JP5916058B2 - 細胞ストレス状態のバイオマーカー - Google Patents
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(a)検体における1−メチルアデノシン、5−メチルシチジン及びシュードウリジンから選ばれる1又は2以上の修飾核酸を検出する工程;
(b)工程(a)で修飾核酸の増加又は局在変化があった場合、細胞ストレス状態と判定する工程;
の工程(a)及び(b)を備えていれば特に制限されず、通常医師による診断行為は除かれる。また、実施の一形態として工程(a)及び(b)を備えた細胞ストレス状態の診断のためのデータを収集する方法を例示することもできる。工程(a)において測定用検体及びコントロール検体における修飾核酸を検出して比較することもできるが、工程(a)において測定用検体の修飾核酸を検出し、別途標準的サンプル由来のコントロール検体の修飾核酸の検出結果から設定した、修飾核酸量の基準値又は修飾核酸の基準的な局在と比較してもよい。また、コントロール用サンプルや生体を別途用意してコントロール用検体を採取してもよいが、同一のサンプルや生体からコントロール検体及び測定用検体の2種以上の検体を採取することもでき、複数回にわけて生体の同じ部位から、あるいは、一度に又は複数回にわけて生体の異なる部位から、検体を採取する例を挙げることもできる。例えば、正常組織から採取された検体をコントロール検体とし、疾患組織から採取された検体を測定用検体として用いて、疾患組織の細胞ストレス状態を調べることもできる。ある臓器由来の検体と、別の臓器由来の検体を比較することで、特定の臓器の細胞ストレス状態を調べることもできる。また、治療前や治療開始時あるいはその直後に採取された検体をコントロール検体とし、治療の間、又はその後の1以上の時点において採取された検体を測定用検体として、治療効果の評価のためのデータを収集することができる。さらに手術前や検査前などに採取された検体をコントロール検体とし、手術や検査などの間、又は手術や検査後の1以上の時点において採取された検体を測定用検体として細胞ストレス状態を調べることにより、手術や検査が患者に与える影響をモニターする指標とすることもできる。細胞ストレス状態は疾患や障害の早期マーカーとして利用することができ、細胞ストレス状態を調べることにより症状が現れる前又は症状が重篤化する前に治療は予防を開始することも可能となる。
(a1)検体における1−メチルアデノシン、5−メチルシチジン及びシュードウリジンから選ばれる1又は2以上の修飾核酸を検出する工程;
(b1)工程(a1)で修飾核酸が増加した場合、虚血と判定する工程;
の工程(a1)及び(b1)を備えていれば特に制限されず、通常医師による診断行為は除かれる。また、実施の一形態として工程(a1)及び(b1)を備えた虚血の診断のためのデータを収集する方法を例示することもできる。検体としては、血液、尿、組織切片を用いる例を好適に例示することができ、中でも好ましくは組織切片の修飾核酸を染色する例、更に好ましくは血中の修飾核酸濃度を測定する例を挙げることができる。かかる虚血の診断のためのデータは、虚血を検出するためのデータや、虚血状態を評価するためのデータや、虚血を伴う外科的手術において生体の状態をモニターし評価するためのデータとして用いることができる他、例えばミトコンドリア病、アルツハイマー病、その他組織の脱落や壊死を伴う疾患などのアポトーシスが認められる疾患や、感染症、異常タンパク質蓄積を伴う神経変性疾患、空胞化を伴う筋疾患、クローン病その他の自食作用を伴う疾患などのオートファジーが認められる疾患の診断のためのデータとしても用いることができる。
(a2)検体における1−メチルアデノシン、5−メチルシチジン及びシュードウリジンから選ばれる1又は2以上の修飾核酸を検出する工程;
(b2)工程(a2)で修飾核酸が増加した場合、低酸素症と判定する工程;
の工程(a2)及び(b2)を備えていれば特に制限されず、通常医師による診断行為は除かれる。また、実施の一形態として工程(a2)及び(b2)を備えた低酸素症の診断のためのデータを収集する方法を例示することもできる。細胞外に放出された修飾核酸を検出する例を好適に例示することができ、検体としては細胞培養液や血液、尿を用いる例を挙げることができる。かかる低酸素症の診断のためのデータは、肺胞換気不全などによる呼吸の障害、一酸化炭素中毒などによる血液の酸素運搬量の減少、シアン化合物中毒低酸素脳症、呼吸中枢障害、神経筋障害、慢性閉塞性肺疾患などの低酸素症が関与する診断のためのデータとしても用いることができる。
(a3)検体における1−メチルアデノシン、5−メチルシチジン及びシュードウリジンから選ばれる1又は2以上の修飾核酸を検出する工程;
(b3)工程(a3)で修飾核酸が増加、又は修飾核酸の局在が変化した場合、放射線障害と判定する工程;
の工程(a3)及び(b3)を備えていれば特に制限されず、通常医師による診断行為は除かれる。検体としては、血液や尿、血液や尿中に含まれる細胞、並びに組織切片を用いる例を好適に例示することができ、中でも末梢血より採取したリンパ球における修飾核酸の細胞内局在を免疫染色法により染色し、修飾核酸が凝集し、細胞膜へ移行することを観察する例、及び血中の修飾核酸濃度を測定する例を挙げることができる。また、実施の一形態として工程(a3)及び(b3)を備えた放射線障害の診断のためのデータを収集する方法を例示することもできる。
(A)細胞ストレスを負荷する前後、若しくは細胞ストレスを負荷している間の非ヒト動物又は培養細胞に被検物質を投与する工程;
(B)工程(A)の非ヒト動物又は培養細胞から検体を採取し、検体中の1−メチルアデノシン、5−メチルシチジン及びシュードウリジンから選ばれる1又は2以上の修飾核酸を検出する工程;
(C)工程(B)で修飾核酸が増加しない、又は修飾核酸が細胞内局在変化しない場合、被検物質を細胞ストレスに起因する疾病の予防又は治療の候補薬剤と評価する工程;
の工程(A)〜(C)を備えていれば特に制限されず、他の工程を含んでもよく、細胞ストレスの種類や細胞ストレスを負荷する方法、細胞ストレスを負荷した後の回復時間の有無や長さなどは適宜選択することができる。工程(B)において測定用検体及びコントロール検体における修飾核酸を検出して比較することもできるが、工程(B)において測定用検体の修飾核酸を検出し、別途標準的サンプル由来のコントロール検体の修飾核酸の検出結果から設定した、修飾核酸量の基準値又は修飾核酸の基準的な局在と比較してもよい。また、コントロール用のサンプルや生体を別途用意してコントロール用検体を採取してもよいが、同一のサンプルや生体からコントロール検体及び測定用検体の2種以上の検体を採取することもでき、複数回にわけて生体の同じ部位から、あるいは、一度に又は複数回にわけて生体の異なる部位から、検体を採取する例を挙げることもできる。また、コントロール検体及び測定用検体は、生体中で同じ由来であることが好ましい。非ヒト動物を用いる場合、コントロール検体及び測定用検体は、生体中の同じ組織由来であることが好ましい。また、本発明における非ヒト動物としては、サル、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、ハムスター、トリ等を挙げることができ、ラット、マウスを好適に例示することができ、疾患モデル動物などを使用することもできる。非ヒト動物への被検物質の投与方法は適宜選択することができ、経口、注射、点滴、塗布などを挙げることができる。また培養細胞を用いる場合、培養細胞の由来する動物や臓器など、培養細胞の種類は特に制限されず、HeLa細胞、HEK293細胞、MCF−7細胞、HepG2細胞、PC12細胞、Jurkat細胞、COS7細胞、CHO細胞、NIH3T3細胞、L細胞、MDCK細胞、S2細胞、などの細胞株でも、ES細胞、iPS細胞、初代培養細胞などでもよく、被検物質は培養液に添加する、あるいは被検物質がペプチドやタンパク質の場合、これらの発現ベクターを細胞内に導入することができる。被検物質は適宜選択することができ、化学物質、タンパク質、ペプチド、ステロイド等を挙げることができ、これらは合成や抽出等により作製しても市販品を購入することもでき、市販のライブラリーを使用することもできる。
(A1)虚血再灌流中、又は虚血再灌流前後の非ヒト動物に被検物質を投与する工程;
(B1)工程(A1)の非ヒト動物から検体を採取し、検体中の1−メチルアデノシン、5−メチルシチジン及びシュードウリジンから選ばれる1又は2以上の修飾核酸を検出する工程;
(C1)工程(B1)で修飾核酸が増加しない場合、被検物質を虚血の予防又は治療の候補薬剤と評価する工程;
の工程(A1)〜(C1)を備えていれば特に制限されず、他の工程を含んでもよい。虚血を行う方法や、組織や、虚血時間や、虚血再灌流後の時間などは適宜選択することができる。検体としては、血液、尿、組織切片を好適に例示することができ、組織切片を染色する例や、血中の修飾核酸濃度を測定する例を挙げることができる。1−メチルアデノシンは、アポトーシスやオートファジーによっても血液や尿中に排出されることから、スクリーニングにより得られた虚血の予防又は治療の候補薬剤は、虚血が関与する疾患の他、例えばミトコンドリア病、アルツハイマー病、その他組織の脱落や壊死を伴う疾患などのアポトーシスが認められる疾患や、感染症、異常タンパク質蓄積を伴う神経変性疾患、空胞化を伴う筋疾患、クローン病その他の自食作用を伴う疾患などのオートファジーが認められる疾患の予防又は治療の候補薬剤と評価することもできる。
(A2)低酸素処理中、又は低酸素処理前後の培養細胞に被検物質を投与する工程;
(B2)工程(A2)の培養細胞培養液を検体として採取し、検体中の1−メチルアデノシン、5−メチルシチジン及びシュードウリジンから選ばれる1又は2以上の修飾核酸を定量する工程;
(C2)工程(B2)で修飾核酸が増加しない場合、被検物質を低酸素症の予防又は治療の候補薬剤と評価する工程;
の工程(A2)〜(C2)を備えていれば特に制限されず、他の工程を含んでもよく、培養細胞の種類や酸素濃度、低酸素処理を行う時間、低酸素処理後の回復時間の有無、その長さなどは適宜選択することができる。
(A3)放射線照射中、又は放射線照射前後の細胞又は非ヒト動物に被検物質を投与する工程;
(B3)工程(A3)の細胞又は非ヒト動物から検体を採取し、検体中の1−メチルアデノシン、5−メチルシチジン及びシュードウリジンから選ばれる1又は2以上の修飾核酸を検出する工程;
(C3)工程(B3)で修飾核酸が局在変化しない又は増加しない場合、被検物質を放射線障害の予防又は治療の候補薬剤と評価する工程;
の工程(A3)〜(C3)を備えていれば特に制限されず、他の工程を含んでもよく、検体を複数回採取して行うこともでき、放射線の種類や照射を行う強さや時間、回数、照射対象とする組織や、放射線照射後の回復時間の有無、その長さなどは適宜選択することができる。非ヒト動物を用いた例として、非ヒト動物から採取した末梢血中の修飾核酸濃度を測定する例や、かかる末梢血から採取したリンパ球における修飾核酸の細胞内局在を調べる例を挙げることができる。また、細胞としては、末梢血から採取したリンパ球や、培養細胞を用いてスクリーニングを行うこともできる。
ラット(wister 8週齢(チャールズ社製))の両側腎動脈を1時間クランプして虚血し、その後クランプ解除して再灌流した。虚血処理なし、虚血解除直後、再灌流1時間後のラットをサクリファイスし、右腎臓を摘出した。腎臓を10%ホルマリン浸漬により固定し、パラフィン標本を作製して、受託番号FERM P−22120のハイブリドーマから産生された抗1−メチルアデノシン抗体(1:100)を用いて免疫組織染色を行い、シンプルステインキット(ニチレイ社製)により発色させた(図3)。虚血解除直後及び再灌流1時間後において、特にcTAL(cortical Thick Ascending Limb of Henle's Loop;皮質ヘンレループ上行脚肉厚部)が強く染色され、糸球体は染色されなかった。
中大脳動脈を1時間虚血し、脳梗塞を誘導した脳梗塞モデルラットを、1時間再灌流の後サクリファイスし、脳を摘出した。脳を10%ホルマリン浸漬により固定しパラフィン標本を作製した。組織切片をHE染色、あるいは、抗1−メチルアデノシン抗体(受託番号FERM P−22120)(1:100)又は抗5−メチルシチジン抗体(受託番号FERM P−22122)(1:100)を用い、シンプルステインキット(ニチレイ社製)により発色させて免疫組織染色を行った(図8)。虚血領域及び正常領域における染色を比較すると、1−メチルアデノシン及び5−メチルシチジンの染色は虚血領域の方が強いことが示され、脳における虚血も検出することができた。また、2時間虚血し、再灌流を行わなかった脳梗塞モデルラットを用いた場合も、同様の観察結果であった。
両側腎動脈を1時間虚血した、ブタの腎臓虚血モデルにおいて、虚血前、再灌流直後、再灌流15分後、再灌流1時間後、再灌流2時間後に末梢動脈及び腎静脈から血液を採取した。採取した血液中の1−メチルアデノシンを濃度は、ELISA(競合法)によって以下の方法で測定した。PBSに溶解した1−メチルアデノシン−BSAコンジュゲート(0.125ng/mlをウェルあたり50μl)を4℃で一晩固相化した後、1%BSA−PBS 100μlを加え37℃でブロッキングを行った。1時間後、希釈系列(1、5、10、50、100、500ng/ml)で調製した1−メチルアデノシン標準液と抗1−メチルアデノシン抗体(受託番号FERM AP−22120)0.02μg/mlを25μlずつ添加し、4℃で1時間反応させた。各ウェルを0.05%Tween−PBSで5回洗浄し、0.05%Tween−PBSで1:500に希釈したALP rabbit anti-mouse IgG Fcを50μlずつ添加し4℃で1時間反応させた。先と同様の方法で洗浄した後、基質(パラニトロフェニルフォスフェートを1mg/mlの濃度で1Mジエタノールアミン緩衝液pH9.8に溶解)を加え15分間反応させ、405nmにおける吸光度を測定して検量線を作成した。同様に、採取した血液の血清(アミコンウルトラ−4(10,000NMWL)を用いて遠心限外ろ過し、得られたろ液をさらに2倍、4倍、8倍に希釈したもの)を測定し、検量線から1−メチルアデノシン量を算出した。結果を図9に示す。動脈血の1−メチルアデノシン濃度は再灌流後2時間で虚血前の約5倍の値に上昇した。また、どの時点においても、常に腎静脈血中における1−メチルアデノシン濃度は動脈血中における1−メチルアデノシン濃度より高く、これは血中の増加した1−メチルアデノシンは腎由来であるという解釈と矛盾しない結果である。したがって、末梢動脈から採取した血液中の1−メチルアデノシン濃度を測定することにより、腎臓などの臓器における虚血を検出することができることが示された。
虚血再灌流によって、ミトコンドリアが傷害を受けることが知られている。そこで、ミトコンドリアが豊富に存在する近位尿細管の培養細胞における、1−メチルアデノシンの細胞内局在について調べた。初代培養細胞である、ヒト近位尿細管上皮細胞RPTEC細胞はタカラ社より入手し、10%FBS(インビトロジェン社製)を添加したOPTI−MEM培地(インビトロジェン社製)を用いて、37℃、5%CO2下で維持した。RPTEC細胞は、30万個/ウェルで12ウェルチャンバー上に撒き、24時間後に4%パラホルムアルデヒド/PBSで固定し、洗浄し、1%BSA−0.05%Tween−PBSでブロッキングした。抗1−メチルアデノシン抗体を用いて1−メチルアデノシンを、Mitotracker(商標登録)deep red(インビトロジェン社製)を用いてミトコンドリアを、DAPI(インビトロジェン社製)を用いて核を染色し、洗浄、マウントした後、共焦点顕微鏡(LSM5、Zeiss社製)で観察した(図10)。1−メチルアデノシンとミトコンドリアは共局在を示すことが確認された。
心臓病患者のヒト弓部置換術中に、虚血前open distal手術前(かつ人工心肺ポンプ開始前)の患者の末梢及び腎静脈付近から虚血状態にある血清試料200μlを採取した。心臓病患者の弓部置換術中に腎静脈付近の血液を採取し、1−メチルアデノシン濃度を測定した。人工心肺ポンプの開始から、弓部大動脈遮断による虚血、遠位側開放下血管吻合術、再灌流2時間後までの計7時点において腎静脈付近の血液を採取した。前記と同様にELISA(競合法)によって血中1−メチルアデノシン濃度を測定した結果を図11に示す。手術及び再灌流2時間後において、手術開始前の3倍以上の高い1−メチルアデノシン濃度が測定された。1−メチルアデノシンの測定により、手術中の虚血状態をリアルタイムでモニターすることもできることが示された。
腎動脈狭窄症患者の末消血液を腎動脈拡張術前後の計5時点において採取し、血液中の1−メチルアデノシン濃度を測定した。血中1−メチルアデノシン濃度の測定は前記と同様にELISA(競合法)によって行った。また、腎臓の機能マーカーの一つ、クレアチンの値も同サンプルからLC−MSを用いて測定した。結果を図12に示す。血液中の1−メチルアデノシン濃度は腎梗塞後に増加し続けたのに対し、クレアチンの値は、腎梗塞前後で変化が見られなかった。したがって、従来腎臓機能のマーカーとして使用されているクレアチンよりも、1−メチルアデノシンを検出する本発明の細胞ストレスの判定方法は、腎臓の状態を精度よく反映することができることが示された。
心臓病患者のヒト弓部置換術中に、虚血前open distal手術前(かつ人工心肺ポンプ開始前)の患者の末梢血及びカテーテル血から血清試料200μlを調整した。この血清試料を1×PBSにて2倍希釈し、遠心限外ろ過装置(アミコンウルトラ(Amicon Ultra)−4遠心式フィルターユニット(Millipore社製):分画分子量10,000(UFC801008)、分画分子量30,000(UFC803008)、分画分子量50,000(UFC805008))にそれぞれ添加し、マイクロ冷却遠心機(KUBOTA3700、久保田商事社製)を用いて、4℃、7,500×g(6,830rpm)で90分間遠心分離を行った。得られたろ液(約320μl)中の1−メチルアデノシン量をELISAにて測定した結果を図13に示す。
6well dishにMDCK細胞(イヌ尿細管由来培養細胞)を25万個/well撒き、12時間後に細胞が50%コンフルエントとなった時点でPBSで1回洗浄した後、OPTI−MEM2ml培地にて、20%O2の通常培養(コントロール)又は1%O2の低酸素負荷培養を24時間行い、コントロール及び1%O2どちらも95%コンフルエント状態にした。その後に、以下の方法で培地(上清)、細胞を回収し、細胞及び培地における1−メチルアデノシン量を測定した。
3wellをPBSで2回洗浄後、トリプシン/EDTA処理により細胞を剥がして回収し、細胞数を計測した。コントロール及び1%O2の低酸素負荷サンプルいずれも105万−110万/wellであった。次に1,000g×5分間の遠心操作の後上清を除去し、lysis buffer500μlで細胞を可溶化し、Bioruptor(東湘電機株式会社製)を用いて超音波破砕(H×5分間)し、1,000g×5分間の遠心操作の後、上清をcell lysateとして回収し、−80℃で保存した。
Lysis buffer組成
1% TritonX-100
50mM Tris−HCl pH7.6
150mM NaCl
0.02% Sodium azide
Protease inhibitor(Roche社製:Complete mini EDTA free)
VRC(Vanadyl-ribonucleotide complex) 10mM
3wellをPBSで2回洗浄後、TriPure Isolation Reagent(Roche社製)2ml/wellを添加し、1mlずつ1.5mlエッペンチューブに分注した。かかるエッペンチューブにクロロホルムを200μl加え、vortexにより撹拌し、15,000rpmで10分間遠心操作を行った。遠心操作後の水層500μlを別のチューブに移し、2−プロパノール500μlで沈殿させ、70%エタノールで2回リンスし、RNase freeの蒸留水200μlで溶解させ、分光光度計Nanodrop(商標登録、株式会社エル・エム・エス社製)でRNA濃度を測定し、−80℃保存した。コントロールサンプルのRNA濃度は80.8ng/μl、87.4ng/μl、85.8ng/μlであり、1%O2低酸素サンプルのRNA濃度は75.0ng/μl、72.4ng/μl、71.4ng/μlであった。前記と同様にELISA(競合法)によってlysate及び上清中の1−メチルアデノシン濃度を測定した。測定値を、前記RNA濃度により補正した結果を図14に示す。その結果、1%O2の低酸素負荷によって細胞lysate中の1−メチルアデノシン濃度は変化しないが、培地中の1−メチルアデノシン濃度が有意に増加することが示された。したがって、1−メチルアデノシンを検出することにより、低酸素負荷による細胞ストレスも検知できることが示された。
ヒト末梢血リンパ球を以下の方法で採取し、1−メチルアデノシンを染色して観察した。
(末梢血からのリンパ球の採取)
空腹時に被検者よりヘパリン採血管を用いて血液を10ml採取した。Ficoll(ベクトン社製)10ml(等量)を入れた50ccチューブに、Ficollの液面が乱れないように注射器から血液をゆっくり移し、液面を乱さないように室温で1,500rpm×30分間遠心操作を行った。次に、ピペットで上から血清とPBL層を回収し、等量のPBSを加えて1,200rpm×10分間遠心操作を行った。上清を吸引し、沈殿をPBS5mlに懸濁し、1,500rpm×5分間遠心操作を行う一連の操作を2回行い、沈殿を10%FCS(ウシ胎仔血清)を含むRPMI、2mlに懸濁した。このPBL1×107個/2mlとなったリンパ細胞を24穴プレート(コートなし)に分注し、37℃、5%CO2で培養した。
前記末梢血リンパ球に、X線装置ソフテックス(ソフテックス株式会社)を用いて287radを10分間、約3,000rad照射した。その後、37℃、5%CO2で培養し、経時的にリンパ球80μl(4×105個)を1.5mlチューブに移し標本用サンプルとして採取した。かかる標本用サンプルを2,000rpm×5分間遠心操作を行い、上清を捨てPBS200μlで洗浄操作を2回繰り返し、細胞をPBS20μlに懸濁してコートスライド上にのせてスメア標本を作製し、4%PFA(パラホルムアルデヒド)で固定処理を行った。前記4%PFA固定スメア標本を、TritonX-100 0.2%を含むPBSで室温2分間の可溶化処理を行った後、3%NGS(通常ヤギ血清)を含むTBS−Tで室温10分間のブロッキング処理を行った。受託番号FERM P−22120のハイブリドーマが産生する抗1−メチルアデノシン抗体(1mg/ml)を3%NGSを含むTBS−Tで1:100に希釈した1次抗体を用いて室温1時間の1次抗体反応を行い、次にAlexa Fluor(商標)488 anti-mouse IgG(インビトロジェン社製)を3%NGS TBS−Tで1:500に希釈した2次抗体を用いて室温1時間の2次抗体反応を行った後、標本を封入し、蛍光顕微鏡で観察した。その結果を図15に示す。
マウス(C57BL/6)(n=3)に、X線装置ソフテックス(ソフテックス株式会社)を用いて、X線10Gyを照射した。照射後、採血し、血液中の1−メチルアデノシン濃度を前記と同様にELISA法で測定した。血液中の1−メチルアデノシン濃度の平均値の結果を図16に示す。図16中、controlは、X線を照射していないマウスの血液中1−メチルアデノシン濃度を示す。rad12hrは、X線照射12時間後のマウスの血液中1−メチルアデノシン濃度を示す。X線を照射したマウス(rad12hr)は、X線を照射していないマウス(control)と比較して、血液中の1−メチルアデノシン濃度が約1.4倍高いことが示された。したがって、実験動物等の生体においても、1−メチルアデノシンを検出することにより、放射線による影響や放射線障害の検知を行うことができることが示された。
Claims (11)
- 血液又は組織における1−メチルアデノシンが、増加又は局在変化するかどうかを検出することを特徴とする虚血によるストレス状態を判定するための方法。
- 血液における1−メチルアデノシンが、増加するかどうかを検出することを特徴とする放射線によるストレス状態を判定するための方法。
- 細胞培養上清における1−メチルアデノシンが、増加するかどうかを検出することを特徴とする低酸素によるストレス状態を判定するための方法。
- 検出が免疫学的測定法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 免疫学的測定法がELISA法又は免疫染色法であることを特徴とする請求項4記載の方法。
- 免疫学的測定法が受託番号FERM P−22120のハイブリドーマが産生する抗1−メチルアデノシンモノクローナル抗体を用いることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
- 抗1−メチルアデノシンモノクローナル抗体を含むことを特徴とする虚血、低酸素、又は放射線によるストレス状態の検出キットであって、
血液又は組織における1−メチルアデノシンの増加を指標として、虚血によるストレス状態を判定するための、
細胞培養上清における1−メチルアデノシンの増加を指標として、低酸素によるストレス状態を判定するための、或いは
血液における1−メチルアデノシンの増加を指標として放射線によるストレス状態を判定するための
前記検出キット。 - 受託番号FERM P−22120のハイブリドーマが産生する抗1−メチルアデノシンモノクローナル抗体を含むことを特徴とする請求項7記載のストレス状態の検出キット。
- 以下の工程(A)〜(C)を備えたことを特徴とする虚血によるストレスに起因する疾病の予防又は治療剤のスクリーニング方法。
(A)虚血によるストレスを負荷する前後、若しくは虚血によるストレスを負荷している間の非ヒト動物に被検物質を投与する工程;
(B)工程(A)の非ヒト動物から血液又は組織を採取し、血液又は組織中の1−メチルアデノシンを検出する工程;
(C)工程(B)で1−メチルアデノシンが増加しない、又は1−メチルアデノシンが細胞内局在変化しない場合、被検物質を虚血によるストレスに起因する疾病の予防又は治療の候補薬剤と評価する工程; - 以下の工程(A’)〜(C’)を備えたことを特徴とする放射線によるストレスに起因する疾病の予防又は治療剤のスクリーニング方法。
(A’)放射線によるストレスを負荷する前後、若しくは放射線によるストレスを負荷している間の非ヒト動物に被検物質を投与する工程;
(B’)工程(A’)の非ヒト動物から血液を採取し、血液中の1−メチルアデノシンを検出する工程;
(C’)工程(B’)で1−メチルアデノシンが増加しない場合、被検物質を放射線によるストレスに起因する疾病の予防又は治療の候補薬剤と評価する工程; - 以下の工程(A’’)〜(C’’)を備えたことを特徴とする低酸素によるストレスに起因する疾病の予防又は治療剤のスクリーニング方法。
(A’’)低酸素によるストレスを負荷する前後、若しくは低酸素によるストレスを負荷している間の培養細胞に被検物質を投与する工程;
(B’’)工程(A’’)の培養細胞から細胞培養上清を採取し、細胞培養上清中の1−メチルアデノシンを検出する工程;
(C’’)工程(B’’)で1−メチルアデノシンが増加しない場合、被検物質を低酸素によるストレスに起因する疾病の予防又は治療の候補薬剤と評価する工程;
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