JP5915979B2 - 微細繊維状セルロースの製造方法 - Google Patents
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Description
かかるリグノセルロースは、酵素加水分解等により、糖が得られ、また、糖を発酵させることにより、エタノールが得られることが知られている。
また、リグノセルロースは、糖やエタノール等のバイオエネルギーの原料として有用であるものの、分解抵抗性を有することから、糖やエタノールとしたときの収率が極めて低くなるという欠点がある。
例えば、リグノセルロースを含む水懸濁液に、オゾンの吹き込み、また過酸化水素を入れ、リグノセルロースを解繊したホロセルロースを得る方法(例えば、特許文献1又は2参照)や、リグノセルロースを、アルカリ蒸解法及びオゾン漂白処理により脱リグニン化する方法(例えば、特許文献3参照)が知られている。
例えば、リグノセルロースと、解繊物質とを混合して機械的粉砕を行い、リグノセルロースを解繊させる方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。
上記特許文献4に記載の方法においては、機械的粉砕を行っているが、リグノセルロースを解繊するためには大きなエネルギーが必要であり、また、リグノセルロースの解繊も十分とはいえない。
また、得られる微細繊維状セルロースを用いてシート状とすることにより極めて高強度特性を有する高強度シートが得られ、所定の樹脂を混合させることにより、異なる強度特性が付与されたナノ複合材料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、(5)樹脂がポリプロピレンであり、マレイン酸変性ポリプロピレンが添加されている上記(4)記載のナノ複合材料の製造方法に存する。
また、オゾン処理と、粉砕処理とを施すことにより、大きなエネルギーを要しないことから、経済性にも優れる。
上記微細繊維状セルロースの製造方法により得られる微細繊維状セルロースは、生化学的又は化学的処理を施すことにより、酵素又は酸や塩基が作用しやすくなるので、高収率で糖やエタノールを得ることができる。
また、工程を減じることができるため、経済性にもより優れる。
本実施形態に係る微細繊維状セルロースの製造方法は、リグノセルロースをオゾン雰囲気下で脆弱化させるオゾン処理工程と、リグノセルロースを機械的に粉砕する粉砕工程と、を備える。
かかるリグノセルロースは、一般に、木材、草木、農産物、綿花等の植物から得られる(木質)バイオマスや、生物が産生するバクテリアセルロース等から得られる。
(オゾン処理工程)
上記オゾン処理工程は、リグノセルロースをオゾン雰囲気下で脆弱化させる工程である。すなわち、リグノセルロースをオゾン雰囲気下におくことで、主にリグニンの炭素・炭素二重結合をオゾンと反応させ分解させる工程である。
これにより、リグノセルロースの細胞壁の強固な積層構造が脆弱化され、後述する機械的粉砕(粉砕工程)の効率化が図られる。なお、かかるオゾン処理工程においては、オゾン処理を促進させる媒体(以下便宜的に「オゾン処理用媒体」という。)や触媒が混合されていてもよい。
ここで、オゾン処理用媒体として水を用いる場合、リグノセルロースに適度の水を含ませて行うことが好ましい。これにより、オゾン処理の反応速度が促進される。
また、基本的には無触媒反応だが、触媒を用いることもできる。触媒としては、例えば、酸化チタン等の光触媒が用いられる。
上記粉砕工程は、リグノセルロースを機械的に粉砕する工程である。すなわち、脆弱化されたリグノセルロースを機械的に粉砕し、微細繊維状セルロースとする工程である。
例えば、ボールミル(振動ボールミル、回転ボールミル、遊星型ボールミル)、ロッドミル、ビーズミル、ディスクミル、カッターミル、ハンマーミル、インペラーミル、エクストルーダー、ミキサー(高速回転羽根型ミキサー、ホモミキサー)、ホモジナイザー(高圧ホモジナイザー、機械式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー)等が挙げられる。
また、粉砕が、バッチ式又は連続式エクストルーダーで行われると、より短時間で効率よく微細繊維状セルロースを製造できるという利点がある。
これらの中でも、粉砕用媒体は、水と、低分子化合物、高分子化合物又は脂肪酸類とを混合して用いることが好ましい。
温度が20℃未満であると、温度が上記範囲内にある場合と比較して、リグノセルロースが十分に解繊されない傾向にあり、温度が350℃を超えると、温度が上記範囲内にある場合と比較して、リグノセルロースが粉砕され過ぎてしまい、加水分解時にリグノセルロースの過分解物が生じ易くなる。
次に、上記微細繊維状セルロースの製造方法で得られる微細繊維状セルロースについて説明する。
微細繊維状セルロースは、幅が1μm以下、長さが5000μm以下となるように調整される。なお、微細繊維状セルロースのサイズは、糖化工程やエタノール製造工程における反応性の観点から、幅が100nm以下であることが好ましく、3〜5nmであることがより好ましく、また、微細繊維状セルロースの長さが50μm以下であることが好ましい。
また、幅が1μm以下、長さが5000μm以下の微細繊維状とすることにより、微細繊維状セルロースの分解抵抗性を十分に低下させることができる。
さらに、比較的温和な条件でオゾン処理工程及び粉砕工程が施されるので、過分解物の生成が抑制され、かつ多大な粉砕のエネルギーも低減できる。
また、微細繊維状解繊物の性質を調べることにより、オゾン処理条件との相関関係及び酵素糖化反応性との関係を明確にすることができる。例えば、オゾン酸化反応におけるセルロースの分子鎖の切断による分子量の測定や表面酸化度合いを、ゼータ電位を測定することにより評価できる。
したがって、リグノセルロースのリグニンの分解とともに、セルロースの酸化反応を誘起して、ナノ繊維同士の静電的反発や分子量の低下による短繊維化も可能である。
ここで、上記微細繊維状セルロースを用いた糖化工程について説明する。
糖化工程は、微細繊維状セルロースを加水分解によって糖とする工程である。
かかる加水分解としては、硫酸、塩酸、フッ酸等の酸や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリによる化学的な加水分解、セルラーゼ等の酵素による生化学的な加水分解が挙げられる。
また、少量の酵素で十分に微細繊維状セルロースの加水分解ができるので、低コストで糖を得ることができる。
さらに、比較的温和な条件で加水分解されるので、微細繊維状セルロースの過分解物の発生を確実に抑制できる。
得られた糖は、有用物資のバイオ生産のための培地原料又は炭素源として用いられる。
また、その糖を化学的に変換して、化成品、高分子原料、生理活性物質等の有用物質に用いることも可能である。
次に、得られた糖を用いたエタノール製造工程について説明する。すなわち、上記微細繊維状セルロースを用いたエタノール製造工程について説明する。
エタノール製造工程は、微細繊維状セルロースを加水分解により糖とし、該糖を発酵させることにより、エタノールを製造する工程である。
得られるエタノールは、化成品原料、溶媒又は自動車用燃料等に用いられる。
また、エタノールを含む水溶液は、アルコール系飲料とすることもできる。
本実施形態に係る高強度シートは、微細繊維状セルロースの製造方法により得られる微細繊維状セルロースをシート状に成形して得られる。
ここで、微細繊維状セルロースは、高結晶性にすることができ、シート状にすることにより、高強度のシートとすることができる。また、オゾン漂白効果により白く調製することが可能であり、透明な材料の調製も可能である。なお、微細繊維状セルロースをシート状に成形する際の処理条件により、異なる性質の高強度シートとすることができる。
本実施形態に係るナノ複合材料は、微細繊維状セルロースの製造方法により得られる微細繊維状セルロースを、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む水溶液、若しくは、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含むエマルジョン、に分散させて得られる。
このように、微細繊維状セルロースは、樹脂等へフィラーとして複合化することにより、ナノ複合材料としても用いることができる。
また、ナノ複合材料は、使うマトリックス樹脂(樹脂)と微細繊維状セルロースとの界面接着性や分子間相互力を向上させることにより、高強度材料に転換することができる。例えば、ポリプロピレンを使う場合はマレイン酸変性ポリプロピレンを少量添加することによって、界面接着性や微細繊維の分散性を向上させることができる。
リグノセルロースとして、広葉樹であるユーカリを用いた。まず、予備粉砕工程において、カッターミルを用いてユーカリを粉砕し、0.2mmのサイズの木粉を得た。
リグノセルロースとして、広葉樹であるユーカリを用いた。まず、予備粉砕工程において、カッターミルを用いてユーカリを粉砕し、3mmのサイズの木粉を得た。
リグノセルロースとして、針葉樹であるスギを用いた。まず、予備粉砕工程において、カッターミルを用いてスギを粉砕し、3mmのサイズの木粉を得た。
ユーカリの代わりに赤松を用いたこと以外は、実施例2と同様にして処理物を得た。
オゾン処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして処理物(0.2mmのサイズの木粉)を得た。
オゾン処理を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして処理物(3mmのサイズの木粉)を得た。
オゾン処理を行わなかったこと以外は、実施例3と同様にして処理物(3mmのサイズの木粉)を得た。
オゾン処理を行わなかったこと以外は、実施例4と同様にして処理物(3mmのサイズの木粉)を得た。
実施例1及び2における消費オゾン量について調査した。
得られた結果を表1に示す。なお、表1中、消費オゾン量は、水のみのオゾン処理時における未反応の排出オゾン濃度を連続的に測定した値(オゾン排出量)から、実施例1及び2におけるオゾン排出量を引いた値である。
実施例1及び2で得られた処理物を、処理物の固形分量に対して20倍の水で、実施例3で得られた処理物についてはその画分を、処理物の固形分量に対して200倍の水で、吸引ろ過装置を用いて水可溶分と残渣とに分離した。そして、水可溶分に含まれる固形分量(水可溶分量)の処理物の固形分量に対する割合を求めた。
得られた結果を表2に示す。
評価2で得られた実施例3の残渣に、濃度が1%(w/v)となるように、固形分1g当たり40mgのメイセラーゼ(明治製菓社製)と、200μLのOptimash BG(Genencor社製)と、100mM酢酸緩衝液(pH5)とを加え、45℃、48時間振とう(230rpm)することにより糖化反応を行った。
そして、得られたグルコース、キシロースを高速液体クロマトグラフィーにより定量した。
得られた結果を表3に示す。なお、表3中、種々の単糖生成量は、オゾン未処理の原料固形分に対する生成量を意味する。
評価2で得られた実施例1,2の残渣、評価2と同様の処理をすることにより得られた実施例4の残渣、並びに、比較例1,2,4の処理物を、それぞれ固形分60gを計り取り、濃度が2%(w/w)となるように蒸留水(媒体)を加えた。
また、評価2で得られた実施例3の水分量40%での処理物の残渣、並びに、比較例3の処理物については、それぞれ固形分30gを計り取り、濃度が2%(w/w)となるように蒸留水(媒体)を加えた。
なお、実施例1及び比較例1の評価においては、ディスクミルのディスク間隔を、ディスクミル処理の全ての回において、ディスクが擦れ出す間隔から100μm狭めた間隔とした。実施例2の評価においては、ディスクミルのディスク間隔を、ディスクミル処理の1回目のみ、50μm狭めた間隔とし、2回目以降を100μm狭めた間隔とした。比較例2の評価においては、ディスクミルのディスク間隔を、ディスクミル処理の1回目は狭めず、2回目は、50μm狭めた間隔とし、3回目以降を100μm狭めた間隔とした。
また、実施例3の評価においては、粉砕を7回繰返し、ディスクミルのディスク間隔を、ディスクミル処理の1回目はディスクが擦れ出す間隔から100μm広めた間隔とし、2,3,4回目は各々1回目のディスク間隔から50,100,150μm狭めた間隔とし、4回目以降は200μm狭めた間隔とした。
さらに、比較例3の評価においては、粉砕を10回繰返し、ディスクミルのディスク間隔を、ディスクミル処理の1回目はディスクが擦れ出す間隔から500μm広めた間隔とし、2,3,4回目は各々1回目のディスク間隔から200,400μm狭めた間隔とし、3回目以降は600μm狭めた間隔とした。
さらにまた、比較例4においては、機械的粉砕を10回施した。
ディスクミル回数、それに対応するディスクミル処理時間及び消費電力の一覧を表4及び表5に示す。なお、表4及び表5中、ディスクミル処理時間と消費電力は、原料固形分に対する累積時間と累積電力を意味する。
評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を1,2,3,5回施した実施例1及び2の微細繊維状セルロースに、濃度が1%(w/v)となるように、固形分1g当たり40mgのメイセラーゼ(明治製菓社製)と、200μLのOptimash BG(Genencor社製)と、50mM酢酸緩衝液(pH5)とを加え、45℃、72時間転倒混和することにより糖化反応を行った。
評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を5〜7回施した実施例3の水分量40%での微細繊維状セルロース及び5〜10回施した比較例3のセルロースについては、濃度が1%(w/v)となるように、固形分1g当たり40mgのメイセラーゼ(明治製菓社製)と、200μLのOptimash BG(Genencor社製)と、100mM酢酸緩衝液(pH5)とを加え、45℃、48時間振とう(230rpm)することにより糖化反応を行った。
そして、得られたグルコース、キシロースを高速液体クロマトグラフィーにより定量した。
得られた結果を表6に示す。なお、表6中、種々の単糖生成量は、オゾン未処理の原料固形分に対する生成量を意味する。
また、評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を7回施した実施例3の水分量40%での微細繊維状セルロースについては、機械的粉砕を10回施した比較例3のセルロースと比較して、より少ないエネルギー消費であるにもかかわらず、グルコースとキシロースの生成量が共に1.3倍と1.2倍高くなっていることがわかった。
評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を1〜5回施した実施例4の微細繊維状セルロースに濃度が1%(w/v)となるように蒸留水(媒体)を加え、300mLのサンプルAとした。
また、評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を1,3,5,10回施した比較例4のセルロースに濃度が1%(w/v)となるように蒸留水(媒体)を加え、300mLのサンプルBとした。
そして、サンプルA及びサンプルBをそれぞれ、90mm直径のメンブレインフィルター(0.2μm pore size)を用いて、吸引ろ過し、ろ過時間を測定した。
得られた結果を表7に示す。
評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を1回施した実施例4の微細繊維状セルロースと、評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を5回施した比較例4のセルロースと、を電子顕微鏡にて観察した。
図1に実施例4の微細繊維状セルロースの電子顕微鏡写真を、図2に比較例4のセルロースの電子顕微鏡写真を示す。なお、実施例4の微細繊維状セルロースの処理時間は、0.20 min/g、比較例4のセルロースの電子顕微鏡写真の処理時間0.64 min/gであった。
評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を2回施した実施例4の微細繊維状セルロースと、評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を10回施した比較例4のセルロースとについて、窒素吸着試験(BET方法)を行い、比表面積を求めた。
実施例4の微細繊維状セルロースは、比表面積が171 m2/gであり、比較例4のセルロースは、比表面積が149m2/gであった。
評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を2回施した実施例4の微細繊維状セルロースと、評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を10回施した比較例4のセルロースとについて、引張強度特性を求めた。
実施例4の微細繊維状セルロースは、引張強度が81.3MPa、弾性率が14.07GPaであり、比較例4のセルロースは、引張強度が81.1MPa、弾性率が11.93GPaであった。
評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を5回施した実施例4の微細繊維状セルロースとポリウレタンエマルジョン樹脂(三洋化成製UWS−145)とを1:9の比率で複合化させ、引張強度特性を求めた。
また、評価4のディスクミルを用いた機械的粉砕を10回施した比較例4のセルロースとポリウレタンエマルジョン樹脂(三洋化成製UWS−145)とを1:9の比率で複合化させ、引張強度特性を求めた。
実施例4の微細繊維状セルロースを用いた複合材料は、引張強度が27.5MPa、弾性率が1.21GPaであり、比較例4のセルロースを用いた複合材料は、引張強度が23.51MPa、弾性率が0.98GPaであった。
また、この微細繊維状セルロースを用いた高強度シート及びナノ複合材料は、高強度特性を有することが確認された。
これにより、得られる微細繊維状セルロースは、高収率且つ温和な条件で、糖やエタノール等に変換することができるので、バイオエネルギーの原料として極めて有用なものである。
Claims (5)
- リグノセルロースから幅が1μm以下、長さが5000μm以下の微細繊維状セルロースを製造する微細繊維状セルロースの製造方法であって、
前記リグノセルロースをオゾン雰囲気下で脆弱化させるオゾン処理工程と、
前記リグノセルロースを20〜350℃の温度条件下で機械的に粉砕する粉砕工程と、
を備え、
前記オゾン処理工程と、前記粉砕工程とが同時に施される微細繊維状セルロースの製造方法。 - 酵素加水分解による糖化反応に用いられる請求項1記載の微細繊維状セルロースの製造方法。
- 請求項1記載の微細繊維状セルロースの製造方法で得られる微細繊維状セルロースを、アルコール類又はアセトンを用いてシート状に成形して得られる高強度シートの製造方法。
- 請求項1記載の微細繊維状セルロースの製造方法で得られる微細繊維状セルロースを、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる樹脂を含む水溶液、若しくは、前記樹脂を含むエマルジョン、に分散させて、前記微細繊維状セルロースをフィラーとして前記樹脂と複合化させることにより得られるナノ複合材料の製造方法。
- 前記樹脂がポリプロピレンであり、マレイン酸変性ポリプロピレンが添加されている請求項4記載のナノ複合材料の製造方法。
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