JP5930011B1 - 生体情報検出装置、電子機器及び生体情報検出方法 - Google Patents

生体情報検出装置、電子機器及び生体情報検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 複数の発光部からの光により取得される特性の異なる信号に基づいて、高精度な脈波情報を取得する生体情報検出装置、電子機器及び生体情報検出方法等を提供すること。【解決手段】 生体情報検出装置400は、被検体に対して光を出射する少なくとも1つの発光部(150等に対応)と、被検体からの光を受光する少なくとも1つの受光部(140に対応)と、受光部から出力される検出信号に基づいて、生体情報の検出処理を行う処理部200を含み、処理部200は、被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧である場合の第1の検出信号と、押圧が第1の押圧に比べて小さい第2の押圧である場合の第2の検出信号とに基づいて、生体情報の検出処理を行う。【選択図】 図5

Description

本発明は、生体情報検出装置、電子機器及び生体情報検出方法等に関する。
脈波は血液の容積の変化として現れるため、光電脈波センサーは、測定対象となる部位の血量の変化を捉えることによって脈波を測定することができる。しかし、測定される部分の血液の容積は、心臓の拍動(すなわち、脈波)のほか、人体の動き(以下、体動という)によっても変化する。そのため、光電脈波センサーにより脈波を測定する際には、心臓から測定される部位まで伝搬する過程で、体動によるノイズが波動に含まれる場合がある。つまり、血液は流体であり、血管には弾性があるため、体動によって生じた血液の流れが血液量の変化を生み、偽脈動として測定されてしまう場合がある。
このような体動によるノイズ成分を除去するための演算処理を行う脈波測定装置が開発されている。例えば、特許文献1は、異なる波長の光をそれぞれ照射して、それらの反射光を同時に測定し、測定値から脈動成分を抽出する手法が記載されている。この手法は、動脈血で支配的な酸化ヘモグロビンと静脈血で支配的な還元ヘモグロビンとで、異なる吸光特性があることを利用している。
特開昭55−120858号公報
しかし、反射光を検知して脈波を測定するセンサーにおいて用いられる波長の異なる照射光は、生体内部への光の浸透深度も異なる。そのため、特許文献1に開示された技術では、複数のセンサー間で生じる吸光度の差が、波長が異なる光の浸透深度の差による影響をも含むこととなり、体動によるノイズを低減することが困難である。
本発明の幾つかの態様によれば、複数の発光部からの光により取得される特性の異なる信号に基づいて、高精度な脈波情報を取得する生体情報検出装置、電子機器及び生体情報検出方法等を提供することができる。
本発明の一態様は、被検体に対して光を出射する少なくとも1つの発光部と、前記被検体からの光を受光する少なくとも1つの受光部と、前記受光部から出力される検出信号に基づいて、生体情報の検出処理を行う処理部と、を含み、前記処理部は、前記被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧である場合の前記検出信号である第1の検出信号と、前記被検体の測定部位に与えられる前記押圧が前記第1の押圧に比べて小さい第2の押圧である場合の前記検出信号である第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行う生体情報検出装置に関係する。
本発明の一態様では、第1の押圧となる状態で取得された第1の検出信号と、第2の押圧となる状態で取得された第2の検出信号とに基づいて生体情報を検出する。押圧の状態が異なることで、受光結果(検出信号)の特性が異なるため、特性の異なる複数の信号を用いることで、生体情報を精度よく検出すること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記処理部は、第1のタイミングでの前記受光部の前記第1の検出信号と、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングでの前記受光部の前記第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行ってもよい。
これにより、第1の検出信号と第2の検出信号とで、それぞれ受光部での受光タイミングを異ならせることが可能になる。
また、本発明の一態様では、前記発光部として、第1の発光部と第2の発光部を有し、前記処理部は、前記第1の発光部の発光に基づく前記第1のタイミングでの前記受光部の前記第1の検出信号と、前記第2の発光部の発光に基づく前記第2のタイミングでの前記受光部の前記第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行ってもよい。
これにより、2つの発光部を用い、各発光部に起因する光の受光部での受光タイミングを制御することで、適切なタイミングで検出信号を取得すること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記第2のタイミングは、前記第1のタイミングのあとのタイミングであり、第3のタイミングは、前記第2のタイミングのあとのタイミングであり、第4のタイミングは、前記第3のタイミングのあとのタイミングである場合に、前記処理部は、前記第1のタイミング及び前記第3のタイミングでの前記受光部の前記第1の検出信号を取得し、前記第2のタイミング及び前記第4のタイミングでの前記受光部の前記第2の検出信号を取得してもよい。
これにより、少なくとも4つのタイミングにおいて、第1の検出信号と第2の検出信号が受光部において交互に取得されることになり、特性の異なる2つの検出信号を時間的に近いタイミングで取得すること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記処理部は、第1のタイミングでの前記受光部の前記第1の検出信号と、前記第1のタイミングでの前記受光部の前記第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行ってもよい。
これにより、測定条件(押圧)の異なる検出信号に基づいて生体情報の検出処理を行うことができるので、生体情報を精度よく検出することが可能になる。
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前記第2の検出信号に基づいて、前記第1の検出信号の補正処理を行い、補正後の前記第1の検出信号に基づいて前記生体情報の検出処理を行ってもよい。
これにより、第2の検出信号を第1の検出信号の補正処理に用いること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前記第1の検出信号に基づいて、前記第2の検出信号の補正処理を行い、補正後の前記第2の検出信号に基づいて前記生体情報の検出処理を行ってもよい。
これにより、第1の検出信号を第2の検出信号の補正処理に用いること等が可能になる。
また、本発明の一態様では、前記処理部は、前記補正処理として、前記検出信号に含まれる体動ノイズを低減する体動ノイズ低減処理を行ってもよい。
これにより、上記補正処理として体動ノイズ低減処理を行うことができ、体動ノイズの影響を抑止して高精度で生体情報を検出すること等が可能になる。
また、本発明の他の態様は、上記の生体情報検出装置を含む電子機器に関係する。
また、本発明の他の態様は、被検体に対して光を出射する少なくとも1つの発光部と、前記被検体からの光を受光する少なくとも1つの受光部と、を含む生体情報検出装置における生体情報検出方法であって、前記被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧である場合の検出信号である第1の検出信号と、前記被検体の測定部位に与えられる前記押圧が前記第1の押圧に比べて小さい第2の押圧である場合の前記検出信号である第2の検出信号とに基づいて、生体情報の検出処理を行う生体情報検出方法に関係する。
図1(A)〜図1(C)は本実施形態に係るセンサーユニットの構成例。 図2(A)、図2(B)は本実施形態の生体情報検出装置の外観図。 本実施形態の生体情報検出装置の外観図。 生体情報検出装置の装着及び端末装置との通信についての説明図。 生体情報検出装置の機能ブロック図。 センサーユニットの外観を表す斜視図。 受光部と第1,第2の発光部の配置例を表す平面図。 押圧に対する吸光度の変化を例示する図。 押圧に対する体動ノイズ感度の変化を例示する図。 図10(A)、図10(B)は押圧差を設けない場合と設けた場合での、ノイズ低減処理によるMN比(SN比)の改善度合いを説明する図。 カフ押圧と受光部で検出されるDC成分、AC成分の関係図。 図12(A)〜図12(C)は本実施形態に係るセンサーユニットの他の構成例。 図13(A)、図13(B)は第1、第2の発光部に対応する位置又は領域の説明図、 図14(A)、図14(B)はフレーム部の配置例を表す平面図及び断面図。 図15(A)、図15(B)はフレーム部の他の配置例を表す平面図。 発光部と受光部の距離が光の浸透深度に与える影響を説明する図。 発光部と受光部の距離と検出信号の信号強度の関係を示す図。 発光部と受光部の距離と深さ方向での測定距離の関係についての説明図。 図19(A)、図19(B)は発光部と受光部の間の距離に差を設ける場合の説明図。 各発光部の発光タイミング及び受光部の受光タイミングの例。 図21(A)、図21(B)は第2の検出信号を用いた体動ノイズ低減処理を説明する図。 適応フィルター処理を説明する図。 信号処理の流れを説明する図。
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.本実施形態の手法
まず本実施形態の手法について説明する。上述したように、光電センサーを用いて脈波情報等の生体情報を検出する場合、体動によるノイズが問題となる。そのため、精度よく生体情報を検出するには、何らかの手法により体動ノイズを低減する必要がある。ここで、体動ノイズとは、被験者の体動に起因するノイズのことであり、被検体の動作に伴う速度、加速度、動作、姿勢などの変化に起因する物理的なノイズと、被検体の動作による装着状態の変化によって生じる、外光の入射や測定位置のズレなど、光電センサーの測定環境の変化に起因する光学的なノイズとを含み、これらのうち少なくともいずれかを意味する。
体動ノイズを低減する際には、光電センサーの検出信号のうち、脈信号に対応する成分をできるだけ維持し、体動ノイズに対応する成分を低減(狭義には除去)する。つまり、体動ノイズの低減処理では、体動ノイズに対応する信号成分がどのようなものであるかを知る必要がある。
これに対して、モーションセンサーを用いることで、体動ノイズを低減する手法が知られている。モーションセンサーは、ユーザー(生体情報検出装置の装着者)の動きを検出するセンサーであるため、当該モーションセンサーを用いることで、体動に対応する信号、即ち体動ノイズに対応する信号が取得可能である。ここでのモーションセンサーは、例えば加速度センサーやジャイロセンサー、気圧センサー等が考えられる。
本実施形態においても、上記モーションセンサーを用いて体動ノイズを低減する手法を併用することは妨げられないが、本出願人は他の体動ノイズ低減手法を提案する。具体的には、脈信号を検出するための光を射出する第1の発光部とは異なる第2の発光部を用いて、体動ノイズが多く含まれる信号を取得する。
上述したように、光電センサーでの検出信号には体動ノイズが含まれてしまうものである。この点を利用し、第2の発光部に対応する信号を、敢えて脈信号の感度が低く、体動ノイズの感度が高くなるように設定することで、主として体動ノイズを含む検出信号を取得可能である。
第2の発光部からの光に基づいて体動ノイズに対応する信号を検出できれば、第1の発光部からの光に基づく検出信号(第1の検出信号)から、第2の発光部からの光に基づく検出信号(第2の検出信号)に対応する成分を除去(低減)することで、体動ノイズの低減が可能となる。この際、第2の検出信号では脈信号の感度が低いため、第1の検出信号に含まれる脈成分まで過剰に低減してしまうことはない。
ただし、このような処理を可能にするためには、第1の検出信号と第2の検出信号とで、各信号に含まれる体動ノイズの特性(例えば周波数特性)が一致する、或いは十分近くなる必要がある。つまり、第1の検出信号は主として脈信号を含むものであり、第2の検出信号は主として体動ノイズを含むものであるように、信号特性に差を持たせつつも、2つの検出信号の相関は高く保たなくてはならない。
特許文献1の手法では、複数の受光部を設けて特性の異なる信号を取得しているが、各受光部では、それぞれ検出する光の周波数帯が大きく異なる。そのため、各受光部での検出信号の特性を異ならせることは可能であっても、ある程度の相関関係を持たせることは困難である。なぜなら、光の波長が異なれば生体内への浸透深度も異なり、検出対象となる血管或いは骨等の構造がそもそも異なってしまうためである。
そのため、本実施形態においては、用いる光の波長帯は複数の検出信号で同じものとする。なお、同じ波長帯の光とは、強度が最大となる波長が完全同一であることを意味するのではなく、強度が最大となる波長が所定の範囲(例えば、同一色の範囲)に収まっていることをいう。第1の発光部と第2の発光部が出力する光は、例えば、ともに470nm以上610nm以下の範囲に含まれる波長帯の光である。より具体的には、第1の発光部、第2の発光部が出力する光は、520nm以上570nm以下の範囲に含まれる波長帯の光である。この波長帯の光は、他の波長に比べて血管中のヘモグロビンに反射されやすい。具体的には、たとえば緑(500nm〜570nm)である。
以下本明細書では、上述したように、各検出信号にある程度の相関関係を持たせつつ、且つ特性が異なるという要件を満たすような、センサーユニット及び生体情報検出装置の具体的な構成について説明する。図8、図9、図17等を用いて後述するように、脈信号に対する感度や体動ノイズに対する感度は、被検体に対して付加される押圧、或いは発光部と受光部間の距離に応じて変化することがわかっている。そして、被検体に対して付加される押圧は、発光部に対応する位置又は領域において被検体に接触する部材の高さにより調整が可能である。なお、被検体に接触する部材とは、図1(A)〜図1(C)を用いて後述するように発光部自体の面であってもよいし、図12(A)〜図12(C)を用いて後述するように発光部よりも被検体側に設けられる透光部材50であってもよい。
以下では、押圧差を設けることにより体動ノイズ低減処理が実現できることを説明し、当該押圧差を設けるための詳細な構造を説明する。具体的には、発光部に対応する位置(領域)における被検体との接触位置(領域)の高さ、及び、発光部と受光部間の距離の設定手法や、当該手法により適切に設定された高さ及び距離を有するセンサーユニット、生体情報検出装置の具体的な構成について説明することになる。
以上のように、本実施形態に係る生体情報検出装置は、被検体に対して光を出射する少なくとも1つの発光部と、被検体からの光を受光する少なくとも1つの受光部と、受光部から出力される検出信号(受光部からの受光結果)に基づいて、生体情報の検出処理を行う処理部200を含む。生体情報検出装置400は、例えば図5を用いて後述する構成であってもよい。そして、処理部200は、被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧P1である場合の検出信号である第1の検出信号と、被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧P1に比べて小さい第2の押圧P2である場合の検出信号である第2の検出信号とに基づいて、生体情報の検出処理を行う。
押圧差を実現するためのセンサーユニット40の具体的な構成としては、図1(A)〜図1(C)に示した構造等が考えられ、例えば図1(A)のセンサーユニット40は、被検体に対して光を出射する第1の発光部150と、被検体に対して光を出射する第2の発光部151と、被検体からの光を受光する受光部140を含み、第1の発光部150に対応する位置又は領域における、被検体との接触位置又は接触領域の高さをH1とし、第2の発光部151に対応する位置又は領域における、被検体との接触位置又は接触領域の高さをH2とした場合に、H1>H2である。
ここで、高さをどのように定義するかは種々考えられるが、例えば所与の基準面を設定し、当該基準面に対する距離(具体的には基準面を起点として、当該基準面に垂直な方向での対象位置までの長さ)を高さとしてもよい。ここで、所与の部分において大きな押圧を与えるためには、当該部分は生体情報検出装置400(狭義にはセンサーユニット40)の他の部分よりも相対的に被検体側に突出する必要がある。その点を考慮すれば、所与の基準面とは、生体情報検出装置400の装着時において、被検体との距離が均一となる面であり、仮に被検体が平面であれば当該平面に平行な平面となる。なお、生体情報検出装置400の装着時に、センサーユニット40が被検体に対して傾くような機器の実装を行う意義が小さいことから、センサーユニット40の基準となる面、例えば発光部(LED)や受光部(PD)が実装される基板(メイン基板)160は被検体面に平行、或いはそれに近い状態となることが期待される。実際には、被検体は理想的な平面ではなく、生体情報検出装置400の装着状態もユーザーの運動状態等により変動することになるが、上記「所与の基準面」としてセンサーユニット40の素子が実装される基板面を考慮することに大きな問題はない。よって、本実施形態における所与の基準面とは、例えば基板160の面、或いはそれに平行な面を考えればよい。また、ここでの所与の基準面は、何らかの部材が設けられる物理的な面を考慮するものに限定されず、仮想的な面であってもよい。
また、第1の発光部150、第2の発光部151に対応する位置又は領域とは、各発光部の中心位置であってもよいし、各発光部の配置領域であってもよいし、各発光部の配置領域を含む領域であってもよく、具体例については後述する。
また、接触位置又は接触領域とは、生体情報検出装置400(センサーユニット40)が被検体と接触する位置又は領域のことである。なお、生体情報検出装置400と被検体は複数の位置、或いはある程度の広さの領域において被検体と接触することが想定されるが、ここではそのうちの第1の発光部150、第2の発光部151に対応する位置又は領域におけるものを考慮することになる。狭義には、第1の発光部150、第2の発光部151に対応する位置又は領域から、基準面に垂直な方向の直線と被検体との交点を考えればよい。第1の発光部150、第2の発光部151に対応する位置又は領域における接触位置又は接触領域、及びその高さの具体例については後述する。なお、以下の本明細書では簡略化のため、基本的に接触位置について説明を行うが、以下における接触位置は接触領域に拡張して考えることが可能である。
なお、図1(A)〜図1(C)では簡単のために本実施形態に係る生体情報検出装置の構成を模式的に図示しており、図中の寸法や比率は実際のものとは異なる。また、この点は図12(A)〜図12(C)等においても同様である。
このようにすれば、第1の発光部150から射出された光に対応する受光結果である第1の受光結果(第1の検出信号)と、第2の発光部151から射出された光に対応する受光結果である第2の受光結果(第2の検出信号)とでは、押圧の状態を異ならせることが可能になる。具体的には、第1の検出信号は第1の押圧P1に対応し、第2の検出信号はP2<P1となる第2の押圧P2に対応する。
また、本実施形態に係るセンサーユニット40は、第1の発光部150と受光部140との距離をL1とし、第2の発光部151と受光部140との距離をL2とした場合に、図19(A)に示すようにL1<L2であってもよい。詳細については図17や図18を用いて後述する。
このようにすれば、各発光部に対応する位置又は領域における被検体との接触位置の高さと、受光部と各発光部間の距離の少なくとも一方に差を設けることができ、上述したように第1の発光部150からの光に基づいて主として脈信号を検出し、第2の発光部151からの光に基づいて主として体動ノイズを検出することが可能になる。そのため、第1の検出信号に対して、第2の検出信号を用いた体動ノイズ低減処理を行うことや、体動ノイズ低減処理後の第1の検出信号から精度のよい生体情報を求めること等が可能になる。
なお、図1(A)〜図1(C)等に示したように、2組の光電センサーで発光部と受光部140の間の距離が等しいものとしてもよい。つまり、発光部と受光部140の間の距離に差を設ける構造は必須ではなく、必要に応じて用いればよい。
2.生体情報検出装置等の構成例
2.1 生体情報検出装置の全体構成例
図2(A)、図2(B)、図3に本実施形態の生体情報検出装置400(生体情報測定装置)の外観図を示す。図2(A)は生体情報検出装置400を正面方向側から見た図であり、図2(B)は上方向側から見た図であり、図3は側面方向側から見た図である。
図2(A)〜図3に示すように本実施形態の生体情報検出装置400はバンド部10とケース部30とセンサーユニット40を有する。ケース部30はバンド部10に取り付けられる。センサーユニット40は、ケース部30に設けられる。また生体情報検出装置400は後述する図5に示すように処理部200を有する。処理部200は、ケース部30に設けられ、センサーユニット40からの検出信号に基づいて生体情報を検出する。なお、本実施形態の生体情報検出装置400は図2(A)〜図3の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
バンド部10はユーザーの手首に巻き付けて生体情報検出装置400を装着するためのものである。バンド部10はバンド穴12、バックル部14を有する。バックル部14はバンド挿入部15と突起部16を有する。ユーザーは、バンド部10の一端側を、バックル部14のバンド挿入部15に挿入し、バンド部10のバンド穴12にバックル部14の突起部16を挿入することで、生体情報検出装置400を手首に装着する。この場合、どのバンド穴12に突起部16を挿入するかに応じて、後述するセンサーユニット40の押圧(手首表面に対する押圧)の大きさが調整される。なお、バンド部10は、バックル部14の代わりに尾錠を有する構成としても良い。
ケース部30は、生体情報検出装置400の本体部に相当するものである。ケース部30の内部には、センサーユニット40、処理部200等の生体情報検出装置400の種々の構成部品が設けられる。即ち、ケース部30は、これらの構成部品を収納する筐体である。このケース部30は例えばトップケース34とボトムケース36を有する。なおケース部30は、トップケース34とボトムケース36に分離される態様のものでなくてもよい。
ケース部30には発光窓部32が設けられている。発光窓部32は透光部材により形成されている。そしてケース部30には、フレキシブル基板に実装された発光部(LED、光検出ユニットの発光部150とは異なる報知用の発光部)が設けられており、この発光部からの光が、発光窓部32を介してケース部30の外部に出射される。
図3に示すようにケース部30には端子部35が設けられている。生体情報検出装置400を図示しないクレードルに装着すると、クレードルの端子部とケース部30の端子部35とが電気的に接続される。これによりケース部30に設けられる二次電池(バッテリー)の充電が可能になる。なお、生体情報検出装置400にmicroUSBなどの端子を設け、microUSBケーブルを使って充電するように構成しても良い。
センサーユニット40は被検体の脈波等の生体情報を検出するものである。例えばセンサーユニット40は、図1(A)等に示すように受光部140と、第1の発光部150と、第2の発光部151を有する。またセンサーユニット40は、図12(A)〜図12(C)を用いて後述するように透光部材50を有してもよい。そして、被検体との接触位置において押圧を与えた状態で、第1の発光部150、第2の発光部151が光を出射し、その光が被検体(血管)により反射された光を受光部140が受光し、その受光結果が第1の検出信号、第2の検出信号として処理部200に出力される。
そして処理部200は、センサーユニット40からの第2の検出信号に基づいて第1の検出信号のノイズ低減処理を行い、ノイズ低減処理後の第1の検出信号に基づいて脈波等の生体情報を検出する。なお本実施形態の生体情報検出装置400の検出対象となる生体情報は、脈波(脈拍数)には限定されず、生体情報検出装置400は、脈波以外の生体情報(例えば血液中の酸素飽和度、体温、心拍等)を検出する装置であってもよい。
図4は生体情報検出装置400の装着及び端末装置420との通信についての説明図である。図4に示すように被検体であるユーザーは手首410に生体情報検出装置400を時計のように装着する。図3に示すように、ケース部30の被検体側の面にはセンサーユニット40が設けられている。従って、生体情報検出装置400が装着されると、センサーユニット40が手首410の皮膚表面に接触して押圧を与え、その状態でセンサーユニット40の第1の発光部150、第2の発光部151が光を発光し、受光部140が反射光を受光することで、脈波等の生体情報が検出される。なお、装着部位は足首、指、上腕などでも良い。
生体情報検出装置400と端末装置420は通信接続されて、データのやり取りが可能になっている。端末装置420は、例えばスマートフォン、携帯電話機、フィーチャーフォン等の携帯型通信端末である。或いは端末装置420は、タブレット型コンピュータ等の情報処理端末であってもよい。生体情報検出装置400と端末装置420の通信接続としては、例えばブルートゥース(Bluetooth(登録商標))等の近接無線通信(NFC)を採用できる。このように生体情報検出装置400と端末装置420が通信接続されることで、端末装置420の表示部430(LCD等)に、脈拍数や消費カロリーなどの各種の情報を表示できる。即ち、センサーユニット40の検出信号に基づき求められた各種の情報を表示できる。なお脈拍数や消費カロリーなどの情報の演算処理は、生体情報検出装置400において実行してもよいし、その少なくとも一部を端末装置420において実行してもよい。
生体情報検出装置400には、発光窓部32が設けられており、報知用の発光部の発光(点灯、点滅)により、各種の情報をユーザーに報知する。例えば脂肪燃焼ゾーンに入った場合や脂肪燃焼ゾーンから出た場合に、これを発光窓部32を介した発光部の発光により報知する。また端末装置420においてメール等が受信されると、それが端末装置420から生体情報検出装置400に通知される。そして生体情報検出装置400の発光部が発光することで、メール等の受信がユーザーに通知される。
図2(A)〜図4に示した例では、生体情報検出装置400にはLCD等の表示部が設けられておらず、文字や数字等で報知する必要がある情報は、端末装置420の表示部430に表示される。このように図4では、LCD等の表示部を設けずに、必要最小限の情報を発光部の発光によりユーザーに報知することで、生体情報検出装置400の小型化を実現している。また生体情報検出装置400に表示部を設けないことで、生体情報検出装置400の美観についても向上できる。ただし、生体情報検出装置400がLCDや有機ELディスプレイなどの表示部を有する変形実施も可能である。
なお、本実施形態の手法は、生体情報検出装置400に適用されるものに限定されず、センサーユニット40に適用されてもよい。センサーユニット40の詳細な構成については後述する。また、本実施形態の手法はセンサーユニット40を含む電子機器、或いは生体情報検出装置400を含む電子機器にも適用できる。
また、本発明の他の態様は、被検体に対して光を出射する少なくとも1つの発光部と、前記被検体からの光を受光する少なくとも1つの受光部と、を含む生体情報検出装置における生体情報検出方法であって、前記被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧である場合の検出信号である第1の検出信号と、前記被検体の測定部位に与えられる前記押圧が前記第1の押圧に比べて小さい第2の押圧である場合の前記検出信号である第2の検出信号とに基づいて、生体情報の検出処理を行う生体情報検出方法(生体情報検出装置の作動方法)に適用することも可能である。
2.2 機能ブロック図
図5に本実施形態の生体情報検出装置400の機能ブロック図を示す。図5では生体情報検出装置400は、センサーユニット40、モーションセンサー部170、振動発生部175、処理部200、記憶部240、通信部250、アンテナ252、報知部260を含む。なお本実施形態の生体情報検出装置400は図5の構成に限定されず、その構成要素の一部を省略したり、他の構成要素に置き換えたり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
センサーユニット40は、脈波等の生体情報を検出するものであり、受光部140、第1の発光部150、第2の発光部151を含む。ただし、センサーユニット40が3つ以上の発光部を有してもよい。また、ここでは図1(A)〜図1(C)等に示すように受光部140が複数の発光部で共有される例を示したが、受光部側についても、1つに限定されず2つ以上の受光部を有してもよい。
これらの受光部140、第1の発光部150、第2の発光部151等により脈波センサー(光電センサー)が実現される。図5の場合であれば、受光部140と第1の発光部150により第1の脈波センサーが実現され、受光部140と第2の発光部151により第2の脈波センサーが実現される。センサーユニット40は、複数の脈波センサーにより検出された信号を、検出信号(脈波検出信号)として出力する。
モーションセンサー部170は、種々のモーションセンサーのセンサー情報に基づいて、体動に応じて変化する信号である体動検出信号を出力する。モーションセンサー部170は、モーションセンサーとして例えば加速度センサー172を含む。なお、モーションセンサー部170は、モーションセンサーとして圧力センサーやジャイロセンサー、GPS受信機などの位置センサーなどを有していてもよい。
処理部200は、例えば記憶部240をワーク領域として、各種の信号処理や制御処理を行うものであり、例えばCPU等のプロセッサー或いはASICなどの論理回路により実現できる。処理部200は、信号処理部210、拍動情報演算部220、報知制御部230を含む。
信号処理部210は各種の信号処理(フィルター処理等)を行うものであり、例えば、センサーユニット40からの脈波検出信号やモーションセンサー部170からの体動検出信号などに対して信号処理を行う。
例えば信号処理部210は体動ノイズ低減部212と、第2の体動ノイズ低減部214を含む。体動ノイズ低減部212は、脈波検出信号のうち、第2の検出信号に基づいて第1の検出信号から体動に起因したノイズである体動ノイズを低減(除去)する体動ノイズ低減処理を行う。また第2の体動ノイズ低減部214は、モーションセンサー部170からの体動検出信号に基づいて、第1の検出信号から、体動ノイズを低減する第2の体動ノイズ低減処理を行う。具体的には、体動ノイズ低減部212での体動ノイズ低減処理は、スペクトラム減算法を用い、第2の体動ノイズ低減部214での第2の体動ノイズ低減処理は適応フィルターなどを用いればよい。体動ノイズ低減部212、第2の体動ノイズ低減部214での処理の詳細は後述する。なお、図5では体動ノイズ低減部212での体動ノイズ低減処理後に、第2の体動ノイズ低減部214での第2の体動ノイズ低減処理が行われる構成を示したが、処理順序の逆転、省略等、種々の変形実施が可能である。
拍動情報演算部220は、信号処理部210からの信号等に基づいて、拍動情報の演算処理を行う。拍動情報は例えば脈拍数などの情報である。具体的には、拍動情報演算部220は、体動ノイズ低減部212、第2の体動ノイズ低減部214でのノイズ低減処理後の脈波検出信号に対してFFT等の周波数解析処理を行って、スペクトルを求め、求めたスペクトルにおいて代表的な周波数を心拍の周波数とする処理を行う。求めた周波数を60倍にした値が、一般的に用いられる脈拍数(心拍数)となる。なお、拍動情報は脈拍数そのものには限定されず、例えば脈拍数を表す他の種々の情報(例えば心拍の周波数や周期、およびそれらの変動等)であってもよい。また、拍動の状態を表す情報であってもよく、例えば血液量そのものを表す値を拍動情報としてもよい。
報知制御部230は報知部260を制御する。報知部260(報知デバイス)は、報知制御部230の制御により、ユーザーに各種の情報を報知する。報知部260としては例えば報知用の発光部を用いることができる。この場合には報知制御部230はLEDに流れる電流を制御することで、発光部の点灯、点滅等を制御する。なお報知部260は、LCD等の表示部やブザー等であってもよい。
また報知制御部230は振動発生部175の制御を行う。振動発生部175は、振動により各種の情報をユーザーに報知するものである。振動発生部175は例えば振動モーター(バイブレーター)により実現できる。振動モーターは、例えば、偏芯した錘を回転させることで振動を発生する。具体的には駆動軸(ローター軸)の両端に偏心した錘を取り付けてモーター自体が揺れるようにする。振動発生部175の振動は報知制御部230により制御される。なお振動発生部175はこのような振動モーターには限定されず、種々の変形実施が可能である。例えばピエゾ素子などにより振動発生部175を実現してもよい。
振動発生部175が発生させる振動により、例えば電源オン時のスタートアップの報知、初回の脈波検出の成功の報知、脈波が検出できない状態が一定時間続いた時の警告、脂肪燃焼ゾーンの移動時の報知、電池電圧低下時の警告、起床アラームの通知、或いはスマートフォン等の端末装置からのメールや電話等の通知などが可能になる。なお、これらの情報は、報知用の発光部により報知してもよいし、振動発生部175、発光部の両者で報知してもよい。
通信部250は、図4で説明したように外部の端末装置420との通信処理を行う。例えばブルートゥース(Bluetooth(登録商標))などの規格にしたがった無線通信の処理を行う。具体的には通信部250は、アンテナ252からの信号の受信処理や、アンテナ252への信号の送信処理を行う。この通信部250の機能は通信用のプロセッサー或いはASICなどの論理回路により実現できる。
2.3 センサー部の構成例
2.3.1 センサー部の全体構成例
図1(A)〜図1(C)、及び図6、図7にセンサーユニット40の詳細な構成例を示す。図6がセンサーユニット40の斜視図であり、図1(A)〜図1(C)がセンサーユニット40の断面図、図7が基板160上での受光部140、第1の発光部150、第2の発光部151の配置を表す平面図である。図7は、図1(A)等において装着状態での被検体から生体情報検出装置への方向(センサーユニット40よりもDR1側に設定された始点からDR1とは反対方向)を観察した場合の平面視に対応する。
受光部140、第1の発光部150、第2の発光部151は、基板160(センサー基板)に実装されている。ただし、後述するように第1の発光部150は他の部材を介して基板160に実装される場合もある。受光部140は、被検体からの光(反射光、透過光等)を受光する。第1の発光部150、第2の発光部151は、被検体に対して光を出射する。例えば第1の発光部150、第2の発光部151が光を被検体に出射し、その光が被検体(血管)により反射されると、受光部140が、その反射光を受光して検出する。
受光部140は、例えばフォトダイオード等の受光素子により実現できる。第1の発光部150、第2の発光部151は、例えばLED等の発光素子により実現できる。例えば受光部140は、半導体の基板に形成されたPN接合のダイオード素子などにより実現できる。この場合に、受光角度を絞るための角度制限フィルターや受光素子に入射する光の波長を制限する波長制限フィルターを、このダイオード素子上に形成してもよい。
脈拍計を例にとると、発光部からの光は、被検体の内部を進み、表皮、真皮及び皮下組織等で拡散又は散乱する。その後、この光は、血管(被検出部位)に到達し、反射される。この際に、光の一部は血管により吸収される。そして、脈拍の影響により血管での光の吸収率が変化し、反射光の光量も変化するため、受光部140がこの反射光を受光して、その光量の変化を検出することで、生体情報である脈拍数等を検出できるようになる。
第1の発光部150、第2の発光部151と受光部140との間には、不図示の遮光用部材(遮光壁)が設けられてもよい。この遮光用部材は、例えば第1の発光部150或いは第2の発光部151からの光が受光部140に直接入射されるのを遮光する。
またセンサーユニット40には不図示の絞り部が設けられてもよい。絞り部は、被検体とセンサーユニット40の間の光路において、被検体からの光を絞ったり、発光部から受光部に直接入射する光を絞る。また遮光用部材70と絞り部を、例えば金属を板金加工することで一体形成してもよい。
2.3.2 押圧と検出信号の関係
図8は、押圧に対する吸光度の変化を例示する図である。横軸は押圧を、縦軸は吸光度を示している。押圧が変化すると、影響を受ける血管が変化する。最も影響を受けやすい、すなわち最も低い押圧で影響を受ける血管は毛細血管である。図8の例では、押圧がp1を超えたところで吸光度の変化量が大きくなっているが、これは押圧で毛細血管がつぶれ始めたことを意味する。押圧がp2を超えると吸光度の変化がなだらかになっているが、これは毛細血管がほぼ完全につぶれている(閉じている)ことを意味する。毛細血管の次に影響を受けるのは動脈である。さらに押圧が増してp3を超えると吸光度の変化量が再び大きくなっているが、これは押圧で動脈がつぶれ始めたことを意味する。押圧がp4を超えると吸光度の変化がなだらかになっているが、これは動脈がほぼ完全につぶれている(閉じている)ことを意味する。
本実施形態では、第2の検出信号は毛細血管に対応する信号を検出することで体動ノイズの比率を高くし、第1の検出信号は動脈に対応する信号(脈信号)を測定することで脈信号の比率を高くする。そのため、第2の発光部151に対応する接触位置での押圧P2はp1からp2の範囲に、第1の発光部150に対応する接触位置での押圧P1はp3からp4の範囲に収まるように設計される。第1の発光部150と第2の発光部151との押圧の差は、例えば2.0kPa以上8.0kPa以下であることが望ましい。
図9は、押圧に対する体動ノイズ感度の変化を例示する図である。図9では、発光部から受光部までの距離Lが2mmの例および6mmの例を併せて示している。距離Lが2mmおよび6mmのいずれの例でも、傾向としては、押圧が低いほどノイズ感度が高く、押圧が高いほどノイズ感度が低い。これは、毛細血管を流れる血液は、体動によって動きやすいため、生体組織内において比較的浅い位置に存在する毛細血管で反射する光には体動によるノイズが乗りやすいためであると考えられる。
また、図10(A)は第1の発光部150と第2の発光部151で押圧の差を設けず、受光部140との距離L1とL2にのみ差を設けた場合の、体動ノイズ低減処理前後の第1の検出信号のMN比(SN比)の変化を表したものである。ここでは、体動ノイズの発生要因となるユーザーの動きとして、水頭圧(心臓と測定部位との高さ関係)を変化させるものと、手を開閉させる動作を行い、それぞれの動作に対応する体動ノイズの低減度合いを測定した。なお、水頭圧を変化させる動きとは、例えば測定位置の高さを変化させる動きであり、具体的には腕を上げたりおろしたりする動作で実現できる。手の開閉とは、指を全て曲げて拳を握りしめた状態と、指をしっかり伸ばして手を開いた状態とを交互に行う動作により実現できる。
図10(A)からわかるように、距離に差を設けるだけでも、体動ノイズの低減効果は確認できる。それに対して、図10(B)は受光部140との距離L1とL2に差を設け、さらに第1の発光部150と第2の発光部151で押圧にも差を設けた場合の、体動ノイズ低減処理前後の第1の検出信号のMN比の変化を表したものである。図10(A)と図10(B)の比較から明らかなように、押圧の差も設けることで、体動ノイズの低減効果が向上することがわかった。よってここでは、主として押圧の差を設ける実施形態について説明を行う。
つまり、被検体の生体情報の測定時において、第1の発光部150に対応する位置又は領域における被検体との接触位置での押圧をP1とし、第2の発光部151に対応する位置又は領域における被検体との接触位置での押圧をP2とした場合に、P1>P2である。このようにすれば、上述したように第1の検出信号と第2の検出信号とで、特性に差を持たせることが可能になる。
図11の横軸がカフ押圧(図2(A)の生体情報検出装置400であればバンド部10による圧力)を表し、縦軸が検出信号のDC,AC成分である。図11の上部に示したDC信号からわかるように、押圧が比較的高くなる第1の検出信号では、カフ押圧が比較的低い状態でもある程度の押圧が付加されDC成分が抑制されていく。それに対して、第2の検出信号での押圧は比較的低いため、所与のカフ圧の状態ではDC成分の抑制具合が第1の検出信号に比べて小さい。そのため、図11に示した「最適カフ押圧」の範囲では、第1の発光部150に対応する押圧はp3からp4の範囲に収まるため、ノイズが抑制されて脈信号の信号レベルが大きくなる。一方、第2の発光部151における押圧はp1からp2の範囲に収まるため、ノイズの抑制が不十分であり体動ノイズの比率が高くなる。
これは図11の下部に示したAC成分の比較からも明らかであり、最適カフ押圧の範囲では、第1の検出信号はAC成分の信号レベルが高く、第2の検出信号はAC成分の信号レベルが低い。上述したように脈信号は検出信号の変化、即ちAC成分に現れるものであるから、図11は第1の検出信号は脈信号が十分検出できているのに対して、第2の検出信号は相対的に体動ノイズの比率が高いことを示している。
2.3.3 発光部に対応する位置又は領域における被検体との接触位置の高さ
押圧の差は、具体的には被検体と接触する位置での高さの差により実現すればよい。上述したように、主として脈信号を検出する第1の発光部150に対応する接触位置では押圧を高くし、第2の発光部151に対応する接触位置では第1の発光部150に比べて押圧を低くする。
なぜなら、ここでは高さが高いほど、被検体側に突出することになるため、所与のカフ圧で生体情報検出装置400を手首等に固定した際に、高さが高い第1の発光部150に対応する押圧を、高さが低い第2の発光部151に対応する押圧に比べて強くできるためである。これを図示したものが上述した図11である。以下、高さの差を設けるための具体的な構造について説明する。
まず、上述したH1、すなわち「第1の発光部150に対応する位置又は領域における、被検体との接触位置又は接触領域の高さ」とは、第1の発光部150の配置領域における、被検体との接触位置又は接触領域の高さであってもよい。同様にH2は、第2の発光部151の配置領域における、被検体との接触位置又は接触領域の高さであってもよい。言い換えれば、第1の発光部150(第2の発光部151)に対応する位置又は領域とは、第1の発光部150(第2の発光部151)の配置領域であってもよい。
ここで、配置領域とは、センサーユニット40において素子が配置される領域であり、図1(A)等のように素子が基板160(或いは基板160に設けられる高さ調整部材)上に実装される場合、基板160に直交する方向からみた平面視における、素子自体の領域であってもよい。なお、ここでの「素子」とはLEDのみを指すものであってもよいがこれに限定されず、当該LEDを有するパッケージ全体を指すものであってもよい。例えば、LED、光照射用のレンズ、封止用樹脂等が組となってパッケージ化されている場合、当該パッケージ全体を「素子」(例えば第1の発光部150)と捉える。受光部140についても同様であり、PN接合により形成されたPDのみを受光部140とするのではなく、例えば1パッケージとして構成される光学フィルター等まで含んで受光部140と捉えてもよい。
また、配置領域における被検体との接触位置の高さも種々考えられる。仮に第1の発光部150が配置領域において一点で被検体と接触するのであれば、当該点が第1の発光部150の配置領域における被検体との接触位置となる。しかし上述してきたように、脈波情報の測定においては被検体に対してある程度の押圧を加えることが必要であるため、第1の発光部150の配置領域において、接触位置はある程度の領域(狭義には第1の発光部150の被検体側の面の全面で)となることが想定される。その場合、被検体との接触位置とは、配置領域における任意の一点であってもよいし、ある程度の面積を有する領域であってもよいし、配置領域全体であってもよい。なお、接触位置を領域とする場合、高さは位置に応じて異なる可能性がある。その場合、接触位置における高さとして、平均高さ等を用いてもよい。
このような場合の一例として、第1の発光部150、第2の発光部151の各素子自体が被検体と接触する構造が考えられる。具体的には、第1の発光部150の被検体側の面までの高さをHA1とし、第2の発光部151の被検体側の面までの高さをHA2とした場合に、HA1>HA2の関係が成り立つことで、H1>H2となってもよい。つまり、各発光部の接触位置での高さとは、第1の発光部150、第2の発光部151の被検体側の面の高さを考えればよい。
例えば、図6等に示すように第1の発光部150、第2の発光部151がそれぞれ直方体形状である場合、当該直方体の6面のうちの、被検体側の1面の高さが接触位置での高さとなる。
なお、図6等の例では第1の発光部150の被検体側の面が、所与の基準面と平行な面となることを想定しているため、接触領域における高さは当該領域全体で一定である。しかし、第1の発光部150の被検体側の面が曲面形状等、所与の基準面と平行でない場合には、接触領域中の位置に応じて基準面に対する高さが変化することになる。よって本実施形態では、例えば被検体との接触領域の高さとは、接触領域に含まれる各点での高さの平均高さであってもよい。このようにすれば、ある程度の面積を有する接触領域を対象とした場合でも適切にその高さを定義することが可能になる。
さらに具体的には、図1(A)、図1(B)に示したように、第2の発光部151と、受光部140は、基板160に設けられ、第1の発光部150と、基板160との間に高さ調整部材(161,162)が設けられてもよい。なお、図1(A)〜図1(C)では、第1の発光部150、第2の発光部151、受光部140の固定等のため、樹脂60を用いている。図1(A)〜図1(C)では樹脂60は接触位置における高さに寄与するものではない。
このようにすれば、高さ調整部材を用いることで、第1の発光部150の配置領域における高さと、第2の発光部151の配置領域における高さに差を持たせることが可能になる。この場合、高さの差が高さ調整部材により調整されるため、第1の発光部150自体の高さ(第1の発光部150のDR1方向での長さであり後述するLH1)と第2の発光部151自体の高さ(LH2)の制約を緩くすることが可能である。例えば、第1の発光部150と第2の発光部151として同じ構造の発光部を用いる(LH1=LH2)ことが可能であるため、素子の調達や調整等の負担を軽減することができる。或いは、何らかの理由で素子自体の高さは第2の発光部151の方が高くなってしまった(LH1<LH2)場合であっても、十分な高さの高さ調整部材を用いることで所与の基準面に対する高さは第1の発光部150の方を高くする(HA1>HA2)ことも可能である。
ここで、高さ調整部材は図1(A)に示したように第2の基板161であってもよい。この場合、第1の発光部150の外部接続端子は、第2の基板161のスルーホールを介して、基板160に設けられた接続端子と接続される。
図1(A)等の構成の場合、各素子に対する電源供給や、信号の入出力は基板160(メイン基板)を介して行われることが想定される。つまり、高さ調整部材を設けた場合であっても、第1の発光部150は基板160と電気的に接続されなくてはならない。その点、高さ調整部材として第2の基板161を用いる場合、高さ調整部材自体が配線を有するため、第1の発光部150と基板160との接続が容易である。具体的には第2の基板161のスルーホールを用いればよい。
ただし、第1の発光部150と基板160の電気的な接続はこれに限定されず、図1(B)に示したように第1の発光部150の外部接続端子は、ワイヤーWIを介して基板160に設けられた接続端子と接続されてもよい。
この場合、第1の発光部150と基板160の接続はワイヤーWIにより実現されるため、高さ調整部材が電気的な接続のための構造を有する必要がなく、例えば絶縁体等により実現することができる。
また、高さ調整部材を設けず、発光部150自体の高さに差を設けてもよい。具体的には、図1(C)に示したように、第1の発光部150の第1の方向DR1での長さをLHB1とし、第2の発光部151の第1の方向DR1での長さをLH2とした場合に、LHB1>LH2の関係が成り立つことで、H1>H2となってもよい。ここでDR1は図1(A)に示したように、生体情報の検出時においてセンサーユニット40から被検体へ向かう方向である。ここで方向DR1は、基板160に垂直で被検体側に向かう方向である。あるいは、第1の発光部150の上面、第2の発光部151の上面、または受光部140の上面に対して垂直で、被検体に向かう方向である。また、発光部150の樹脂封止ケースの高さを変えることで、第1の発光部150と第2の発光部151との高さの差を設けても良い。
このようにすれば、図1(A)や図1(B)のように高さ調整部材を設ける必要がないため、部品点数の削減等が可能になる。
また、本実施形態に係るセンサーユニットは、第1の発光部150、第2の発光部151の各素子自体が被検体と接触する構造に限定されない。例えば図12(A)に示したように、センサーユニット40は、第1の発光部150よりも被検体側の位置に設けられ、被検体からの光を透過し、且つ被検体の生体情報の測定時に被検体に接触して押圧を与える透光部材50を含んでもよい。この場合、第1の発光部150に対応する位置又は領域における透光部材50の高さをHD1とした場合に、HD1>H2の関係が成り立つことで、H1>H2となる。すなわち、第1の発光部150に対応する位置又は領域における高さとは、第1の発光部150に対応する位置又は領域における透光部材50の高さであってもよい。
ここで、H2とは具体的には、第2の発光部151の被検体側の面までの高さHA2であってもよいし、第2の発光部151のDR1での長さLH2であってもよいし、後述するように第2の発光部151の被検体側に設けられる透光部材50の高さHD2であってもよい。
透光部材50は、生体情報検出装置400の被検体に接触する側の面に設けられ、被検体からの光を透過する。また透光部材50は、被検体の生体情報の測定時に、被検体に接触する。例えば図12(A)に示したように、透光部材50の凸部52が被検体に接触するものであってもよい。なお凸部52の表面形状は、曲面形状(球面形状)であることが望ましいが、これに限定されるものではなく、種々の形状を採用できる。また、透光部材50は被検体からの光の波長に対して透明であればよく、透明な材料を用いてもよいし、有色の材料を用いてもよい。有色の材料を用いることで、透明部材50を、検出対象波長帯域以外の光を遮断するバンドパスフィルターとしても機能させることができる。
なお、透光部材50の高さをどのように定義するかは種々の変形実施が可能であるが、例えば、所与の基準面(例えば上述した例と同様に、基板160の面)からの距離を高さとしてもよい。
また、高さの差ができればよいため、図12(B)、図12(C)に示したように透光部材50の形状は種々の変形実施が可能である。例えば、透光部材50は第1の発光部150に対応する位置又は領域だけでなく、第2の発光部151に対応する位置又は領域に設けられてもよい。具体的には図12(C)に示したように、透光部材50は、第2の発光部151よりも被検体側の位置に設けられ、被検体からの光を透過し、且つ被検体の生体情報の測定時に被検体に接触して押圧を与え、第2の発光部151に対応する位置又は領域における透光部材50の高さをHD2とした場合に、HD1>HD2の関係が成り立つことで、H1>H2となってもよい。
この場合、凸部52も複数(例えば光電センサーの数に対応する数)設けられてもよい。図12(C)の例では、第1の発光部150と受光部140により実現される第1の光電センサーに対して、凸部52−1が設けられ、第2の発光部151と受光部140により実現される第2の光電センサーに対して、凸部52−2が設けられている。
また、各発光部に対応する位置又は領域の定義も種々考えられる。例えば、高さHD1は、第1の発光部150の代表位置での透光部材50の高さであり、高さHD2は、第2の発光部151の代表位置での透光部材50の高さであってもよい。ここでの代表位置は、例えば各発光部の中心位置等を用いればよい。
この場合、第1の発光部150の中心位置は図13(A)のA1であり、第2の発光部151の中心位置は図13(B)のA2となる。そして、第1の発光部150の中心位置A1における透光部材50の高さとは、A1からDR1方向(図12(A)に示したように基板160に垂直で被検体側に向かう方向)に伸ばした直線と透光部材50の表面(装着時に被検体と接触する面)との交点を定義し、当該交点における透光部材50の高さHD1を用いればよい。第2の発光部151の中心位置A2における透光部材50の高さHD2も同様である。
或いは、被検体側から見た平面視において第1の発光部150及び受光部140を内包する領域を第1の領域とし、第2の発光部151及び受光部140を内包する領域を第2の領域とした場合に、高さHD1は、第1の領域における透光部材50の平均高さであり、高さHD2は、第2の領域における透光部材50の平均高さであってもよい。
ここで、被検体側から見た平面視とは、図12(A)において第1の発光部150等よりも被検体側(DR1側)に設定された視点からDR2(図12(A)に示したようにDR1の反対方向)の方向を観察した状態となり、具体的には図13(A)、図13(B)の状態を表す。また、発光部と受光部を内包する領域も種々考えられるが、一例としては発光部と受光部を内包し、且つ面積が最小となる長方形の領域を考えればよい。この場合、第1の発光部150に対応する領域(第1の領域)は図13(A)のR1となり、第2の発光部151に対応する領域(第2の領域)は図13(B)のR2となる。
そして、第1の発光部150に対応する領域における透光部材の高さとは、R1に含まれる各点からDR1方向に伸ばした直線と、透光部材50の表面との交点を定義し、当該交点における透光部材50の高さを平均化して求めればよい。例えば、図12(A)に示した範囲での透光部材50の高さの平均値がHD1となる。なお図12(A)では1つの断面のみを示したが、図12(A)における奥行き方向においても高さの平均化を行ってもよい。第2の発光部151についても同様にR2での平均高さをHD2としてもよい。
なお、受光部140に対応する位置又は領域での透光部材50の形状も種々の変形実施が可能である。図12(A)や図12(C)では受光部140の被検体側にも透光部材50が設けられている。一方、図12(B)では受光部140の被検体側には透光部材50は設けられない。
また、第1の発光部150自体、或いは透光部材50以外の部材が被検体に接触してもよい。例えば、センサーユニット40は少なくとも第1の発光部150と受光部140との間に設けられる第1の部材181と、少なくとも第2の発光部151と受光部140との間に設けられる第2の部材182を含んでもよい。そして、第1の部材181の高さをHC1とし、第2の部材182の高さをHC2とした場合に、HC1>HC2の関係が成り立つことで、H1>H2となる。すなわち、第1の発光部150に対応する位置又は領域における高さとは、第1の部材181の高さであり、第2の発光部151に対応する位置又は領域における高さとは第2の部材182の高さであってもよい。
ここでの第1の部材181及び第2の部材182は、押圧の差を実現する構造であるとともに、センサーユニット40と被検体との接触状態を安定させるものであってもよい。なお、第1の部材181と第2の部材182は異なる2つの部材であってもよいがこれには限定されず、種々の変形実施が可能である。
例えば、第1の部材181と第2の部材182は、フレーム部180の一部であってもよい。フレーム部180は、例えば図14(A)に示したように受光部140の周囲に設けられる。図14(A)は図7等と同様に、基板160に垂直な方向からの平面視である。図14(A)の例では受光部140等を囲む四角形状のフレーム部180を示したが、これに限定されるものではなく、円形状や他の多角形等の形状でもよい。或いは、連続する形状によりフレーム部180が実現される必要はなく、隙間を有する(例えば互いに接触しない複数の円弧により構成される)フレーム部180を用いてもよい。
図14(A)の場合、第1の部材181はフレーム部180のうち、第1の発光部150側の一辺に対応し、第2の部材182はフレーム部180のうち、第2の発光部151側の一辺に対応する。この場合の第1の部材181と第2の部材182の高さを図14(B)に示す。図14(B)は図1(A)等と同様に基板に沿った方向からみた断面図であり、具体的には図14(A)のA−A’断面図である。
また図15(A)に示したように、フレーム部180が、第1の発光部150の周囲に設けられる第1のフレーム部180−1と、第2の発光部151の周囲に設けられる第2のフレーム部180−2とから構成されてもよい。この場合、第1の部材181は、第1のフレーム部180−1のうちの、受光部140側の一辺に対応し、第2の部材182は、第2のフレーム部180−2のうちの、受光部140側の一辺に対応する。
或いは、図15(B)に示したように、フレーム部180が、第1の発光部150の周囲に設けられる第1のフレーム部180−1と、第2の発光部151の周囲に設けられる第2のフレーム部180−2と、受光部140の周囲に設けられる第3のフレーム部180−3から構成されてもよい。この場合、第1の部材181は、第1のフレーム部180−1のうちの受光部140側の一辺、及び、第3のフレーム部180−3のうちの第1の発光部150側の一辺の少なくとも一方に対応する。また、第2の部材182は、第2のフレーム部180−2のうちの受光部140側の一辺、及び、第3のフレーム部180−3のうちの第2の発光部151側の一辺の少なくとも一方に対応する。
また、受光部140に対応する位置又は領域における被検体との接触位置の高さをH3とした場合に、H1≧H3≧H2(ただしH1=H3=H2の場合を除く)であってもよい。
なお、受光部140に対応する位置又は領域における被検体との接触位置の高さについては、第1の発光部150に対応する位置又は領域における被検体との接触位置の高さと同様に考えればよい。図1(A)〜図1(C)、或いは図12(B)であれば受光部140の配置領域における高さであるし、図12(A)、図12(C)であれば透光部材50の平均高さ等である。
図7等に示したように、本実施形態では第1の発光部150と第2の発光部151の間に受光部140が設けられる場合がある。その場合、受光部140が第1の発光部150及び第2の発光部151に対して極端に高い場合(H3>H1>H2)、第1の検出信号に対応する押圧が主として受光部140の高さによるものとなり、第2の検出信号に対応する押圧についても主として受光部140の高さによるものとなる。つまり、第1の発光部150と第2の発光部151の高さに差を設けたとしても、第1の検出信号と第2の検出信号の押圧差が小さくなってしまい、処理精度が低下するおそれがある。よって、押圧差を明確にするためにも、受光部140を含めた高さ関係を規定しておくとよく、例えばH1≧H3≧H2(ただしH1=H3=H2の場合を除く)であるとよい。なお、H1>H2>H3等の変形実施も可能であるが、被検体からの反射光は光強度が弱まっているため、被検体と受光部140との距離は小さいことが好ましい。すなわちH3がある程度の大きさとなることが好ましく、H1≧H3≧H2はこの点も考慮したものである。
以上に示した構成を用いることで、受光部140は、被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧である場合の被検体からの光と、被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧に比べて小さい第2の押圧P2である場合の被検体からの光を受光することになる。それにより、検出信号に含まれるノイズ(体動ノイズ)を適切に低減し、精度のよい脈波情報の算出処理が可能になる。
2.3.4 発光部と受光部の間の距離
次に、第1の発光部150と受光部140の間の距離L1と、第2の発光部151と受光部140との間の距離L2について説明する。図16は、発光部と受光部との距離が光の浸透深度に与える影響を説明するための図である。利用者の手首の皮膚面Sfには、第1の発光部150及び受光部140、並びに第2の発光部151及び受光部140が接触している。ここでは上述したように受光部140を2つの発光部で共有している。また、図12(A)〜図12(C)等の実施形態であれば、実際には透光部材50が被検体と接触するが、図16では説明を簡略化するために、透光部材50を省略している。
発光部と受光部との距離が短いほど、生体内の深い部分に対する感度が浅い部分に対する感度に比べて相対的に低下することが分かっている。すなわち、第1の発光部150から照射された光が、生体組織内の深度D1の位置で反射して受光部140に届く光の強度は、深度D1よりも深い深度D2の位置で反射して受光部140に届く光の強度に比べて強い。一方、第2の発光部151から照射された光が、深度D1の位置で反射して受光部140に届く光の強度は、深度D2の位置で反射して受光部140に届く光の強度に比べて強いが、第1の発光部150において生じるほどの違いはない。そのため、第1の発光部150は、第2の発光部151よりも相対的に浅い位置にある血管における脈波の測定に適している。
図17は、発光部と受光部140の間の距離LDと信号強度の関係を示す図である。発光部と受光部140の間の距離LDは、例えば発光部、受光部の中心位置(代表位置)の間の距離である。例えば受光部140が矩形形状(略矩形形状)である場合には、受光部140の位置は、この矩形形状の中心位置である。また発光部が不図示のレンズ部を有する場合には、発光部150の位置は、例えばレンズ部の中心位置(LEDチップの位置)である。
図17から明らかなように発光部と受光部140の距離LDが近いほど、検出信号の信号強度が高くなり、感度等の検出性能が向上する。従って、主として脈信号を検出する第1の検出用の第1の発光部150については、受光部140との距離LDは近ければ近いほど望ましい。
この場合に図17に示すように、受光部140と第1の発光部150の間の距離はLD<3mmであることが望ましい。例えば図17の特性曲線G1における、距離が大きい側の接線G2から明らかなように、LD≧3mmとなる範囲では、特性曲線G1が飽和している。これに対して、LD<3mmの範囲では、距離LDが短くなるにつれて、信号強度が大きく増加している。従って、この意味においてLD<3mmであることが望ましい。例えば第1の発光部150と受光部140との距離L1はL1=1.0〜3.0mm程度を用いる。
また距離LDについては下限値も存在し、距離LDを近づけすぎることも望ましくない。図18は、発光部から発光された光が、生体内で反射、散乱し、その一部が受光部により受光される様子を表す模式図である。この場合には、発光部からの光は、被検体の血管等で拡散又は散乱し、その光が受光部140に入射されて、脈波が検出される。そして図18において、発光部と受光部140の間の距離LDと、深さ方向での測定距離LBとの間には、LD=2×LBの関係が一般的に成り立つ。例えば距離LDだけ離れた発光部と受光部140からなる光検出ユニットによる測定限界距離は、LB=LD/2程度となる。そして距離LBが例えば100μm〜150μmとなる範囲には、脈波の検出対象物となる血管は存在しない。従って、距離LDが、LD≦2×LB=2×100μm〜2×150μm)=0.2mm〜0.3mmになると、脈波の検出信号が極めて小さくなることが予想される。即ち、距離LDが近くなると、それに伴い深さ方向での測定距離LBも小さくなり、その距離LBの範囲に検出対象物が存在しないと、検出信号が極めて小さくなってしまう。つまり、距離LDは近いほどが検出性能は向上するが、それにも限界があり、下限値が存在する。本実施形態では、第1の発光部150の光からは脈信号を十分な強度で検出する必要があることから、L1≧1.0mm程度に設定している。即ち、1.0mm≦L1≦3.0mmであることが望ましい。
これに対して、第2の発光部151と受光部140との間の距離L2は、第1の発光部150に比べて脈信号に対する感度が低く、体動ノイズに対する感度が高くなるように設定すればよい。例えば、L2<1.0mm、或いは3.0mm<L2とすれば、1.0mm≦L1≦3.0mmとなる第1の発光部150に比べて脈信号の度合いが下がり、体動ノイズの度合いが上がる(MN比が下がる)ことになる。
ただし、第2の発光部151からの光に基づく検出信号のMN比(Mが脈信号、Nがノイズを表し、MN比は脈信号とノイズとの比率(一般的なSN比)である)が、第1の発光部150からの光に基づく検出信号のMN比に比べて十分小さくなればよい。つまり、L2<1.0mm、或いは3.0mm<L2という絶対値としての距離を設定するという点よりは、第1,第2の検出信号の間である程度(例えば後述するスペクトラム減算法によるノイズ低減処理が可能な程度)の差ができるように、L1に対するL2の値を変化させる点を重視してもよい。
つまり、第2の発光部151からの光に基づく第2の検出信号では、MN比が第1の検出信号に比べて小さければ十分である以上、脈成分がある程度含まれることは妨げられず、言い換えればL2は、1.0mm≦L2≦3.0mmの範囲内であってもよい。
ここで、第1,第2の検出信号に差を生じさせるためのL1,L2の関係としては、例えばL2>2×L1等であってもよい。この場合、L1=1.0mmであれば、L2>2.0mmであるため、L2=2.5mm等であってもよく、脈信号をある程度の強度で検出することになるが、より短いL1が設定される第1の検出信号に比べて、第2の検出信号のMN比が小さいという条件を満足できる。
なお、第2の検出信号で体動ノイズを相対的に増加させるのであれば、上述したようにL2を非常に小さい値としてもよい。つまり、L2<L1であり、例えばL2<L1/2との関係により、受光部140と各発光部との距離を決定してもよい。ただし、各発光部から受光部140への直接光を遮蔽するために遮光壁等を設ける場合があることを考慮すれば、L1やL2を極端に小さい値とすることが困難な場合もあり得る。例えばL1=1.0mmの場合、L2<0.5mm等を満たす必要があり、各部品の配置がスペース上困難となり得る。この点を考慮した場合、L2>L1であることが望ましいことになるが、状況に応じてはL2<L1とすることは妨げられない。
また、具体的な数値を用いる場合、L1は、1mm≦L1≦3mmであり、L2は、2mm≦L2であってもよい。ただし上述したように、L1との相対関係を重視するのであれば、L2の条件は2mm≦L2のみではなく、当該相対関係も満たす必要がある。一例としては、L2>L1且つL2≧2mmとなる。或いは、より条件を厳しくして、L2>2×L1且つL2≧2mmとしてもよい。
2.3.5 発光部と受光部の配置の変形例
次に、発光部と受光部の基板160上での配置の変形例について説明する。図1(A)〜図1(C)等では、受光部140は、第1の発光部150と第2の発光部151との間に配置された。
しかし受光部140と複数の発光部の配置はこれに限定されない。例えば、図19(A)に示すように、所与の方向にそって、受光部140、第1の発光部150、第2の発光部151の順で並んで実装されてもよい。
この場合、自然と発光部と受光部の間の距離に差が付くことになり、具体的には図19(A)に示したようにL1<L2となる。さらに狭義にはL2>2×L1とすればよい。
また、図19(A)の配置の場合にも、第1の発光部150に対応する位置又は領域における被検体との接触位置の高さH1を、第2の発光部151に対応する位置又は領域における被検体との接触位置の高さH2よりも高くすればよい。高さの差を設ける構造は、図1(A)〜図1(C)等、上述したいずれの構造を用いてもよい。
なお図7の配置(以下、受光部140を基準として複数の発光部が対向するため対向配置とも表記する)では、第1の発光部150から受光部140への光路と、第2の発光部151から受光部140への光路が重複しない。そのため、図12(C)等のように透光部材50を設ける実施形態の場合、凸部52−1と凸部52−2も干渉しにくく、HD1とHD2の高さの差を設けることが容易であるという利点がある。
具体的には、図13(A)、図13(B)と図19(B)を比較すればわかるように、対向配置は図19(A)の配置に比べて第1の発光部150に対応する領域R1と第2の発光部151に対応する領域R2との重複部分が小さくなる。そのため、高さの平均を求める際にも図19の例に比べて重複部分が小さく、高さの差を設けやすい。
一方、図19(A)で示した変形例の場合、それぞれの光路が重複するために、第1の検出信号と第2の検出信号の相関度合いをより高くできる利点がある。上述したように、ノイズ低減処理の効果を高めるためには、各検出信号は特性は異なりつつもある程度の相関を有することが好ましい。つまり、第1,第2の検出信号の相関を重視するのであれば、図19(A)を用いて上述した配置を用いた方が有利になると考えられる。
また、以上では生体情報検出装置400に含まれる光電センサーが2つ、すなわち少なくとも1つの受光部と、2つの発光部を含む例について説明したがこれに限定されず、生体情報検出装置は3つ以上の光電センサーを含んでもよい。この場合、1つの受光部を全ての発光部で共有してもよいし、各発光部と組となる受光部を設けてもよいし、それらを組み合わせてもよい。つまり、生体情報検出装置は、第1〜N(Nは3以上の整数)の発光部と、第1〜第k(kは1≦k≦Nを満たす整数)の受光部とを含んでもよい。
3.タイミング制御
上述してきたように、本実施形態では1つの受光部140を複数の発光部で共有することを想定している。その場合、複数の発光部からの光が同時に受光部140に入射してしまうと、受光部140ではそれらの光を分離して処理することが難しい。結果として、押圧に差を設けることで特性の異なる2つの信号を取得しようとしても、それらが混ざり合ってしまい適切な処理ができない。
そこで本実施形態では、処理部200は、第1のタイミングでの受光部140の第1の受光結果(第1の検出信号)と、第1のタイミングとは異なる第2のタイミングでの受光部140の第2の受光結果(第2の検出信号)とに基づいて、生体情報の検出処理を行う。
このようにすれば、押圧が第1の押圧P1である場合の第1の検出信号と、押圧が第2の押圧P2である場合の第2の検出信号を異なるタイミングで取得する(排他的なタイミングで取得する)ことが可能になる。つまり、受光部140において第1の検出信号と第2の検出信号が混ざり合ってしまうことを抑止できる。
このような処理は、第1の発光部150と第2の発光部151の発光タイミング、及び受光部140での受光タイミングを適切に制御することで実現できる。つまり上述してきたように、本実施形態に係る生体情報検出装置400(センサーユニット40)では、発光部として、第1の発光部150と第2の発光部151を有し、処理部200は、第1の発光部150の発光に基づく第1のタイミングでの受光部140の第1の検出信号と、第2の発光部151の発光に基づく第2のタイミングでの受光部140の第2の検出信号とに基づいて、生体情報の検出処理を行う。
なお、検出信号をA/D変換した後のデジタル信号については、第1の検出信号と第2の検出信号を異なるタイミングで処理する必要はない。つまり、ここで問題としているのは、処理部200の検出信号の取得タイミングではなく、受光部140での受光タイミング(或いは第1の発光部150、第2の発光部151の発光タイミング)である。
具体的には、第1の発光部150に基づく光が受光部140で受光されるタイミングと、第2の発光部151に基づく光が受光部140で受光されるタイミングとを異なるタイミングとすればよい。ここで、発光部で光が照射された後、当該光が被検体により反射され、反射光が受光部140で受光されることを考慮すれば、発光タイミングと受光タイミングは厳密には異なるものである。しかし光の速さや光路長の短さを考慮すれば、発光タイミングと受光タイミングとの間の時間差はさほど考慮する必要はない。
つまり、第1の発光部150と第2の発光部151が排他的に発光するように発光タイミングを制御すればよい。また、受光部140では受光は所定のタイミング(例えば所与のクロック信号に対応するタイミング)で行えばよいが、検出用のアナログ回路は第1の検出信号に対する処理と、第2の検出信号に対する処理を明確に区別する必要がある。一例としては、第1の検出信号用の第1のアナログ回路と、第2の検出信号用の第2のアナログ回路の2つを用意しておき、第1の発光部150の発光タイミングでは第1のアナログ回路を動作させ、第2の発光部151の発光タイミングでは第2のアナログ回路を動作させてもよい。
また、第1の発光部150と第2の発光部151を排他的に発光させることで、第1の検出信号と第2の検出信号とを区別して処理することは可能になる。ただし、上述したように体動ノイズの適切な低減処理では、第1の検出信号と第2の検出信号がある程度の相関を有していることが重要である。つまり、第1の検出信号に対してノイズ低減処理を行う場合、用いる第2の検出信号が第1の検出信号に対して時間的に大きく異なるタイミングで取得された信号であることは好ましくない。なぜなら、第1の検出信号の取得タイミング(受光タイミング)と第2の検出信号の取得タイミングが大きく異なれば、ユーザーの状態等が変化している可能性があり、2つの信号の相関が非常に低いこともありえるためである。
そのため、第1の検出信号の取得する状態と、第2の検出信号の取得する状態とを高い頻度で変更することが好ましい。例えば、第2のタイミングは、第1のタイミングのあとのタイミングであり、第3のタイミングは、第2のタイミングのあとのタイミングであり、第4のタイミングは、第3のタイミングのあとのタイミングである場合に、処理部200は、第1のタイミング及び第3のタイミングでの受光部140の第1の検出信号を取得し、第2のタイミング及び第4のタイミングでの受光部の第2の検出信号を取得すればよい。
このようにすれば、少なくとも第1のタイミングのあと、第2のタイミングまで(第2のタイミング自体を含む)の間に、取得される検出信号が第1の検出信号から第2の検出信号に変化する。同様に、第2のタイミングのあと、第3のタイミングまでの間、第3のタイミングのあと、第4のタイミングまでの間にも検出信号の特性が変化する。よって、例えば第2のタイミングでの第2の検出信号と、所与のタイミングでの第1の検出信号を組にして処理を行おうとした場合、第1の検出信号は、少なくとも第1のタイミング及び第3のタイミングで取得されているため、2つの検出信号の間の時間差が極端に大きくなることを抑止できる、すなわち2つの信号の相関が非常に低くなることを抑止できる。
また、2つの検出信号の取得タイミングの差を小さくするという観点から考えれば、第1の検出信号のノイズ低減処理に用いる第2の検出信号を、当該第1の検出信号に隣接するタイミングで取得するものとしてもよい。具体的には、第2のタイミングは、第1のタイミングの次のタイミングであり、第3のタイミングは、第2のタイミングの次のタイミングであり、第4のタイミングは、第3のタイミングの次のタイミングである場合に、処理部200は、第1のタイミング及び第3のタイミングでの受光部140の第1の検出信号を取得し、第2のタイミング及び第4のタイミングでの受光部140の第2の検出信号を取得してもよい。また、第1のタイミングと第2のタイミング、第2のタイミングと第3のタイミング、あるいは第3のタイミングと第4のタイミングのように隣接するタイミングにおいて発光部の発光強度を変えても良い。この場合、第1の検出信号に対応するタイミングでの発光を強くすることで、第1の検出信号のSN比が向上するため、適切な脈拍数を算出することができる。また、第2の検出信号に対応するタイミングでの発光を強くすることで、第2の検出信号のSN比が向上するめ、ノイズ低減処理におけるノイズ低減をより正確に行うことができる。
ここでは隣接4タイミングでの第1の検出信号、第2の検出信号の取得タイミングを説明したが、その他のタイミングにおいても、第1の検出信号と第2の検出信号を交互に取得するものであってもよい。この場合の制御例を図20に示す。図20の横軸は時間を表す。図20の制御では、第1の発光部150と第2の発光部151が、受光部140での受光タイミングに合わせて交互に発光する。なお、第1の発光部の制御信号と、第2の発光部の制御信号の振幅が異なるように制御しても良い。
なお、以上のタイミング制御は1つの受光部140が複数の発光部で共有されることを前提としている。それに対して、センサーユニット40に複数の受光部が含まれる場合のように、1つの受光部が1つの発光部からの光を受光する構成であれば、複数の発光部の各発光部を排他的に発光させなくてもよい。例えば、処理部200は、第1のタイミングでの受光部の第1の検出信号と、第1のタイミングでの受光部(狭義には第2の受光部)の第2の検出信号とに基づいて、生体情報の検出処理を行ってもよい。
4.ノイズ低減処理
上述してきたように、本実施形態に係る生体情報検出装置の処理部200は、第2の検出信号に基づいて、第1の検出信号の補正処理を行い、補正後の第1の検出信号に基づいて生体情報の検出処理を行う。そして、処理部200は、当該補正処理として、検出信号に含まれる体動ノイズを低減する体動ノイズ低減処理を行う。これにより、体動ノイズの影響を抑止して、精度よく生体情報を求めることが可能になる。
以下、処理部200において行われる体動ノイズ低減処理について説明する。具体的には、第2の検出信号に基づいて行われるスペクトラム減算法と、モーションセンサーからの信号に基づいて行われる適応フィルター処理について説明する。
4.1 スペクトラム減算法
図21(A)、図21(B)は、スペクトラム減算法を用いた、第2の検出信号に基づく第1の検出信号のノイズ低減処理を説明する図である。スペクトラム減算法では、第1,第2の検出信号に対してそれぞれ周波数変換処理を行ってスペクトルを求める。そして、第2の検出信号のスペクトルからノイズスペクトルを推定し、推定されたノイズスペクトルを、第1の検出信号のスペクトルから引き去る処理を行う。
図21(A)に、実際に求められた第1の検出信号のスペクトルと、第2の検出信号のスペクトルを示す。上述してきたように、本実施形態に係る生体情報検出装置400を用いることで、第2の検出信号のスペクトルは主としてノイズ成分に対応するスペクトルとなる。つまり、第2の検出信号のスペクトルにおいて大きなピークが立っている周波数が、体動ノイズに対応する周波数であると推定できる。実際には、第2の検出信号のスペクトルのうち、ピークだけを減算してもよいがこれに限定されず、例えば第1の検出信号のスペクトル全体から、第2の検出信号のスペクトル全体を減算する処理を行えばよい。
減算に際しては、ノイズを相殺するように、例えば、第1の検出信号および第2の検出信号の一方に係数が乗算される。この係数は、例えば所定の周波数の信号強度から求められる。或いは、例えばクラスター化等の手法によりノイズと信号とを分離し、第1の検出信号のノイズと第2の検出信号のノイズとを同じ強度にするように係数が算出されてもよい。
スペクトラム減算法による体動ノイズ低減処理の前後の第1の検出信号の例を図21(B)に示す。図21(B)からわかるように、体動ノイズ低減処理により、0.7〜0.8Hz(脈拍数でいう42〜48)及び1.5Hz(脈拍数90)に現れていた体動ノイズが小さく抑えられ、これらを脈信号であると誤判定する可能性を抑止できる。一方、1.1Hz(脈拍数66)前後に現れていた脈信号に対応するスペクトルについては、低減することなく信号レベルを維持することが可能である。
スペクトラム減算法は、FFT(Fast Fourier Transform)等の周波数変換処理と、スペクトルでの減算処理により実現されるため、アルゴリズムがシンプルであり計算量が少ないという利点がある。また、後述する適応フィルター処理のような学習要素がないため、瞬時応答性が高いという特性がある。
4.2 適応フィルター処理
次に、適応フィルター処理を用いた、モーションセンサーからの検出信号に基づく体動ノイズ低減処理(第2の体動ノイズ低減処理)を説明する。適応フィルターを用いたノイズ低減処理の具体例を図22に示す。具体的には、モーションセンサーの検出信号は体動ノイズに対応するため、当該検出信号から特定されるノイズ成分を第1の検出信号から引き去る処理を行うものであり、考え方の大筋はスペクトラム減算法と同様である。
ただし、脈波検出信号中の体動ノイズと、体動センサーからの体動検出信号は、ともに同一の体動に起因する信号であったとしてもその信号レベルまで同一であるとは限らない。よって、体動検出信号に対して適応的にフィルター係数が決定されるフィルター処理を行うことで、推定体動ノイズ成分を算出し、脈波検出信号と推定体動ノイズ成分の差分をとるものとする。フィルター係数が適応的に(学習を行って)決定されるため、ノイズ低減処理の精度を向上させることが可能であるが、フィルター係数の決定における処理負荷や、出力のディレイを考慮する必要がある。なお、適応フィルター処理については広く知られた手法であるため、詳細な説明については省略する。
本実施形態においては、生体情報検出装置は図5に示したようにモーションセンサー(加速度センサー172)を有し、処理部200は、モーションセンサーからの検出信号に基づいて、第1の検出信号の体動ノイズを低減する第2の体動ノイズ低減処理を行う。
すなわち、本実施形態では第2の検出信号を用いた体動ノイズ低減処理を行うことを前提としているが、モーションセンサーを用いた体動ノイズ低減処理を併用することは妨げられない。このようにすれば、第2の検出信号を用いた体動ノイズ低減処理のみを行う場合に比べて、より精度よく体動ノイズを低減することが可能になる。例えば図21(B)では、0.7〜0.8Hz、或いは2.3〜2.4Hzにおけるノイズを低減し切れていないが、モーションセンサーからの検出信号を用いた処理を併用することで、それらのノイズを低減することも可能である。
また、処理部200は、第2の検出信号に基づいて、第1の検出信号に対する体動ノイズ低減処理を行い、体動ノイズ低減処理後の信号に対して、モーションセンサーからの検出信号に基づいて、第2の体動ノイズ低減処理を行ってもよい。
これにより、所定の順序で複数の体動ノイズ低減処理を行うことが可能になる。ここでは、図5の機能ブロック図にも示したように、まず第2の検出信号を用いた体動ノイズ低減処理を行い、その後、第2の体動ノイズ低減処理を行うものとした。この場合の、各信号の流れを示したものが図23である。
図23に示したように、生体からは脈信号とノイズ信号が検出可能であるが、複数の検出信号の各検出信号にはその両方が含まれることになる。ただし本実施形態ではその比率は検出信号毎に異なり、第1の検出信号は比較的脈信号が多く、第2の検出信号は第1の検出信号に比べて脈信号の比率が低い(体動ノイズの比率が高い)。そして、この2つの検出信号を用いて脈信号と体動信号(体動ノイズ)を分離する。この処理は、上述したスペクトラム減算法により実現される。そして、分離された脈信号(体動ノイズ低減処理後の第1の検出信号)に対して、モーションセンサーの検出信号(図23では加速度信号)を用いた第2の体動ノイズ低減処理が行われ、その結果から脈拍数等が推定される。
なお、以上では押圧が高い第1の押圧P1で主として脈波成分を含む第1の検出信号を取得し、押圧が相対的に低い第2の押圧P2で主として体動ノイズを含む第2の検出信号を取得するものとした。しかし、本実施形態の手法はこれに限定されない。図8を用いて上述したように、押圧が過剰に大きい場合にも脈波成分は少なくなり相対的に体動ノイズ成分の比率が高くなる。つまり、押圧が相対的に高い側を脈波成分、押圧が相対的に低い側を体動ノイズ成分とするのではなく、押圧が相対的に高い側を体動ノイズ成分、押圧が相対的に低い側を脈波成分とする変形実施が可能である。例えば図8の例であれば、押圧が高い第1の押圧P1として、P1>p4を用い、押圧が低い第2の押圧P2としてp3<P2<p4を、あるいはp2<P2<p3を用いればよい。
この場合、処理部200は、第1の検出信号に基づいて、第2の検出信号の補正処理を行い、補正後の第2の検出信号に基づいて生体情報の検出処理を行うことになる。
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また生体情報検出装置等の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
Sf 皮膚面、WI ワイヤー、10 バンド部、12 バンド穴、14 バックル部、
15 バンド挿入部、16 突起部、30 ケース部、32 発光窓部、
34 トップケース、35 端子部、36 ボトムケース、40 センサーユニット、
50 透光部材、52 凸部、60 樹脂、70 遮光用部材、140 受光部、
150 第1の発光部、151 第2の発光部、160 基板、161 第2の基板、
162 高さ調整部材、170 モーションセンサー部、172 加速度センサー、
175 振動発生部、180 フレーム部、181 第1の部材、182 第2の部材、
200 処理部、210 信号処理部、212 体動ノイズ低減部、
214 第2の体動ノイズ低減部、220 拍動情報演算部、230 報知制御部、
240 記憶部、250 通信部、252 アンテナ、260 報知部、
400 生体情報検出装置、410 手首、420 端末装置、430 表示部

Claims (23)

  1. 被検体に対して所与の波長帯域の光を出射する第1の発光部と、
    被検体に対して前記所与の波長帯域に対応する波長帯域の光を出射する第2の発光部と、
    前記被検体からの光を受光する少なくとも1つの受光部と、
    前記受光部から出力される検出信号に基づいて、生体情報の検出処理を行う処理部と、
    を含み、
    前記処理部は、
    前記被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧である場合の前記第1の発光部の発光に基づく前記受光部からの第1の検出信号と、前記被検体の測定部位に与えられる前記押圧が前記第1の押圧に比べて小さい第2の押圧である場合の前記第2の発光部の発光に基づく前記受光部からの第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出装置。
  2. 請求項において、
    前記処理部は、
    第1のタイミングで前記第1の発光部から出射された光に基づく前記受光部からの前記第1の検出信号と、
    前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングで前記第2の発光部から出射された光に基づく前記受光部からの前記第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出装置。
  3. 請求項2において、
    前記第2のタイミングは、前記第1のタイミングのあとのタイミングであり、
    第3のタイミングは、前記第2のタイミングのあとのタイミングであり、
    第4のタイミングは、前記第3のタイミングのあとのタイミングである場合に、
    前記処理部は、
    前記第1のタイミング及び前記第3のタイミングでの前記受光部からの前記検出信号を前記第1の検出信号として取得し、前記第2のタイミング及び前記第4のタイミングでの前記受光部からの前記検出信号を前記第2の検出信号として取得することを特徴とする生体情報検出装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれかにおいて、
    前記第1の発光部は、
    前記第2の発光部と、前記受光部との間に配置されることを特徴とする生体情報検出装置。
  5. 請求項4において、
    前記第1の発光部と前記受光部との距離をL1とし、前記第2の発光部と前記受光部との距離をL2とした場合に、
    L2>2×L1であることを特徴とする生体情報検出装置。
  6. 被検体に対して光を出射する少なくとも1つの発光部と、
    前記被検体からの所与の波長帯域の光を受光する第1の受光部と、
    前記被検体からの前記所与の波長帯域に対応する波長帯域の光を受光する第2の受光部と、
    前記受光部から出力される検出信号に基づいて、生体情報の検出処理を行う処理部と、
    を含み、
    前記処理部は、
    前記被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧である場合の前記第1の受光部からの第1の検出信号と、前記被検体の測定部位に与えられる前記押圧が前記第1の押圧に比べて小さい第2の押圧である場合の前記第2の受光部からの前記第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出装置。
  7. 請求項において、
    前記処理部は、
    第1のタイミングで前記発光部から出射された光に基づく前記第1の受光部からの前記第1の検出信号と、前記第1のタイミングで前記発光部から出射された光に基づく前記第2の受光部からの前記第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれかにおいて、
    前記被検体の毛細血管が閉じる大きさの押圧をp2とし、前記被検体の動脈に対する影響が始まる大きさの押圧をp3とした場合に、
    前記第1の押圧と前記第2の押圧の一方はp3より大きく、他方はp2より小さいことを特徴とする生体情報検出装置。
  9. 請求項1乃至8のいずれかにおいて、
    前記処理部は、
    前記第2の検出信号に基づいて、前記第1の検出信号の補正処理を行い、補正後の前記第1の検出信号に基づいて前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出装置。
  10. 請求項1乃至8のいずれかにおいて、
    前記処理部は、
    前記第1の検出信号に基づいて、前記第2の検出信号の補正処理を行い、補正後の前記第2の検出信号に基づいて前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出装置。
  11. 請求項9又は10において、
    前記処理部は、
    前記補正処理として、前記検出信号に含まれる体動ノイズを低減する体動ノイズ低減処理を行うことを特徴とする生体情報検出装置。
  12. 請求項1乃至11のいずれかに記載の生体情報検出装置を含むことを特徴とする電子機器。
  13. 被検体に対して所与の波長帯域の光を出射する第1の発光部と、被検体に対して前記所与の波長帯域に対応する波長帯域の光を出射する第2の発光部と、前記被検体からの光を受光する少なくとも1つの受光部と、を含む生体情報検出装置における生体情報検出方法であって、
    前記被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧である場合の前記第1の発光部の発光に基づく前記受光部からの第1の検出信号と、前記被検体の測定部位に与えられる前記押圧が前記第1の押圧に比べて小さい第2の押圧である場合の前記第2の発光部の発光に基づく前記受光部からの第2の検出信号とに基づいて、生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出方法。
  14. 請求項13において、
    第1のタイミングで前記第1の発光部から出射された光に基づく前記受光部からの前記第1の検出信号と、
    前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングで前記第2の発光部から出射された光に基づく前記受光部からの前記第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出方法。
  15. 請求項14において、
    前記第2のタイミングは、前記第1のタイミングのあとのタイミングであり、
    第3のタイミングは、前記第2のタイミングのあとのタイミングであり、
    第4のタイミングは、前記第3のタイミングのあとのタイミングである場合に、
    前記第1のタイミング及び前記第3のタイミングでの前記受光部からの前記検出信号を前記第1の検出信号として取得し、前記第2のタイミング及び前記第4のタイミングでの前記受光部からの前記検出信号を前記第2の検出信号として取得することを特徴とする生体情報検出方法。
  16. 請求項13乃至15のいずれかにおいて、
    前記第1の発光部は、
    前記第2の発光部と、前記受光部との間に配置されることを特徴とする生体情報検出方法。
  17. 請求項16において、
    前記第1の発光部と前記受光部との距離をL1とし、前記第2の発光部と前記受光部との距離をL2とした場合に、
    L2>2×L1であることを特徴とする生体情報検出方法。
  18. 被検体に対して光を出射する少なくとも1つの発光部と、前記被検体からの所与の波長帯域の光を受光する第1の受光部と、前記被検体からの前記所与の波長帯域に対応する波長帯域の光を受光する第2の受光部と、を含む生体情報検出装置における生体情報検出方法であって、
    前記被検体の測定部位に与えられる押圧が第1の押圧である場合の前記第1の受光部からの第1の検出信号と、前記被検体の測定部位に与えられる前記押圧が前記第1の押圧に比べて小さい第2の押圧である場合の前記第2の受光部からの前記第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出方法。
  19. 請求項18において、
    第1のタイミングで前記発光部から出射された光に基づく前記第1の受光部からの前記第1の検出信号と、前記第1のタイミングで前記発光部から出射された光に基づく前記第2の受光部からの前記第2の検出信号とに基づいて、前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出方法。
  20. 請求項13乃至19のいずれかにおいて、
    前記被検体の毛細血管が閉じる大きさの押圧をp2とし、前記被検体の動脈に対する影響が始まる大きさの押圧をp3とした場合に、
    前記第1の押圧と前記第2の押圧の一方はp3より大きく、他方はp2より小さいことを特徴とする生体情報検出方法。
  21. 請求項13乃至20のいずれかにおいて、
    前記第2の検出信号に基づいて、前記第1の検出信号の補正処理を行い、補正後の前記第1の検出信号に基づいて前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出方法。
  22. 請求項13乃至20のいずれかにおいて、
    前記第1の検出信号に基づいて、前記第2の検出信号の補正処理を行い、補正後の前記第2の検出信号に基づいて前記生体情報の検出処理を行うことを特徴とする生体情報検出方法。
  23. 請求項21又は22において、
    前記補正処理として、前記検出信号に含まれる体動ノイズを低減する体動ノイズ低減処理を行うことを特徴とする生体情報検出方法。
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