JP5916571B2 - メカニカルシール - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、石油精製、石油化学および製鉄化学等において200℃を越えるような高温液を扱う機器のシールに用いられるメカニカルシールに関し、詳細には、ベローズ及びバッフルスリーブを備えた高温用ベローズシール型式のメカニカルシールに関する。
従来、密封液が200℃を越えるような高温液において、冷却液によるフラッシングを行わないメカニカルシールとして、図8に示すような高温用ベローズシール型式のメカニカルシールが知られている(以下「従来技術」という。例えば、特許文献1参照。)。
図8に示される従来技術の高温用ベローズシール型式のメカニカルシールは、回転軸50とハウジング51との間に形成した軸封部53に装着されて、回転軸50とハウジング51との間をシールするメカニカルシールであって、ハウジング51側に取り付けられるカラー54と、カラー54に連結されるベローズ55と、ベローズ55に連結されるリテーナ56と、リテーナ56に嵌合されるシールリング57と、回転軸50側に取り付けられるメイティングリング58と、カラー54の内周側に所定の間隔をおいて設けられた筒状のバッフルスリーブ59を備えている。また、スチームクエンチをシールカバー60の供給孔64からメカニカルシールの静止側内周とバッフルスリーブ59外周とで形成された隙間を流路としてシール端面部に供給し、メカニカルシール部を冷却するとともに、シール端面からにじみ漏れした液を洗浄し、排出している。
そして、シールリング57端面の摺動トルクは、リテーナ56→ベローズ55→カラー54に伝わり、シールカバー60にボルト63で固定されたカラー54が受けている。シールリング57端面の潤滑状況の変化による円周方向の微振動(スティックスリップ)はリテーナ56→ベローズ55に伝搬する。この円周方向の微振動を抑えるために、シールカバー60にボルト63で固定されたバッフルスリーブ59がリテーナ56内周部まで伸びており、バッフルスリーブ59の外径とリテーナ最内径とを円周の部分的(多くは4等配)に微小隙間に絞ると共に、ベローズ55の内周面に当接して制振作用を有するダンパー61をバッフルスリーブ59の外周面に装着し、振動した際には、この微小隙間以上に振れないように制振作用を持たせている。
このようなメカニカルシールにおいて、通常、カラー54、ベローズ55及びリテーナ56は例えば溶接などで接合され、また、リテーナ56にカーボンなどの摺動材料で作られたシールリング57が密封的に焼嵌めまたは圧入され、これらの部材は、予め工場等において一体的に組み立てられている。
しかしながら、従来技術のメカニカルシールには、次のような問題があった。
シールカバー60に各種部材を装着する際、カラー54、ベローズ55、リテーナ56及びシールリング57(以下、「静止側シール部材」という。)はシールカバー60の機内側(被密封流体側)に装着されるようになっているのに対し、バッフルスリーブ59は断面形状がL字型の一体加工品であるため、シールカバー60の機外側(大気側)からしか装着できない。このため、静止側シール部材等とバッフルスリーブ59を予めプレアッセンブリすることができず、現地で組み立てざるを得なかった。また、その際、ベローズ55の内周面とバッフルスリーブ59の外面との間に装着されるダンパー61をバッフルスリーブ59に巻き付け、その後、ベローズ55を挿入するという困難な作業を現地で行わざるを得ないという問題があった。
WO 2010/113932号公報
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、静止側シール部材、バッフルスリーブ、及びダンパー等の関連部品を工場、サービスセンター等において確実かつ制御された状態でプレアッセンブリすることができ、現地工事における組立工程を少なくすることのできるメカニカルシールを提供することを目的としている。
上記目的を達成するため本発明のメカニカルシールは、第1に、ハウジングと回転軸との間に形成した軸封部に装着されて、ハウジングと回転軸との間をシールするメカニカルシールであって、シールリングと、該シールリングに対向摺接するメイティングリングとを具備し、前記シールリングおよび前記メイティングリングの一方がハウジングに装着されたシールカバーの機内側にベローズを介して支持され、他方が回転軸と共に回転するメカニカルシールにおいて、前記シールカバーの機外側において固定されて前記シールリングと前記メイティングリングとの摺動面にクエンチング流体を誘導する断面略L字状のバッフルスリーブを備え、前記バッフルスリーブはフランジ部と筒状部とが分割された構成であり、前記フランジ部は軸方向において機内側フランジ部と機外側フランジ部とに2分割され、前記機内側フランジ部と機外側フランジ部との間には離脱防止部材が挟着され、前記離脱防止部材の挟着された状態における内径側には前記筒状部に穿設された凹部又は孔に嵌合する舌部が延設されており、前記フランジ部の締結により前記離脱防止部材を介して前記フランジ部と筒状部とが離脱不能に固定されることを特徴としている。
この特徴によれば、工場、サービスセンターにおいて、カラー、ベローズ、リテーナ及びシールリングとバッフルスリーブの筒状部及びダンパー等の関連部品とを確実かつ制御された状態でプレアッセンブリすることができ、現地工事における部材の組立工程を省くことができる。このため、組み込み性が向上すると共に、現場作業でのミスを低減することができる。さらに、従来、断面略L字状の一体的なバッフルスリーブを丸棒からに削り出す場合、フランジ部の「外径×筒状部の長さ」の材料が必要であり、また、丸棒断面から略L字状に加工するためには、その大部分を削る必要があり、無駄が多かったが、本発明に係るバッフルスリーブは、フランジ部と筒状部とが別の材料から形成されるため、従来技術におけるような無駄を無くすことができる。さらに、本発明のメカニカルシールではシールカバーの機外側における設置スペースを従来技術に比べて著しく小さくできるため、省スペースでの組立が可能である。さらに、フランジ部をシールカバーに固定する際に締結すると、離脱防止部材を介してフランジ部と筒状部とが離脱不能に固定されるため、振動等の外乱にも十分に耐える機能を備えたバッフルスリーブを得ることができる。
また、本発明のメカニカルシールは、第2に、第1の特徴において、前記離脱防止部材の舌部はクサビ型に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、離脱防止部材が挟着されて圧縮変形された際、クサビ型の舌部は筒状部の孔に侵入するので、舌部を筒状部の孔に対して締まり勝手とすることができる。
また、本発明のメカニカルシールは、第3に、第1または第2の特徴において、前記離脱防止部材には、前記フランジ部を締結する締結部材の嵌入用の孔が穿設され、前記離脱防止部材は前記フランジ部の締結時に前記締結部材により前記フランジ部に挟着されることを特徴としている。
この特徴によれば、離脱防止部材はフランジ部の締結時に締結部材に嵌合した状態でフランジ部に挟着されるため、確実に圧縮変形され、筒状部の孔に対するクサビ型の舌部の侵入を確実なものとすることができる。
また、本発明のメカニカルシールは、第4に、第1ないし第3のいずれかの特徴において、前記機内側フランジ部及び前記機外側フランジ部の接合面には、それぞれ、前記離脱防止部材の着座用の凹部が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、離脱防止部材の装着が正確かつ容易であり、また、離脱防止部材の位置ずれを防止することができる。
また、本発明のメカニカルシールは、第5に、第1ないし第4のいずれかの特徴において、前記離脱防止部材は、金属、ゴムまたはプラスチックから形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、必要とされる離脱防止機能に応じた材料の選択ができる。
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)シールカバーの機外側において固定されてシールリングとメイティングリングとの摺動面にクエンチング流体を誘導する断面略L字状のバッフルスリーブを備え、バッフルスリーブはフランジ部と筒状部とが分割された構成であり、フランジ部は軸方向において機内側フランジ部と機外側フランジ部とに2分割され、機内側フランジ部と機外側フランジ部との間には離脱防止部材が挟着され、離脱防止部材の挟着された状態における内径側には筒状部に穿設された凹部又は孔に嵌合する舌部が延設されており、フランジ部の締結により離脱防止部材を介してフランジ部と筒状部とが離脱不能に固定されることにより、工場、サービスセンターにおいて、カラー、ベローズ、リテーナ及びシールリングとバッフルスリーブの筒状部及びダンパー等の関連部品とを確実かつ制御された状態でプレアッセンブリすることができ、現地工事における部材の組立工程を省くことができる。このため、組み込み性が向上すると共に、現場作業でのミスを低減することができる。さらに、従来、断面略L字状の一体的なバッフルスリーブを丸棒からに削り出す場合、フランジ部の「外径×筒状部の長さ」の材料が必要であり、また、丸棒断面から略L字状に加工するためには、その大部分を削る必要があり、無駄が多かったが、本発明に係るバッフルスリーブは、フランジ部と筒状部とが別の材料から形成されるため、従来技術におけるような無駄を無くすことができる。さらに、本発明のメカニカルシールではシールカバーの機外側における設置スペースを従来技術に比べて著しく小さくできるため、省スペースでの組立が可能である。さらに、フランジ部をシールカバーに固定する際に締結すると、離脱防止部材を介してフランジ部と筒状部とが離脱不能に固定されるため、振動等の外乱にも十分に耐える機能を備えたバッフルスリーブを得ることができる。
(2)離脱防止部材の舌部はクサビ型に形成されていることにより、離脱防止部材が挟着されて圧縮変形された際、クサビ型の舌部は筒状部の孔に侵入するので、舌部を筒状部の孔に対して締まり勝手とすることができる。
(3)離脱防止部材には、フランジ部を締結する締結部材の嵌入用の孔が穿設され、離脱防止部材はフランジ部の締結時に締結部材によりフランジ部に挟着されることにより、離脱防止部材はフランジ部の締結時にボルトに嵌合した状態でフランジ部に挟着されるため、確実に圧縮変形され、筒状部の孔に対するクサビ型の舌部の侵入を確実なものとすることができる。
(4)機内側フランジ部及び前記機外側フランジ部の接合面には、それぞれ、前記離脱防止部材の着座用の凹部が形成されていることにより、離脱防止部材の装着が正確かつ容易であり、また、離脱防止部材の位置ずれを防止することができる。
(5)離脱防止部材は、金属、ゴムまたはプラスチックから形成されることにより、必要とされる離脱防止機能に応じた材料の選択ができる。
本発明の実施形態に係るメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。 本発明の実施形態に係るメカニカルシールの他の例を示す縦断面図である。 本発明の実施形態に係るバッフルスリーブの要部を説明する図であって、(a)は縦断面図、(b)はA−A断面図である。 本発明の実施形態に係るバッフルスリーブの要部の斜視図である。 本発明に係るメカニカルシールと従来技術におけるメカニカルシールとの組立工程を対比して説明する説明図の一部である。 本発明に係るメカニカルシールと従来技術におけるメカニカルシールとの組立工程を対比して説明する説明図の一部である。 本発明に係るメカニカルシールと従来技術におけるメカニカルシールとの組立工程を対比して説明する説明図の一部である。 従来の高温用ベローズシール型式のメカニカルシールを示す縦断面図である。
本発明に係るメカニカルシールを実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
図1及び2を参照しながら、本発明の実施形態に係るメカニカルシールを説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るメカニカルシールの一例を示す縦断面図であり、図1において、参照符号1は、石油精製、石油化学および製鉄化学等において200℃を越えるような高温液、たとえば、石油精製プラントの減圧蒸留設備の熱油を扱う機器、例えば、ポンプ等における軸封部のハウジング、参照符号2はハウジング1にボルト等(図示省略)の固定手段により装着されるシールカバーである。また、図中左側が機内側、図中右側が機外側(大気側)である。
図1に示すメカニカルシールは、回転軸3とハウジング1との間に形成した軸封部4に装着されて、回転軸3とハウジング1との間をシールするメカニカルシールであって、シールカバー2の機内側に装着されたカラー6と、該カラー6に連結されるベローズ7と、該ベローズ7に連結されるリテーナ8と、該リテーナ8の端面に焼嵌めまたは圧入されたシールリング9と、回転軸3側に取り付けられるメイティングリング10とを備えている。
カラー6は、金属から形成される筒状をなすものであって、環状のガスケット15を介してシールカバー2の機内側に取り付けられている。
ベローズ7は、打抜き加工等によって波形環状に形成した金属製のダイアフラム板を複数枚一列に並べて、隣接するダイアフラム板の外径部間及び内径部間をガス溶接等によって交互に連結して、全体を蛇腹筒状に形成したものであって、一端がカラー6側にガス溶接等によって一体に連結されるようになっている。
リテーナ8は、金属から形成され筒状をなすものであって、ベローズ7の他端がガス溶接等によって一体に連結されるようになっている。リテーナ8の材料はベローズ7の材料と同一か、あるいは熱膨張係数がほぼ近似した異種材料からなっている。
通常、リテーナ8、ベローズ7およびカラー6を溶接により一体物として製作後、これらの全表面に特殊窒化クロムや窒化チタンなどの10μm以下の厚みの耐食・耐摩耗性のイオンプレーティングを均一に施工する。これにより、リテーナ8、ベローズ7およびカラー6の全表面が均一な耐食性をもつので、耐食性の低い材料で構成されていても、イオンプレーティングの耐食性が全体の耐食性となり、材料選定の制限が大幅に少なくなる。
シールリング9は、炭化珪素、カーボン、その他のセラミックス等から形成される筒状をなすものであって、メイティングリング10との摺動面において回転軸3の軸線に垂直なシール面16を形成している。
シールリング9は、リテーナ8の端面に焼嵌めまたは圧入されている。
シールリング9、リテーナ8、ベローズ7及びカラー6の内周側には所定の間隔をおいて筒状のバッフルスリーブ17が取り付けられ、このバッフルスリーブ17によってシールカバー2に設けられたクエンチング液供給孔35から供給されるクエンチング液がシール面16に確実に導かれるようになっている。バッフルスリーブ17は、ステンレスなどの硬い材料で製作されるか、硬質クロムメッキ、特殊窒化クロム、あるいは窒化チタンなどの10μm以下の厚みの耐食・耐摩耗性のイオンプレーティングが施されている。
リテーナ8の内周側には1個または複数個の切り欠き(図示省略)が設けられている。 一方、シールカバー2に固定されたバッフルスリーブ17の先端が、シールリング9のシール端面側の近くまで伸びて、リテーナ8の切り欠きと微小隙間を持って係合する雄型の歯部(図示省略)が形成され、リテーナ8の切り欠きとバッフルスリーブ17の歯部とが軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造18が形成されている。この構造により、シールリング9のシール端面の摺動トルクはバッフルスリーブ17が受けることになり、ベローズ7に摺動トルクが伝わらないため、シール面の潤滑不安定によりシールリング9のシール端面にスティックスリップが発生しても、ベローズ7がスティックスリップの影響を受けることがない。
バッフルスリーブ17の外周面とベローズ7の内周面との間に、ベローズ7に振動が起きた場合でもベローズ7の振れ止めを行うためのダンパー19が配設されている。ダンパー19はリング形状、例えば、帯状をしており、バッフルスリーブ17の外周面に形成された環状溝20に装着される。このため、ベローズの疲労を先延ばしにでき、耐久性を確保できる。また、ダンパー19の外周部及びリテーナ8の内周部には、1個または複数個の切り欠きが設けられ、クエンチング液供給孔35から供給されたクエンチング液をバッフルスリーブ17によってシール面16に誘導することができ、シール面16からの微小な漏れ液を洗浄排出することができる。
図2は、本発明の実施形態に係るメカニカルシールの他の例を示す縦断面図であり、リテーナ8の端面とシールリング9の端面とがラップジョイントをもって密封的に接触する点で図1に示すメカニカルシールと相違するがその他の構成は図1と同じであり、重複する説明は省略する。
図2に示すメカニカルシールは、回転軸3とハウジング1との間に形成した軸封部4に装着されて、回転軸3とハウジング1との間をシールするメカニカルシールであって、シールカバー2の機内側に装着されたカラー6と、該カラー6に連結されるベローズ7と、該ベローズ7に連結されるリテーナ11と、該リテーナ11端面とラップジョイントをもって密封的に接触するシールリング12と、回転軸3側に取り付けられるメイティングリング10とを備えている。
シールリング12は両端面にラッピング仕上げされたシール端面を持っており、シールリング12とリテーナ11とは分離した構造となっており、リテーナ11のシールリング12側端面もラッピング仕上げされたシール端面を持ち、両者の密封は、ラッピング面を合わせて密封するラップジョイント構造を採用している。シールリング12とリテーナ11とは分離した構造となっているため、高温雰囲気でもメイティングリング10と摺動するシールリング12のシール端面の平面度は、熱膨張差による影響を受けないので、密封性が保たれる。また、リテーナ11自体の圧力変形や熱変形にも影響されることがない。さらに、焼嵌めや圧入、その後の熱処理などの特殊工程の必要がなく、それに伴いジグ類も不要となるので、コスト低減および工数低減が図れる。また、シールリング12の交換が容易となる。
リテーナ11のシール側端面とシールリング12のシール端面とはベローズ7のばね荷重および流体圧による押し付け力で互いに密封的に接触するが、リテーナ11のシール端面は、シールリング12が回転しないので回転による摺動はしない、ほぼ静止の密封面である。
シールリング12の内周側に切り欠きを設け、バッフルスリーブ17の歯部とが軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造18が形成されている。
また、リテーナ11及びシールリング12の外周面において外径を部分的に縮径する環状の凹部14が形成され、この凹部14にリテーナ11とシールリング12との芯出しをするための芯出しケース13が装着されている。
図2に示すメカニカルシールは、シールリング12とリテーナ11とは分離した構造となっていること、シールリング12とリテーナ11との密封はラップジョイント構造となっていること、および、シールリング12とバッフルスリーブ17とは軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造となっていることから、シールリング12のシール端面の摺動トルクはバッフルスリーブ17が受けることになり、ベローズ7に摺動トルクが伝わらないため、シール面の潤滑不安定によりシールリング12のシール端面にスティックスリップが発生しても、ラップジョイント部で自在に滑ることにより、ベローズ7がスティックスリップの影響を受けることがない。
図1及び図2に示すメカニカルシール等に用いられるバッフルスリーブ17は、図3(a)に示すように、フランジ部21と筒状部22とから構成され、断面略L字状をなしており、フランジ部21と筒状部22とは分割された構成である。詳述すると、フランジ部21と筒状部22とは別部材からなり、フランジ部21の内周面23が筒状部22の基端の外周面24に嵌合するように形成されている。また、図1及び図2に示すように、フランジ部21はシールカバー2の機外側に設けられたフランジ部嵌合用の凹部33に嵌入され、ボルト34によりシールカバー2に固定されるように構成されている。
筒状部22の先端部にはリテーナ8の切り欠きと軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造18(図2に示すメカニカルシールにおいてはシールリング12の切り欠きと軸方向に可動可能に互いに噛み合うクラッチ構造18)が形成され、また、筒状部22の外周面にはベローズ7の内周面との間でベローズ7の振れ止めを行うためのダンパー19を配設するための環状溝20が形成されている。
また、図3(a)に示すように、バッフルスリーブ17のフランジ部21は軸方向において機内側フランジ部21−1と機外側フランジ部21−2に2分割され、ボルト孔32が周方向に複数設けられている。そして、機内側フランジ部21−1と機外側フランジ部21−2との分割面Cには離脱防止部材25が挟着されるようになっている。離脱防止部材25は、例えば、金属、ゴムまたはプラスチックから形成され、図3(b)に示すように、正面視において、例えば、虫メガネのフレームに似た形状をしている。
また、離脱防止部材25の挟着された状態における内径側には舌部26が延設されており、さらに、離脱防止部材25の挟着された状態における外径側にはフランジ部21を締結する締結部材であるボルト34の嵌入用の孔27が穿設されている。離脱防止部材25の舌部26は先端が細いクサビ型に形成されている。
一方、筒状部22の基端の外周面24の離脱防止部材25に対向する部分には離脱防止部材25の舌部26が嵌合するための孔28が穿設されている。図3では、舌部26が嵌合する部分には孔28が穿設されているが、これに限らず、凹部でもよい。
機内側フランジ部21−1及び機外側フランジ部21−2の接合面Cには、それぞれ、離脱防止部材25の着座用の凹部29、29が形成されている。凹部29は、ボルト孔32の周囲に形成されており、離脱防止部材25が着座可能な大きさを有し、深さは、離脱防止部材25の厚さの1/2より浅く設定され、フランジ部21がボルト34で締結された場合、離脱防止部材25は、図3(a)に示すように、破線の状態から実線の状態まで、若干、圧縮変形され、舌部26が孔28に侵入するようになっている。
離脱防止部材25は、着座用の凹部29、29に配設されると共に、筒状部22の孔28に舌部26が嵌合された状態でボルト34が通され、フランジ部21の締結時に締結部材であるボルト34によりフランジ部21に挟着される。このため、フランジ部21と筒状部22とはフランジ部21の締結により離脱防止部材25を介して離脱不能に固定される。
図3では、離脱防止部材25がボルト孔32の周囲に装着される場合が示されているが、これは一例に過ぎず、フランジ部21の周方向のどの位置に装着されてもよい。その場合には、離脱防止部材25にボルト34の嵌入用の孔27を穿設する必要はない。また、着座用の凹部29は、離脱防止部材25の位置ずれ防止のため設けることが望ましい。
図3(a)に示すように、フランジ部21がボルト34で締結された場合、離脱防止部材25は、破線の状態から実線の状態まで圧縮変形されるが、その際、離脱防止部材25は内外に押し出される。このため、離脱防止部材25のクサビ型の舌部26は筒状部22の孔28に侵入し、離脱防止部材25は筒状部22の孔28に対して締まり勝手となり、フランジ部21と筒状部22とは一体的にシールカバー2に固定される。
図4には、フランジ部21と筒状部22とが離脱防止部材25を介して離脱不能に固定される状態が示されている。図4において、図3と同じ符号は図3と同じであり、重複する説明は省略する。
虫メガネのフレームに似た形状をした離脱防止部材25は、機内側フランジ部21−1及び機外側フランジ部21−2の接合面Cのボルト孔32の周囲に形成された着座用の凹部29、29に配設され、舌部26は筒状部22の孔28に嵌合している。この状態で機内側フランジ部21−1と機外側フランジ部21−2とが締結されると、離脱防止部材25は凹部29、29内において挟着され、移動不能であるから、筒状部22の孔28に嵌合した舌部26が孔28から抜け出ることはない。また、離脱防止部材25は、圧縮変形されるため、クサビ型の舌部26は筒状部22の孔28に侵入し、筒状部22の孔28に対して締まり勝手となるので、フランジ部21と筒状部22とは一体的に固定されることになる。
次に、図5ないし図7を参照しながら、本発明の実施形態に係るメカニカルシール、例えば、図1に示すメカニカルシールと従来技術におけるメカニカルシールとの組立工程を対比して説明する。
(1)プレアッセンブリ
本発明のメカニカルシールでは、工場、サービスセンター(以下、「工場等」という。)において、カラー6、ベローズ7、リテーナ8及びシールリング9とバッフルスリーブ17の筒状部22及びダンパー19とを確実かつ制御された状態でプレアッセンブリする(以下、プレアッセンブリされた部材を「プレアッセンブリ部材」という。)ため、現地工事でプレアッセンブリ部材の組立工程を省くことができる。
これに対して、従来技術のメカニカルシールは、カラー54、ベローズ55、リテーナ56及びシールリング57等の静止側シール部材と断面略L字状で一体型のバッフルスリーブ59とは、シールカバー60の反対側からしか装着できないため、静止側シール部材とバッフルスリーブ59を予めプレアッセンブリすることができない。
(2)現地等における初期状態
本発明のメカニカルシールでは、シールカバー2の機内側にプレアッセンブリ部材及びガスケット15が配置され、機外側にバッフルスリーブ17の分割された機内側フランジ部21−1及び機外側フランジ部21−2と、離脱防止部材25、並びにボルト34が配置される。
これに対して、従来技術のメカニカルシールは、シールカバー60の機内側に静止側シール部材、ダンパー61及びガスケット62が配置され、機外側に一体型のバッフルスリーブ59及びボルト63が配置される。
説明図からわかるように、本発明のメカニカルシールにおける設置スペースL’は従来技術のメカニカルシールにおける設置スペースLに比べて著しく小さい。このように、本発明のメカニカルシールでは、省スペースでの組立が可能である。
(3)二次シール装着
本発明のメカニカルシール及び従来技術のメカニカルシール共に、それぞれ二次シール部材であるガスケット15、ガスケット62がシールカバー側に装着される
(4)スリーブの挿入
従来技術のメカニカルシールでは、シールカバー60の機外側に配置された一体型のバッフルスリーブ59がシールカバー60に挿入される。これに対して、本発明のメカニカルシールでは、バッフルスリーブ17の筒状部22はプレアッセンブリされているので、シールカバー2へのバッフルスリーブ17の挿入は不要である。
(5)関連部品の装着
従来技術のメカニカルシールでは、関連部品であるダンパー61をシールカバー60の機内側からバッフルスリーブ59に巻き付け、その後、静止側シール部材をバッフルスリーブ59の外径側に挿入するが、この作業は若干の困難を伴う。これに対して、本発明のメカニカルシールでは、関連部品であるダンパー19はプレアッセンブリされているので、バッフルスリーブ17の筒状部22に対するダンパー19の装着作業は不要であり、装着ミス、装着漏れなどはなく、設計した性能を確保することができる。
(6)シールの装着
本発明のメカニカルシールでは、バッフルスリーブ17の筒状部22及びダンパー19を含むプレアッセンブリ部材を機内側からシールカバー2に直接装着する。
これに対して、従来技術のメカニカルシールは、ダンパー61をバッフルスリーブ59に巻き付けた状態を維持しつつ、静止側シール部材をバッフルスリーブ59の外径側に挿入するため、正確に装着することが困難である。
(7)ボルト締結
本発明のメカニカルシールでは、バッフルスリーブ17の機内側フランジ部21−1、離脱防止部材25及び機外側フランジ部21−2をシールカバー2の凹部25に位置合わせしながら順次嵌入し、ボルト34を締結する。ボルト34が締め込まれると、機内側フランジ部21−1及び機外側フランジ部21−2は分割面Cが密着するように締結され、その際、離脱防止部材25が挟着され、フランジ部21と筒状部22とが離脱不能に固定された状態となる。このため、フランジ部21と筒状部22とは一体的にシールカバー2に固定される。
これに対して、従来技術のメカニカルシールは、バッフルスリーブ59のフランジ部を介してシールカバー60にボルト63を締結する。
本発明の実施形態に係るメカニカルシールの効果は以下のとおりである。
(1)本発明に係るバッフルスリーブ17はフランジ部21と筒状部22とが分割された構成であるため、工場等において、カラー6、ベローズ7、リテーナ8及びシールリング9とバッフルスリーブ17の筒状部22及びダンパー19とを確実かつ制御された状態でプレアッセンブリすることができ、現地工事で部材の組立工程を省くことができる。このため、組み込み性が向上すると共に、現場作業でのミスを低減することができる。さらに、従来、断面略L字状の一体的なバッフルスリーブを丸棒から削り出す場合、「フランジ部の外径×筒状部の長さ」の材料が必要であり、また、丸棒から断面略L字状に加工するためには、その大部分を削る必要があり、無駄が多かったが、本発明に係るバッフルスリーブ17は、フランジ部21と筒状部22とを別の材料から形成するため従来技術におけるような無駄を無くすことができる。
(2)本発明のメカニカルシールではシールカバー2の機外側における設置スペースを従来技術に比べて著しく小さくできるため、省スペースでの組立が可能である。
(3)本発明に係るバッフルスリーブ17では、フランジ部21は軸方向において2分割され、機内側フランジ部21−1と機外側フランジ部21−2との間には離脱防止部材25が挟着され、離脱防止部材25の挟着された状態における内径側には筒状部22に穿設された凹部又は孔28に嵌合する舌部26が延設されており、フランジ部21の締結により離脱防止部材25を介してフランジ部21と筒状部22とが離脱不能に固定されるため、振動等の外乱にも十分に耐える機能を備えたバッフルスリーブを得ることができる。
(4)本発明の実施形態に係る離脱防止部材25の舌部26はクサビ型に形成されているため、離脱防止部材25が挟着されて圧縮変形された際、クサビ型の舌部26は筒状部22の孔28に侵入するので、筒状部22の孔28に対して締まり勝手とすることができる。
(5)本発明の実施形態に係る離脱防止部材25には、フランジ部21を締結する締結部材であるボルト34の嵌入用の孔27が穿設され、離脱防止部材25はフランジ部21の締結時にボルト34に嵌合した状態でフランジ部21に挟着されるため、確実に圧縮変形され、クサビ型の舌部26の筒状部22の孔28に対する侵入を確実なものとすることができる。
(6)機内側フランジ部21−1及び機外側フランジ部21−2の接合面Cには、それぞれ、離脱防止部材25の着座用の凹部29が形成されているため、離脱防止部材25の装着が正確かつ容易であり、また、離脱防止部材25の位置ずれを防止することができる。
1 ハウジング
2 シールカバー
3 回転軸
4 軸封部
6 カラー
7 ベローズ
8 リテーナ
9 シールリング
10 メイティングリング
11 リテーナ
12 シールリング
13 芯出しケース
14 凹部
15 ガスケット
16 シール面
17 バッフルスリーブ
18 クラッチ構造
19 ダンパー
20 環状溝
21 フランジ部
21−1 機内側フランジ部
21−2 機外側フランジ部
22 筒状部
23 内周面
24 筒状部の基端の外周面
25 離脱防止部材
26 舌部
27 離脱防止部材の孔
28 筒状部の孔
29 凹部
32 ボルト孔
33 シールカバーの機外側に設けられたフランジ部嵌合用の凹部
34 ボルト(締結部材)
35 クエンチング流体供給孔


























Claims (5)

  1. ハウジングと回転軸との間に形成した軸封部に装着されて、ハウジングと回転軸との間をシールするメカニカルシールであって、シールリングと、該シールリングに対向摺接するメイティングリングとを具備し、前記シールリングおよび前記メイティングリングの一方がハウジングに装着されたシールカバーの機内側にベローズを介して支持され、他方が回転軸と共に回転するメカニカルシールにおいて、前記シールカバーの機外側において固定されて前記シールリングと前記メイティングリングとの摺動面にクエンチング流体を誘導する断面略L字状のバッフルスリーブを備え、前記バッフルスリーブはフランジ部と筒状部とが分割された構成であり、前記筒状部と分割された前記フランジ部は軸方向において機内側フランジ部と機外側フランジ部とに2分割され、前記機内側フランジ部と機外側フランジ部との間には離脱防止部材が挟着され、前記離脱防止部材の挟着された状態における内径側には前記フランジ部と分割された前記筒状部に穿設された凹部又は孔に嵌合する舌部が延設されており、前記フランジ部と前記筒状部とは前記離脱防止部材を介して離脱不能に構成されることを特徴とするメカニカルシール。
  2. 前記離脱防止部材の舌部はクサビ型に形成されていることを特徴とする請求項1記載のメカニカルシール。
  3. 前記離脱防止部材には、前記フランジ部を締結する締結部材の嵌入用の孔が穿設されていることを特徴とする請求項1又は2記載のメカニカルシール。
  4. 前記機内側フランジ部及び前記機外側フランジ部の接合面には、それぞれ、前記離脱防止部材の着座用の凹部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のメカニカルシール。
  5. 前記離脱防止部材は、金属、ゴムまたはプラスチックから形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のメカニカルシール。
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