JP5920661B2 - レーザ加工装置およびレーザ加工方法 - Google Patents
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Description
本発明は、面粗さを大幅に低減して3次元加工が可能なレーザ加工装置およびレーザ加工方法に関する。
従来、レーザを用いて材料を三次元形態加工する方法の一つとして、図7に示すように、加工対象物Wから加工除去する部位を、レーザ光Lの照射方向に垂直な方向に積層された複数の層(以下、加工レイヤーLYとも称する)に分け、加工対象物Wの表面に近い側の加工レイヤーLYから順番に加工除去する方法(以下、レイヤー加工法と称する)が知られている(特許文献1参照)。このレイヤー加工法は、比較的自由な形態が高精度に加工可能である反面、加工面にはレーザ光Lのパルスによる微細な加工痕(以下、パルス痕)に起因する凹凸が発生するため、加工面の面粗さは研削加工などと比較して大きくなる傾向がある。
このため、加工面の面粗さを低減するため、加工レイヤーにパルス照射するレーザ光の照射位置(以下、パルス照射点)の分布(以下、パルス照射点分布とも称する)を規則的に制御することで、パルス痕に起因する凹凸を抑制する抑制する手段が行われている。例えば、特許文献2では、走査するレーザ光の走査線の間隔などを制御し、例えば正方格子状にパルス照射点を分布させている。
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
特許文献2に記載の加工方法では、レーザ加工面の面粗さを十分に低減されない場合がある。その理由は、層間のパルス照射点分布の重なりを考慮していないため、層内に発生した凹凸が層間で積み重なり、それが強調される場合があり、加工深さを増すごとに面粗さが増加することがあるためである。また、隣接するパルス照射点の間の距離を小さくするほど一つの層内のパルス痕による凹凸が目立たなくなり、一つの層内の面粗さは低下する傾向が得られるが、それは層の厚さを増すことになり、その結果、レーザ光軸に対して傾斜した面を加工形成する際に大きなステップ状の段差となるため、レーザ光軸に対して傾斜した面の面粗さは逆に高まってしまう問題があった。
特許文献2に記載の加工方法では、レーザ加工面の面粗さを十分に低減されない場合がある。その理由は、層間のパルス照射点分布の重なりを考慮していないため、層内に発生した凹凸が層間で積み重なり、それが強調される場合があり、加工深さを増すごとに面粗さが増加することがあるためである。また、隣接するパルス照射点の間の距離を小さくするほど一つの層内のパルス痕による凹凸が目立たなくなり、一つの層内の面粗さは低下する傾向が得られるが、それは層の厚さを増すことになり、その結果、レーザ光軸に対して傾斜した面を加工形成する際に大きなステップ状の段差となるため、レーザ光軸に対して傾斜した面の面粗さは逆に高まってしまう問題があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、3次元加工において、より面粗さを低減することができるレーザ加工装置およびレーザ加工方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明のレーザ加工装置は、加工対象物にレーザ光を照射して形状形成を行う加工装置であって、前記加工対象物に前記レーザ光を一定の繰り返し周波数で照射すると共に走査するレーザ光照射機構と、前記加工対象物を保持して該加工対象物と前記レーザ光との相対的な位置関係を調整可能な位置調整機構と、これら機構を制御して、前記レーザ光の走査を行う際に、前記加工領域を前記レーザ光の照射方向に複数層の加工レイヤーを積み重ねたものとして設定し、各加工レイヤーに対して前記レーザ光を照射し、前記加工レイヤー毎に所定部分を除去して、三次元形状の加工面を形成する制御部とを備え、該制御部が、前記加工レイヤーに対して設定した仮想の四角格子の格子点をパルス照射点として前記レーザ光を照射して加工を行い、複数層の前記加工レイヤーのうち加工順に第1層から第4層までの連続する4層を1周期とした層を少なくとも1周期分含み、前記第2層で、前記第1層の隣接する4点の前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とし、前記第3層で、前記第1層及び前記第2層の隣接する前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とし、前記第4層で、前記第3層の隣接する4点の前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることを特徴とする。なお、ここで四角格子とは、最近接の4つの格子点が正方形、長方形、菱形、平行四辺形のいずれか1種類の形状をとり、その同一の形状を平面上に隙間無く敷き詰めたものと定義する。また、例えば、最近接の3つの格子点が正三角形の場合は一般に正三角形格子として扱われる場合が多いが、ここでは鋭角が60°の平行四辺形と見なし、上記四角格子に含むこととする。
また、本発明のレーザ加工方法は、加工対象物にレーザ光を照射して形状形成を行う加工方法であって、前記加工対象物に前記レーザ光を一定の繰り返し周波数で照射すると共に走査するレーザ光照射工程と、前記加工対象物を保持して該加工対象物と前記レーザ光との相対的な位置関係を調整可能な位置調整工程とを有し、前記レーザ光の走査を行う際に、前記加工領域を前記レーザ光の照射方向に複数層の加工レイヤーを積み重ねたものとして設定し、各加工レイヤーに対して前記レーザ光を照射し、前記加工レイヤー毎に所定部分を除去して、三次元形状の加工面を形成し、前記加工レイヤーに対して設定した仮想の格子の格子点上に前記レーザ光を照射して加工を行い、複数層の前記加工レイヤーのうち加工順に第1層から第4層までの連続する4層を1周期とした層を少なくとも1周期分含み、前記第2層で、前記第1層の隣接する4点の前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とし、前記第3層で、前記第1層及び前記第2層の隣接する前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とし、前記第4層で、前記第3層の隣接する4点の前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることを特徴とする。
これらのレーザ加工装置及びレーザ加工方法では、複数層の加工レイヤーのうち加工順に第1層から第4層までの連続する4層を1周期とした層を少なくとも1周期分含み、第2層から第4層を上述したようにそれぞれ四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることで、格子点がパルス照射点である四角格子をx−y面内でランダムにシフトさせて積層した場合に比べてパルス痕による凹凸を小さくすることができる。
また、本発明のレーザ加工装置は、前記制御部が、前記1周期を連続して繰り返す際、2回目以降の周期において、前記第1層で、前回周期までの隣接する前記パルス照射点で構成されるいずれかの四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることを特徴とする。
すなわち、このレーザ加工装置では、前記1周期を連続して繰り返す際、2回目以降の周期において、第1層で、前回周期までの隣接するパルス照射点で構成されるいずれかの四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とするので、さらに凹凸を低減することが可能になる。
すなわち、このレーザ加工装置では、前記1周期を連続して繰り返す際、2回目以降の周期において、第1層で、前回周期までの隣接するパルス照射点で構成されるいずれかの四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とするので、さらに凹凸を低減することが可能になる。
また、本発明のレーザ加工装置は、前記制御部が、前記第4層が最後の前記加工レイヤーとなるように設定することが好ましい。
すなわち、このレーザ加工装置では、第4層が最後の加工レイヤーとなるように設定することで、非常に小さい面粗さとすることが可能になる。
すなわち、このレーザ加工装置では、第4層が最後の加工レイヤーとなるように設定することで、非常に小さい面粗さとすることが可能になる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るレーザ加工装置およびレーザ加工方法によれば、複数層の加工レイヤーのうち加工順に第1層から第4層までの連続する4層を1周期とした層を少なくとも1周期分含み、第2層から第4層を上述したようにそれぞれ四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることで、格子点がパルス照射点である四角格子をx−y面内でランダムにシフトさせて積層した場合に比べてパルス痕による凹凸を小さくし、レーザ加工面の面粗さを低減することができる。
したがって、本発明のレーザ加工装置およびレーザ加工方法は、例えば、表面粗さRz≦3μmが要求される複雑な立体形状を有する製品の形状加工などに好適である。
すなわち、本発明に係るレーザ加工装置およびレーザ加工方法によれば、複数層の加工レイヤーのうち加工順に第1層から第4層までの連続する4層を1周期とした層を少なくとも1周期分含み、第2層から第4層を上述したようにそれぞれ四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることで、格子点がパルス照射点である四角格子をx−y面内でランダムにシフトさせて積層した場合に比べてパルス痕による凹凸を小さくし、レーザ加工面の面粗さを低減することができる。
したがって、本発明のレーザ加工装置およびレーザ加工方法は、例えば、表面粗さRz≦3μmが要求される複雑な立体形状を有する製品の形状加工などに好適である。
以下、本発明に係るレーザ加工装置およびレーザ加工方法の一実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。
本実施形態のレーザ加工装置1は、図1に示すように、加工対象物Wにレーザ光Lを照射して形状形成を行う加工装置であって、加工対象物Wにレーザ光Lを一定の繰り返し周波数で照射すると共に走査するレーザ光照射機構2と、加工対象物Wを保持して該加工対象物Wとレーザ光Lとの相対的な位置関係を調整可能な位置調整機構3と、これら機構を制御して、レーザ光Lの走査を行う際に、加工領域をレーザ光Lの照射方向に複数層の加工レイヤーを積み重ねたものとして設定し、各加工レイヤーに対してレーザ光Lを照射し、加工レイヤー毎に所定部分を除去して、三次元形状の加工面を形成する制御部Cとを備えている。
上記位置調整機構3は、水平面に平行なX方向に移動可能なX軸ステージ部4xと、該X軸ステージ部4x上に設けられX方向に対して垂直なかつ水平面に平行なY方向に移動方向なY軸ステージ部4yと、該Y軸ステージ部4y上に設けられ加工対象物Wを保持可能であると共に水平面に対して垂直方向に移動可能なZ軸ステージ部4zとで構成されている。
上記レーザ光照射機構2は、Qスイッチのトリガー信号によりパルス化されたレーザ光Lを発振するレーザ光源5と、該レーザ光源5からのレーザ光Lのビームを一定の径に広げるビームエキスパンダー6と、該ビームエキスパンダー6からのレーザ光Lを走査するガルバノスキャナ7と、該ガルバノスキャナ7からのレーザ光Lを集光して加工対象物Wに照射するf−θレンズ8と、保持された加工対象物Wの加工位置を確認するために撮像するCCDカメラ9とを備えている。なお、ビームエキスパンダー6前後の光路には、ミラーや波長板などの光学部材を配置しても構わない。
このレーザ光照射機構2により出射されるレーザ光Lは、シングルモードでありビーム断面の光強度分布がガウシアン分布となっている。
上記レーザ光源5は、190〜550nmのいずれかの波長のレーザ光を照射できるものが使用可能であり、例えば本実施形態では、波長266nmのレーザ光を発振して出射できるものを用いている。
上記ガルバノスキャナ7は、Z軸ステージ部4zの直上に配置されている。また、上記CCDカメラ9は、ガルバノスキャナ7に隣接して設置されている。
上記レーザ光源5は、190〜550nmのいずれかの波長のレーザ光を照射できるものが使用可能であり、例えば本実施形態では、波長266nmのレーザ光を発振して出射できるものを用いている。
上記ガルバノスキャナ7は、Z軸ステージ部4zの直上に配置されている。また、上記CCDカメラ9は、ガルバノスキャナ7に隣接して設置されている。
上記制御部Cは、図2に示すように、加工レイヤーに対して設定した仮想の四角格子の格子点をパルス照射点としてレーザ光Lを照射して加工を行い、複数層の加工レイヤーのうち加工順に第1層から第4層までの連続する4層を1周期とした層を少なくとも1周期分含み、第2層で、第1層の隣接する4点のパルス照射点P1で構成される四角形Q1の重心G1に四角格子の格子点をずらしてパルス照射点P2とし、第3層で、第1層及び第2層の隣接するパルス照射点P1,P2で構成される四角形Q2の重心G2に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点P3とし、第4層で、第3層の隣接する4点のパルス照射点P3で構成される四角形Q3の重心G3に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点P4とする機能を有している。なお、上記格子点及びパルス照射点は、レーザ光Lの照射方向(z方向)に垂直な面(x−y平面)での平面視による座標点である。
また、制御部Cは、前記1周期を連続して繰り返す際、2回目以降の周期において、第1層で、前回周期までの隣接するパルス照射点で構成されるいずれかの四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とする。
さらに、制御部Cは、第4層が加工層の最後の加工レイヤーとなるように設定することが好ましい。
さらに、制御部Cは、第4層が加工層の最後の加工レイヤーとなるように設定することが好ましい。
本実施形態では、レーザ光Lの走査を行う際に、走査プログラム上、複数の加工レイヤーを積み重ねて設定することで、各加工レイヤーに対してレーザ光Lを垂直に照射し、加工レイヤー毎に所定部分を除去して、三次元形状の加工面を形成していく。このため、レーザ光Lの走査制御において、まず加工対象物Wをレーザ光Lの照射方向に複数の加工レイヤーに分けて設定する。
そして、加工前の形状と設計上の加工後形状とから加工除去する部分を、加工レイヤー毎に設定し、加工レイヤー毎にレーザ光Lを走査して所定部分を除去することで、所定の加工面を形成していく。
そして、加工前の形状と設計上の加工後形状とから加工除去する部分を、加工レイヤー毎に設定し、加工レイヤー毎にレーザ光Lを走査して所定部分を除去することで、所定の加工面を形成していく。
このレーザ加工方法について、より具体的に説明すると、まず制御部Cは、図7に示すように、加工対象物Wの元の形状から目標の立体形状をレーザ光Lにより加工する場合、加工除去する立体形状部分をZ軸に垂直な面で等間隔に、複数の加工レイヤーLYに分割(層分割)する。
この際、層(加工レイヤーLY)の厚さはパルスあたりのエネルギーと層内のパルス照射点の空間密度とにより決定されるが、層の厚さが常に一定である方が制御し易く、また、層のステップに起因するレーザ光軸に対し傾斜した面の凹凸が均一となるため好ましい。そこで、層の厚さを一定とするために、レーザ光Lのエネルギー密度、レーザ光Lの繰り返し周波数、レーザ光Lの走査速度及び走査線の間隔は、加工中で常に一定に条件が設定される。そのため、全ての層のパルス照射点分布を同一形状および同一サイズの四角格子とすることが必要条件となる。
この際、層(加工レイヤーLY)の厚さはパルスあたりのエネルギーと層内のパルス照射点の空間密度とにより決定されるが、層の厚さが常に一定である方が制御し易く、また、層のステップに起因するレーザ光軸に対し傾斜した面の凹凸が均一となるため好ましい。そこで、層の厚さを一定とするために、レーザ光Lのエネルギー密度、レーザ光Lの繰り返し周波数、レーザ光Lの走査速度及び走査線の間隔は、加工中で常に一定に条件が設定される。そのため、全ての層のパルス照射点分布を同一形状および同一サイズの四角格子とすることが必要条件となる。
制御部Cは、パルス照射点の分布をレイヤー加工法の上記条件下で均一化して、その格子点がパルス照射点となる四角格子の形状を設定する。すなわち、四角格子のレーザ走査線内におけるパルス照射点間距離、隣接するレーザ走査線の間隔、パルス照射点のレーザ走査線間のずれ量(隣接するレーザ走査線間における最近接パルス照射点間のレーザ走査線方向の距離)、各レーザ走査線の走査開始点等を設定する。また、この際、図2の(a)に示すように、四角格子は、レーザ光の断面強度分布が理想的なガウシアンの場合は正方形格子とすることが好ましいが、レーザ光の断面強度分布に異方性が存在する場合、その形状の歪みに応じて長方形格子や平行四辺形格子とした方が面粗さが低減する。
そして、上記設定により加工レイヤーの加工を開始する。まず、加工レイヤーの第1層の加工では、図2の(a)に示すように、所定の四角格子の格子点を第1層のパルス照射点P1としてレーザ光Lの走査を行う。なお、図中の矢印は、レーザ光Lの走査方向を示している。
次に、第2層の加工では、図2の(a)(b)に示すように、第1層の隣接する4点のパルス照射点P1で構成される第1の四角形Q1の重心G1に四角格子の格子点をずらして第2層のパルス照射点P2とし、レーザ光Lの走査を行う。
次に、第2層の加工では、図2の(a)(b)に示すように、第1層の隣接する4点のパルス照射点P1で構成される第1の四角形Q1の重心G1に四角格子の格子点をずらして第2層のパルス照射点P2とし、レーザ光Lの走査を行う。
さらに、第3層の加工では、図2の(b)(c)に示すように、第1層及び第2層の隣接するパルス照射点P1,P2で構成される第2の四角形Q2の重心G2に前記四角格子の格子点をずらして第3層のパルス照射点P3とし、レーザ光Lの走査を行う。
そして、1周期の最後として、第4層の加工では、図2の(c)(d)に示すように、第3層の隣接する4つのパルス照射点P3で構成される第3の四角形Q3の重心G3に前記四角格子の格子点をずらして照射点P4とし、レーザ光Lの走査を行う。
そして、1周期の最後として、第4層の加工では、図2の(c)(d)に示すように、第3層の隣接する4つのパルス照射点P3で構成される第3の四角形Q3の重心G3に前記四角格子の格子点をずらして照射点P4とし、レーザ光Lの走査を行う。
このようにして加工レイヤーの1周期目について4層の加工が完了する。この後、前記1周期を連続して繰り返す際、すなわち層分割した層数が4層を超えている場合、同様にして前記1周期のレーザ加工を繰り返す。
例えば、四角格子を平行四辺形格子とした場合で、全層数を16層として4周期まで加工する際のパルス照射点について説明すると、2回目以降の周期では、図3に示すように、第1層で、前回周期までの隣接するパルス照射点で構成されるいずれかの四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とする。
例えば、四角格子を平行四辺形格子とした場合で、全層数を16層として4周期まで加工する際のパルス照射点について説明すると、2回目以降の周期では、図3に示すように、第1層で、前回周期までの隣接するパルス照射点で構成されるいずれかの四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とする。
すなわち、図3の(a)に示すように、1周期目の4層のパルス照射点P1〜P4が平行四辺形格子の格子点に設定されている場合、2周期目の第1層では、1周期目の隣接するパルス照射点P1〜P4で構成される第4の四角形Q4の重心G4に、図3の(b)に示すように、前記平行四辺形格子の格子点をずらしてパルス照射点P5とし、レーザ光Lの走査を行う。そして、2周期目の第2層から第4層まで、すなわち最初から数えて第5層から第8層までの3層は、第5層のパルス照射点P5を基準にして1周期目と同様に第6層のパルス照射点P6、第7層のパルス照射点P7,第8層のパルス照射点P8を設定して、レーザ光Lの走査を順次行う。
さらに、図3の(b)に示すように、前回周期まで(1周期目及び2周期目)の隣接するパルス照射点P1〜P8で構成されるいずれかの第5の四角形Q5の重心G5に、図3の(c)に示すように、前記平行四辺形格子の格子点をずらして3周期目の第1層、すなわち最初から数えて第9層のパルス照射点P9とし、レーザ光Lの走査を行う。そして、3周期目の第2層から第4層まで、すなわち最初から数えて第10層から第12層までの3層は、第9層のパルス照射点P9を基準にして1周期目と同様に第10層のパルス照射点P10、第11層のパルス照射点P11,第12層のパルス照射点P12を設定して、レーザ光Lの走査を順次行う。
次に、3周期目の隣接するパルス照射点P9〜P12で構成される第6の四角形Q6の重心G6に前記平行四辺形格子の格子点をずらして4周期目の第1層、すなわち最初から数えて第13層のパルス照射点P13とし、レーザ光Lの走査を行う。そして、4周期目の第2層から第4層まで、すなわち最初から数えて第14層から第16層までの3層は、第13層のパルス照射点P13を基準にして1周期目と同様に第14層のパルス照射点P14、第15層のパルス照射点P15,第16層のパルス照射点P16を設定して、レーザ光Lの走査を順次行う。
このように、前回周期までの互いに隣接するパルス照射点で囲まれたいずれかの四角形の重心に、次の周期の第1層におけるパルス照射点をずらして該周期の4層のパルス照射点を設定することで、隣接するパルス照射点の間の空間がパルス照射点で埋められて上記周期を繰り返す度に該空間が小さく狭められることで、加工痕による凹凸を徐々に小さくすることができる。
したがって、本実施形態のレーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、複数層の加工レイヤーのうち加工順に第1層から第4層までの連続する4層を1周期とした層を少なくとも1周期分含み、第2層から第4層を上述したようにそれぞれ四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることで、格子点がパルス照射点である四角格子をx−y方向にランダムにシフトさせて積層した場合に比べてパルス痕による凹凸を小さくすることができる。
また、前記1周期を連続して繰り返す際、2回目以降の周期において、第1層で、前回周期までの隣接するパルス照射点で構成されるいずれかの四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とするので、さらに凹凸を低減することが可能になる。特に、第4層が最後の加工レイヤーとなるように設定することで、非常に小さい面粗さとすることが可能になる。
次に、上記実施形態のレーザ加工装置を用いて加工対象物の表面をレーザ加工した際のシミュレーション結果について説明する。
本シミュレーションでは、上記四角形格子として一辺の大きさが2.5μmの正方形格子に設定し、図4の(a)〜(d)に示すように、1周期目の第1層(a)から第4層(d)までの加工レイヤーを加工した際における加工対象物の表面状態の凹凸を計算した。
本シミュレーションでは、上記四角形格子として一辺の大きさが2.5μmの正方形格子に設定し、図4の(a)〜(d)に示すように、1周期目の第1層(a)から第4層(d)までの加工レイヤーを加工した際における加工対象物の表面状態の凹凸を計算した。
なお、このシミュレーションでは、1つのパルス照射点において、加工対象物の加工表面には下記ガウス関数で規定される断面形状で加工痕が発生すると仮定して計算している。
ガウス関数:z=−exp(−x2−y2)
このシミュレーション結果からわかるように、層を重ねるごとに凹凸が打ち消され、平滑な加工面が得られている。なお、第4層の時点で、表面粗さRz(最大高さ)が0.029μmであった。
ガウス関数:z=−exp(−x2−y2)
このシミュレーション結果からわかるように、層を重ねるごとに凹凸が打ち消され、平滑な加工面が得られている。なお、第4層の時点で、表面粗さRz(最大高さ)が0.029μmであった。
なお、比較例として、上記実施例と同様に、四角形格子として一辺の大きさが2.5μmの正方形格子に設定し、層全体をx−y方向にランダムな量だけシフトさせて、図5の(a)〜(d)に示すように、1周期目の第1層(a)から第4層(d)までの加工レイヤーを加工した際における加工対象物の表面状態の凹凸を計算した。
このシミュレーション結果からわかるように、ランダムにずらしてレーザ加工した比較例では、層を重ねても凹凸が打ち消されることがなく、層を重ねるごとに凹凸が大きくなっている。なお、第4層の時点で、表面粗さRz(最大高さ)が1.878μmであった。
このシミュレーション結果からわかるように、ランダムにずらしてレーザ加工した比較例では、層を重ねても凹凸が打ち消されることがなく、層を重ねるごとに凹凸が大きくなっている。なお、第4層の時点で、表面粗さRz(最大高さ)が1.878μmであった。
次に、アルミナ板(加工前の表面粗さRz:約0.2μm)を加工対象物とした場合に、本発明のレーザ加工を行った際の加工レイヤーの層数と面粗さとの関係(図中の「正方格子規則的積層」)について、図6に示す。
この際のレーザ条件は、波長266nm、繰り返し周波数100kHz、出力2Wとした。また、上記四角形格子としては、一辺の大きさが6μmの正方形格子に設定した。なお、グラフのプロットは、面粗さの実測値であり、点線及び実線は、それらのプロットを目視でフィッティングしたものである。
この際のレーザ条件は、波長266nm、繰り返し周波数100kHz、出力2Wとした。また、上記四角形格子としては、一辺の大きさが6μmの正方形格子に設定した。なお、グラフのプロットは、面粗さの実測値であり、点線及び実線は、それらのプロットを目視でフィッティングしたものである。
また、比較例として、上記実施例と同様に、四角形格子として一辺の大きさが6μmの正方形格子に設定し、層全体をx−y方向にランダムな量だけシフトさせて上記と同様の層数の加工を行った場合(図中の「正方格子ランダムシフト積層」)についても、図6に併せて示す。また、上記比較例と同様にランダムにシフトさせて加工し、途中の4層(第10層から第13層まで)だけを本発明の第1層から第4層までと同じレーザ加工を行った場合(図中の「正方格子ランダムシフト積層(実線部))についても、併せて図6に示す。
これらの結果からわかるように、本発明のレーザ加工方法で全ての層を加工した場合は、第1層から層数を重ねるごとに表面粗さが小さくなっているのに対し、全ての層をランダムシフトで加工した比較例では、層数を重ねるごとに表面粗さが大きくなっている。また、全層数のうち一部のみ本発明のレーザ加工方法でレイヤー加工した例では、全ての層をランダムシフトで加工した比較例に対して、表面粗さが小さくなっており、一部でも規則化された本発明のレーザ加工方法で加工することにより、表面粗さを低下させる効果が得られている。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態および上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
1…レーザ加工装置、2…レーザ光照射機構、3…位置調整機構、C…制御部、G1〜G6…四角形の重心、L…レーザ光、P1〜P16…パルス照射点、W…加工対象物
Claims (4)
- 加工対象物にパルスレーザ光を照射して形状形成を行う加工装置であって、
前記加工対象物に前記レーザ光を一定の繰り返し周波数で照射すると共に走査するパルスレーザ光照射機構と、
前記加工対象物を保持して該加工対象物と前記レーザ光との相対的な位置関係を調整可能な位置調整機構と、
これら機構を制御して、前記レーザ光の走査を行う際に、前記加工領域を前記レーザ光の照射方向に複数層の加工レイヤーを積み重ねたものとして設定し、各加工レイヤーに対して前記レーザ光を照射し、前記加工レイヤー毎に所定部分を除去して、三次元形状の加工面を形成する制御部とを備え、
該制御部が、前記加工レイヤーに対して設定した仮想の四角格子の格子点をパルス照射点として前記レーザ光を照射して加工を行い、
複数層の前記加工レイヤーのうち加工順に第1層から第4層までの連続する4層を1周期とした層を少なくとも1周期分含み、
前記第2層で、前記第1層の隣接する4点の前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とし、
前記第3層で、前記第1層及び前記第2層の隣接する前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とし、
前記第4層で、前記第3層の隣接する4点の前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることを特徴とするレーザ加工装置。 - 請求項1記載のレーザ加工装置において、
前記制御部が、前記1周期を連続して繰り返す際、2回目以降の周期において、前記第1層で、前回周期までの隣接する前記パルス照射点で構成されるいずれかの四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることを特徴とするレーザ加工装置。 - 請求項1又は2記載のレーザ加工装置において、
前記制御部が、前記第4層が最後の前記加工レイヤーとなるように設定することを特徴とするレーザ加工装置。 - 加工対象物にパルスレーザ光を照射して形状形成を行う加工方法であって、
前記加工対象物に前記レーザ光を一定の繰り返し周波数で照射すると共に走査するレーザ光照射工程と、
前記加工対象物を保持して該加工対象物と前記レーザ光との相対的な位置関係を調整可能な位置調整工程とを有し、
前記レーザ光の走査を行う際に、前記加工領域を前記レーザ光の照射方向に複数層の加工レイヤーを積み重ねたものとして設定し、各加工レイヤーに対して前記レーザ光を照射し、前記加工レイヤー毎に所定部分を除去して、三次元形状の加工面を形成し、
前記加工レイヤーに対して設定した仮想の格子の格子点上に前記レーザ光を照射して加工を行い、
複数層の前記加工レイヤーのうち加工順に第1層から第4層までの連続する4層を1周期とした層を少なくとも1周期分含み、
前記第2層で、前記第1層の隣接する4点の前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とし、
前記第3層で、前記第1層及び前記第2層の隣接する前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とし、
前記第4層で、前記第3層の隣接する4点の前記パルス照射点で構成される四角形の重心に前記四角格子の格子点をずらしてパルス照射点とすることを特徴とするレーザ加工方法。
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