JP5920659B2 - Ag合金膜及びその形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、Ag合金膜に関するものであり、特に、耐湿性、耐硫化性、耐熱性などの耐性に優れ、かつ、反射率が高く、抵抗率が低いAg合金膜及びその形成方法に関する。
有機EL、光記録ディスク、光学機器用反射ミラーなどにおける反射膜や反射電極では、耐湿性、耐硫化性、耐熱性などの耐性を持った反射率が高く、抵抗率の低いAg合金膜が必要で、これまで、Pd、Cu、Ge、Bi、Au、Sn、希土類元素などを添加したAg合金膜が用いられている。また、そのAg合金膜に熱処理を施したり、酸化物のキャップ層を付けたりすることにより、耐硫化性などの耐性をさらに向上させたAg合金膜が開発されている。また、AgにBi、Sbを添加して、それらの添加元素を表面に濃集させて、凝集性(耐熱性)を向上させたAg合金膜が開発されている。
従来から、反射膜の材料には、アルミニウム(Al)やAlを主成分とする合金が、耐熱性に優れているということで多く使用されてきたが、高反射率、低抵抗率が求められるようになって、銀(Ag)が反射材として多用されてきた。純Agによる膜が反射率としては最も高いものであったが、この純Ag膜は、耐候性などに問題があった。そこで、耐候性を向上するものとして、Ag−パラジウム(Pd)−銅(Cu)系銀合金が提案された。しかしながら、このAg−Pd−Cu系合金による膜は、加熱工程を経ると、表面ラフネスの成長やヒロックの発生が生じ、その結果、その膜の反射率が低下した。さらに、その膜が加熱されることにより、硫化が促進されて、膜の黄色化が起き、その膜の耐硫化性にも問題があった。そこで、より高い耐熱性と耐硫化性を向上したものとして、Ag−Pd−Cu系合金にゲルマニウム(Ge)を含有させたAg−Pd−Cu−Ge系合金により膜を形成することが提案された(例えば、特許文献1を参照)。
また、Agを主成分として、Cuの他に、金(Au)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)などの元素を添加することにより、そのAg基合金による膜において、低電気抵抗性や耐熱性を確保できることも知られている。この様なAg基合金による膜の場合、複数回の高温加熱に対する耐熱性として耐凝集性に優れていることが重要となるが、低電気抵抗率や、真空化での高耐熱性の確保は達成できても、低電気抵抗率を維持したままで、この耐凝集性までは確保できない。そこで、高耐凝集性と低電気抵抗率との両方を兼備した膜として、ビスマス(Bi)を含有させたAg基合金により形成することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
一方、Agは、一般に、耐環境性に乏しいことも知られている。上述した加熱による凝集が生じることの他に、腐食により黒色に変色して、反射率や透過率を低下させるという問題がある。耐環境性、即ち、耐熱性、耐湿性、耐硫化性を確保し、この膜の反射率や透過率の低下を抑制するため、Agを主成分として、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ランタノイドからなる希土類元素から選択される少なくとも1種を含有させたAg基合金を用いることが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
また、耐凝集性及び耐硫化性を向上させたAg合金膜も提案されている(例えば、特許文献4を参照)。このAg合金には、Au、又は、Au、Bi、錫(Sn)の2種以上が含有されており、そのAg合金による薄膜は、130〜200℃の不活性ガス雰囲気で熱処理される。この加熱処理により、耐硫化性を向上させている。
また、過酷な耐腐食性試験でも反射率が劣化することがないAg系の膜が提案されている(例えば、特許文献5を参照)。このAg系の膜においては、純Ag膜や、Ag−Au系、Ag−Au−Sn系、Ag−Pd系、Ag−Pd−Cu系の合金膜の表面に、ITO、ZnO、IZO、SnOなどの酸化物、シリコン(Si)、Al、Ti及びタンタル(Ta)の酸化物、Si、Al、Ti及びTaの窒化物から選ばれた材料による極薄のキャップ層が積層されている。
さらに、Ag合金膜は、時間の経過とともに、Agの凝集が進行してAg合金膜が劣化するという問題があった。これは、Ag合金膜がコーティングされている面を大気中に露出した状態で使用すると、Ag合金膜を覆っている透明膜の欠陥部を中心にAgの凝集が生じるためである。この問題に対処するものとして、Bi及び/又はSbの添加量を適切に制御して、Agの表面拡散に起因する結晶粒の成長を効果的に抑制することにより、Agの凝集抑止効果を高めたAg合金膜が提案されている(例えば、特許文献6を参照)。ここでは、Ag合金膜表面が酸素の存在する雰囲気に曝されると、Ag合金膜中のBi及び/又はSbがAg合金膜の表面に拡散して濃縮し、Bi及び/又はSbの酸化物層が形成され、この酸化物層が環境との接触を遮断している。これによって、Ag合金膜の劣化を防止している。
国際公開WO2005/031016 特許第4264397号明細書 国際公開WO2006/132416 特開2008−101269号公報 特開2006−98856号公報 特開2004−263290号公報
Ag系膜においては、その膜の反射率は、純Ag膜が最も高いが、この純Ag膜は、耐硫化性、耐湿性、耐熱性などが低い。そのため、上記特許文献1乃至3に示されるように、Pd、Cu、Ge、Bi、Au、Sn、希土類元素などを添加して、それらの膜の耐性、例えば、耐硫化性、耐熱性を改善している。しかしながら、それらの元素を添加することにより、その膜の反射率は、純Ag膜より低下する。
また、上記特許文献4に示されるように、Bi、Au、Snを添加したAg合金膜を不活性ガス中で熱処理し、或いは、上記特許文献5に示されるように、純Ag膜、又は、Au、Sn、Pd、Cuのうちの一つ以上の元素を添加したAg合金膜の上に、酸化物層などのキャップ層を付けた積層構造とし、その膜を、大気、真空、不活性ガス中で熱処理することにより、反射率の減少を抑制し、耐硫化性をさらに向上させる工夫がなされている。しかしながら、特許文献5に示された組成の膜では、熱処理を行なうと、大きな結晶粒の成長が起こり、結晶性の向上(移動度、伝導率の増加)による反射率の増加の効果を、成長した大きな結晶粒による光の散乱で弱める結果となる。
また、上記特許文献6に示されるように、Bi、Sbが表面に拡散して濃縮されたAg合金膜により、凝集を抑制する工夫がなされている。しかしながら、このAg合金膜は耐硫化性、耐塩水性などが劣るため、他の膜で表面をコートする必要があり、用途が電磁波防止などに限られ、また、反射率も低下する。しかも、その表面のコートには、手間を要し、コストの増大を招く。
以上から、Ag合金膜が用いられる装置の性能をより向上させるためには、膜の耐硫化性、耐熱性、耐塩水性などの耐性を落とさずに、高い反射率を持ったAg合金膜の開発が課題となる。
そこで、本発明は、耐硫化性、耐熱性、耐塩水性などの耐性を落とさずに、高い反射率を持ち、しかも、配線電極膜としても適用可能とする低抵抗率を実現したAg合金膜及びその形成方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、種々の研究により、Agを主成分としてSbを含有させたAg合金ターゲットを用いて基板上にスパッタリング成膜したAg―Sb合金膜を熱処理(アニール)することにより、Ag−Sb合金膜中の結晶粒が面内方向に成長し、大きな結晶粒を生成できること、さらには、この結晶粒の粒界には、Sbが濃集されることが判明した。この結晶粒が面内方向に大きく成長したAg―Sb合金膜では、移動度、伝導率の向上と平坦性の維持によって低抵抗率化と高反射率化が実現できるとともに、この熱処理によって結晶粒の表面及び界面に濃集されたSbが、酸素(O)と反応して酸化物となり、この酸化物が、耐硫化性、耐熱性、耐塩水性の向上に大きく寄与するという知見が得られた。
そこで、これらの知見に基づいて、本発明の具体例として、Sbが1.0at%含まれたAg合金ターゲットを用いて、室温の基板上にスパッタ成膜を行ってAg−Sb合金膜を成膜した。その後に、成膜したAg−Sb合金膜に対して、真空雰囲気中で、300℃の温度で熱処理を行った。
ここで、Ag−Sb合金がスパッタリングで堆積されたままの状態(以下、as depo.状態と称す)の膜表面について、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)、オージェ電子分光法(AES)による面分析により得られた画像が図1に示されている。SEM、AES、AFMのいずれの画像においても、as depo.状態においては、Ag−Sb合金の結晶粒が細かく、表面の凹凸は小さいことが確認された。AFM画像にみられるように、そのAg−Sb合金膜の表面粗さRaは、0.59nmであった。このas depo.状態のAg−Sb合金膜では、その反射率は、純Ag膜の反射率より低いものであった。
また、as depo.状態のAg−Sb合金膜について、耐熱試験(300℃、1時間、大気中アニール)、耐硫化試験(0.01at%のNaS溶液に1時間浸漬)、耐塩水試験(5at%のNaCl溶液に12時間浸漬)を行ったが、試験後に反射率を測定した結果では、膜の反射率が低下し、耐塩水性、耐硫化性が無いことが確認された。
次に、as depo.状態のAg−Sb合金膜を、真空雰囲気中で、300℃の熱処理を施したところ、図2に示されるような結果が得られた。図2のSEM、AES、AFMの各画像によれば、Ag−Sb合金膜における結晶粒が、熱処理によって成長し、as depo.状態よりも面内方向に大きくなっていることが確認された。特に、図2のAES画像にみられるように、熱処理により、Ag−Sb合金の結晶粒中のSbがその表面及び粒界に濃集していることが観察された。即ち、画像中の濃い部分が結晶粒であり、その結晶粒を取り囲むように存在する淡い部分がSbの濃集を表している。この結晶粒の表面では、Sbの多くが、酸化物として存在していることをX線光電子分光(XPS)により確認した。
また、図2のAFMの画像では、熱処理後においても、as depo. 状態よりも凹凸はやや大きくなっているが、ある程度の平坦度を保持していることが観察される。これは、SEMの画像で見られるように、as depo. 状態のAg−Sb合金膜に対する熱処理によって、膜を構成する結晶粒はその面内方向に成長しやすい傾向があることを示している。結果として、膜の平坦度は保持されたまま、結晶性が向上することとなる。この平坦性の維持と結晶性の向上による移動度、伝導率の増加によって、熱処理後のAg−Sb合金膜では、可視域(400nm〜700nm)の光において、純Ag膜を超える反射率が計測された。また、結晶粒内のSbが粒界に濃集することにより、Sbに由来する結晶粒内の欠陥が減少し、結晶性の良い大きな結晶粒が形成されることで、移動度が向上し、膜の抵抗率も低下することが確認された。
さらに、熱処理後のAg−Sb合金膜について、上述した試験と同様に、耐熱試験、耐硫化試験、耐塩水試験を行い、試験後に反射率を測定した結果、同様の試験後の純Ag膜よりもかなり高い反射率が得られ、耐熱性、耐塩水性、耐硫化性に優れていることが確認できた。これら耐熱性、耐塩水性、耐硫化性の向上は、Ag−Sb合金の結晶粒の表面に濃集したSbが、成膜中に混入した、或いは、成膜後において膜表面に付着したOと反応し、その酸化膜が存在することに起因する。この酸化膜が、Sと塩水に対するバリア性や耐凝集性の効果を持っていることによる。
上述した本発明の具体例として、成膜後のas depo.状態のAg−Sb合金膜に対して、真空雰囲気中で熱処理を施した場合について説明したが、真空雰囲気中で熱処理する代わりに、窒素(N)雰囲気中で熱処理を施しても、同様の結果が得られた。また、これらの雰囲気の代わりに、大気中で、300℃の温度で熱処理を施したところ、図3に示されるように、図2に示された真空雰囲気中で熱処理を施した場合と同様の結果が得られた。
図3のSEM、AES、AFMの各画像によれば、Ag−Sb合金膜における結晶粒が、熱処理によって成長し、as depo.状態よりも面内方向に大きくなっていること、図3のAES画像にみられるように、画像中の濃い部分が結晶粒であり、その結晶粒を取り囲むように淡い部分が存在するので、熱処理により、Ag−Sb合金の結晶粒内のSbがその表面及び粒界に濃集する様子が観察できる。ここでも、この結晶粒の表面では、濃集したSbの多くが、酸化物として存在していることをX線光電子分光(XPS)により確認した。
一方、銅(Cu)や、パラジウム(Pd)の貴金属元素を添加したAg合金膜は、300℃程度の温度で熱処理を施すと純Ag膜と同様に結晶粒の成長が起こり、凝集するため、大きな表面凹凸による光の散乱で反射率が低下する。また、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、マンガン(Mn)、Sbなどの易酸化元素を添加したAg合金膜は、結晶粒の成長、表面粗さRaの増加が起こるものの、凝集することはない。しかしながら、これらの内、Al、Ga、Mnについては、300℃の温度で熱処理を施すと、それらの結晶粒は、面内方向ではなく、面に垂直な方向に成長してしまう。その結果、凹凸が現われ、膜の平坦性を保持できないため、凹凸による光の散乱で反射率が低下する。ところが、Sbに関しては、大気中で、300℃の温度で熱処理を施しても、面内方向の結晶粒成長が面垂直方向に対して優勢であるため、面内方向に成長した大きな結晶粒を形成することとなって、膜の平坦性を保持でき、高い反射率を得ることができる。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
(1)本発明のAg−Sb合金膜は、Sb:1.0〜2.5at%及びAg:残部からなり、前記Sbが、Ag−Sb合金膜の表面及び結晶粒界に濃集し、該結晶粒界のSb濃度が該表面のSb濃度より4.5〜9.0at%高く、酸化物を形成していることを特徴としている。
(2)(1)に記載のAg合金膜において、抵抗率が2.30〜2.84μΩ・cmであることを特徴としている。
(3)本発明のAg−Sb合金膜の形成方法は、請求項1又は2に記載のAg−Sb合金膜を形成する方法であって、Sb:1.0〜2.5at%及びAg:残部からなるAg−Sb合金ターゲットを用いて基板上にスパッタリングしてAg合金膜を成膜し、成膜されたAg−Sb合金膜を真空雰囲気中又は不活性ガス雰囲気中で熱処理することを特徴としている。
(4)(3)に記載のAg−Sb合金膜の形成方法においては、前記熱処理の温度は、前記熱処理の温度は、200〜500℃であることを特徴としている。
ここで、本発明のAg−Sb合金膜において、Ag−Sb合金のSbの添加濃度を1.0〜2.5at%とすることが好ましい。その理由は、添加元素の濃度が1.0at%未満であると、成膜後の熱処理によって、大きな結晶粒の成長が起こり、反射率が低下する。一方、その濃度が2.5at%を超えて大きいと、成膜後の熱処理による反射率の向上効果が小さくなる。
また、Ag−Sb合金膜の結晶粒の面内方向のサイズが100nm以上であることが好ましく、結晶粒の面内方向のサイズが100nm未満であると、移動度、伝導率が十分大きくならず、反射率の向上効果が小さくなる。また、膜表面の粗さRaが2nm以下であることが好ましい。膜表面の粗さRaが2nmより大きいと、表面の凹凸が大きくなり、光の散乱が増加し、反射率が低下する。
また、150℃以下の基板温度でスパッタ成膜を行なったAg−Sb合金膜を、N 等の不活性ガス、真空等の雰囲気中で、200〜500℃の温度で、適度な時間(5min〜2.0h程度)の熱処理を施すことが好ましい。成膜時の温度を制御して作製する場合、熱処理の温度が200℃未満であると、Ag−Sb合金膜における結晶性があまり向上せず、移動度、伝導率の増加が十分でなく、反射率の向上効果が小さくなる。また、450℃より高い温度での熱処理では、Ag−Sb合金膜において、大きな結晶粒の成長が起こってしまい、膜の反射率が低下する。
なお、成膜後に熱処理を施してAg−Sb合金膜を作製する場合には、成膜時の温度が150℃より大きいと、as depo.状態において既に大きな結晶粒から成る膜となり、熱処理後はさらに大きな結晶粒に成長してしまい、その大きな結晶粒の散乱によって、膜の反射率が低下する。
以上のように、本発明によれば、Agを主成分としてSbを含有させたAg−Sb合金ターゲットを用いて基板上にスパッタリング成膜したAg−Sb合金膜を熱処理(アニール)することにより、面内方向へ成長した大きい結晶粒を形成できるので、膜の結晶性が向上して移動度、伝導率が増加するのと同時に平坦性が保持され、Ag−Sb合金膜の反射率が向上する。しかも、結晶粒が面内方向に成長する際、合金中のSbが粒界に濃集されるので、耐熱性、耐塩水性、耐硫化性に優れた耐性を持つとともに、膜自体の低抵抗率化も実現できる。そのため、有機EL、太陽電池用反射膜(Si系など)、光記録ディスク、光学機器用反射ミラー、光通信機器用反射膜、熱線反射膜などに用いる配線電極として利用可能となる。
as depo.状態のAg−Sb合金膜表面について、SEM、AFM、AESによる面分析により得られた画像を示す。 真空雰囲気中で熱処理された本発明に係るAg−Sb合金膜の表面について、SEM、AFM、AESによる面分析により得られた画像を示す。 大気中で熱処理された本発明に係るAg−Sb合金膜の表面について、SEM、AFM、AESによる面分析により得られた画像を示す。
つぎに、本発明のAg−Sb合金膜及びその製造方法について、以下に、真空雰囲気中で熱処理を施す場合と、N雰囲気中で熱処理を施す場合と、大気中で熱処理を施す場合とに分けて、実施例及び比較例を示して具体的に説明する。
〔実施例6〜14
実施例6〜14は、真空雰囲気中で熱処理を施す場合である。Ag−Sb合金ターゲットを用いて、スパッタ法で、室温でガラス基板上に形成したAg−Sb合金膜を、真空雰囲気中で、1時間の熱処理を施し、実施例6〜14のAg−Sb合金膜を作製した。なお、同様の作製方法で、参考例1〜5のAg−Sb合金膜を作製した。
そして、各実施例と比較するため、上記実施例と同様にAg−Sb合金膜(as depo.状態)を成膜し、成膜後に熱処理を施さない場合の比較例1〜5のAg−Sb合金膜を作製した。
さらに、標準的なAg系の膜として、純Agターゲット、及びPdまたはCuが1.0at%含まれたAg−Pd、Ag−Cu合金ターゲットを用いて上記実施例と同様の作製方法で純Ag膜又はAg合金膜を作製し、比較例6〜11の膜とした。
なお、Ag−Sb合金膜、Ag−Pd合金膜、Ag−Cu合金膜および純Ag膜のスパッタ成膜条件を以下に示す。
(スパッタリング成膜条件)
スパッタリング装置:DCマグネトロンスパッタ装置(アルバック社製 CS−200)
磁界強度:1000Gauss(ターゲット直上、垂直成分)
到達真空度:<5×10−5Pa
スパッタリングガス:Ar
スパッタリングガス圧:0.5Pa
スパッタリングパワー:DC200W
基板:50×50×1mmt 無アルカリガラス
膜厚:100nm
参考例1〜5及び実施例6〜14のいずれの膜も、結晶粒の面内方向のサイズが100nm以上あり、面粗さRaが2nm以下であり、結晶粒の粒界に、SbとOが濃集していることをSEM、AFM、AESによる面分析により確認した。また、参考例1〜5及び実施例6〜14及び比較例1〜11の膜について、表面の結晶粒内と結晶粒界におけるSbとOの濃度をAESによる定量分析により求めた。その結果を表1、2に示す。
ここで、表面形状は、AFM(セイコーインスッル社製の原子間力顕微鏡、SPI4000)を用いて測定した。SEM観察、表面の元素分布及び元素濃度の分析は、SEM観察機能が備わったAES(アルバック・ファイ社製のオージェ電子分光装置、PHI 700)を用いて測定した。


次に、参考例1〜5及び実施例6〜14、比較例1〜11の膜について、抵抗率、反射率、耐性試験後の反射率を測定した。反射率は、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製の分光光度計、U4100)を用い、波長が400〜800nmの光を用いて測定したが、代表的な波長である400nm、550nm、700nmでの反射率で示した。また、耐性に関して、耐熱試験(300℃、1時間、大気中アニール)、耐硫化試験(0.01at%のNaS溶液に1時間浸漬)、耐塩水試験(5at%のNaCl溶液に12時間浸漬)を実施した後に、波長が400〜800nmの光を用いて、試験後の反射率を測定した。試験後の反射率については、400〜800nmの波長範囲での平均反射率で示した。これらの測定結果が、表3,4に示されている。


〔実施例20〜28
実施例20〜28は、N雰囲気中で熱処理を施す場合である。これらの実施例では、真空雰囲気をN雰囲気に代えた以外、実施例6〜14と同様の手順に従って、Ag−Sb合金膜を作製し、評価した。作製条件と評価の結果を、表5および表6に示す。なお、同様の作製方法で、参考例15〜19のAg−Sb合金膜を作製した。


参考例29〜42
参考例29〜42は、大気雰囲気中で熱処理を施す場合である。これらの参考例では、真空雰囲気を大気雰囲気に代えた以外、参考例1〜5及び実施例6〜14と同様の手順に従って、Ag−Sb合金膜を作製し、評価した。作製条件と評価の結果を、表7および表8に示す。


表1〜8に示された結果によれば、実施例の膜は、少なくとも比較例の膜の抵抗率と同等かそれより低く、低抵抗率化を図ることができた。また、反射率に関しても、いずれも400〜700nmの波長範囲で、as depo.状態の純Ag膜と同等かそれ以上の反射率が計測され、反射率の向上が見られた。さらに、耐熱試験、耐硫化試験、耐塩水試験を実施したそれぞれの後に測定された実施例の膜の平均反射率は、比較例の膜の平均反射率と同等かそれより高くなっている。このことは、実施例の膜が、熱処理により、耐性が向上したことを示している。
さらに詳細を述べると、Sbの添加濃度が1.0at%と低いときには、200℃の温度で熱処理を施した場合でも、そのAg−Sb合金膜の反射率は、他の実施例と遜色ない結果が得られている。これは、Sbの濃度が低いと、低温でも結晶粒の成長が促進され、抵抗率の低下と反射率の向上とが起こると考えられる。
また、Sbの添加濃度が1.0at%と低いときであっても、200〜400℃の温度で熱処理を施した実施例では、耐熱性、耐硫化性、耐塩水性のいずれにおいても良好な結果が得られた
さらに、Sbの添加濃度が、2.0at%と高い場合、500℃の温度で熱処理した場合でも、そのAg−Sb合金膜の反射率は、他の実施例と遜色ない結果が得られている。これは、Sb濃度が高いと、高温の熱処理でも、結晶の成長が抑制され、表面凹凸が大きくならないためと考えられる
表1〜8に示された結果によれば、実施例の膜では、いずれも表面に5.1at%以上のSb、Oが存在し、ターゲットの最大濃度2.5at%よりも大きく、表面にSbが濃集していることが分かる。さらに、その表面において、結晶粒界の方が結晶粒内よりもSb濃度が4.5at%以上高く、結晶粒界にSbが濃集していることが分かる。

以上のように、実施例のAg−Sb合金膜によれば、Agを主成分としてSbを含有させたAg−Sb合金ターゲットを用いて基板上にスパッタリング成膜したAg−Sb合金膜を熱処理(アニール)することにより、結晶粒の面内方向への成長が促進されて、大きな結晶粒が形成できたので、結晶性が向上して移動度、伝導率が増加するのと同時に膜の平坦性が保持され、熱処理されたAg−Sb合金膜の反射率が、as depo.状態の純Ag膜、Ag―Pd、Ag−Cu及びAg―Sb合金膜の場合より向上することが確認できた。さらに、結晶粒が面内方向に成長する際、合金結晶粒内のSbが粒界に濃集されるので、耐熱性、耐塩水性、耐硫化性に優れた耐性を持つとともに、膜自体の抵抗率を低下させることが確認された。そのため、本発明によるAg−Sb合金膜は、有機EL、太陽電池用反射膜(Si系など)、光記録ディスク、光学機器用反射ミラー、光通信機器用反射膜、熱線反射膜などに用いる反射膜、液晶やタッチパネルなどに用いる配線電極膜として好適であり、産業上優れたものである。

Claims (4)

  1. Sb:1.0〜2.5at%及びAg:残部からなるAg−Sb合金膜であって、
    前記Sbが、Ag−Sb合金膜の表面及び結晶粒界に濃集し、該結晶粒界のSb濃度が該表面のSb濃度より4.5〜9.0at%高く、酸化物を形成していることを特徴とするAg−Sb合金膜。
  2. 抵抗率が2.30〜2.84μΩ・cmであることを特徴とする請求項1に記載のAg−Sb合金膜。
  3. 請求項1又は2に記載のAg−Sb合金膜を形成する方法であって、
    Sb:1.0〜2.5at%及びAg:残部からなるAg−Sb合金ターゲットを用いて基板上にスパッタリングしてAg合金膜を成膜し、成膜されたAg−Sb合金膜を真空雰囲気中又は窒素雰囲気中で熱処理することを特徴とするAg合金膜の形成方法。
  4. 前記熱処理の温度は、200〜500℃であることを特徴とする請求項3に記載のAg−Sb合金膜の形成方法。
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