JP5916458B2 - タービン - Google Patents
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Description
このタービンでは、上流側から前記間隙に入り込んだ流体がステップ部の段差面に衝突することで、段差面の上流側に主渦が発生し、段差面の下流側(前記微小隙間の上流側近傍)に剥離渦が発生する。そして、微小隙間の上流側近傍に生じる剥離渦によって、微小隙間を通り抜ける漏れ流れの低減化が図られている。すなわち、動翼の先端部とケーシングとの間隙を通過する漏洩流体の流量(漏洩流量)の低減化が図られている。
したがって、下流側に位置するステップ部において発生する主渦の速度(回転速度)は、上流側に位置するステップ部において発生する主渦の速度(回転速度)よりも速くなる。特に、主渦のうち段差面に沿って径方向に流れる流速が下流側の主渦ほど速いことで、下流側のステップ部において発生する剥離渦ほど径方向に延びた形状となってしまう。このように剥離渦の形状が延びてしまうと、剥離渦のうちシールフィンの先端側からステップ部に向かう径方向への流れの速度成分の最大位置が、シールフィンの先端から基端側に離れる(微小隙間から径方向に離れる)ため、この剥離渦の下流側の微小隙間を通り抜ける漏れ流れを低減する縮流効果が小さくなってしまい、また、静圧低減効果も小さくなってしまう。その結果、従来のタービンでは、漏洩流量の低減化に限界が生じる、という問題がある。
また、下流側の剥離渦の直径が小さく抑えられることで、この剥離渦内における静圧を低減できるため、この剥離渦の下流側に位置する微小隙間の上流側と下流側との差圧を小さくすることができる。すなわち、この差圧の低減に基づいて下流側に位置する微小隙間を通り抜ける漏れ流れを小さくする静圧低減効果も向上させることができる。
下流側に位置するステップ部において発生する剥離渦による縮流効果及び静圧低減効果を向上させることができるため、ブレードの先端部と構造体との間隙を通過する漏洩流量の低減をさらに図ることが可能となる。
以下、図1〜4を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1は、ケーシング(構造体)10と、ケーシング10に流入する蒸気(流体)Sの量と圧力を調整する調整弁20と、ケーシング10の内方に回転自在に設けられ、動力を図示しない発電機等の機械に伝達する軸体(ロータ)30と、ケーシング10に保持された静翼40と、軸体30に設けられた動翼(ブレード)50と、軸体30を軸回りに回転可能に支持する軸受部60と、を備えて大略構成されている。
調整弁20は、ケーシング10の本体部11内部に複数個取り付けられており、それぞれ図示しないボイラから蒸気Sが流入する調整弁室21と、弁体22と、弁座23と、蒸気室24とを備えている。この調整弁20では、弁体22が弁座23から離れることで蒸気流路が開き、これによって、蒸気Sが蒸気室24を介してケーシング10の内部空間に流入するようになっている。
また、軸受部60は、ジャーナル軸受装置61及びスラスト軸受装置62を備えており、ケーシング10の本体部11内部に挿通された軸体30を本体部11の外側において回転可能に支持している。
静翼40の延出方向の先端部は、ハブシュラウド41によって構成されている。このハブシュラウド41は、同一の環状静翼群をなす複数の静翼40を連結するようにリング状に形成されている。ハブシュラウド41には軸体30が挿通されているが、ハブシュラウド41は軸体30との間に径方向の間隙を介して配されている。
そして、複数の静翼40からなる環状静翼群は、ケーシング10や軸体30の回転軸方向(以下、軸方向と記す)に間隔をあけて六つ形成されており、蒸気Sの圧力エネルギーを速度エネルギーに変換して、軸方向下流側に隣接する動翼50側に案内するようになっている。
前述した環状静翼群と上記環状動翼群とは、一組一段とされている。すなわち、蒸気タービン1は、六段に構成されている。これら動翼50の先端部は、周方向に延びるチップシュラウド51となっている。
動翼50から四つのステップ部52A〜52Dの外周面(周面)54A〜54D(54)に至る四つのステップ部52A〜52Dの突出高さは、軸方向の上流側から下流側に向かうにしたがって漸次高くなるように設定されている。これにより、各ステップ部52の段差面53は、軸方向の上流側に向いている。また、本実施形態では、各ステップ部52の段差面53が径方向に平行しており、四つの段差面53A〜53Dの高さが同一に設定されている。さらに、本実施形態では、各ステップ部52の外周面54が軸方向に平行している。
そして、前述した四つのステップ部52A〜52Dに対向するように径方向内側に向く環状溝121の底部には、五つの環状凹部122(122A〜122E)が軸方向に並べて形成されている。そして、軸方向の上流側に位置する四つの環状凹部122A〜122Dは、上流側から下流側に向かって、段差により漸次拡径して形成されている。一方、最も下流側に位置する一つの環状凹部122Eは、上流側に隣り合う四段目の環状凹部122Dよりも縮径して形成されている。
また、本実施形態では、軸方向に沿って各微小隙間H(各シールフィン124)から上流側に位置するステップ部52の段差面53に至る距離L(各微小隙間Hから上流側の段差面53に至る各ステップ部52の外周面54の長さ寸法L)が、下流側に位置するステップ部52ほど小さくなるように設定されている。
L1>L2>L3>L4・・・(1)
さらに言い換えれば、本実施形態では、前記距離Lと微小隙間Hとの縦横比L/Hが、下流側に位置するステップ部52ほど小さくなるように設定されている。
具体的に説明すれば、軸方向の最も上流側に形成される第一キャビティC1は、一段目のステップ部52Aに対応する第一シールフィン124Aと、第一シールフィン124Aの軸方向上流側に対向する一段目の環状凹部122Aの上流側の内側面125Aとの間に形成されている。
また、第一キャビティC1の下流側に隣り合う第二キャビティC2は、二段目のステップ部52Bに対応する第二シールフィン124Bと、第二シールフィン124Bの軸方向上流側に対向する第一シールフィン124A及び二段目の環状凹部122Bの上流側の内側面125Bとの間に形成されている。
また、第三キャビティC3に隣り合う第四キャビティC4は、四段目のステップ部52Dに対応する第四シールフィン124D及び四段目の環状凹部122Dの下流側の内側面125Eと、第四シールフィン124Dの軸方向上流側に対向する第三シールフィン124C及び四段目の環状凹部122Dの上流側の内側面125Dとの間に形成されている。
まず、調整弁20(図1参照)を開状態とすると、図示しないボイラから蒸気Sがケーシング10の内部空間に流入する。
ケーシング10の内部空間に流入した蒸気Sは、各段における環状静翼群と環状動翼群とを順次通過する。この際には、圧力エネルギーが静翼40によって速度エネルギーに変換され、静翼40を経た蒸気Sのうちの大部分が同一の段を構成する動翼50間に流入し、動翼50により蒸気Sの速度エネルギーが回転エネルギーに変換されて、軸体30に回転が付与される。一方、蒸気Sのうちの一部(例えば、数%)は、静翼40から流出した後、図3に示すように、環状溝121内(動翼50のチップシュラウド51とケーシング10の仕切板外輪12との間隙)に流入する、いわゆる、漏洩蒸気となる。
その際、特に一段目のステップ部52Aの段差面53Aと外周面54Aとの角部(エッジ)において、主渦MV1から一部の流れが剥離されることで、一段目のステップ部52Aの外周面54A上には、主渦MV1と反対の時計回り(第二回転方向)に回る剥離渦SV1が発生する。
また、二段目のステップ部52Bの段差面53Bと外周面54Bとの角部において主渦MV2から一部の流れが剥離されることで、二段目のステップ部52Bの外周面54B上には、主渦MV2と反対方向(第二回転方向)に回る剥離渦SV2が発生する。
同様にして、蒸気Sが第三微小隙間H3を通過して第四キャビティC4内に流入すると、四段目のステップ部52Dの段差面53Dに衝突することで、第四キャビティC4内には、第一回転方向に回る主渦MV4が発生する。また、四段目のステップ部52Dの外周面54D上には、第二回転方向に回る剥離渦SV4が発生する。
以上のことから、本実施形態の蒸気タービン1によれば、動翼50のチップシュラウド51とケーシング10の仕切板外輪12との間隙を通過する漏洩流量の低減を図ることが可能である。
図4(a)〜(c)に示す各グラフは、同一のステップ部52における縦横比L/Hと、対応する微小隙間Hを通過する蒸気Sの流量係数Cdとの関係を、第二微小隙間H2(二段目のステップ部52B)、第三微小隙間H3(三段目のステップ部52C)及び第四微小隙間H4(四段目のステップ部52D)について実験した結果である。このグラフでは、流量係数Cdが小さいほど、微小隙間Hを通過する蒸気Sの流量が小さいことを示している。
このグラフによれば、各微小隙間H2〜H4について、流量係数Cdを最小とする縦横比L/Hの最適値が存在することが分かる。そして、第二微小隙間H2における縦横比L/Hの最適値は3.0であり(図4(a)参照)、第三微小隙間H3における縦横比L/Hの最適値は2.5である(図4(b)参照)。また、第四微小隙間H4における縦横比L/Hの最適値は2.2である(図4(c)参照)。すなわち、下流側に位置する微小隙間Hほど、流量係数Cdを最小とする縦横比L/Hの最適値が小さくなる、言い換えれば、最適な距離Lが小さくなる、ということが分かる。
さらに、上記第一実施形態の構成では、各ステップ部52の段差面53が径方向に平行している、すなわち、後述する第二実施形態の構成のように傾斜していないため、チップシュラウド51の軸方向の寸法を容易に短く設定することも可能である。
次に、図5,6を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態では、第一実施形態の蒸気タービン1と比較して、各ステップ部52の形状のみが異なっており、その他の構成については第一実施形態と同様である。本実施形態では、第一実施形態と同一の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
また、四つの傾斜面56A〜56Dは、径方向に対する傾斜角度θ1〜θ4が、下流側に向かうほど大きく設定されている。
θ1<θ2<θ3<θ4・・・(2)
を満たすように設定されている。
さらに、本実施形態では、各ステップ部52の段差面53に傾斜面56が形成されていることで、各キャビティC内に生じる主渦MVにおいて、各ステップ部52の段差面53と外周面54との角部から剥離する流れの向きが、傾斜面56によって径方向に対して軸方向下流側に傾くことになる。これにより、各ステップ部52の外周面54上に生じる剥離渦SVの直径を小さく抑えることができる。
以上のことから、下流側の剥離渦SV2〜SV4による縮流効果及び静圧低減効果をさらに向上させることができる。
したがって、本実施形態の蒸気タービン1によれば、動翼50のチップシュラウド51とケーシング10の仕切板外輪12との間隙を通過する漏洩流量を、第一実施形態の場合と比較して、さらに低減させることが可能である。
このように、傾斜面56の一部あるいは全体が断面円弧状に形成されれば、段差面53に沿う主渦MVの流れが滑らかになるため、主渦MVのエネルギー損失を小さく抑えることができる。
なお、このように傾斜面56が断面円弧状の部分を有する構成において、断面円弧状の部分が外周面54に連なる場合には、断面円弧状の部分と外周面54との角部における断径方向と面円弧状の部分との相対的な角度を、径方向に対する傾斜面56の傾斜角度として設定すればよい。また、傾斜面56の断面直線状の部分が外周面54に連なる場合は、上記第二実施形態の場合と同様に、径方向と断面直線状の部分との相対的な角度を、径方向に対する傾斜面56の傾斜角度として設定すればよい。
なお、傾斜面56の一部あるいは全体を断面円弧状にする場合は、傾斜面56に沿って流れる流体の発生を防止する観点からは、径方向に対する傾斜角度が漸次小さくなる断面円弧形状の方が、傾斜角度が漸次大きくなる断面円弧形状よりも、望ましい。
例えば、三段目のステップ部52Cの傾斜面56Cの傾斜角度θ3(第三傾斜角度θ3)を、二段目のステップ部52Bの傾斜面56Bの傾斜角度θ2(第二傾斜角度θ2)よりも小さく設定した場合、前述の第二傾斜角度θ2を、一段目のステップ部52Aの傾斜面56Aの第一傾斜角度θ1に対して同等以上に設定したり、四段目のステップ部52Dの傾斜面56Dの第四傾斜角度θ4を、前述の第三傾斜角度θ3に対して同等以上に設定したりしてもよい。
例えば、三段目のステップ部52Cの段差面53Cにのみ傾斜面56Cを形成し、他のステップ部52A,52B,52Dの段差面53A,53B,53Dには傾斜面56Cが形成されていなくてもよい。また、例えば、一段目、三段目のステップ部52A,52Cの段差面53A,53Cのみに傾斜面56A,56Cを形成し、二段目、四段目のステップ部52B,52Dの段差面53B,53Dには傾斜面56B,56Dが形成されていなくてもよい。
例えば、四つの微小隙間H1〜H4の寸法は、上記実施形態のように最小となるように同一に設定されることが好ましいが、互いに異なっていても構わない。なお、この場合には、距離Lと微小隙間Hとの縦横比L/Hが下流側のものほど小さくなるように四つの距離L1〜L4を設定することがより好ましい。
具体的に説明すれば、例えば、第三微小隙間H3から三段目のステップ部52Cの段差面53Cに至る第三距離L3を、第二微小隙間H2から二段目のステップ部52Bの段差面53Bに至る第二距離L2よりも小さく設定した場合、前述の第二距離L2を、第一微小隙間H1から一段目のステップ部52Aの段差面53Aに至る第一距離L1に対して同等以上に設定したり、第四微小隙間H4から四段目のステップ部52Dの段差面53Dに至る第四距離L4を、前述の第三距離L3に対して同等以上に設定したりしてもよい。
さらに、上記実施形態では、四つの段差面53A〜53Dの高さが同一に設定されているが、同一でなくてもよい。
また、上記実施形態では、四つのシールフィン124A〜124Dが軸方向に等間隔で配列されているが、等間隔でなくてもよい。
また、上記実施形態では、環状溝121の底部に、段差により漸次拡径された四つの環状凹部122A〜122Dと、四段目の環状凹部122Dよりも縮径された五段目の環状凹部122Eとを形成しているが、これに限ることは無く、例えば、環状溝121の底部を略同径に形成しても構わない。この場合には、四つのキャビティC1〜C4の大きさが、下流側に向かうにしたがって小さくなる。
さらに、上記実施形態では、距離Lを除いて四つのキャビティC1〜C4の各部寸法が同一に設定されているが、同一でなくてもよい。
さらに、シールフィン124や環状凹部122は、ケーシング10の仕切板外輪12に形成されるとしたが、例えば仕切板外輪12を設けずに、ケーシング10の本体部11に直接形成してもよい。
さらに、上記実施形態のように縮流効果及び静圧低減効果を発揮する構成は、動翼50の先端部をなすチップシュラウド51とケーシング10との間隙に形成されることに限らず、例えば、静翼40の先端部をなすハブシュラウド41と軸体30との間隙に形成されてもよい。すなわち、静翼40を本発明の「ブレード」とし、軸体30を本発明の「構造体」としてもよい。この場合でも、上述した全ての実施形態と同様の効果が得られる。
また、上記実施形態では、本発明を蒸気タービンに適用したが、ガスタービンにも本発明を適用することができ、さらには、回転翼のある全てのものに本発明を適用することができる。
Claims (4)
- ブレードと、
前記ブレードの先端部側に間隙を介して設けられると共に、前記ブレードに対して相対回転する構造体と、を備え、
前記間隙に流体が流通されるタービンであって、
前記ブレードの先端部及び前記構造体のうち、前記ブレードの先端部及び前記構造体のいずれか一方に対向する部位には、前記ブレードまたは前記構造体の回転軸方向の上流側に向く段差面を有して他方側に突出する複数のステップ部が、前記回転軸方向に並べて設けられ、
前記他方には、各ステップ部の周面に向けて延出し、対応するステップ部の周面との間に微小隙間を形成するシールフィンが設けられ、
前記ブレードまたは前記構造体の回転軸方向に沿って前記微小隙間から上流側の前記段差面に至る距離は、少なくとも隣り合う二つで、上流側のステップ部に対して下流側のステップ部の方が小さく設定されていることを特徴とするタービン。 - 前記距離が、前記下流側に位置する前記ステップ部ほど小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のタービン。
- 隣り合う二つのステップ部のうち、少なくとも下流側のステップ部の前記段差面には、前記周面に連なるように、前記上流側から下流側に向かって傾斜する傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のタービン。
- 少なくとも隣り合う二つの前記ステップ部の前記段差面に、前記傾斜面が形成され、
前記傾斜面の傾斜角度は、前記上流側のステップ部に対して下流側のステップ部の方が大きく設定されていることを特徴とする請求項3に記載のタービン。
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