JP5924048B2 - ポリイミド積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、ポリイミド樹脂膜の線膨張率は、通常、20ppm/℃以上であり、金属基板の線膨張率(通常、20ppm/℃以下)やシリコンウェハーの線膨張率(約3〜4ppm/℃)よりも大きい。このため、これらの基板上にポリイミド樹脂を用いて表面保護膜や層間絶縁膜を形成すると、クラックの発生、配線の断絶、基板の反り等の問題が生じることがあった。
例えば、特許文献1には、テトラカルボン酸またはその酸無水物とジアミンとの反応で得られる感光性ポリイミド前駆体を用いて得られるポリイミド樹脂膜が記載されている。この文献には、剛直構造のテトラカルボン酸またはその酸無水物と、剛直構造のジアミンとを用いることで、線膨張率が小さいポリイミド樹脂膜を形成できることが記載されている。
ポリイミド樹脂膜を層間絶縁膜として用いるため、ポリイミド樹脂膜の表面に配線層等の金属層が設ける場合、ポリイミド樹脂膜の表面粗さが大きいと、ポリイミド樹脂膜と金属層との密着性が劣る場合があり、問題となっていた。
(工程a)基板上、又は基板上にすでに形成されたポリイミド前駆体樹脂膜上に、少なくともポリイミド前駆体樹脂と溶媒Aとを含有し、溶媒Aの含有量が溶液全体に対し46〜95重量%であるポリイミド前駆体樹脂膜形成液を塗布し、得られた塗膜を、溶媒Aの残留量が塗膜全体に対し1〜45重量%になるまで乾燥することで、基板上に、ポリイミド前駆体樹脂膜を形成する工程
(工程b)工程aで得られたポリイミド前駆体樹脂膜を、150〜250℃に加熱する工程
(工程c)工程bの後、ポリイミド前駆体樹脂膜の表面を平坦化する工程
(工程d)工程cの後、ポリイミド前駆体樹脂膜を、300〜450℃に加熱することで、ポリイミド前駆体樹脂膜中のポリイミド前駆体樹脂を閉環させて、ポリイミド樹脂膜を形成する工程
(2)さらに、以下の工程eを工程aと工程bの間に有する、(1)に記載のポリイミド積層体の製造方法。
(工程e)工程aで得られたポリイミド前駆体樹脂膜を、前記溶媒Aと親和性のある溶媒Bに浸漬させる工程
(3)前記工程eが、工程aで得られたポリイミド前駆体樹脂膜を、前記溶媒Aと親和性のある溶媒B中に、10〜40℃で、1〜60分間浸漬させる工程である、(2)に記載のポリイミド積層体の製造方法。
(4)ポリイミド樹脂膜の線膨張率が+1〜+21ppm/℃である、(1)〜(3)のいずれかに記載のポリイミド積層体の製造方法。
(5)ポリイミド樹脂膜の膜厚が15〜1000μmである、(1)〜(4)のいずれかに記載のポリイミド積層体の製造方法。
(6)ポリイミド樹脂膜の表面粗さ(Rz)が3μm以下である、(1)〜(5)のいずれかに記載のポリイミド積層体の製造方法。
(7)前記基板が、線膨張率が+2〜+21ppm/℃の単層基板、又はこの単層基板が2以上積層してなる複合基板である、(1)〜(6)に記載のポリイミド積層体の製造方法。
本発明のポリイミド積層体の製造方法は、基板上にポリイミド樹脂膜を形成するポリイミド積層体の製造方法であって、以下の工程a〜工程dを有することを特徴とする。
(工程a)基板上、又は基板上にすでに形成されたポリイミド前駆体樹脂膜上に、少なくともポリイミド前駆体樹脂と溶媒Aとを含有し、溶媒Aの含有量が溶液全体に対し46〜95重量%であるポリイミド前駆体樹脂膜形成液を塗布し、得られた塗膜を、溶媒Aの残留量が塗膜全体に対し1〜45重量%になるまで乾燥することで、基板上に、ポリイミド前駆体樹脂膜を形成する工程
(工程b)工程aで得られたポリイミド前駆体樹脂膜を、150〜250℃に加熱する工程
(工程c)工程bの後、ポリイミド前駆体樹脂膜の表面を平坦化する工程
(工程d)工程cの後、ポリイミド前駆体樹脂膜を、300〜450℃に加熱することで、ポリイミド前駆体樹脂膜中のポリイミド前駆体樹脂を閉環させて、ポリイミド樹脂膜を形成する工程
本発明に用いる基板は、ポリイミド前駆体樹脂膜やポリイミド樹脂膜を担持することができ、かつ、ポリイミド前駆体樹脂を閉環させる際の加熱条件下で安定なものであれば、特に制限されない。
基板としては、ガラス基板、セラミック基板、半導体基板等の無機基板や、ステンレス基板、アルミニウム基板、銅基板等の金属基板等が挙げられる。
なかでも、線膨張率が+3〜+17ppm/℃の無機基板若しくは金属基板の単層基板、又はこれらの単層基板が2以上積層してなる複合基板が好ましく、Si基板、SiC基板、GaN基板、及びGaAs基板から選ばれる半導体基板、並びにこれらの基板上に金属層(配線層)が形成されたものがより好ましい。
本発明のポリイミド積層体の製造方法は、基板上にポリイミド樹脂膜を形成するものである。
基板上に形成されるポリイミド樹脂膜としては、その主成分であるポリイミド樹脂がポリイミド前駆体樹脂の閉環反応(熱イミド化反応)によって生成するものである限り、ポリイミド前駆体樹脂やポリイミド樹脂の種類には制限されず、公知のポリイミド樹脂膜を用いることができる。
ポリイミド前駆体樹脂の分子量分布は、好ましくは1.3〜3.0、より好ましくは1.5〜2.5である。
なお、重量平均分子量及び分子量分布は、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc) 溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により得られた、ポリスチレン換算値である。
以下、本発明のポリイミド積層体の製造方法を工程順に詳細に説明する。
工程aは、基板上、又は基板上にすでに形成されたポリイミド前駆体樹脂膜上に、少なくともポリイミド前駆体樹脂と溶媒Aとを含有し、溶媒Aの含有量が溶液全体に対し46〜95重量%であるポリイミド前駆体樹脂膜形成液を塗布し、得られた塗膜を、溶媒Aの残留量が塗膜全体に対し1〜45重量%になるまで乾燥することで、基板上に、ポリイミド前駆体樹脂膜を形成する工程である。
このように、工程aで形成されるポリイミド前駆体樹脂膜は、ポリイミド前駆体樹脂膜形成液の塗工と、得られた塗膜の乾燥をそれぞれ1回行うことで形成されるポリイミド前駆体樹脂膜であってもよいし、これらの作業をそれぞれ2回以上繰り返すことで形成されるポリイミド前駆体樹脂膜であってもよい。これらの作業をそれぞれ2回以上繰り返すことで、厚みが大きく、かつ、膜厚が均一なポリイミド前駆体樹脂膜を効率よく形成することができる。
なお、本明細書において、ポリイミド前駆体樹脂膜形成液に含まれる溶媒を「溶媒A」という。
ポリイミド前駆体樹脂膜形成液中のポリイミド前駆体樹脂の含有量は、好ましくは5〜54重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
溶媒Aとしては、極性溶媒が好ましい。例えば、水;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、アミド系溶媒及び含硫黄系溶媒がより好ましく、アミド系溶媒がさらに好ましく、N−メチル−2−ピロリドン及びN,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
これらの溶媒はそれぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
添加剤としては、接着助剤、レベリング剤、重合禁止剤、光重合開始剤、感光助剤等が挙げられる。
乾燥温度は、通常50〜130℃、好ましくは60〜120℃、より好ましくは70〜110℃であり、乾燥時間は、通常1〜60分、好ましくは1〜50分、より好ましくは1〜40分である。
先に説明したように、ポリイミド前駆体樹脂膜形成液の塗工と、得られた塗膜の乾燥をそれぞれ2回以上繰り返すことで、厚みが大きく、かつ、膜厚が均一なポリイミド前駆体樹脂膜を効率よく形成することができる。
工程bは、工程aで得られたポリイミド前駆体樹脂膜を、150〜250℃に加熱する工程である。
なお、式(4)、式(5)において、R1、R2は、それぞれ前記と同じ意味を表す。
加熱時間は、特に制限はないが、通常1〜120分、好ましくは1〜90分、より好ましくは1〜60分である。加熱時間がこの範囲内であることで、ポリイミド前駆体樹脂膜を、効率よく好ましい状態に変化させることができる。
加熱方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
かかる冷却処理は、所定温度にまで下げることができればよく、冷却時間は適宜決定することができる。冷却方法は特に制限はない。例えば放冷によって冷却することができる。
工程cは、工程bの後、ポリイミド前駆体樹脂膜の表面を平坦化する工程である。
工程cは、本発明によって得られるポリイミド積層体のポリイミド樹脂膜上に配線を形成するような場合の前処理や、ポリイミド前駆体樹脂膜中に金属ポスト(導通ビア)が埋め込まれた場合の頭だし処理として行われる。
ポリイミド前駆体樹脂膜の表面の平坦化は、切削加工、研削加工、研磨加工等の従来公知の方法によって行うことができる。
例えば、本発明の製造方法によって得られるポリイミド積層体においては、ポリイミド樹脂膜の表面粗さ(Rz)は通常3μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下である。
工程dは、工程cの後、ポリイミド前駆体樹脂膜を、300〜450℃に加熱することで、ポリイミド前駆体樹脂膜中のポリイミド前駆体樹脂を閉環(熱イミド化)させて、ポリイミド樹脂膜を形成する工程である。
加熱時間は、特に制限はないが、通常1〜120分、好ましくは1〜90分、より好ましくは1〜60分である。この範囲内であることで、基板との密着性に優れるポリイミド樹脂膜を得ることができる。加熱方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。
線膨張率は、従来公知の測定装置、測定方法により測定することができる。
ポリイミド樹脂膜の膜厚を大きくするためには、上記のように工程aにおいて、ポリイミド前駆体樹脂膜形成液の塗工と、得られた塗膜の乾燥を繰り返すことで、ポリイミド前駆体樹脂膜の膜厚を大きくすればよい。
本発明のポリイミド樹脂膜の製造方法においては、工程aと工程bの間に以下の工程eを行ってもよい。
(工程e)工程aで得られたポリイミド前駆体樹脂膜を、前記溶媒Aと親和性のある溶媒Bに浸漬させる工程
以下、工程eで用いられる溶媒を「溶媒B」という。
これらの特性が求められることから、溶媒Aとしては、極性溶媒が好ましく用いられる。
特に、絶縁膜のような膜厚が大きいポリイミド樹脂膜を形成する際は、溶剤Aを樹脂膜からスムーズに除去することが更に困難になり、溶剤除去の際、ポリイミド分子の面内配向の不均一が生じる。結果として膜の切削時の切削面のバラツキ、上面金属層との密着性のバラツキなどの不具合が生じる。
また、次の工程bにおいて効率よく溶媒Bを乾燥除去できることから、溶媒Bとしては沸点が比較的低い溶媒が好ましい。溶媒Bの沸点は、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下である。常温付近で浸漬処理を行えるものである限り、溶媒Bの沸点の下限値は特に制限されない。
これらの極性溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、溶媒Bとしては、水、アセトン及びメタノールから選ばれる二種以上の混合溶媒が好ましく、水とアセトンの混合溶媒がより好ましい。水とアセトンの混合溶媒において、その混合比(水:アセトン)は、通常、1:99〜99:1、好ましくは5:95〜95:5である。
ポリイミド前駆体樹脂膜を溶媒Bに浸漬させる時間は、通常1〜60分、好ましくは1〜45分、より好ましくは1〜30分である。浸漬時間がこの範囲内であることで、ポリイミド前駆体樹脂膜から溶媒Aを効率よく除去することができる。
本発明によって得られるポリイミド積層体は、上記のポリイミド樹脂膜を基板上に有するものであり、半導体チップ材料として好適に用いられる。
実施例1〜3及び比較例1、2において行った測定を以下に示す。
樹脂膜付シリコンウェハーの樹脂膜の一部を削り、シリコンウェハーを露出させた。触針式表面形状測定器(ULVAC社製、Dektak150)を用いて、樹脂膜付シリコンウェハーの表面形状を測定し、樹脂膜がある部分と、シリコンウェハーが露出した部分との差を、樹脂膜の膜厚とした。
触針式表面形状測定器(ULVAC社製、Dektak150)を用いて、樹脂膜の表面形状を測定し、表面粗さ(Rz)を算出した。
スパッタリング装置(芝浦メカトロニクス社製、i−miller)を用いて、ポリイミド樹脂膜表面に金属層を形成した。次いで、金属層表面から、縦方向と横方向(交差角90度)にそれぞれ11本、1mm間隔で切込みを入れて、試験片を作製した。この試験片を用いて、碁盤目テープ試験を行い、以下の基準で、ポリイミド樹脂膜と上面金属層との密着性を評価した。
なお、ポリイミド樹脂膜表面が粗い場合、その影響を受けて、場所によってポリイミド樹脂膜と上面金属層との密着性に差が生じるため、碁盤目テープ試験を行うことで、ポリイミド樹脂膜表面の粗さやその均一性を評価することができる。
○・・・剥離箇所が0
△・・・剥離箇所が1〜50
×・・・剥離箇所が51〜100
反応器に、2,2’−ジ(p−アミノフェニル)−6,6’−ビスベンゾオキサゾール28.4g(0.068モル)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)100g、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gを投入して撹拌した。得られた溶液を攪拌しながら、氷冷下で3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.6g(0.07モル)を粉体のまま加えた。次いで、溶液を氷冷下で2時間、室温下で24時間攪拌して、重合反応を行った。
以下の実施例においては、この重合反応液を、そのままポリイミド前駆体樹脂膜形成液1として用いた。溶液全体に対するDMAC及びNMPの含有量は合わせて80.3重量%であった。ポリイミド前駆体樹脂の濃度は、19.7重量%、Mw=63000、Mw/Mn=2.0であった。
なお、重量平均分子量及び分子量分布は、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により得られた、ポリスチレン換算値である。
製造例1で得られたポリイミド前駆体樹脂膜形成液1を、スピンコート法を用いてシリコンウェハー上に塗布した。次いで、塗膜付シリコンウェハーを、恒温器を用いて、N2雰囲気下、400℃で1時間加熱して、ポリイミド樹脂膜の膜厚が7μmのポリイミド樹脂膜付シリコンウェハーを得た。
ポリイミド樹脂膜付シリコンウェハーを、フッ化水素酸50%溶液に5分間浸漬してポリイミド樹脂膜1を剥離した。このポリイミド樹脂膜を流水で洗浄した後、130℃、3時間真空乾燥して、分析用ポリイミド樹脂膜1を作製した。
上記方法で得られた分析用ポリイミド樹脂膜1を20mm×4mmに裁断して試験片を作製した。
熱機械的分析装置(エスアイアイナノテクノロジー社製、EXSTAR TMA/SS7100)を用いて、試験片の線膨張率を昇温速度5℃/分で30〜300℃の範囲で2回測定した。2回目の測定における80〜280℃の平均線膨張率は、5.7ppm/℃であった。
卓上形精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフ AGS−5kNG)を用いて、チャック間50mm、引張速度5mm/分の条件で、上記方法で得られた分析用ポリイミド樹脂膜1(5mm幅)の弾性率を算出したところ、5.7GPaであった。
反応器に、1,4−ジアミノベンゼン7.34g(0.068モル)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)65g、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)65gを投入して攪拌した。得られた溶液を撹拌しながら、氷冷下で3,3’−4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物20.6g(0.07モル)を粉体のまま加えた。次いで、溶液を氷冷下で2時間、室温下で24時間攪拌して、重合反応を行った。
以下の実施例においては、この重合反応液を、そのままポリイミド前駆体樹脂膜形成液2として用いた。溶液全体に対するDMAC及びNMPの含有量は合わせて82.3重量%であった。ポリイミド前駆体樹脂の濃度は、17.7重量%、Mw=47000、Mw/Mn=1.9であった。
分析用ポリイミド樹脂膜2の線膨脹率は2.8ppm/℃、弾性率は8.2GPaであった。
100mlクリーンボトルに、エタノール28.7g、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(アヅマックス社製、サイラエースS330)0.3g、イオン交換水1.0gを入れ、10分間攪拌して、基板表面処理溶液を調製した。
シリコンウェハーをスピンコーターの台座にセットした後、製造例3で調製した基板表面処理溶液2mlを、シリコンウェハー全面に広がるようにポリエチレン製スポイトで垂らした。次いで、シリコンウェハーを500rpmで10秒間、1500rpmで20秒間回転させて、余分な基板表面処理溶液を除去した。その後、シリコンウェハーを130℃のホットプレート上で2分間加熱して乾燥した後、空冷した。
(ポリイミド前駆体樹脂膜の形成)
製造例4で表面処理を行ったシリコンウェハー上に、製造例1で調製したポリイミド前駆体樹脂膜形成液1をスピンコート法(500rpmで10秒間、1500rpmで30秒間回転)により塗布した。
その後、この塗膜付シリコンウェハーを90℃のホットプレート上で6分間加熱して、塗膜中のDMAC及びNMPを除去した。形成されたポリイミド前駆体樹脂膜中のDMAC及びNMPの残留量は合わせて32重量%であった。
なお、ポリイミド前駆体樹脂膜中の溶媒の残留量は、シリコンウェハーの重量と、ポリイミド前駆体樹脂溶液塗布後のシリコンウェハーの重量差から塗布ワニス重量を算出し、ワニス樹脂濃度より樹脂重量を算出し、次いで、90℃で6分間加熱した後のシリコンウェハーの重量差から留去溶剤重量、残留溶剤量を算出して求めた。
次いで、上記工程で得られたポリイミド前駆体樹脂膜付シリコンウェハーを、恒温器を用いて、N2雰囲気下、200℃で20分間加熱し、その後室温まで冷却した。得られたポリイミド前駆体樹脂の膜厚は、45〜50μmであった。
次いで、サーフェースプレーナー(ディスコ社製、DFS8910)を用いて、ポリイミド前駆体樹脂膜表面の切削加工を行った。加工後のポリイミド前駆体樹脂膜の膜厚は42μm、加工面の表面粗さ(Rz)は0.16μm以下であった。
次いで、ポリイミド前駆体樹脂膜付シリコンウェハーを、恒温器を用いて、N2雰囲気下で、400℃で1時間加熱して、ポリイミド樹脂膜付シリコンウェハー1を得た。
ポリイミド樹脂膜の膜厚は40μmであった。ポリイミド樹脂膜の表面粗さ(Rz)は0.12μmに減少していた。
ポリイミド樹脂膜表面の写真を図1に示す。この写真から分かるように、ポリイミド樹脂膜の表面はきれいに平坦化されている。
上記方法によりポリイミド樹脂膜と上面金属層との密着性を評価した。結果を第1表に示す。
(ポリイミド前駆体樹脂膜の形成)
ポリイミド前駆体樹脂膜形成液1をシリコンウェハー上に塗布した後に、塗膜付シリコンウェハーを90℃で12分間加熱したこと以外は、実施例1と同様の方法によって、シリコンウェハー上に、ポリイミド前駆体樹脂膜を形成した。形成されたポリイミド前駆体樹脂膜中のDMAC及びNMPの残留量は合わせて23重量%であった。
次いで、ポリイミド前駆体樹脂膜付シリコンウェハーを、水とアセトンの混合溶媒(水:アセトンの重量比=7:3)に、25℃で20分間浸漬させた。浸漬処理後、ポリイミド前駆体樹脂膜付シリコンウェハーの表面を窒素気流下で乾燥した。
次いで、実施例1と同様の方法で、ポリイミド前駆体樹脂膜の加熱、平坦化加工、熱イミド化を行い、ポリイミド樹脂膜付シリコンウェハー2を得た。
ポリイミド樹脂膜の膜厚は40μmであった。ポリイミド樹脂膜の表面粗さ(Rz)は0.10μmに減少していた。ポリイミド樹脂膜の表面の平坦化状態は維持されていた。
上記方法によりポリイミド樹脂膜と上面金属層との密着性を評価した。結果を第1表に示す。
ポリイミド前駆体樹脂膜の形成工程において、製造例1で調製したポリイミド前駆体樹脂膜形成液1に代えて、製造例2で調製したポリイミド前駆体樹脂膜形成液2を使用し、さらに、ポリイミド前駆体樹脂膜の加熱工程において、加熱温度を200℃から170℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、ポリイミド樹脂膜付シリコンウェハー3を得た。
ポリイミド樹脂膜の膜厚は39μmであった。ポリイミド樹脂膜の表面粗さ(Rz)は0.18μmであった。ポリイミド樹脂膜の表面の平坦化状態は維持されていた。
上記方法によりポリイミド樹脂膜と上面金属層との密着性を評価した。結果を第1表に示す。
シリコンウェハー上に試験配線(厚さ5μm、幅25μm、配線間隔40μm)を形成した。
このシリコンウェハー上に、試験配線全体が被覆されるように、製造例1で調製したポリイミド前駆体樹脂膜形成液1を塗布した。その後、この塗膜付シリコンウェハーを90℃のホットプレート上で6分間加熱して、塗膜中のDMAC及びNMPを除去した。形成されたポリイミド前駆体樹脂膜中のDMAC及びNMPの残留量は合わせて30重量%であった。この時、ポリイミド前駆体樹脂膜の膜厚は、35〜42μmであり、特に試験配線上の厚みが大きくなっていた。
次いで、サーフェースプレーナー(ディスコ社製、DFS8910)を用いて、ポリイミド前駆体樹脂膜表面の切削加工を行った。加工後のポリイミド前駆体樹脂膜の膜厚は30μm、加工面の表面粗さ(Rz)は0.20μm以下であった。
ポリイミド樹脂膜の膜厚は29μmであった。試験配線上とそれ以外の場所とを比べたときのポリイミド樹脂膜の段差は、0.5μm以下であった。ポリイミド樹脂膜の表面の平坦化状態は維持されていた。
上記方法によりポリイミド樹脂膜と上面金属層との密着性を評価した。結果を第1表に示す。
(ポリイミド前駆体樹脂膜の形成)
実施例1と同様の方法で、シリコンウェハー上に、ポリイミド前駆体樹脂膜を形成した。
(ポリイミド前駆体樹脂膜の加熱)
次いで、実施例1と同様の方法で、ポリイミド前駆体樹脂膜付シリコンウェハーを加熱した。
(熱イミド化)
次いで、ポリイミド前駆体樹脂膜付シリコンウェハーを、恒温器を用いて、N2雰囲気下で、400℃で1時間加熱し、その後室温まで冷却して、ポリイミド樹脂膜付シリコンウェハーを得た。ポリイミド樹脂膜の膜厚は42〜45μmであった。
(平坦化加工)
次いで、サーフェースプレーナー(ディスコ社製、DFS8910)を用いて、ポリイミド樹脂膜の切削加工を行った。加工後のポリイミド樹脂膜の膜厚は42μmであった。ポリイミド樹脂膜の表面粗さ(Rz)は0.25μm程度であったが、加工面には多数の陥没があり、この陥没部の深さは最大で3.5μmであった。
この加工面の写真を図2に示す。ポリイミド樹脂膜表面に細かくささくれ立ち、また、陥没が観察される。
上記方法によりポリイミド樹脂膜と上面金属層との密着性を評価した。結果を第1表に示す。
工程bにおいて、ポリイミド前駆体樹脂膜付シリコンウェハーの加熱温度を、200℃から130℃に代えたこと以外は、実験例4と同様の方法によりポリイミド樹脂膜付シリコンウェハー6を得た。
比較例2においては、工程c(切削加工)直後の切削面はきれいな状態であったが、その後、400℃で60分加熱すると、ポリイミド樹脂膜上に、試験配線が原因の段差が目立つようになった。試験配線の有無によるポリイミド樹脂膜の段差は3.3μmであった。
上記方法によりポリイミド樹脂膜と上面金属層との密着性を評価した。結果を第1表に示す。
実施例1〜3で得られたポリイミド樹脂膜付シリコンウェハー1〜3は、いずれもそのポリイミド樹脂膜は表面粗さが小さく、また、上面金属層を形成した時に密着性に優れている。
一方、熱イミド化してから切削加工を行う、比較例1で得られたポリイミド樹脂膜付シリコンウェハー5は、そのポリイミド樹脂膜は表面粗さが大きく、また、上面金属層を形成した時に密着性に劣っている。特に、ポリイミド樹脂膜付シリコンウェハー5においては、弾性率が小さくて加工しやすいポリイミド樹脂膜を用いるものであるが、弾性率が大きいポリイミド樹脂膜を用いる実施例3よりも劣る結果になっている。
また、試験配線を形成したシリコンウェハー上にポリイミド樹脂膜を形成した場合、実施例4で得られたポリイミド樹脂膜付シリコンウェハー4においては、試験配線によって生じる凹凸の影響は、樹脂膜表面の段差にはほとんど表れていない。
一方、工程bにおける加熱温度が低い、比較例2で得られたポリイミド樹脂膜付シリコンウェハー6においては、試験配線によって生じる凹凸の影響を受けて、樹脂膜表面に大きな段差が生じている。
Claims (7)
- 基板上にポリイミド樹脂膜を形成するポリイミド積層体の製造方法であって、以下の工程a〜工程dを有することを特徴とするポリイミド積層体の製造方法。
(工程a)基板上、又は基板上にすでに形成されたポリイミド前駆体樹脂膜上に、少なくともポリイミド前駆体樹脂と溶媒Aとを含有し、溶媒Aの含有量が溶液全体に対し46〜95重量%であるポリイミド前駆体樹脂膜形成液を塗布し、得られた塗膜を、溶媒Aの残留量が塗膜全体に対し1〜45重量%になるまで乾燥することで、基板上に、ポリイミド前駆体樹脂膜を形成する工程
(工程b)工程aで得られたポリイミド前駆体樹脂膜を、150〜250℃に加熱し、部分的に熱イミド化させる工程
(工程c)工程bの後、ポリイミド前駆体樹脂膜の表面を平坦化する工程
(工程d)工程cの後、ポリイミド前駆体樹脂膜を、300〜450℃に加熱することで、ポリイミド前駆体樹脂膜中のポリイミド前駆体樹脂を閉環させて、ポリイミド樹脂膜を形成する工程 - さらに、以下の工程eを工程aと工程bの間に有する、請求項1に記載のポリイミド積層体の製造方法。
(工程e)工程aで得られたポリイミド前駆体樹脂膜を、前記溶媒Aと親和性のある溶媒Bに浸漬させる工程 - 前記工程eが、工程aで得られたポリイミド前駆体樹脂膜を、前記溶媒Aと親和性のある溶媒B中に、10〜40℃で、1〜60分間浸漬させる工程である、請求項2に記載のポリイミド積層体の製造方法。
- ポリイミド樹脂膜の線膨張率が+1〜+21ppm/℃である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド積層体の製造方法。
- ポリイミド樹脂膜の膜厚が15〜1000μmである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリイミド積層体の製造方法。
- ポリイミド樹脂膜の表面粗さ(Rz)が3μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリイミド積層体の製造方法。
- 前記基板が、線膨張率が+2〜+21ppm/℃の単層基板、又はこの単層基板が2以上積層してなる複合基板である、請求項1〜6に記載のポリイミド積層体の製造方法。
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