ゴム物品の製造に利用されているゴム組成物は、典型的には、所望の物理的及び化学的特性を達成するためにカーボンブラック及び/又はシリカを充填されている。そのようなゴム組成物中のゴムと充填剤間の相互作用は、加硫ゴム(vulcanizate)の物理的性質に深い影響を及ぼしている。実際、ゴムと充填剤間の相互作用は、充填剤の分散度、エラストマー−充填剤界面の形成、及び充填剤−充填剤ネットワークを調節している。これらの相互作用はいずれも、硬化ゴム組成物の物理的性質、例えば応力−歪特性、循環荷重下でのエネルギー損失、耐摩耗性、及び引裂き伝播抵抗性に重大な影響を及ぼしている。ポリマー充填剤相互作用の増大は、充填剤をより微細に分散させることを可能にし、より高いレベルの補強が達成できる。また、より多量の充填剤の配合及び/又は従来ゴムに適切に分散できない充填剤の配合も可能にする。
良好なゴム/充填剤相互作用を達成することの重要性は長年認識されており、ゴム業界全体及び学界内での多数の研究プロジェクトのテーマとなっている。改良されたゴム/充填剤相互作用を達成することは、タイヤ、ホース、動力伝達ベルト、コンベヤーベルト、ワイパーブレード、及び多数のその他の工業ゴム製品及び消費財などのゴム製品の製造業者にとっては特に関心事である。ゴム状ポリマーと充填剤間の良好な適合性を達成するための一つの認められた手法は、ゴム状ポリマーを、充填剤との相互作用を改良した部分(moiety)で官能化することである。例えば、ゴム状ポリマーをアミンで官能化すれば、カーボンブラック及びシリカとの良好な相互作用を達成することができる。
米国特許第4,935,471号は、カーボンブラックに対して高レベルの親和性を有するポリジエンの製造法を開示している。該方法は、金属末端ポリジエンを、(a)構造式X−A−C≡N[式中、Xはハロゲン原子を表し、Aは1〜20個の炭素原子を含有するアルキレン基を表す]を有するハロゲン化ニトリル、(b)ヘテロサイクリック芳香族窒素含有化合物、及び(c)アルキルベンゾエートからなる群から選ばれるキャッピング剤と反応させることを含む。米国特許第4,935,471号に開示されているキャッピング剤は金属末端ポリジエンと反応して、金属を、末端シアニド基、ヘテロサイクリック芳香族窒素含有基、又はアルキルベンゾエートから誘導される末端基で置き換える。例えば、金属末端ポリジエンがニトリルでキャップされた場合、シアニド基を末端とするポリジエン鎖がもたらされることになる。ヘテロサイクリック芳香族窒素含有化合物をキャッピング剤として使用すると、ピロール基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3−H−インドリル基、シンノリニル基、プテリジニル基、ベータ−カルボリニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基などを末端とするポリジエン鎖を得ることができる。
米国特許第4,935,471号は、リチウムアミドが非常に好適な開始剤であることも開示している。その理由は、リチウムアミドを使用すれば、極性基がポリマー鎖の両端にあるポリジエンを製造できるからである。リチウムアミドによって提供される追加の極性官能性は、カーボンブラックとの増大された相互作用をもたらすので、良好なポリマー−カーボンブラック分散が得られる。米国特許第4,935,471号に開示されているリチウムアミドはリチウムピロリジド(lithium pyrrolidide)である。米国特許第4,935,471号は、好適な開始剤は、構造式:
[式中、Aは1〜20個の炭素原子を含有するアルキレン基を表し、R1及びR2は同じでも又は異なっていてもよいが、1〜20個の炭素原子を含有するアルキル基を表す]のアミノアルキルリチウム化合物を含むことも示している。
合成ゴムは低レベルのヒステリシスを示すのも望ましい。このことは、タイヤトレッドコンパウンドに使用されるゴムの場合に特に重要である。そのようなポリマーは通常、硫黄、カーボンブラック、促進剤、劣化防止剤(antidegradant)、及びその他の所望されるゴム用化学薬品を配合された後、加硫又は硬化されて有用な物品の形態になる。そのような硬化ゴムの物理的性質は、カーボンブラックがポリジエンゴム全体に均一に分散されている程度に依存することが確立されている。このことは、カーボンブラックがゴムに対して持つ親和性のレベルとも関連してくる。このことは、ポリジエンゴムを利用して製造されるゴム物品の物理的特性を改良するのに実用的見地から重要となりうる。例えば、タイヤの転がり抵抗及びトレッド摩耗特性は、それに利用されているゴム状ポリマーに対するカーボンブラックの親和性を増大することによって改良することができる。従って、所定のポリジエンゴムのカーボンブラック及び/又はシリカに対する親和性を改良することは非常に望ましいであろう。なぜならば、タイヤトレッド組成物の配合に利用されるポリジエンゴム全体にわたるカーボンブラックの良好な分散は、低いヒステリシス値をもたらし、結果としてそれから製造されたタイヤは低い転がり抵抗を有するからである。また、ヒステリシスの主な原因は、十分弾性回復できないポリマー鎖端のためであることも知られている。従って、ゴム鎖端の充填剤に対する親和性を改良することはヒステリシスの低減に極めて重要である。
米国特許第6,080,835号は、式:
によって定義される官能基を含む官能化エラストマーを開示している。上記式中、R1は、二価アルキレン基、オキシアルキレン基、アミノアルキレン基、及び置換アルキレン基からなる群から選ばれ、各基は約6〜約20個の炭素原子を有し、R2はエラストマーに共有結合し、直鎖アルキレン基、分枝アルキレン基、及びシクロアルキレン基からなる群から選ばれ、各基は約2〜約20個の炭素原子を有する。
米国特許第5,932,662号は、溶媒中に一つ又は複数のアニオン重合性モノマーの溶液を調製し;効果的な条件下で前記モノマーを、式:
を有する重合開始剤の存在下で重合することを含むポリマーの製造法を開示している。上記式中、R1は、6〜約20個の炭素原子を有する二価アルキレン、オキシ−又はアミノ−アルキレンであり;R2は、約2〜約20個の炭素原子を有する直鎖アルキレン、分枝アルキレン、又はシクロアルキレンであり、LiはR2の炭素原子に直接結合しているリチウム原子であり;そしてR3は、ターシャリーアミノ、約1〜約12個の炭素原子を有するアルキル;約6〜約20個の炭素原子を有するアリール;約7〜約20個の炭素原子を有するアルカリール;約2〜約12個の炭素原子を有するアルケニル;約5〜約20個の炭素原子を有するシクロアルキル;約5〜約20個の炭素原子を有するシクロアルケニル;約6〜約20個の炭素原子を有するビシクロアルキル;及び約6〜約20個の炭素原子を有するビシクロアルケニルであり;nは0〜約10の整数である。
米国特許第6,084,025号は、下記ステップを含むプロセスによって製造された官能化ポリマーを開示している。すなわち、環状アミン化合物、有機リチウム化合物、及び1当量のリチウムを基にして3〜約300当量の、ビニル芳香族モノマー、及びそれらの混合物から選ばれるモノマーの溶液を調製し、ここで前記環状アミン化合物は、式:
[式中、R2は、約3〜約16個のメチレン基を有するアルキレン、置換アルキレン、ビシクロアルカン、及びオキシ−又はN−アルキルアミノ−アルキレン基からなる群から選ばれ、Nは窒素原子であり、Hは水素原子である]によって定義され、それによって式A(SOL)yLi[式中、Liはリチウム原子であり、SOLは3〜約300個の重合モノマー単位を有する二価炭化水素基であり、yは0.5〜約3であり、そしてAは前記環状アミンから誘導された環状アミンラジカルである]を有する重合開始剤を形成するステップ;A(SOL)yLiを含有する溶液に、リチウム1当量あたり約0.01〜約2当量のキレート試薬と、式R4OM、R5C(O)OM、R6R7NM、及びR8SO3M[式中、R4、R5、R6、R7、及びR8は、1〜約12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、又はフェニルからそれぞれ選ばれ;Mは、Na、K、Rb又はCsである]を有する化合物から選ばれる有機アルカリ金属化合物と、リビングポリマー構造を形成するのに十分なモノマーとを入れるステップ;そしてリビングポリマー構造をクエンチングするステップを含む。
米国特許第6,344,538号は、2−(N,N−ジメチルアミノメチル)−1,3−ブタジエン、2−(N,N−ジエチルアミノメチル)−1,3−ブタジエン、2−(N,N−di−n−プロピルアミノメチル)−1,3−ブタジエン、2−(シアノメチル)−1,3−ブタジエン、2−(アミノメチル)−1,3−ブタジエン、2−(ヒドロキシメチル)−1,3−ブタジエン、2−(カルボキシメチル)−1,3−ブタジエン、2−(アセトキシメチル)−1,3−ブタジエン、2−(2−アルコキシ−2−オキソエチル)−1,3−ブタジエン、2,3−ビス(シアノメチル)−1,3−ブタジエン、2,3−ビス(ジアルキルアミノメチル)−1,3−ブタジエン、2,3−ビス(4−エトキシ−4−4−オキソブチル)−1,3−ブタジエン及び2,3−ビス(3−シアノプロピル)−1,3−ブタジエンからなる群から選ばれる官能化モノマー及び重合官能化モノマー、及びそのような官能化ジエンモノマー及びポリマーの製造法を開示している。
米国特許第6,211,321号は、40〜99.99重量%の共役ジエンモノマーの結合単位、0〜50重量%の芳香族ビニルモノマーの結合単位、及び0.01〜20重量%の、ターシャリーアミノ含有ビニルモノマー及びハロゲン含有ビニルモノマーの少なくとも一つを含むその他のビニルモノマーの結合単位を含むジエンゴムであって、ここで、前記結合されたその他のビニルモノマーの少なくとも一部は四級化されて四級化ターシャリーアミノ含有ビニルモノマー単位を形成しているが、ただし、前記その他のビニルモノマーが結合ターシャリーアミノ含有ビニルモノマー単位を含む場合、それはモノハロゲン化炭化水素で四級化され、前記その他のビニルモノマーが結合ハロゲン含有ビニルモノマー単位を含む場合、それはターシャリーアミンで四級化されており、そして100℃におけるムーニー粘度ML1+4が10〜200のジエンゴムを開示している。前記ターシャリーアミノ含有ビニルモノマーは、式CH2=CR11A2NR12R13の化合物で、前記式中、R11は、水素原子又は低級アルキル基であり、R12及びR13は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、A2は、アルキレン基、アリーレン基、アリーレン−アルキレン基、アルキレン−アリーレン基、又は一般式−C(=O)−M−R14−[ここで、Mはオキシ基又はNH基であり、R14はアルキレン基、アリーレン基、アリーレン−アルキレン基又はアルキレン−アリーレン基である]の連結基であり、R12又はR13はA2と一緒になってヘテロサイクリック環を形成してもよい。そして前記四級化ターシャリーアミノ含有ビニルモノマーの結合単位は、式:
を有しており、上記式中、R1は、水素原子又は低級アルキル基であり、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、A1は、アルキレン基、アリーレン基、アリーレン−アルキレン基、アルキレン−アリーレン基、又は一般式−C(=O)−M−R5−[ここで、Mはオキシ基又はNH基であり、R5はアルキレン基、アリーレン基、アリーレン−アルキレン基又はアルキレン−アリーレン基である]の連結基であり、R2又はR3はA1と一緒になってヘテロサイクリック環を形成してもよく、Xはハロゲン原子である。
米国特許第6,057,397号は、シリカ含有ジエンゴム組成物を開示している。これは、カーボンブラック含有ジエンゴム組成物と比べて、レジリエンス(転がり抵抗の指標)に優れ、引張強さ及び耐摩耗性は少なくとも等しく、また加工性及び硬度特性が良好であると報告されている。米国特許第6,057,397号に開示されているシリカ含有ジエンゴム組成物は、ジエンゴム成分として、50,000以上の重量平均分子量を有するヒドロキシル基含有ジエンゴム、又はヒドロキシル基含有ジエンゴムとその他のジエンゴムのブレンドを含有することを特徴とする。この組成物は、ジエンゴム成分として、50,000以上の重量平均分子量を有するヒドロキシル基含有ジエンゴム、又はヒドロキシル基含有ジエンゴムとその他のジエンゴムの組合せを使用するプロセスによって製造され、成分の混合は、ジエンゴム成分をシリカの必要量の少なくとも一部と混合し、次いで得られた混合物をシリカの残り及びその他の配合剤と混合することによって実施される。
米国特許第6,114,432号は、40〜99.95重量パーセントの共役ジエンモノマー、0.05〜20重量パーセントのアミノ基含有モノマー、及び0〜55重量パーセントの芳香族ビニルモノマーの組成(結合量を基にして)を有する10〜100重量パーセントのアミノ基含有ジエンコポリマーゴム(A)、及び0〜90重量パーセントの別のジエンゴム(B)で構成される100重量部のジエンゴム成分と、窒素吸収(BET法)による測定で50〜220m2/gの比表面積を有する10〜150重量部のシリカとを含み、優れた発熱抵抗性、引張特性、摩耗特性及び加工性を有するジエンゴム組成物、並びにその製造法である。
米国特許第6,627,721号は、(1)少なくとも一つの共役ジオレフィンモノマー、及び(2)構造式:
を有する少なくとも一つの官能化モノマーから誘導された反復単位を含むゴム状ポリマーを開示している。上記式中、Rは、1〜約10個の炭素原子を含有するアルキル基又は水素原子を表し、R1及びR2は、同じでも又は異なっていてもよく、水素原子又は
からなる群から選ばれる部分を表し、上記式中、R3基は、同じでも又は異なっていてもよく、1〜約10個の炭素原子を含有するアルキル基、アリール基、アリル基、及び構造式−(CH2)y−O−(CH2)z−CH3のアルキルオキシ基を表し、Zは窒素含有ヘテロサイクリック化合物を表し、R4は、1〜約10個の炭素原子を含有するアルキル基、アリール基、及びアリル基から選ばれるメンバーを表し、n及びxは、1〜約10の整数を表す。ただし、R1及びR2は、両方とも水素原子ではあり得ない。
米国特許第7,108,033号は、(1)少なくとも一つの共役ジオレフィンモノマー、及び(2)構造式:
を有する少なくとも一つの脱離基担持モノマーから誘導された反復単位を含むゴム状ポリマーを開示している。上記式中、Rは、1〜約10個の炭素原子を含有するアルキル基又は水素原子を表し、R’は、1〜約10個の炭素原子を含有するメチル基又は水素原子を表す。ただし、Rがアルキル基を表す場合、R’は水素原子を表す。また、式中、R1及びR2は、同じでも又は異なっていてもよく、R1は、脱離基で官能化されたアルキル基を表し、R2は、水素原子、1〜18個の炭素原子を含有するアルキル基、6〜18個の炭素原子を含有するアリール基、7〜18個の炭素原子を含有するアルカリール基、及び脱離基で官能化されたアルキル基からなる群から選ばれる部分を表す。
米国特許第7,108,033号はさらに、外周トレッド、二つの相隔たるビード、ビードからビードにかけて伸びる少なくとも一つのプライ、及びそこから放射状に伸び、前記トレッドを前記ビードに接続しているサイドウォールを有する一般的にドーナツ形(トロイダル形)のカーカスを含むタイヤも開示している。ここで、前記トレッドは接地するように適応され、前記トレッドは、(I)フィラーと、(II)(1)少なくとも一つの共役ジオレフィンモノマー、及び(2)構造式:
を有する少なくとも一つのモノマーから誘導された反復単位を含むゴム状ポリマーとを含む。上記式中、Rは、1〜約10個の炭素原子を含有するアルキル基又は水素原子を表し、R’は、メチル基又は水素原子を表す。ただし、Rがアルキル基を表す場合、R’は水素原子を表す。また、式中、R1及びR2は、同じでも又は異なっていてもよく、R1は、脱離基で官能化されたアルキル基を表し、R2は、水素原子、1〜18個の炭素原子を含有するアルキル基、6〜18個の炭素原子を含有するアリール基、7〜18個の炭素原子を含有するアルカリール基、及び脱離基で官能化されたアルキル基からなる群から選ばれる部分を表す。
本発明によれば、共役トリエンモノマーは、共重合させて事実上いずれのタイプの合成ゴムにも入れることができる。本発明に従って利用される共役トリエンモノマーは、典型的には6〜30個の炭素原子を含有し、さらに典型的には8〜12個の炭素原子を含有する。そのような共役トリエンモノマーは、直鎖でも、分枝でも、環状でも、又は非環状でもよい。例えば、共役トリエンは、構造式:
の6,6−ジメチルフルベンでありうる。これは、生長段階でターシャリーアリル性のカルボカチオンを形成する能力を有し、カチオン重合に特に適している。アロオシメンは、本発明に従って使用できる好適な市販共役トリエンモノマーの例である。本発明の目的のために、共役トリエンモノマーは、少なくとも3個及びおそらくそれより多い共役二重結合を有するモノマーを含むものとする。ほとんどの場合、共役トリエンモノマーは共役二重結合を3個しか含有せず、最も極端な場合でも、せいぜい5個の共役二重結合しか含有しない。
ほとんどの場合、共役トリエンモノマーは、1,3−ブタジエン又はイソプレンなどの少なくとも一つの共役ジオレフィンモノマーと共重合される。所望により、共役ジオレフィンモノマーと共重合できるその他のモノマー、例えばビニル芳香族モノマーも、重合に含めることができる。いずれの場合も、典型的には約0.01phm(モノマー100重量部あたりの重量部)〜約30phmの共役トリエンモノマーが重合に含められる。より典型的には、約0.02phm〜約20phmの共役トリエンモノマーがゴム状ポリマーに含められる。良好な結果は、通常、0.1phm〜10phmの共役トリエンモノマーをゴム状ポリマーに含めることによって達成できる。典型的には、約0.2phm〜約5phmの共役トリエンモノマーをゴム状ポリマーに組み込むのが好適であり、0.25phm〜2.5phmの共役トリエンモノマーをゴム状ポリマーに組み込むのが最も好適である。例えば、0.3phm〜2.0phmの共役トリエンモノマーがゴム状ポリマーに組み込まれうる。
スチレン又はα−メチルスチレンなどのビニル芳香族モノマーがゴム状コポリマーに共重合される場合、それらは典型的には1phm〜約50phmのレベルで含められる。ビニル芳香族モノマーは、より典型的には、ゴム状ポリマーに約10phm〜約40phmの範囲内のレベルで組み込まれ、最も典型的には約15phm〜約30phmのレベルで含められる。例えば、ゴム状ポリマーは、約58重量パーセント〜約90重量パーセントの1,3−ブタジエン、約8重量パーセント〜約40重量パーセントのスチレン、及び約0.2phm〜約5phmの共役トリエンモノマーから誘導される反復単位を含むことができる。そのようなゴム状ポリマーは、さらに典型的には、約69重量パーセント〜約85重量パーセントの1,3−ブタジエン、約14重量パーセント〜約30重量パーセントのスチレン、及び約0.3phm〜約2.5phmの共役トリエンモノマーから誘導される反復単位を含む。
本発明によれば、重合及びポリマーの回収は、ジエンモノマーの重合プロセスに適切な各種方法に従って適切に実施される。これには、空気及びその他の大気中不純物、特に酸素及び水分を除外した条件下でのバッチ式、半連続式、又は連続式の運転が含まれる。共役トリエンモノマーのゴム状ポリマーへの重合は、いくつかの異なる重合リアクター系で実施することもできる。例えば、バルク重合、気相重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、及び沈殿重合系であるが、これらに限定されない。商業的に好適な重合法は、溶液重合及び乳化重合である。
重合反応は、フリーラジカル開始剤、レドックス開始剤、アニオン開始剤、カチオン開始剤、又はチーグラー・ナッタ触媒のような配位触媒を使用することができる。好適な開始系は、重合される特定のモノマー及び合成されるゴム状ポリマーの所望特性による。乳化重合では典型的にはフリーラジカル開始剤が利用される。溶液重合では、重合を開始するのに典型的にはアルキルリチウム化合物などのアニオン開始剤が採用される。フリーラジカル重合の利点は、反応が典型的にはイオン重合より厳しくない条件下で実施できることである。フリーラジカル開始系は、微量不純物に対する耐性も大きい。
本発明の実施に有用なフリーラジカル開始剤の例は、“レドックス”開始剤として知られているもの、例えばキレート鉄塩、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、及び有機ヒドロペルオキシドの組合せなどである。有機ヒドロペルオキシドの代表例は、クメンヒドロペルオキシド、パラメンタン(paramenthane)ヒドロペルオキシド、及びターシャリーブチルヒドロペルオキシドである。ターシャリーブチルヒドロペルオキシド(t−BHP)、ターシャリーブチルペルアセテート(t−BPA)及び“アゾ”開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)が好適である。
典型的には、カチオン重合の場合を除いて(これについては後述)、反応温度は典型的には0℃〜150℃の範囲に維持される。約20℃〜約120℃の温度が一般的には好適で、60℃〜100℃の範囲内の温度が通常最も好適である。反応圧力は重要でない。典型的には、液相の反応条件を維持するほど高ければよい。それは自己生成的な圧力で、反応混合物の成分及び温度に応じて変動しうる。又は、例えば1000psiまでなど、それより高いこともある。
バッチ運転では、官能化ジエンモノマーの重合時間は、所望に応じて変えることができる。例えば、数分〜数日間の間で変動しうる。バッチプロセスにおける重合は、モノマーがもはや吸収されなくなったら、あるいは所望であればそれより早く、例えば反応混合物が粘稠になりすぎたら終了させてよい。連続運転では重合混合物は任意の適切な設計のリアクターに送り込むことができる。そのような場合の重合反応は、滞留時間を変動させることによって適切に調整される。滞留時間はリアクター系のタイプによって変動し、例えば10〜15分から24時間以上の範囲になる。反応混合物中のモノマーの濃度は、使用される条件に応じて、反応混合物の5重量パーセントから上方に35重量パーセントの高さまで変動しうる。重合混合物中のモノマーレベルは、典型的には約10〜20重量パーセントの範囲内であろう。
本発明による重合反応は、反応条件下で液体であり比較的不活性な適切な溶媒中で実施できる。溶媒は、ジエン反応物と1分子あたり同じ数の炭素原子を有していても、又は異なる沸点範囲にあってもよい。好適な溶媒は、アルカン及びシクロアルカン炭化水素である。適切な溶媒は、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、又は様々な飽和炭化水素混合物である。ベンゼン、トルエン、イソプロピルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素、あるいはクロロベンゼン、ブロモベンゼン、又はオルトジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族化合物も使用できる。利用できるその他の有用な極性溶媒は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジクロロメタン、メチルクロリド、及び所望の極性を得るためにそれらの混合物などである。
従来の乳化処方(recipe)も本発明に使用できるが、重合モノマー自体又は重合パラメーターのいずれかに起因する多少の制約及び修正が生ずることがある。スルホネート洗剤(detergent)及びカルボキシレート、スルフェート、及びホスフェート石鹸(soap)を含む当該技術分野で公知のイオン性界面活性剤は、本発明に有用である。イオン性界面活性剤のレベルは有機成分の総重量に基づいて計算され、有機成分100重量部あたり約2〜30重量部のイオン性界面活性剤の範囲になりうる。
好ましくは、重合は、本質的にすべての共役トリエンモノマーをポリマーに組み込むために、共役トリエンモノマーの変換を完了させるように実施される。過剰のゲル形成を避けるために、漸増添加(incremental addition)、又は連鎖移動剤が使用されうる。そのような微修正は当業者の技能の範囲内である。重合が完了したら、ポリマーをポリマーのスラリー又は溶液から回収する。ポリマーを希釈剤から分離するには単純なろ過で十分であろう。しかしながら、工業的利用においては、熱水凝固(hot water coagulation)とそれに続くスチームストリッピング技術が一般的にポリマーの回収に実施される。希釈剤からポリマーを分離するための他の手段を使用してもよい。ポリマーは、残渣を分離するために、反応混合物中で、別個に又はスラリー化されている間に処理することができる。そのような処理は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノールなどのアルコールを用いて、酸性化アルコールを用いて、又はその他の類似極性液体を用いて行うことができる。多くの場合、ポリマーは炭化水素溶液中に得られるので、ポリマーは、酸性化アルコール、例えば2%塩酸を含有する迅速撹拌されたメタノール又はイソプロパノールによる凝固によって回収することができる。この初期凝固の後、ポリマーはアルコール中で数回洗浄される。
共役トリエンモノマーは、当然ながら、一つ又は複数のコモノマーと重合されることになる。満足いくポリマー形成速度を得るために、含められる官能化モノマー及び他の関係モノマーの量によっては、重合処方又は反応条件に多少の調整が必要になることもある。本発明の実施に有用なコモノマーの例は、1,3−ブタジエン、イソプレン、及びヘキサジエンなどのジエンモノマーである。ジエンモノマーに加えて、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、塩化ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸、イタコン酸及びアクリル酸などのビニルモノマーも使用できる。異なる官能化モノマーの混合物及び異なるコモノマーの混合物が使用できる。
共役トリエンモノマーは、20℃以上の温度で実施される溶液重合で、共役ジオレフィンモノマーとランダム共重合させることができる。共役トリエンモノマーは、アニオン開始剤を用いる溶液重合によって製造できる事実上あらゆるタイプのゴム状ポリマーに組み込むことができる。ゴム状ポリマーの合成に使用される重合は、通常炭化水素溶媒中で実施される。そのような炭化水素溶媒は、一つ又は複数の、芳香族、パラフィン系又はシクロパラフィン系化合物を含む。これらの溶媒は、通常1分子あたり約4〜約10個の炭素原子を含有し、重合条件下で液体である。適切な有機溶媒のいくつかの代表例は、単独又は混合物で、ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソブチルベンゼン、石油エーテル、灯油、ペトロリウムスピリット、石油ナフサなどである。
溶液重合では、通常5〜30重量パーセントのモノマーが重合媒体中にある。そのような重合媒体は、当然ながら、有機溶媒及びモノマーを含む。ほとんどの場合、重合媒体は10〜25重量パーセントのモノマーを含有するのが好適であろう。一般的には重合媒体は15〜20重量パーセントのモノマーを含有するのがさらに好適である。スラリー中で実施される重合では、モノマーは35重量パーセントまでの、より高量で存在することができる。例えば、そのようなスラリーは20〜約35重量パーセントのモノマーを含有することができる。
本発明のプロセスによって製造される合成ゴムは、官能化モノマーと共役ジオレフィンモノマーとのランダム共重合によって、又は官能化モノマーと共役ジオレフィンモノマー及びビニル芳香族モノマーとのランダム三元共重合によって製造できる。当然ながら、共役ジオレフィンモノマーの混合物を一つ又は複数のエチレン性不飽和モノマー、例えばビニル芳香族モノマーと重合することによってそのようなゴム状ポリマーを製造することも可能である。ゴム状ポリマーの合成に利用でき、本発明に従って結合できる共役ジオレフィンモノマーは、一般的に4〜12個の炭素原子を含有する。商業目的のためには4〜8個の炭素原子を含有するものが一般的に好適である。同様の理由から、1,3−ブタジエン及びイソプレンは最も一般的に利用されている共役ジオレフィンモノマーである。利用できるいくつかの追加の共役ジオレフィンモノマーは、単独又は混合物で、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ピペリレン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエンなどである。
共役トリエンモノマーを含有するゴム状ポリマーに重合できる可能性のあるエチレン性不飽和モノマーのいくつかの代表例は、アルキルアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレートなど;一つ又は複数の末端CH2=CH−基を有するビニリデンモノマー;ビニル芳香族化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、フルオロスチレンなど;α−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテンなど;ハロゲン化ビニル、例えば臭化ビニル、クロロエテン(塩化ビニル)、フッ化ビニル、ヨウ化ビニル、1,2−ジブロモエテン、1,1−ジクロロエテン(塩化ビニリデン)、1,2−ジクロロエテンなど;ビニルエステル、例えば酢酸ビニル;α,β−オレフィン性不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリル及びメタクリロニトリル;α,β−オレフィン性不飽和アミド、例えばアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミドなどである。
一つ又は複数のジエンモノマーと一つ又は複数の他のエチレン性不飽和モノマーのコポリマーであるゴム状ポリマーは、通常、約50重量パーセント〜約99重量パーセントの共役ジオレフィンモノマーと、共役ジオレフィンモノマーのほかに約1重量パーセント〜約50重量パーセントの他のエチレン性不飽和モノマーを含有する。例えば、50〜95重量パーセントの共役ジオレフィンモノマーと5〜50重量パーセントのビニル芳香族モノマーを含有する共役ジオレフィンモノマーとビニル芳香族モノマーのコポリマー、例えばスチレン−ブタジエンゴムは、多くの用途で有用である。
ビニル芳香族モノマーは、ポリジエンゴムに一般に組み込まれるエチレン性不飽和モノマーのおそらく最も重要なグループである。そのようなビニル芳香族モノマーは、当然ながら、利用される共役ジオレフィンモノマーと共重合できるように選ばれる。一般的に、有機リチウム開始剤で重合することが知られている任意のビニル芳香族モノマーが使用できる。そのようなビニル芳香族モノマーは、典型的には8〜20個の炭素原子を含有する。通常、ビニル芳香族モノマーは8〜14個の炭素原子を含有することになろう。最も広く使用されているビニル芳香族モノマーはスチレンである。利用できるビニル芳香族モノマーのいくつかの例は、スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、α−メチルスチレン、4−フェニルスチレン、3−メチルスチレンなどである。
共役トリエンモノマーを組み込むことができるゴム状ポリマーのいくつかの代表例は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、α−メチルスチレン−ブタジエンゴム、α−メチルスチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、イソプレン−ブタジエンゴム(IBR)、α−メチルスチレン−イソプレン−ブタジエンゴム及びα−メチルスチレン−スチレン−イソプレン−ブタジエンゴムなどである。ゴム状ポリマーが二つ以上のモノマーから誘導された反復単位を含む場合、共役トリエンモノマーを含む異なるモノマーから誘導された反復単位は、通常本質的にランダムに分配される。モノマーから誘導された反復単位は、二重結合が重合反応によって通常消費されているという点でモノマーとは異なる。しかしながら、本発明の異なる態様において、共役トリエンモノマーから誘導された反復単位は、主にゴム状ポリマーのポリマー鎖の末端に組み込まれる。
ゴム状ポリマーは、溶液重合によって、バッチプロセスでも、少なくとも一つの共役ジオレフィンモノマー、共役トリエンモノマー、及び任意の追加のモノマーを重合ゾーンに連続的に装入することによる連続プロセスでも製造できる。重合ゾーンは、典型的には重合リアクター又は一連の重合リアクターである。重合ゾーンは、通常、モノマー、ポリマー、開始剤、及び改質剤を有機溶媒全体に良く分散させておくために撹拌を提供する。そのような連続重合は典型的には多段リアクター系で実施される。合成されたゴム状ポリマーは重合ゾーンから連続的に取り出される。重合ゾーンで達成されるモノマー変換率は通常少なくとも約85パーセントであろう。モノマー変換率が少なくとも約90パーセントであるのはより典型的なことであり、モノマー変換率は少なくとも約95パーセントであるのが好ましい。達成されるモノマー変換率は少なくとも98パーセントであるのがさらに好ましい。
共役トリエンモノマーは、チーグラー・ナッタ触媒を使用するような配位重合系を利用してゴム状ポリマーに共重合することもできる。例えば、共役トリエンモノマーは、四塩化チタン(TiCl4)と有機アルミニウム化合物、例えばトリエチルアルミニウムAl−(CH2−CH3)3を含むチーグラー・ナッタ触媒系を用いた溶液重合によって、共役ジオレフィンモノマーと共重合させることができる。そのような重合触媒は、イソプレンと共役ジオレフィンモノマーの共重合に特に有益である。米国特許第3,931,136号は、本発明に従ってイソプレンと共役トリエンモノマーの共重合に利用できる触媒系である。米国特許第3,931,136号に記載されている触媒は下記の三成分混合物である。すなわち(A)四塩化チタン、(B)式AlR3[式中、各Rは、アルキル基、好ましくは1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基、アリール基、好ましくはフェニル基、又はシクロアルキル基、好ましくはシクロヘキシル基を表す]の有機アルミニウム化合物、及び(C)式:
[式中、R’及びR”は、同じでも又は異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。R’及びR”は、好ましくは、1〜5個の炭素原子を含有するアルキル基又はフェニル基を表す]のベータ−ジケトンの三成分である。米国特許第3,931,136号の教示は、共役トリエンモノマーと共役ジオレフィンモノマーの共重合に使用できる触媒系及び重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
共役トリエンモノマーとイソプレンのような共役ジエンモノマーの共重合のために本発明に従って使用できる、四塩化チタンとトリアルキルアルミニウム化合物の混合物を含む触媒系を用いた溶液重合技術は、米国特許第4,430,487号に開示されている。米国特許第4,430,487号の教示は、本発明によるゴム状ポリマーの合成に使用できる触媒系及び重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
イソプレンを、四塩化チタン、トリアルキルアルミニウム化合物及びジフェニルエーテルを含む触媒系を用いて重合することによるシス−1,4−ポリイソプレンの合成は、望まざるゲルの形成をもたらしかねない。米国特許第5,919,876号は、そのような重合をジアリールアミン、例えばパラスチレン化ジフェニルアミンの存在下で実施することによってゲル形成を削減できることを開示している。米国特許第5,919,876号は、さらに詳しくは、ゲル含有量の低いシス−1,4−ポリイソプレンの合成法を開示している。該方法は、イソプレンを、不活性有機溶媒中で、予備形成された触媒系を用いて重合することを含む。前記予備形成された触媒系は、有機アルミニウム化合物を少なくとも一つのエーテルの存在下で四ハロゲン化チタン、例えば四塩化チタンと反応させることによって製造される。前記重合は、約0℃〜約100℃の範囲内の温度で実施され、前記重合は、ジアリールアミンの存在下で実施される。米国特許第5,919,876号の教示は、本発明によるゴム状ポリマーの合成に使用できる触媒系及び溶液重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
共役トリエンモノマーは、予備形成された触媒、すなわち有機アルミニウム化合物を四塩化チタンと反応させることによって製造された触媒を利用して、気相重合により共役ジオレフィンモノマーと共重合させることができる。米国特許第6,066,705号は、イソプレンを下記ステップを含むプロセスでシス−1,4−ポリイソプレンに気相重合するための方法を開示している。すなわち、(1)反応ゾーンに、前記イソプレンと予備形成された触媒系、すなわち有機アルミニウム化合物を四塩化チタンと好ましくは少なくとも一つのエーテルの存在下で反応させることによって製造された触媒系を装入し;ここで前記イソプレンは、適切な温度と圧力の組合せによって前記反応ゾーンにおいては気相に維持され;(2)前記イソプレンを、約35℃〜約70℃の範囲内の温度でシス−1,4−ポリイソプレンに重合させ;そして(3)前記シス−1,4−ポリイソプレンを前記反応ゾーンから取り出すステップである。ゲル形成は、そのような気相重合では、イソプレンモノマーの重合をジアリールアミン、例えばパラスチレン化ジフェニルアミンの存在下で実施することによって削減できることが分かった。米国特許第6,066,705号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる触媒系及び気相重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
透明及び高純度のポリイソプレンゴムはネオジム触媒系を利用して合成できる。米国特許第6,780,948号は、ポリイソプレンゴムのそのような合成法に関する。該方法は、イソプレンモノマーをネオジム触媒系の存在下で重合することを含み、ネオジム触媒系は、(1)ネオジムカルボキシレートをイソプレンの存在下で有機アルミニウム化合物と約10分〜約30分間反応させてネオジム−アルミニウム触媒成分を製造し、そして(2)その後、該ネオジム−アルミニウム触媒成分をジアルキルアルミニウムクロリドと少なくとも30分間反応させてネオジム触媒系を製造することによって製造される。米国特許第5,919,867号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる触媒系及び重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
米国特許第7,091,150号及び米国特許第7,199,201号は、イソプレンモノマーを、極めて高いシス微細構造含有量及び高い立体規則性を有する合成ポリイソプレンゴムに重合するためのネオジム触媒系の使用を開示している。このポリイソプレンゴムは歪下で結晶化し、天然ゴムと同様にゴム配合物(rubber formulations)に配合することができる。この技術は、さらに詳しくは、ネオジム触媒系の存在下でイソプレンモノマーを重合することを含むポリイソプレンゴムの合成法を開示しており、ネオジム触媒系は、(1)ネオジムカルボキシレートを有機溶媒中で有機アルミニウム化合物と反応させてネオジム−アルミニウム触媒成分を製造し、そして(2)その後、該ネオジム−アルミニウム触媒成分を元素ハロゲンと反応させてネオジム触媒系を製造することを含む方法によって製造される。このプロセスの実施において、ネオジム触媒系は典型的にはニッケル含有化合物を含まない。いずれにしても、米国特許第7,091,150号及び米国特許第7,199,201号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる重合技術を開示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
このプロセスによって製造された合成ポリイソプレンゴムは、イソプレンから誘導された反復単位を含み、該合成ポリイソプレンゴムは、98.0%〜99.5%の範囲内のシス微細構造含有量、0.5%〜2.0%の範囲内の3,4−微細構造含有量、及び0.0%〜0.5%の範囲内のトランス微細構造含有量を有する。米国特許第7,091,150号及び米国特許第7,199,201号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できるネオジム触媒系及び重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
単一成分のランタニド触媒、例えば二ヨウ化ランタニドも、極めて高いシス微細構造含有量を有するポリイソプレンの合成に使用できる。例えば、二ヨウ化ツリウム、二ヨウ化ジスプロシウム、及び二ヨウ化ネオジムは、何ら追加の触媒成分の必要なしに、イソプレンから高シス−1,4−ポリイソプレンゴムへの重合を開始することができる。従って、二ヨウ化ランタニドは、溶液重合条件下で、イソプレンモノマーと共役トリエンモノマーの共重合を開始して、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーにするのに使用することができる。
米国特許第4,894,425号は、官能基を有し得、しかも70%を超える1,2−及び3,4−構造単位を含有するポリイソプレンの合成法を開示している。この方法は、不活性炭化水素溶媒中、触媒として有機リチウム化合物及び共触媒としてエーテルの存在下でのイソプレンのアニオン重合を含む。使用される共触媒は、式R1−O−CH2−CH2−O−R2のエチレングリコールジアルキルエーテルであり、式中、R1及びR2は、異なる数の炭素原子を有するアルキル基で、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルからなる群から選ばれ、二つのアルキル基R1及びR2の炭素原子の合計は5〜7の範囲内である。米国特許第4,894,425号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる触媒系及び重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
結晶化可能な3,4−ポリイソプレンは、有機溶媒中で、米国特許第5,082,906号に記載の触媒系を利用することにより、短い重合時間の後、定量的収率で合成することができる。この触媒系を利用して製造された3,4−ポリイソプレンは歪結晶化可能であり、改良された牽引及び改良された切傷生長耐性(cut growth resistance)を提供するタイヤトレッドに使用できる。米国特許第5,082,906号は具体的には、イソプレンモノマーを、有機溶媒中、約−10℃〜約100℃の範囲内の温度で、(a)有機鉄化合物、(b)有機アルミニウム化合物、(c)キレート芳香族アミン、及び(d)プロトン性化合物で構成される触媒系の存在下で重合することを含む3,4−ポリイソプレンの合成法を開示している。ここで、キレートアミン対有機鉄化合物のモル比は約0.1:1〜約1:1の範囲内であり、有機アルミニウム化合物対有機鉄化合物のモル比は約5:1〜約200:1の範囲内であり、プロトン性化合物対有機アルミニウム化合物のモル比は約0.001:1〜約0.2:1の範囲内である。米国特許第5,082,906号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる触媒系及び重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
米国特許第5,356,997号も、歪結晶化可能な3,4−ポリイソプレンの合成法に関する。この3,4−ポリイソプレンは、約65%〜約85%の範囲内の3,4−微細構造含有量、約15%〜約35%の範囲内のシス−1,4−微細構造含有量を有し、本質的にトランス−1,4−微細構造も1,2−微細構造も含まない。それは有機溶媒中で短い重合時間の後、定量的収率で合成できる。米国特許第5,356,997号は具体的には、イソプレンモノマーを、有機溶媒中、約−10℃〜約100℃の範囲内の温度で、(a)有機溶媒に可溶の有機鉄化合物(有機鉄化合物中の鉄は+3酸化状態である)、(b)部分加水分解された有機アルミニウム化合物(水、アルコール及びカルボン酸からなる群から選ばれたプロトン性化合物を有機アルミニウム化合物に加えることによって製造された)、及び(c)キレート芳香族アミンを含む触媒系の存在下で重合することを含む3,4−ポリイソプレンの合成法を開示している。ここで、キレートアミン対有機鉄化合物のモル比は約0.1:1〜約1:1の範囲内であり、有機アルミニウム化合物対有機鉄化合物のモル比は約5:1〜約200:1の範囲内であり、プロトン性化合物対有機アルミニウム化合物のモル比は約0.001:1〜約0.2:1の範囲内である。米国特許第5,356,997号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる触媒系及び重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
米国特許第5,677,402号は、イソプレンモノマーを、有機リチウム開始剤を用い、約30℃〜約100℃の範囲内の温度で、ナトリウムアルコキシド及び極性改質剤の存在下で重合することを含む3,4−ポリイソプレンゴムの製造法を開示している。ここで、ナトリウムアルコキシド対有機リチウム開始剤のモル比は約0.05:1〜約3:1の範囲内であり、極性改質剤対有機リチウム開始剤のモル比は約0.25:1〜約5:1の範囲内である。米国特許第5,677,402号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる触媒系及び重合技術を教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
米国特許第6,576,728号は、スチレンとイソプレンを共重合して、スチレンから誘導された反復単位のランダム分布を有する低ビニルスチレン−イソプレンゴムを製造する方法を開示している。これらの重合に使用される開始剤系は、(a)リチウム開始剤及び(b)(1)ナトリウムアルコキシド、(2)スルホン酸のナトリウム塩、及び(3)グリコールエーテルのナトリウム塩からなる群から選ばれるメンバーを含む。これらの重合に使用される開始剤系は、ルイス塩基のような極性改質剤を含まないことが重要である。米国特許第6,576,728号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる開始剤系を説明する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
米国特許第6,313,216号は、ランダムスチレン−イソプレンゴムの合成法を開示し、該方法は、(1)イソプレン、スチレン、開始剤、及び溶媒を第一の重合ゾーンに連続装入し、(2)第一の重合ゾーンでイソプレンとスチレンを60〜95パーセントの総変換率まで共重合させて、リビングスチレン−イソプレン鎖を含有するポリマーセメントを製造し、(3)リビングスチレン−イソプレン鎖を含有するポリマーセメント及び追加のイソプレンモノマーを第二の重合ゾーンに連続装入し(イソプレンの全量の5〜40パーセントが第二の重合ゾーンに装入される)、(4)第二の重合ゾーンで共重合を少なくとも90パーセントのイソプレンモノマーの変換率まで継続させ(第二の重合ゾーンにおけるスチレンとイソプレンの総変換率は最大98パーセントに制限される)、(5)リビング鎖端を有するランダムスチレン−イソプレンゴムのポリマーセメントを第二の反応ゾーンから取り出し、(6)ランダムスチレン−イソプレンゴム上のリビング鎖端を不活化し(kill)、そして(7)ランダムスチレン−イソプレンゴムをポリマーセメントから回収することを含み、第一の重合ゾーン及び第二の重合ゾーンにおける共重合は70℃〜100℃の範囲内の温度で実施され、第一の重合ゾーンに装入されるスチレンの量は、ゴムに結合されるスチレンの全量より少なくとも2パーセント多い。米国特許第6,313,216号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる技術を例示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
高ビニル含有量を有するイソプレン−ブタジエンコポリマーは、有機溶媒中で、米国特許第5,061,765号に開示された方法を利用することにより、短い重合時間の後、高収率で合成することができる。この方法を用いて製造されたイソプレン−ブタジエンコポリマーは、約0℃〜約−60℃の範囲内のガラス転移温度を有し、改良された牽引及び改良された切傷生長耐性を提供するタイヤトレッドに使用できる。米国特許第5,061,765号は具体的には、高ビニル含有量を有するイソプレン−ブタジエンコポリマーの合成法を開示し、該方法は、イソプレンモノマー及びブタジエンモノマーを、有機溶媒中、約−10℃〜約100℃の範囲内の温度で、(a)有機鉄化合物、(b)有機アルミニウム化合物、(c)キレート芳香族アミン、及び(d)プロトン性化合物を含む触媒系の存在下で共重合させることを含む。ここで、キレートアミン対有機鉄化合物のモル比は約0.1:1〜約1:1の範囲内であり、有機アルミニウム化合物対有機鉄化合物のモル比は約5:1〜約200:1の範囲内であり、プロトン性化合物対有機アルミニウム化合物のモル比は約0.001:1〜約0.2:1の範囲内である。米国特許第5,061,765号の教示は、共役トリエンモノマーがその中に組み込まれたゴム状ポリマーの合成において本発明に従って使用できる技術を説明する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。そのようなゴム状ポリマーは、共役ジエンモノマーとして1,3−ブタジエン又はイソプレンを利用して製造できるが、さらにスチレン又はアルファメチルスチレンのようなビニル芳香族モノマーを含んでいてもよい。
アニオン重合は、典型的には1〜約8個の炭素原子を含有するアルキルリチウム化合物、例えばn−ブチルリチウムで開始させることができる。そのようなアニオン重合は、1,3−ブタジエン又はイソプレンを共役トリエンモノマーと共重合させるのに使用することができる。利用されるリチウム開始剤の量は、重合されるモノマー及び合成されるポリマーに求められる分子量に応じて変動する。しかしながら、一般的規則として、0.01〜1phm(モノマー100重量部あたりの重量部)のリチウム開始剤が利用されることになろう。ほとんどの場合、0.01〜0.1phmのリチウム開始剤が利用され、0.025〜0.07phmのリチウム開始剤の利用が好適である。
本発明の重合プロセスは、アルキルテトラヒドロフルフリルエーテルのような極性改質剤の存在下で実施できる。極性改質剤は重合がアニオン重合の場合に特に有益である。使用できる特定の極性改質剤のいくつかの代表例は、メチルテトラヒドロフルフリルエーテル、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、プロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、オクチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ドデシルテトラヒドロフルフリルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、又はN−フェニルモルホリンなどである。
極性改質剤は、典型的には、極性改質剤対リチウム開始剤のモル比が約0.01:1〜約5:1の範囲内のレベルで使用される。極性改質剤対リチウム開始剤のモル比は、さらに典型的には約0.1:1〜約4:1の範囲内である。極性改質剤対リチウム開始剤のモル比は約0.25:1〜約3:1の範囲内であるのが一般的に好適である。極性改質剤対リチウム開始剤のモル比は約0.5:1〜約3:2の範囲内であるのが一般的に最も好適である。
重合は、所望により、オリゴマー性オキソラニルアルカンを改質剤として利用して実施することもできる。そのようなオリゴマー性オキソラニルアルカンは米国特許第6,927,269号により詳細に記載されている。米国特許第6,927,269号の教示は、本発明に従って重合改質剤として使用できるオリゴマー性オキソラニルアルカンを教示する目的のために、引用によって本明細書に取り込まれる。
利用される重合温度は、約−20℃〜約180℃の広範囲にわたって変動しうる。ほとんどの場合、約30℃〜約125℃の範囲内の重合温度が利用されることになろう。典型的には、重合温度は約45℃〜約100℃の範囲内であるのが好適である。典型的には、重合温度は約60℃〜約90℃の範囲内であるのが最も好適である。使用される圧力は、通常、重合反応の条件下で実質的に液相を維持するのに十分な圧力である。
重合は、モノマーの重合を実質的に完了させるのに足る長さの時間実施される。言い換えれば、重合は、通常、少なくとも約85%の高い変換率が達成されるまで実施される。次いで、重合は、アルコールのような薬剤、停止剤、又はカップリング剤の添加によって終結される。例えば、ハロゲン化スズ及び/又はハロゲン化ケイ素がカップリング剤として使用できる。ハロゲン化スズ及び/又はハロゲン化ケイ素は、非対称カップリングが所望の場合、連続的に添加される。スズカップリング剤及び/又はケイ素カップリング剤のこの連続添加は、通常、重合の大部分が行われるゾーンとは別の反応ゾーンで実施される。カップリング剤は、通常、所望の変換度が達成された後、別の反応容器で添加される。カップリング剤は、炭化水素溶液、例えばシクロヘキサンに入れ、分配と反応のために適切に混合しながら、重合混合物に添加することができる。言い換えれば、カップリング剤は、典型的には、高度の変換が既に達成された後にのみ、添加されることになる。例えば、カップリング剤は、通常、約85パーセントを超えるモノマー変換が実現された後にのみ添加される。典型的には、モノマー変換率が少なくとも約90パーセントに達してからカップリング剤を添加するのが好適であろう。
カップリング剤として使用されるハロゲン化スズは、通常、四ハロゲン化スズ、例えば四塩化スズ、四臭化スズ、四フッ化スズ又は四ヨウ化スズである。しかしながら、所望により三ハロゲン化スズも使用できる。三ハロゲン化スズと結合されたポリマーは最大3本の手(アーム)を持つ。このことは、当然ながら、最大4本の手を持つ四ハロゲン化スズと結合されたポリマーとは大いに異なる。より高い枝分れレベルを誘導するには四ハロゲン化スズが通常好適である。一般的規則として、四塩化スズが最も好適である。
使用できるケイ素カップリング剤は、通常、四ハロゲン化ケイ素、例えば四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四フッ化ケイ素又は四ヨウ化ケイ素である。しかしながら、所望により三ハロゲン化ケイ素も使用できる。三ハロゲン化ケイ素と結合されたポリマーは最大3本の手を持つ。このことは、当然ながら、最大4本の手を持つ四ハロゲン化ケイ素と結合されたポリマーとは大いに異なる。より高い枝分れレベルを誘導するには四ハロゲン化ケイ素が通常好適である。一般的規則として、ケイ素カップリング剤の中では四塩化ケイ素が最も好適である。
ハロゲン化スズとハロゲン化ケイ素の組合せも所望によりゴム状ポリマーとのカップリングに使用することができる。そのようなスズとケイ素カップリング剤の組合せを使用することにより、タイヤゴムの改良された性質、例えば低いヒステリシスが達成できる。シリカとカーボンブラックの両方を含有するタイヤトレッドコンパウンドにスズとケイ素カップリング剤の組合せを利用することは特に望ましい。そのような場合、ゴム状ポリマーのカップリングに使用されるハロゲン化スズ対ハロゲン化ケイ素のモル比は、通常20:80〜95:5の範囲内である。ゴム状ポリマーのカップリングに使用されるハロゲン化スズ対ハロゲン化ケイ素のモル比は、さらに典型的には40:60〜90:10の範囲内である。ゴム状ポリマーのカップリングに使用されるハロゲン化スズ対ハロゲン化ケイ素のモル比は、好ましくは60:40〜85:15の範囲内である。ゴム状ポリマーのカップリングに使用されるハロゲン化スズ対ハロゲン化ケイ素のモル比は、最も好ましくは65:35〜80:20の範囲内である。
広くは、そして例示的には、100グラムのゴム状ポリマーあたり約0.01〜4.5ミリ当量の範囲のスズカップリング剤(ハロゲン化スズ及びハロゲン化ケイ素)が使用される。所望のムーニー粘度を得るためには、100グラムのポリマーあたり約0.01〜約1.5ミリ当量のカップリング剤を利用するのが通常好適である。より多くの量を使用すると、末端反応基を含有する又は不十分なカップリングのポリマーが製造されやすくなる。1当量のリチウムあたり1当量のスズカップリング剤が、最大の枝分かれのための最適量と考えられている。例えば、四ハロゲン化スズと四ハロゲン化ケイ素の混合物をカップリング剤として使用する場合、4モルのライブリチウム端あたり1モルのカップリング剤が利用されることになろう。三ハロゲン化スズと三ハロゲン化ケイ素の混合物をカップリング剤として使用する場合、各3モルのライブリチウム端に対して1モルのカップリング剤が最適に利用されるであろう。カップリング剤は、炭化水素溶液、例えばシクロヘキサンに入れ、分配と反応のために適切に混合しながら、リアクター中の重合混合物に添加することができる。
カップリングが完了したら、カップリングされたゴム状ポリマーを安定化させるために、ターシャリーキレート(tertiary chelating)アルキル1,2−エチレンジアミン又は環状アルコールの金属塩を所望によりポリマーセメントに加えることができる。使用できるターシャリーキレートアミンは、通常、構造式:
のキレートアルキルジアミンである。式中、nは1〜約6の整数を表し、Aは1〜約6個の炭素原子を含有するアルキル基を表し、R1、R2、R3及びR4は、同じでも又は異なっていてもよく、1〜約6個の炭素原子を含有するアルキル基を表す。アルキレン基Aは式−(−CH2−)mの基で、式中mは1〜約6の整数である。アルキレン基は典型的には1〜4個の炭素原子を含有し(mは1〜4となる)、好ましくは2個の炭素原子を含有する。ほとんどの場合、nは1〜約3の整数で、nは1であるのが好適である。R1、R2、R3及びR4は1〜3個の炭素原子を含有するアルキル基を表すのが好適である。ほとんどの場合、R1、R2、R3及びR4はメチル基を表す。
ほとんどの場合、ゴム状ポリマーを安定化させるために、約0.01phr(乾燥ゴム100重量部あたりの重量部)〜約2phrのキレートアルキル1,2−エチレンジアミン又は環状アルコールの金属塩がポリマーセメントに添加される。典型的には、約0.05phr〜約1phrのキレートアルキル1,2−エチレンジアミン又は環状アルコールの金属塩が添加される。さらに典型的には、ゴム状ポリマーを安定化させるために、約0.1phr〜約0.6phrのキレートアルキル1,2−エチレンジアミン又は環状アルコールの金属塩がポリマーセメントに添加される。
重合の停止及びリビングゴム状ポリマーの“終結”に使用できる停止剤は、モノハロゲン化スズ、モノハロゲン化ケイ素、N,N,N’,N’−テトラジアルキルジアミノ−ベンゾフェノン(例えばテトラメチルジアミノベンゾフェノンなど)、N,N−ジアルキルアミノ−ベンズアルデヒド(例えばジメチルアミノベンズアルデヒドなど)、1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン(例えば1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど)、1−アルキル置換ピロリジノン;1−アリール置換ピロリジノン、約5〜約20個の炭素原子を含有するジアルキル−ジシクロアルキル−カルボジイミド、及び約5〜約20個の炭素原子を含有するジシクロアルキル−カルボジイミドなどである。
停止ステップ、及び所望により安定化ステップが完了したら、ゴム状ポリマーは、有機溶媒からスチームストリッピングなどによって回収できる。カップリングされたゴム状ポリマーは、有機溶媒及び残渣から、化学(アルコール)凝固、熱的脱溶媒、又はその他の適切な方法などの手段によって回収できる。例えば、多くの場合、約1〜約4個の炭素原子を含有する低級アルコールをポリマー溶液に添加することによって、有機溶媒からゴム状ポリマーを沈殿させるのが望ましい。ポリマーセメントからゴムを沈殿させるのに適切な低級アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマル−プロピルアルコール及びt−ブチルアルコールなどである。ポリマーセメントからゴム状ポリマーを沈殿させるための低級アルコールの利用は、リチウム末端基を不活性化することによってあらゆる残存リビングポリマーも“終結”させる。カップリングされたゴム状ポリマーが溶液から回収されたら、スチームストリッピングを用いてカップリング化ゴム状ポリマー中の揮発性有機化合物のレベルを低減することができる。さらに、有機溶媒は、ドラム乾燥、押出機乾燥、真空乾燥などによってゴム状ポリマーから除去することができる。
本発明のポリマーは、単独で又は他のエラストマーと組み合わせて、タイヤトレッドストック(treadstock)、サイドウォールストック(素材)又は他のタイヤ部品のストックコンパウンドなどのゴムコンパウンドを製造するために使用することができる。本発明のタイヤにおいて、少なくとも一つのそのような部品は加硫可能なエラストマー又はゴム組成物から製造される。例えば、本発明のプロセスによって製造されたゴム状ポリマーは、天然ゴム、合成ゴム及びそれらのブレンドを含むあらゆる従来使用のトレッドストックゴムとブレンドすることができる。そのようなゴムは当業者には周知であり、合成ポリイソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエン、ブチルゴム、ネオプレン、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム、フルオロエラストマー、エチレンアクリルゴム、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、水素化ニトリルゴム、テトラフルオロエチレン/プロピレンゴムなどを含む。
共役トリエンモノマーはブチルゴムに組み込むこともできる。これは、ブチル/共役トリエンコポリマーの製造に使用されるモノマー装入組成物に共役トリエンモノマーを単に含めることによって達成される。そのような共重合プロセスに使用できる重合技術は、米国特許第6,841,642号に記載されている。米国特許第6,841,642号の教示は引用によって本明細書に援用する。そのようなブチルポリマーは、共役トリエンモノマー、C4〜C7モノオレフィンモノマー及びC4〜C14マルチオレフィンモノマー又はβ−ピネンを含むモノマー混合物から誘導される。
ブチルゴムは、典型的には、約80〜約99.99重量%のC4〜C7モノオレフィンモノマーと約0.01〜約20重量%の共役トリエンモノマーを含有するモノマー装入組成物を利用して製造される。そのようなコポリマーはさらに典型的には、約90〜約99.5重量%のC4〜C7モノオレフィンモノマーと約0.5重量%〜約10重量%の共役トリエンモノマーを含むモノマー装入物を利用して製造される。所望により、ブチルゴムはC4〜C14マルチオレフィンモノマーを含むこともできる。そのようなモノマー混合物は、約60%〜約99重量%のC4〜C7モノオレフィンモノマー、約1.0%〜約20重量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマー又はβ−ピネン及び約0.01%〜約20重量%の共役トリエンモノマーを含む。さらに好ましくは、モノマー混合物は、約80%〜約99重量%のC4〜C7モノオレフィンモノマー、約1.0%〜約10重量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマー又はβ−ピネン、及び0.02〜10重量%の共役トリエンモノマーを含む。最も好ましくは、モノマー混合物は、約90%〜約99重量%のC4〜C7モノオレフィンモノマー及び約1.0%〜約5.0重量%のC4〜C14マルチオレフィンモノマー又はβ−ピネン及び0.02%〜5重量%の共役トリエンモノマーを含む。
好適なC4〜C7モノオレフィンモノマーは、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、4−メチル−1−ペンテン及びそれらの混合物を含む群から選ぶことができる。最も好適なC4〜C7モノオレフィンモノマーはイソブチレンを含む。
好適なC4〜C14マルチオレフィンモノマーは、イソプレン、ブタジエン、2−メチルブタジエン、2,4−ジメチルブタジエン、ピペリリン(piperyline)、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、2−ネオペンチルブタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2−メチル−1,6−ヘプタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、1−ビニル−シクロヘキサジエン及びそれらの混合物を含む群から選ぶことができる。最も好適なC4〜C14マルチオレフィンモノマーはイソプレンを含む。
前述のように、モノマー混合物は少量の一つ又は複数の追加の重合可能なコモノマーを含有することもできる。例えば、モノマー混合物は少量のスチレンモノマーを含有することができる。
好適なスチレンモノマーは、p−メチルスチレン、スチレン、a−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−メトキシスチレン、インデン(インデン誘導体を含む)及びそれらの混合物を含む群から選ぶことができる。最も好適なスチレンモノマーは、スチレン、p−メチルスチレン及びそれらの混合物を含む群から選ぶことができる。
存在する場合、モノマー混合物の約5.0重量%までの量のスチレンモノマーを使用するのが好適である。モノマー混合物における他のモノマーの使用は、当然のことながら、それらがモノマー混合物の他のモノマーと共重合できれば可能である。そのような共重合は、典型的には、ヘキサン又はイソペンタンのような適切な溶媒中、あるいは塩素化又はフッ素化炭化水素、例えば塩化メチル、ジクロロメタン又はジクロロエタンのような重合媒体を利用したスラリー中で、最終ポリマーの分子量を制限する望ましくないレベルの連鎖移動の可能性を排除するために、0〜−120℃の範囲内、さらに好ましくは−50〜−100℃の範囲内の温度で実施される。
前述のように、ブチルポリマーはハロゲン化されていてもよい。好ましくは、ハロゲン化ブチルポリマーは臭素化又は塩素化される。好ましくは、ハロゲンの量は、ポリマーの約0.1〜約8%、さらに好ましくは約0.5%〜約4%、最も好ましくは約1.0%〜約3.0重量%の範囲である。ハロゲン化ブチルポリマーは、前述のモノマー混合物から誘導された、予備製造されたブチルポリマーをハロゲン化することによって製造することもできる。
共役トリエンモノマーは、樹枝状(arborescent)ポリマーに末端配列として組み込むこともできる。これは、公知技術を利用して樹枝状ポリマーを合成することによって達成できる。これは、米国特許第6,747,098号に記載の手順を利用して行うことができ、該特許の教示は引用によって本明細書に援用する。米国特許第6,747,098号の技術は、ポリイソオレフィンと共役トリエンの樹枝状に枝分かれしたブロックコポリマーを下記プロセスによって合成することを含む。すなわち、a)少なくとも一つのイニマー(inimer)及びルイス酸ハロゲン化物の共開始剤(coinitiator)の存在下、約−20℃〜−100℃の温度でイソオレフィンを重合して、二つ以上の分枝点を有する樹枝状エラストマー性分枝ポリイソオレフィンポリマーを製造し、前記イニマーは、イソオレフィンのカチオン重合で(共)重合するための少なくとも一つの基と、イソオレフィンのカチオン重合を開始するための少なくとも一つの基を含む;その後、共役トリエン又は共役トリエンとその他のカチオン共重合可能なモノマーとの混合物を添加して、ポリ−トリエン配列又は共役トリエン含有コポリマー配列を製造し、前記樹枝状エラストマー性分枝ポリイソオレフィンポリマーの一部又はすべての枝は、共役トリエンの組込みに由来する共役二重結合を含有するポリマー配列を末端とすることを含むプロセスである。
樹枝状ポリマーの合成プロセスにおいて、イニマーは、開始剤とモノマー機能の両方を持つ化合物で(IM)、一つ又は複数のオレフィンと共重合する。非常に高いMWの樹枝状PIBが、4−(2−ヒドロキシ−イソプロピル)スチレン及び4−(2−メトキシ−イソプロピル)スチレンをIMとして用いて“ワンポット”のリビングタイプの重合系で製造される。樹枝状PIBの反応性鎖端は、共役トリエン又は例えば共役トリエン/イソブチレン混合物でブロックされて、PIB−Alloブロックが形成される。
本発明のプロセスによって製造されたゴム状ポリマーを従来ゴムとブレンドする場合、その量は10〜99重量パーセントというように広く変動しうる。いずれにしても、本発明の技術を利用して合成された合成ゴムを用いて製造されたタイヤは、低減された転がり抵抗を示す。最大の利益は、本発明の技術を利用して合成されたゴム状ポリマーを用いてタイヤトレッドコンパウンドを製造した場合に実現される。しかしながら、利益は、タイヤの少なくとも一つの構造要素、例えばサブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキム(body ply skim)、又はビードフィラーが該ゴム状ポリマーを含む場合にも達成できる。
本発明に従って製造された合成ゴムは、カーボンブラックを約5〜約100phr(ゴム100重量部あたりの重量部)の範囲の量で配合することができる。約5〜約80phrが好適で、約40〜約70phrがさらに好適である。カーボンブラックは普通に入手できる商業生産されたいずれのカーボンブラックも含みうるが、少なくとも20m2/g、さらに好ましくは少なくとも35m2/gから200m2/g以上までの表面積(EMSA)を有するものである。本願で使用されている表面積の値は、セチルトリメチル−アンモニウムブロミド(CTAB)技術を用いたASTM試験D−1765によって測定された値である。中でも有用なカーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びランプブラックである。さらに詳しくは、カーボンブラックの例は、スーパーアブレーションファーネス(SAF)(super abrasion furnace)ブラック、ハイアブレーションファーネス(HAF)(high abrasion furnace)ブラック、ファストエクストルージョンファーネス(FEF)(fast extrusion furnace)ブラック、ファインファーネス(FF)(fine furnace)ブラック、インターメディエートスーパーアブレーションファーネス(ISAF)(intermediate super abrasion furnace)ブラック、セミ−レインフォーシングファーネス(SRF)(semi-reinforcing furnace)ブラック、ミディアムプロセシングチャンネル(medium processing channel)ブラック、ハードプロセシングチャンネル(hard processing channel)ブラック及びコンダクティングチャンネル(conducting channel)ブラックなどである。利用できるその他のカーボンブラックはアセチレンブラックなどである。上記ブラックの二つ以上の混合物も本発明のカーボンブラック製品の製造に使用できる。使用可能なカーボンブラックの典型的な表面積の値を以下の表にまとめた。
ゴムコンパウンドの製造に利用されるカーボンブラックは、ペレット形でも非ペレット形の綿状塊(flocculent mass)でもよい。好ましくは、より均一な混合のために、非ペレット形のカーボンブラックが好適である。補強されたゴムコンパウンドは、約0.5〜約4phrの公知加硫剤を用いて従来様式に硬化できる。例えば、硫黄又は過酸化物ベースの硬化系が使用できる。適切な加硫剤の一般的開示に関しては、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,第3版,Wiley Interscience,N.Y.1982,Vol.20,pp.365−468,特に“Vulcanization Agents and Auxiliary Materials”pp.390−402を参照すればよい。加硫剤は、当然ながら単独でも組み合わせても使用できる。加硫可能なエラストマー組成物又はゴム組成物は、それらのポリマーをカーボンブラック及びその他の従来型ゴム添加剤、例えば充填剤、可塑剤、抗酸化剤、硬化剤などと、標準的なゴム混合装置及び手順及びそのような添加剤の従来量を用いて配合又は混合することによって製造できる。
本発明を以下の実施例によって例示するが、これらの実施例は単に例示を目的としたものであって、本発明の範囲又は本発明の実施様式を制限するものと見なされてはならない。別途記載のない限り、部及びパーセンテージは重量によって与えられている。
実施例1
本実験では、アロオシメンをイソプレンモノマーと共重合させ、イソプレン−アロオシメンコポリマーゴムを製造した。使用された手順では、ヘキサン(Ashland、重合グレード)は、シリカゲル中で4時間再循環してから使用した。イソプレン(Liグレード)は蒸留してから使用し、n−ブチルリチウム(Aldrich、ヘキサン中1.6M溶液)は受け取ったままの状態で使用した。Aldrich社製のアロオシメン(Allo)モノマー、すなわち2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン(工業グレード80%、CofA GC純度95.6%)は、酸化アルミニウムカラム(Aldrich、中性、ブロックマンI活性)に通し、窒素でパージし、水素化カルシウム(Aldrich、試薬グレード、粗粒、<20mm)上で保管した。ジ−(テトラヒドロフリル)−プロパン(DTP)は、まずシリカゲルモレキュラーシーブ混合物上で乾燥させ、窒素でパージし、CaH2上で保管した。
SEC測定は、4種類の検出器(45及び90度レーザー検出器(波長650nm)、RI及びUV検出器)及び二つのMixed−Cカラム(5μm Mixed−C PL−ゲル 300×7.5mm)を備えたPolymer Laboratories PL−GPC 50 Plusシステムを用いて実施した。移動相は1mL/分の流速のTHFであった。測定は40℃で実施した。MW計算は、PIについてのdn/dc値0.14を用いて実施した。
重合は、65℃の10 USGバッチリアクター中で、15重量パーセントのIP/ヘキサンプレミックス、開始剤として0.276mmphmのn−ブチルリチウム(n−BuLi)、及び改質剤として3molのDTP/モル開始剤を用いて実施した。反応時間は、対照の場合100分、IP−アロオシメンコポリマーの場合230分であった。モノマー供給材料中の初期アロオシメン含有量は1.28モルパーセントであった。重量法によって測定された変換率は、対照の場合99重量パーセント、IP−Alloコポリマーの場合91重量パーセントであった。重合をイソプロパノールの添加によって停止させ、トルエン中に溶解された0.25phrのBHTの添加によって安定化させた。
モノマーの組込み−反応性比
モノマーの組込みはGC測定によってモニターした。図1に、共重合実験中の二つのモノマーの測定変換率を示す。IPの変換率は2.5時間以内に約98%に達した。他方、Alloの変換率はわずかに16〜17重量パーセント付近であった。最終生成物は組み込まれたAlloを0.27モルパーセントしか含有していなかった。
反応性比の計算から、Alloの組込みが反応時間の延長(extra reaction time)に伴っても増加しなかった理由について一定の理解が得られた。反応性比は、より高い変換に対して推奨されているTurcsanyi−Kelen−Tudos法(Tudos,F.;Kelen,T.;Foldes Berezsnich,T.及びTurcsanyi,B;J.Macromol Sci.−Chem.,A10,1513(1976)参照)を用い、下記式:
を用いて決定された。上記式中、r1はイソプレンの反応性比及びr2はアロオシメンの反応性比であり、M1及びM2はそれぞれイソプレン及びアロオシメンの濃度である。
各モノマー濃度の読みは独立測定点として処理され、ポリマー組成(Y)及び対数平均モノマー濃度比(X)はt1及びt2時間における濃度値を用いて計算された。計算を簡単にするためにα=1を使用した。この場合、傾きはr1とr2の和であり、切片は−r2に等しい。
図2に、変換データを用いて作成されたη−ξプロットを示す。点は直線関係に従っておらず、四つの生長速度定数(propagation rate constants)に基づく単純な共重合方程式はこの系を説明するのに不適切であることを示している。このことは、Allo組込みに多数の可能な様式があること(2,3−、4,5−、6,7−、2,7−)及びイソプレン組込みにも二つの様式があること(1,2−及び3,4−)を考えると、驚くことではない。直線性からの逸脱は、モノマー装入物が極めてAlloに富む高変換(低ξ値)時により顕著なようである。(ξ=0.1で、モノマー装入物の推定Allo含有量はおよそ40mol%である)。このことは、直線性からの逸脱は主にAlloによって起きていることを示している。点に対して強制的に直線近似(linear fit)を行うと、rAlloについて人工的な−1.4値及びrIPについて16.7が得られる。これらの結果はすべて、Alloはホモ重合ステップを容易に受けられないことを示している。
この所見は文献で得られる限られた情報と一致している。Alloを含む共役トリエンのホモポリマーは、極性溶媒(例えばTHF)の存在下、アニオン重合によってのみ製造できる(R.L.Veazey:Polyalloocimene and Method for the Preparation Thereof,米国特許第4,694,059号(1987);Vernon L.Bell:“Polymerization of Conjugated Trienes”,J.Polymer Sci.Part A,5291−5303(1964);及びR.P.Quirk,R.Rajeev,Alkyllithium Initiated Polymerization of trans−1,3,5−Hexatriene and “Copolymerization with Styrene”,Rubber Chemistry and Technology,332−42,62(2)(1989)参照)。これから、Alloの変換は、非極性溶媒中の改質剤を変えることによって及び/又はより極性の溶媒を使用することによってAlloがホモ重合できる重合系を確認することによってのみ改良できることは明白である。あるいは、Alloの変換は、半連続重合技術を利用することによって改良することもできる。この場合、重合は、使用する予定の全Alloモノマーと他のモノマー又はモノマー混合物の一部を含有する部分充填されたリアクター中で開始される。この一部とは使用される全モノマーの5〜20%であろう。次に、この部分装填リアクターは、例えばアルキルリチウム化合物を用いて開始され、残りのイソプレンは緩やかなストリームでリアクターに添加される。
製造されたポリマーの物理的性質
高ビニルPI対照ポリマー(Allo含有せず)及びIP/Alloコポリマーの物理的性質を表Iに示す。コポリマーの数平均分子量(Mn)は対照ポリマーと比べて多少低く、MWDは広くなっており、多少の連鎖移動反応の存在を示している。分布の狭い対照ポリマーは従って高いムーニー値を示した。
ポリマーのガラス転移温度(Tg)及び微細構造組成は非常に類似している。コポリマーのAllo含有量は、GC変換率測定に従っておよそ0.27重量パーセントと算出された。これから、鎖あたりのAllo単位の数は約12という数を与えると推定された。しかしながら、モノマー組込みの可能な様式を考えると、このほんの一部しか側鎖又は鎖内共役ジエンを有する所望の形態ではない。
コポリマーの共役ジエン含有量は1HMR分光法では定量できなかった。それは、プロトン帰属の欠如のほか、共役ジエンの濃度の低さ及び異なる化学構造のためである。しかしながら、6.2ppm付近で共鳴ピークが検出でき、ポリマー中に共役ジエン単位が存在することが示された。
コポリマー中の未反応Alloの量は、対照モノマーに異なる濃度のAlloを加えて定量された。これらの測定に基づくと、コポリマー中に存在する未反応Alloモノマーはおよそ0.09重量パーセントと推定された。
コポリマーが鎖内及び/又は側鎖共役ジエン単位を有していることの追加の証明は、UV及びRI検出器を用いたSEC測定によって得られた。溶出ポリマーのUV吸収を220nmで測定した。この波長でポリイソプレン対照は本質的に透明である。これを図3に示す。これに対し、コポリマーは、共役ジエンに特徴的なこの波長で非常に強い吸収を示した。両ポリマーのUVシグナルは、濃度効果を排除するために累積RIシグナルによってノーマライズされた。溶出コポリマーの強いUV吸収は、共役ジエンに伴う6.2ppm付近での1HMR共鳴は別に形成されたAlloホモポリマーに由来するのではなく、高分子量コポリマー鎖の一部であることを裏付けている。
実施例2
本実験では、ブタジエン/アロオシメンコポリマーをポリブタジエン対照ポリマーと共に合成し、両ポリマーの特徴付けと比較を行った。使用された手順では、ヘキサン(Ashland、重合グレード)は、シリカゲル中で4時間再循環してから使用した。ブタジエンはExxonから入手した。それを蒸留し、安定剤及び重質物(heavies)を除去してから使用した。n−ブチルリチウム(Aldrich、ヘキサン中1.6M溶液)は受け取ったままの状態で使用した。2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン(Aldrich、工業グレード80%、CofA GC純度95.6%)は、酸化アルミニウムカラム(Aldrich、中性、ブロックマンI活性化)に通し、窒素でパージし、水素化カルシウム(Aldrich、試薬グレード、粗粒、<20mm)上で保管した。ジ−(テトラヒドロフリル)−プロパン(DTP)は、まずシリカゲルモレキュラーシーブ混合物上で乾燥させ、窒素でパージし、CaH2上で保管した。
SEC測定は、4種類の検出器(45及び90度レーザー検出器(波長650nm)、RI及びUV検出器)及び二つのMixed−Cカラム(5μm Mixed−C PL−ゲル 300×7.5mm)を備えたPolymer Laboratories PL−GPC 50 Plusシステムを用いて実施した。移動相は1mL/分の流速のTHFであった。測定は40℃で実施した。MW計算は、dn/dc値0.12を用いて実施した。
重合は、40℃の10 USGバッチリアクター中で、15wt%のBD/ヘキサンプレミックス、開始剤として0.276mmphmのn−BuLi、及び改質剤として15molのDTP/モル開始剤を用いて実施した。反応時間は、対照の場合120分、BD−アロオシメンコポリマーの場合250分であった。BD−アロオシメンコポリマーは、モノマー装入物中に1.28mol%のアロオシメンを用いて製造された。重合をイソプロパノールの添加によって停止させ、トルエン中に溶解された0.5phrのBHTの添加によって安定化させた。
モノマーの組込みはGC測定によってモニターした。図4に、共重合実験中の二つのモノマーの測定変換率を示す。BDの変換率は2時間以内に約98%に達した。反応時間を延長してもアロオシメンの変換には何ら顕著な増加をもたらさなかった。アロオシメンの組込みは低いままであった。最終生成物は組み込まれたアロオシメンを0.19mol%しか含有していなかった。
図5に、変換データを用いて作成されたη−ξプロットを示す。α=1のとき、切片はアロオシメンの反応性比(rAllo)に等しい。切片は明らかにほぼゼロで(rAllo=0)、ヘキサン中ではアロオシメンは容易にホモ重合ステップを受けられないことを示している。切片がゼロと証明されたので、傾きはブタジエンの反応性比(rBD)に等しい。傾きはおよそ24である(rBD=24)。このことは、BDでキャップされた生長アニオンは、アロオシメンと交錯するより24倍ホモ重合ステップを受けやすいことを意味する。
この所見は文献で得られる限られた情報と一致している。アロオシメンのホモポリマーは、極性溶媒(例えばTHF)の存在下、アニオン重合によってのみ製造できる。しかしながら、このことがこの結果に従って共重合を妨げているわけではない。アロオシメンの組込みは、連続重合によって又は強制理想共重合(forced ideal copolymerization)技術によって増大できる。強制理想共重合は、モノマーの緩やかな添加を基本としている。このモノマー不足条件下では、アロオシメンの組込みは、低濃度のブタジエンによって強制される。あるいは、極性溶媒を使用してもよいし又はより適切な改質剤を見つけることもできるはずである。
アロオシメンを含有しない対照及びコポリマーの物理的性質を表IIに示す。ポリマーのムーニー及び数平均分子量は互いに非常に近い。コポリマーの分子量分布のほうが広い。Tg及び組成も同一に近い。アロオシメンの含有量は、GCによって測定された変換率に基づいている。これから、鎖あたりのアロオシメン単位の数は約17という数を与えると推定された。しかしながら、コポリマーの実際の共役ジエン含有量は、それら濃度の低さ、オーバーラップ、及び広い共鳴のためにHNMR分光法では定量できなかった。しかしながら、BD/Alloコポリマー中に共役ジエン構造が存在することは、1HNMRによって確認できた。図6は、ドラム乾燥されたサンプルのHNMRスペクトルを示す。6〜6.2ppmの範囲におけるブロードな多重共鳴は共役ジエンに特徴的である。
共役ジエン単位の存在は、UV及びRI検出器を用いてGPCによって確認された。UV測定は220nmで実施した。この波長でポリブタジエン対照は本質的に透明である。これを図7に示す。これに対し、コポリマーは、共役ジエンに特徴的な波長で非常に強い吸収を示す。両ポリマーのUVシグナルは、濃度効果を排除するために累積RIシグナルによってノーマライズされた。
親ジエン体によるBD−Alloコポリマー及びイソプレン−Alloコポリマーの硬化
コポリマー中に共役ジエン単位が存在していることの追加の証拠は、ポリマーを二官能性親ジエン体と反応させることによって得られた。スキーム1に、使用された二官能性親ジエン体の化学構造を示す。コンパウンドは、110℃に加熱されたプレス中で、5gのポリマーをプレスしてシートにし、このシートに親ジエン体を折り重ね、シート化(sheeting)と折重ね(folding)を12回繰り返すことによって製造した。コンパウンドの硬化活性は、160℃で7%歪を用いて測定した。
三つの親ジエン体のうち、最も明確な結果はBMAAcで得られた。図8に、IP/Alloコポリマー、IP/Alloコポリマーに2phrのBMAAcを混合したもの、対照ポリマーに2phrのBMAAcを混合したもの、及び対照ポリマーに2.8phrのAlloモノマーと2.0phrのBMAAcを混合したものについて記録された硬化曲線を示す。四つのサンプルのうち、IP/Alloコポリマーに2.0phrのBMAAcを混合したものだけがトルクの上昇を示し、BMAAcのマレアミド基(maleamic group)が、コポリマーへのAlloの好ましい組込みから生じた共役ジエン基とのディールス・アルダー付加を受けたことを示している。コポリマーはそのままでは顕著なトルクの増加を全く示さない。同様に、BMAAc又はBMAAcとAlloモノマーの混合物と混合された対照コポリマーも硬化活性を示さない。後者の場合、Alloモノマーが添加されたのは、BMAAcと混合されたコポリマーの硬化活性が少量の未反応Alloの存在によるものではないことを保証するためである。
BMAAcはコポリマーの共役ジエン含有量よりも相対的に大過剰であるので、BMAAc入りコポリマーの硬化活性は、必ずしもBMAAcの両側での反応の結果ではないことは指摘されなければならない。一旦反応したBMAAcのH結合によって又は未反応のマレアミド酸側基の分子間反応を介して架橋が形成されることは可能である。
対照ポリマーのトルク値は、その高い分子量(ムーニー)のために、コポリマーのそれより高いことに注意すべきである。従って、対照のS’値は、比較を助けるために、対照+BMAAcサンプルの場合0.75dN*m、及び対照+Allo+BMAAcサンプルの場合0.3dN*mだけ減らした。
シリカポリマー相互作用のためのAlloコポリマーの官能化
本セクションでは、アニオン重合によって製造されたIP/Allo及びBD/Alloコポリマーにシリカ相互作用基を結合できることを証明するために行われた研究をまとめる。研究のために、コポリマーの共役ジエン基に結合させる親ジエン体としてBMAAc及びマレアミド酸(MAAc)を使用した。これらが選ばれたのは、強親ジエン体(MI、MAnh)は、スキーム2に示されているように“共重合”を受ける能力を有しているからである(R.N.Datta,A.G.Talma,A.H.M.Schotman:“Comparative Study of the Crosslinking of bis−Maleimides and bis−Citraconimides in Squaline and Natural Rubber”,Rubber Chem.& Techn.,1073−1086,71(1998)参照)。その上、BMAAc及びMAAcの−NH及びCOOH基はシリカと、極性−極性相互作用のほかにH結合を介して相互作用することができる。
コポリマーは、バンバリー(Bunbury)ローターを備えた3ピースの75mL CW ブラベンダー(Brabender)ミキサー中で、70%の充填係数(fill factor)を用い、官能化され、シリカ及びオイルと混合された。ポリマーは、親ジエン体及び1phrのWingstay(登録商標)Kフェノール系抗酸化剤と60rpmのローター速度で3分間混合された。抗酸化剤は、イソプレンポリマーに添加された0.25phrのBHT及びPBDポリマーに添加された0.5BHTのほか、重合の終了後、官能化中にポリマーが分解するのを防止するために添加された。
改質ポリマーを、50phrのシリカと、20phrのオイル(IP−Alloコポリマーの場合)及び30phrのオイル(BD/Alloコポリマーの場合)と混合した。コンパウンドを、Alpha Technology製造のRPA 2000を用いてシリカ相互作用について試験した。充填剤の凝集(flocculation)速度を決定するために、コンパウンドをまず100℃又は160℃に加熱し、1Hz及び0.48%の歪を用いてトルクの増加を時間の関数としてモニターした。その後、コンパウンドを40℃に冷却し、ペイン効果(Payne effect)、G’、G”及びtanδの歪依存性を決定するために、1Hzを用いて歪掃引(strain sweep)を実施した。
図9に、低歪で測定されたシリカ充填対照コンパウンドとIP−アロオシメンコポリマーの剛性(S’)の増加を対数時間の関数として示す。トルクの増加は、充填剤−充填剤ネットワーク及び/又は充填剤粒子間のポリマー架橋の形成に関連している。時間が対数目盛でプロットされているのは、弾性率回復は対数時間プロット上で直線であり、予想された指数関数的回復に従わないことがわかったからである。対照もIP−Alloコンパウンドも、対数時間と良好な直線関係を示している。しかしながら、BMAAc及びMAAcで官能化されたIP−Alloコンパウンドの傾きは約75%〜85%小さく、ポリマーと充填剤間の強い相互作用と、それによって充填剤凝集が防止されていることを示している。
G’及びG”の歪依存性も、官能化サンプルの場合、顕著に低下した。さらに、これらのポリマーのtanδも、2%を超える歪では対照ポリマーと比べて低く、その差は歪の増大と共に増加したことが測定された。図10にその結果を示す。
図11及び12に示されているように、同様の結果がBD/AlloコポリマーのMAAc官能化によっても得られた。この場合の充填剤凝集は、高ビニルPBDに特徴的な高温での架橋を避けるために低温(100℃)で実施された。結果として、充填剤凝集及びG’とG”の歪依存性における差は、IPサンプルと比べるとあまり顕著ではなかった。それでも、MAAc官能化BD−AlloコポリマーのS’−対数時間の傾きは、未改質コポリマーのそれよりも50%小さいと測定された(図11参照)。低歪におけるG’及び高歪におけるtanδの低減は、図12に示されているように明らかに存在する。
比較例として、Alloの不在下で製造されたBD対照ポリマーを、MAAcのほかにAlloとMAAcの混合物とも混合し、高ビニルPBDへのこれらの添加が充填剤凝集速度の低下もペイン効果の低減ももたらさないことを示した。図13及び14は、実際、対照ポリマー及び親ジエン体又は親ジエン体Allo混合物と混合された対照ポリマーを用いて製造されたシリカミックスの間には何ら顕著な相違がないことを明らかに示している。
実施例3
本実施例では、トリエトキシシランなどのシリカ反応性官能基をIP/Alloコポリマーにディールス・アルダー反応によって結合できることを示す。想定している化学的戦略をスキーム3に示す。反応は、化学薬品の段階的添加を使用する単一混合サイクルで実施した。反応では等モルの無水マレイン酸(MAnh)及び3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APT)を使用した。量は、0.27mol%の組込みAllo単位を含有するコポリマーのイソプレン含有量に対して1mol%とした。
最初に、コポリマーと無水マレイン酸(MAnh、1.44phr)を130℃に予熱されたミキサーに加えた。これらを60rpmのローター速度を用いて2分間混合した。次に、シリカ(65phr)、オイル(20phr)及び3.26phrのAPTの混合物を加え、混合をさらに6分間続けた。次に、コンパウンドをプレスしてシートにし、同じ条件及び3分間の混合時間を用いて再混合した。IP/Alloコポリマーを用い、MAnhもAPTも加えないコンパウンドも製造した。
さらに、ポリイソプレン(PI)対照ポリマーを用いて二つの対照コンパウンドも製造した。これらはIP/Alloコポリマーと同一条件下で製造された。一つのコンパウンドにはシリカとオイルのみを加え、もう一つにはシリカとオイルのほかにIP/Alloコポリマーを官能化したのと正確に同じやり方でMAnhとAPTも加えた。
その後、コンパウンドを試験して、充填剤の“凝集”速度と、貯蔵弾性率(G’)及び損失弾性率(G”)の歪依存性を決定した。どちらの測定も100℃で実施した。
PI対照ポリマーとIP/Alloコポリマーは非常に類似したトルク値及びトルク増大速度を示した。MAnh/APT処理PI対照ポリマーも、多少低い出発トルク値と傾きではあるが、類似の結果を示した。これに対し、MAnh/APT改質コポリマーは、著しく低い初期トルクと充填剤凝集速度の低減を示した(図15参照)。表IIIに、測定点の直線近似から誘導された傾きと切片を示す。両値は、未改質ポリマー(PI/Allo及びPI)並びにMAnh/APT処理PI対照ポリマーについては類似しているが、IP/Alloポリマーは著しく低い値を示した。初期トルク(1分時に測定)は、ほかのコンパウンドのおよそ半分であり、傾きすなわち充填剤凝集速度もそうである。この差は、提案されたポリマー充填剤結合がIP/Alloコポリマーの場合達成できたことを強く裏付けている。MAnhがIP/Alloコポリマーの共役二重結合と反応し、APTと付加物を形成し、APTのトリエトキシシラン基がシリカのOH基と反応した。
図16は、MAnh/APT処理IP/Alloコポリマーの充填剤凝集遅延のほか、処理はペイン効果の顕著な低減ももたらしたことを示している。言い換えれば、MAnh/APT処理IP/Alloコポリマーは、シリカとオイルしか含有していないコンパウンドに比べて、G’及びG”の歪依存性を著しく低減した。しかも、MAnh及びAPTを対照PIポリマーに添加しても、ペイン効果のそのような大幅低減は得られなかった。
ペイン効果の大きさは習慣的に低振幅(LAM)及び高振幅(HAM)で測定された弾性率の比を計算することによって表される。この場合、0.48%の歪及び100%の歪で測定された弾性率が選択された。表IVに得られた数値を掲載する。
ペイン効果の低減は、IP/AlloコポリマーのMAnh/APT改質によって達成された相互作用改良の更なる証拠である。シリカとオイルだけで製造されたIP/Alloサンプルと比べて、LAM/HAM比は64%低下した。これに対し、PI対照ポリマーを同様に処理した場合、LAM/HAM比は同じままであった。
充填剤ポリマー結合は、転がり抵抗などの特性に直接関係する循環歪下でのエネルギー損失を削減することも期待される。一定歪時のエネルギー損失はG”に正比例する。図16(左側のプロット)に基づくと、エネルギー損失は、IP/Alloコポリマーの記載された官能化法によって著しく減少している。改質IP/Alloコポリマーとほかのサンプル間の差は、タイヤ用途の観点から最も重要な中間歪範囲(1〜10%)で最も顕著である。
他方、エネルギー損失(一定エネルギー入力時)は、位相角の正接値(tanδ)、すなわちG”/G’比に正比例する。図17に、エネルギー損失は、IP/AlloコポリマーのMAnh/APT処理によって著しく削減できることを示す。異なる歪時のエネルギー損失を示す数値を表Vに示す。
実施例4
本実験では、ブタジエン−Alloコポリマーに親ジエン体、フラーレン、カーボンブラックを配合し、グリーンコンパウンドの性質及び硬化後の物理的性質を調べた。まず、BD/Alloコポリマーの共役ジエン単位が親ジエン体と反応する能力をN,N’−m−フェニレン−ビスシトラコンイミド(BCI)を用いて試験した。
BCIがN,N’−m−フェニレン−ビスマレイミド(BMI)の代わりに選択されたのは、BMIは硬化中に1,2−架橋、ホモ重合、共重合ならびにマイケル付加を受けることが知られているからである。BCIのほうがこれらの副反応を受けにくく、主にディールス・アルダー反応を介して、硫黄加硫の戻り段階中に形成する共役ジエン及びトリエンと反応する(R.N.Datta,A.G.Talma,A.H.M.Schotman:Comparative Study of the Crosslinking of bis−Maleimides and bis−Citraconimides in Squaline and Natural Rubber,Rubber Chem.& Techn.,1073−1086,71(1998)参照)。
使用された手順では、235℃のプレス中で5グラムのポリマーに1.8phrのBCIを反復折畳みによって配合した。硬化活性を160℃で7%の歪を用いて測定した。図18に、得られたトルク曲線を、BD/Alloコポリマー及びBD対照のそれと共に示す。図18によれば、BCIは、シトラコンイミド基とBD/Alloポリマーの共役ジエン単位間の架橋反応のために、トルクの即時上昇をもたらした。これに比べ、対照はトルクに何の変化も示さず、BD/Alloコポリマーはわずかなトルク上昇を示しただけであった。これは、二つの共役ジエン単位間で起きる何らかの架橋反応と関連しているのであろう。
BCIのほかに、コポリマーには5phrのC60Buckeyボールも配合した。非常に興味深いことに、これも多少のトルク上昇をもたらし、実際サンプルは不溶性になった。このことは、共役ジエン単位はフラーレン様構造と反応できることを証明しているように思われる。
概念を証明するために、小粒径、高表面積及び吸油ASTMカーボンブラックN121が選ばれた。フラーレン様構造の濃度がこのカーボンブラックでは比較的高いと仮定してのことである。混合は、バンバリーブレードを備えた75mLの3ピースCBブラベンダーミキサーヘッドを用いて実施した。ノンプロダクティブ混合は、140℃の出発温度、60rpm及び73%の充填係数を用いて実施した。プロダクティブ混合は、60℃の出発温度、60rpm及び73%の充填係数を用いて実施した。ノンプロダクティブ混合には20phrのオイルを加えねばならなかった。というのは、オイルの不在下では50phrのカーボンブラック充填で、コンパウンドはポリマーの高分子量及び狭い分子量分布のために粉末状に変わるからである。プロダクティブ混合の場合、下記処方を使用した。
アロオシメン単位を含有する組込み共役ジエンがN121と反応する能力は、最初にグリーンコンパウンドで試験した。コポリマーと対照間の相互作用における差は、充填剤凝集測定を用いて、及び貯蔵弾性率と損失弾性率の歪依存性(ペイン効果)を測定することによって決定した。
貯蔵又は高温時の未硬化ブラックコンパウンドのコンパウンド剛性ならびに導電性の増大はよく知られた効果である(Bulgin,D.,Trans.Inst.Rubber Ind.,21,188(1945);Fletcher,W.P.,及びGent,A.N.,Trans.Inst.Rubber Ind.,29,266(1953)参照)。これは一般的に充填剤の凝集に起因する。この効果の大きさは、分散不良、温度上昇又は分子量低下に伴って増大するようである(Bohm,G.G.A.,及びNguyen,M.N.,J.Applied Poly.Sci.,55,1041(1995)参照)。充填剤の凝集は、充填剤の種類、充填剤の表面処理及び一般にポリマー−充填剤相互作用によって強く影響を受ける(Lin,J.,Hergenrother,W.L.,Alexanian,及びE.,Bohm,G.G.A.,Rubber Ckem.& Techn.,75,865(2002);Lin,J.,Hogan,T.E.,及びHergenrother,W.L.,Paper No.58,Presented at a meeting of the Rubber Division,American Chemical Society,San Francisco,CA,April 28−30(2003)参照)。ポリマー−充填剤相互作用の増大は、凝集体の移動の制限によって及び/又は凝集体間に追加のポリマー架橋を形成することによって、凝集速度を低下させる(G.A.Schwartz,S.Cerveny,A.J.Marzocca,M.Gerspacher,及びL.Nikiel,Polymer 44,7229−7240(2003)参照)。従って、コンパウンドの剛性の測定は、充填剤−ポリマー相互作用の評価を提供する。時間に伴ってS’の増大が小さくなることは、より強いポリマー−充填剤相互作用を示している。
歪増大に伴う貯蔵弾性率及び損失弾性率(G’及びG”)の低下は、最初にPayneにより研究された(A.R.Payne,J.Appl.Polym.Sci.,6,57(1962)参照)。それは一般的に充填剤粒子の破壊及び凝集と関連している。充填剤−マトリックス相互作用もペイン効果に対する寄与因子と考えられている。そのようなプロセスは、結合ゴムと可動ゴム相との間の絡み合いの滑り、分子表面の滑り又は再配列及び充填剤ネットワーク内にトラップされていたゴムの放出である(G.Heinrich,及びM.Kluppel,Advances in Polymer Science,160,1436−5030(2002);S.S.Sternstein,及びAi−Jun Zhu,Macromolecules,35,7262−7273(2002);Ai−Jun Zhu,及びS.S.Sternstein,Composite Science and Technology,63,1113−1126(2003)参照)。動的弾性率の歪依存性の大きさは、分子量の低下に伴って増大し、カップリング剤などの使用によってポリマー−充填剤相互作用を増大させることによって大幅に削減される(J.D.Ulmer,W.L.Hergenrother,及びD.F.Lawson,Rubber Chem.& Techn.,71(4),637−667(1998);C.Gauthier,E.Reynaud,R.Vassoille,及びL.Ladouce−Stelandre,Polymer,45,2761−2771(2003)参照)。従って、ペイン効果の測定は、ポリマー−充填剤相互作用を定量するのに非常に適している。
図19に、低歪で測定された対照コンパウンドとBD−アロオシメンコポリマーの剛性(S’)の増加を対数時間の関数として示す。時間が対数目盛でプロットされているのは、弾性率回復は対数時間プロット上で直線であり、予想された指数関数的回復に従わないことがわかったからである。対照もBD−アロオシメンコンパウンドも、対数時間と良好な直線関係を示している。しかしながら、BD−アロオシメンコンパウンドの傾きは約40%小さく、ポリマーと充填剤間の強い相互作用を示している。
低歪でコンパウンドの16分及び160℃の熱処理をした後、弾性率及び貯蔵弾性率の歪依存性(ペイン効果)における差を決定するために、歪掃引を100℃で実施した。結果を図20及び21に示す。
図20によれば、G’の歪依存性は、BD−アロオシメンコポリマーの場合低歪で多少低いが、二つのコンパウンドで類似している。しかしながら、G”は、歪の関数として、より大きい差を示している。ここでも、コポリマーは低減された歪依存性を示している(図21参照)。結果として、コポリマーのtanδ値は、図22によって示されているように、対照のそれよりも全周波数範囲で低い。
これらの測定から、ポリマー−カーボンブラック相互作用は、共役ジエン単位の鎖への組込みによって、及びおそらくはこの鎖要素とカーボンブラック間のディールス・アルダー反応を介して、改良できることが確認された。
硬化サンプルの硬化及び動的性質
二つのプロダクティブコンパウンドの硬化曲線を図23に示す。硬化の速度及び状態はコポリマーの場合いくらか低い。次に、コポリマーをペイン効果についても試験した。その際、硬化中の充填剤−ポリマー又は充填剤−充填剤相互作用を変えないために典型的な7%歪の代わりに“静的”硬化サイクル(0.28%歪)を用いた。硬化された対照及びBD−アロオシメンコポリマーのG’、G”及びtanδの歪依存性の比較を図24〜26に示す。明らかに、コポリマーのほうが低いG’、G”及びtanδを示し、これらの値の歪依存性は低減されている。これは、グリーンコンパウンドの場合で検出された差と一致している。低減されたペイン効果及び低いレオロジーパラメーター(G’、G”及びtanδ)は、確かにコポリマーが充填剤とより強力な相互作用を有していることを示しているように思われる。これはおそらく鎖の共役ジエン単位と調査したカーボンブラック中に存在するフラーレン様構造との間の仮説ディールス・アルダー反応のためであろう。
実施例5〜7
以下の実施例では、共役ジエン単位はイソブチレンとのカルボカチオン共重合によってブチルエラストマーにも組み込めることを示す。実純度レベル95.6%の工業グレード(80%)のアロオシメン(2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン)をAldrich社から購入し、酸化アルミニウムを用いるカラムクロマトグラフィー(中性、ブロックマンI活性、Aldrich)によって乾燥し、凍結−ポンプ−融解(freeze-pump-thaw)技術によって脱ガスした。イソブチレン(IB)、純度99%、及び塩化メチル(MeCl)、純度99.5%(Matheson TRIGAS)は、BaO/CaCl2を充填したカラムに通すことによって乾燥後、気相から凝縮させた。ヘキサン(Mallinckrodt Chemicals、最小純度98.5%)はCaH2(Aldrich)から蒸留したばかりのものであった。ジ−tert−ブチルピリジン(DtBP、97%、TIC)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA、99.8%、無水、Aldrich)及び四塩化チタン(TiCl4、99.9%、Aldrich)は受け取ったままの状態で使用した。p−ビニルクミルメチルエーテル(イニマー)は(C.Paulo,J.E.Puskas,Macromolecules 2001,34,734−739)に記載の手順に基づいて合成した。これを中性ブロックマン活性Iアルミナ(Aldrich)及びn−ペンテンを用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン(TMPCl)は2,4,4−トリメチルペンタ−1−エン(TMP−1、Acros)の塩化水素処理によって製造した。反応の完了後、炭酸水素ナトリウムをゆっくり添加することによって溶液を中和し、CaH2上で乾燥させ、ろ過した。これを凍結−ポンプ−融解サイクルで脱ガスした。
重合は、MBraun LabMaster 130グローブボックス内の乾燥窒素雰囲気下(1ppm未満の水分及び5ppm未満の酸素)、−80℃及び−95℃で、オーバーヘッドミキサーを備えた500mLの三つ口フラスコ中で実施した。重合は、ヘキサン/MeCl(60/40 v/v)溶媒混合物中で実施した。
実施例5
本実験ではイソブチレンとアロオシメンのカルボカチオン重合を−80℃で実施した。反応混合物の初期体積は200mLであった。表VIIに、使用された各種化学薬品の濃度のリストを提供する。重合中、重量分析、HNMR及びGPC分析のために5mLのサンプルを採取した。
表VIIIに、変換率及び測定された分子量のほか、GPCによって決定されたUV/RI比のリストを示す。ΣUVi/ΣRIiは各GPCピーク下面積の比であり、UVmax/RImaxはピーク高さの比である。UV吸収は240nmで測定した。この波長では、共役ジエン単位しかUV光を吸収しないので、二つのシグナルの比はポリマーの共役ジエン含有量に比例する。
結果によれば、95%の変換が40分で達成された。ln(Mo/Mt)−時間のプロット(Mo及びMtは開始時及びt時におけるモノマー濃度)は直線で(図27参照)、この時間範囲では終結していないことを示している。Mn変換率プロット(図28)も直線で、共重合はリビング性であることを示唆している。算出された開始剤効率は、類似しているが100%を超えており、何らかの制御されない開始が反応の初めに起きたことを表している。これは、図29に示されているように、最初のサンプルのGPCトレースの二峰性によって確認される。最後のサンプルのUV及びRIトレースの類似した形状は、すべての鎖が組み込まれたアロオシメンを有している、すなわちサンプルはイソブチレンとアロオシメンのホモポリマーの混合物ではないことを示している。言い換えれば、真の共重合が起きたのである。変換に伴ってUV/RI比が減少しているのは、アロオシメンの反応がIBのそれより著しく速いことを示している。この結果は、ほとんどのアロオシメン単位はポリマー鎖の頭部に位置するということである。重合に精通した者であれば、これは連続重合によって、又はバッチ重合の場合、より反応性ポリマーの連続供給によって容易に補正できることは承知している。次の実施例で、IBを最初に添加した後、アロオシメンを連続添加することによって実施した実験の結果を示す。
実施例6
この重合は、実施例5で詳述したのと同じ手順及び技術を利用して実施した。しかしながら、重合の3分後にヘキサン/アロオシメン(50/50 v/v)の連続ストリームを1ml/分の流速で反応混合物に導入した。添加された混合物の全量は50mLであった。このヘキサン/アロオシメンストリームの連続添加の停止後、重合をさらに60分続けさせ、その時点で終了させた。表IXに、11分〜111分の範囲の様々な重合時間後に達成されたポリマーサンプルの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、多分散性(Mw:Mnの比)、ΣUVi/ΣRIi及びUVmax/RImaxを示す。
結果は明らかに、アロオシメンの連続供給によってUV/RI比が維持でき、実際、経時的に増大したことを示している。分子量も時間と共に増大し、重合が一定のリビング特性を維持したことを示した。
サンプルのH1NMR分析から、ポリマー鎖に共役ジエン単位が存在していることが確認された。図31は、60分時に取ったサンプルのH1NMRを示す。ポリマー中に共役ジエンが存在することは、5.6ppm、5.8ppm、及び6.1ppm付近の共鳴によって証明される。孤立した不飽和のプロトン(ビニルプロトン)が予想される5.0〜5.5の領域に共鳴がないことは極めて驚くべきことである。これに対し、4.7〜5.0ppmの領域には大きくてブロードな共鳴がある。これはビニリデンプロトンの領域である。そのような構造の形成は、t−ブチル又はアリル性t−ブチルのカルボカチオンからのプロトンロスによってのみ可能である。これは、プロトントラップがない場合は連鎖移動、又はプロトントラップがある場合は(DtBP)終結を招くはずである。サンプルが高分子量であることを考慮すると、この反応は無視できそうである。しかしながら、もしプロトンが同じ又は隣接するアロオシメン単位の不飽和の別の部分に移動した場合、これは終結も別の分子への移動もなしにビニリデンプロトンの形成をもたらすことができる。5.0〜5.5ppmの領域における共鳴の欠如及び4.6〜5.0ppmにおける強い共鳴の存在は、短鎖枝分れ又はおそらくは環化によるビニルプロトンのダウンシフトの結果でもあろう。これの例は、IB/IPコポリマー中のイソプレンのビニルプロトンの、不飽和に隣接する短鎖分枝点に起因する5.1ppmから約4.9ppmへのダウンシフトである(White,J.L.;Shaffer,T.D.;Ruff,C.J.;Cross,J.P.Macromolecules 1995,28,3290)。
このサンプル及び他のサンプルのHNMRスペクトルから、アロオシメン単位のおよそ8%が共役ジエン構造を有していると判定することができた。文献情報に基づくと、カルボカチオン重合によって製造されたIB/アロオシメンコポリマー中には微量の共役ジエン単位しか存在しないので、これは極めて驚くべきことである。(A.Priola,C.Corno,M.Bruzzone及びS.Cesca,Polymer Bulletin 4,743−750(1981))。
様々なサンプルの共役ジエン含有量は、図32に示されているように、サンプルのUV/RI比と非常に強い線形相関を示した。このことは、UV/RI比が確かにポリマーの共役ジエン含有量の非常に良好な尺度となることを裏付けている。共役ジエン含有量は、mol/100,000gの形態で表されている。この値は、100,000g/molの分子量サンプル中に存在する共役ジエン単位の数に等しい。この図は、得られたサンプルの共役ジエン含有量の迅速決定に使用することができる。例えば、UV/RI比が5ということは、ポリマーの100,000g/molセグメントごとに10個のCD単位を有することを意味する。
カチオン性実施例7
この実施例では、非常に高分子量のIB/アロオシメンコポリマーも製造できることを示す。これは二重の機能を有する開始剤の使用によって達成された。それは開始剤でもありモノマーでもあるので名前をイニマーと言う。このイニマーを用いて、非常に高分子のいわゆる樹枝状ポリマーを製造できることが示されている(C.Paulo,J.E.Puskas,Macromolecules 2001,34,734−739)。
この実験では、まず、高分子量の樹枝状PIBコア(ArbPIB)を2mol/Lのイソブチレンを用いて合成した。この後、2mol/LのIBと0.04mol/LのAllo(濃度は反応混合物の初期体積に基づく)のモノマー混合物を合成のために加え、ArbPIBをIBとアロオシメンのコポリマーでブロックした(ArbPIB−b−IB−co−Allo)。
反応は−95℃で次のように実施された。0.14gのイニマー、0.23mLのdtBP、103mLのヘキサン、69mLのMeCl、及び31.8mLのIBを、撹拌機を備えた三つ口丸底フラスコに加え、−95℃に冷却した。この装入物に、予備冷却された0.98mLのTiCl4と5mLのヘキサンの混合物を加え、重合を開始させた。38分時点でサンプルを分析のために採取し、40分の反応時間の時点で初めて0.1mLのDMAを加え、その後−95℃に冷却された31.8mLのIB、1.4mLのアロオシメン及び0.1mLのDtBPの混合物を加えた。追加のサンプルを81及び119分時に採取した。反応は、メタノールに溶解されたNaOHの添加により120分時に終了させた。
図33に採取されたサンプルのGPCトレースを示す。38分時に採取されたサンプルは樹枝状PIBコア(ArbPIB)である。それは枝分かれした樹枝状(木のような)構造を有している。このイソブチレンのマルチアームホモポリマーに、IB/Alloモノマー混合物を40分時に添加することにより、IBとアロオシメンのコポリマーを結合させた。この結果、鎖端がIBとAlloのコポリマーでブロックされた樹枝状コア(ArbPIB−b−IB−co−Allo)が得られた。得られたポリマーの構造を図34に示す。この図は、樹枝状ポリイソブチレンコアに結合されたポリイソブチレンアロオシメンアームを有するコポリマーを描いている。
81及び119分時に採取されたサンプルのGPCトレースは、IB/Alloモノマー混合物のArbPIBコアへの組込みを証明している。これらのサンプルのGPCトレースは、コアのそれと比べて高分子量の方にシフトしている。表IVにPIBのdn/dc値(0.108)を用いて計算した絶対分子量を示す。
図35に、IB/Alloモノマー混合物の添加前及び後に採取されたサンプルのUVトレースを示す。コアの残遺的なUVトレースは、開始剤(イニマー)の芳香族フラグメントの組込みによるものである。これに比べて、IB/Alloモノマー混合物の導入後に採取されたサンプルは強いUV吸光度を有し、ブロックされた生成物中に共役ジエン(CD)部分が存在していることを示している。
図36は、81分時に採取されたサンプルのUV及びRIトレースを示している。これらのトレースの類似した形状は、CD単位がポリマー中にその分子量に関係なく存在していることを証明している。それはまた、ArbPIBコアに組み込まれたアロオシメン及びそれが別個のホモポリマーを形成しなかったことも証明している。GPCによって測定されたサンプルの分子量を表Xに示す。
主題発明を説明する目的のために一定の代表的態様及び詳細を示してきたが、当業者には、主題発明の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正がその中でなされうることは明白であろう。