JP5927315B2 - ダム堆砂集積装置と集積方法 - Google Patents
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そのためにダム堆砂問題は緊急の課題であるにもかかわらず進展していないのが現状である。
堆砂の除去量をどの程度にするかを考えると、年間に堆積する堆砂量をVとすると、1年間でVを上回るV+αの除去ができれば、数年から数十年かけてダム堆砂量を低減することができる。
その場合にαが非常に大きいと、下流の河川環境を急変させることになり、周辺環境へ与える影響が大きい。
したがって下流環境へ与えるインパクトと堆砂除去量の両者をバランスさせた持続可能な堆砂除去対策は、小さなαを選択して時間をかけて除去することになる。
例えば10年かけて堆砂量を50%削減するといった方法である。
本願発明はこのような観点を背景に、長期戦となるダム堆砂対策として省力化した、かつ単純な構成で確実に堆砂を減量するために開発したものである。
<1> ダムの水位が下がった状態で、ブルドーザやバックフォーを用いて土砂を掘削して撤去したり、浚渫船で土砂を掬って撤去する方法。
<2> サイフォンの原理を利用して堆砂を排出する方法。(特許文献1)
<3> シートを利用して広範囲の土砂を吸引して堆砂を排除する方法。(特許文献2)
<4> ダム底に排砂管を設置し、この管で広範囲の土砂を吸引して排除する方法。(特許文献3)
<5> ドラッグラインでダム底の土砂を掬いあげる方法。(特許文献4)
<1> ピンポイントで堆砂を撤去する方法であるために、きわめて効率が悪い。
<2> 撤去位置を移動する回数が多く、広域の堆砂除去には向かない。
<3> 浚渫船などの装備が必要となり、不経済である。
<1> バケットの開口部が砂礫によって閉塞してしまう場合が多く、そのたびに閉塞した砂礫などを撤去するという手数を要する。
<2> 大量掘削を行うためには、クレーンなどの施設を大型化せざるを得ず、不経済である。
<3> バケットに転石や流木が引っ掛かった場合に転倒しやすく、その際にはいちいち復元する作業が必要となり不経済である。
<4> ドラグラインを操作するための駆動力のエネルギー消費量が多く、運転コストが高い。
<5> 一度に線状に大量の掘削をするために、掘削跡が「わだち」のようになり、隣接するラインを掘削する際にバケットが安定せず転倒しやすい状態となる。
<6> バケットが一度転倒すると、その後の姿勢制御が困難である。
さらに、本発明のダム堆砂の集積方法は、前記発明において、排砂ゲート近くに設置したワイヤ折り返し部と、ダム上流側に設けたウインチとの間に張設したワイヤを集積体に連結し、ウインチの駆動により集積体をダム湖底で摺動させることを特徴とする。
さらに、本発明のダム堆砂の集積装置は、移動装置が、排砂ゲート近くに設置したワイヤ折り返し部と、ダム上流側に設置したウインチと、ワイヤ折り返し部とウインチとの間に張設し、集積体と連結するワイヤと、からなることを特徴とする、
さらに、本発明のダム堆砂の集積装置は、平面視して集積体の両側に、それぞれ別のワイヤを設置したことを特徴とする。
さらに、本発明のダム堆砂の集積装置は、集積体の両側に設置したワイヤのそれぞれに、ウインチおよびワイヤ折り返し部を設置することを特徴とする。
さらに、本発明のダム堆砂の集積装置は、ワイヤ折り返し部を、平面視して排砂ゲートを両側からはさむ位置に設置したことを特徴とする。
<1> 複雑な駆動部などがなく、きわめて経済的に構成することができる。
<2> 一度の移動で広域の作業ができるようになり、移動回数も少なくなる。しかもバケットのように転倒する可能性がなく、操作が不能になったり、回復作業に時間をかけることがなく迅速な作業を行うことができる。
<3> 集積体の移動跡が轍のような溝になっても、隣接した除去作業で集積体が転倒することがない。
<4> 堆砂を排砂ゲートの近くにいったん集積しておけば、排砂ゲートを開放することで堆砂を下流に流下させることができるため、他のエネルギーを使うことなく、自然流下の状態を確保できる。
本発明は複数の部材、すなわち集積体1と移動装置とによって構成する。
集積体1は、ダムの堆砂を集積するための部材である。
そのために集積体1は、基本的には単純な角柱のような長尺の部材で構成する。
集積体1の素材は、鋼材だけでなくコンクリート,FRP、非鉄金属などで構成することができる。
集積体1は、一定の高さと、一定の幅があればよく、水平に寝かした柱体、断面がH型のH型鋼のような市販の鋼材、プレハブのコンクリート柱、梁などを転用して使用することができる。
その形状は、図1(b)に示すように角柱の下の縁に刃15を突設した形状、(d)に示すように角柱の一部に空室16を設けた形状、(e)に示すように前面に曲面を設けた形状を採用することができる。
あるいは砂利が主体の堆砂の場合には、(f)に示すように、鋼棒を籠18状に組み立てたものを採用することもできる。
移動装置は、前記集積体1に移動力を付与するための装置である。
移動装置は、集積体1に連結するワイヤ2と、上記の集積体1に対してワイヤ2を介して移動力を与えるためのウインチ3と、ワイヤ2を折り返すためのワイヤ折り返し部(図2におけるシーブ5)とからなる。
ウインチ3とシーブ5とは、集積体1をはさんで反対側に設置し、シーブ5はダム堤体などの不動点に設置する。
このウインチ3は回転ドラムでワイヤ2を巻き取ったり、巻き出す構造の市販の公知のものであり、それを地上に設置して使用する。
集積体1を平面的に見た場合の両端部にワイヤ2を取り付け、別々のワイヤ2を介して別々のウインチ3で移動力を与えることもできる。
すると長尺の鋼材などで構成した集積体1が湖底の障害物に衝突した場合にも、平面的に傾斜しにくく、あるいは断面的に転倒しにくく、安定した堆砂の集積作業を行うことができる。
反対に、同様の理由で自在に平面的な向きを制御することもできる。
あるいは集積体1に移動力を与えるワイヤ2の折り返し用に、湖底に沈めた重錘6と、その重錘6に取り付けたシーブ5を利用することもできる。
重錘6を排砂ゲートの近くに設置すれば、その付近に向けて堆砂を効率よく集積することができる。
集積体1とワイヤ2を直接に接合せず、鋼材などの重量を有するチェーン21を介在させると集積体1により湖底を抑えつける大きい力が作用するから、より効率的である。
さらに、集積体1に超音波ソナーや水中カメラを取り付け、陸上にはそれらからの信号を受ける観測装置を設置して構成することもできる。
このように構成することによって、集積体1の移動軌跡の確認、記録などが可能となり、集積作業の取り残しや、重複作業の回避を行うことができる。
上記の集積体1を使用して堆砂を集積する方法を説明する。
陸上のウインチ3に巻きつけたワイヤ2を、対象位置のシーブ5で反転してウインチ3に戻す。
対象位置のシーブ5は陸上に設置することになるので、そのままでは集積体1を持ちあげる力が作用する。
そこで湖底に重錘6を設置し、ワイヤ2は重錘6に設けた固定シーブ5を介在させる。
こうしてウインチ3を回転させることによって、集積体1の湖底面を移動させ、湖底面を引きずることで堆砂を掻き集めることができる。
掻き集めた堆砂は、排砂ゲートの近くに集積して、排砂ゲートを開放した際に下流に排出する。
またゲートではなく、サイフォンやポンプを利用する排砂の場合にはそれらの吸引口の周辺に堆砂を集めておき、操作時に下流に排出する。
集積体1を移動する際に、平面視で集積体1の両端に別のワイヤ2、ウインチ3、シーブ5を取り付けることによって、ワイヤ2の張力、巻き取り量を調整して集積体1の姿勢を制御できる。
特に湖底面の硬さや凹凸などで集積体1が傾いたり転倒しやすい場合には2本のワイヤ2を操作する構成では回収率が向上して有効である。
上記したように重錘6を排砂ゲートの近くに設置すれば、その付近に堆砂を効率よく集積することができるが、重錘6を排砂ゲートを挟む位置に設置すれば集積する効率がさらに向上する。
長尺の鋼材などで構成した集積体に、それと一定の距離を離して重量体を取り付けて構成することができる。
そのために例えば集積体の移動方向に対して後方に支持材を取り付け、その支持材に重量体を取り付ける。(以下「前」「後」とは集積体の移動方向を前とした前後の意味である)
この重量体は鉄やコンクリートなどの重量を備えた塊体であればよい。
図4の実施例では、集積体とほぼ同一の長さを有する鋼材を、集積体と平行に位置させて重量体として採用したものである。
この重量体には、前記の実施例と同様に空気袋を取り付ける。
この空気袋にはエアチューブを介して水上あるいは陸上からエアを供給して膨張させ、重量体と集積体に浮力を与えて浮上させることができる。
集積体の下縁には移動方向に向けて刃15を突設することもできる。
重量体の上方にワイヤやチェーンを取り付けて前方に牽引すると、重量体は、その下縁を回転中心として前方に転倒しやすい。
しかし図4の実施例のように、回転中心から後方に一定の距離だけ離して重量体を取り付けておくと、回転に対する抵抗を大きくすることができる。
模型実験では、H型鋼を寝かしただけの集積体と、C型鋼の後方に重量体を取り付けた実施例のタイプとを牽引してその集砂量の比較を行った。
その結果図5に示すように、後方に重量体を設けた本実施例の構成では、それを設けない構成と比較して約3倍の量の砂を集めることができた。
集積体の後方に重量体を取り付け、さらに集積体の前方下部に刃を突設した構成を採用することもできる。
このように構成すると、後方に重量体を備えているが、しかし集積体に刃を設けていない構造との間で掻集砂量に明確な違いが発生することが分かる。
すなわち図7では、例えば自重1kgの集積体の上方を牽引するタイプでは、「刃なし」では掻集砂量は約2kg弱であるのに対して、「刃付き」では3kg強まで上昇した結果が出ている。
このように後方に重量体を取り付け、かつ前方に向けて刃を設けたタイプでは、砂の内部に潜り込まず、砂が覆い被さることがないから、根掛かりのリスクが減少し、浮上も容易である。
11:空気袋
12:エアチューブ
13:排気チューブ
14:注排水チューブ
15:ブイ
17:曲面
18:籠
2:ワイヤ
21:チェーン
3:ウインチ
5:シーブ
6:重錘
7:重量体
Claims (7)
- ダム堤体の湖底近傍に設けた排砂ゲートからの堆砂の排出を行うべく、ダム湖底に沈設した集積体を、排砂ゲート側に摺動させることにより、ダム湖底に堆積した堆砂を掻き集めて排砂ゲート近くに集積することを特徴とする、
ダム堆砂の集積方法。 - 排砂ゲート近くに設置したワイヤ折り返し部と、ダム上流側に設けたウインチとの間に張設したワイヤを集積体に連結し、ウインチの駆動により集積体をダム湖底で摺動させることを特徴とする、請求項1に記載のダム堆砂の集積方法。
- ダム湖底に沈設する集積体と、
ダム堤体の湖底近傍に設けた排砂ゲートからの堆砂の排出を行うべく、ダム湖底に堆積した堆砂を掻き集めて排砂ゲートの近くに集積するために、集積体をダム湖底で摺動可能な移動力を生成する移動装置と、を備えたことを特徴とする、
ダム堆砂の集積装置。 - 移動装置が、
排砂ゲート近くに設置したワイヤ折り返し部と、
ダム上流側に設置したウインチと、
ワイヤ折り返し部とウインチとの間に張設し、集積体と連結するワイヤと、
からなることを特徴とする、
請求項3に記載のダム堆砂の集積装置。 - 平面視して集積体の両側に、それぞれ別のワイヤを設置したことを特徴とする、
請求項4に記載のダム堆砂の集積装置。 - 集積体の両側に設置したワイヤのそれぞれに、ウインチおよびワイヤ折り返し部を設置することを特徴とする、
請求項5に記載のダム堆砂の集積装置。 - ワイヤ折り返し部を、平面視して排砂ゲートを両側からはさむ位置に設置したことを特徴とする、
請求項4乃至6のうち何れか1項に記載のダム堆砂の集積装置。
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