JP5917139B2 - ダイヤモンド膜の研磨方法および装置 - Google Patents
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Description
本明細書において「炭素と反応しやすい金属」とは、文字通り炭素と反応しやすい金属のことをいう。そのような金属として、たとえば、ステンレス鋼の主成分であるFeのほか、Ti,Ba,Mg,Ca,V,Mn,Co,Ni,Y,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W,Al,Siなどの金属がある。「炭素と易反応性の金属」と言われることもある。ブラシ工具として使用可能な限りその工具形状に制限はないが、たとえば、ブラシ毛が放射方向に延びる平型やカップを逆さにした形状のカップ型などがある。
請求項1記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨方法(以下、適宜「請求項1の膜研磨方法」という)は、Fe、Ti、Ba、Mg、Ca、V、Mn、Co、Ni、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Al、Siの金属を単独もしくは複合で用いた金属製ブラシ毛を束ねてなるブラシの当該ブラシ毛を当接させ、当該ブラシ工具を回転させることによってダイヤモンド膜の研磨を行うダイヤモンド膜研磨方法である。請求項1の膜研磨方法の最大の特徴は、少なくとも当該ブラシ毛に対し熱風を噴射する点にある。熱風の噴射は、ブラシ毛以外の部位・部材に対して行われてもよい。
請求項2記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨方法(以下、適宜「請求項2の膜研磨方法」という)は、請求項1の膜研磨方法であって、前記熱風の噴射方向と、回転する前記ブラシ工具が前記熱風を巻き込む方向(回転方向と順方向)と、を一致させることを特徴とする。
請求項3記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨方法(以下、適宜「請求項3の膜研磨方法」という)は、請求項1または2の膜研磨方法であって、前記熱風の噴射を、前記ダイヤモンド膜の研磨面に対し併せて行うことを特徴とする。ダイヤモンド膜の研磨面に噴射される熱風は、ブラシ工具に向けて噴射された熱風の一部であってもよいし、ブラシ工具に向けた熱風とは別の熱風であってもよい。さらに、上記した一部の熱風と別の熱風の同時噴射であってもよい。
請求項4記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨方法(以下、適宜「請求項4の膜研磨方法」という)は、請求項1ないし3いずれかの膜研磨方法であって、前記ブラシ毛の当接圧力を高めるために、ダイヤモンド膜表面と前記ブラシ工具との間の距離を縮める方向に付勢力を付与することを特徴とする。
請求項5記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨方法(以下、適宜「請求項5の膜研磨方法」という)は、請求項1ないし4いずれかの膜研磨方法であって、前記ブラシ工具は、ステンレス鋼製ブラシ毛を放射状に束ねてなる平型ブラシであることを特徴とする。
請求項6記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨装置(以下、適宜「請求項6の膜研磨装置」という)は、一部または全部がダイヤモンド膜で被覆されたワークの当該ダイヤモンド膜の研磨を行うためのダイヤモンド膜研磨装置である。請求項6の膜研磨装置の特徴は、ワークを保持するためのテーブルと、Fe、Ti、Ba、Mg、Ca、V、Mn、Co、Ni、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Al、Siの金属を単独もしくは複合で用いたブラシ毛を束ねてなるブラシ工具と、当該ブラシ工具のブラシ毛がダイヤモンド面に当接する位置で当該ブラシ工具を回転させる回転機構と、少なくとも当該ブラシ毛に対し熱風を噴射するための熱風噴射機構と、を備える点にある。熱風噴射機構による熱風の噴射は、ブラシ毛以外の部位・部材に対して行われてもよい。
請求項7記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨装置(以下、適宜「請求項7の膜研磨装置」という)は、請求項6の膜研磨装置であって、前記熱風噴射機構は、前記熱風の噴射方向と、回転する前記ブラシ工具が前記熱風を巻き込む方向(回転方向と順方向)と、が一致するように配してあることを特徴とする。
請求項8記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨装置(以下、適宜「請求項8の膜研磨装置」という)は、請求項6または7の膜研磨装置であって、前記熱風噴射機構は、前記熱風の噴射を、前記ダイヤモンド膜の研磨面に対し併せて行うように構成してあることを特徴とする。ダイヤモンド膜の研磨面に噴射される熱風は、ブラシ工具に向けて上記熱風噴射機構から噴射された熱風の一部であってもよいし、ブラシ工具に向けた上記熱風噴射機構から噴射された熱風とは別の熱風噴射機構によって噴射された熱風であってもよい。さらに、上記した熱風噴射機構により噴射された熱風の一部と、別の熱風噴射機構から噴射された別の熱風の同時噴射であってもよい。
請求項9記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨装置(以下、適宜「請求項9の膜研磨装置」という)は、請求項6ないし8いずれかの膜研磨装置であって、前記テーブルおよび/または前記回転機構には、可動構造を設けてあり、当該可動構造は、前記テーブルおよび/または前記回転機構を互いに近接離反するように構成してあり、当該テーブルおよび/または前記回転機構を、互いに近接する方向に付勢する付勢機構を設けてあることを特徴とする。
請求項10記載の発明に係るダイヤモンド膜研磨装置(以下、適宜「請求項10の膜研磨装置」という)は、請求項6ないし8いずれかの膜研磨装置であって、前記ブラシ工具は、ステンレス鋼製ブラシ毛を放射状に束ねてなる平型ブラシであることを特徴とする。
各図を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について説明する。まず、図1および2を参照しながら、ダイヤモンド膜研磨方法に使用するダイヤモンド膜研磨装置(以下、単に「膜研磨装置」という)について説明する。膜研磨装置1は、ベース部2と、テーブル3と、ブラシ工具5と、回転機構7と、熱風噴射機構9(図2)と、可動構造11と、付勢機構13と、により概略構成してある。ベース部2は、床Fの上に設置されるベース基部2aと、ベース基部2aの一端から起立する起立部2bとから概略構成してある。テーブル3は、ワークWを研磨に適した状態で保持する機能を有している。ワークWは、被研磨体である。ワークWの表面の一部(全部でもよい)には、ダイヤモンド膜が形成されている。ダイヤモンド膜の表面は、研磨面Wdを構成する。ワークWの素材に限定はないが、本実施形態におけるワークWは、金型である。後述するように、膜研磨装置1は、平面研磨だけでなく、金型のように複雑形状をもった研磨面の研磨に優れた効果を発揮する。なお、ダイヤモンド膜の形成方法として、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)がある。
図1および2が示すように、ブラシ工具5は、多数のブラシ毛5hを束ねてなる、いわゆる平型のブラシ工具である。ブラシ工具5は、中心となる結束部5aを備える。上記ブラシ毛5hは、この結束部5aを中心に放射状に延びている。ブラシ毛5hは、ステンレス鋼製である。ステンレス鋼製のブラシ毛5hを採用したのは、炭素と反応しやすい金属であるからである。その上、ステンレス鋼製ブラシは、安価で入手容易な市販品をそのまま流用できるからである。本実施形態では、トラスコ中山株式会社製のステンレス平型ブラシ(品番:233H-4 商標)を採用した。ブラシ工具は、平型以外の形状(たとえば、カップ型)を採用することを妨げない。ワークW(研磨面Wd)の形状その他の研磨環境に適した形状のブラシ工具を選択するとよい。さらに、ステンレス鋼の主成分であるFeのほか、Ti,Ba,Mg,Ca,V,Mn,Co,Ni,Y,Zr,Nb,Mo,Hf,Ta,W,Al,Siなどの金属を単独もしくは複合で用いたブラシ毛を使用することができる。結束部5aの上面には、回転軸5bの下端が固定してある。回転軸5bと結束部5aとブラシ毛5hは、一体化している。なお、結束部5aから見たブラシ毛5hのそれぞれの長さは、同じでもよいし、違いがあってもよい。また、ブラシ毛5hの強度(張り)を保つために、ブラシ毛5hを波打たせるなどの加工を施してもよい。
回転機構7は、電動モータ(図示せず)を内蔵した機構本体7aと、機構本体7aによって回転されるチャック7bとにより構成してある。回転機構7は、図外の固定機構によって保持された固定式である。作業者が手で持てるような回転機構、たとえばマイクログラインダーのようなものを、回転機構7として用いてもよい。チャック7bは、ブラシ工具5の回転軸5bの開放端を解放可能に把持する機能を有する。チャック7bに把持された回転軸5bは、機構本体7aの回転作用によりチャック7bとともに回転する。回転軸5bの回転により、結束部5aとブラシ毛5hが一体回転する(図2)。回転軸5bの回転数は、ブラシ毛5hの材質、硬さ、太さ、材質、さらに、研磨面Wdの状態、加えて、ブラシ毛5hの研磨面Wd、さらに加えてブラシ毛5hや研磨面Wdの温度環境などを総合的に勘案して最適な回転数に設定する。本実施形態における回転軸5bの回転数は、20000〜40000rpmの範囲で適宜設定した。
図2に示す熱風噴射機構9は、噴射機構本体9aと、ノズル9bと、から構成してある。噴射機構本体9aは、熱風を作り出すためのファンとヒーター(いずれも図示を省略)を内蔵している。噴射機構本体9aによって作られた熱風Ahは、ノズル9bの先端から噴射される。熱風Ahの温度や風量は、研磨に適したものに設定するとよい。本実施形態における噴射機構9は、たとえば、少なくとも最高600℃程度の熱風を噴射できるように設定してある。熱風噴射機構9の設置は、回転するブラシ毛5hおよびダイヤモンド膜の研磨面Wdに対し、熱風Ahを同時に噴射できるように行う。熱風Ahの噴射は少なくともブラシ毛5hに対してだけ行うようにしてもよいが、ブラシ毛5hだけでなく研磨面Wdに対しても併せて噴射する方が、開始から短時間で所定温度にまで加熱することができるし、所定温度の保持を安定して行うことができる。所定温度を保つことは、ダイヤモンド膜の研磨面Wdの炭素とブラシ毛5hとの反応を有効に促進する。所定温度については、後述する実施例の中で述べる。なお、熱風Ahの噴射方向と、ブラシ毛5hが回転する方向(ブラシ工具5が熱風Ahを巻き込む方向(回転方向と順方向)と、が一致するようにノズル9bを配しておくことが好ましい。ノズル9bから噴射された熱風Ahが、ブラシ毛5h間の隙間に吸引され、ブラシ毛5h表面に追従しやすくなるからである。これにより、加熱効率をよくすることができる。
図1に示すように、テーブル3の下面側には、可動構造11を設けてある。可動構造11は、レール11aと複数の車輪11bとからなる。レール11aは、図1では1本が隠れて見えないが、2本が対になっている。車輪11bは、テーブル3の下面に回転自在に固定してあり、レール11aの上で長さ方向に往復転動するようになっている。これらの構造が、テーブル3(ワークW)がブラシ工具5に近接離反する方向に往復移動することを可能にする。起立部2bの上端には、滑車13aを回転自在に設けてある。滑車13aの回転方向は、テーブル3の移動方向と同一直線上となるように設定してある。符号13bは、ワイヤを示す。ワイヤ13bの一端はテーブル3に、他端はウェイト13cに固定してある。滑車13aは、ワイヤ13bを、長さ方向に移動可能に下方から支持する。ウェイト13cの荷重(矢印Ab方向)が滑車13aを介して図2の矢印Aa方向(ブラシ工具5に近接する方向)にテーブル3を引っ張ることになる。これをテーブル3から見れば、テーブル3は、ブラシ工具5(回転機構7)に対し近接する方向に付勢されていることになる。上記した滑車13a、ワイヤ13bおよびウェイト13cは、本実施形態における付勢機構を構成する。なお、本実施形態では、テーブル3側にのみ可動構造11を設けたが、テーブル3側に代えもしくはテーブル3側とともに回転機構7側にも可動構造(図示せず)を設けてもよい。回転機構7側に可動機構を設けた場合は、回転機構7に適した付勢機構を設けることが必要になる。なお、前述したように、作業員が回転機構を持っている場合は、その作業員が可動構造と付勢構造の機能を果たす。
次に、膜研磨装置1を使用した実施例について説明する。本実施例で使用したブラシ工具5は、先に説明したトラスコ中山株式会社製のステンレス(SUS304)平型ブラシ(品番:233H-4 商標)である。平型ブラシの外径はφ23mm、厚さは2mmである。ブラシ毛5hの径はφ0.1mm、ブラシ毛5hの数は約3000本である。高速仕様のスピンドル(ナカニシ製HES500,最高回転数50000rpm)を回転機構7とした。スピンドルの回転数を変えることでワイヤーブラシの周速度の調整を行うことができる。ワークWとして、超硬合金の試料(形状:直方体20mm×20mm×50mm,基材:超硬合金)を用いた。広い面を研磨する場合には研磨面Wdの形状に倣ってブラシ工具5に送りやピックフィードを与える必要があるが、今回はそれらを与えず、同一箇所を研磨し続けた。なお、この実験で熱風噴射機構9は使用していない。
上記実験により120min程度研磨することで研磨面Wdの凹凸を全て平滑化できることがわかった。しかし、ブラシ工具5による研磨をより実用的なものにするには、短時間で平滑化できることが望ましい。ところが、スピンドルの回転数の制約がある。このため、ブラシ工具5の周速度をこれ以上大幅に増大させることは難しい。また、ブラシ工具5に加えられる付勢力を増大することも難しい。ブラシ毛5hの折損を招く恐れがあるからである。これらの理由から、ブラシ毛5hと研磨面Wdとの接触により発生する摩擦熱のみにより両者接触部の温度を上昇させて研磨所要時間を大幅に短縮させることは難しいと考えられる。そこで、研磨所要時間の短縮の試みとして、摩擦熱に加え、熱風噴射機構9により熱風Ahを噴射して加熱する実験を行った。
2 ベース部
2a ベース基部
2b 起立部
3 テーブル
5 ブラシ工具
5a 結束部
5b 回転軸
5h ブラシ毛
7 回転機構
7a 機構本体
7b チャック
9 熱風噴射機構
11 可動構造
11a レール
11b 車輪
13 付勢機構
13a 滑車
13b ワイヤ
13c ウェイト
W ワーク
Wd ダイヤモンド面(研磨面)
Claims (10)
- Fe、Ti、Ba、Mg、Ca、V、Mn、Co、Ni、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Al、Siの金属を単独もしくは複合で用いた金属製ブラシ毛を束ねてなるブラシ工具の当該ブラシ毛を当接させ、当該ブラシ工具を回転させることによってダイヤモンド膜の研磨を行うダイヤモンド膜研磨方法であって、
少なくとも当該ブラシ毛に対し熱風を噴射する
ことを特徴とすることを特徴とするダイヤモンド膜研磨方法。 - 前記熱風の噴射方向と、回転する前記ブラシ工具が前記熱風を巻き込む方向と、を一致させる
ことを特徴とする請求項1記載のダイヤモンド膜研磨方法。 - 前記熱風の噴射を、前記ダイヤモンド膜の研磨面に対し併せて行う
ことを特徴とする請求項1または2記載のダイヤモンド膜研磨方法。 - 前記ブラシ毛の当接圧力を高めるために、ダイヤモンド膜表面と前記ブラシ工具との間の距離を縮める方向に付勢力を付与する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載のダイヤモンド膜研磨方法。 - 前記ブラシ工具は、ステンレス鋼製ブラシ毛を放射状に束ねてなる平型ブラシである
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載のダイヤモンド膜研磨方法。 - 一部または全部がダイヤモンド膜で被覆されたワークの当該ダイヤモンド膜の研磨を行うためのダイヤモンド膜研磨装置であって、
ワークを保持するためのテーブルと、
Fe、Ti、Ba、Mg、Ca、V、Mn、Co、Ni、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Al、Siの金属を単独もしくは複合で用いた金属よりなるブラシ毛を束ねてなるブラシ工具と、
当該ブラシ工具のブラシ毛がダイヤモンド面に当接する位置で当該ブラシ工具を回転させる回転機構と、
少なくとも当該ブラシ毛に対し熱風を噴射するための熱風噴射機構と、を備える
ことを特徴とするダイヤモンド膜研磨装置。 - 前記熱風噴射機構は、前記熱風の噴射方向と、回転する前記ブラシ工具が前記熱風を巻き込む方向と、が一致するように配してある
ことを特徴とする請求項6記載のダイヤモンド膜研磨装置。 - 前記熱風噴射機構は、前記熱風の噴射を、前記ダイヤモンド膜の研磨面に対し併せて行うように構成してある
ことを特徴とする請求項6または7記載のダイヤモンド膜研磨装置。 - 前記テーブルおよび/または前記回転機構には、可動構造を設けてあり、
当該可動構造は、前記テーブルおよび/または前記回転機構を互いに近接離反するように構成してあり、
当該テーブルおよび/または前記回転機構を、互いに近接する方向に付勢する付勢機構を設けてある
ことを特徴とする請求項6ないし8いずれか記載のダイヤモンド膜研磨装置。 - 前記ブラシ工具は、ステンレス鋼製ブラシ毛を放射状に束ねてなる平型ブラシである
ことを特徴とする請求項6ないし9いずれか記載のダイヤモンド膜研磨装置。
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