JP5917329B2 - 蒸気タービンのシール構造 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、蒸気タービンのシール構造に関する。
ボイラー等の上流機器から蒸気タービンに送られてくる蒸気には固体粒子が混じっており、この固体粒子によって、タービン通路部の構成部材が浸食される現象は従来からよく知られている。浸食の原因となる固体粒子は、ボイラーや再加熱器およびそれらの配管に由来するものであるといわれている。その浸食の程度は、一般的に高圧タービンや中圧タービンの前方段落で顕著であるが、固体粒子の大きさ及びその量によっては、タービンの後流段に浸食が及ぶ場合もある。
ここで、図7は、蒸気タービンにおける従来の代表的なシール構造を示す。図7において、ノズル2は蒸気を動翼1に流入させ、動翼1は、その蒸気によって回転する。さらにノズル外輪3はノズル2を蒸気タービンのケーシングに取り付ける構造体であるノズルダイヤフラムを構成している。
ノズル外輪3の内周面には、動翼1の先端とノズル外輪3の内周面の隙間から漏れ出る蒸気をせき止めるための複数枚のノズル外輪シールフィン4がコーキング等により取り付けられている。
図中、矢印30は、蒸気といっしょに流入してくる固体粒子20の挙動を示している。ノズル2を出た蒸気流は、旋回成分を持っているため、外周側に偏向して流れる傾向がある。このような蒸気の流れに乗っている固体粒子20も旋回成分を持っている上に、遠心力を受けて外周方向に向かう。外周方向に偏向した固体粒子20は、図7に示されるように、ノズル外輪3の内周面に衝突するだけでなく、一部の固体粒子20はノズル外輪シールフィン4と動翼カバー部5の間の隙間に侵入することになる。
一般に、ノズル外輪シールフィン4は、動翼1と接触して生じる摩耗などの悪影響を低減するために、動翼1の本体よりも硬度の低い材料が用いられている。このため、ノズル外輪シールフィン4は固体粒子20によって浸食され易い。このような浸食が進行していくと、ノズル外輪シールフィン4と動翼カバー部5との間隙が広がる。さらには、ノズル外輪シールフィン4を固定しているコーキング部材が浸食され、ノズル外輪シールフィン4が脱落するに至ることがある。このような浸食は、高圧/中圧タービンの入口段落にとどまらず、後流段落にも及ぶこともある。
蒸気タービンにおいて、固体粒子20によるノズル外輪シールフィン4などの浸食を防止するための従来技術としては、例えば、隣り合うタービン段の間に、蒸気から固体粒子を除去する周方向収集経路を設けることが提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2011−112054号公報
固体粒子20による浸食が、回転部である動翼1と静止部であるノズル外輪3との隙間をシールするノズル外輪シールフィン4まで及ぶと、ノズル外輪シールフィン4とノズル外輪3の間の間隙が増大し、蒸気の漏出が増大する。ノズル外輪シールフィン4の浸食がさらに進行すると、シールフィンの脱落という事態まで引き起こされることが懸念される。このような事態に至ると、タービン性能は著しく低下し、電力の安定供給に重大な影響を与えることになる。
そこで、本発明の目的は、蒸気に混じって流入した固体粒子によるノズル外輪シールフィンなどの部材の損傷を確実に防止することができるようにする蒸気タービンのシール構造を提供することにある。
前記の目的を達成するために、本発明は、ロータとともに回転する複数枚の動翼の先端と、ノズル外輪の内周面との間に形成される蒸気漏出部をシールする蒸気タービンのシール構造であって、前記動翼の先端に形成され前記動翼と一体構造の動翼カバー部と、前記動翼カバー部に形成され前記ノズル外輪の内周部との間に隙間を形成する複数のシールフィンと、前記ノズル外輪の内周部に形成され、前記蒸気漏出部の入口に開口し蒸気に混じって流入してくる固体粒子を捕集する円環状の固体粒子捕集空間と、を有し、前記固体粒子捕集空間から蒸気タービンの後流段落側に前記固体粒子を排出する貫通孔を前記ノズル外輪に形成し、前記蒸気漏出部の入口において前記動翼カバー部と前記ノズル外輪との間に形成される隙間の前記ロータ軸方向の寸法(A)よりも、前記固体粒子捕集空間の前記ロータ軸方向の幅寸法(B)が大きく設定され、かつ前記シールフィンの先端との間で隙間を形成する前記ノズル外輪の内周部の対向面よりも、前記固体粒子捕集空間を形成する部分のノズル外輪の内周面が前記ロータの半径方向外側に位置するように設定されたことを特徴とするものである。
本発明の第1の実施形態による蒸気タービンのシール構造を示す縦断面図である。 本発明の第2の実施形態による蒸気タービンのシール構造を示す縦断面図である。 本発明の第3の実施形態による蒸気タービンのシール構造を示す縦断面図である。 図2の蒸気タービンのシール構造において、タービン軸が伸びたときのシール構造を示す縦断面図である。 本発明の第4の実施形態による蒸気タービンのシール構造において、動翼の内部にある蒸気通路部を蒸気の流れ方向上流側から下流側に向かって見たときに、蒸気通路部と貫通孔の配置位置との位置関係を示す模式図である。 本発明の第5の実施形態による蒸気タービンのシール構造を示す縦断面図である。 従来の蒸気タービンのシール構造を示す縦断面図である。
以下、本発明による蒸気タービンのシール構造の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態による蒸気タービンのシール構造を示す。図1において、動翼1は、蒸気によって図示しないロータとともに回転し、複数枚のタービン段落を構成している。また、ノズル2は、蒸気を動翼1に向けて流入させる。さらに、ノズル外輪3は、ノズル2をタービンのケーシングに固定するための構造体であるノズルダイヤフラムを構成している。図1において、白抜きの矢印で示されているのが、動翼1を回転させる仕事を行う蒸気の流れの方向である。
動翼1の先端には、動翼1本体と一体的に動翼カバー部5がロータの周方向に形成されている。通常、動翼カバー部5の外周部とノズル外輪3の内周部との間には隙間があり、ここが蒸気漏出部16となっている。この蒸気漏出部16の隙間から漏出する蒸気量が増えると、蒸気タービンの効率を低下させる原因となる。
そこで、この実施形態では、動翼カバー部5の外周部には、動翼1から半径方向に突き出ている複数枚のシールフィン6が動翼1の周方向に一体的に形成されている。そして、ノズル外輪3の内周面であるシールフィン対向面7とシールフィン6の先端との間には、動翼1が回転したときにシールフィン6が当たって損傷しないように、所定の僅かな隙間が設定されている。
この実施形態では、複数枚あるシールフィン6は、一定の高さでなく、相対的に高いシールフィン6と低いシールフィン6とが交互に配列するようになっている。このうち、高い方のシールフィン6はシールフィン対向面7に向き合い、低い方のシールフィン6は段部9に向き合っている。このようにして、ノズル外輪3の内周面に段部9を設け、シールフィン6の高さを互い違いにすることによって、蒸気漏出部16における抵抗を大きくして蒸気の漏出量をできるだけ減少させている。
なお、この実施形態では、シールフィン6は、動翼カバー部5と一体的構造のシールフィンとして構成されている。これにより、シールフィン6をノズル外輪3の内周面に設ける場合と異なり、シールフィン6を硬度の高い材料から構成できるので、結果的に、シールフィン6の耐浸食性を高めることができる。また、シールフィン6については、焼き入れや窒化処理などの表面硬化処理によって、表面の硬度を高めておくことが好ましい。特に、蒸気漏出部16の入口側にあるシールフィン6に表面硬化処理を施すと効果的である。
次に、図1において、実線で示す矢印30は、蒸気に混じって動翼1に向かって流入してくる固体粒子20の挙動を示している。ノズル2を出た蒸気流は、旋回成分をもっている。この蒸気流に含まれる固体粒子20の速度も旋回成分を有している。これに加えて固体粒子20には遠心力の作用が働き、固体粒子20は動翼1の外周方向に向かう傾向がある。
外周方向に偏向した固体粒子20は、ノズル外輪3の内周面に衝突するだけでなく、はね返った固体粒子20がシールフィン6の並んでいる蒸気漏出部16に侵入する可能性がある。
そこで、動翼カバー部5とノズル外輪3の内周部との間にできる蒸気漏出部16への入口側には、次のような粒子捕集空間8が円環状に形成されている。
図1において、ノズル外輪3の内周部には、粒子捕集空間8を区画する面として、図示しないロータの半径方向(以下、半径方向とはロータの半径方向を指す)と平行な側面10a、10bと、ロータの軸を中心とする円の円周方向(以下、円周方向とはロータの軸を中心とする円周方向を指す)に延びる周面11と、が形成されている。ここで、蒸気漏出部16への入口15において上流側の方の側面10bと動翼カバー部5との間で一番狭くなっている隙間のロータの軸方向(以下、軸方向とはロータの軸方向を指す)の寸法をA、粒子捕集空間8の軸方向の幅寸法をBとすると、A<Bの関係があり、蒸気漏出部16への入口15から半径方向外側に向かっていくと、軸方向に幅寸法Bの広がった円環状の粒子捕集空間8に通じるようになっている。また、粒子捕集空間8の半径方向の深さについては、ノズル外輪3の内周部にあるシール対向面7と、粒子捕集空間8を形成している部分のノズル外輪3の周面11との関係で定義され、周面11の方が半径方向のより外側に位置するように、粒子捕集空間8の深さが設定されている。
さらに、ノズル外輪3には、粒子捕集空間8を形成している下流側の側面10aに入口13が開口している貫通孔12が軸方向に延びるように形成されており、この貫通孔12の出口14は、ノズル外輪3の下流側の端面に開口するようになっている。なお、この貫通孔12は、ノズル外輪3に円周方向に間隔をおいて複数配列するようにしてもよい。
本実施形態による蒸気タービンのシール構造は、以上のように構成されるものであり、次に、その作用並びに効果について説明する。
図1において、ノズル2から動翼1に蒸気に混じって流入してくる固体粒子20は、旋回速度成分をもっている上に遠心力も作用するため、固体粒子20の一部は矢印30で示すように、動翼1の外周側に偏向して流れる。
粒子捕集空間8の軸方向の幅寸法Bは、側面10bと動翼カバー部5の間で狭くなった隙間の軸方向の寸法Aよりも広がっており、さらに周面11はシールフィン対向面7よりも半径方向外側に設定されて半径方向へ奥行きが延びている。このような粒子捕集空間8の構造により、半径方向に偏向した固体粒子20は、まず粒子捕集空間8に導かれる。そして、側面10aや周面11に衝突した際に運動エネルギーを失った固体粒子20は、粒子補足空間8に捕集される。また、側面10a、10bや周面11に衝突してはね返った一部の固体粒子20は動翼1の蒸気通路部22に流れ込む蒸気に流入する。
このようにして、半径方向外側に深さを増した奥行きのある粒子捕集空間8を蒸気漏出部16の入口側に配置することにより、偏向した固体粒子20が動翼カバー部5のシールフィン6に直接衝突する可能性を格段に低くすることが可能になる。その結果、個体粒子20の浸食によるシールフィン6の先端とシール対向面7や段部9との間の隙間の拡大を未然に防止することができる。
さらに、粒子捕集空間8に捕集された固体粒子20は、後流段落の蒸気タービン側に連通している、ノズル外輪3の貫通孔12を通って、後流段落側に導出されることになる。この場合、動翼1の前後では圧力差が生じており、貫通孔12の入口13側に較べて出口14側の圧力が低いことから、この圧力差によって、粒子捕集空間8に捕集された固体粒子20の貫通孔12を通じての導出は促進されることになる。この結果、粒子捕集空間8に捕集された固体粒子20の一部がシールフィン6と、フィン対向面7や段部9との間の隙間から蒸気漏出部16に入り込み難くなり、シールフィン6やフィン対向面7が浸食されるのを未然に防止することができる。
しかも、固体粒子20は、貫通孔12の壁面に衝突を繰り返しながら通り抜けるため、貫通孔12の出口14から排出される段階では、その粒子径は流入時に較べて小さくなる。貫通孔12から抜けた後、仮に、後段の蒸気タービンに流入したとしてもシールフィン6にダメージを与える影響は少なくなる。
もっとも、固体粒子20によるシールフィン6の浸食量の程度は、その粒子径に依存する。固体粒子20の粒子径が大きいほど、浸食量は大きいと考えられる。したがって、粒径の大きな固体粒子20が蒸気に混入することがあらかじめ想定される場合には、複数段落の蒸気タービンに本実施形態のシール構造を適用することが好ましい。
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態による蒸気タービンのシール構造について、図2を参照しながら説明する。図2において、図1の実施形態と同一の構成要素には同一の参照番号を付してその詳細な説明は省略する。
上述した第1実施形態では、粒子捕集空間8に捕集された固体粒子20を排出する貫通孔12は、ロータの軸方向に延びているのに対して、この第2実施形態は、貫通孔12の延びる方向がロータの軸方向と所定の角度をなすようにした実施の形態である。
図2において、貫通孔12の出口14は、入口13の位置よりもロータの半径方向外側に偏位した位置に開口しており、これにより、貫通孔12は、ロータの軸方向と所定の角度αをなして上記半径方向の外側に向かって傾斜して延びるように構成されている。
固体粒子20は、ノズル2の出口での蒸気流の影響を受けて旋回速度成分を有しており、それに起因する遠心力を受けて、ノズル外輪3の外周側に向かっていく速度成分をもっている。したがって、固体粒子20は、ロータの軸方向と所定の角度αで上記半径方向に傾斜した貫通孔12を流れ易くなる。したがって、固体粒子20は粒子捕集空間8内に滞留することなく、より円滑に後段の蒸気タービン側に排出させることが可能になる。
なお、貫通孔12の傾斜する方向については、図2に示した角度αに加えて、ロータの円周方向に傾斜する角度を付け加え、貫通孔12の延びる方向を固体粒子20の旋回速度成分の方向により近づけるようにしてもよい。
第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態による蒸気タービンのシール構造について、図3を参照して説明する。なお、図3において、図2の実施形態と同一の構成要素には同一の参照番号を付してその詳細な説明は省略する。
上述した第1実施形態及び第2実施形態は、粒子捕集空間8の幅寸法Bが、蒸気漏出部16への入口15における動翼カバー部5と側面10bとの間の隙間の寸法Aよりも広がっている構成とした実施形態である。
長大な蒸気タービンの場合には、熱によるタービン軸の伸びが大きく、その伸びにしたがって動翼1の位置が変化することがある。
例えば、図4に示すような位置まで、動翼1の位置が変化した場合、粒子捕集空間8への入口15を形成している間隙の寸法Aが粒子捕集空間8の幅寸法Bよりも大きくなってしまうことがありうる。この結果、粒子捕集空間8で捕集しきれない固体粒子20の一部が動翼カバー部5とノズル外輪3の間の蒸気漏出部16に侵入し、シールフィン6に衝突する可能性がある。
そこで、動翼カバー部5と粒子捕集空間8との相対的な位置関係を図3に示されるように設定すればよい。すなわち、粒子捕集空間8を形成する側面10a、10bのうち、蒸気流れ方向下流側の側面10aの位置を、タービン運転時に想定される動翼カバー部5との相対位置よりも、タービン軸の伸び量を見込んだ距離δだけその軸方向に蒸気下流側にずらしている。
このような粒子捕集空間8と動翼カバー部5との相対的な位置関係を設定することにより、固体粒子20がシールフィン6に衝突する確率を大幅に低くし、粒子捕集空間8で確実に捕集されるようにすることができる。
第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態による蒸気タービンのシール構造について、図5を参照して説明する。なお、図5において、図1乃至図3の実施形態と同一の構成要素には同一の参照番号を付してその詳細な説明は省略する。
ここで、図5は、動翼1の内部にある蒸気通路部22を蒸気の流れ方向上流側から下流側に向かって見たときに、蒸気通路部22と貫通孔12の配置位置との位置関係を示す模式図である。
この第4実施形態は、複数、この場合4つの貫通孔12a乃至12dをノズル外輪3にその周方向に配列している。この実施形態では、貫通孔12a、12cは、ロータ32の中心を通る鉛直な線上に位置している。貫通孔12b、12dは、ロータ32の中心を通る水平な線上の若干下側に位置しているが、これに限定されるものではない。
これらの貫通孔12a乃至12dのうち、少なくとも一つの貫通孔12cの位置は、図5に示すように、動翼1内部の蒸気通路部22の底部よりも下位の位置に配置されている。なお、図5に示す例は、4つの貫通孔12a乃至12dを設けているが、貫通孔の数は、4つに限らず、4つ以上でもよいし、2つあるいは3つでもよい。また、蒸気通路部22の底部よりも下位の位置に配置される貫通孔の数は複数でもよい。
動翼カバー部5に配列しているシールフィン6を浸食する主な原因には、第1乃至第3実施形態で説明した固体粒子20以外にも、蒸気タービンの停止中に蒸気が凝縮してできる水がある。回転を停止している動翼1内部の蒸気通路部22に水が滞留したままであると、この水がシールフィン6を腐食させる原因になる。
この第4実施形態では、複数ある貫通孔12a乃至12dのうち、動翼1内部の蒸気通路部22の底部よりも下位に配置されている貫通孔12cがあるので、動翼1内部で凝縮した水は、蒸気通路部22に滞留することなく、粒子捕集空間8から下位の貫通孔12dに排出されるので、シールフィン6の腐食を防止することができる。
第5実施形態
次に、図6は、本発明の第5実施形態による蒸気タービンのシール構造を示す。なお、この図6において、図2の実施形態と同一の構成要素には同一の参照番号を付してその詳細な説明は省略する。
この第5実施形態は、固体粒子20を捕集する粒子捕集空間8をその入口に較べて奥が広がっている2段構造の環状空間とした実施の形態である。
図6において、粒子捕集空間8は、入口側にある円環状の第1捕集空間17と、この第1捕集空間17からロータの半径方向外側に向かって連続する空間をなす円環状の第2捕集空間18とから構成されている。
第1捕集空間17では、側面10bと動翼カバー部5との間で一番狭くなっている隙間の寸法をA、第1捕集空間17の幅寸法をBとすると、A<Bの関係があり、第1捕集空間16は、蒸気漏出部16への入口15での隙間よりもロータの軸方向に幅の広い円環状の溝になっている。
第1捕集空間17は、より広がった幅寸法Cを有し容積の大きな第2捕集空間18に連続している。この第2捕集空間18を形成している周面19は、ノズル外輪3の内周部にあるシール対向面7との関係で、周面19の方がロータ半径方向のより外側に位置するように、粒子捕集空間8全体の深さが設定されている点は、第1乃至第4実施形態と同様である。
ノズル外輪3には、第1乃至第4実施形態と同様に、複数の貫通孔12が形成されている。この貫通孔12の入口13は、第2捕集空間18に開口しており、貫通孔12の出口14は、ノズル外輪3の下流側の端面に開口するようになっている。このような貫通孔12は、第2実施形態と同様に、ロータの軸方向と角度αをなして外周側に傾斜して延びるように構成されている。また、ロータの円周方向に傾斜する角度を付け加えるようにしてもよい。
次に、以上のように構成される第5実施形態の作用について説明する。
ロータの半径方向外側に偏向して流入した固体粒子20は、図6に示されるように、動翼カバー部5のシールフィン6の配列している蒸気漏出部16には流入せずに、第1捕集空間17に導かれる。
第1捕集空間17において、側面10aと側面10bとの間の幅寸法Bが、入口15において側面10bと動翼カバー部5との間の一番狭い隙間の寸法Aよりも広がっていることから、偏向した固体粒子20は、第1捕集空間17に導かれてから、側面10aに衝突して第2捕集空間18に流入し、あるいは直接第2捕集空間18に流入する。
第2捕集空間18は、第1捕集空間17に較べて格段に大きな容積をもつ空間になっているので、第2捕集空間18に流入したとたんに固体粒子20は減速させられ、第2捕集空間18に捕集され易くなる。
さらに、動翼1前後の圧力差により、貫通孔12の入口13側に較べて出口14側での圧力が低いことから、この圧力差は、第2捕集空間18に捕集された固体粒子20の貫通孔12を通じての排出を促進させることになる。この結果、第2捕集空間18に溜まった固体粒子20の一部が、再びシールフィン6とフィン対向面7や段部9との間の隙間から蒸気漏出部16に入り込んでシールフィン6を浸食するのを未然に防止することができる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態の蒸気タービンのシール構造によれば、半径方向外側に深さを増した奥行きのある粒子捕集空間8を蒸気漏出部16の入口側に配置することにより、蒸気に混じって流入した固体粒子20によるノズル外輪シールフィン6の損傷を確実に防止することが可能になる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例示として挙げたもので、発明の範囲の制限を意図するものではない。もちろん、明細書に記載された新規な装置、方法およびシステムは、様々な形態で実施され得るものであり、さらに、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の省略、置換、変更が可能である。請求項およびそれらの均等物の範囲は、発明の主旨の範囲内で実施形態あるいはその改良物をカバーすることを意図している。
1…動翼、2…ノズル、3…ノズル外輪、5…動翼カバー部、6…シールフィン、7…シール対向面、8…粒子捕集空間、12…貫通孔、16…蒸気漏出部、20…固体粒子、22…蒸気通路部、

Claims (6)

  1. ロータとともに回転する複数枚の動翼の先端と、ノズル外輪の内周面との間に形成される蒸気漏出部をシールする蒸気タービンのシール構造であって、
    前記動翼の先端に形成され前記動翼と一体構造の動翼カバー部と、
    前記動翼カバー部に形成され前記ノズル外輪の内周部との間に隙間を形成する複数のシールフィンと、
    前記ノズル外輪の内周部に形成され、前記蒸気漏出部の入口に開口し蒸気に混じって流入してくる固体粒子を捕集する円環状の固体粒子捕集空間と、を有し、
    前記固体粒子捕集空間から蒸気タービンの後流段落側に前記固体粒子を排出する貫通孔を前記ノズル外輪に形成し、
    前記蒸気漏出部の入口において前記動翼カバー部と前記ノズル外輪との間に形成される隙間の前記ロータ軸方向の寸法(A)よりも、前記固体粒子捕集空間の前記ロータ軸方向の幅寸法(B)が大きく設定され、かつ前記シールフィンの先端との間で隙間を形成する前記ノズル外輪の内周部の対向面よりも、前記固体粒子捕集空間を形成する部分のノズル外輪の内周面が前記ロータの半径方向外側に位置するように設定されたことを特徴とする蒸気タービンのシール構造。
  2. ロータとともに回転する複数枚の動翼の先端と、ノズル外輪の内周面との間に形成される蒸気漏出部をシールする蒸気タービンのシール構造であって、
    前記動翼の先端に形成され前記動翼と一体構造の動翼カバー部と、
    前記動翼カバー部に形成され前記ノズル外輪の内周部との間に隙間を形成する複数のシールフィンと、
    前記ノズル外輪の内周部に形成され、前記蒸気漏出部の入口に開口し蒸気に混じって流入してくる固体粒子を捕集する円環状の固体粒子捕集空間と、を有し、
    前記固体粒子捕集空間から蒸気タービンの後流段落側に前記固体粒子を排出する貫通孔を前記ノズル外輪に形成し、
    前記固体粒子捕集空間は、前記蒸気漏出部の入口に開口し、かつ前記蒸気漏出部の入口において前記動翼カバー部と前記ノズル外輪との間に形成される隙間の前記ロータ軸方向の寸法(A)よりも、ロータ軸方向の幅寸法(B)が大きく設定された第1の捕集空間と、前記第1捕集空間からロータの半径方向外側に向かって連続する空間をなし前記貫通孔と連通する第2の捕集空間とからなり、前記第1捕集空間の容積よりも、前記第2捕集空間の容積の方が大きく設定された二段構造の捕集空間からなることを特徴とする蒸気タービンのシール構造。
  3. 前記固体粒子捕集空間を形成する蒸気流下流側の側面の位置を、タービン運転中のタービン軸の伸びを見込んだ距離だけ前記ロータの軸方向に前記動翼カバー部に対して蒸気下流側にずらしたことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気タービンのシール構造。
  4. 前記貫通孔の出口は、前記貫通孔の入口よりも前記ロータの半径方向外側に偏位した位置に開口し、前記貫通孔は、前記ロータの軸方向と所定の角度をなして傾斜して延びるようにしたことを特徴とする請求項1または2のいずれかの項に記載の蒸気タービンのシール構造。
  5. 前記貫通孔は、前記ノズル外輪の周方向に複数配列され、そのうち少なくとも1つの貫通孔が前記動翼内部の蒸気通路部の底よりも下位に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気タービンのシール構造。
  6. 蒸気タービンを構成する複数のタービン段落のうち、少なくとも一つのタービン段落が請求項1乃至のいずれかの項に記載されたシール構造を有することを特徴とする蒸気タービン。
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