本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。尚、各図および各実施形態において、同一又は類似の構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態に係るエレベータ監視装置1を説明する。図7は、第1の実施形態に係る撮像部2の、エレベータへの設置例と、撮像部2で取得した画像の例を示している。図7(a)はエレベータ外部から乗りかご内部を見た図であって、エレベータの乗りかご内を撮像する撮像部2をエレベータの乗りかご内の向かって右側奥上部に設置した例である。そして、図7(b)と図7(c)は、撮像部2の画角を乗りかごの出入り口に向けた時に得られる画像の例である。格子パターン領域で示した人物43はすでに搭乗している人物の例である。格子パターン領域で示した人物41は搭乗しようとする人物の例である。また、格子パターン領域で示した幼児42は、特に、軽量の幼児が搭乗しようとする例である。このように、撮像部2の画角が乗りかごの出入り口を向いていると、乗りかごに出入りしようとして移動する人物を撮影することができる。移動する人物は、撮像部2で撮像された画像において、輝度パターンの変化が大きく現れやすいので、画像処理による検出、いわゆる画像検出で検出することができる。一方で、このような撮像部2の設置方法は、設置直下に死角領域を生じる。撮像部2の結像系パラメータで決まる視野により若干の差異はあるが、死角領域40は概ね図7(a)の斜線領域で示した三角錐空間である。この死角領域40内に完全に入り込んだ人物は撮像部2の画像では確認することができない。
図1は、第1の実施形態に係るエレベータ監視装置の構成図の例である。エレベータ監視装置1は、例えば、エレベータの乗りかご内を撮像する撮像部2と、乗りかご内の荷重を計量する荷重センサ3と、演算部4と、乗りかご内有人/無人出力部5を有する。撮像部2は、所定のフレームレートで時系列の画像を得る撮像部であって、デジタルカメラを適用することができる。また、アナログカメラをアナログ−デジタル変換器でデジタル化してもよい。荷重センサ3は、乗りかご内に搭乗する人物の総重量に対して荷重センサ値を出力するものであり、この出力値はデジタル値である。荷重センサ3は如何なる重量でも計測できるほど精密な秤を利用することができるが、そのような精密な荷重センサは高価であるため、ここでは一般的にエレベータに用いられて、搭載過多を検出するための荷重センサ3を用いた例で説明する。
荷重センサ3に用いる荷重センサは予めその特性が知られている必要がある。例えば、荷重センサ3に何通りかの荷重を加えてその時に出力される荷重値(以後、加重センサ値と記載する。)を取得し、図8に示す「加えられた荷重」対「荷重センサ値」のグラフ例を作成する。図8(a)は、一般的な荷重センサにおいて、「加えられた荷重」と「荷重センサ値」との関係を示すグラフの例である。横軸が「加えられた荷重」で、縦軸が「荷重センサ値」である。加重センサ値には幾分ヒステリシスがあり、また、様々な振動が加わっているためグラフ50には幅を持たせて表している。ただし、これは表現を明瞭にするためにデフォルメしたものである。ここで、「加えられた荷重」が、A、B、Cと、次第に大きくなると、「荷重センサ値」もa、b、cと増加する。「加えられた荷重」がBとCの間の場合は、両者はほぼ正比例していて、取得した「荷重センサ値」から「加えられた荷重」を算出することができる。しかし、Bよりも小さい領域ではこの正比例関係が成り立たないため、「荷重センサ値」から「加えられた荷重」を正確に算出することができない。更に、Aよりも小さい場合には「荷重センサ値」がaよりも小さな値となり、これは有意な値とは認められないほど小さい。一般にグラフ50はS字形をしており、極軽量荷重のAを加えた時の加重センサ値aは有意な値か否かの境界となる値である。荷重センサ値aは以後、「有意差しきい値」と呼ぶ。「有意差しきい値」とは、搭乗者が搭乗した際の荷重センサ3のセンサ値増加分が、この「有意差しきい値」未満の場合には、該センサ値からは、十分な信頼性をもって新たな搭乗者の有無を判定できない場合の値を意味する。荷重センサ3の最終出力はデジタルデータである。
図8(b1)は幼児42の単独による搭乗で、図8(b2)は幼児42の乗りかご外への退室を示す。幼児42の体重が前記の極軽量荷重Aよりも小さいA′であるときの荷重センサ値a′は前記の有意差しきい値aよりも小さく、前記のヒステリシスや振動に埋もれて計測することができない。そうすると、前記荷重センサ値から、幼児42が搭乗中(図8(b1))か否(図8(b2))かの判断をすることができない。また、図8(c1)に示すように計測可能な重量Bを有する人物43が搭乗しているときに幼児42が新規に搭乗することもあり得る。この場合、総重量A′+Bは計測可能な範囲なので、荷重センサ値dからこの総重量の正確な計測を成し得る。しかし、図8(c2)のように人物43のみが退室してしまったときは、荷重センサ値は再びa′に戻るため、荷重センサ値からは幼児42の残留を判定することができない。このように、単独で乗りかご内に搭乗している場合に荷重センサ3のみでは搭乗中か否かを判断することができない所定の軽量な搭乗者(例えば幼児42)を、不可計量者と呼ぶこととする。以上、エレベータに用いられる一般的な荷重センサ3の特性を説明した。
演算部4は、撮像部2と荷重センサ3のデジタルデータを処理して、エレベータの乗りかご内が有人か無人かを判定して乗りかご内有人/無人出力部5に出力する。乗りかご内有人/無人出力部5は、例えば、遠隔監視センターに乗りかご内の人物の有無に関する情報を通知したり、またはエレベータの制御装置に通信したりする。
演算部4は、例えば、搭乗者検出部6と、乗りかご荷重値差分取得部7と、不可計量者判定部8と、不可計量者追跡部9と、不可計量者混入有無判定部10と、荷重値による搭乗者有無判定部11と、乗りかご内有人/無人判定部12と、追跡ID記憶部13とを有する。以下、図1と、図9にまとめた各処理部の入出力の例とを参照しながら、各処理部の連携を説明する。図9において、左欄のNOは各処理部の番号を表す。第二欄に処理部の名称を示し、右欄に各処理部の入力情報と出力情報の例を示す。
撮像部2は、実際のシーンを入力とし、時系列デジタル画像を出力する。
搭乗者検出部6は、撮像部2から取得した画像(時系列デジタル画像)を処理して、乗りかご内に搭乗しようとする人物(新規搭乗者)を検出する。いかなる人物や物も搭乗する際には必ず移動を伴うので、時系列デジタル画像からフレーム間差分処理と、二値化処理と、ラベリング処理をすることで容易に人物または物を検出することができる。搭乗者検出部6は新規搭乗者を検出すると検出人物の画像上の座標、たとえば、検出人物の外接矩形の重心または外接矩形の四隅の座標を不可計量者判定部8に出力する。この搭乗しようとする人物の画像による検出の具体例は後述する。
また、搭乗者検出部6は、検出人物のテンプレート登録位置座標を不可計量者判定部8に出力する。このテンプレート登録位置座標とは、後述する不可計量者追跡部9における画像追跡に用いられるパターンマッチング用のテンプレートとして登録すべき場所(画像上の位置あるいは領域)を示す情報であり、例えばテンプレート登録すべき矩形領域の左上と右下の位置座標などが用いられる。画像上でパターンマッチング用のテンプレートとして適した場所は、輝度分布の変化に富む領域であり、例えば人物の頭部が選択される場合が多い。テンプレート登録位置座標は、搭乗者検出部6によって、搭乗しようとする人物を検出する際に求められる。求め方は例えばソーベルエッジフィルタで人物の輪郭を抽出し、その密度が高くて、検出された人物の上部を条件として求められる。輝度の変化の大きい場所で人物の上部という条件で選定すると、人物の頭部に決定される場合が多い。人物の頭部は他の人物に覆われて見えなくなることが少なく、輝度パターンも一意的で、他の人物と間違える、いわゆる誤マッチングの発生を低く抑えることができる。これらの検出人物の画像上の座標とそのテンプレート登録位置座標は、搭乗者検出部6で検出されたものが不可計量者判定部8を通って、不可計量者追跡部9に伝えられる。
荷重センサ3は、荷重を入力とし、荷重センサ値を出力する。
乗りかご荷重値差分取得部7は、荷重センサ3から加重センサ値を時系列に取得して加重センサ値の変化を算出する。搭乗者検出部6で新規搭乗者を捉えた時の、加重センサ値の増加分は新規搭乗者の重量と見なすことができる。
不可計量者判定部8は、搭乗者検出部6から、新規搭乗者に関する位置情報(検出人物の画像上の座標)を取得すると、乗りかご荷重値差分取得部7から荷重センサ値の差分を取得する。そして、荷重センサ値の差分を有意差しきい値と比較して、荷重センサ値の差分が有意差しきい値よりも小さい場合は、新規搭乗者を不可計量者と判定する。不可計量者は荷重センサ3では安定的に存否を検出することができないほど軽量な人物である。
尚、既に乗りかご内が有人の場合には、図8(c1)(c2)で説明したように、有人の乗りかご内に不可計量者である幼児42が新規搭乗者として搭乗する場合に荷重センサ値の差分が大きく変化する状況も考えられる。したがって、乗りかご内が有人の場合は、荷重センサ値の差分と比較する有意差しきい値を乗りかご内が無人の場合の有意差しきい値よりも大きくしてもよい。乗りかご内が有人の場合の有意差しきい値は、例えば、不可計量者とみなしたい重量(図8の場合だと重量A)の新規搭乗者によって荷重センサ値の差分がどのように変化するかを実験などで予め調べておき、荷重センサ値の差分の最大値をカバーするように決めればよい。尚、有人か無人かの情報は、乗りかご内有人/無人判定部12または乗りかご内有人/無人出力部5から得ることができる。
また、複数の新規搭乗者が同時に搭乗する場合には、新規搭乗者に不可計量者が混じっていても荷重センサ値の差分が有意差しきい値を超え、不可計量者を不可計量者でないと誤判定する可能性がある。このような場合には、不可計量者が乗りかご内に取り残される可能性があるため、そのようなことが無いように、この複数の新規搭乗者のそれぞれ(全員)を不可計量者とみなして不可計量者であると判定し、それぞれの人物を画像追跡の対象としてもよい。
不可計量者判定部8は、不可計量者と判定した新規搭乗者について、新規に追跡IDを発生して、追跡ID記憶部13に追加する。このように、不可計量者と判定した新規搭乗者のみを後述する不可計量者追跡部9で追跡させることで、画像処理の負荷を軽減することができるとともに、追跡対象者が増えた場合に発生しがちな追跡ミスを軽減できる。
不可計量者判定部8は、追跡IDを追加するに当たり、追跡ID記憶部13を参照して重複のないIDを発生する。尚、追跡IDを単調に増加する数として、過去に用いた番号を再び使用しないようにしてもよい。その場合、不可計量者判定部8は追跡ID記憶部13を参照することなく新規に追跡IDを発行することができる。
更に、不可計量者判定部8は、この新規の追跡IDと、それに対応する検出人物の画像上の座標(搭乗者検出部6で出力されたものと同じ)と、この検出人物のテンプレート登録位置座標(搭乗者検出部6で出力されたものと同じ)とを、不可計量者追跡部9に出力する。
不可計量者追跡部9は、追跡ID記憶部13に記憶された追跡IDに対応する検出人物の画像上の座標とテンプレート登録位置座標とを、内部のメモリである物体座標記憶部に保持しており、追跡をするに従って更新をする。また、不可計量者追跡部9は、撮像部2から取得した時系列デジタル画像から、テンプレート登録位置座標で指定された領域を取得してテンプレートパターンとする。その後、次々と得られる時系列デジタル画像に対して、このテンプレートパターンでパターンマッチング処理をして、検出人物の時系列な位置を検出する、いわゆる画像追跡を行う。そして、検出人物が乗りかご内から退室するまで追跡が継続される。パターンマッチングに際しては時系列デジタル画像中で検出する度に、テンプレートを時系列デジタル画像から切り出したパターンで更新すると、持続的に人物を追跡することができる。
また、人物の動きが大きい場合には時系列デジタル画像間で輝度パターンが大きく変化してパターンマッチング処理で検出できないことがある。この場合には時系列デジタル画像のフレーム間差分によって容易に人物を検出することができる。つまり、フレーム間差分処理とパターンマッチング処理を併用することで、移動の大きい場合はフレーム間差分で、移動の小さい場合はパターンマッチングで常に安定して人物を検出追跡することができる。パターンマッチングによる画像追跡と追跡IDの管理および、フレーム間差分を使うことによって安定的に搭乗者を検出追跡する具体例は後述する。
不可計量者追跡部9は、追跡していた人物が乗りかご内から退室すると追跡を終了して追跡ID記憶部13から対応する追跡IDを消去する。また、乗りかご内の撮像部2の設置場所直下など画像視野から外れた場所、例えば死角領域40などで搭乗者の追跡ができなくなる場合がある。このような場合には、この追跡IDと画像パターンは保存して、再び出現するまで、乗りかご内に存在しているとみなすことができる。これは、死角領域40内に不可計量者が完全に入り込んだ場合には、再び死角領域40から出て再び追跡可能になるまでその追跡IDを保存しておくことを意味する。このようにすると、不可計量者が乗りかご内に存在するにもかかわらず「無人」と判定する、いわゆる失報を防ぐことができる。また、乗りかごのドアが開いているときにドア付近で見失った場合には速やかに追跡IDを消去して追跡を終了することができる。このようにすることで、不可計量者が乗りかごには不在であるにもかかわらず「有人」と判定する、いわゆる誤報を防ぐことができる。ドアの開閉は撮像部2から取得の時系列デジタル画像を処理して判断することもできるが、エレベータが一般的に有しているドア開閉信号を不可計量者追跡部9に入力するようにして判断処理をしてもよい。
尚、追跡ID記憶部13は、不可計量者追跡部9の内部のメモリに設けられていても良い。
不可計量者混入有無判定部10は、追跡ID記憶部13が保持している追跡IDを参照して、乗りかご内に不可計量者が混入しているか否かを判定する。一以上の追跡IDが存在するときは、一以上の不可計量者が混入していると判定する。出力は混入していれば“有”、混入していなければ“無”である。
荷重値による搭乗者有無判定部11は、荷重センサ3から加重センサ値を取得して、予め定められた有人荷重値しきい値と比較して、加重センサ値が有人荷重値しきい値以上か、未満かを出力する。有人荷重値しきい値は、有意差しきい値と同一にしてもよいし、別により適した値を定めてもよい。出力は、有人荷重値しきい値以上であれば、“以上”で、しきい値未満であれば“未満”である。尚、出力として、“以上”に代えて“有人”、“未満”に代えて“無人”としてもよい。
乗りかご内有人/無人判定部12は、不可計量者混入有無判定部10の判定結果と、荷重値による搭乗者有無判定部11との判定結果に基づいて、乗りかご内が有人であるのか無人であるのかの判定をする。この判定は図2に示す乗りかご内有人/無人判定部の出力表の例に基づいて行われる。図2において、不可計量者混入有無判定部10の出力が“有”の場合は、荷重値による搭乗者有無判定部11の出力に関わらず、「有人」と判定される。不可計量者混入有無判定部10の出力が“無”の場合は、荷重値による搭乗者有無判定部11の出力が“以上”の場合には「有人」と判定され、荷重値による搭乗者有無判定部11の出力が“未満”の場合には「無人」と判定される。
つまり、不可計量者混入有無判定部10により、不可計量者が混入していると判断される場合には、画像追跡で不可計量者が全員乗りかご内から退室するまでは「有人」と判定される。そして、不可計量者混入有無判定部10により、不可計量者が混入していないと判断される場合には、荷重センサ3の荷重センサ値に基づいて、荷重値による搭乗者有無判定部11の判定結果に従って、有人荷重値しきい値以上の場合には「有人」と判定され、有人荷重値しきい値未満の場合は「無人」と判定される。
これにより、荷重センサと画像センサとを組み合わせてエレベータの乗りかご内の有人/無人の判定を行う際に、不可計量者の場合のみ画像追跡を行い、不可計量者がいない場合には荷重センサによる判定結果に従うという使い分けが可能になる。そして、極めて軽い幼児や小動物などの不可計量者に対する失報の発生を抑制するとともに、画像センサによる画像処理の負荷を軽減することができる。
図3には、第1の実施形態に係るエレベータ監視装置の処理を説明するフローチャートの例を示し、図10には、このフローチャート例における処理ステップと、構成例における各処理部の対応関係を示す。図10において、左欄には処理ステップ番号を示し、第2欄には処理ステップの内容を示す。右欄には、この処理ステップに関連する処理部を示す。以下、図3と図10を参照しながら第1の実施形態のエレベータ監視装置1の処理フローの例を説明する。
エレベータ監視装置1に電源を投入することで、処理フローが開始される。まず、初期設定ステップs01が実行される。初期設定ステップs01では、撮像部2と、荷重センサ3と、演算部4と、乗りかご内有人/無人出力部5に対して初期設定される。ただし、初期設定ステップs01に先んじて撮像部2と、荷重センサ3と、乗りかご内有人/無人出力部5は初期設定済みで、初期設定ステップs01では演算部4に対してのみ初期設定される構成でもよい。
画像取得ステップs02から、終了割込みまたは電源OFFをチェックするステップs06までは、終了割込みまたは電源がOFFされない限りは無限に繰り返し処理をする。この繰り返し処理の周期は撮像部2の撮像周期を最短とする。例えば、撮像部2による画像の更新レートが毎秒30フレーム(30fpsとも記載する。)の場合は更新周期が1/30秒であるから、s02からs06までの繰り返し処理の周期の最短は1/30秒となる。しかし、演算部4の処理能力により、s02からs06までの繰り返し処理の周期はこの最短周期よりも長くなることもある。搭乗者が乗りかごに搭乗する瞬間を検出するには、s02からs06までの繰り返し処理の周期は1秒以下であることが好ましい。乗降の多いエレベータにおいてはこの周期は500ミリ秒以下であることが更に好ましい。
画像取得ステップs02は撮像部2が更新した時系列デジタル画像を搭乗者検出部6と不可計量者追跡部9が取得するステップである。
不可計量者混入判定処理ステップs03は、搭乗者検出部6と、乗りかご荷重値差分取得部7と、不可計量者判定部8と、不可計量者追跡部9と、不可計量者混入有無判定部10の協調動作による処理ステップである。当ステップs03の入力は撮像部2の時系列デジタル画像と、荷重センサ3の加重センサ値であり、出力は不可計量者混入有無判定部10の出力である。当ステップs03の詳細は後記する。
不可計量者混入の有無で分岐するステップs04から有人判定出力ステップs07への分岐処理は乗りかご内有人/無人判定部12の処理である。図2に示したように負荷計量者混入“有”の場合は荷重による搭乗者有無判定部11の出力に関わりなく「有人」と判定して出力する(s07)。ステップs04にて不可計量者が混入していない場合にはステップs05と、ステップs08またはステップs09に進む。これらは荷重による搭乗者有無判定部11と、乗りかご内有人/無人判定部12の協調処理である。図2に示したように負荷計量者混入“無”の場合は荷重による搭乗者有無判定部11の出力に従って、荷重センサ3からの荷重値が有人荷重値しきい値以上であれば「有人」と判定し(s08)、荷重値が有人荷重値しきい値未満であれば「無人」と判定する(s09)。以上が電源投入後に演算部4が行う処理フローである。乗りかご内有人/無人出力部5は演算部4の判定結果を遠隔監視センターやエレベータの制御装置に送信する。
次に不可計量者混入判定処理ステップs03の詳細を、図4と図5と図10を参照しながら説明する。図4は、ステップs03の不可計量者混入判定処理における、不可計量者混入モードの設定または維持する処理を説明するフローチャートの例である。ここで、不可計量者混入モードの設定とは、不可計量者混入有無判定部10の出力を“無”から“有”に切り替えることと同意である。また、不可計量者混入モードを維持するとは、不可計量者混入有無判定部10の出力を“有”から“有”に継続することと同意である。
新規搭乗者検出処理ステップs10と新規搭乗者の有無で分岐するステップs11は、搭乗者検出部6の処理である。搭乗者検出部6では、時系列デジタル画像からフレーム間差分処理と、二値化処理と、ラベリング処理をすることで、新規に搭乗しようとして移動する人物を検出する。新規搭乗者が検出されない場合は、“偽”としてこの処理フローを終了する。一方、新規に搭乗しようとして移動する人物が検出された時は、“真”として次ステップs12に進む。
荷重センサ値差分の取得ステップs12は乗りかご荷重値差分取得部7と不可計量者判定部8に係る処理で、有意差しきい値分岐ステップs13は不可計量者判定部8に係る処理である。これらの連携処理は前述の通りである。すなわち、新規搭乗に伴う荷重センサ値の差分を有意差しきい値と比較して、荷重センサ値の差分が有意差しきい値以上の場合は、“偽”としてこの処理フローを終了する。一方、荷重センサ値の差分が有意差しきい値より小の場合は、“真”としてステップs14に進む。
不可計量者新規追跡開始ステップs14は不可計量者判定部8と不可計量者追跡部9に係る処理である。ここでは、新規の追跡IDを発生させて追跡ID記憶部13に追加するとともに、不可計量者追跡部9が追跡を開始する。
次の、不可計量者混入モードの設定または維持ステップs15は不可計量者混入有無判定部10に係る処理をする。不可計量者混入有無判定部10は不可計量者追跡部9あるいは追跡ID記憶部13において、一以上の追跡IDが存在している場合に不可計量者混入モードを設定または維持する。
図5は、ステップs03の、不可計量者混入判定処理における、不可計量者混入モードを解除する処理を説明するフローチャートの例である。ここで、不可計量者混入モードの解除とは、不可計量者混入有無判定部10の出力を“有”から“無”に切り替えることと同意である。不可計量者混入モードでない場合は、そもそも、このモードを解除する必要もないので不可計量者混入モード分岐ステップs16の分岐では“偽”としてこの処理フローを完了する。一方、不可計量者混入モードの場合は“真”として不可計量者追跡部9で不可計量者を画像追跡する(s17)。その結果、不可計量者が乗りかご内から退室しない場合は“偽”として不可計量者退室分岐ステップs18を経てこの処理フローを完了する。一方、不可計量者が乗りかごから退室した場合は、不可計量者追跡部9は追跡ID記憶部13から対応する追跡IDを消去するとともに、分岐が“真”として分岐ステップs18からステップs19に進む。
不可計量者皆無分岐ステップ19では、不可計量者混入有無判定部10が追跡ID記憶部13を参照し、追跡IDが皆無である場合に“真”として分岐ステップs19を経て不可計量者混入モードが解除される(s20)。一方、他にも追跡IDがある場合は“偽”として分岐ステップs19を経てこの処理フローを完了する。この結果、不可計量者混入モードは維持される。ここで、ステップs16とステップs17とステップs18は不可計量者追跡部9に係る処理で、ステップs19およびステップs20は不可計量者混入有無判定部10に係る処理である。
ここで、不可計量者混入モードの設定または維持する処理(図4)と、不可計量者混入モードを解除する処理(図5)を含むステップs03(図3)の処理サイクルは十分に早い。そのため、一回の処理において人物の搭乗と退室の両方が発生しないことを前提としている。人物の搭乗と退室の両方が発生しないとは、人物の搭乗により不可計量者混入モードを設定する状況と、人物の退室により不可計量者混入モードを解除する状況が同時に発生しないことを前提としているという意味である。したがって、不可計量者混入モードの設定または維持する処理(図4)と、不可計量者混入モードを解除する処理(図5)は、いずれの処理を先行させてもよく、同時に行ってもよい。ステップs03の十分に早いサイクルとは、上記フレームレートについて述べたように、乗降の少ないエレベータにおいては1秒以内であり、乗降の多いエレベータでは500ミリ秒以下であるサイクルをいう。
次に、搭乗者検出部6における画像検出の一例を説明する。図14は画像検出の一例を表す概念図である。図14(a1)、図14(a2)、図14(a3)は人物44(44A、44B、44C)(物体)がエレベータ入口から搭乗するときの時系列デジタル画像の例であって、図14(a1)から図14(a3)に向けて時間が経過していく。図14(a1)乃至図14(a3)に表れる人物44は同一人物であるが時間経過に伴って輝度パターンが変化していくので説明の都合上44A、44B、44Cと命名する。図14(b1)は図14(a1)の画像(フレームともいう。)と図14(a2)の画像の画素毎の輝度差分絶対値からなる画像であって、いわゆるフレーム間差分画像である。破線で示す44Aと実線で示す44Bと、フレーム間差分の領域(格子パターン領域)の関係を示している。同様に、図14(b2)は図14(a2)の画像と図14(a3)の画像のフレーム間差分画像であって、破線で示す44Bと実線で示す44Cと、フレーム間差分の領域(格子パターン領域)の関係を示している。図14(b1)と図14(b2)はグレースケール画像でもよく、適切なしきい値で二値化した後であってもよい。適切なしきい値としては、図14(b1)と(b2)に表れる物体が不適切に分離せず、また、低すぎてノイズに埋もれない程度の値とすべきである。搭乗する人物の輪郭線よりも内側のパターンに輝度の差異が乏しい場合には、二値化後の図14(b1)と図14(b2)のパターンに穴が開くことがあるが最終的に外接矩形を定めるのに影響は無い。
図14(c1)の44Dと図14(c2)の44Eはそれぞれ、図14(b1)と図14(b2)に膨張処理または最大値処理を加えたものである。図14(b1)と(b2)が二値化後であれば膨張処理が行われ、グレースケール画像の場合は最大値処理が行われる。膨張処理は、例えば図15に示すような処理カーネルが3×3のフィルタで隣接画素を参照して行われる。図15は処理カーネルが3×3の場合で、元の画像に対して、注目画素Cに隣接する画素(1〜8を付した画素)を参照して、これらの値に応じて、変換後の画像における注目画素Cの値を決める。いわゆる4連結膨張処理の場合は、注目画素Cが0(非物体)であって、これに隣接する2、4、6、8のいずれかの番号を付した画素に一つでも255(物体)があれば、注目画素Cを255(物体)に置き換える処理である。また、いわゆる8連結膨張処理の場合は、注目画素Cが0(非物体)であって、これに隣接する1、2、3、4、5、6、7、8いずれかの番号を付した画素に一つでも255(物体)があれば、注目画素Cを255(物体)に置き換える処理である。
最大値処理も図15に示すようなフィルタで隣接画素を参照して行われる。いわゆる4連結最大値処理の場合は、注目画素Cとこれに隣接する2、4、6、8のいずれかの番号を付した画素の最大輝度値を注目画素Cの値とする変換処理である。また、いわゆる8連結最大値処理の場合は、注目画素Cとこれに隣接1、2、3、4、5、6、7、8いずれかの番号を付した画素の中の最大値を注目画素Cの値とする変換処理である。膨張処理や最大値処理により、物体とその周辺の輝度値が大きく膨らむ。
膨張処理または最大値処理に続いて、画像間論理積処理または画像間最小値処理をする。図14(c1)と図14(c2)が二値化された画像のときは画像間論理積処理をして、グレースケール画像のときは画像間最小値処理をする。画像間論理積とは、図14(c1)と図14(c2)の対応する画素が双方とも255(物体)の場合のみ、当該画素を255(物体)とし、それ以外は0(非物体)とする処理で、出力される画像は二値画像である。画像間最小値処理とは、図14(c1)と図14(c2)の対応する画素の輝度の小さい方の値で変換する処理で、出力画像はグレースケールである。この場合は更に、適切なしきい値で二値化する必要がある。ここで、適切なしきい値とは判別分析法で求めたしきい値でもよく、その他、一つの物体がなるべく分離せず、かつ、背景と一体化することのないようにしきい値を選んでもよい。
図14(d1)の格子パターン領域は図14(c1)の44Dと図14(c2)の44Eの画像間論理積処理または画像間最小値処理後の二値化画像である。図14(d1)の格子パターン領域を作る際の適切なしきい値とは、図14(d1)に表れる物体が不適切に分離せず、また、低すぎてノイズに埋もれない程度の値とすることが好ましく、例えば判別分析法で選んでもよい。以上の処理により出力は二値画像となっており、続いてラベル処理を行う。ラベル処理は二値化された画像に対してする処理であり、4連結または8連結の条件を満たす画素群を一つの物体と見なして一つのラベルを付す処理である。ラベル処理により検出された物体に外接する外接矩形を描くことができる。図14(d2)における矩形45は以上説明した一連の処理の結果検出された物体の外接矩形である。こうして検出された物体は、図14(d3)に示すように、図14(a1)から図14(a3)の3つの時系列画像のうち中間の画像である図14(a2)の物体の位置と概ね一致する。搭乗者検出部6は、検出人物の画像上の座標としてこの外接矩形を示す座標を出力する。
また、搭乗者検出部6はパターンマッチング用のテンプレートとして取得すべき領域も検出し、テンプレート登録位置座標として出力する。図16(a)は搭乗者検出部6が、外接矩形45の人物においてテンプレートとして取得する領域である矩形46を検出した例である。矩形46の有する座標に基づいて、図16(b)に示す時系列画像からテンプレートとして取得する画像は、図16(b)において、破線で示した矩形46で示す部分画像である。矩形46の定め方は、人物の外接矩形の上部の所定の面積と予め決めておいてもよい。あるいは、人物の輪郭が密に集中する領域を選択するようにしてもよい。図16(b)の人物44Bは表現の都合上格子パターンで示しているが、実際は被写体の凹凸や色彩に起因する濃淡画像である。そこで、よく知られた輪郭検出処理を施すと、例えば、図16(c)にしめす輪郭が抽出される。この輪郭が密な部分を中心に、予め決めておいた大きさの画像をテンプレートとして取得するようにしてもよい。乗りかご内の画像は、撮像部で上方から撮影することと、上方から照明していることにより、一般的に、足下よりも頭部の方が精細でコントラストがよく、したがって、輪郭も密に抽出しやすい。輪郭を検出するフィルタとして、例えば、図16(d)に示すソーベルフィルタがある。これらのフィルタを順次施して、得られた輪郭の論理和をとると、濃淡画像の輪郭が、45度間隔で8通り360度方向の近似輪郭が得られる。以上、搭乗しようとする人物の画像による検出をするための、搭乗者検出部6における処理の具体例を説明した。尚、テンプレート登録位置座標に基づいてテンプレートを取得する処理は、既に説明した通り不可計量者追跡部9において行われる。
次に不可計量者の画像追跡の一例を図17、図18、図19、図20を使って説明する。画像追跡とは、あるフレーム例えば前フレームであるn−1フレーム(nは自然数)で検出した物体と、現フレーム(nフレーム)で検出した物体とを同一物体として照合し得るか否かを判断して、同一とみなす物体の移動状況を計測するものである。不可計量者追跡部9では例えば、パターンマッチングで差異が少ない物体を同一と判定したり、n−1フレームとnフレームとの間で移動量の最も少ない物体同士を同一と判定したりしている。
このうち、信頼のおける判定方法はパターンマッチングで差異の少ない物体同士なので、検出された物体に登録されたパターン(テンプレート)がある場合はパターンマッチングを試みる。その結果予め定めた差異よりも少ない物体は同一物体が移動したものとみなす。このとき、照合された物体の外接矩形の重心間の距離または、外接矩形の対応する角または辺の中点間の距離はフレームの経過時間の間に物体が移動した距離に関係する量であって、直接的には画像上の画素数で算出される。ここではカメラは固定であるから、カメラの焦点距離等の内部パラメータと乗りかごとカメラ画角の関係を表す外部パラメータを予め既知としておけば透視変換によって、画像上の画素数を乗りかご床上の実際の距離に変換することも可能である。そこで、パターンマッチングによって非常に差異の少ない二つの物体であっても、n−1フレームとnフレーム間の微小な経過時間の間に移動しきれないほどの距離のある二物体は同一物体と判定すべきでない。
以上のように移動距離の上限を考慮して2つのフレーム間の物体の照合を行った後に更に照合できていない物体が存在する場合がある。例えば、フレームの経過時間内に物体の向きや姿勢や形が変化したり、照明のちらつきにより同一の物体であっても輝度のパターンが大きく変化したりした場合である。このような場合でも画像追跡を継続するために、不可計量者追跡部9はパターンマッチングで照合できなかった物体同士は該外接矩形の重心の座標若しくは、外接矩形の一辺であって乗りかごの床に最も近い辺の中点の座標の座標同士のユークリッド距離が最短の物体同士を同一物体とみなして画像追跡をする。このときも、n−1フレームとnフレーム間の微小な経過時間の間に移動しきれないほどの距離のある二物体は同一物体と判定しない。
以上の画像追跡処理を図17の処理フローで示す。不可計量者追跡部9は、撮像部2が出力する時系列デジタル画像の更新サイクルに同期して、サイクル毎に開始から終了までの処理を行う。また、前フレーム(n−1フレーム)から現フレーム(nフレーム)への人物追跡すなわち人物のフレーム間照合を例として説明する。この処理の開始時において、前フレームまでの追跡人物の追跡IDは、追跡ID記憶部13に保持されている。そして、これら追跡IDに対応する検出人物の画像上の座標(物体の座標に相当)とテンプレート登録位置座標(これらを合わせてフレーム間差分人物情報ともいう。)は、不可計量者追跡部9が内蔵するメモリである物体座標記憶部に保持されている。
不可計量者追跡部9は、不可計量者判定部8から新規の追跡IDとフレーム間差分人物情報を受け取ると、不可計量者追跡部9に内蔵の物体座標記憶部にフレーム間差分人物情報(物体の座標)を追加する(ステップs30)。
次に、パターン登録(テンプレート)のある前フレーム人物の現フレームでのパターン照合を行う(ステップs31)。これはパターン登録された登録パターンをテンプレートとして、現フレーム内でマッチング処理を行うことで実施される。パターンマッチングはテンプレート(登録画像)を対象画面上で走査して、該当領域の輝度パターンの差異の小ささまたは類似度の高さを評価して、テンプレートと輝度パターン最小または類似度最高の領域を特定する処理である。マッチング処理の際の探査領域は現フレーム全体でもよいが、前フレームにおける当該人物の座標の周辺に限定してもよい。パターンマッチングにより照合できる人物は、通常は移動が少ないために輝度分布の変化が前フレームと現フレームとの間で少ない場合だからである。
図18はテンプレート走査の例である。図18(a)には現フレーム全体を探査する場合を示す。すなわち、テンプレート56が、前フレームの全範囲55をラスター走査して探査を実施している。一方、図18(b)は探査範囲を破線で示した探査領域58に限定した例である。探査範囲58は、前フレームにおいて、当該人物の領域の一部からテンプレートとして取得した領域57の周辺に2倍など所定の割合で拡大して得た領域である。
対象画面とテンプレートの輝度パターンの差異は例えば(数1)または(数2)によって計算することができる。ここで、F(i,j)は対象画像の座標に応じた輝度値であって、図18(a)に示すように全画面(フレーム)の左上を原点として水平方向にi画素を、垂直方向にj画素というように位置を特定する。T(s,t)はテンプレートの輝度パターンを示していて、その左上を原点として水平方向にs画素、垂直方向にt画素の場所の輝度で表す。E(i,j)は両者の差異を表す関数で、(数1)においては両者輝度パターンの差の絶対値を累積し、(数2)においては両者輝度パターンの差を二乗して正数化を図ってから累積するものである。
(数3)は、対象画面とテンプレートの輝度パターンの類似度を相関係数で計算するものである。F(i,j)とT(s,t)はそれぞれ上記の説明と同様である。Nはテンプレートの画素数を表す。R(i,j)は相関係数で−1から1までの値をとる。対象画面の中の対象箇所とテンプレートとが完全に一致すると値1をとるが、通常は1になることは稀なので、R(i,j)が所定の正数値以上をとる候補の中から最も大きいものを1つ選択することでパターンマッチングによる物体の検出ができる。
そして、ステップs31により前フレームの人物と現フレームの人物の照合がなされる。ここで、照合とは前フレームの当該人物と現フレームの当該人物を移動前後の同一人物とみなして、前フレームの人物が持っていた追跡IDを現フレームの人物に継承して、当該人物の座標値は現フレームの人物の座標で更新することを意味する。また、テンプレートの登録パターンも現フレームの人物の位置で得た画像で更新する。
一方、現フレームにはフレーム間差分で得た人物候補(F人物とも記載する。)が1以上存在する場合がある。これらの候補の中で、ステップs31で照合を完了した人物と重複するものを削除する。同一人物を二重に追跡しないための処理である(ステップs32)。この処理により、現フレーム上で残っているF人物はパターンマッチングで照合できなかった人物である。パターンマッチングで照合できない人物は、前フレームから現フレームにかけて移動により輝度パターンが大きく変化している人物である。このような人物はむしろフレーム間差分で検出しやすい。そこで次のステップs33以降で、前フレームにおける未照合人物と、現フレームにおけるF人物との照合を実施する。
前フレームの未照合人物と、現フレームのF人物の間の全組み合わせの距離を算出する(ステップs33)。距離は画面上で画素数を単位としてユークリッド距離を計算してもよいし、撮像部2の外部パラメータと内部パラメータに基づいて乗りかごの床上の実際の距離に変換して計算してもよい。
次に前フレームの未照合人物と、現フレームのF人物の間の距離に基づく照合をする(ステップs34)。これは前フレームの人物と現フレームのF人物間で距離の小さいものから順次照合を行う。しかし、最小距離に基づいて照合相手を決めようとすると一対多または多対一になる場合がある。
図19は一対多の照合候補の発生する場合の例である。図19では、前フレームの人物と現フレームの人物が同一紙面に表されている。すなわち、格子パターンと破線の外接矩形で表された人物60は前フレームで検出された人物で、点描パターンと実線の外接矩形で表された人物601と602(図19(a1))および、人物604と605(図19(b1))は現フレームで検出された人物である。
図19(a1)の場合において、人物60と人物601の重心間の距離と、人物60と人物602の重心間の距離は等しい。そして、人物601と人物602の重心同士の距離I60と、人物60の大きさW60を比較して、例えばI60がW60以下の場合には、図19(a2)の例のように2つの物体をまとめて一つの外接矩形603で囲み、この中心の座標へ人物60の重心が移動したとして照合を行う。ここで、人物60の大きさW60は、例えば、人物601と人物602の重心を結ぶ線分に平行で、かつ人物60の重心を通る線分(図示せず)と人物60の格子パターン若しくは外接矩形と重なる領域の幅を用いることができる。W60とI60の大小比較は、W60に所定の係数例えば、0.5〜1.5などを乗じたものと比較して一つにまとめるか否かを判定してもよい。
一方、図19(b1)は前フレームの人物60と現フレームの人物604との距離と、人物60と現フレームの人物605との距離が同一であるが、人物60の大きさW60よりも人物604と人物605の距離I60が大きい場合である。この場合は人物60の照合相手として人物604と人物605のいずれか一方を選択し、他方は消去する。いずれを選択するかは、画面上より左上に位置する人物を選択する。または、人物60の外接矩形の縦横サイズ若しくは面積と、より近い外接矩形を有する人物604若しくは605を選択するようにしてもよい。またはこれまでの人物60の移動方向と現フレームの人物への照合後の移動方向の変化がより小さい方の人物604若しくは605を選択するようにすることもできる。
また、図20は多対一の照合候補の発生する場合の例である。図20(a)は前フレームの人物61と人物62があり、それぞれの重心から、現フレームの人物63の重心への距離が等しい例である。これは二人の人物が一時的に重なった場合に起こる状況である。この場合には、人物61または人物62のいずれか一方を現フレームの人物63に照合させて、他方の人物を保留状態にする。図20(b)の場合は人物62を保留状態とした。保留状態は所定の期間消去を延期する処理である。所定の期間とは例えば1秒から5秒程度である。この期間が過ぎた後に消去する。例えば人物62が保留期間の間に所定の距離以内に未照合の物体65が検出されていた場合には人物62は人物65に照合され(図20(c))、人物62の保留期間は終わる。ただし、この保留と消去は次ステップのs35で行われる。以上説明したように、ステップs34では照合可能なものに関してのみ照合処理が行われる。
次にステップs35において、前フレームの未照合人物の削除または保留処理を行う。未照合であった人物については未照合であった回数をカウントアップして、所定の回数連続して未照合の人物の追跡IDを追跡ID記憶部13から削除する。この所定の回数のカウントアップが上記の保留処理をしていることになる。
以上の構成にすることで、第1の実施形態に係るエレベータ監視装置は、荷重センサで計量可能な搭乗者に対しては荷重センサの荷重値に基づいて、失報と誤報を抑制してエレベータ乗りかご内の有人と無人の判定をすることができる。また、荷重センサで計量不可能なほど軽量な人物または小動物である不可計量者に対しても画像追跡により退室を確認することで無人と判断するので失報を抑制することができる。また、不可計量者に限って画像追跡するために画像処理を行う演算部への負荷が軽く安価な演算器で実現が可能である。更に、画像追跡の対象を不可計量者に限るので、追跡ミスが減るため、退室を見逃すことが少なく、これにより誤報を抑制することができるという効果を有する。
また、既存の荷重センサと防犯カメラを備えたエレベータにおいて、演算部4と乗りかご内有人/無人出力部5を追加するだけで、乗りかご内の搭乗者の有無を判定する機能を実現できるという効果がある。尚、乗りかご内有人/無人出力部5の機能は、演算部4が兼ねても良い。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係るエレベータ監視装置20を説明する。図6は、第2の実施形態のエレベータ監視装置20の構成の例である。第2の実施形態は、第1の実施形態の演算部4を、プロセッサ基板21で実現した例である。
プロセッサ基板21は、プロセッサ22と、画像インタフェース(画像IF)23と、センサインタフェース(センサIF)24と、メモリ25と、通信インタフェース26で構成され、これらの構成品は信号線29で接続されている。電源線については適宜連結されているものとし、記載は省略する。画像インタフェース23は、撮像部2による画像をデジタル値としてプロセッサ22で処理できるように変換するものである。センサインタフェース24は、荷重センサ3による荷重値をプロセッサ22で処理できるように変換するものである。通信インタフェース26は、プロセッサ22で乗りかご内の有人/無人を判定した結果を、乗りかご内有人/無人出力部5に出力できるように変換するものである。尚、乗りかご内有人/無人出力部5の機能をプロセッサ基板21で実現しても良い。メモリ25はランダムアクセスメモリ27(以後、RAM27と表記する。)と、リードオンリーメモリ28(以後、ROM28と表記する。)から成っている。ROM28には電源OFF時にも保存されるべきプログラムやパラメータ数値を記録する。一方、処理の過程で変化し得る画像等のデータはRAM27に一時保存する。
プロセッサ基板21では、図3に示す処理フロー例に従って、上記で説明した処理が行われる。ただし、初期設定ステップs01においては、プロセッサ基板21に搭載の、プロセッサ22と、画像インタフェース23と、センサインタフェース24と、メモリ25と、通信インタフェース26の初期設定が行われる。この時にROM28に保存のプログラムがRAM27に展開されるようにしてもよい。ステップs02からステップs06までの処理は前述したとおりである。
以上の構成にすることで、第2実施形態に係るエレベータ監視装置20は、汎用のプロセッサ基板を用いて演算部を構成するので低コストで実現できる効果を有する。また、汎用プロセッサ基板の演算能力が上がると、大きな設計変更をすることもなく第2実施形態に係るエレベータ監視装置の精度も向上するという効果がある。また、メモリ25に保持するパラメータを変更するだけで、適用するエレベータの使用状況に応じた修正をしやすいという効果がある。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係るエレベータ監視装置60を説明する。図11は第3の実施形態に係るエレベータ監視装置60の構成図の例である。第3実施形態に係るエレベータ監視装置60は、例えば、撮像部2と、荷重センサ3と、演算部61と、出力部63と、通信回線64と、報知部65とを有する。また、エレベータ監視装置60は、エレベータの制御を行うエレベータ制御部71を有していても良い。
エレベータ監視装置60は、第1の実施の形態のエレベータ監視装置1の機能に加え、荷重センサ3で計量できないほどに軽量な幼児または小動物などの不可計量者が単独で迷い込んでいるか否かを判定する機能を付加したものである。この不可計量者の迷い込みは、第1の実施形態における不可計量者混入による有人判定のうちの特殊ケースに相当するものである。したがって、迷い込みが「有り」と判定されたということは、乗りかご内が「有人」であると判定していることを意味する。
エレベータ監視装置60は、迷い込み判定結果に基づいて出力部63で出力形式を通信回線64に適合させて、管理事務所または遠隔監視センターにある報知部65を動作させて迷い込みが発生したことを報知する。通信回線64は専用回線でも、LANやWEBなどのネットワーク回線でもよい。出力部63は、乗りかご内有人/無人出力部5の機能に加え、迷い込みについても出力する機能を有する。
演算部61の構成は、乗りかご内有人/無人判定部12以外は演算部4と同一の構成で、動作も同一である。そして、乗りかご内有人/無人判定部12に、迷い込み有無判定部62の機能が組み込まれる。迷い込み有無判定部62は、不可計量者混入有無判定部10の判定結果と、荷重値による搭乗者有無判定部11の判定結果に基づいて、乗りかご内に、不可計量者(幼児や小動物など)が迷い込んでいるか否かを判定する。
この判定は図12に示す迷い込み有無判定部の出力表の例に基づいて行われる。図12において、不可計量者混入有無判定部10の出力が“無”の場合は、荷重値による搭乗者有無判定部11の出力に関わらず単独の迷い込みは「無し」と判定される。不可計量者混入有無判定部10の出力が“有”の場合は、荷重値による搭乗者有無判定部11の出力が“以上”または“有人”の場合には単独の迷い込みは「無し」と判定され、荷重値による搭乗者有無判定部11の出力が“未満”または“無人”の場合には単独の迷い込みは「有り」と判定される。
このような構成により、演算部61は幼児または小動物といった不可計量者の単独の迷い込みを即座に検出することができる。
ここで、不可計量者が複数搭乗すると加重センサ値は有人荷重しきい値以上になる場合がある。そうすると、図12の迷い込み有無判定部の出力表の左上欄に基づいて「無し」と判定される。そこで、単独でなくとも幼児または小動物といった不可計量者のみが搭乗していることを検出したい場合には、不可計量追跡部9が出力する追跡IDの数に応じて、有人荷重値しきい値を異ならせる構成としても良い。このようにすると、不可計量者の複数の搭乗に対しては、荷重値による搭乗者有無判定部11の判定結果は“未満”になるので、不可計量者混入有無判定部10の判定結果“有”とあいまって、単独でなくとも幼児または小動物といった不可計量者のみが搭乗している迷い込みの事象を「有り」と判定することができる。
尚、有人荷重値しきい値は、迷い込みの判定に用いる場合には迷い込みしきい値と言い換えることができる。迷い込みしきい値は、有意差しきい値と同一でもよいし、異ならせても良い。また、有人/無人の判定に用いる場合の有人荷重値しきい値と迷い込みの判定に用いる場合の迷い込みしきい値は同一としても良いが、異なるようにしても良い。
以上の構成にすることで、第3の実施形態に係るエレベータ監視装置60は、幼児または小動物といった不可計量者の迷い込みを即座に検出することができるという効果を有する。
また、迷い込みが発生した場合には、エレベータ制御部71は、図示しない乗りかごのドアが閉まらないように制御しても良い。
また、第2の実施形態に対して第3の実施形態のような迷い込み判定の機能を付加してもよい。
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態に係るエレベータ監視装置70を説明する。図13は第4の実施形態に係るエレベータ監視装置70の構成図の例であって、第1の実施形態のエレベータ監視装置1に加え、エレベータ監視装置70は、エレベータ制御部71を有しており、エレベータ制御部71が第1の実施形態のエレベータ監視装置1で判定した有人/無人の出力を参照して動作する構成である。
一般的にエレベータ制御部は各階床の操作盤からの呼び操作に対応して呼びのあった階床に乗りかごを昇降させる制御や、乗りかご内の操作盤の操作に応じた階床に昇降する制御をする。そして所定期間呼び操作やかご内操作が無い場合に、保守モード運転をする。保守モード運転とは、エレベータ昇降に必要なモータトルクやその他機器の健全性確認に必要なデータを取得するための運転である。階床からの呼び操作があったり、乗りかご内に搭乗者があったりする時にこの運転をすることは安全上および利便性の点から問題があるので、上記のように、利用されていない期間が所定以上続くことを確認した上で保守モード運転をしている。しかし、24時間を通じて利用頻度の高いエレベータでは保守モード運転をすることができないという課題があった。
そこで、第4の実施形態に係るエレベータ監視装置70は、この課題を解決するもので、エレベータ制御部71は各階床の操作盤からの呼び操作がなく、かつ、第1の実施形態で説明した乗りかご内有人/無人判定の結果、乗りかご内が無人である場合は、即座に、必要な保守モード運転を実施する動作をする。
以上の構成にすることで、第4の実施形態に係るエレベータ監視装置70は、常時利用頻度の高いエレベータであっても、利用期間の間隙をぬって、保守モード運転を実施できるという効果を有する。
また、一般的にエレベータは地震発生後の復旧に際して、保守モード運転に準じた動作である復旧運転をする必要がある。しかし、乗りかご内に搭乗者の閉じ込められていないことを確認した後に復旧運転をしなければならない。そのため、地震の治まった後に保守員が現場へ急行して目視確認した後に復旧させなければならないという課題があった。
そこで、第4の実施形態に係るエレベータ監視装置70は、この課題を解決するもので、エレベータ制御部71は地震発生前に、乗りかご内が無人であると判定していた場合は、地震の治まった後に速やかに復旧運転をする。また、有人であった場合には、搭乗者が閉じ込められている可能性がある旨を図示しない報知部で遠隔監視センターに報知する動作をとることができる。
以上の構成にすることで、第4の実施形態に係るエレベータ監視装置70は、地震発生直後に、乗りかご内に閉じ込められている搭乗者を迅速に発見したり、無人の場合に復旧運転をしたりすることができるという効果を有する。
また、一般的にエレベータは目的の階床に昇降する時に、搭乗者に不快感を与えぬような加減速を行う。しかし、搭乗者のない場合にもこのような加減速運転をすることは各階床で待っている利用者を待たせるという課題があった。
そこで、第4の実施形態に係るエレベータ監視装置70は、この課題を解決するもので、エレベータ制御部71は乗りかご内が無人であると判定する場合には乗り心地を考慮せず急加減速運転をする。これは、エレベータ制御部71が、乗りかご内有人/無人判定部が「無人」と判定した場合に、「有人」の場合よりも急加減速で呼ばれた階床に昇降するように制御することで実現できる。
以上の構成にすることで、第4の実施形態に係るエレベータ監視装置70は、利用者の待ち時間を短縮できるという効果を有する。
以上の第4の実施形態の説明では、第1の実施形態に機能を付加した例で説明したが、これに限られず、第2の実施形態または第3の実施形態に機能を付加した構成としてもよい。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。