JP5921841B2 - 工具ホルダ - Google Patents

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Description

この発明は、ターニングセンタやマシニングセンタ等の工作機械の主軸に取り付けられる工具ホルダであって、工具最大モーメント及び慣性モーメント(イナーシャ)を極力低く抑制することで、大型加工機並びに高速加工機において、高能率加工をより高めた工具ホルダに関するものである。
この種の工具ホルダは、例えば、この発明の一実施形態を示す図1、図2aを参照して説明すると、マニピュレータ部11を有するシャンク部10と、チャックの切削工具保持用チャック部分を構成するチャック部30と、そのシャンク部10とチャック部30との間を構成するチャックの残部をなす中間部20とからなる。
一方、マシニングセンタ等の工作機械は、その各加工工程に応じて切削工具を自動交換するが、その切削工具の交換は、所要の切削工具を備えた工具ホルダの交換によって行う。その工具(工具ホルダ)の自動交換を行う装置(自動工具交換装置(ATC))は、工具ホルダの交換を円滑に行うために、工具ホルダの大きさ等に制限を設けている。例えば、表1のように、質量をはじめ各項目で最大値を定めている。ここで、図2aにおいて、工具ホルダ最大径:マニピュレータ部11の外径、工具最大長さ:シャンク部10の上端からチャック部30の下端までの長さ、工具最大モーメント:マニピュレータ部11の上面(主軸基準面)から重心Gまでの距離Mに質量を乗じたものである。
Figure 0005921841
このようなATCに使用される工具ホルダは、最大工具長さ及び最大質量は、制限内に収めることは当然として、工具最大モーメントも重要な要素である。工具最大モーメントが制限を超えてしまうと、工具交換時の遠心力で、工具ホルダが放り出される恐れがあるからである。また、生産性(加工性)を上げるには、工具交換など非加工時間を短くすることも重要であり、最大質量や工具最大モーメントが大きいほど、ATC交換時間は遅くなる。例えば、質量:12kgの時はその交換時間:1.9秒に対し、同35kgの時は、工具ホルダの放り出しを防ぐべく、同4.8秒と加工モードを低速にしなければならない。
さらに、主軸は、設定回転数に数秒(例えば、8000回転では4秒〜5秒、4000回転では1.5秒程度)で到達し、停止する場合も同様であることから、高速で回転する主軸に装着される工具ホルダには大きな慣性モーメントが働く。この慣性モーメントが大きくなるほどエネルギーの消費も大きくなって環境負荷が高いこととなる。
また、ワーク(工作物)を高能率に加工する場合、直線加工部ではできるだけ送り速度を上げて切削除去量を増やすと共に、コーナや曲線部では、速やかに加減速を働かせて円滑な加工をすることが求められる。送り速度は、回転数と一刃当たりの送り量、刃数を乗じたものであり、一般には一刃の送り量を調節して円滑で高能率な送り速度を設定する。例えば、コーナ部では、工具の切削面積が急激に増大するため、一刃の送り量を少なくすることで、工具の負荷を減少させ、ビビリによる面不良や刃の折損を防ぐ方法が取られている。
このように、高能率な切削加工においては、急激な加減速が行われており、工具ホルダには常に大きな慣性力が働いている。また、慣性モーメントと同様、質量が重くなるほど、工具長が長くなるほど、主軸は大きな慣性力を受けることになる。
このため、加減速が大きく働くコーナ部では、慣性力が大きく働く工具ホルダほど(例えば、質量が大きい、主軸基準面から工具ホルダの重心までが遠い等)、工具ホルダは撓みやすく、工具ホルダがたわむと、切削工具がワークに食い込んだりする。この食い込みによって、削りすぎ等によりワークが不良となったり、切削工具が折損したりする。これらのことから、切削加工時において、慣性力が小さいほど工具ホルダは安定し、そのことは高能率加工に反映される。
ところで、近年の技術の高度化により、航空宇宙関連や原動機関連等においては、アルミ合金部品やチタン合金等の難削材加工部品が多くなっている。例えば、航空機のフレーム、ウィングリブ、バルクヘッド等のアルミ構造部品や同フレームコンポーネント、エッジフレーム等のチタン構造部品、さらには、原動機のブレードやインペラー等である。
これらの難削材を高能率に加工する工作機械は、アルミ加工の場合、回転速度が30000rpmに及んだり、送り速度が30000mm/min(X、Y軸)以上に及んだり、主軸電動機出力が80kW(100馬力)以上に及んだりし、チタン加工の場合、主軸トルクが1500Nmに及ぶものもあり、それらを担うものが製品化されている。
また、加工方法においては、従来の3軸(上下、左右、前後の軸移動)を持つマシニングセンタでは加工効率が悪く、3軸に回転軸(A軸、B軸)を付加した5軸制御マシニングセンタを活用するケースが増えている。
この多軸マシニングセンタで上記難削材を加工する際、特に、5軸制御マシニングセンタによる難削材の高能率加工においては、主軸は高トルクとなり、従来の大型機に採用されている規格の主軸テーパに比べひと回り大きな規格(例えば、ISO規格、HSK−A125等)が採用されている。このため、その主軸に搭載される工具ホルダもその規格に則って、従来に比べてひと回り大きいものとなる。
その規格に則った工具ホルダのHSKシャンクは、1993年にDIN規格に採用された新しいツールであり、ドイツ語のHohl Schaft Kegel(中空シャンクテーパ)の頭文字を取ったもので、従来の7/24テーパシャンクに比べて、下記の数々の特徴(1)〜(5)を有している。
(1) 二面拘束によるラジアル、アキシアル方向のクランプ力により極めて高い剛性が得られる、高い静・動的剛性を有する。
(2) テーパ面と端面全体に強い摩擦密着が生じるように固定されるため、高いトルク伝達と正確な位置決め(ATC繰り返し精度)が実現できる。
(3) 回転数の上昇によって、くさび形締付機構の締付力がより強くなり、ラジアル方向の隙間が生じない高速機械加工性能を有する。
(4) シャンク長さが従来の7/24テーパシャンクの約1/3、また重量も約1/2と軽いため、工具交換時間が短くなる。
(5) クーラント供給など実用の高速・高精度加工に要求される性能を十分備えている。
このような特徴を有するHSKシャンクを有する大きな工具ホルダを採用することで、工具ホルダ自体の剛性は格段と向上するが、反面、その質量は大幅に重くなる。例えば、15kgを超える場合もあり、人が持ち上げたりして各種の作業をするには危険である。
工具ホルダの質量の目安としては、大型機に最も多く採用されているテーパ規格に則ったBT50(JIS規格)の工具ホルダが考えられて、最大10kg程度である。また、多く利用されるエンドミル系の工具を把持する工具ホルダの質量は10kg以下が多い。
このような実状から、HSKシャンクを有する工具ホルダにおいてもできるだけ軽いことが望ましい。
また、この種の工具ホルダにおいて、近年、主軸の高トルク化により、切削工具Aを精度良く強固に把握し、かつ剛性を有する上に、回転バランス等の性能の高度化が望まれ、かつ重切削による高能率化の要求をみたすものとして、上記チャック部30に切削工具を焼嵌め式でもって装着するものが注目されている(特許文献2、3参照)。
さらに、工具ホルダの生産面において、通常、工具ホルダの本体製作は、工具ホルダの最大外径に削り代を考慮した鋼製のバー材(直棒材)から、シャンク部材等の外周面形状に削り出しする。このため、従来の工具ホルダの材料利用比率(工具ホルダの大きさ/バー材の大きさ)は1/3程度で、残りの2/3は切屑となり無駄となっている。この無駄は環境負荷が大きいことである。さらに、大型部品を高能率に加工するには、多数種類の切削工具に対応した工具ホルダが必要であり、それらの切削工具に対応したシステムを形成するには、通常、300種類程度の工具ホルダを準備する必要がある。
このような材料の無駄を省き、生産における環境負荷を最小限に抑えながら、十分なアイテムの工具ホルダを提供できることが望ましい。
因みに、切削加工の観点からは、高トルク主軸の能力に堪え得る機械強度、曲げ剛性を持ち、加工能率に貢献し得る工具ホルダでなければならないことは言うまでもない。
このような実状の下、工具ホルダの軽量化を図ったものとして、チャック(工具保持部)とシャンクとを別部材とし、その両方の部材に、耐曲げ強度が得られる程度の薄肉を残して大きな中空部を形成したものがある(特許文献1要約、図1参照)。
また、工具ホルダのシャンクとチャックを別部材とし、そのシャンク部材とチャック部材を相互に接合可能とすると共に、各種の形状として、多様化する工具ホルダの生産性を高めるとともに、納入時期の短縮化を図った技術が開示されている(特許文献2段落0013、図1参照)。
さらに、チャックの外周面を先端に向かって徐々に縮径する凹弧状面とするとともに、そのチャックを軸方向複数に分割した技術も開示されている(特許文献3段落0015、図5参照)。
特開2001−252841号公報 特開2002−120115号公報 特開2009−45716号公報 特開平10−504号公報
特許文献1図1等には、シャンク部及びチャック部を中空構造として軽量化を図った旨が記載されているが、その両者の接合は、摩擦圧接を採用している。また、そのシャンク部の薄肉厚に関し、最大径部の直径の10%程度と明記されているだけである。さらに、チャック部に関しては、耐曲げ強度が得られる程度の薄肉と記載されるだけで、中空薄肉厚とソリッド(中実)では曲げ剛性がどの程度関係しているのか全く提示されていない。このため、この文献1の記載では、切削能力が十分に得られるものとし得ず、また、軽量化し得るだけで上記難削材の重切削には適用するものと容易にし得ない。特に、上記HSKシャンク等の高トルク主軸に装着されるシャンクを採用した際、チャックも大きくなり、中空構造によって軽量化した場合の最適形状を容易に得ることができない。
また、特許文献3には、チャックを軸方向複数に分割する旨の記載はあるものの、その分割位置を何処にするかの記載はない。
さらに、軽量化を図った特許文献1等の工具ホルダは、工具最大モーメントを考慮したものはない。
この発明は、以上の点に鑑み、機械強度及び曲げ剛性の低下を抑えつつ、工具最大モーメント、慣性モーメント及び慣性力を極力低く抑制するために、質量を低減することを第1の課題とし、次に重心の位置を低く抑えることを第2の課題とし、軽量化を容易にする仕組み(構成)を第3の課題とする。
上記第1の課題を達成するために、この発明は、図1(a)で示す上記工具ホルダにおいて、シャンク部10とチャック部30との間を構成するチャックの残部をなす中間部20を中空とするとともに、その中間部20の外周面20’及びチャック部30の外周面30’を、チャックの先端に向かって徐々に縮径するテーパ状とするとともに、中間部20の内周面24もその外周面20’に沿う形状としたのである。
シャンク部10は、例えば、300Nm以上の高トルクの主軸に装着されるシャンクや高速回転主軸であれば、自ずとその大きさは決定され、チャック部30は、切削工具を取付ける(チャッキングする)部位のため、太さや長さは自ずと決定される。一方、シャンク部10とチャック部30の間、すなわち、両者のチャックの残部をなす中間部20は、同じ大きさのシャンク部10やチャック部30であっても、軸方向長さを任意に取ることができる。このため、中間部を任意の長さとすれば、任意の長さ(任意の切削深さ)の工具ホルダを得ることができる。
その際、その中間部20を中空とすれば、工具ホルダの質量が極力抑制される。また、チャックの外周面が先端に向かって徐々に縮径する形状であると、同一重量の円柱状チャックの場合に比べ、特許文献3図1aに示されるように、ワークに干渉せずに剛性が高いものとすることができる。このとき、同文献3に記載のように、チャックの外周面は、シャンクから先端に向かって徐々に縮径するとともに、そのチャック先端からシャンクに向かってその先端から所要長さ全長に亘って凹孤状面とすれば、ワークとの干渉を避けつつより剛性の高いものとし得る。
なお、チャック部及び中間部の外周面は、先端に向かって徐々に縮径する形状であれば良く、全長に亘って連続する綺麗な円弧又は直線テーパ状は勿論のこと、その円弧、直線が混ざった段階的な縮径形状でも良い。
また、中間部の中空部内周面をその外周面に沿う形状とすれば、回転バランスの良いものとなる。このとき、中間部の内周面の傾斜度合はその外周面と同じ傾斜度合、例えば、同じ曲率(平行)としたり、段階的に沿う形状(近似形状)としたりすることができる。
さらに、中間部内周面がその外周面と同様にチャック先端に向かって徐々に縮径することは、クーラントがその流れの絞り効果によって先端(切削工具)にスムーズに流れる効果がある。
この発明の構成としては、シャンクに外周面が先端に向かって徐々に縮径するチャックを同一軸に設けた、工作機械の主軸に前記シャンクでもって装着される工具ホルダであって、マニピュレータ部を有する前記シャンクを構成するシャンク部と、前記チャックの切削工具保持用チャック部分を構成するチャック部と、そのシャンク部とチャック部との間を構成する前記チャックの残部をなす中空の中間部とからなり、工具最大モーメント、慣性モーメント及び慣性力を低減するために、前記中間部の外周面及びチャック部の外周面は、前記チャックの先端に向かって徐々に縮径するテーパ状とするとともに、前記中間部の中空内周面はその外周面に沿う形状とされている構成を採用することができる。
この構成の工具ホルダは、外径が大きくなって断面二次モーメントも大きくなるため、小径のホルダに比べれば、チャック全体を中実とせずに中空としても剛性は担保できる。すなわち、剛性の大きな低下を招くことなく、軽量化できる。このとき、中間部の肉厚はその長さ方向全長に亘って同一としても良いが、シャンク部側からチャック部側に向かって、徐々に薄肉となる(中間部の外周面と内周面との肉厚がチャック部側からシャンク部側に向かって徐々に厚くなる)ような形状が好ましい。大径になればなるほど回転トルクは大きくなるため、剛性が必要となり、シャンク部側が肉厚であれば、その断面二次モーメントも大きくなって高い剛性を有するものとなるからである。
この構成の工具ホルダにおいて、例えば、図1(a)、(b)に示す、シャンクに外周面が先端に向かって徐々に縮径する円錐台状チャックを同一軸に設け、ホルダ長L:400mm、マニピュレータ部の径D:125mm、チャック部材先端外径d:26mmの同一外形の工具ホルダにおいて、中間部20を中空とした中空工具ホルダA(同図(a))と中間部20を中実とした中実工具ホルダB(同図(b))とでは、質量(kg)、重心位置M(mm)、工具最大モーメント(=質量×M(kg・m))、慣性モーメント(kg・m、XY方向)は下記表2の通りとなる。このとき、Mは主軸基準面から重心Gまでの距離であり、Mが短いほど、質量が軽いほど、工具最大モーメント及び慣性モーメントは小さくなる。因みに、円柱、円錐、曲円錐の順で、重心は底面(シャンク)側に移行する(低くなる)。
Figure 0005921841
この表2から、中空工具ホルダAは、中実工具ホルダBに対し、質量:30%近く低い値となっており、このことは30%ほどエネルギー消費量(材料)が少ないということであって、環境負荷の低減につながる。また、その質量に加え、重心までの距離Mも6%程低い値となっており、この質量が小さく、主軸基準面からの重心の位置が近く(短く)なることは、慣性力の低下につながるため、加工時、工具ホルダは撓み難く、切削工具がワークに食い込んだりする恐れも少なくなり、工具ホルダは安定し、高能率加工が可能となる。
さらに、中空工具ホルダAは、同工具最大モーメントが35%近く低い値となっており、ATCに使用しても、工具交換時の遠心力が小さく、その交換時間の短縮を図ることができる。また、工具最大モーメントが低いことから、同様に、慣性モーメントも30%程低い値となっている。
なお、チャックの外周面がシャンクから先端に向かって徐々に縮径すれば、重心Gが主軸基準面に近づくとともに、図1(a)と同(b)の対比から、中間部20を中空とすることによって、重心Gの位置が主軸基準面に近づくため、上記第2の課題を達成し得る。
上記第3の課題を達成するために、この発明は、上記シャンク部、中間部及びチャック部を、それぞれ別部材であるシャンク部材、中間部材及びチャック部材から構成し、そのシャンク部材中間部材及び中間部材とチャック部材はそれぞれ溶接部を介して接合されている構成を採用したのである。
このように、シャンク部材、チャック部材及び中間部材の3部材(3ピース)とすることで、下記中空部の形成が容易となる。特に、HSKシャンク等の高トルク主軸に装着されるシャンクの場合は工具ホルダが大型化するため、その中空化が容易であることは有効である。また、3部材とすることにより、各部材のそれぞれの最大外径に削り代を考慮した鋼製のバー材(直棒材)を個々に使用することにより、外周削り出し量を、3部材を同一径の一バー材から製作する場合に比べて削減できる。すなわち、切屑が少なくなって環境負荷を低減することができる。なお、中間部材はその長さ方向において、さらに、2分割、3分割等とし得る。このように、上記特許文献3記載のチャックの分割とは異なり、中間部材の分割位置を特定し、この中間部材を工具ホルダの延長部(長さ調整部)となるようにしたのである。
また、中間部は従来のチャックの一部を構成するため、そのチャックを中空にする場合(筒状にする場合)に比べて、そのチャックを2分割として、その分割部材をそれぞれ中空に加工することにすれば、その加工作業も容易となり、精度も確保し易くなる。
溶接は、シャンク部材、中間部材及びチャック部材を剛性を持って同一軸上に相互に強固に接合し易いからであり、各部材は、それぞれ機械加工及び熱処理された後、電子ビーム溶接等で接合する。
その電子ビーム溶接は、強固な接合と量産性が可能という利点がある上に、シャンク部材と中間部材、中間部材とチャック部材の各接合精度が高く、シャンク部材軸心に対して中間部材及びチャック部材の偏心及び傾きの極めて少ない同一軸上の接合が可能である。また、電子ビーム溶接は極めて局所溶接のため、TIG溶接のように、予熱や後熱工程を必要とせず、シャンク部材、中間部材及びチャック部材の機械加工(切削加工等)→各部材の溶接→各部材の機械加工(仕上げ加工等)と各工程をスムーズに進め得る利点もある。
この接合によって、中間部材の外周面及びチャック部材の外周面は、チャック先端に向かって徐々に縮径するテーパ状となる。
なお、電子ビーム溶接の技術力により、シャンク部材、中間部材及びチャック部材のフレキシブルな組合せが自在に行い得るため、それらの部材の一体化が容易である。
この構成において、シャンクは上記HSKシャンクが軽量化には有効であり、さらに、切削工具の取付けは焼き嵌め式とすれば、特許文献3段落0003、同0004に記載のように、切削工具を精度良く強固に把握し、かつ剛性を有する上に、回転バランス等の性能の高度化に対応すると共に、そのチャックの径を細くすることができることから、切削工具のチャックの先端からの突出量(長さ)を極力短くすることができ、切削工具の切削時に受ける切削負荷に耐え得る強さである剛性を高めることができる利点を有する。
また、分割する場合は、シャンク部材と中間部材との接合端面及び中間部材とチャック部材との接合端面はそれぞれ同一大きさとすることが好ましい。
各接合端面が同一大きさであれば、その接合部における質量等の偏位も極力少なく、回転バランスが良いものとなるとともに、最少接合面積で最大の接合強度を得ることができる。また、チャック部材と中間部材のそれぞれの外周面がその接合部(線)で連続したものとなる。
さらに、シャンク部材等の各材料に例えば浸炭材(SCM415等)を使って、その内外周面(表面のみ)に浸炭等によって硬化処理を施して硬化処理層を有するものとすれば、例えばHRC55°程度とすれば、各部材内部(内外表面以外)は生材に近く靭性を持ったものとなって、ソリッド(中実)と遜色ない機械強度を得ることができる。特に、中間部材は、チャック部材等に比べて軽量化によって大きな中空部を有することとなるため、靭性を持ったものとすることが好ましい。
シャンク部材、中間部材及びチャック部材は、同一材料でも良いが、それぞれの部材を異なる材料としたり、シャンク部材と中間部材の接合部を内周面、外周面とも曲線で形成したりすることにより、防振効果を高めることができる。
この発明は、以上のように構成したので、工具最大モーメント、慣性モーメント及び慣性力を極力抑制してその軽量化を図った工具ホルダとすることができる。
この発明の優れている点を説明するものであって、(a)は中空工具ホルダの一部切断正面図、(b)は中実工具ホルダの一部切断正面図 この発明の一実施形態の一部切断正面図 同他の実施形態の一部切断正面図 同一実施形態と比較例の作用説明図であり、(a)は実施形態例、(b)〜(d)は各比較例 同他の実施形態と比較例の作用説明図であり、(a)は実施形態例、(b)〜(d)は各比較例 同実施形態の各中間部材に対する各種のチャック部材の対応図
この発明の実施形態を図2a、図2bに示し、この実施形態の工具ホルダは工作機械の300Nm以上の高トルクが加わる主軸に装着されるものであり、その主軸に着脱可能に嵌合されるHKS−A125のシャンクを有するシャンク部材10と、そのシャンク部材10に連続する円錐筒台状中間部材20と、その中間部材20に連続する円錐筒台状チャック部材30とからなって、クロムモリブデン鋼などの特殊鋼及び特殊ステンレス鋼からなる。
図2aの実施形態は、そのホルダ長L:285mm、シャンク部材10と中間部材20との接合面の径c:94mm、中間部材長a:165mm、チャック部材長b:70mm、チャック部材先端外径d:15mm、取付孔径(工具径)e:12mmとし、図2bの実施形態は、そのホルダ長L:285mm、シャンク部材10と中間部材20との接合面の径c:98mm、中間部材長a:165mm、チャック部材長b:70mm、チャック部材先端外径d:26mm、取付孔径e:20mm(L、c、a、b,d、eは図2a参照)とした。
シャンク部材10は中間部材20との接合側にマニピュレータ部11を有し、このマニピュレータ部11の曲面11a段部端面(マニピュレータ部11のシャンク側端面から50mmの位置、中間部材長aの基点)から中間部材20及びチャック部材30の外周面20’、30’は、ホルダ中心軸oからの距離:y、その段部端面からチャック部材30先端方向への距離:xとすると、y=ax+bx+c(a、b、cは係数)による2次曲線の円弧状面とした。図中、12はクーラントダクトである。
中間部材20は、一方の端部にマニピュレータ部11の端部内面に嵌る鍔部21、他方の端にチャック部材30の鍔部31が嵌る受け口22をそれぞれ有している。また、その内周面24は、2段階の傾斜面24a、24bとなって外周面20’に沿った形状となっているとともに、その肉厚tはシャンク部材10側からチャック部材30側に向かって徐々に薄肉となって十分な剛性が担保されるようになっている。この内周面24の傾斜面24a、24bの段数は任意であり、また、連続した円弧状、例えば、外周面20’と平行な円弧状でも良い。
チャック部材30は、その先端から軸心上に切削工具Aの取付孔32が形成され、その取付孔32に続いて段差をもって同一径の空洞33が形成されている。この空洞33は、中間部材20に向かって徐々に拡径する円錐台状とし得る。取付孔32には切削工具Aが焼き嵌めによって装着される。
なお、中間部材20及びチャック部材30は中心軸oを中心とした点対称の横断面(図2a、図2bにおいて水平断面)として、回転ムラが生じないようにする。
シャンク部材10と中間部材20との接合端面、及び中間部材20とチャック部材30との接合端面はそれぞれ同一大きさとされており、接合すると、外周面20’、30’が連続した(接合部に段差がない)円弧状面となる。そのシャンク部材10と中間部材20とは、両者10、20を洗浄して脱脂した後、中間部材(特殊鋼)20をシャンク部材10の接合面に圧入し、その接合部全周を電子ビーム溶接によって溶接接合する。一方、中間部材20とチャック部材30とは、同様に、両者20、30を洗浄して脱脂した後、特殊ステンレス製ネックを中間部材の接合面に圧入し、その接合部全周を電子ビーム溶接によって溶接接合する。これらの溶接接合により、シャンク部材10と中間部材20及び中間部材20とチャック部材30はそれぞれ溶接部を介して接合される。
つぎに、図3に示すように、図2aの実施形態の工具ホルダH(同図(a))、この工具ホルダHの外形において、シャンク及びチャックを一バー材から製作した中実の工具ホルダH(同図(b))、工具ホルダHと同一重さであって、HSK−A125のシャンクで円錐台状中実チャックの工具ホルダH(同図(c))、及び従来のBT50型の工具ホルダH(同図(d))をそれぞれ製作した。また、図4に示すように、図2bの実施形態の工具ホルダH(同図(a))、この工具ホルダHの外形において、シャンク及びチャックを一バー材から製作した中実の工具ホルダH(同図(b))、工具ホルダHと同一重さであって、HSK−A125のシャンクで円錐台状中実チャックの工具ホルダH(同図(c))及び従来のBT50型の工具ホルダH(同図(d))もそれぞれ製作した。それらの各工具ホルダH、H、H、Hのホルダ長Lは、165mm、225mm及び285mmの3種類とした。
その各工具ホルダH〜Hに切削工具Aを焼き嵌めしてその切削工具Aの先端に100kgの水平荷重Nをかけた場合、その切削工具先端の水平方向の撓み(各図において、実線から鎖線への移動長さ)を測定した。このとき、切削工具Aの工具ホルダ(チャック部30の先端)からの突出量は、切削工具径(=e)の3倍とした。各工具ホルダH〜Hにおいて、下記表3に質量(kg)比較を示し、同表4、表5に撓み量(mm)の比較を示す。
Figure 0005921841
Figure 0005921841
Figure 0005921841
この試験結果から、この発明に係る工具ホルダHと中実の工具ホルダHとの比較(H/H)において、工具ホルダHは、表3から、質量は約20%程度の軽量化が可能であり、また、表4の比較(H/H)から、軽量化による剛性低下は10%以下に抑えられている。
また、ワンランク小さい従来の規格工具ホルダHとの比較においては、表3の「H1/H4」から、両者(H、H)の質量はほぼ同等であるが、表4の比較(H/H)からたわみ量は、前者(H)が1.5倍近くと大きくなっている。
さらに、同じ質量となる形状で比較した場合、中実の工具ホルダHが工具ホルダHに対して、表5の比較(H/H)から、たわみ量が1.13〜1.65倍と大きくなっている。
以上から、この発明の構成のように中間部材20を中空テーパ形状とすることで、曲げ剛性の低下を防ぎつつ、大きく軽量化し得る利点が生まれることが理解できる。
なお、表3〜5から、ホルダ長Lが長いほど、曲げ剛性の低下を防ぎつつ、軽量効果を図り得る点が顕著となることが理解できる。このため、大型加工ワークでは、一般的に、ホルダ長Lは長くなることが多く、HSKシャンク等の高トルク主軸に装着されるシャンク付工具ホルダは、その大型加工ワークの加工に使用されることから、勢い、ホルダ長Lが長くなるため、その軽量効果を有効に得られることとなる。
また、他の実験から、中間部材20のチャック部材30との接合面の径f(図2a参照)は中間部材20とシャンク部材10との接合面の径cの0.8以下(f<0.8c)とし、その厚み(肉厚)tは5〜30mmとするのが好ましい。
この実施形態の工具ホルダは、シャンク部材10、中間部材20及びチャック部材30とからなるため、その中間部材20のシャンク部材接合側構造、チャック部材接合側構造、及び中間部材20の軸方向の長さをそれぞれ規格化することで、様々な組合せが可能となる。また、チャック部材30の形態も、切削工具Aとの接合径(構造)を規格化することで、様々な種類の切削工具に適したチャック部材を接合することができる。
例えば、図5に示すように、各種大きさ・形状の中間部材20(20a、20b、20c)に対し、各種態様のチャック部材30a、30b、30c、30d、30eを準備することによって、各種態様の工具ホルダを得ることができる。同図においては,中間部材20aに対して、同図の焼き嵌め式チャック部材30a、コレットチャック部材30bを連結(接合)し、同中間部材20bに対して、同コレットチャック部材30c、カッタ型チャック部材30dを連結し、同中間部材20cに対して、同サイドロック式チャック部材30eを連結する。このとき、チャック部材30の形状により,中間部材(延長部材)20は軸方向及び径方向に複数のサイズを適宜に選択可能である。中間部材20は、1つ又は2つ以上を組合せて、軸方向も自在に変更が可能である。
このように、工具ホルダのチャックを、中間部材20とチャック部材30からなるものとし、その中間部材20とチャック部材30を相互に接合可能とすると共に、各種の形状とすることによってして、多様化する工具ホルダの生産性を高めるとともに、納入時期の短縮化を図ることができる。
因みに、図5等に示す形態のシステムは、一般的にモジュラー工具といわれ、ボーリング加工用工具ホルダに多く見られる。しかし、この種の従来のモジュラー工具は取付け・取外しが自在に行えるところに特徴があり、接続機構としてネジによる結合方法を主に、又はそれに準じる方法が使用されている。例えば、特許文献4に記載の各部材の接合はネジ止めにより中間部(延長部)を連結したものであり、これは軸方向への延長が主目的である。このため、それぞれのパーツ(部材)はソリッド(中実)であり、軽量化には貢献していない。また、通常、エンドミル工具による重切削加工において、図5に示す溶接接合でモジュラー式に連結された工具ホルダは用いられていない。
上記実施形態では、HSK−A125のシャンクであったが、高トルクが加わる主軸に装着される他の各種のHSK、例えばHKS−A100等のシャンクの工具ホルダ、及びそのHSKシャンクの工具ホルダに限らず、上記BT50型の工具ホルダH等の高トルクの主軸に装着される工具ホルダは勿論、それ以下のトルクの主軸に装着される工具ホルダにおいても、この発明は採用し得る。
また、シャンク等は3部材10、20、30から構成することなく、図1(a)に示すように、シャンク及びチャックを一バー材から製作した構成であったり、中間部材20とチャック部材30を一バー材から製作し、それをシャンク部材10に溶接した構成であったりした工具ホルダであっても、この発明は採用し得ることは勿論である。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 シャンク部材
11 マニピュレータ部
20 中間部材(延長部)
30 チャック部材
A 切削工具
、H、H、H 工具ホルダ

Claims (4)

  1. シャンクに外周面が先端に向かって徐々に縮径するチャックを同一軸に設けた、工作機械の主軸に前記シャンクでもって装着される工具ホルダであって、
    マニピュレータ部(11)を有する上記シャンクを構成するシャンク部と、上記チャックの切削工具保持用チャック部分を構成するチャック部と、そのシャンク部とチャック部との間を構成する上記チャックの残部をなす中空の中間部とからなり、工具最大モーメント、慣性モーメント及び慣性力を低減するために、前記中間部の外周面及びチャック部の外周面は、上記チャックの先端に向かって徐々に縮径するテーパ状とするとともに、前記中間部の中空内周面はその外周面に沿う形状とされており、
    上記中間部の外周面と内周面との肉厚(t)をチャック部側からシャンク部側に向かって徐々に厚くしたことを特徴とする工具ホルダ。
  2. 上記シャンク部、中間部及びチャック部を、それぞれ別部材であるシャンク部材(10)、中間部材(20)及びチャック部材(30)から構成し、そのシャンク部材(10)中間部材(20)及び中間部材(20)とチャック部材(30)はそれぞれ溶接部を介して接合されていることを特徴とする請求項1に記載の工具ホルダ。
  3. 上記シャンクがHSKシャンクであり、上記切削工具(A)が装着される際、その切削工具(A)が焼き嵌め式で上記チャック部に装着されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の工具ホルダ。
  4. 上記中間部の内外周面に硬化処理層を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の工具ホルダ。
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