JP5921658B1 - 船舶用遮音床材およびその施工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】新たな騒音コードの防音性能を満たすことができ、1次甲板床張材の施工作業を簡素化する船舶用遮音床材を提供する。【解決手段】船舶の甲板上に施工する船舶用遮音床材において、基板1上に、接着層2、吸音層3、遮音層4、仕上層5を順に積層して構成される。基板1は、船舶の甲板を構成する鋼板であって、SS400等の一般構造用圧延鋼材である。接着層2は、基板1への接合強度を高めるためにポリマーセメント系の接着剤で施工される層である。接着層と、ガラス繊維からなる吸音層と、遮音層と、仕上層とを順に積層して形成する。【選択図】図1

Description

本発明は、船舶の居住区域等の船舶床の1次甲板床張材として用いる船舶用遮音床材およびその施工方法に関する。
一般に、船舶の甲板は鋼板で形成され、居室や共用通路、医務室、食堂等の区域では、その床を鋼板のままにすると、鋼板のうねりやゆがみ等が歩行の障害になり、歩行時の靴音等は騒音になって乗客や船員等の居住性が低下するため、床面の平坦化や騒音の低減のために、鋼板上に1次甲板床張材を施工し、その上面に美装や機能目的の塗装や化粧タイル等を施して船舶床を形成している。
このような船舶床の従来の1次甲板床張材は、鋼甲板上にエラストマー性能を有するアクリル−スチレン樹脂からなる1〜5mm程度の制振層を塗布により形成し、制振層上にセメント中にラテックスゴムや珪砂を混合したデッキコンポジションからなる5〜20mm程度のベースコート層を塗布により形成して、船舶床の制振性能を向上させている(例えば、特許文献1参照。)。
また、2012年11月の国際海事機関(IMO)第91回海上安全委員会(MSC91)において、旧騒音コードの改正案および同コードを強制化するSOLAS条約2−1章第3−12規則の一部改正案が採択されたことに伴って、船舶の居住区域等の船内騒音に対して新たな騒音コードに基づく遮音材の設置、および居住区域等の防音性能を重みつき音響透過損失(Rw)で測定することが義務付けられ、図5に示すように、隣接する区域A、B間の境界に設ける仕切り材の防音性能の規制値が規定された。
特開2004−211749号公報(段落0006−0010、0016、第2図)
しかしながら、上述した従来の技術においては、ベースコート層を形成するデッキコンポジションにラテックスゴムを使用しており、通常、ラテックスゴムはその液体を缶に詰めて供給されるため、鋼甲板への1次甲板床張材の施工時には、缶を開封してセメントや珪砂等の紛体と混ぜ合わせる必要があり、広い甲板への施工時に時間を要し、1次甲板床張材の施工時の作業効率が低下するという問題がある。
また、防音性能の向上のためには、機関室等で発生し甲板等の固体中を伝搬して伝わる固体伝搬音の低減のみならず、空気中を伝搬して伝わる空気伝搬音も低減する必要があり、固体伝搬音を低減して制振性能を向上させた1次甲板床張材では、新たに義務付けられた騒音コードの防音性能を満たすことができないことが懸念され、これら2つの伝搬音を低減して防音性能を向上させた新たな遮音材の開発が望まれている。
そこで、本発明は、新たな騒音コードの防音性能を満たすことができ、1次甲板床張材の施工作業を簡素化する船舶用遮音床材を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、船舶の甲板上に施工する船舶用遮音床材において、甲板上に、接着層と、前記接着層上に所定の間隔で離間させて並設したガラス繊維からなる吸音層と、遮音層と、仕上層とを順に積層して形成したことを特徴とする。
これにより、本発明は、新たな騒音コードの防音性能の規制値に適合させることができると共に、1次甲板床張材である船舶用遮音床材の施工作業を簡素化して、施工時における作業効率を向上させることができるという効果が得られる。
実施例の船舶用遮音床材の構成を示す側面図 実施例の吸音層の施工状態を示す上面図 実施例の船舶用遮音床材の音響透過損失評価の予備試験結果を示す説明図 実施例の船舶用遮音床材の評価試験結果を示す説明図 新たな騒音コードの防音性能の規制値を示す説明図
以下に、図面を参照して本発明による船舶用遮音床材およびその施工方法の実施例について説明する。
以下に、図1ないし図4を用いて本実施例の1次甲板床張材である船舶用遮音床材およびその施工方法について説明する。
本実施例の船舶用遮音床材は、図1に示すように、基板1上に、接着層2、吸音層3、遮音層4、仕上層5を順に積層して構成される。
基板1は、船舶の甲板を構成する鋼板であって、本実施例ではSS400等の一般構造用圧延鋼材である。
接着層2は、基板1への接合強度を高めるためにポリマーセメント系の接着剤で施工される層である。
本実施例では、セメント100重量部に対して、珪砂300重量部以上、400重量部以下(以下、300〜400重量部という。)、酢酸ビニル−エチレン共重合体の樹脂粉末25重量部を混合し、これに水50〜80重量部を加えて混練し、1〜3mm程度の厚さに施工される。
上記の酢酸ビニル−エチレン共重合体の樹脂粉末は水溶性の樹脂粉末であって、例えば、日本合成化学工業株式会社、商品名:Mowinyl−Powder LDM1646P等を用いることができる。
吸音層3は、主成分を石英(SiO)としたカラス繊維により綿状に加工された短繊維をニードルパンチ方式で固定してフェルト状に形成したカラス繊維シートであり、不燃性、耐熱性を有し、遮音、吸音、消音機能を備えている。
本実施例では、厚さ3mm、幅1m、密度120kg/m、耐熱温度600℃のシート材を用いる。
遮音層4は、スラグからなる骨材を多量に混合して面密度を向上させたデッキコンポジションである。
本実施例では、セメント100重量部に対して、スラグ300〜400重量部、酢酸ビニル−エチレン共重合体の樹脂粉末25〜50重量部、必要に応じて結合強度向上のための短繊維(10〜15mm程度の長さ)のガラス繊維2.5重量部を混合し、これに水10〜15重量部を加えて混練し、10〜30mm程度の厚さに施工される。
また、本実施例のスラグは、いわゆる製鋼風砕スラグであり、直径0.5〜3mm程度の紛体である。
このようなデッキコンポジションは、例えば、株式会社ニューヤトミックス、商品名:ヤトミック S/L パウダー<V>等を用いることができる。
仕上層5は、接着層2と同じ混合比の紛体に、水50〜80重量部を加えて混練し、0.5〜5mm程度の厚さに施工される。
本実施例の船舶用遮音床材は、接着層2および吸音層3からなる緩衝層7(厚さT1)と、遮音層4および仕上層5からなる舗床層8(厚さT2)とでハイブリッド構造を形成して構成され、機関室等で発生し、鋼甲板等の構造体を伝搬する固体伝搬音を、ガラス繊維シートからなる吸音層3を経由して面密度を向上させたデッキコンポジションからなる遮音層4で吸収し、空気伝搬音は、面密度を向上させたデッキコンポジションからなる遮音層4で減衰させることによって、防音性能の向上を図ったものである。
以下に、Pで示す工程に従って本実施例の船舶用遮音床材の施工方法について説明する。
工程P1:基板1を準備し、その基板1上に、上記配合比で混練した接着層2の流動体を流し入れ、厚さ1〜3mm程度の接着層2を形成する。
工程2:接着層2の乾燥前に、接着層2上に吸音層3を構成する3mm厚のガラス繊維シートを、図2に示すように、施工領域の外縁部から所定の間隔Kで離間させ、ガラス繊維シート同士を所定の間隔Kで離間させた状態で複数敷き並べ、ガラス繊維からなる吸音層3を形成する。
このとき、必要に応じてピン状のアンカーを複数個所に打ち込んで接着層2とのズレを防止し、また、必要に応じて鋼材で菱形の格子状に形成したメタルラスを吸音層3上に敷いて船舶用遮音床材の強度を補強する。
工程3:乾燥前の接着層2上に吸音層3を形成した後に、上記配合比で混練した遮音層4の流動体を流し入れ、厚さ10〜30mm程度の遮音層4を形成する。
このとき、必要に応じて短繊維のガラス繊維を更に規定量混合し、遮音層4の結合強度を向上させる。
工程4:遮音層4の形成後に、上記配合比で混練した仕上層5の流動体を流し入れ、左官鏝等で仕上げて厚さ0.5〜5mm程度の仕上層5を形成し、その後に、7日程度の養生期間を設けて船舶用遮音床材の全体を乾燥させる。
このようにして、本実施例の船舶用遮音床材が施工される。
上記した本実施例の1次甲板床張材である船舶用遮音床材の防音性能を評価するために、以下の評価試験を行った。
(1)音響透過損失評価の予備試験
まず、舗床層8の厚さT2の相違による重み付き音響透過損失Rw(以下、単にRwという。)への影響を評価するために、舗床層8の厚さT2を10、15、20mmの3種に変化させた試験品を上記施工方法で作製し、第3者的立場の試験機関に委託して、それらのRwの測定を行った。
この場合の基板1の厚さは2.3mm、基板面積は1m(1m×1m)、緩衝層7の厚さT1は5mmである。その試験結果を図3に示す。
図3から分かるように、舗床層厚さT2を10、15、20mmとした試験品1、2、3についてのRwは、いずれも新たな騒音コードの船員室−船員室間の規制値35dB(図5参照)を超えており、優れた防音性能を有していることが分かる。
特に、試験品3は、通常鋼甲板には用いない鋼板の厚さ(基板厚さ2.3mm)であっても、最も厳しい規制値(Rw=45dB以上)に近い44.2dBの測定結果を得ることができ、通常鋼甲板として用いられる最も薄い鋼板の厚さ6mmであれば、最も厳しい規制値に適合する可能性が見いだせた。
(2)音響透過損失評価試験
前記のように、舗床層厚さT2=20mmであれば、最も厳しい規制値に適合する船舶用遮音床材を得ることができると考えられるため、基板厚さ6mm、緩衝層7の厚さT1=5mm、舗床層8の厚さT2=20mm、透過部面積10mの試験品を上記施工方法で作製し、第3者的立場の試験機関に委託して、ISO10140−2:2010に準拠したRwの測定を行った。その試験結果を図4(a)に示す。
図4(a)から分かるように、舗床層厚さT2を20mmとした船舶用遮音床材のRwの測定結果は、45dBであり、新たな騒音コードの最も厳しい規制値45dB以上に適合することが分かった。
(3)制振性能評価試験
新たな騒音コードの最も厳しい規制値に適合する船舶用遮音床材が得られたので、同様の構成の船舶用遮音床材について、第3者的立場の試験機関に委託して、中央支持定常加振法による損失係数μの測定を行った。
この場合の基板1の寸法は、厚さは2mm、長さ250mm、幅20mmであり、緩衝層7の厚さT1は4mm、舗床層8の厚さT2は20mmである。その試験結果を図4(b)に示す。
なお、緩衝層7の厚さT1が4mmとなったのは、吸音層3として用いた3mm厚のガラス繊維シートが施工時に圧縮されたためと思われる。
図4(b)から分かるように、舗床層厚さT2を20mmとした船舶用遮音床材の損失係数μの測定結果は、試験温度20℃で、振動数713Hzおよび2556Hzのいずれの振動数においても、損失係数μ=0.1825であり、十分な制振性能を備えていることが分かった。
なお、本実施例の船舶用遮音床材は、第3者的立場の試験機関に委託して行った、防火用材の難燃性試験(接触着火炎における試験)おいて、国際海事機関が要求する1次甲板床張材の要求基準を満たしていると判定されたことを付記しておく。
以上説明したように、本実施例では、甲板に相当する基板1上に、1次甲板床張材である船舶用遮音床材として、ポリマーセメント系の接着剤からなる接着層2と、ガラス繊維からなる吸音層3と、面密度を向上させたデッキコンポジションからなる遮音層4と、ポリマーセメント系の接着剤からなる仕上層5とを順に積層して形成し、その舗床層8の厚さT2を10mm以上とすれば、新たな騒音コードの船員室−船員室間の規制値に適合させることができ、舗床層8の厚さT2を20mm以上とすれば、新たな騒音コードの最も厳しい規制値に適合させることができると共に、1次甲板床張材をモルタルやコンクリートで施工する場合に比べて薄く形成することができ、船舶の軽量化に寄与して、運行時間の短縮や燃費の向上を図ることができる。
また、ガラス繊維シートからなる吸音層3を、所定の間隔Kで離間させて並設したので、その離間部分で接着層2と遮音層4とを直接結合させることができ、船舶用遮音床材の強度を向上させることができる。
更に、接着層2、遮音層4、仕上層5のいずれもを、紛体を混合して形成し、液状のラテックスゴムを用いずに1次甲板床張材を施工するようにしたので、それぞれの混合粉を規定量の水により混練すれば、従来からの施工道具等を用いて直ぐに1次甲板床張材の施工を行うことができ、1次甲板床張材の施工作業を簡素化して、施工時における作業効率を向上させることができる。
1 基板
2 接着層
3 吸音層
4 遮音層
5 仕上層
7 緩衝層
8 舗床層

Claims (5)

  1. 船舶の甲板上に施工する船舶用遮音床材において、
    甲板上に、接着層と、前記接着層上に所定の間隔で離間させて並設したガラス繊維からなる吸音層と、遮音層と、仕上層とを順に積層して形成したことを特徴とする船舶用遮音床材。
  2. 請求項1に記載の船舶用遮音床材において、
    前記遮音層は、セメント100重量部としたときに、スラグ300〜400重量部、酢酸ビニル−エチレン共重合体25〜50重量部を混合してなる紛体、水10〜15重量部とにより形成したものであることを特徴とする船舶用遮音床材。
  3. 請求項2に記載の船舶用遮音床材において、
    前記遮音層は、前記セメント100重量部に対して、ガラス繊維2.5重量部が更に混合されていることを特徴とする船舶用遮音床材。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の船舶用遮音床材において、
    前記接着層と吸音層とを合わせた厚さが、3〜6mmであり、
    前記遮音層と仕上層とを合わせた厚さが、10〜30mmであることを特徴とする船舶用遮音床材。
  5. 船舶の甲板上に施工する船舶用遮音床材の施工方法において、
    甲板上に、接着層を形成する工程と、
    前記接着層の乾燥前に、前記接着層上にガラス繊維からなる吸音層を所定の間隔で離間させて並設する工程と、
    前記吸音層上に、遮音層を形成する工程と、
    前記遮音層上に、仕上層を形成する工程と、を備えることを特徴とする船舶用遮音床材の施工方法。
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