JP5935123B2 - 高温高圧クロスカップリング法 - Google Patents

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Description

本発明は、高温高圧水−マイクロリアクターシステムを利用した有機化合物の高温高圧クロスカップリング法に関するものであり、更に詳しくは、反応基質が固体の場合、従来の流通式高温高圧水−マイクロリアクターで反応を行う際に、基質をポンプでマイクロリアクターに導入することは導入流路に閉塞等が生じて困難であったが、本発明は、反応基質が固体の場合であっても、該反応基質を、準媒体を少量用いて溶解又は混和させた状態で、又は基質を加熱して溶融させた状態で、ポンプ等でマイクロリアクターに導入するようにして、特に、高温高圧水に、準溶媒として、基質の物性、特に溶解度や極性に応じた有機溶媒を少量加え、高温高圧水の物理的状態を変えて、基質と水を均一に溶解又は混和しやすくすることで、又は基質を加熱して溶解させることで、反応を効率的に起こさせ、短時間に、高収率、高選択率で有機化合物の炭素−炭素結合を形成することを可能とする新しいクロスカップリング技術に関するものである。
本発明は、末端にオレフィンを有する化合物とハロゲン化アルキルあるいはハロゲン化アリールを反応させて炭素−炭素結合を形成すること、末端にエチニル基を有する化合物とハロゲン化アルキルあるいはハロゲン化アリールを反応させて炭素−炭素結合を形成すること、有機ハロゲン化物と有機ホウ素化合物とのクロスカップリングを、短時間で、高収率、高選択率で実施すること、等を可能とする、既存の有用な産業生産技術に代替し得る、実用化可能な新しいクロスカップリング反応に関する新技術を提供するものである。
炭素−炭素結合を生成させるクロスカップリングとして、代表的なものは、2010年にノーベル賞受賞の対象となったヘックカップリング、鈴木カップリング、根岸カップリングを初めとして、園頭カップリング、スティルカップリング、熊田カップリング等があり、基礎化学品合成や医薬品合成に用いられる有用な反応となっている。例えば、ヘック(Heck)反応は、R.F.Heckにより、1972年に見出された反応であり、末端にオレフィンを有する化合物とハロゲン化アルキルあるいはハロゲン化アリールをパラジウム触媒の存在下で反応させることで、炭素−炭素結合を形成させる有用な反応である(非特許文献1参照)。
また、園頭カップリングは、1975年に見出された反応であり、末端にエチニル基を有する化合物とハロゲン化アルキルあるいはハロゲン化アリールをパラジウム触媒と銅(I)触媒、あるいは近年では、パラジウム触媒の存在下のみで反応させることで、炭素−炭素結合を形成させる有用な反応である(非特許文献2参照)。
そして、鈴木カップリングは、有機ハロゲン化物と有機ホウ素化合物とのクロスカップリングをパラジウム触媒存在下で行なう反応であり、1979年に鈴木等によって報告されている(非特許文献3参照)。この反応は、現在では、クロスカップリングによる炭素−炭素結合を合成する有力な手段として広く用いられている。この反応は、収率、選択率ともに良く、温和な条件でも反応するため、取り扱いやすいが、選択性を高く保つために、触媒のパラジウムに別途リガンド試薬を加えたDME等の有機溶媒中で、数時間以上の反応時間を要することが一般である。
近年、環境問題の高まりから、脱有機溶媒を目指した有機合成方法の開発が盛んであり、先行技術として、例えば、マイクロ波を用いて水中で行なう鈴木カップリングも報告されている。しかし、この反応では、水1に対し、THFを2加えた有機溶媒との混合媒体を用いるため、水中といえども、有機溶媒中で行なっているのと何ら変わりがない。
他の先行技術として、有機化合物を微小反応器中で混合し、滞留時間にわたり反応させ、得られたカップリング生成物を反応混合物から単離する有機化合物のカップリング方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この反応は、有機溶媒中で行われることを前提としており、高温高圧水を反応媒体とする反応ではない。
更に、他の先行技術として、パラジウム触媒が架橋型有機高分子化合物に物理的に担持された触媒組成物の共存下、アリールホウ酸化合物とハロゲン化アリール化合物とを配位子及び塩基と共に反応させることを特徴とする炭素−炭素カップリング反応方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、この反応では、実施例に見られるように、トルエン:水=4:1であり、水を含む有機溶媒中で反応を行っているに等しい。
一方、近年の地球環境問題を改善すべく、有機媒体を用いない手法が注目されており、上記園頭カップリングに対しても、同様に、検討が行われている。その手法として、例えば、1)超臨界二酸化炭素を用いる手法、2)イオン性液体を用いる手法、及び3)水を媒体に用いる手法、等が検討されている。
上記1)の超臨界二酸化炭素を用いる手法の場合は、二酸化炭素を反応媒体として利用することで、地球温暖化ガスとしての二酸化炭素の活用方法を見出したこと、及び超臨界流体の性質を用いることで、生成物の分離精製過程が簡便になること、等のメリットがあるが、触媒が超臨界二酸化炭素に難溶性であるため、準溶媒を加えたり、特殊な配位子を用いる必要がある等の難点がある(非特許文献3参照)。
また、上記2)のイオン性液体を用いる手法の場合は、触媒の溶解性等の問題点はないものの、イオン性液体から生成物を分離する過程に難があり、最終的に蒸留やエーテル等による抽出が必要である、等の問題点を抱えている(非特許文献4、5参照)。
また、上記3)の水を媒体に用いる手法の場合は、反応時に化合物を水に溶解させる必要があり、水溶性の有機アミンであるジイソプロピルエチルアミン、ピロリジン等を加えたりする必要があり(非特許文献6参照)、そのため、結局、有機媒体を用いる手法と変わらない。更に、原料等の有機化合物が水に溶解しないため、2相系で行う手法も開発されているが、反応には、24時間以上の長時間が必要であり、実用的ではない(非特許文献7参照)。更に、加熱方法にマイクロ波を用いる手法も提案されているが、スケールアップに対応できないことや、再現性が乏しいこと等、問題点は多く残されている(非特許文献8参照)。
更に、本発明者らは、これまで、水と反応基質が混合してエマルジョン状態や分散状態を含む懸濁液にして作り出した混合場と、上記懸濁液の状態の基質を超臨界水を含む高温高圧水条件下で反応させる反応場との多段プロセスにより、有機化合物の炭素−炭素結合を形成し得ることを見出してきたが、基質が固体の場合は、送液と流路の閉塞の問題があり、連続的かつ長時間、効率的に反応を起こし、炭素−炭素結合を形成させることが困難であった。
特表2004−505895号公報 特開2005−60335号公報
R.F.Heck,J.P.Nolley,Jr.,J.Org.Chem.,37,2320(1972) K.Sonogashira,Y.Tohda,N.Hagihara,Tetrahedron Lett.,4467(1975) N.Miyaura,K.Yamada,A.Suzuki,Tetrahedron Letters,36,3437(1979) S.B.Park,H.Alper,Chem.Commun.,1306(2004) T.Fukuyama,M.Shinmen,S.Nishitani,M.Sato,I.Ryu,Org.Lett.,4,1691(2002) S.Bhattacharya,S.Sengupta,Tetrahedron Lett.,45,8733(2004) B.Liang,M.Dai,J.Chen,Z.Yang,J.Org.Chem.,70,391(2005) N.E.Leadbeater,M.Marco,B.J.Tominack,Org.Lett.,5,3919(2003)
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術における上述のような諸問題を解決し得るとともに、環境低負荷型の、新しい有機化合物の炭素−炭素カップリング方法を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、25℃1気圧で固体の反応基質を、反応媒体である高温高圧水と相溶すべく、該基質の物性、特に溶解度や極性に応じた有機媒体を加えて溶解又は混和させ、又は該基質を加熱して溶融させ、高温高圧水−マイクロリアクターシステムを用いて水と混合した際に、反応に好適ないし最適な状態を迅速に作り出して、該状態で反応させることにより、短時間に、高収率、高選択率で、有機化合物の炭素−炭素結合を形成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、25℃1気圧で固体の基質を、該基質の物性、特に溶解度や極性に応じた有機媒体を加えて溶解又は混和させた状態で、又は該基質を加熱して溶融させた状態で、高温高圧水−マイクロリアクターシステムで、該基質を反応媒体でもある超臨界水等の高温高圧水と相溶させて反応させることにより、短時間に、高収率、高選択率で有機化合物の炭素−炭素結合を形成する方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、マイクロリアクターシステムによる反応方法において、25℃1気圧で固体の反応基質を、溶解又は混和させた状態で、又は加熱して溶融させた状態で、該基質を反応場へ供給することにより有機化合物の炭素−炭素結合を形成させる有機反応方法を提供することを目的とするものである。
更に、本発明は、水に準溶媒を加えた反応系を用いて、超臨界水を用いた高温高圧水−マイクロリアクターシステムで反応を行うことで、効率的に鈴木カップリングに代表される有機化合物の炭素−炭素結合の形成、すなわち、クロスカップリングを行うことを可能とする、これらの有用な既存の反応に代替し得る産業生産技術として実用化可能な有機反応方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)25℃以上500℃以下の温度範囲、0.1MPa以上50MPa以下の圧力範囲の高温高圧条件で、有機化合物の炭素−炭素クロスカップリングを行う方法であって、25℃1気圧で固体の反応基質を、水に前記反応基質を溶解又は混和させる有機溶媒を加えた媒体の準溶媒で溶解又は混和させた状態で、又は基質を加熱して溶融させた状態で、該基質を高温高圧水条件下のマイクロリアクターで反応させることにより有機ハロゲン化物と有機ホウ素化合物とのクロスカップリングにより有機化合物の炭素−炭素結合を形成することを特徴とする有機化合物の反応方法。
(2)固体の反応基質を、マイクロ空間デバイスであるマイクロミキシング手段及びマイクロリアクター手段を用いて、反応基質を混合するミキシング工程と、該基質を反応させる高温高圧反応工程により、有機化合物の炭素−炭素結合を形成する、前記(1)に記載の方法。
(3)25℃1気圧で固体の反応基質を、準溶媒として基質が溶解する有機溶媒で溶解又は混和させた状態で、該基質を高温高圧水条件下のマイクロリアクターで反応させることにより有機化合物の炭素−炭素結合を形成する、前記(1)に記載の方法。
(4)25℃1気圧で固体の反応基質を、25℃以上500℃以下の温度で加熱して溶融させた状態で、該基質を高温高圧水条件下のマイクロリアクターで反応させることにより有機化合物の炭素−炭素結合を形成する、前記(1)に記載の方法。
(5)25℃1気圧で固体の反応基質を、準溶媒として基質が溶解する有機溶媒の混合溶媒に分散、溶解させた状態で、該基質を50℃以上420℃以下、常圧以上50MPa以下の高温高圧水条件下のマイクロリアクターで反応させる、前記(1)から(3)のいずれか一項に記載の方法。
(6)高温高圧水条件が、100℃以上300℃以下、5MPa以上22MPa以下である、前記(5)に記載の方法。
(7)反応時間が、1マイクロ秒以上24時間以内である、前記(1)から(6)のいずれか一項に記載の方法。
)窒素、硫黄、酸素のヘテロ原子を1個又は2個有する芳香族系ヘテロ環を置換基に持つ有機ホウ素化合物と、置換基を有することのあるハロゲン化アルキルあるいはハロゲン化アリールとのクロスカップリングにより、炭素−炭素結合を形成する、前記(1)から()のいずれか一項に記載の方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、マイクロリアクターによる反応場において、25℃1気圧で固体の反応基質を、準溶媒で溶解又は混和させた状態で、又は加熱して溶融させた状態で、該基質を高温高圧水−マイクロリアクターシステムで反応させることにより、有機化合物の炭素−炭素カップリング反応を行うことを特徴とするものである。ここで、25℃1気圧で固体とは、当該温度、圧力条件下で固体であることをいう。
本発明は、上記反応プロセスを、マイクロ混合・反応システムを有するマイクロ空間デバイスで実施することを基本とするものであり、有機化合物の炭素−炭素結合を形成する反応に適用することが可能であり、有機化合物の炭素−炭素結合を形成する反応であれば、有機化合物の種類については、特に制限されるものではない。
本発明の有効性を実証するために、本発明者らは、有機化合物のカップリング反応における反応機構、反応選択性について、種々研究を重ねた結果、高温高圧水−マイクロリアクターシステムによる本発明の方法を用いることで、従来法に比較して、反応時間を大幅に短縮でき、高収率、高選択率で目的物を合成でき、しかも、媒体が、水と、準溶媒である基質が溶解又は混和する有機溶媒を少量用いるのみであるため、生成物の分離が容易にできることを確認した。
本発明では、マイクロ空間デバイスであるマイクロ混合機及びマイクロ反応器を用いて、水溶媒と反応基質を混合するミキシング工程と、基質を高温高圧水−マイクロリアクターシステムで反応させる高温高圧反応工程により、有機化合物の炭素−炭素結合の形成を実行する。上記ミキシング工程では、例えば、水に準溶媒として基質が溶解又は混和する有機溶媒を少量加えた系で基質A及び基質Bを含む溶液系と、触媒を含む水溶液又は無触媒水溶液系がミキシングされ、これらの反応系が形成される。
ここで、少量とは、例えば、固体の基質A及び基質Bに対して、これらの固体が溶液になる量であれば良く、特に量を限定することは無いが、基質に対して1モル%以上加えることで、溶液にすることができる量をいう。このミキシング工程は、任意の常温ないし高温条件、低圧ないし高圧の圧力条件で行うことができる。好適には、25℃以上500℃以下の温度範囲、0.1MPa以上50MPa以下の圧力範囲が例示される。次いで、この反応系は、高温高圧水条件下の反応場である高温高圧反応工程に供給され、所定の反応条件で反応が行われる。
一般の有機合成では、反応媒体に反応基質を溶解させる必要がある。そのため、水を反応媒体にする有機合成では、反応基質は、水に溶ける必要があり、基質は、水溶性の基質に制限されるが、本発明では、基質は、水に溶ける必要は一切なく、非水溶性の基質であっても使用することが可能である。本発明において、準溶媒が示す役割について説明すると、準溶媒は、水にも溶解又は混和し、かつ基質を溶解するものであれば良く、したがって、基質の性質により適宜選択することができる。より詳しくいえば、基質の親水性が高い場合は、親水性溶媒の中でもアルコール等が好適に選択され、基質の疎水率が上がるほど、より疎水性の高い溶媒又は親水性溶媒の中でもエーテル系溶媒や非プロトン性極性溶媒等が好適に選択される。
該準溶媒としては、基質を溶解するものであれば、特に限定されないが、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、フェニルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ホルムアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ジクロロメタンクロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン、メチルターシャリーブチルエーテル等の有機溶媒から1種類以上、又は複数種を組み合わせて選択することができる。その中でも、ヘキサン、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタンが好適である。
本発明では、水に準溶媒を少量加えた系で溶解又は混和させた状態の基質、又は加熱して溶融させた状態の基質であれば、基質として使用可能であり、例えば、微粒子あるいはナノ粒子のような基質も使用することが可能である。
本発明において、基質を加熱して溶融するとは、高温条件で基質を溶融状態にすることであり、好適には25℃以上500℃以下の温度条件が例示される。
本発明において、高温高圧水とは、50℃以上420℃以下、常圧以上50MPa以下であり、より好ましくは100℃以上374℃以下、5MPa以上40MPa以下、最も好ましくは100℃以上300℃以下、5MPa以上22MPa以下である高温高圧水を意味する。この高温高圧水としては、好適には、例えば、温水(水)、水蒸気、亜臨界水、超臨界水、超高温高圧水が例示されるが、具体的な高温高圧条件は、反応基質、反応の種類、触媒、目的化合物の種類、収率、選択率等に応じて、任意に設定することができる。
また、触媒としては、ハロゲン化パラジウム、酢酸パラジウム(II)、パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム等のパラジウム錯体や金属触媒、その他、触媒として、白金、ニッケル、銅、銀、金、亜鉛、コバルト、ルテニウム、ロジウム、鉄、クロム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、リン、スカンジウム、イットリウム等からなる錯体あるいは金属触媒が例示される。中でも、パラジウム錯体や金属触媒が好適である。
更に、反応系に添加する酸、アルカリ種としては、弗酸、塩酸、臭酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、燐酸、燐酸塩、炭酸、トリフルオロ酢酸、酢酸等を含む各種カルボン酸等、そして、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属のアルコキシド、そして、アンモニア、メチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、ピラジン等のアミン化合物等が例示される。
本発明の方法において、反応温度としては、50℃以上500℃以下、より好ましくは50℃以上420℃以下、最も好ましくは100℃以上374℃以下が例示される。反応圧力としては、常圧以上50MPa以下、より好ましくは常圧以上40MPa以下、最も好ましくは5MPa以上22MPa以下が例示される。反応時間としては、1マイクロ秒以上24時間以下、好ましくは1ミリ秒以上1時間以下、更に好ましくは1ミリ秒以上10分以下、最も好ましくは1ミリ秒以上5分以下が例示される。
本発明では、上述のように、反応時間は、最も好ましくは、1ミリ秒以上5分以下であるが、これについても、基質の有機化合物、反応の種類、触媒、目的化合物の種類等に応じて好適ないし最適な反応時間の範囲に設定することができる。本発明の方法では、例えば、高温高圧水を反応媒体として用いて炭素−炭素結合を形成するカップリング反応方法の場合、従来法と比較して、反応時間を100分の1以下あるいはそれ以下に短縮することが実現できる。
本発明では、以下の工程、すなわち、(1)準溶媒を少量加えた系を使用して、(2)水、準溶媒、触媒及び反応基質からなる反応系を混合して、(3)上記反応系を、亜臨界水、超臨界水等を用いた高温高圧水−マイクロリアクターシステムの高温高圧反応プロセスで反応させる工程、により、例えば、下記の化1の反応基質(R1は、炭素数1〜20のアルキル基あるいはアリール基で表される置換基、R2及びR3は、水酸基又はアルコキシ基又はアミノ基で表される置換基であり、R2及びR3は、同じ置換基でも異なる置換基でも良く、あるいはR2とR3が連結した置換基でも良い。)と、ハロゲン化アリールとの反応を進行させることができる。
また、本発明では、下記の化2のハロゲン化アリール(nは、1〜10で表される整数であり、X1は、硫黄又は窒素原子であり、X2及びX3は、ハロゲン、ホウ素系化合物又は水素で表される元素であり、しかも、X2とX3は、同じでも異なっていても良く、R4及びR5は、炭素数1〜20の脂肪族又は芳香族の置換基又は水素で表され、R4及びR5の置換基は、同じでも異なっていても良い。)を用いて、下記の化3の反応基質(R6は、炭素数1〜10までのアルキル基、アリール基又は水素であり、R7からR14は、炭素数1〜10までのアリール基、アルキル基又は水素であり、それぞれが繋がってもいても良く、更に、R7からR14のうち少なくとも一つは、ハロゲンのフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素である。)の反応を進行させることができる。
本発明の方法を適応することが可能は反応として、例えば、上述の炭素−炭素結合の形成の他に、炭素−窒素結合形成、炭素−酸素結合形成等の反応が例示されるが、その種類は、特に限定されるものではない。本発明において、炭素−炭素結合の形成とは、これらの反応をも含むものとして定義される。そして、例えば、上述の炭素−炭素結合の形成反応を行なう場合、反応基質としては、少なくとも一つは水素が置換されたビニル基を有する化合物と、任意の置換基を有するハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール等が例示される。
反応生成物としては、本発明の方法が多くの反応に適応可能であることから、特に限定範囲はないが、代表的な例としては、例えば、任意の置換基を有する1,2−ジフェニルアセチレン、任意の置換基を有するトランス又はシススチルベン、任意の置換基を有する1,1−ジフェニルエテン、任意の置換基を有するビフェニル、任意の置換基を有する1,1,2−トリフェニルエテン等が例示される。しかし、反応生成物は、これらに制限されるものではない。
本発明では、上述のように、25℃1気圧で固体の基質を、基質の物性、特に溶解度や極性に応じた適当な有機媒体、すなわち基質を溶解又は混和させることが可能な準溶媒を用いた反応系を用いて、高温高圧水−マイクロリアクターシステムで、該基質を反応媒体でもある超臨界水等の高温高圧水と相溶させて反応させることにより、炭素−炭素結合の形成を好適に行うことができる。本発明では、例えば、水媒体と反応基質を含む反応系を混合するミキシング工程が必要であるが、反応媒体として乳化剤等の界面活性剤等を一切加えない水に、準溶媒として、基質の物性、特に溶解度や極性に応じた有機溶媒を加えた反応系を使用しているため、水と基質、あるいは水と生成物の分離がきわめて容易であり、多くの場合、生成物の相が、水媒体の表面に形成されるので、多くの有機化合物について、反応後の生成物の特別の分離精製工程を省略することができ、反応生成物の分離工程が簡便になるという利点がある。
本発明では、上記反応方法を実施するための反応装置として、水媒体と反応基質を含む反応系を混合するミキシング手段と、上記基質を高温高圧水条件下で反応させる高温高圧反応手段を設けたマイクロリアクターシステムが使用され、反応基質及び/又は触媒の種類に応じて、該ミキシング手段を多段に設置することが適宜可能である。
本発明の反応システムでは、上記ミキシング手段として、好適には、マイクロ空間デバイス混合機を用い、例えば、1)マイクロ流路を有するミキシングティーで混合する方法、2)メインストリームに別の成分を多数のサブストリームから導入し混合する方法、3)2成分をそれぞれ多数のストリームに分割し、それぞれを混合する方法、4)流れ方向でサブミリオーダー以下に径を絞り、拡散距離を短くし混合する方法、5)分割・混合を繰り返す方法、6)小さな流体セグメントを周期的に導入して混合する方法、7)超音波、マイクロ波、電気エネルギー、熱エネルギー等の外部要因を加え混合する方法、等のミキシング手段が用いられる。上記ミキシング手段で調製された反応系は、そのまま反応プロセスに移送し、上記のミキシング手段と同様の手法で、高温高圧水と混合させ、所定の温度・圧力条件下のマイクロリアクターシステムで反応が行なわれる。
本発明で使用される高温高圧マイクロリアクターシステムには、水、準溶媒、反応基質及び触媒等の反応系を構成する各成分を各々収容するタンク、これらの成分を上記ミキシング手段及び/又は高温高圧反応手段に送液するポンプ及び配管系が設置され、更に、上記高温高圧水を製造する加熱ヒーター、反応系を急速冷却するための急速冷却器、反応系の圧力を制御するための圧力制御弁、反応生成物を排出し、分離、回収する手段が配設され、全体の反応装置が構成される。
本発明で使用される高温高圧マイクロリアクターシステムの具体的な構成は、これらに制限されるものではなく、これらの構成を基本として、基質の有機化合物、反応の種類等に応じて、任意に設計することができる。また、本発明では、好適には、連続式反応装置が使用されるが、回分式反応装置を使用することも適宜可能である。
本発明により、以下のような効果が奏される。
(1)水に、準溶媒として基質を溶解又は混和する有機溶媒を少量加えた媒体を使用し、25℃1気圧で固体の基質を、該媒体に溶解又は混和させた状態で、又は加熱して溶融させた状態で、該基質を高温高圧水−マイクロリアクターシステムで反応させることで、秒単位あるいはサブ秒単位の反応時間で、有機化合物の炭素−炭素カップリング反応を行うことが可能な新しい有機反応方法を提供することができる。
(2)準溶媒を加えた水と反応基質を含む反応系を混合するミキシング工程と、上記反応系を高温高圧水条件下で反応させる高温高圧反応工程を設けた反応プロセスにより、高収率、高選択率で有機化合物の炭素−炭素結合を形成することを可能とする新しい反応プロセスを提供することができる。
(3)上記ミキシング工程を実行するためのマイクロミキシング手段、及び上記高温高圧反応工程を実行するためのマイクロ高温高圧反応手段を有するマイクロリアクターシステムを利用した有機化合物の炭素−炭素カップリング反応方法を提供することができる。
(4)本発明の方法を使用することにより、例えば、反応基質にビニル基を有する化合物と、ハロゲン化アルキルあるいはハロゲン化アリールとを、パラジウム触媒の存在下で反応させる場合、また、反応基質にエチニル基とハロゲン化アルキルあるいはハロゲン化アリールとを、パラジウム触媒、銅触媒共存下で反応させる場合、有機ハロゲン化物と有機ホウ素化合物とのクロスカップリングをパラジウム触媒の存在下で行う場合、等の様々な反応を、極めて短時間に、高収率・高選択率で行なうことができる。
(5)有機化合物の炭素−炭素結合を高収率、高選択率で形成することを可能とする有機化合物の新しい反応方法を提供することができる。
(6)本発明の方法は、水に基質の物性に応じて好適ないし最適化された準溶媒を少量加えた媒体を用いた反応であるため、反応基質及び/又は生成物の分離、回収が容易であり、しかも、不純物の排出が殆ど無く、環境低負荷型の新しい一般化学合成方法を提供することを可能とするものとして有用である。
(7)本発明の方法は、マイクロ空間デバイスを用い、極めて短時間で反応を行なうことができるため、反応システム全体を大幅に小型化することが可能であり、それによって、投入エネルギー等を小さくすることができ、省エネルギーに貢献できる。
高温高圧水−マイクロリアクターシステムと、反応スキーム(1)、(2)を示す。 Pd(0)とArX(Ar=[化3]でR9以外のR6〜R14がH、R9がXであり、X=I、Br)の酸化的付加反応速度の比較を示す。 プレミックス工程を追加した反応装置を示す。
次に、試験例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
試験例1
(1)カップリング反応実験
カップリング反応は、図1に示す(1)〜(2)の反応を高温高圧水−マイクロリアクターシステムで行った。チューブ型リアクター及び十字型ミキサー部分は、内径が0.5mmで、材質はSUS316のものを使用した。リアクターの圧力は、出口の背圧弁で一定(16MPa)に制御した。また、各所に、圧力計と温度計を設置し、モニタリングした。なお、本試験例で表されるArとは、[化3]で、R9=X(X=I又はBr)、R9以外のR6〜R14=Hで表される化合物(ハロゲン化アリール)であり、Ar‘は、[化2]で、X2=B(OR)2、R5=C5H6で表される化合物(窒素、硫黄、酸素のヘテロ原子を1個又は2個有する芳香族系ヘテロ環を置換基に持つ有機ホウ素化合物)である。
本試験を検討した反応装置図を、図1の(1)、(2)に示した。基質のAr−XとAr’−B(OR)(Ar−X:Ar’−B(OR)=1mol:1mol)は予めエタノールに溶解させた(基質Aが1gに対して、エタノールを10mL)状態で送液し、塩化パラジウムは、水酸化ナトリウム水溶液に溶解させて送液した。反応温度は、高温高圧水の温度を調整し、系内が所定の反応温度に達するようにした。反応後の分析は、液体クロマトグラフ質量分析装置を用いて行った。
得られた結果を表1に示す。基質(Ar−X)としてAr−Brを用いた反応では、42%の収率を得た。一方、Ar−Iを用いたところ、92%の収率を得た。
(2)基質の送液試験
本試験例では、高温高圧水マイクロリアクター装置でのカップリング反応における基質の供給方法を決定するために、Ar−X及びAr’−B(OR)の好適な液送方法の検討を行った。基質の送液方法としては、水に分散させる方法、原液で送液する方法、溶剤に溶解させて送液する方法がある。初めに、水のみへの基質の分散を検討したが、分散液がゲル化してしまうため不適であった。次に、ヘキサンに溶解させたところ、送液が可能となり、収率は低いものの、反応は進行した。一方、エタノール等の溶媒を用いた場合は、適切に反応が進行した。なお、溶媒を加える量は、基質A又はBが1モルに対して、溶媒1モル%以上を加えて行った。また、溶媒を1モル%程度添加した場合、溶液にはなりにくいが、溶融する温度を低下させることができる。次に、基質A及びBの混合物を加熱し、溶融させて原液での送液を試みたところ、反応が進行し、溶融状態で原液での送液も適していると分かった。
試験例2
本試験例では、原液で基質を送液した場合のカップリング反応の問題点を抽出するために、基質を原液で送液して、高温高圧水マイクロリアクターでのカップリング反応を行った。その結果、原液送液時の最大収率が得られた実験条件である滞留時間[s]:1.000、圧力[MPa]:16、温度[℃]:250の条件で、収率は13.8%であった。
試験例3
上記試験例において、高温高圧水に基質が溶解することが確認できたので、本試験例では、事前に基質の予熱部を設けることで、Ar−Brを十分に高温高圧水へ溶解させた状態でのAr−Brの反応率を調べた。その結果、Ar−Brの高温高圧水への予熱部(溶解部)を設けることにより、供給されたAr−Brは全てArに転化し、Ar−Brの転化率は100[%]であった。溶解部を設けない場合は、同様の温度圧力条件・触媒濃度で、転化率は34[%]であった。この結果より、Ar−Brの高温高圧水への溶解律速であることが分かった。
試験例4
本試験では、Ar−Brの高温高圧水への溶解部分を設けたフローで、Ar−BrとAr’−B(OH)とのカップリング反応を行い、収率を調べた。その結果、Ar−Brの転化率が改善することが分かった。
試験例5
本試験例では、基質と触媒が即座に混合されるフローを検討した。ミキサー部分を改良するために、反応温度250[℃]、圧力16[MPa]、反応時間1.68[s]、触媒10[mol%]の条件で、Ar−Brの反応率の調査(混合部の違いによる)を行った。その結果、ミキサーを変更し混合部の混合状態を改良することで反応率は改善した。
試験例6
基質と触媒の混合部の改良後のフローで収率は改善するかどうかを確認するために、Ar−BrとAr’−B(OR)のカップリング反応を行い、収率を調べた。その結果、混合部の改良により転化率に改善が見られたが、Ar’−B(OR)の分解は抑制できていないため満足する収率が得られなかった。すなわち、上記の実験を行った結果、200℃での反応率が最も高かったが、この時、原料であるAr’−B(OR)はいずれも検知されなかった。
試験例7
本試験例では、Ar’−B(OR)の供給変更(水とAr’−B(OR)の接触時間削減)により、収率は改善するかどうかを確認するために、Ar’−B(OR)と高温高圧水の接触を抑えたフローで、反応温度250[℃]、圧力16[MPa]、反応時間1.68[s]、触媒10[mol%]の条件で、Ar’−B(OR)の分解抑制について検討を行った。その結果、反応は殆ど進行せず、Ar−BrとAr’−B(OR)の分解のみが進行した。この結果より、予めAr−BrとAr’−B(OR)を十分に混合させた状態で触媒と接触させなければならないことが分かった。
試験例8
本試験例では、エタノールにAr−BrとAr’−B(OR)を溶解させ、予め混合させた状態で供給し、反応を行い、種々の条件による転化率の変化を調べた。まず、触媒量による転化率の変化を調べた結果、触媒量の増加に伴い転化率は向上した。ここで、残りのAr−BrがほぼArに転化していることから、Ar−PdとAr’−B(OR)が反応する前に、Ar’−B(OR)が分解していることが予測された。そこで、次に、温度と圧力の影響を調査した。調査した温度は、50℃、100℃、120℃、150℃、160℃、180℃、200℃、220℃、250℃、300℃、350℃、400℃、420℃で、同じく調査した圧力は、0.1MPa、5MPa、10MPa、15MPa、16MPa、20MPa、30MPa、40MPaである。その結果、200℃、16MPaが最も好適であることが分かった。また、200℃、16MPaの水密度と同様の条件でも反応を行った。最後に、触媒の種類による変化を調べた。これまで塩化パラジウムのみを使用していたが、酢酸パラジウムで反応を行った。その結果、触媒濃度5[mol%]では、塩化パラジウムとほぼ同様の結果であった。一方、10[mol%]では、Ar−Brの反応性は5[mol%]の時と比べて低いことが分かった。
試験例9
本試験例では、流速・濃度を変更して(Re数の変更)改善するかどうかを確認するために、濃度と流速が反応に及ぼす影響について、触媒濃度を1[mol%]に固定して、系内の濃度を0.7[wt%]、5[wt%]、10[wt%]にして、収率の変化を調べた。その結果、高濃度のほど収率が向上することが分かった。
試験例10
本試験例では、基質濃度と転化率の相関を調べた。その結果、系内濃度を上げることで、収率は向上した。しかし、5[wt%]以上では収率に大きな変化は見られなかった。また、基質の溶液濃度ではなく流量を大きくすることで濃度を高める試みも行ったところ、劇的な変化は見られなかったが、転化率の向上は確認された。
試験例11
本試験例では、エタノール以外の溶媒で好適なものがあるかどうかを確認するために、溶媒にヘキサン、アセトニトリル、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタンを用い、Ar−X(XはBr又はI)を供給して反応するどうかの確認を行った。その結果、ヘキサン、アセトニトリル、アセトンでは、Ar−XからArへの転化は起こらなかった。しかしながら、より疎水性の高いAr−XとAr’−B(OR)のカップリング反応による生成物とAr’−B(OR)を基質として用いた場合、ヘキサン、アセトニトリル、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンチルメチルエーテル、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタンのいずれの場合も、転化が確認された。中でも基質が溶解し、かつ親水性の高いジメトキシエタンが最も収率が高かった。すなわち、基質の種類により適した溶媒を選択する必要があることが分かった。
試験例12
本試験例では、高濃度かつ流速が大きい条件で反応を行い、収率が向上するかどうかを確認するために、濃度・流速を変更した際のカップリング反応を行った。その結果、高濃度かつ、流速が大きい方が収率が良いこと、また、溶媒としてはエタノールが好適であることが分かった。
試験例13
基質をAr−BrからAr−Iに変更した際に、収率は改善するかどうかを確認するために、Ar−Brよりも反応性が高いと考えられるAr−Iを使用し、カップリング反応を試みた。その結果、Ar−BrからAr−Iに基質を変更することで、収率は改善した。図2に、Ar−BrとAr−Iの反応性速度の比較を示す。
試験例14
試験例1において基質をAr−Brとし、溶媒及び触媒を選択した際に、収率が改善するかどうか確認した結果、溶媒に有機化合物の溶解性に優れるにN,N’−ジメチルホルムアミドを、触媒にジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)を用いた場合に、収率の改善が確認された。この時の基質はAr−Br:Ar’−B(OR)=1mol:1.3molで用い、触媒は油溶性であるため基質と共に供給した。その結果を表2に示す。
試験例15
試験例14において、図3に示すプレミックス工程を追加した反応装置にした際に、収率が改善するかどうか確認した結果、収率の改善が確認された。その結果を表2に示す。
以上詳述したように、本発明は、高温高圧水を用いる炭素−炭素カップリング反応方法に係るものであり、本発明により、水に、準溶媒を少量加えた媒体を使用し、25℃1気圧で固体の反応基質を、該媒体で溶解又は混和させた状態で、又は加熱により溶融させた状態で、該基質を高温高圧水−マイクロリアクターシステムで反応させることで、秒単位の反応時間で目的化合物を合成することが可能な新しい有機化合物の炭素−炭素結合形成方法を提供することができる。本発明により、水と反応基質を含む反応系を混合するミキシング工程と、上記反応系を高温高圧水条件下で反応させるマイクロ高温高圧反応工程を設けた反応プロセスからなる、高収率、高選択率で目的化合物を合成することを可能とする新しい反応プロセスを提供することができる。
また、本発明により、上記ミキシング工程を実行するための高圧ミキシング手段、及び上記高温高圧反応工程を実行するためのマイクロ高温高圧反応手段を設けたマイクロリアクターシステムを使用した新しい有機反応方法を提供することができる。本発明は、水に、準溶媒を少量加えた媒体を使用して、高温高圧水を反応媒体とする反応プロセスで反応を行なうことで、反応基質、生成物の分離、回収が容易であり、しかも有害成分の排出がないことから、環境低負荷型の有機化合物の反応方法を提供することを可能とするものとして有用である。

Claims (8)

  1. 25℃以上500℃以下の温度範囲、0.1MPa以上50MPa以下の圧力範囲の高温高圧条件で、有機化合物の炭素−炭素クロスカップリングを行う方法であって、25℃1気圧で固体の反応基質を、水に前記反応基質を溶解又は混和させる有機溶媒を加えた媒体の準溶媒で溶解又は混和させた状態で、又は基質を加熱して溶融させた状態で、該基質を高温高圧水条件下のマイクロリアクターで反応させることにより有機ハロゲン化物と有機ホウ素化合物とのクロスカップリングにより有機化合物の炭素−炭素結合を形成することを特徴とする有機化合物の反応方法。
  2. 固体の反応基質を、マイクロ空間デバイスであるマイクロミキシング手段及びマイクロリアクター手段を用いて、反応基質を混合するミキシング工程と、該基質を反応させる高温高圧反応工程により、有機化合物の炭素−炭素結合を形成する、請求項1に記載の方法。
  3. 25℃1気圧で固体の反応基質を、準溶媒として基質が溶解する有機溶媒で溶解又は混和させた状態で、該基質を高温高圧水条件下のマイクロリアクターで反応させることにより有機化合物の炭素−炭素結合を形成する、請求項1に記載の方法。
  4. 25℃1気圧で固体の反応基質を、25℃以上500℃以下の温度で加熱して溶融させた状態で、該基質を高温高圧水条件下のマイクロリアクターで反応させることにより有機化合物の炭素−炭素結合を形成する、請求項1に記載の方法。
  5. 25℃1気圧で固体の反応基質を、準溶媒として基質が溶解する有機溶媒の混合溶媒に分散、溶解させた状態で、該基質を50℃以上420℃以下、常圧以上50MPa以下の高温高圧水条件下のマイクロリアクターで反応させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  6. 高温高圧水条件が、100℃以上300℃以下、5MPa以上22MPa以下である、請求項5に記載の方法。
  7. 反応時間が、1マイクロ秒以上24時間以内である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 窒素、硫黄、酸素のヘテロ原子を1個又は2個有する芳香族系ヘテロ環を置換基に持つ有機ホウ素化合物と、置換基を有することのあるハロゲン化アルキルあるいはハロゲン化アリールとのクロスカップリングにより、炭素−炭素結合を形成する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
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