JP5911787B2 - 燃料電池用組立体及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、固体高分子電解質膜の両側を電極で挟持して構成される電解質膜・電極構造体の外周に樹脂製枠体が配置された燃料電池用組立体及びその製造方法に関する。
固体高分子型燃料電池は、固体高分子からなる電解質膜と、該電解質膜の一方の面に臨むアノード電極及び他方の面に臨むカソード電極とを備えた電解質膜・電極構造体を有する。この種の燃料電池において、電解質膜・電極構造体の外周端縁部に樹脂製枠体を接合一体化することで燃料電池用組立体を構成し、該燃料電池用組立体を一組のセパレータによって挟持することで単位セルを構成する場合がある。
上記の燃料電池用組立体を得る手法としては、例えば、特許文献1に記載されるように、額縁状(矩形状)の樹脂製枠体に形成された開口近傍の部位と、電解質膜の外周端縁部とを重畳して熱融着することが提案されている。また、特許文献2では、電解質膜・電極構造体の外周端縁部に樹脂製枠体を射出成形により一体成形することで燃料電池用組立体を形成することが提案されている。
特許第3079742号公報 特開2010−123491号公報
上記の特許文献1、2に示す燃料電池用組立体のいずれも、電解質膜・電極構造体と樹脂製枠体とを接合する際に、樹脂製枠体を構成する樹脂を融点以上に加熱する必要がある。このように加熱されて高温となった前記樹脂が電解質膜に接触すると、熱によって電解質膜に劣化や損傷が生じてしまうことが懸念される。
また、上記の燃料電池によって発電を行う場合、電解質膜は、電極反応によって生成した水を吸収・排出することに伴って膨潤及び収縮する。これに対して、電解質膜の外周端部に接合一体化された樹脂製枠体は、ほとんど膨張ないし伸縮しない。このため、特許文献1、2の記載に従って得られた燃料電池用組立体では、電解質膜の膨潤及び収縮時に、電解質膜と樹脂製枠体との間に応力が発生し、この応力によって電解質膜に亀裂等が生じてしまう懸念がある。
さらに、特許文献2に記載されるように一体成形を行うと、成形型内に射出した溶融樹脂が冷却固化する際、溶融樹脂が浸透したガス拡散層に比して大きい割合で樹脂が収縮する。これによって、燃料電池用組立体に反りが生じてしまう懸念がある。
本発明は、この種の問題を解決するものであり、電解質膜・電極構造体に生じる劣化や損傷及び反りを回避することが可能で、耐久性を十分に向上させることができる燃料電池用組立体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、固体高分子からなる電解質膜を一組の電極で挟持して構成される電解質膜・電極構造体と、該電解質膜・電極構造体の外周に配置される樹脂製枠体とを有する燃料電池用組立体であって、
前記樹脂製枠体の一端面は、前記電解質膜・電極構造体の端面と対向し、
前記樹脂製枠体の一端面側には他端面側よりも厚さが小さい部位が形成され、
前記樹脂製枠体を構成する樹脂の融点に比して低温で固化するゴム部材を有し、
前記ゴム部材が、前記樹脂製枠体の厚さが最大となる部位の両主面を被覆することなく、該樹脂製枠体及び前記電解質膜・電極構造体の対向する端面同士の間に介在して互いを接合することを特徴とする。
この燃料電池用組立体では、電解質膜・電極構造体と樹脂製枠体とを、該樹脂製枠体を構成する樹脂の融点に比して低温で固化するゴム部材を介して接合する。このため、例えば、熱融着や射出成形によって電解質膜・電極構造体に樹脂製枠体を直接接合する場合に比して低温下で、電解質膜・電極構造体の外周に樹脂製枠体を設けることができる。従って、熱によって電解質膜に劣化や損傷が生じることを抑制できる。
また、ゴム部材は前記樹脂に比して収縮率が小さい。従って、ゴム部材を構成するゴムが固化していない状態の液状ゴムを電解質膜・電極構造体のガス拡散層に浸透させて固化する際に、前記ゴムとガス拡散層との間に生じる収縮率の差は、前記樹脂とガス拡散層との間の収縮率の差に比して小さい。このため、例えば、電解質膜・電極構造体の外周端縁部と樹脂製枠体との間に液状ゴムを射出し、ガス拡散層に該液状ゴムを浸透させた後に、固化してゴム部材を形成しても、燃料電池用組立体に反りが生じてしまうことを抑制できる。
さらに、液状ゴムが樹脂製枠体に接触することに伴って樹脂製枠体が溶融することはなく、このため、樹脂製枠体が再凝固することもない。従って、本発明においては、ゴム部材を形成する間の樹脂製枠体の体積収縮も抑制できる。以上のような理由から、燃料電池用組立体に反りが生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
さらに、ゴム部材は、電解質膜・電極構造体と樹脂製枠体との間に介在して弾性を示す。このため、燃料電池の発電時に電解質膜が膨潤及び収縮したときには、これに伴ってゴム部材が弾性変形する。この弾性変形により、電解質膜と樹脂製枠体との間に生じる応力が吸収される。従って、電解質膜に亀裂等が生じることを回避できるので、燃料電池用組立体の耐久性を向上させることができる。ひいては、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
以上のように、本発明の燃料電池用組立体では、電解質膜・電極構造体に劣化や損傷及び反りが生じることを回避でき、耐久性を十分に向上させることができる。
前記ゴム部材は、前記電解質膜・電極構造体の外周を周回するシール部を形成することが好ましい。この場合、電解質膜・電極構造体の外周に樹脂製枠体を設けると同時に、シール部を形成することができる。従って、電解質膜・電極構造体に樹脂製枠体を接合する工程と、シール部を形成するシール部材を作製した後に、樹脂製枠体にシール部材を接合する工程とを個別に行う場合に比して、効率的且つ低コストに得ることができる。
また、前記ゴム部材の好適な具体例としては、シリコーンゴムが挙げられる。この場合、熱硬化温度が約100℃であるので、電解質膜・電極構造体に劣化や損傷及び反りが生じることをより良好に回避でき、燃料電池用組立体の耐久性を効果的に向上させることができる。また、シリコーンゴムによってシール部を形成した場合、良好なシール性を得ることができる。
また、本発明は、固体高分子からなる電解質膜を一組の電極で挟持して構成される電解質膜・電極構造体と、該電解質膜・電極構造体の外周に配置される樹脂製枠体とを有する燃料電池用組立体の製造方法であって、
成形型の内部に前記電解質膜・電極構造体と、該電解質膜・電極構造体の端面と対向する一端面側に他端面側よりも厚さが小さい部位が形成された前記樹脂製枠体とを配置する工程と、
前記成形型の内部に、前記樹脂製枠体を構成する樹脂の融点に比して低温のゴムの流動物を射出する工程と、
前記ゴムの流動物を前記樹脂の融点に比して低温で固化してゴム部材とすることで、前記樹脂製枠体の厚さが最大となる部位の両主面を被覆することなく、該樹脂製枠体及び前記電解質膜・電極構造体の対向する端面同士の間に該ゴム部材を介在させて互いを接合する工程と、
を有することを特徴とする。
このような過程を経ることにより、上記した構成の燃料電池用組立体を容易に得ることができる。なお、ゴムの流動物としては、溶融ゴムや、2液硬化型ゴムが例示される。
前記成形型は、前記電解質膜・電極構造体の外周を周回するシール部を形成するシール形成室を有し、前記ゴム部材によって、前記電解質膜・電極構造体と前記樹脂製枠体を接合するとともに前記シール部を形成するものであることが好ましい。この場合、上記した理由からシール部を有する燃料電池用組立体を、簡便且つ低コストに製造することができる。
前記電極に含まれるガス拡散層が、前記ゴムの流動物(液状ゴム)が浸透する浸透部又は該浸透部近傍に凹部が形成されたものであるときには、前記成形型に、前記凹部に挿入可能な凸部を形成するとともに、前記凸部によって前記凹部の内面を押圧した状態で、前記成形型内に前記液状ゴムを射出することが好ましい。この場合、凸部によって液状ゴムのそれ以上の浸透が抑制されることにより、ガス拡散層に対する液状ゴムの浸透量を調整することが可能である。このため、ガス拡散層に液状ゴムを過不足なく浸透させて、電解質膜・電極構造体と樹脂製枠体とを良好に接合することができる。
前記ゴムとしては、上記したようにシリコーンゴムを用いることが好ましい。
本発明によれば、樹脂製枠体を構成する樹脂の融点に比して低温で固化するゴムを用いて電解質膜・電極構造体と樹脂製枠体とを接合するようにしているので、電解質膜・電極構造体に劣化や損傷及び反りが生じることが回避される。これにより、燃料電池用組立体の耐久性を十分に向上させることができる。
本実施形態に係る燃料電池用組立体が組み込まれる固体高分子型の燃料電池の要部分解斜視図である。 図1中のII−II線矢視断面図である。 成形型の内部に電解質膜・電極構造体と樹脂製枠体とを配置した状態を示す要部概略縦断面図である。 図3の成形型の内部に液状ゴムを射出した状態を示す要部概略縦断面図である。 図4の液状ゴムを固化した後に型開きを行って、燃料電池用組立体を露呈させた状態を示す要部概略縦断面図である。 変形例における燃料電池用組立体の要部概略断面図である。 また別の変形例における燃料電池用組立体の要部概略断面図である。
以下、本発明に係る燃料電池用組立体及びその製造方法につき好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、固体高分子型の燃料電池10の要部分解斜視図であり、図2は、図1中のII−II線矢視断面図である。この燃料電池10は、本実施形態に係る燃料電池用組立体12が組み込まれて構成される。
この燃料電池10は、複数の積層体14を矢印A方向(水平方向)に積層して構成される。積層体14は、セパレータ16、電解質膜・電極構造体18a、セパレータ20、電解質膜・電極構造体18b及びセパレータ22を矢印A方向に積層して構成される。
電解質膜・電極構造体18a、18b(これらをまとめて電解質膜・電極構造体18ともいう)は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜(電解質膜)24と、該電解質膜24を挟持するカソード電極26及びアノード電極28とを備える(図2参照)。
電解質膜24は、カソード電極26及びアノード電極28よりも大きな表面積に設定される。この電解質膜24の外周には、額縁状の樹脂製枠体30がゴム部材32(図2参照)を介して接合されている。
樹脂製枠体30は、電解質膜・電極構造体18a、18bを保持して、機械的強度を増加させる。樹脂製枠体30を構成する樹脂としては、汎用プラスチックの他、エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチック等が採用される。
ゴム部材32は、電解質膜・電極構造体18aの外周を周回するシール部34(図2参照)を一体的に含む。シール部34は、電解質膜・電極構造体18aに隣接する電解質膜・電極構造体18bの外周に設けられたゴム部材32及び樹脂製枠体30に密着する。ゴム部材32を構成するゴムとしては、樹脂製枠体30を構成する樹脂の融点に比して固化温度が低いものが採用され、その好適な例としてはシリコーンゴムが挙げられる。
カソード電極26及びアノード電極28は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層36と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子をガス拡散層36の表面に一様に塗布して形成された電極触媒層(図示せず)とを有する。ガス拡散層36の外周端縁部には、ゴム部材32を構成するゴムが浸透した浸透部38が形成される。また、ガス拡散層36の浸透部38近傍には、電解質膜24側に向かって陥没する凹部40が形成されている(図2参照)。
図1に示すように、樹脂製枠体30の矢印B方向の一端縁部には、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス入口連通孔42a、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔44b、及び燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス出口連通孔46bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
樹脂製枠体30の矢印B方向の他端縁部には、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔46a、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔44a、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔42bが、矢印C方向に配列して設けられる。
セパレータ16、20、22それぞれの外周部は、酸化剤ガス入口連通孔42a、冷却媒体出口連通孔44b、燃料ガス出口連通孔46b、燃料ガス入口連通孔46a、冷却媒体入口連通孔44a及び酸化剤ガス出口連通孔42bの内側に配置される。
このように構成される燃料電池10の動作について、以下に説明する。
図1に示すように、酸化剤ガス入口連通孔42aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給されるとともに、燃料ガス入口連通孔46aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。さらに、冷却媒体入口連通孔44aには、純水やエチレングリコール等の冷却媒体が供給される。
各積層体14では、酸化剤ガス入口連通孔42aに供給された酸化剤ガスが、セパレータ16、20に形成された入口流路48aを介して供給される。このため、酸化剤ガスは、入口流路48aに連通する酸化剤ガス流路50に供給される(図1参照)。
酸化剤ガス流路50に供給された酸化剤ガスは、電解質膜・電極構造体18のカソード電極26に供給された後、残余の酸化剤ガスは、出口流路48bから酸化剤ガス出口連通孔42bに排出される。
一方、燃料ガス入口連通孔46aに供給された燃料ガスは、セパレータ20、22に形成された入口流路52aに導入され、燃料ガス流路54に供給される(図1参照)。この燃料ガス流路54に供給された燃料ガスは、電解質膜・電極構造体18を構成するアノード電極28に供給された後、残余の燃料ガスは、出口流路52bから燃料ガス出口連通孔46bに排出される。
これにより、電解質膜・電極構造体18では、カソード電極26に供給される酸化剤ガスと、アノード電極28に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応(発電反応)により消費され、発電が行われる。
なお、冷却媒体入口連通孔44aに供給された冷却媒体は、セパレータ22に形成された入口流路56aを通って冷却媒体流路58に供給される。この冷却媒体流路58に供給された冷却媒体は、電解質膜・電極構造体18を冷却した後、出口流路56bから冷却媒体出口連通孔44bに排出される。
前記発電反応の結果として、水が生成される。電解質膜24は、この水を吸収・排出すること等によって膨潤及び収縮する。ここで、上記の通り、本実施形態に係る燃料電池用組立体12では、電解質膜24と樹脂製枠体30との間に、弾性を示すゴム部材32が介在している。このため、燃料電池10の発電時に、電解質膜24が膨潤及び収縮すると、これに伴ってゴム部材32が弾性変形する。この弾性変形により、電解質膜24と樹脂製枠体30との間に生じる応力が吸収される。従って、電解質膜24に亀裂等が生じることを回避できるので、燃料電池用組立体12の耐久性を向上させることができる。ひいては、燃料電池10の耐久性を向上させることができる。
また、ゴム部材32が電解質膜・電極構造体18の外周を囲むシール部34を有することによって、電解質膜・電極構造体18からその外部へ反応ガスが漏れること(アウトリーク)を有効に防止することができる。シリコーンゴムは、特にシール性に優れているので、アウトリークの防止に好適である。
次に、図3〜図5を参照しつつ、上記した燃料電池用組立体12の製造方法につき説明する。
はじめに、図3に示すように、成形型60の内部に電解質膜・電極構造体18と樹脂製枠体30とを配置する。具体的には、互いの間にゴム部材32を形成することが可能な間隔をおいて、電解質膜・電極構造体18の外周に樹脂製枠体30を配置する。すなわち、成形型60内には、互いに離間した電解質膜・電極構造体18と樹脂製枠体30との間にキャビティ61が形成される。
ここで、成形型60は、電解質膜・電極構造体18のカソード電極26に当接する下型62と、アノード電極28に当接する上型64とから構成される。
下型62及び上型64のガス拡散層36に接触する面には、該ガス拡散層36の凹部40の内面を押圧することが可能な凸部66がそれぞれ形成されている。
また、上型64には、電解質膜・電極構造体18と樹脂製枠体30との間に対向する内面に、該電解質膜・電極構造体18の外周を周回するシール形成室68が形成されている。該シール形成室68は、上型64の内面から外面に向かって陥没するとともに、キャビティ61の一部を構成する。また、上型64には、シール形成室68と外部とを連通する射出孔70が形成され、この射出孔70には、図示しない射出機の射出ノズル71(図4参照)が挿入される。
次いで、図4に示すように、射出ノズル71から、成形型60内に電解質膜・電極構造体18と樹脂製枠体30とを配置した状態で、液状ゴム72(ゴムの流動物)を射出する。液状ゴム72の固化温度は、樹脂製枠体30を構成する樹脂の融点に比して低く、100℃以下、例えば40〜80℃程度(液状ゴム72がシリコーンゴムである場合、約50℃)の低温で射出を行うことが可能である。このため、液状ゴム72が電解質膜24に接触したとしても、液状ゴム72の温度が上記した程度であるので、電解質膜24が熱によって劣化することや、損傷することを回避することができる。さらに、液状ゴム72が接触することによって樹脂製枠体30が溶融することもない。すなわち、樹脂製枠体30が熱によって変形や劣化することも回避できる。
上記の通りガス拡散層36がカーボンペーパ等の多孔質体から形成されているので、液状ゴム72の一部がガス拡散層36に浸透する。その結果、浸透部38が形成される。ここで、ガス拡散層36に形成された凹部40の内面が成形型60の凸部66によって押圧されているため、液状ゴム72が凹部40を越えて浸透することが抑制される。すなわち、ガス拡散層36に凹部40を設けるとともに凹部40を成形型60に設けた凸部66で押圧することにより、ガス拡散層36に対する液状ゴム72の浸透量を調整することができる。換言すると、浸透部38の体積を調整することができる。従って、ガス拡散層36に液状ゴム72を過不足なく浸透させた後、該液状ゴム72を固化させてゴム部材32(図5参照)とすることで、電解質膜・電極構造体18と樹脂製枠体30とを良好に接合することができる。
また、シール形成室68内に液状ゴム72を充填した状態で、該液状ゴム72を固化させてゴム部材32とすることによって、電解質膜・電極構造体18と樹脂製枠体30とを接合すると同時に、シール部34(図5参照)を形成することができる。このため、例えば、電解質膜・電極構造体18と樹脂製枠体30とを接合する工程と、シール部を形成するシール部材を設けた後に、該シール部材と樹脂製枠体30とを接合する工程とを個別に行う場合に比して、容易に且つ低コストでシール部34を備えた燃料電池用組立体12を得ることができる。
さらに、上記の通り液状ゴム72は比較的低温で固化するため、液状ゴム72を固化してゴム部材32に変化させる際の収縮率が、前記樹脂を溶融して冷却固化する際の収縮率に比して小さい。換言すると、液状ゴム72をガス拡散層36に浸透させて固化する際に、液状ゴム72とガス拡散層36との間に生じる収縮率の差は、前記樹脂とガス拡散層36との間の収縮率の差に比して小さい。このため、液状ゴム72を固化してゴム部材32を形成した後、図5に示すように、成形型60を取り外して得られる燃料電池用組立体12では、例えば、前記樹脂を電解質膜・電極構造体18に直接接触するように射出して樹脂製枠体を構成した燃料電池用組立体等に比して、反り等が発生することを抑制できる。
また、液状ゴム72は低温(シリコーンゴムであるときには約50℃)で射出されることから、ゴム部材32を形成する際に、樹脂製枠体30が溶融・再凝固することはなく、若干熱膨張・収縮する程度である。すなわち、この場合、樹脂製枠体30の体積収縮が小さくなる。このため、燃料電池用組立体12(図5参照)に反り等が発生することが回避される。
最後に、図5に示すように、型開きを行えば燃料電池用組立体12が露呈するに至る。
なお、本発明は、上記した実施形態に特に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、上記の実施形態に係る燃料電池用組立体12では、電解質膜・電極構造体18と樹脂製枠体30とが間隔をおいて配置され、該電解質膜・電極構造体18と樹脂製枠体30との間全体にゴム部材32が介在している。しかしながら、特にこれに限定されるものではなく、燃料電池用組立体12は、以下のように変形することも可能である。
変形例における燃料電池用組立体の要部概略断面図を図6及び図7に示す。なお、図6及び図7に示す構成要素のうち、図5に示した構成要素と同一のものについては同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
図6に示す燃料電池用組立体74は、アノード電極28に比して矢印C方向の長さが短いカソード電極76を有する電解質膜・電極構造体78と、該電解質膜・電極構造体78の形状に合わせてカソード電極76に対向する側に延在部80が形成された樹脂製枠体82とを備えている。すなわち、電解質膜24において、カソード電極76の外周端側から露呈する部位は、樹脂製枠体82の延在部80に載置される。そして、アノード電極28と樹脂製枠体82との間にゴム部材32が介在することで、電解質膜・電極構造体78と樹脂製枠体82とが接合されている。
また、図7に示す燃料電池用組立体84は、電解質膜・電極構造体18のアノード電極28に向かって、電解質膜24に接触することなく延在する延在部86が形成された樹脂製枠体88を備えている。なお、燃料電池用組立体84は、延在部86と電解質膜24との間に形成される隙間を介して、電解質膜・電極構造体18のアノード電極28側からカソード電極26側に到達するまで、上記と同様に液状ゴム72(図4参照)を射出することで形成可能である。
10…燃料電池 12、74、84…燃料電池用組立体
14…積層体 16、20、22…セパレータ
18、18a、18b、78…電解質膜・電極構造体
24…電解質膜 26、76…カソード電極
28…アノード電極 30、82、88…樹脂製枠体
32…ゴム部材 34…シール部材
36…ガス拡散層 38…浸透部
40…凹部 60…成形型
62…下型 64…上型
66…凸部 68…シール形成室
70…射出孔 72…液状ゴム

Claims (7)

  1. 固体高分子からなる電解質膜を一組の電極で挟持して構成される電解質膜・電極構造体と、該電解質膜・電極構造体の外周に配置される樹脂製枠体とを有する燃料電池用組立体であって、
    前記樹脂製枠体の一端面は、前記電解質膜・電極構造体の端面と対向し、
    前記樹脂製枠体の一端面側には他端面側よりも厚さが小さい部位が形成され、
    前記樹脂製枠体を構成する樹脂の融点に比して低温で固化するゴム部材を有し、
    前記ゴム部材が、前記樹脂製枠体の厚さが最大となる部位の両主面を被覆することなく、該樹脂製枠体及び前記電解質膜・電極構造体の対向する端面同士の間に介在して互いを接合することを特徴とする燃料電池用組立体。
  2. 請求項1記載の燃料電池用組立体において、前記ゴム部材は、前記電解質膜・電極構造体の外周を周回するシール部を形成することを特徴とする燃料電池用組立体。
  3. 請求項1又は2記載の燃料電池用組立体において、前記ゴム部材は、シリコーンゴムからなることを特徴とする燃料電池用組立体。
  4. 固体高分子からなる電解質膜を一組の電極で挟持して構成される電解質膜・電極構造体と、該電解質膜・電極構造体の外周に配置される樹脂製枠体とを有する燃料電池用組立体の製造方法であって、
    成形型の内部に前記電解質膜・電極構造体と、該電解質膜・電極構造体の端面と対向する一端面側に他端面側よりも厚さが小さい部位が形成された前記樹脂製枠体とを配置する工程と、
    前記成形型の内部に、前記樹脂製枠体を構成する樹脂の融点に比して低温のゴムの流動物を射出する工程と、
    前記ゴムの流動物を前記樹脂の融点に比して低温で固化してゴム部材とすることで、前記樹脂製枠体の厚さが最大となる部位の両主面を被覆することなく、該樹脂製枠体及び前記電解質膜・電極構造体の対向する端面同士の間に該ゴム部材を介在させて互いを接合する工程と、
    を有することを特徴とする燃料電池用組立体の製造方法。
  5. 請求項4記載の製造方法において、前記成形型は、前記電解質膜・電極構造体の外周を周回するシール部を形成するシール形成室を有し、前記ゴム部材によって、前記電解質膜・電極構造体と前記樹脂製枠体を接合するとともに前記シール部を形成することを特徴とする燃料電池用組立体の製造方法。
  6. 請求項4又は5記載の製造方法において、前記電極に含まれるガス拡散層は、前記ゴムの流動物が浸透する浸透部又は該浸透部近傍に凹部が形成され、且つ前記成形型は前記凹部に挿入可能な凸部が形成され、前記凸部によって前記凹部の内面を押圧した状態で、前記成形型内に前記ゴムの流動物を射出することを特徴とする燃料電池用組立体の製造方法。
  7. 請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ゴムとしてシリコーンゴムを用いることを特徴とする燃料電池用組立体の製造方法。
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