で、右眼のみに呈示される右眼用の視標、左眼のみに呈示される左眼用の視標、および被検者が両眼で固視する固視用視標を表示する表示手段と、
    前記表示手段に表示された右眼用の視標および左眼用の視標のうち少なくともいずれかを移動自在な入力手段と、
    を有し、
    右眼用の視標および左眼用の視標が移動する際には固視用視標は移動せず、被検者が固視用視標を固視し続ける状態において、前記表示手段上での当該両視標のずれ量から固視ずれ量を測定する、請求項1または2に記載のプリズム処方値取得システム。
  4. 前記表示手段に表示される右眼用の視標、左眼のみに呈示される左眼用の視標、および被検者が両眼で固視する固視用視標は、一つの試験図に含まれており、
    前記試験図は、複数の固視用視標を有する背景画像の前面の任意の場所に配置自在である、請求項3に記載のプリズム処方値取得システム。
  5. 前記表示手段は左右の眼に別々な画像を呈示可能な立体画像表示手段であり、右眼用の視標は被検者の右眼に呈示され、左眼用の視標は被検者の左眼に呈示される、請求項3または4に記載のプリズム処方値取得システム。
  6. 被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量(単位:角度)であって、当該固視ずれ量が±4分以内の場合に、当該固視ずれ量に係数を乗じ、当該固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する、プリズム処方値取得方法。
    なお、プリズム処方値は以下の式に基づいて演算する。
    APver=kver*FDver
    APhor=khor*FDhor
    APverは、プリズム処方値における天地方向のプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指し、
    APhorは、プリズム処方値における水平方向のプリズム量を指し、
    FDverは、天地方向における固視ずれ量を指す。
    FDhorは、水平方向における固視ずれ量を指し、
    ただし、各係数khorおよびkverは、以下の条件を満たす。
    0.3≦kver≦0.7
    1.4≦khor≦2.0
  7. 固視ずれ量の測定Aによって得られた固視ずれ量が所定角度以下か否かを判定し、固視ずれ量が所定角度以下と判定された場合には固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換し、固視ずれ量が所定角度を超えたと判定された場合には、当該固視ずれ量に応じた所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用して固視ずれ量の測定Bを再度行い、以下の工程1ないし3のいずれかを行う、請求項6に記載のプリズム処方値取得方法。
    (工程1)測定Bにおいて固視ずれが知覚されなくなった場合は、測定用眼鏡のプリズム量をプリズム処方値とする。
    (工程2)測定Bにおいても被検者が未だに固視ずれを知覚し、かつ、測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した場合は、以下の(i)〜(iv)のいずれかを行う。
    (i)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用していない場合は、測定Bでの測定用眼鏡のプリズム量の1/2をプリズム処方値とする。
    (ii)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用している場合は、測定Aでの測定用眼鏡のプリズム量と測定Bでの測定用眼鏡のプリズム量との平均値をプリズム処方値とする 。
    (iii)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用していない場合は、以下の式によってプリズム処方値を得る。
    AP=P2−P2*FD2/(FD2−FD1)
    (iv)測定Aにおいて、所定のプリズム量を備えた測定用眼鏡を被検者が装用している場合は、以下の式によってプリズム処方値を得る。
    AP=P2−(P2−P1)*FD2/(FD2−FD1)
    APは、プリズム処方値におけるプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指す。
    FD1とFD2は測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した時の移行前後の固視ずれ量である。
    なお、FD1とFD2の符号は、固視ずれの方向が外方の時に正とし、内方の時に負とする。
    P1とP2は測定Bにおいて内方固視ずれから外方固視ずれへ移行、または、外方固視ずれから内方固視ずれへ移行した時の移行前後の装用したプリズム量である。
    (工程3)測定Bにおいても被検者が未だに固視ずれを知覚し、かつ、測定Bにおいて内方固視ずれのまま、または、外方固視ずれのままの場合は、所定のプリズム量よりもプリズムを強くした測定用眼鏡を被検者が装用して再度固視ずれ量を測定し、(工程1)または(工程2)の状態となるまで測定用眼鏡のプリズムを強くしつつ固視ずれ量の測定を繰り返す。
  8. 被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量(単位:角度)であって、当該固視ずれ量が±4分以内の場合に、当該固視ずれ量に係数を乗じ、当該固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する演算部を有する、プリズム処方値取得装置。
    なお、プリズム処方値は以下の式に基づいて演算する。
    APver=kver*FDver
    APhor=khor*FDhor
    APverは、プリズム処方値における天地方向のプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指し、
    APhorは、プリズム処方値における水平方向のプリズム量を指し、
    FDverは、天地方向における固視ずれ量を指す。
    FDhorは、水平方向における固視ずれ量を指し、
    ただし、各係数khorおよびkverは、以下の条件を満たす。
    0.3≦kver≦0.7
    1.4≦khor≦2.0
  9. 被検者が対象を両眼で固視した際の視軸が網膜上の中心窩からずれる度合いを示す固視ずれ量(単位:角度)であって、当該固視ずれ量が±4分以内の場合に、当該固視ずれ量に係数を乗じ、当該固視ずれ量をプリズム処方値へと数値変換する演算部としてコンピュータを機能させる、プリズム処方値取得プログラム。
    なお、プリズム処方値は以下の式に基づいて演算する。
    APver=kver*FDver
    APhor=khor*FDhor
    APverは、プリズム処方値における天地方向のプリズム量(単位:プリズムディオプター)を指し、
    APhorは、プリズム処方値における水平方向のプリズム量を指し、
    FDverは、天地方向における固視ずれ量を指す。
    FDhorは、水平方向における固視ずれ量を指し、
    ただし、各係数khorおよびkverは、以下の条件を満たす。
    0.3≦kver≦0.7
    1.4≦khor≦2.0
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