JP5910656B2 - スパッタリング成膜装置 - Google Patents
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Description
本発明は、スパッタリング成膜装置に関し、特に基板上に磁場を加えながら磁性膜を成膜するスパッタリング成膜装置に関する。
薄膜のうち、磁気異方性膜を有する膜はその応用範囲が広く、磁気インピーダンス素子、薄膜磁気ヘッド、又は磁気検出素子などに使用される。これらの磁気デバイスには一軸磁気異方性を有する磁気薄膜が必要とされている。
一軸磁気異方性を有する磁性薄膜を作製するスパッタリング成膜装置の一つとして、磁性薄膜を成膜する際に基板上に一定方向の磁場を印加するスパッタリング成膜装置が知られている。
特許文献1では、扇型の磁石にそれぞれ適宜方向に着磁を行い、扇型の磁石をリング状に配置し基板上に一定方向の磁場を発生させる方法が提案されている。特許文献1では一定方向の磁場を加えることだけが記載されているのみであり、磁場の消去(磁場をかけないこと)に関しては言及されていない。しかしながら、一軸異方性をもつ磁性薄膜と非磁性膜を含む機能膜を成膜するプロセスにおいて、磁性薄膜を成膜する場合に基板上に一定方向の磁場を印加するだけでなく、基板上の磁場を適宜消去する必要がある場合もある。たとえば一つのチャンバー内で複数種のターゲットを持ち、複数の膜を成膜可能なマルチスパッタリングシステムでは、磁性膜と非磁性膜の両方を成膜する場合が多い。このような装置で非磁性膜を成膜する場合には磁場を消去しなければいけない。また、磁性膜の成膜であっても、基板上の磁場を消去させた状態で成膜を行う場合がある。
基板上の磁場を消去させる方法として、特許文献2では、基板磁石を被成膜基板より下方に退避させる方法が提案されている。また、特許文献3では、2つの磁気回路を同心軸に配置し、相対的に回転させることで基板上に磁場を印加もしくは消去させることが提案されている。
以上に鑑みれば、同一のスパッタリング成膜装置において、基板上で磁場を印加できるだけでなく、基板上の磁場を消去可能であることが望ましい。さらには、放電の安定等も考慮すると、磁場消去時に、基板上以外の磁場も低減可能なことが望ましい。
本発明の主な目的は、基板上に磁場を印加及び消去可能で、かつ磁場消去時における基板上以外の磁場を低減可能なスパッタリング成膜装置を提供することにある。
本発明の一態様によれば、
真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、基板を搭載する基板ホルダと、
ターゲットを前記基板ホルダに向けて保持するためのターゲットホルダと、
前記基板ホルダに搭載された前記基板上に第1磁場を印加する第1リング状磁気回路と、
前記第1リング状磁気回路と同心軸上に配置され、前記基板ホルダに搭載された前記基板上に第2磁場を印加する第2リング状磁気回路と、
前記第1リング状磁気回路と前記第2リング状磁気回路との前記同心軸の周りの相対的な配置角度を変更して、前記第1磁場と前記第2磁場の合成磁場によって前記基板上にある磁場を印加する第1配置角度と、前記第1磁場と前記第2磁場によって前記基板上の磁場を消去する第2配置角度との間で前記同心軸の周りの相対的な配置角度を変更する配置角度変更手段と、
を備え、
前記第1リング状磁気回路は、互いに離間して略平行に配置した第1及び第2棒状磁石と、
前記第1棒状磁石の一端と前記第2棒状磁石の一端を接続する第1ヨークと、
前記第1棒状磁石の他端と前記第2棒状磁石の他端を接続する第2ヨークとを有し、
前記第2リング状磁気回路は、互いに離間して略平行に配置した第3及び第4棒状磁石と、
前記第3棒状磁石の一端と前記第4棒状磁石の一端を接続する第3ヨークと、
前記第3棒状磁石の他端と前記第4棒状磁石の他端を接続する第4ヨークとを有することを特徴とするスパッタリング成膜装置が提供される。
真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、基板を搭載する基板ホルダと、
ターゲットを前記基板ホルダに向けて保持するためのターゲットホルダと、
前記基板ホルダに搭載された前記基板上に第1磁場を印加する第1リング状磁気回路と、
前記第1リング状磁気回路と同心軸上に配置され、前記基板ホルダに搭載された前記基板上に第2磁場を印加する第2リング状磁気回路と、
前記第1リング状磁気回路と前記第2リング状磁気回路との前記同心軸の周りの相対的な配置角度を変更して、前記第1磁場と前記第2磁場の合成磁場によって前記基板上にある磁場を印加する第1配置角度と、前記第1磁場と前記第2磁場によって前記基板上の磁場を消去する第2配置角度との間で前記同心軸の周りの相対的な配置角度を変更する配置角度変更手段と、
を備え、
前記第1リング状磁気回路は、互いに離間して略平行に配置した第1及び第2棒状磁石と、
前記第1棒状磁石の一端と前記第2棒状磁石の一端を接続する第1ヨークと、
前記第1棒状磁石の他端と前記第2棒状磁石の他端を接続する第2ヨークとを有し、
前記第2リング状磁気回路は、互いに離間して略平行に配置した第3及び第4棒状磁石と、
前記第3棒状磁石の一端と前記第4棒状磁石の一端を接続する第3ヨークと、
前記第3棒状磁石の他端と前記第4棒状磁石の他端を接続する第4ヨークとを有することを特徴とするスパッタリング成膜装置が提供される。
本発明によれば、基板上に磁場を印加及び消去可能で、かつ磁場消去時における基板上以外の範囲でも磁場強度を低減可能なスパッタリング成膜装置が提供される。
本発明者達は、まず、上記特許文献2、3に記載された方法における磁場低減効果を確認した。
上記特許文献2では、磁石を基板ホルダの下方に退避させる方法において、どのような形状の磁石をどの位置まで退避させ、基板上の磁場強度がどの程度まで低減できているかが記載されておらず、磁場強度を低減する効果が不明である。そこで、上記特許文献2及び3で提案されている方法で磁場強度をどの程度低減させる効果があるかシミュレーションにより確認した。
(1)基板上での磁場の消去について
特許文献2には、磁石形状が表記されていないため、特許文献1に記載の基板磁石形状を参考にして、特許文献2の磁石退避方法で磁場シミュレーションを行った。すなわち図9(A)、9(B)の磁石Mに図10の基板磁石41の構造を適用する。ここで、基板10が成膜位置にある図9(B)の磁石Mに図10の基板磁石41を適用した際に、基板10上面で磁束密度が8mTになるように磁石Mの大きさなどを設定した。磁石Mの材料には信越化学工業製SmCoマグネット型式R32Hを用いた。磁石Mの大きさは直径488mm、半径方向の厚みは20mm、高さ15mmである。
特許文献2には、磁石形状が表記されていないため、特許文献1に記載の基板磁石形状を参考にして、特許文献2の磁石退避方法で磁場シミュレーションを行った。すなわち図9(A)、9(B)の磁石Mに図10の基板磁石41の構造を適用する。ここで、基板10が成膜位置にある図9(B)の磁石Mに図10の基板磁石41を適用した際に、基板10上面で磁束密度が8mTになるように磁石Mの大きさなどを設定した。磁石Mの材料には信越化学工業製SmCoマグネット型式R32Hを用いた。磁石Mの大きさは直径488mm、半径方向の厚みは20mm、高さ15mmである。
リング形状の基板磁石41は磁石401〜416に16分割されており、隣り合う磁石401〜416の磁極はお互いに45°の角度をもっている。180°離間した磁石401と磁石409の磁極は同じ方向をもっており、磁石401と90°離間した磁石405と磁石413の磁極は磁石401と磁石409の磁極とは反対方向をもっている。磁石401と磁石405との間の磁石402〜404の磁極は、磁石401の磁極方向から磁石405の磁極方向に向けて45°づつ変化している。磁石405と磁石409との間の磁石406〜408の磁極は、磁石405の磁極方向から磁石409の磁極方向に向けて45°づつ変化している。磁石409と磁石413との間の磁石410〜412の磁極は、磁石409の磁極方向から磁石413の磁極方向に向けて45°づつ変化している。磁石413と磁石401との間の磁石414〜416の磁極は、磁石413の磁極方向から磁石401の磁極方向に向けて45°づつ変化している。
特許文献2には磁石を退避させる距離も記載がないため、本磁場シミュレーションでは、図9(A)に示すように、磁石Mを基板10の表面10sの位置から退避させた場合について検証した。その結果を、図11(A)、図11(B)にそれぞれ示す。図11(A)は、磁石Mを基板10の表面10sの位置から50mm下方に退避させた場合の結果を示し、図11(B)は、磁石Mを基板10の表面10sの位置から100mm下方に退避させた場合の結果を示している。計算の結果、基板10上での磁束密度は、100mm下方の場合には4mT(40G)、50mm下方の場合には6mT(60G)残っていることが確認できた。磁場を完全に消去するため、さらに下方に磁石Mを移動させることも可能だが、真空容器が巨大化するという問題がある。以上より、特許文献2で提案されている、基板位置から磁石を下方に退避する方法では完全な磁場消去は実現困難であることがわかった。
次に、特許文献3に提案されている磁場消去効果を検証した。図9(B)の磁石Mに、図12(A)、図12(B)の構造の基板磁石51を適用する。基板磁石51は、外周側に設置されたリング形状磁石52と内周側に設置されたリング形状磁石53とを備えている。
リング形状磁石52の大きさは、直径488mm、半径方向の厚みは20mm、高さ15mmである。リング形状磁石52は16分割されており、隣り合う磁石の磁極はお互いに45°の角度をもっている。リング形状磁石52は、図10に示した基板磁石41と同じ構造である。内周側に設置されたリング形状磁石53の大きさは直径428mm、半径方向の厚みは15mm、高さは15mmである。このリング形状磁石53も16分割されており、隣り合う磁石の磁極は互いに45°の角度を持っている。リング形状磁石53の構造は、リング形状磁石52の構造と同様である。リング形状磁石52、53の材料には信越化学工業製SmCoマグネット型式R32Hを用いた。
基板10が成膜位置にある図9(B)の磁石Mに、図12(A)、図12(B)の構造の基板磁石51を適用して、磁場シミュレーションを行った。図12(A)は、基板10上への磁場印加時の場合を示しており、リング形状磁石52とリング形状磁石53の磁極は同じ方向を向いている。図12(B)は、基板10上への磁場消去時の場合を示しており、図12(A)の配置から、リング形状磁石52とリング形状磁石53を相対的に180°回転させて、リング形状磁石52の磁極とリング形状磁石53の磁極が反対方向を向くように配置することで、基板10上の磁場をほぼゼロにすることができた。
特許文献3にもう一つ提案されている磁場印加手段の形状(特許文献3の図3(d))についてもシミュレーション計算を行った。すなわち図9(B)の磁石Mに図12の基板磁石60を適用する。この基板磁石60は、四角に組みあがったヨーク61の内側に2つの磁石62、63を対向に配置させ、さらに内側に2つの磁極64、65を配置させている。このとき、磁石62、63の大きさは極方向に20mmの長さ、幅は210mm、厚みは12mmとし、磁極64、65間は380mmとした。シミュレーション計算した結果、基板10上の磁場をほぼゼロにすることができた。
以上より、基板10上の磁場消去の観点では、特許文献2より、特許文献3の提案の方が有効であることがわかった。
(2)基板上以外での磁場強度について
基板上の磁場を消去状態に設定して成膜を行う場合、放電の安定性を考えると基板以外の範囲における磁場強度はできるだけ低くすることが望ましい。基板以外への磁場によって放電が変形することで膜厚分布などに影響を与える可能性があるからである。また、磁場によって放電が引き寄せられ、真空部品(特にシールド)がスパッタされることで、コンタミネーションの発生も懸念される。
基板上の磁場を消去状態に設定して成膜を行う場合、放電の安定性を考えると基板以外の範囲における磁場強度はできるだけ低くすることが望ましい。基板以外への磁場によって放電が変形することで膜厚分布などに影響を与える可能性があるからである。また、磁場によって放電が引き寄せられ、真空部品(特にシールド)がスパッタされることで、コンタミネーションの発生も懸念される。
すなわち、磁性膜に一軸異方性を付与するためには、基板磁石を配置して基板位置で一定方向の磁場を生成できるだけでなく、必要に応じて基板上での磁場を無くし、さらには基板上以外では磁場強度を抑えることが望ましい。しかしながら、従来の磁場印加手段では、基板上の磁場を消去することはできても、磁石ユニット全体でみた場合には、大きな磁場が残ってしまうという問題がある。
そこで、本発明の好ましい実施の形態では、基板上に磁場を印加及び消去可能で、かつ磁場消去時における基板上以外への磁場を低減可能なスパッタリング成膜装置を提供する。
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の好ましい実施の形態のスパッタリング成膜装置100を説明するための概略縦断面図である。スパッタリング成膜装置100は、磁気デバイスの製造装置として好適に用いられる。
スパッタリング成膜装置100は、排気ポンプ70により排気可能な真空容器1と、真空容器1内に設けられ、基板10を搭載して上下動及び回転可能な基板ホルダ9と、ターゲット4a、4bを基板10の表面10sに斜めに対向して保持可能なターゲットホルダ5a、5bと、基板ホルダ9の周囲に配置され、基板10付近に磁場をそれぞれ印加する上側リング状磁気回路2と,下側リング状磁気回路3とを備えている。上側リング状磁気回路2と下側リング状磁気回路3で基板磁石を構成している。上側リング状磁気回路2と下側リング状磁気回路3は、回転軸Xに対して同心軸上に配置されている。
本例では、ターゲット4aとして、CoFeやNiFe等の磁性材料が用いられ、ターゲット5bとしては、Ta,Ru等の非磁性材料が好適に用いられる。
図1に示すように、上側リング状磁気回路2の外周側には、外側に向かって突設された連結部6aと、連結部6aと回転軸Xに対して対称に位置し、外側に向かって突設された連結部6bが設けられている。連結部6aと連結部6bは、上側リング状磁気回路2から外側に向かって同一の長さ突出している。
同様に、下側リング状磁気回路3の外周側には、外側に向かって突設された連結部7aと、該連結部7aと回転軸Xに対して対称に位置し、外側に向かって突設された連結部7bが設けられている。連結部7aと連結部7bは、下側リング状磁気回路3から外側に向かって同一の長さ突出している。連結部7aと連結部7bは同一の長さで突出しているが、連結部6a及び連結部6bの突出長さより、短く形成されている。
なお、図1は、基板ホルダ9及びその上に搭載された基板10が成膜位置にある状態を示している。リング状磁気回路2,3が支持部8a、8bから離間し、基板ホルダ9の磁気回路搭載部9b上に搭載されている。
図1、図3、図4を参照すれば、基板ホルダ9は、基板10を載置する基板搭載部9aと、リング状磁気回路2、3を搭載する磁気回路搭載部9bと、駆動部9cとを備えている。駆動部9cは、基板搭載部9aと磁気回路搭載部9bとを上下動させると共に、基板搭載部9aと磁気回路搭載部9bとを回転させる。成膜中は、基板搭載部9aおよび磁気回路搭載部9bを回転させることで、基板搭載部9a上に搭載された基板10と磁気回路搭載部9bに搭載された上側リング状磁気回路2および下側リング状磁気回路3を回転する。
図2は、下側リング状磁気回路3を上側リング状磁気回路2に対して、回転させることで、互いの磁界の向きを変えて、基板10上の合成磁場を変える状態を示す。即ち、基板ホルダ9を下降させて、上側リング状磁気回路2を連結部6a、6bを介して、支持部8a、8bの上部に搭載し、その後、さらに基板ホルダ9を下降させて、下側リング状磁気回路3を上側リング状磁気回路2と離間させてフリーな状態とし、基板ホルダ9を回転させることで、下側リング状磁気回路3だけを回転可能の状態とすることができる。基板ホルダ9を回転軸Xの周りに回転させて、基板ホルダ9の磁気回路搭載部9b上に搭載された下側リング状磁気回路3を回転軸Xの周りに180°回転した後、基板ホルダ9を上昇させて、図1に示すように、基板ホルダ9の磁気回路搭載部9b上に搭載された下側リング状磁気回路3上に上側リング状磁気回路2を搭載する。
後述するように、磁気回路搭載部9bに搭載された上側リング状磁気回路2、下側リング状磁気回路3により基板10上で磁場がそれぞれ印加される。図3を参照すれば、磁気回路搭載部9bに搭載された上側リング状磁気回路2による磁場と、磁気回路搭載部9bに搭載された下側リング状磁気回路3による磁場とを同方向とすることにより、上側リング状磁気回路2による磁場と下側リング状磁気回路3による磁場とが合成されて、基板10上で一定方向の合成磁場が印加される。図4を参照すれば、磁気回路搭載部9bに搭載された上側リング状磁気回路2による磁場と、磁気回路搭載部9bに搭載された下側リング状磁気回路3による磁場とを反対方向とすることにより、上側リング状磁気回路2による磁場と下側リング状磁気回路3による磁場とが合成されて、基板10上で磁場が消去される。
基板ホルダ9および支持部8a、8bは、上側リング状磁気回路2と下側リング状磁気回路3との回転軸Xの周りの相対的な配置角度を変更して、上側リング状磁気回路2による磁場と下側リング状磁気回路3による磁場とが合成された合成磁場によって基板10上で一定方向の合成磁場を印加する配置角度と、上側リング状磁気回路2による磁場と下側リング状磁気回路3による磁場とが合成された合成磁場によって基板10上で磁場を消去する配置角度との間で、回転軸Xの周りの相対的な配置角度を変更する配置角度変更手段の一例である。
次に、図5を参照して、上側リング状磁気回路2について説明する。上側リング状磁気回路2は、ベース23、磁場発生回路R1、蓋25、及び締結部品26を備えている。磁場発生回路R1は、複数の矩形状磁石(本例では、互いに略平行に配置されたM1、及びM2)と複数のヨーク(本例では、互いに略平行に配置されたY1とY2の二つ)を有している。磁石M1、M2とヨークY1、Y2とは略垂直に配置されている。
磁場発生回路R1は、ベース23の溝27と蓋25の溝(図示せず)内に嵌め込まれ、ベース23と蓋25によって上下方向から挟持される。ベース23と蓋25は締結部品26によって固定される。これにより磁場発生回路R1の各構成部品は、正確に位置決めされる。
磁石M1、M2の極方向の両端面にはそれぞれヨークY1、Y2が吸着固定されている。一方、このヨークY1、Y2の両端には、磁石M1、M2が吸着固定されており、磁石M1,M2の磁極は、ヨークを介して同極に向いている。ヨークY1、Y2の内周側には平面状突起部P1、P2が形成されており、これらが磁極となっている。
磁場発生回路R1は、磁石M1のS極から強磁性体のヨークY1、磁石M2のS極、磁石M2のN極、強磁性体のヨークY2、及び磁石M1のN極へと順に環状に構成されている。これにより、磁石M1のN極からヨークY2の磁極P2、ヨークY1の磁極P1を通って、磁石M1のS極へと磁力線が形成される。一方、磁石M2のN極からヨークY2の磁極P2、ヨークY1の磁極P1を通って磁石M2のS極へと磁力線が形成される。
このように構成される上側リング状磁気回路2を、基板ホルダ9の磁気回路搭載部9b上に搭載された下側リング状磁気回路3上に搭載することにより、上側リング状磁気回路2により基板10上で磁場が印加される。
次に、図6を参照して、下側リング状磁気回路3について説明する。下側リング状磁気回路3は、ベース33、磁場発生回路R2、蓋35、及び締結部品36を備えている。磁場発生回路R2は、複数の棒状磁石(本例では、互いに略平行に配置された磁石M3及び磁石M4)と複数のヨーク(本例では、互いに略平行に配置されたヨークY3及びヨークY4)を有している。磁石M3、M4とヨークY3、Y4とは略垂直に配置されている。
磁場発生回路R2は、ベース33の溝37と蓋35の溝(図示せず)内に嵌め込まれ、ベース33と蓋35によって上下方向から挟持される。ベース33と蓋35は締結部品36によって固定される。これにより磁場発生回路R2の各構成部品は、正確に位置決めされる。
磁石M3、M4の極方向の両端面にはそれぞれヨークY3,Y4が吸着固定されている。一方、この強磁性体ヨークの両端には、磁石M3、M4が吸着固定されており、磁石M3,M4の磁極は、ヨークY3,Y4を介して同極に向いている。ヨークY3、Y4の内周側には平面状突起部P3、P4が形成されており、これらが磁極となっている。
磁場発生回路R2は、磁石M3のS極から強磁性体のヨークY3、磁石M4のS極、磁石M4のN極、強磁性体のヨークY4、及び磁石M3のN極へと順に環状に構成されている。これにより、磁石M3のN極からヨークY4の磁極P4、ヨークY3の磁極P3を通って、磁石M3のS極へと磁力線が形成される。一方、磁石M4のN極からヨークY4の磁極P4からヨークY3の磁極P3を通って磁石M4のS極へと磁力線が形成される。
このように構成される下側リング状磁気回路3を、基板ホルダ9の磁気回路搭載部9b上に搭載することにより、下側リング状磁気回路3により基板10上で磁場が印加される。
ヨークY3,Y4の厚み方向上側には平面状突起部J1、J2がある。この平面状突起部J1、J2は、上述の上側リング状磁気回路2と距離を近づけて、下側リング状磁気回路3を上側リング状磁気回路2と磁気結合させるために形成されているものである。磁気結合をすることで次に述べる2点で効果が見られる。
1つ目は、基板10に磁場を加えるモードにおいて、基板10上の磁場強度を有効に高めることが可能になることである。2つ目は、基板10上の磁場を消去するモードにおいても、上側リング状マグネットと下側リング状マグネットによる磁場のキャンセル効果を高めて、基板10上の磁場を効率よく打ち消すことができる点である。
なお、本実施の形態では、磁石M1、M2、M3、及びM4は、すべて同一形状、同一磁力、同一磁化方向である。本実施の形態において、同一サイズで同一方向に着磁された磁石M1、M2、M3、及びM4を用いることで、上側リング状磁気回路2と下側リング状磁気回路3を相対的に180°回転させた時に、互いの磁場を打ち消すことができる。逆に、磁石M1、M2、M3、及びM4のサイズがそれぞれ異なる構成では、磁場強度のバランスが崩れて、余った磁力線が放電空間に現れ放電に干渉する恐れがある。
さらに、磁石M1、M2、M3、及びM4は、すべて同一形状、同一磁力、同一磁化方向であることは、磁石部材の加工コスト削減の観点からも望ましい。磁石は強度的に脆く、母材からの切り出した後は研磨加工により仕上げるのが一般的である。このため複数の直方体の磁石部材を同時加工製作する方法がコストにおいて圧倒的に有利である。また、着磁方向も切り出し面に対して水平か垂直にするのが材料の利用効率が高い。母材が足りなければ、磁石M1、M2、M3、及びM4を図7(A)のように分割してもよい。いずれにせよ直方体、同一方向の着磁部材なので構成が非常に容易となる。なお、磁石M1、M2、M3、及びM4の形状を直方体ではなく、円柱状としてもよく、その場合には、
着磁方向は、円柱の上面および底面に垂直にするのが好ましい。また、円柱状の磁石M1、M2、M3、及びM4を図7(B)のように分割してもよい。
着磁方向は、円柱の上面および底面に垂直にするのが好ましい。また、円柱状の磁石M1、M2、M3、及びM4を図7(B)のように分割してもよい。
これに対して、例えば、磁石形状が、特許文献1のように扇型、特許文献2のように台形形状の場合、加工時間が極端に長くなることや、磁石母材から取り出せる個数が少なくなり材料の利用効率が非常に悪い。
次に、本実施の形態の磁石M1、M2、M3、及びM4では、極方向と垂直な断面積を小さくしながら、極方向を長くしている。これはパーミアンス係数を大きくすることで、磁石M1、M2、M3、及びM4の極方向と垂直な断面積を減らしつつも基板10上に強い磁場を発生させるためである。磁石M1、M2、M3、及びM4の極方向と垂直な断面積を減らすことで、放電空間に漏れる磁場の範囲を減らすことが可能になる。
図8(C)は、本実施の形態の上側リング状磁気回路2と下側リング状磁気回路3を相対的に180°回転させ、磁石M1及びM2の磁極方向と、磁石M3及びM4の磁極方向とを180°反対方向として、上側リング状磁気回路2と下側リング状磁気回路3の互いの磁場を消去させた場合の磁場シミュレーションを行った結果を示す図である。基板10上は0mTであり、放電空間においても、5mTの大きさの磁場が非常に狭い範囲に点在するのみであることがわかる。
図8(A)は、図12(B)に示す基板磁石51を用い、基板10上の磁場を消去する構成とした場合の磁場シミュレーションを行った結果を示す図である。図8(B)は、図13の構成とした場合の磁場シミュレーションを行った結果を示す図である。図8(A)では、基板10上面上での磁束密度は0であるものの、基板10の周囲の基板磁石51周辺では100mT以上もの磁束密度が広範囲に存在することがわかる。図8(B)では、若干改善されているものの30mT以上もの磁束密度が磁極に沿って存在することがわかる。磁極面積が広いため放電空間に磁束が漏れる範囲も広く、38mTの大きさとなっていると考えられる。
以上のように、本実施の形態の基板磁石では、磁場を発生、消去させることはもちろん、従来のものより基板10上以外の領域において磁場強度を抑えつつ、その範囲を狭めることが可能になった。
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
1 真空容器
2、3 リング状磁気回路
4a、4b ターゲット
5a、5b ターゲットホルダ
8a、8b 支持部
9 基板ホルダ
10 基板
M1、M2、M3、M4 棒状磁石
Y1、Y2、Y3、Y4 ヨーク
2、3 リング状磁気回路
4a、4b ターゲット
5a、5b ターゲットホルダ
8a、8b 支持部
9 基板ホルダ
10 基板
M1、M2、M3、M4 棒状磁石
Y1、Y2、Y3、Y4 ヨーク
Claims (9)
- 真空容器と、
前記真空容器内に設けられ、基板を搭載する基板ホルダと、
ターゲットを前記基板ホルダに向けて保持するためのターゲットホルダと、
前記基板ホルダに搭載された前記基板上に第1磁場を印加する第1リング状磁気回路と、
前記第1リング状磁気回路と同心軸上に配置され、前記基板ホルダに搭載された前記基板上に第2磁場を印加する第2リング状磁気回路と、
前記第1リング状磁気回路と前記第2リング状磁気回路との前記同心軸の周りの相対的な配置角度を変更して、前記第1磁場と前記第2磁場の合成磁場によって前記基板上にある磁場を印加する第1配置角度と、前記第1磁場と前記第2磁場によって前記基板上の磁場を消去する第2配置角度との間で前記同心軸の周りの相対的な配置角度を変更する配置角度変更手段と、
を備え、
前記第1リング状磁気回路は、互いに離間して略平行に配置した第1及び第2棒状磁石と、
前記第1棒状磁石の一端と前記第2棒状磁石の一端を接続する第1ヨークと、
前記第1棒状磁石の他端と前記第2棒状磁石の他端を接続する第2ヨークとを有し、
前記第2リング状磁気回路は、互いに離間して略平行に配置した第3及び第4棒状磁石と、
前記第3棒状磁石の一端と前記第4棒状磁石の一端を接続する第3ヨークと、
前記第3棒状磁石の他端と前記第4棒状磁石の他端を接続する第4ヨークとを有することを特徴とするスパッタリング成膜装置。 - 前記ある磁場は、前記基板上で一定方向の磁場である請求項1に記載のスパッタリング成膜装置。
- 前記配置角度変更手段は、前記第1リング状磁気回路と前記第2リング状磁気回路とを前記同心軸の周りに相対的に回転させる回転手段を備える請求項1または2に記載のスパッタリング成膜装置。
- 前記第1棒状磁石と前記第2棒状磁石は、互いに同一方向に磁化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパッタリング成膜装置。
- 前記第3棒状磁石と前記第4棒状磁石は、互いに同一方向に磁化されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリング成膜装置。
- 前記第1棒状磁石と第2棒状磁石は同一形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスパッタリング成膜装置。
- 前記第1棒状磁石〜第4棒状磁石は、極方向の長さが極方向に対して垂直方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のスパッタリング成膜装置。
- 前記第1ヨークと前記第2ヨークの内側には平面状突起部がそれぞれ形成されており、前記平面状の突起部が磁極となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のスパッタリング成膜装置。
- 前記第3ヨークと前記第4ヨークのうち、前記第1ヨークと前記第2ヨークに対向している側に、平面状突起部が形成されていることを特徴としている請求項1〜8のいずれか一項に記載のスパッタリング成膜装置。
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