JP4700761B1 - 水底均し装置 - Google Patents

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Abstract

【目的】海、河川、湖、ダムなどにおいて、凹凸状となっている水底を、深度を一定にしながら精度良く且つ高効率に均すことができる水底均し装置を提供する。
【構成】船体の左右両側の支持フレームにそれぞれ設けられている上下一対の船体側ヒンジ部と、船体の左右両側にそれぞれ配置されており、各一端が前記上下一対の各船体側ヒンジ部により回動自在に支持され各他端が前記各船体側ヒンジ部を支点として円弧状に揺動自在に支持されている上下一対の剛性アームと、船体横方向に配置され先端部が水平面に対して水底の均し動作に適した所定の角度となるように配置されている排土板と、前記排土板の左右両側に設けられ、前記排土板が前記の各剛性アームの各他端により回動可能に支持されるようにする上下一対の排土板側ヒンジ部と、前記船体に配置され前記排土板の水中での高さ位置を調整するウインチ機構と、を備えた水底均し装置である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、海、河川、湖、ダムなどにおいて、浚渫作業の中でグラブバケットなどを使用して掘削した後に水底面が凹凸状となった状況の下で、深度を一定にしながら凹凸状部分を均すことにより、余分な浚渫土を発生せずに水底の深度を確保することができる水底均し装置に関する。
従来より、海底などの浚渫作業においては、浚渫の仕上段階までをも含めて、図8(a)に示すようなグラブ浚渫船から、底面が円弧状に形成されたグラブバケットを沈降させて海底を掘削することが行なわれていた。この場合、掘削された土砂は水面上に引き揚げ、土運船などに移し所定の処分場に運搬・投棄されていた。このようなグラブバケットを使用して海底を掘削する場合は、海底Aの掘跡の全体の断面は、図8(b)に示すような円弧状、すなわち、グラブを閉じたときにグラブの先端が当たる部分は深いが他の部分は浅い凹凸状となっていた。そのため、従来の浚渫作業においては、作業精度を考慮し幾分深めに掘削する方法が一般に行われており、掘削後の浅い凸状部分(図8(b)のA1参照)が設計水深P(浚渫目標となる水深。例えば−10.0m)よりも低くなるように、設計水深Pよりも所定距離だけ深い位置せP’(例えば−10.2m)を目標とする掘削(深堀となる)を行なっていた(図8(b)参照)が、凸部の水深は十分に要求を満たすとしても凹部は必要以上に深い水深となっており、理論上の必要浚渫土量を大幅に超える浚渫土が発生するので、海面を埋め立てて建設される海面処分場の容量を圧迫するなど地球環境の観点から改善すべき課題となっていた。
また、海底の浚渫作業の他の方法として、排土板、掘削土圧送手段、掘削手段の深度調整機能、及び水面上の貯留手段を有する浚渫システムを使用して、水上の船体から水底面の所定深さまで沈降させた排土板を移動させることにより凹凸状の水底を掘削し、同時に水底面を均し、掘削した土砂等は船上に引き揚げることが考案されている。
図9はこのような従来の海底均し装置を示すもので、特許文献1に開示されているものである。この図9に示す従来の海底均し装置について主な構成を説明すると、Sはタグボート21,22により移動させられる作業船、W1,W2は前記作業船Sから後述の土砂収集筒25及び排土板26を昇降するためのウインチ機構(懸吊手段)、25は前記作業船Sから前記ウインチ機構(懸吊手段)W1,W2及び後述の揺動枠28により海底面に沈降された土砂収集筒、26は前記土砂収集筒25の左右両側に水平軸線(枢軸部4P。図9(d)参照)周りに回動可能に取り付けられている平面略長方形状の各排土板、27は前記土砂収集筒25に固定された移動支持体24と前記各排土板26との間を連結する油圧シリンダ(図9(c)参照)、28はその上端部が前記作業船Sの基部に軸支されて前記基部を支点としてその各自由端が円弧状に上下揺動可能とされておりその各自由端が前記土砂収集筒25に固定されている揺動枠(前記の土砂収集筒25及び排土板26の深さ位置を調整するためのもの)、29は前記土砂収集筒25が収集した土砂を土運搬船B(前記作業船Sと一緒に水面を前進するもの)に連続的に圧送するためのスクリューコンベア付きチューブである。図9に示す従来の海底均し装置においては、前記土砂収集筒25は、その左右の各排土板26により均され掻き集められた土砂を自らの中に収集する。この収集された土砂は、前記スクリューコンベア付きチューブ29により、海上の土運搬船Bに連続的に圧送される。
また、図9に示す従来の海底均し装置において、前記各排土板26は、前記土砂収集筒25及び前記各排土板26の水深が各浚渫作業毎に変動し得ることから、そのままでは全ての浚渫作業において常に適切な角度とすることはできない。そこで、図9に示す従来の海底均し装置においては、前記各排土板26を水平軸線(枢軸部4P。図9(d)参照)に対して回動自在とすると共に、前記土砂収集筒25(前記土砂収集筒25に固定された移動支持体24)と前記各排土板26との間を油圧シリンダ27で連結し(図9(c)参照)、前記排土板26の海底地盤(水平面)に対する喰い込み角度を調整するようにしていた。
特開2007−23694号公報
前述のように、図9に示す従来の海底均し装置においては、前記各排土板26は、その各浚渫作業毎に異なる設計水深に対応するように、前記揺動枠28により前記作業船Sの基部を支点として円弧状に上下動させられるので、前記設計水深に応じて沈降された場合、前記円弧状に上下動させられた角度によっては、その先端部が水平面(海底面)に対して均し作業のために適切でない角度となってしまうという課題があった。そこで、この従来の海底均し装置では、前記排土板26の先端部の水平面(海底面)に対する喰い込み角度を適切なものとするために、前記排土板26を支持している土砂収集筒25側(移動支持板24)と前記排土板26との間に前記油圧シリンダ27を介設し、各浚渫作業毎に、前記油圧シリンダ27を操作して、前記排土板26の角度を、各浚渫作業毎の設計水深に対応するように調整するようにしていた。
しかし、図9に示す従来の海底均し装置においては、作業に伴う浚渫土砂が発生する事は本願の主たる目的には適さないほか、均し機能に関しても以下の課題があった。すなわち、図9に示す従来の海底均し装置においては、作業船に搭載した前記排土板26を含む海底均し装置を使用して海底を均す場合に、前述のように、前記排土板26の先端部の角度を各浚渫作業毎に異なる設計水深に対応するように調整するために油圧シリンダ27や図示されない油圧ホースを備える必要があったが、本願のように海底土を前進しながら掘削する場合は、砂礫混じりの土砂の衝突やシール部の土砂による損耗などによる作動油の漏出が起き易く、海洋汚染事故を惹起しやすいため、本願の用途には油圧シリンダの使用は適切でない。また、航路において均し施工を行う場合、通航船の障害にならぬよう毎回の均し終了後、作業船の速やかな移動(航行)が必要であり、このため装置を海面近くに引き上げた後、変針・反転し、所定の位置で装置を引下げて作業を再開するという反復操作を容易に行える構造が必要であるが、図9に示す従来の海底均し装置においては、揺動枠28、懸垂手段W1,W2、油圧シリンダ27などの制御・確認すべき項目が多いため、上記の反復操作を効率的に行うことが困難であった。さらに、図9に示す従来の海底均し装置においては、排土板26は移動支持体24や土砂収集筒25などを介して間接的に結合された複雑な構造となっているため強固な構造とすることが困難であり、揺動枠28と直接的に結合された構造と比較して、タグボート22などの推進力を掘削力として効率的に利用することができなかった。
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、掘削後に凹凸状になっている水底の均し作業を余剰浚渫土の発生を抑制しながら精度良く且つ効率的に行うことができる水底均し装置を提供することを目的とする。
このような従来技術の課題を解決するための本発明による凹凸状の水底を均すための水底均し装置は、水上の船体の左右両側にそれぞれ固定されている支持フレームと、前記各支持フレームの互いに所定距離だけ重力方向に離れた2箇所にそれぞれ設けられている上下一対の船体側ヒンジ部と、水上の船体の左右両側にそれぞれ配置されており、各一端がそれぞれ前記上下一対の各船体側ヒンジ部により回動自在に支持されることにより各他端が前記各船体側ヒンジ部を支点として円弧状に揺動自在に支持されており、且つ、互いに同一の長さに形成され互いに所定距離だけ重力方向に離れて平行に配置されている上下一対の剛性アームと、船体横方向(進行方向と直交する方向)に配置され、前記左右の各剛性アームとそれぞれ接続されており、少なくともその先端部が水平面に対して水底の均し動作に適した所定の角度となるように配置されている排土板と、前記排土板の両端(左右両側)にそれぞれ設けられ、互いに所定距離だけ重力方向に離れた2箇所にそれぞれ配置されており、前記排土板が前記の各剛性アームの各他端により回動可能に支持されるようにするための上下一対の排土板側ヒンジ部と、前記船体の左右両側にそれぞれ配置されており、一端が前記剛性アームまたは排土板に固定されているワイヤを必要な長さだけ水中に入れることにより、前記排土板の水中での高さ位置を調整するためのウインチ機構と、前記各剛性アーム又は前記排土板の1箇所又は複数箇所に固定されており、前記各剛性アーム又は前記排土板が前記船体の進行方向に水中を移動するとき水の抵抗により重力方向へ向かう分力を受けるような向きに固定された傾斜板と、を備えたことを特徴とするものである。
また、本発明による水底均し装置においては、前記船体は、自らを移動させる推進機関を備えておらず、推進機関を備えた自航船によって押される若しくは引かれることにより移動する非自航船の船体であり、前記船体の進行方向側(図1(a)の図示右方向)の船首部には、前記船首部の進行方向に対して横または斜め横方向への移動を容易にするためのスクリューなどにより構成されるサイドスラスタ(横移動装置。図1(a)の符号20)と水底水深をリアルタイムに計測する測深機(図1(a)の符号21)とが設けられていることが望ましい。
本発明においては、前記排土板の左右両側は、前記船体の左右両側からそれぞれ水中に沈降されている各剛性アームにより、前記船体側を支点として円弧状に揺動自在に支持されている。しかも、本発明では、前記左右両側の剛性アームは、それぞれ、互いに所定距離だけ重力方向に離れて且つ互いに平行となるように上下一対に配置された2本の同じ長さのアームから成る2軸構成とされており、前記各剛性アームの船体側の各端部は前記船体側の支持フレームの各船体側ヒンジ部により、また前記各剛性アームの水中側の各端部は前記排土板の各排土板側ヒンジ部によりそれぞれ回動可能に支持されており、しかも各船体側ヒンジと各排土板側ヒンジの上下の間隔は同じ長さであり、前記各2軸(上下一対)の剛性アームの各端部は、前記剛性アーム及び前記排土板の水中での位置がどのような深さになっても、常に、両者を結ぶ直線が重力方向となるように保持されるようになる。したがって、本発明によれば、前記剛性アームおよび前記排土板の水中での位置がどのような深さになっても、常に、前記各剛性アームにより支持された排土板またはその先端部の水平面に対する角度は、水底の均し作業(水底の凸状の隆起部を削り取り、削り取った土砂を近傍の凹部に移動させる作業)に適した一定の角度に保持されるようになる。
また、本発明においては、前記各剛性アーム又は前記排土板の1箇所又は複数箇所に固定された傾斜板であって、前記各剛性アーム又は前記排土板が前記船体の進行方向に水中を移動するとき水の抵抗により重力方向へ向かう分力を受けるような向きに固定された傾斜板を備えるようにしたので、前記各剛性アーム又は前記排土板が前記船体の進行により水中を移動するとき、前記傾斜板が水の抵抗によって重力方向へ向かう分力を受ける結果、前記排土板が水底面に対して重力方向に確実に押え付けられながら移動されるようになり、前記排土板による前記水底面の凸状隆起部の掘削がより確実に行なえるようになる(もしこのような傾斜板が無いときは、特に前記各剛性アーム又は前記排土板の本体が管状もしくは中空体状に形成されているなどの場合、前記各剛性アーム又は前記排土板に大きな浮力が生じてしまうので、装置重量と浮力のバランス次第では前記排土板を水底面に対して重力方向に確実に押え付けながら移動させることができない恐れがあり得る)。
よって、本発明によれば、従来の水底均し装置において必要とされていた「前記排土板またはその先端部の角度を、各浚渫作業毎に、各浚渫作業の設計水深に対応するように調節するための油圧シリンダ」が不要となるので油による海洋汚染を防止でき、また前記均し作業時の「油圧シリンダを操作して排土板の角度を調整する複雑な作業」が不要となるので、掘削後に凹凸状となっている水底面を排土板を使用して均す水底面の均し作業を、余剰な浚渫土を発生することなく、精度良く効率的に行なうことができる。
さらに、従来の丸底爪付きグラブを使用した掘削による堀跡においては凸部(掘残し部)と凹部(深堀部)とが隣り合わせに形成されるが、本発明では、このことに着目して、従来の丸底爪付きグラブによる堀跡の凸部(掘残し部)を所定の深度で削り取った土砂をそのまま隣の凹部に移動できるようにしたので、前記削り取った土砂を海底から船上に移動する必要がなくなり、新たな浚渫土の発生を防止することができる。
また、本発明において、前記船体を、自らを移動させる推進機関を備えておらず、推進機関を備えた他の自航船によって押されるか若しくは引かれることにより水上もしくは水中を移動する非自航船の船体により構成するようにしたため、非自航船は自航船と異なって船舶安全法などの海事法規が適用されないことなどから、整備・運用面で極めて有利となる。また、このように前記船体を非自航船としたときでも、前記船体の移動方向の先端部分に、前記先端部分の向きの移動(進行方向に対してその横または斜め横方向の移動)を可能にするためのスクリューなどで構成されるサイドスラスタ及び測深機を備えるようにしたときは、前記船体の進行を容易に且つ正確にコントロールできるようになる。
(a)は本発明の実施例1による海底均し装置を説明するための概念図(サイドスラスタ20および測深機21は実施例2に関するもの)である。(b)は本実施例1の排土板を示す概略図である。(c)は前記排土板の斜視図である。(d)は本装置を水底に吊り下げた作業船を自航船(押船タイプ)で前進作業する状態を示す平面図である。 本実施例1の排土板を示す側面図である。 本実施例1を説明するための概略側面図である。 本実施例1を説明するための概略平面図である。 本実施例1の剛性アーム及び排土板の動作を説明するための概略図である。 本実施例1の剛性アーム及び排土板の動作を説明するための概念図である。 本実施例1の動作を説明するための図である。 従来のグラブ浚渫船による海底の浚渫作業を説明するための図である。 従来の排土板を含む浚渫作業システムを説明するための図である。
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
図1(a)は本発明の実施例1による海底均し装置を説明するための概念図、図1(b)は本実施例1の排土板を示す概略図、図1(c)は前記排土板の斜視図、図1(d)は本装置を水底に吊り下げた作業船を自航船(押船タイプ)で前進作業する状態を示す平面図、図2は本実施例1の排土板を示す側面図、図3は本実施例1を説明するための概略側面図、図4は本実施例1を説明するための概略平面図、である。
図1(a)、図3、及び図4において、1は非自航式の台船の船体、2はこの船体1に固定された鋼製の支持フレーム、3a,3bは各上端部が前記支持フレーム2に揺動自在に支持されている鋼製の上下一対の剛性アーム、3cは前記各剛性アーム3a,3bの複数箇所に設けられ前記各剛性アーム3a,3bが撓んで互いに離反し過ぎないように互いを連結・支持しておく中間支持棒(図3では前記各剛性アーム3a,3bの3箇所に示しているが、図1(a)では図示の便宜上前記各剛性アーム3a,3bの略中央の1箇所にのみ示している)、4は前記各剛性アーム3a,3bの各下端部(自由端)に回動自在に支持された鋼製の排土板、5は前記各剛性アーム3a,3bの揺動位置の深さを調節するためのワイヤ6を所望の長さだけ海中に繰り出す昇降ウインチ、7はこの船体1を押す押船、Aは本実施例1による均し作業の対象となる凹凸状の海底面、A1は凹凸状の海底面Aの凸状部分である。
また、図1〜4において、4は排土板、4aは排土板4の本体、4bは前記排土板4の本体4aの先端側(船体の進行方向側)に固定された板状の先端部(凹凸状の海底面Aの凸状部分A1の土砂を掘削する掘削用部分)、4cは前記先端部4bの図示下端に固定された爪部、4dは前記本体4aの左右両端に連結された連結板、4daは前記連結板4dの一部であって前記板状の先端部4bを船体の進行方向の反対側から補強支持する部分、11a,11bは前記各剛性アーム3a,3bに前記排土板4の本体4aを回動自在に連結するために前記連結板4dに設けられた上下一対の排土板側ヒンジ部、である。なお、図1(c)は前記排土板4の本体4aを斜視図で示しているが、この本体4aの長さは船体1の横方向の長さに応じて変更されるものである。
また、図3において、12a,12bは、前記支持フレーム2に備えられた船体側ヒンジ部、13は船体1上に設けられており、前記昇降ウインチ5からのワイヤ6の前記剛性アーム3a,3b側に延びる方向を一定に保持する等のために設けられたダビットである。
本実施例1では、図4に示すように、前記の支持フレーム2、昇降ウインチ5、ダビット13は前記船体1の左右両側にそれぞれ左右一対に配置されている。なお、図4において、14はコントロール・ルーム、15は台船として土運船を使用した場合における既存の船倉スペースである。
また、本実施例1では、図3に示すように、前記船体側ヒンジ部12a,12bは、前記支持フレーム2の互いに重力方向に沿って所定距離B(例えば1200mm)だけ離れた2箇所に、それぞれ設けられている。また、前記排土板側ヒンジ部11a,11bも、前記排土板4の本体4aの互いに重力方向に沿って前記と同一の所定距離B(例えば1200mm)だけ離れた2箇所に、それぞれ設けられている。したがって、本実施例1では、前記各剛性アーム3a,3bは、互いに同一の長さに形成されており、その各両端がそれぞれ前記船体側ヒンジ部12a,12bと前記排土板側ヒンジ部11a,11bに回動自在に支持されているので、常に、互いに平行に揺動するようになっている。なお、各剛性アーム3a,3bの剛性を高めるために、相互を繋ぐ支持棒を、前記各剛性アーム3a,3bの中間の複数位置にヒンジ結合により配するようにしてもよい。
すなわち、図5に示すように、本実施例1では、前記上下一対の剛性アーム3a,3bは、常に互いに平行に揺動し、前記上下一対の各剛性アーム3a,3bの船体1側の各端部(前記船体側ヒンジ部12a,12bにそれぞれ回動自在に接続されている各部分)は、常に、両者を結ぶ直線が重力方向となるように配置・保持されている。また、前記上下一対の各剛性アーム3a,3bの排土板4側の各端部(前記排土板側ヒンジ部11a,11bにそれぞれ回動自在に接続されている各部分)も、常に、両者を結ぶ直線が重力方向となるように配置・保持されている。よって、本実施例1においては、前記排土板4の海中での高さ位置が各浚渫作業毎に異なる設計水深P(図8(b)参照)に対応してどのように変動させられても、前記排土板4の先端部4b及び爪部4cの水平面(海底面)に対する角度は、常に一定に保持されるようになっている(図6も参照)。なお、図5,6では、前記中間支持棒3cは便宜上図示を省略している。
また、図7は本実施例1を使用した掘削後の仕上げ作業を説明するための図である。海底の浚渫作業においては、まず、ステップ1として、図7(a)に示すように、従来より周知のグラブ浚渫船からグラブバケットを海中に沈降させて海底面Aを掘削するが、この場合、グラブバケットで掘削した後の海底面は、グラブバケットの底面が略円弧状に形成されていることから図7(a)のように凹凸状の海底面Aとなるが、ここでは、従来技術の問題点として前記図8(b)に関して前述したような「深掘り」で仕上げることは行なわないで、前記凹凸状の海底面Aの凸状部分A1の大部分が設計水深P(目標水深。例えば−10.0m)と同じ程度の深さに止めた掘削とする。
次に、ステップ2として、本実施例1による海底均し装置を使用して、図7(b)に示すように、前記凹凸状の海底面Aの凸状部分A1(図7(a)参照)を前記排土板4により均していく。この場合、作業精度を考慮して幾らか深く掘削するため、前記排土板4の爪部4cの高さ位置を前記の設計水深P(例えば−10.0m)よりも少し下方の例えば−10.2m(図7(b)の符号P’参照)に合わせて、均し施工する。すると、図7(b)に示すように、前記凹凸状の海底面Aの凸状部分A1が掘削され、掘削土は隣接する凹部に移動するので(図7(b)の符号A2参照)、余分な浚渫土を発生することなく浚渫作業の最終目的である設計水深Pより深い海底面が得られる。
以上のように、本実施例1によるときは、前記排土板4の先端部4b及び爪部4cの水平面に対する角度が、前記排土板4の海中での高さ位置(これは各浚渫作業毎に設定される設計水深Pに対応して、変動する)に拘わらず、常に一定に保持される。よって、本実施例1を使用するときは、従来のように排土板の角度を調節するために油圧シリンダを設置することや揺動枠28、懸垂手段W1,W2、油圧シリンダ27などを複雑に操作して排土板の角度を調整することなどが不要となるので、掘削後に凹凸状となっている海底面の均し作業を行うとき、この均し作業を精度良く且つ効率的に行うことが可能になる。
次に本発明の実施例2について説明する。本実施例2は、前記実施例1と基本的な構成は同一であるので、異なる部分を中心に説明する。本実施例2では、非自航船である台船の船体1の進行方向側(図1(a)の図示右方向)の船首部に、前記船首部を進行方向に対して横又は斜め横方向に移動させるためのスクリューなどにより構成されるサイドスラスタ20(横移動装置)と海底水深をリアルタイムに計測する測深機21が設けられている(図1(a)参照)。これらのサイドスラスタ20と測深機21の構成は、従来より周知であるので説明を省略する。
従来より押船により押されて移動する台船(又はその船体1)は横方向から強い風や潮流を受けると、その位置のコントロールが極めて困難であったが、本実施例2のように、前記台船の船首に前記サイドスラスタ20を設けるようにしたときは、前記台船の船体1の微細な位置の確保などが極めて容易にできるようになる。又、前記測深機21により、均し前の水底面の凸部の位置と高さが正確に把握されるので、均し施工がより適切にできるようになる。
以上、本発明の各実施例について説明したが、本発明は前記の各実施例として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施例1による海底均し装置は、海底の掘削後に凹凸状となっている海底面の凸部を均すことで、深度を一定とする仕上げ掘削に使用するものとして説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、河川、湖、ダムの他、サンドウェーブ(波状の海底土砂の堆積)、深堀りできない薄層浚渫や広範囲に点在する凹凸状となっている水底面を平坦化するためにも使用することができることは勿論である。また、本発明においては、前記各剛性アーム3a,3b又は前記排土板4の1箇所又は複数箇所に、前記船体1の進行方向と反対の方向に傾斜する傾斜板(その側面(少なくともその頂部の側面)が前記船体1の進行方向と反対の方向に傾斜しているように配置・固定されている傾斜板)(図示せず)を備えるようにしてもよく、このようにしたときは、前記各剛性アーム3a,3b又は前記排土板4が前記船体1の進行により水中を移動するときに、前記傾斜板が水の抵抗によって重力方向へ向かう分力を受ける結果、前記各剛性アーム3a,3b又は前記排土板4も重力方向への力を受けるので、前記各剛性アーム3a,3b又は前記排土板4に加えられる水の浮力(特に前記各剛性アーム3a,3b又は前記排土板4の本体4aが管状もしくは中空体に形成されているときは、前記各剛性アーム3a,3b又は前記排土板4に大きな浮力が加えられるので、装置重量と浮力のバランス次第では前記排土板4を水底面に対して重力方向に十分に押え付けながら移動させることが困難となる場合がある)に抗して、前記排土板4が、水底面に対して重力方向に十分に押え付けられながら移動されるようになり、前記排土板4により前記水底面の凸状隆起部が確実に削り取られるようになる。
1 船体
2 支持フレーム
3a,3b 剛性アーム
3c 中間支持棒
4 排土板
4a 本体
4b 先端部
4c 爪部
4d 連結板
5 昇降ウインチ
6 ワイヤ
11a,11b 排土板側ヒンジ部
12a,12b 船体側ヒンジ部
13 ダビット
20 サイドスラスタ
21 測深機
A 凹凸状の海底面
A1 凸状部分
A2 凹部に移動された土砂
P 設計水深

Claims (2)

  1. 水上の船体の左右両側にそれぞれ固定されている支持フレームと、
    前記各支持フレームの互いに所定距離だけ重力方向に離れた2箇所にそれぞれ設けられている上下一対の船体側ヒンジ部と、
    水上の船体の左右両側にそれぞれ配置されており、各一端がそれぞれ前記上下一対の各船体側ヒンジ部により回動自在に支持されることにより各他端が前記各船体側ヒンジ部を支点として円弧状に揺動自在に支持されており、且つ、互いに同一の長さに形成され互いに重力方向に所定距離を介して平行に配置されている上下一対の剛性アームと、
    船体の進行方向と直交する方向に配置されており、前記左右の各剛性アームの他端と接続され、少なくともその先端部が水平面に対して水底の均し動作に適した所定の角度となるように配置されている排土板と、
    前記排土板の両端にそれぞれ設けられており、前記排土板が前記の各剛性アームの他端により回動可能に支持されるようにするための、互いに重力方向に所定距離を介して平行に配置された上下一対の排土板側ヒンジ部と、
    前記船体の左右両側にそれぞれ配置されており、一端が前記剛性アームまたは排土板に固定されているワイヤを必要な長さだけ水中に入れることにより、前記排土板の水中での高さ位置を調整するためのウインチ機構と、
    前記各剛性アーム又は前記排土板の1箇所又は複数箇所に固定されており、前記各剛性アーム又は前記排土板が前記船体の進行方向に水中を移動するとき水の抵抗により重力方向へ向かう分力を受けるような向きに固定された傾斜板と、
    を備えたことを特徴とする、水底均し装置。
  2. 請求項1において、
    前記船体は、自らを移動させる推進機関を備えておらず、推進機関を備えた自航船によって押される若しくは引かれることにより移動する非自航船の船体であり、
    前記船体の進行方向側の船首部には、前記船首部の進行方向に対して横または斜め横方向への移動を容易にするためのスクリューにより構成されるサイドスラスタと前記サイドスラスタの近傍に配置され水底水深をリアルタイムに計測する測深機とが設けられていることを特徴とする、水底均し装置。
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