本発明は、プロジェクター等の投写装置の短焦点化に対応して、画像形成の性能を維持しつつ、大型化や重量の増大を抑制することのできるフロントコンバーター及び当該フロントコンバーターを適用可能なプロジェクターを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るフロントコンバーターは、(a)基本投写レンズの拡大側に着脱可能に配置されることにより基本投写レンズの焦点距離を変更するフロントコンバーターであって、(b)基本投写レンズの光軸に対して非軸対称な輪郭形状を有する非軸対称レンズを少なくとも一部に含むコンバーターレンズ部と、(c)コンバーターレンズ部を、基本投写レンズに対して光軸の回りに回転可能に取り付ける取付部材と、を備える。
本発明に係るフロントコンバーターは、フロントコンバーターのない場合に通常状態での画像投写を可能とする基本投写レンズに対して着脱可能であり、当該フロントコンバーターが取り付けられた状態において、コンバーターレンズ部が基本投写レンズに対して回転可能であるため、非軸対称な輪郭形状を有する非軸対称レンズを含むものであっても、非軸対称レンズのうち光学的に有効な領域を、必要な範囲に対応させる位置調整が可能となる。従って、プロジェクター等の投写装置に装着させることで投写装置の短焦点化に簡易に対応させることが可能となり、かつ、画像形成の性能を維持しつつ、大型化や重量の増大を抑制することができる。
本発明の具体的な側面によれば、コンバーターレンズ部の非軸対称レンズが、基本投写レンズと光軸を共通にする共軸光学系であり、当該光軸について回転対称な回転体の表面から一部を切り出した面に対応するレンズ面を有する回転対称光学系である。この場合、コンバーターレンズ部を装着することによって短焦点で広画角な投写レンズを構成することが可能となり、特に、この際、光軸が共通にする共軸であることで、当該光軸を中心に回転対称な回転体の表面の一部をレンズ面とするコンバーターレンズを回転させることで、フロントコンバーターのレンズ機能を回転対称な回転体のレンズによるものと一致させた状態を維持しつつ、位置調整ができる。
本発明の別の側面によれば、コンバーターレンズ部が、樹脂製のレンズを含んでいる。この場合、コンバーターレンズ部の軽量化を図ることができる。
本発明のさらに別の側面によれば、取付部材が、基本投写レンズに対する取付位置を決定する取付位置決定機構と、取付位置決定機構により決定された位置にある状態でコンバーターレンズ部を光軸の回りに回転させてコンバーターレンズ部の姿勢の調整を行う回転調整機構とを有する。この場合、取付位置決定機構によるフロントコンバーターの取付けにおいてコンバーターレンズ部が当初適切でない位置にあっても、回転調整機構によってコンバーターレンズ部を回転させて姿勢の調整を行うことで適切な位置に合わせることができる。
本発明のさらに別の側面によれば、コンバーターレンズ部が、非軸対称レンズを含むレンズ群を一体化するコンバーター鏡筒部を有し、取付部材の回転調整機構が、コンバーター鏡筒部の周に沿って設けられている。この場合、コンバーターレンズ部の光学的な主要部であるレンズ群を保持したコンバーター鏡筒部を、回転調整機構によって回転させることができる。
本発明のさらに別の側面によれば、コンバーターレンズ部の前面に着脱され当該前面を覆うとともに、コンバーターレンズ部とともに回転し、かつ、少なくとも一部に光を透過させる透明部を有するキャップ部材をさらに備える。この場合、例えばプロジェクターに組み付けた際に、キャップ部材の透明部を透過した光によって投影される投影像に基づいてコンバーターレンズ部の姿勢を調整することができる。なお、透明部には、例えば光透過性の平板のほか、何も設置せず、開口を設けたものも含まれる。
本発明のさらに別の側面によれば、取付部材が、基本投写レンズのうちフォーカス動作又はズーム動作において光軸の回りに回転する回転光学系部分にコンバーターレンズ部を取り付ける。この場合、基本投写レンズのフォーカス動作又はズーム動作に伴う回転光学系部分の回転によるコンバーターレンズ部の姿勢の傾きを、当該フォーカス動作又はズーム動作後に調整することができる。
上記課題を解決するため、本発明に係る複合投写レンズは、(a)上記いずれかに記載のフロントコンバーターと、(b)拡大側においてフロントコンバーターを着脱可能とする基本投写レンズとを備える。この場合、上記フロントコンバーターを用いることで、投写装置の短焦点化に対応して、画像形成の性能を維持しつつ、大型化や重量の増大を抑制することができる。
上記課題を解決するため、本発明に係る第1のプロジェクターは、(a)上記複合投写レンズと、(b)複合投写レンズによって投影される画像を形成する光変調素子とを備える。この場合、上記フロントコンバーターを備える複合投写レンズを用いることで、短焦点化に対応して、画像形成の性能を維持しつつ、大型化や重量の増大を抑制することができる。
上記課題を解決するため、本発明に係る第2のプロジェクターは、(a)光を射出する光源と、(b)光源からの光で照明される光変調素子と、(c)光変調素子を駆動し、光変調素子に画像を形成させる回路装置と、(d)コンバーターレンズ部の前面に着脱され当該前面を覆うとともに、コンバーターレンズ部とともに回転し、かつ、少なくとも一部に光を透過させる透明部を有するキャップ部材を備えるフロントコンバーターと、(e)拡大側においてフロントコンバーターを着脱可能とする基本投写レンズとを備え、(f)回路装置が、フロントコンバーターに付随するキャップ部材の透明部を通過して投影されコンバーターレンズ部の状態を示す指標像を、光変調素子に形成させる。この場合、投影される指標像に基づいてコンバーターレンズ部の姿勢を調整することができる。
以下に図面を参照して本発明の実施形態に係るフロントコンバーターを組み込んだプロジェクターを詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係るフロントコンバーターを備える複合投写レンズを組み込んだプロジェクター100は、画像光を投写する光学系部分50と、光学系部分50の動作を制御する回路装置80と、キー入力によるユーザーからの各種指令を受け付ける操作部90とを備える。
光学系部分50において、光源10は、例えば超高圧水銀ランプであって、R光、G光、及びB光を含む光を射出する。光源10は、超高圧水銀ランプ以外の放電光源であってもよいし、LEDやレーザーのような固体光源であってもよい。第1インテグレーターレンズ11及び第2インテグレーターレンズ12は、アレイ状に配列された複数のレンズ素子を有する。第1インテグレーターレンズ11は、光源10からの光束を複数に分割する。第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子は、光源10からの光束を第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子近傍にて集光させる。第2インテグレーターレンズ12のレンズ素子は、重畳レンズ14と協働して、第1インテグレーターレンズ11のレンズ素子の像を液晶パネル18R、18G、18Bに形成する。このような構成により、光源10からの光が液晶パネル18R、18G、18Bの表示領域全体を略均一な明るさで照明する。
偏光変換素子13は、第2インテグレーターレンズ12からの光を所定の直線偏光に変換させる。重畳レンズ14は、第1インテグレーターレンズ11の各レンズ素子の像を、第2インテグレーターレンズ12を介して液晶パネル18R、18G、18Bの表示領域上で重畳させる。
第1ダイクロイックミラー15は、重畳レンズ14から入射したR光を反射させ、G光及びB光を透過させる。第1ダイクロイックミラー15で反射されたR光は、反射ミラー16及びフィールドレンズ17Rを経て、光変調素子である液晶パネル18Rへ入射する。液晶パネル18Rは、R光を画像信号に応じて変調することにより、R色の画像を形成する。
第2ダイクロイックミラー115は、第1ダイクロイックミラー15からのG光を反射させ、B光を透過させる。第2ダイクロイックミラー115で反射されたG光は、フィールドレンズ17Gを経て、光変調素子である液晶パネル18Gへ入射する。液晶パネル18Gは、G光を画像信号に応じて変調することにより、G色の画像を形成する。第2ダイクロイックミラー115を透過したB光は、リレーレンズ22,24、反射ミラー23,25、及びフィールドレンズ17Bを経て、光変調素子である液晶パネル18Bへ入射する。液晶パネル18Bは、B光を画像信号に応じて変調することにより、B色の画像を形成する。
クロスダイクロイックプリズム19は、光合成用のプリズムであり、各液晶パネル18R、18G、18Bで変調された光を合成して、複合投写レンズ40へ進行させる。
複合投写レンズ40は、各液晶パネル18G,18R,18Bによって変調されクロスダイクロイックプリズム19で合成された画像光を不図示のスクリーン上に拡大投写する投写レンズであり、基本投写レンズ41と、基本投写レンズ41の前方に着脱可能に取り付けられるフロントコンバーター42とを備える。複合投写レンズ40のうち、基本投写レンズ41は、単体で投写画像を形成可能である。複合投写レンズ40は、フロントコンバーター42を取り付けることなく基本投写レンズ41のみでの投写において、クロスダイクロイックプリズム19で合成された画像光を通常の画角で投写し、基本投写レンズ41の前方にフロントコンバーター42を取り付けた投写において、基本投写レンズ41を経た画像光を短焦点で広画角な状態で投写する。
回路装置80は、ビデオ信号等の外部画像信号が入力される画像処理部81と、画像処理部81の出力に基づいて光学系部分50に設けた液晶パネル18G,18R,18Bを駆動する表示駆動部82と、複合投写レンズ40に設けた駆動機構(不図示)を動作させて複合投写レンズ40の状態を調整するレンズ駆動部83と、これらの回路部分81,82,83等の動作を統括的に制御する主制御部88とを備える。
画像処理部81は、入力された外部画像信号を各色の諧調等を含む画像信号に変換する。画像処理部81は、画像信号に対してキーストーン補正等の各種画像処理を行うこともでき、文字、図形等を含む制御・管理情報を表示するための内部画像信号を形成することもできる。
表示駆動部82は、画像処理部81から出力された画像信号に基づいて液晶パネル18G,18R,18Bを動作させることができ、当該画像信号に対応した画像又はこれに画像処理を施したものに対応する画像を液晶パネル18G,18R,18Bに形成させることができる。
レンズ駆動部83は、主制御部88の制御下で動作し、複合投写レンズ40を構成する一部の光学要素を光軸AXに沿って適宜移動させることにより、複合投写レンズ40によるスクリーン上への画像の投写倍率を変化させることができる。なお、レンズ駆動部83は、複合投写レンズ40全体を光軸AXに垂直な上下方向に移動させるシフト量の調整により、スクリーン上に投写される画像の縦位置を変化させることができるものとしてもよい。
操作部90は、例えばキー操作ボタンやリモートコントローラー等で構成され、キー入力によるユーザーからの各種指令を受け付けるととともに、受け付けた指令に関する情報を回路装置80の主制御部88に送信する。
以下、図2を参照して、複合投写レンズ40の具体的な構造について説明する。なお、本実施形態のプロジェクター100(図1参照)は、例えば据え置きタイプであり、上方向すなわち+Y方向に向けて投写がなされるように設計がなされているものとする。つまり、図2に示すように、複合投写レンズ40の光軸AXは、液晶パネル18G,18R,18Bの中心軸に対して上方にシフトしており、斜め上方向に投写を行うものである。
複合投写レンズ40は、上述のように、基本投写レンズ41とフロントコンバーター42とで構成される。このうち、基本投写レンズ41は、拡大側(スクリーン側)から順に、前玉である第1群G1と、ズームレンズ群である第2群G2と、固定群である第3群G3と、第3鏡筒部LB3と、第4鏡筒部LB4とを備える。ここで、第2群G2は、移動させることで変倍を行う移動レンズ群である。また、第1群G1は、最も拡大側に配置される先頭レンズ群であり、第3群G3は、最も縮小側に配置され最終レンズ群である。図示のように、第1群G1は、例えば4枚のレンズL1〜L4を有し、第2群G2は、例えば8枚のレンズL5〜L12を有し、第3群G3は、例えば4枚のレンズL13〜L16を有する。各レンズL1〜L16は、いずれも光軸AXに対して軸対称な輪郭形状を有する軸対称レンズである。基本投写レンズ41は、例えば第2群G2の一部、あるいは複数レンズを移動させることでズーム動作を可能とし、また、例えば第1群G1の一部を移動させることでフォーカス動作を可能としている。なお、例えばズーム動作において第2群G2のみならず第1群G1も移動するものとしてもよい。
基本投写レンズ41は、第1群G1のうち、最も拡大側に位置しフォーカス動作時に回転して光軸方向に沿って移動する2枚のレンズL1,L2を第3鏡筒部LB3内部で固定した拡大側レンズ部41aと、基本投写レンズ41を構成するその他のレンズを第4鏡筒部LB4の内部で固定した縮小側レンズ部bとに部別される。第3鏡筒部LB3が第4鏡筒部LB4に対して回転可能に取り付けられており、第3鏡筒部LB3の回転動作に伴ってレンズL1,L2が移動することでフォーカス動作がなされるヘリコイド式となっているものとする。つまり、レンズL1,L2は、フォーカス動作又はズーム動作において光軸AXの回りに回転する回転光学系部分である。なお、第3鏡筒部LB3は、拡大側に端部TPを有しており、後述するフロントコンバーター42の取付部材42bを構成する第2鏡筒部LB2に取り付けられるものとなっている。
複合投写レンズ40のうち、フロントコンバーター42は、基本投写レンズ41のうち拡大側すなわち前玉である第1群G1側に着脱可能に取り付けられて、投影される画像を広角にする変換を行うコンバーターであり、2枚のコンバーターレンズLL1,LL2で構成されるコンバーターレンズ部42aを有する。
ここで、各コンバーターレンズLL1,LL2は、短焦点で広画角な投写を可能にするコンバーターレンズ部42aの光学的な主要部であり、基本投写レンズ41と光軸AXを共通にする共軸光学系であるが、基本投写レンズ41を構成するレンズ群と異なり、基本投写レンズ41の光軸AXに対して非軸対称な輪郭形状を有する非軸対称レンズである。より具体的には、非軸対称レンズであるコンバーターレンズLL1,LL2は、光軸AXについて回転対称な回転体の表面から−Y側の一部を切り出した面に対応するレンズ面を有する回転対称光学系である(図3(A)参照)。また、コンバーターレンズLL1,LL2は、樹脂製のレンズであり、複合投写レンズ40の先端側が重くなることを抑制できる。なお、レンズの材料としては、アクリルのほか、シクロオレフィンポリマー系の材料を用いることが望ましい。なお、その他のレンズ材料としてガラスを用いても良い。コンバーターレンズLL1及びLL2の材料がすべて同一でもよいし、レンズごとに材料が異なっていてもよい。
光軸AXを中心とした場合、基本投写レンズ41を構成する例えば第1群G1及び第2群G2等を構成するレンズは、光軸AXを中心にレンズ面の比較的広い範囲を光束が通過する。このため、これらのレンズは、光軸AXに対して軸対称な輪郭形状を有するレンズ群で構成されている。これに対して、コンバーターレンズ部42aにおいて光が通る範囲は光軸AXに対して比較的限られた部分に偏っている。例えば、プロジェクター100(図1参照)が据え置きタイプで上方に向けて投写されるようなものである場合には、光束が光軸AXより+Y側にシフトした側の偏った範囲を通過するため、−Y側の領域については、光軸AX周辺の一部のみを通過するに過ぎない。従って、−Y側の領域のうち光束が通過することのない部分については、予めカットした形状とすることで、特に大型化しやすいフロントコンバーター42の小型化、軽量化を図ることができる。
以下、図3(A)等を参照して、フロントコンバーター42の構造についてより具体的に説明する。図3(A)、3(B)及び3(C)に示すように、フロントコンバーター42は、短焦点化した広画角の投写のための変換を行う本体部であるコンバーターレンズ部42aと、フロントコンバーター42を基本投写レンズ41に対して光軸AXの回りに回転可能に取り付けるための姿勢調整用の取付部材42bとを有する。
図3(B)あるいは図4(A)及び図4(B)に示すように、フロントコンバーター42のうち、コンバーターレンズ部42aは、2枚のコンバーターレンズLL1,LL2と、第1鏡筒部LB1とを有する。第1鏡筒部LB1は、光学的な主要部であるコンバーターレンズLL1,LL2を内部に固定するコンバーター鏡筒部である。言い換えると、コンバーターレンズLL1,LL2は、コンバーター鏡筒部である第1鏡筒部LB1で固定・保持されることにより、コンバーターレンズ部42aにおいて一体化したレンズ群となっている。なお、コンバーターレンズLL1,LL2は、接着や板バネ等によって固定されている。
コンバーターレンズ部42aにおいて、第1鏡筒部LB1は、円筒状の周に沿って輪帯状に設けられる突起部43aを有し、突起部43aが取付部材42bに対して回転可能な状態で嵌め込まれている。
一方、フロントコンバーター42のうち、取付部材42bは、フロントコンバーター42を基本投写レンズ41の拡大側の端部TPに取り付けるためのネジ構造部43cと、コンバーターレンズ部42aの第1鏡筒部LB1の突起部43aと嵌合する嵌合部43bとを有する第2鏡筒部LB2を備える。嵌合部43bは、輪帯状の突起部43aの周に沿って設けられた窪み形状を有することで、突起部43aをはめ込み可能としている。コンバーターレンズ部42aは、突起部43aを嵌合部43bにおいて嵌合させていることにより、図3(C)に示すように、コンバーターレンズ部42aを光軸AXの回りに回転可能な状態にしている。言い換えると、取付部材42bの嵌合部43bは、取付部材42bを基本投写レンズ41に固定した後であっても、取付部材42bに対してコンバーターレンズ部42aを光軸AXの回りに回転させて姿勢の調整を可能にする回転調整機構として機能する。
次に、フロントコンバーター42の第2鏡筒部LB2と基本投写レンズ41の第3鏡筒部LB3との取付けについてより具体的に説明する。まず、図4(A)において一部拡大して示すように、フロントコンバーター42の第2鏡筒部LB2すなわち取付部材42bは、基本投写レンズ41のうち拡大側レンズ部41aの第3鏡筒部LB3に対する取付位置を決定するための取付位置決定機構として、基本投写レンズ41側の端部TRに、ネジ構造部43cを有する。ネジ構造部43cは、取付部材42bのうち基本投写レンズ41側の内面において周に沿って設けられたネジ切り構造である。一方、図4(B)において一部拡大して示すように、ネジ構造部43cに対応して、第3鏡筒部LB3の拡大側の端部TPの外面には、ネジ切りが周に沿って設けられている。ネジ構造部43cを有することで、フロントコンバーター42は、基本投写レンズ41の拡大側から光軸AXの回りにねじ込み回転させて基本投写レンズ41に対して正確な取付位置に組み付けて固定させることができる。
ここで、フロントコンバーター42に用いるコンバーターレンズLL1,LL2を上記のような異形のレンズとする場合、例えば、基本投写レンズ41のうちフロントコンバーター42を取り付ける側である第1群G1のレンズL1,L2が上記のように回転するヘリコイド式であると、フォーカスのための回転に伴ってコンバーターレンズLL1,LL2の姿勢も変化することになり、もし、基本投写レンズ41に固定した後に、コンバーターレンズLL1,LL2の姿勢を調整できないものであるとしてしまうと、投写光として必要な範囲とコンバーターレンズLL1,LL2の有効な範囲とにずれが生じ、投写光となるべき成分の一部がコンバーターレンズLL1,LL2の有効な範囲外を通過し、ケラレ光や迷光となってしまう可能性がある。
これに対して、本実施形態では、上記のようにフロントコンバーター42が取付部材42bを有することで、フロントコンバーター42をネジ構造部43cによって基本投写レンズ41に取り付けた後であっても、コンバーターレンズ部42aを、基本投写レンズ41に対して光軸AXの回りに回転可能なものとしている。これにより、コンバーターレンズ部42aを構成するコンバーターレンズLL1,LL2のうち光学的に有効な領域を、投射光を通過させるのに必要な範囲に対応させる位置調整を可能にし、投写装置の短焦点化に対応して、画像形成の性能を維持しつつ、大型化や重量の増大を抑制することができるものとしている。
以下、図4(A)等を参照して、フロントコンバーター42の基本投写レンズ41への取付け及び位置調整について説明する。既述のように、図4(B)に示すように、フロントコンバーター42の取付部材42bのネジ構造部43cを基本投写レンズ41の端部TPにねじ込んで組み付けることによって、フロントコンバーター42は、基本投写レンズ41に対して正確な位置に取り付けられる。ここで、フロントコンバーター42が取付部材42bのネジ構造部43cによって基本投写レンズ41に取り付けた後であっても、コンバーターレンズ部42aは、突起部43aと取付部材42bの嵌合部43bとの嵌合により、取付部材42bに対して回転可能な状態が維持されている。つまり、取付部材42bが基本投写レンズ41に対して組付け固定された後であっても、コンバーターレンズ部42aは、光軸AXの回りについて回転による姿勢の調整が可能である。これにより、基本投写レンズ41にフロントコンバーター42を組み付けた直後の状態において、例えば図3(C)において破線あるいは一点鎖線で示すように、コンバーターレンズ部42aの姿勢すなわちコンバーターレンズLL1,LL2の姿勢が傾いていても、回転調整機構である嵌合部43bによってコンバーターレンズ部42aを回転させることによって、コンバーターレンズLL1,LL2の光学的に有効な範囲内に投写光である画像光の通過領域が含まれるようにできる。
第1実施形態のフロントコンバーター42を配備可能なプロジェクター100によれば、フロントコンバーター42のない場合に通常状態での画像投写を可能とする基本投写レンズ41に対して着脱可能であり、フロントコンバーター42が取り付けられた状態において、コンバーターレンズ部42aが基本投写レンズ41に対して回転可能であるため、非軸対称な輪郭形状を有する非軸対称レンズであるコンバーターレンズLL1,LL2を含むものであっても、コンバーターレンズLL1,LL2のうち光学的に有効な範囲を、投写光である画像光を通過させるために必要な範囲に対応させる位置調整が可能となる。従って、プロジェクター100の短焦点化に対応して、画像形成の性能を維持しつつ、大型化や重量の増大を抑制することができる。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態のプロジェクターについて説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態のプロジェクターの変形例であり、特に説明しない部分又は事項は、第1実施形態の場合と同様である。
図5(A)は、本実施形態のプロジェクターのうち、フロントコンバーター42を装着した状態の複合投写レンズ40の正面図であり、図3(A)に対応する図である。図5(B)は、フロントコンバーター42の前方をカバーするキャップ部材CBを示す図であり、図5(C)は、キャップ部材CBをフロントコンバーター42に装着した状態を示している。
図5(B)及び5(C)に示すように、キャップ部材CBは、コンバーターレンズ部42aを構成するコンバーターレンズLL1の形状に合わせた形状を有しており、中央部分に設けられた光を透過させる透明部TBを除き、光を遮蔽する材料で形成され、コンバーターレンズ部42aの前面に着脱され当該前面を覆っている。また、図5(D)に示すように、キャップ部材CBを装着した状態のフロントコンバーター42において、キャップ部材CBは、コンバーターレンズ部42aとともに回転可能となっている。
キャップ部材CBの中央部分に設けられた横長の矩形形状を有する透明部TBは、例えばアクリルのほか、シクロオレフィンポリマー系の材料で形成され、キャップ部材CBを装着した状態において、コンバーターレンズLL1,LL2のうち光軸AXに対応して装着時に光軸AX及びその近傍である中心領域を通る光を透過させる。この場合、例えばキャップ部材CBを装着した状態で光変調素子である液晶パネル18R,18G,18B(図1参照)側からサンプル光を射出させれば、このうち透明部TBを通過した成分によって、図5(E)に模式的に示すような透明部TBの形状に応じた指標像SIを被照射対象であるスクリーンSC上に投影することができる。この場合、指標像SIは、コンバーターレンズ部42aの傾き度合に応じたもの、すなわちコンバーターレンズ部42aの姿勢の状態を示す像となるので、プロジェクターのユーザーは、この指標像SIを見ながらフロントコンバーター42の姿勢を簡易かつ確実に調整することができる。
なお、上記のようなサンプル光による指標像SIの形成については、例えば図1の操作部90においてユーザーの指令の1つとして指標像SIの形成用の投影を行うモードを設定しておくことで実現できる。つまり、回路装置80が、操作部90から送信された指標像SIの形成させる旨の信号に基づいて、主制御部88等を介して液晶パネル18R,18G,18B等を動作させ、指標像SIを形成する。
また、上記のような液晶パネル18R等による指標像SIの形成に際して、指標像SIを、透明部TBが所望の位置に配置された状態での透明部TBの形状及び位置に対応させたものとすることができる。この場合、コンバーターレンズ部42aが所望の位置からずれている場合は、指標像SIの一部が欠けた状態、すなわちキャップ部材CBにより指標像SIの一部が遮光され残りの部分が透明部TBを透過してスクリーンSC上に投影される。ユーザーは、指標像SIの形状に完全にスクリーンSC上に投影されるようにコンバーターレンズ部42aの姿勢を回転させる。
なお、透明部TBの部分は何も設置されていなくても良い。しかし、透明部TBを透明部材で覆った場合は、キャップ部材CBをフロントコンバーター42の防塵キャップとして利用できる。
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
例えば、上記実施形態等では、フロントコンバーター42を短焦点で広画角にするためのものとしているが、フロントコンバーター42をアスペクト比の変換用のコンバーターとすることもできる。つまり、コンバーターレンズLL1,LL2を例えば水平方向と垂直方向とについて互いにパワーの異なるアナモフィック光学系とすることで、フロントコンバーター42の有無によって投写される画像のアスペクト比を変換するものとしてもよい。
また、コンバーターレンズLL1,LL2の輪郭は、半円状に限らず、長方形等の様々な形状とすることができる。
また、上記実施形態では、フロントコンバーター42を基本投写レンズ41の回転光学系部分を含む拡大側レンズ部材41aの第3鏡筒部LB3に固定していたが、フロントコンバーター42を回転しない縮小側レンズ部41bの第4鏡筒部LB4に固定する構成とすることができる。しかし、画像の焦点を合わせる観点では、回転光学系を含む拡大側レンズ部材41aに固定する方が望ましい。
また、上記実施形態のプロジェクター100では、照明系を、光源10、インテグレーターレンズ11,12、偏光変換素子13、ダイクロイックミラー15,115等で構成したが、インテグレーターレンズ11,12等については省略することができる。
上記実施形態では、3つの液晶パネル18R,18G,18Bを用いたプロジェクター100の例のみを挙げたが、本発明は、2つの液晶パネルを用いたプロジェクター、或いは、4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクターにも適用可能である。
上記実施形態では、スクリーンを観察する方向から投写を行なうフロントタイプのプロジェクターの例のみを挙げたが、本発明は、スクリーンを観察する方向とは反対側から投写を行なうリアタイプのプロジェクターにも適用可能である。