JP5919821B2 - 光学基板及びその製造方法並びに発光表示装置 - Google Patents
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Description
本発明に係る光学基板10は、図1及び図2に示すように、透光性基板1と、透光性基板1上に設けられた複数の光散乱壁2と、透光性基板1上に設けられるとともに光散乱壁2を覆う光散乱層3と、光散乱層3上に設けられた透明電極5とを有し、その光散乱層3が光散乱粒4を複数有していることに特徴がある。
透光性基板1は、後述する光散乱壁2や光散乱層3の基材として作用すると共に、その光散乱壁2や光散乱層3で屈折又は反射した光の多くを透過するように作用する。透光性基板1は、ガラス、石英、樹脂等の材料からなる光透過性の基板であればよく、特に基板単体での透過率が85%以上のものが好ましく用いられる。なお、ここでいう透過率とは、例えば株式会社村上色彩技術研究所製の光線透過率計(型式:HM−150)等により測定した値である。透光性基板1の厚さは特に限定されないが、通常、30μm〜500μmの範囲内である。
光散乱壁2は、図1及び図2に示すように、透光性基板1上に複数設けられている。光散乱壁2の材質は特に限定されないが、例えば、屈折率n3が、後述する光散乱層2の屈折率n2よりも小さい透明樹脂材料が好ましく用いられる。そうした材料は、光散乱層2の種類との関係で一概には言えないが、例えば、一般的に市販されている感光性樹脂材料の中から選択して用いることができる。屈折率n3が光散乱層3の屈折率n2よりも小さい材料で光散乱壁2を形成することにより、光散乱層3が有する光拡散粒4で屈折又は反射した光が光拡散壁2に当たって屈折又は反射する。その結果、その光の一部は透光性基板1から外部に容易に取り出されることになる。
光散乱層3は、図1及び図2に示すように、透光性基板1上に設けられるとともに光散乱壁2を覆うようにして設けられている。さらに、光散乱層3は、光散乱粒4を複数有している。「覆う」とは、図1及び図2に示すように、透光性基板1上に、光散乱壁2よりも厚く光散乱層3を設けて、光散乱壁2を全て覆うという意味である。
図3及び図4は、光散乱層3内での光の屈折又は反射の説明図である。第1電極5側から光散乱層3に入射した光は、光散乱層3中の光散乱粒3で屈折又は反射し、その光の一部は透光性基板1から外部に取り出される。また、光散乱粒4で屈折又は反射した光の他の一部は光散乱層3内をさらに進み、再び光散乱層3が有する光散乱粒4で屈折又は反射し、又は、光散乱壁2で屈折又は反射し、その光の一部は透光性基板1から外部に取り出される。また、光散乱壁2で屈折又は反射した光の他の一部は光散乱層3内をさらに進み、再び光散乱層3が有する光散乱粒4で屈折又は反射し、その光の一部は透光性基板1から外部に取り出される。こうした屈折又は反射が光散乱粒4と光散乱壁2とで繰り返されることにより、透明電極5側から光散乱層3に入射した光は、透光性基板1から効率的に取り出されることになる。
透明電極5は、任意の構成であり、図1に示す光学基板10Aでは光散乱層3上に設けられているが、図2に示す光学基板10Bでは設けられていない。この透明電極5は、後述する発光表示装置11では第1電極5となり、有機EL層6に電荷を注入するための電極として機能する。透明電極5は、In−Sn−O(ITO)、In−Zn−O(IZO)、Zn−O、Zn−O−Al、Zn−Sn−O等の透明導電性酸化物で形成されていることが好ましく、なかでも、ITO又はIZOの透明導電性酸化物で形成されていることが好ましい。ITO又はIZOからなる透明電極5は、導電性と光透過性に優れ、電気抵抗率が低いことから、光の取り出し効率を向上させるとともに、後述する発光表示装置11の第1電極5として用いられる場合は、発光層6Bの駆動電圧を低電圧化することができる。
光学基板10は、透光性基板1上に複数の光散乱壁2を形成する工程と、透光性基板1上に且つ光散乱壁2を覆うように光散乱粒4を複数有する光散乱層3を形成する工程と、光散乱層3上に透明電極5を形成する工程とを有する方法で製造できる。各工程での、光散乱壁2、光散乱層3、透明電極5の形成方法は、上記した各構成の説明欄で説明したので、ここではその説明を省略するが、本発明に係る光学基板の製造方法によれば、上記した格別の効果を奏する光学基板10を容易に且つ特性が安定した態様で製造できる。
(基本構成)
本発明に係る発光表示装置11は、透光性基板1と、透光性基板1上に設けられた複数の光散乱壁2と、透光性基板1上に設けられるとともに光散乱壁2を覆い、光散乱粒4を複数有する光散乱層3と、光散乱層3上に設けられた発光体(5,6,7)とを有する。この発光表示装置11では、発光体で発光した光が光散乱層3側に入射したとき、その光は光散乱層3が有する光散乱粒4で屈折又は反射し、その光の一部は透光性基板1から外部に取り出される。また、光散乱粒4で屈折又は反射した光の他の一部は光散乱層3内を進み、再び光散乱層3が有する光散乱粒4で屈折又は反射し、又は、光散乱壁2で屈折又は反射し、その光の一部は透光性基板1から外部に取り出される。また、光散乱壁2で屈折又は反射した光の他の一部は光散乱層3内を進み、再び光散乱層3が有する光散乱粒4で屈折又は反射し、その光の一部は透光性基板1から外部に取り出される。こうした屈折又は反射が光散乱粒4と光散乱壁2で繰り返されることにより、発光体から入射した光は透光性基板1から効率的に取り出される。
第1電極5は、上記した透明電極5と同じであるが、発光表示装置11に適用される場合には、その後に形成される有機EL層6に正孔又は電子を供給するための電極である。第1電極5が、有機EL層6で発生した光の取り出し側に設けられる。通常は、製造手順の観点から、第1電極5を陽極とし、後述する第2電極7を陰極とすることが好ましい。
有機EL層6は、図5に示すように、第1電極5と第2電極7との間に挟まれており、少なくとも正孔注入輸送層6Aと発光層6Bとを有し、具体的には正孔注入輸送層6Aと発光層6Bと電子注入輸送層6Cとを有するように構成されている。この有機EL層6は、正孔注入輸送機能を有する層と、発光層と、電子注入輸送機能を有する層とを有するものであれば、各種の呼び名の層が設けられていてもよい。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入輸送層、電子輸送層、電子注入層、電子注入輸送層等が必要に応じて設けられる。なお、図6に示すように、第1電極5側から、正孔注入層6a、正孔輸送層6b、発光層6c、電子輸送層6d、電子注入層6eの順で設けられていてもよい。
正孔注入輸送層6Aは、第1電極5に接する態様で設けられ、発光層6Bへの正孔の注入を安定化させるように作用するとともに、発光効率を高めるように作用する。正孔注入輸送層6Aは、第1電極5と発光層6Bとの間に設けられるので、第1電極5から注入された正孔を発光層6B内へ輸送するように作用する層であれば特に限定されない。正孔注入輸送層6Aは、正孔注入機能と正孔輸送機能を有するものであれば、正孔注入層と呼ばれる単一層であっても正孔輸送層と呼ばれる単一層であってもよく、また、正孔注入層と呼ばれる層と正孔輸送層と呼ばれる層からなる2層構造であってもよく、また、発光層6Bが正孔注入機能と正孔輸送機能の両機能を有する場合には正孔注入輸送層として設けられていなくてもよい。
発光層6Bは、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を有するものであり、例えば図5に示すように、正孔注入輸送層6Aと電子注入輸送層6Cとの間に挟まれて構成されている。発光層6Bの構成材料としては、色素系発光材料、金属錯体系発光材料、高分子系発光材料を挙げることができる。
電子注入輸送層6Cは、発光層6Bと第2電極7との間に設けられるので、第2電極7から注入された電子を発光層6Bに安定して輸送するように作用する層であれば特に限定されない。電子注入輸送層6Cは、電子注入機能と電子輸送機能を有するものであれば、電子注入層と呼ばれる単一層であっても電子輸送層と呼ばれる単一層であってもよく、また、電子注入層と呼ばれる層と電子輸送層と呼ばれる層からなる2層構造であってもよく、また、発光層6Bが電子注入機能と電子輸送機能の両機能を有する場合には電子注入輸送層として設けられていなくてもよい。
第2電極7は、発光層6Bに電子を供給するための電極である。第2電極7は光取り出し側ではないので、その構成材料は特に制限はなく、例えば、チタン、金、クロム、鉄、モリブデン、タングステン、銅、ルテニウム、レニウム、ITO、IZO等を挙げることができる。第2電極7の厚さは特に限定されるものではないが、通常、150nm〜300nmの範囲であることが好ましい。
第2電極7を形成した後においては、必要に応じて、例えば封止層(図示しない)を設けてもよいし、封止層を介して透明基材(図示しない)を設けてもよい。封止層としては、高分子材料を塗布して形成したものであってもよいし、高分子材料からなる樹脂フィルムを貼り合わせたものであってもよい。高分子材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリミクロイキシレンジメチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。また、2種類以上の共重合体を用いることもできる。また、ゾル−ゲル反応で成膜できる有機−無機系材料等を用いることもできる。
透光性基板1として、厚さ0.7mmのガラス基板を用い、その透光性基板1上に光散乱壁2を形成した。光散乱壁2は、感光性絶縁材料(東レ株式会社製、製品名:DL−1602)をスピンコート法で塗布した後に加熱して成膜し、その後に露光、現像して、ピッチ125μm、幅約20μm、高さ約0.5μmになるように形成した。この光散乱壁2の屈折率n3は約1.6であった。
実施例1において、光散乱層3の厚さを60μmにした他は、実施例1と同様にして、実施例2の発光表示装置を作製した。
実施例1において、透光性基板1上に光散乱壁2を形成せず、さらに光散乱粒4を有する光散乱層3も形成しない他は、実施例1と同様にして、比較例1の発光表示装置を作製した。この発光表示装置は、透光性基板1上に第1電極5を設け、その透明電極5上に、順に、正孔注入層6aとしてMoO3(厚さ30nm)を設け、正孔輸送層6bとしてNPD(厚さ120nm)を設け、発光層6cとしてNPD(厚さ20nm)を設け、電子輸送層6dとしてAlq3(厚さ60nm)を設け、電子注入層6eとしてLiF(厚さ2nm)を設け、さらに封止部材を設けて構成した。
実施例1において、透光性基板1上に光散乱壁2を形成せず、光散乱粒4を有する光散乱層3だけを形成した他は、実施例1と同様にして、比較例2の発光表示装置を作製した。
実施例1において、透光性基板1上に光散乱壁2を形成したが、光散乱粒4が形成されていない光散乱層3を形成した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例3の発光表示装置を作製した。なお、光散乱粒4が形成されていない光散乱層3は、熱硬化性樹脂(DNPファインケミカル株式会社製、製品名:IT−MP1916)を硬化後の厚さが約1μmになるようにスピンコートした後、120℃でプリベイクした後、積算光量100mJで露光し、その後、230℃で30分間加熱することによって、光散乱粒4の無い光散乱層3を形成した。
実施例1,2及び比較例1〜3の発光表示装置について、輝度測定装置(株式会社トプコン製、製品名:BM−8)を用い、同等の電流値(2.3A)にて輝度を測定した。その結果、実施例1の発光表示装置の輝度は1102cd/m2であり、実施例2の発光表示装置の輝度は1152cd/m2であった。一方、比較例1の発光表示装置の輝度は825cd/m2であり、比較例2の発光表示装置の輝度は930cd/m2であり、比較例3の発光表示装置の輝度は910cd/m2であった。実施例1の発光表示装置の発光輝度は、比較例1の発光表示装置の発光輝度よりも約34%向上しており、比較例2の発光表示装置の発光輝度よりも約18%向上しており、比較例3の発光表示装置の発光輝度よりも約21%向上していることが確認された。この結果から、透光性基板1上に光散乱壁2を形成し、さらに光散乱粒4を有する光散乱層3を形成することで、輝度が向上し、光散乱層3に入射した光が透光性基板1から効率的に取り出されることが分かった。
2 光散乱壁
3 光散乱層
4 光散乱粒
5 透明電極(第1電極)
6 有機EL層
6A 正孔注入輸送層
6B 発光層
6C 電子注入輸送層
6a 正孔注入層
6b 正孔輸送層
6c 発光層
6d 電子輸送層
6e 電子注入層
7 第2電極
10 光学基板
11 発光表示装置
Claims (7)
- 透光性基板と、該透光性基板上に設けられた複数の光散乱壁と、前記透光性基板上に設けられるとともに前記光散乱壁を覆う、熱及び活性エネルギー線の一方又は両方で硬化する樹脂を硬化させて形成される樹脂からなる光散乱層と、該光散乱層上に設けられた透明電極とを有し、前記光散乱層が光散乱粒を複数有する光学基板であって、
前記光散乱粒が気泡粒であり、
前記光散乱壁の屈折率が、前記光散乱層の屈折率よりも小さく、
前記光散乱粒内の屈折率が、該光散乱粒以外の前記光散乱層の屈折率よりも小さい、ことを特徴とする光学基板。 - 前記光散乱壁の高さが、前記光散乱層の厚さの50%以上90%以下である、請求項1に記載の光学基板。
- 透光性基板上に複数の光散乱壁を形成する工程と、前記透光性基板上に且つ前記光散乱壁を覆うように、光散乱粒を複数有する、熱及び活性エネルギー線の一方又は両方で硬化する樹脂を硬化させて形成される樹脂からなる光散乱層を形成する工程と、前記光散乱層上に透明電極を形成する工程とを有する光学基板の製造方法の製造方法であって、
前記光散乱粒が気泡粒であり、
前記光散乱壁の屈折率が、前記光散乱層の屈折率よりも小さく、
前記光散乱粒内の屈折率が、該光散乱粒以外の前記光散乱層の屈折率よりも小さい、ことを特徴とする光学基板の製造方法。 - 前記光散乱層が有する前記光散乱粒は、前記透光性基板上に且つ前記光散乱壁を覆うように熱及び活性エネルギー線の一方又は両方で硬化する樹脂を塗布した後、該熱及び活性エネルギー線の一方又は両方で硬化させた際に前記樹脂からなる前記光散乱層中に気泡粒として生じる、請求項3に記載の光学基板の製造方法。
- 前記光散乱壁を、透光性樹脂を塗布した後にパターニングして、前記光散乱層の厚さの50%以上90%以下の高さに形成する、請求項3又は4に記載の光学基板の製造方法。
- 透光性基板と、該透光性基板上に設けられた複数の光散乱壁と、前記透光性基板上に設けられるとともに前記光散乱壁を覆い、光散乱粒を複数有する、熱及び活性エネルギー線の一方又は両方で硬化する樹脂を硬化させて形成される樹脂からなる光散乱層と、該光散乱層上に設けられた発光体とを有する発光表示装置であって、
前記光散乱粒が気泡粒であり
前記光散乱壁の屈折率が、前記光散乱層の屈折率よりも小さく、
前記光散乱粒内の屈折率が、該光散乱粒以外の前記光散乱層の屈折率よりも小さい、ことを特徴とする発光表示装置。 - 前記発光体が、前記光散乱層上に設けられた透明な第1電極と、該第1電極上に設けられた有機EL層と、該有機EL層上に設けられた第2電極とを有する、請求項6に記載の発光表示装置。
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