JP5910600B2 - 耐磨耗性鉄基焼結金属 - Google Patents

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Description

本発明は、耐磨耗性鉄基焼結金属に関する。
従来、耐磨耗性鉄基焼結金属を用いた内燃機関用のバルブシートは、バルブとの組み合せによって燃焼室の気密性を保つとともに、高温かつドライな環境下での耐摩耗性が高くかつバルブへの攻撃性が低いという特性が要求されている。
また、近年では、環境への対応のためにエンジン出力性能や低燃費性能の向上が必要不可欠となってきており、バルブシートの使用環境においても高温化や高面圧化に加え、高熱伝導性や低熱膨張性といった様々な条件の向上が要求されている。
このような状況から、例えば、質量比で、Mo;0.4〜4.0%、C;0.2〜1.1%、Ni;0.6〜5.0%を含み、金属組織がベイナイトとマルテンサイトとの混合相のみからなる組織を呈するとともに、断面におけるベイナイトとマルテンサイトとの比が100;0〜50;50であって、かつ、基地硬さが250〜850Hvである内燃機関用バルブシートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−316780号公報
ところで、硬質粉末は、鉄基粉末の鉄粒子よりも硬質の硬質粒子からなる粉末である。したがって、鉄基焼結合金に硬質粒子を分散させることにより、鉄基焼結合金の耐磨耗性を向上させることができる。
このような鉄基焼結合金のバルブシートは、シリンダヘッドに圧入された後、芯出し調整等のためにバルブとの当り面が切削加工されるため、被削性も高く要求される。換言すれば、被削性の優れたバルブシートは、切削加工時に用いる工具の高寿命化に寄与することも要求される。
しかしながら、上述のような従来の耐磨耗性鉄基焼結金属のバルブシートは、気孔があるために断続切削加工となる。したがって、下部ベイナイトやマルテンサイトを含み、初期硬さが600Hv以上の硬質粒子では、被削性が悪化してしまい、加工のための工具寿命が短くなってしまうという問題があった。また、硬質粒子は、非常に価格が高いことから材料費が高騰するという問題があった。
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、硬質粒子を含まず炭化物の密度を高めた上部ベイナイトのみからなり硬さを低く抑えることができるので、バルブシートに加工する際は被削性に優れ工具寿命を短くすることを抑制することができ、バルブシートとして使用する際は大きく加工硬化して安定した耐摩耗性を有する安価な耐磨耗性鉄基焼結金属を提供することを目的とする。
本発明に係る耐磨耗性鉄基焼結金属は、上記目的達成のため、(1)質量比で、Mo;0.02〜2.0%、C;0.2〜1.2%を含有し、残部が不可避不純物とFeとからなる金属組織が上部ベイナイトのみからなり、初期硬さが120〜400Hvの範囲内であり、炭化物の面積率が40%以上であるよう構成する。
これにより、硬質粒子を含まず炭化物の密度を高めた上部ベイナイトのみからなり硬さを低く抑えることができるので、バルブシートに加工する際は被削性に優れ工具寿命を短くすることを抑制することができ、バルブシートとして使用する際は大きく加工硬化して安定した耐摩耗性を有する安価な耐磨耗性鉄基焼結金属とすることができる。また、金属組織が上部ベイナイトのみからなる被削性と耐摩耗性とを両立した耐磨耗性鉄基焼結金属を得ることができる。
また、本発明に係る耐磨耗性鉄基焼結金属は、上記(1)に記載の耐磨耗性鉄基焼結金属において、(2)質量比で、V;0.02〜4.0%を含むことが好ましい。
また、本発明に係る耐磨耗性鉄基焼結金属は、上記(1)〜(2)に記載の耐磨耗性鉄基焼結金属において、(3)質量比で、Cr;0.05〜2.0%を含むことが好ましい。
また、本発明に係る耐磨耗性鉄基焼結金属は、上記(1)〜(3)に記載の耐磨耗性鉄基焼結金属において、(4)質量比で、Ni;0.4〜5.0%、Mn;0.05〜1.0%の少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明によれば、硬質粒子を含まず炭化物の密度を高めた上部ベイナイトのみからなり硬さを低く抑えることができるので、バルブシートに加工する際は被削性に優れ工具寿命を短くすることを抑制することができ、バルブシートとして使用する際は大きく加工硬化して安定した耐摩耗性を有する安価な耐磨耗性鉄基焼結金属を提供することができる。
本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属をバルブシートに適用したシリンダヘッドの要部の断面図である。 本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属におけるパーライト、上部ベイナイト、下部ベイナイトの摩耗特性を比較するグラフ図である。 本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属における上部ベイナイトと下部ベイナイトの初期硬さと硬化後の硬さの特性を比較するグラフ図である。 本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属をバルブシートに適用した場合の面圧硬化を説明する模式図である。 本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属における上部ベイナイトと下部ベイナイトの圧縮残留応力と表面深さと関係を比較するグラフ図である。 本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属における上部ベイナイトの光学顕微鏡における炭化物の見え方を説明する代用写真の説明図である。 本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属における上部ベイナイトの冷却速度を15℃/minとした場合の比較例を示し、(A)はFe−1.5Mo−0.5Cの配分とした場合、(B)はFe−1.5Mo−1.1Cの配分とした場合、(C)はFe−1.5Mo−2.0Cの配分とした場合、の炭化物の面積比を示す代用写真の説明図である。 本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属における上部ベイナイトの実施例を示し、冷却速度を15℃/minとした場合の比較例を示し、(A)は配分比Fe−1.5Mo−0.5Cで冷却速度を100℃/minとした場合、(B)は配分比Fe−1.5Mo−1.1Cで冷却速度を60℃/minとした場合、(C)は配分比Fe−1.5Mo−1.1Cで冷却速度を100℃/minとした場合、の炭化物の面積比を示す代用写真の説明図である。 本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属における上部ベイナイトの配分比をFe−1.5Mo−1.1Cとした場合の冷却速度と摩耗量との関係を示す比較グラフである。 本発明の実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属における上部ベイナイトの結晶粒の説明図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態の耐磨耗性鉄基焼結金属は、エンジン(全体図省略)のシリンダヘッド1の底面側に設けられたバルブシート2に適用されている。
シリンダヘッド1は、その底面で燃焼室3の一部を密閉しており、燃焼室3に開口する排気路4を形成している。燃焼室3の開口はシリンダヘッド1に設けた排気バルブ5によって開閉される。また、排気バルブ5の軸部5aとシリンダヘッド1との間には、排気バルブの軸部5aを軸線方向に沿って運動可能に支持するようにバルブガイド6が介在している。
排気バルブ5は、バルブスプリング7の引っ張り力により、常時は弁体5bで排気路4の開口を閉じている。
バルブシート2は、シリンダヘッド1の底面に嵌め込まれ、排気路3の閉弁時に排気バルブ5の弁体5bが着座する。
バルブシート2は、本実施の形態に係る耐磨耗性鉄基焼結金属を成形し、さらに排気バルブ5の着座部分となる内周壁面部の一部を面取り状に切削加工することにより構成されている。バルブシート2を構成している耐磨耗性鉄基焼結金属は、質量比で、Mo;0.02〜2.0%、C;0.2〜1.2%を含有し、金属組織が上部ベイナイトのみからなり、初期硬さが120〜400Hvの範囲内である構成である。
一般に、ベイナイト(bainite)は、炭素鋼をオーステナイト状態から冷却して、パーライト変態が生じる温度領域とマルテンサイト変態が開始する温度(Ms点)の中間の温度領域に恒温保持したとき生じる組織である。Moなどの合金元素を含む鋼では、このような恒温保持中だけでなく、中程度の速さで連続的に冷却しても生じる。
ベイナイトは、等温処理温度450〜550℃程度で処理したときにパーライトに近い黒色の羽毛状の組織を呈する上部ベイナイトと、それ以下の比較的Ms点に近い温度で処理したときにマルテンサイトに近い針状の組織を呈する下部ベイナイトとに大別される。
上部ベイナイトは、図2に示すように、パーライトや下部ベイナイトに比べて摩耗量が低い組織特性を有している。また、上部ベイナイトは、図3に示すように、初期硬さは下部ベイナイトよりも柔らかく、硬化後においては下部ベイナイトよりも硬いという組織特性を有している。
これにより、上部ベイナイトは、初期硬さにおいては切削加工等を容易に行うことができるうえ、その加工工具を傷め難く、工具寿命の延命化に貢献することができる。また、上部ベイナイトは、硬化後においては摩耗量が低い。これにより、例えば、図4に示すように、排気バルブ5による排気路4の開弁状態から閉弁状態となるとき、すなわち、弁体5bがバルブシート2に着座する面圧によって組織(塑性)が硬化する。同時に、バルブシート2の表面の粗度が低下(密度が向上)して耐摩耗性を確保し、バルブシート2の磨滅を抑制することができる。すなわち、表面の粗密によって摩耗特性が大きく変わる。
ここで、バルブシート2の使用環境下において、上部ベイナイトがその他の組織に比べ加工硬化量及び硬化深さが大きく削摩耗性に優れるという新たな知見を得た。
具体的には、図5に示すように、圧縮残留応力(MPa)は、表面深さ(μm)が深くなるほど疲労強度的に不利となる。しかも、上部ベイナイトは下部ベイナイトよりも疲労強度が有利であるうえ、表面深さに対する変化も小さいという結果を得た。
そこで、このような上部ベイナイトの特性を考慮し、本実施の形態においては、バルブシート2を、質量比で、Mo;0.02〜2.0%、C;0.2〜1.2%を含有し、残部を不可避不鈍物とFeとからなる金属組織の上部ベイナイトのみからなる耐磨耗性鉄基焼結金属により構成している。
すなわち、Moは、耐摩耗性に優れるうえ焼入れ性を向上させることができる。この際、Moの質量比がm0.02%を下回ると上述した効果が十分に得られ難く、2.0%を超えると材料粉が硬くなって成形性が悪化する。
また、Cは、炭化物を形成するとともに耐摩耗性を向上させることができる。Cの質量比が0.2%を下回ると硬さが十分でなくなり、1.2%を超えると初析セメンタイト生成による層手攻撃性が大きくなってしまい被削性も悪化する。
本実施の形態においては、耐磨耗性鉄基焼結金属の初期硬さを120〜400Hvの範囲内としているのは以下の理由による。初期硬さを120Hv未満にすると、加工硬化したときの硬さが600Hvまで到達せず、耐摩耗性が十分ではない。また、初期硬さが400Hvを超えてしまうと、加工硬化したときの硬さが非常に大きくなり、相手攻撃性が生じてバルブシートを切削加工する工具の摩耗が大きくなるとともに切削加工が困難になり、さらにバルブシートとして使用したときに耐摩耗性が十分に大きいがバルブに対する相手攻撃性が大きくなる。
本実施の形態においては、成形時の焼結後の冷却速度を40〜150℃/minの範囲とすることにより、炭化物の面積率を画像解析上において、0.19×0.23mmの視野で40%以上としている。なお、図6に示すように、結晶粒の内部構造を光学顕微鏡(×1000)で観察した場合、図示黒色部分が炭化物となる。
ちなみに、図6に示したものの場合、Fe−1.5Mo合金紛、C、潤滑剤を質量比で98:1:1となるように混扮した材料から成形し、1120℃窒素雰囲気で焼結後100℃で冷却した場合である。
ここで、潤滑剤とは、焼結行程中において当該潤滑剤をガス化させて排気する脱潤滑剤工程があり、成形後の焼結体には残存しない成分である。したがって、Fe−1.5Mo−1.1Cから100gの焼結体を作る場合、厳密には98:1.2:0.8の割合で混粉している。このため、黒鉛が一般的に0.1抜けることで1.1Cとなり、かつ、潤滑剤が排気されることで98:1.1:0となり、結果的に、Fe−1.48Mo−1.1Cとなる。
図7は、成形;8.0ton/Cm、焼結:1120℃×60minの条件とするとともに、冷却速度を15℃/minとした場合の炭化物の面積率が画像解析上において、0.19×0.23mmの視野で40%以下の例を示す。
図7(A)では、Fe−1.5Mo−0.5Cの配分で冷却速度を15℃/minとした場合、見掛け硬さは150HVとなったものの、炭化物の面積率は約30%であり、耐摩耗性に劣る焼結体となった。
図7(B)では、Fe−1.5Mo−1.1Cの配分で冷却速度を15℃/minとした場合、見掛け硬さは168HV、炭化物の面積率は約35%であり、耐摩耗性に劣る焼結体となった。
図7(C)では、Fe−1.5Mo−2.0Cの配分で冷却速度を15℃/minとした場合、見掛け硬さは169HVとなったものの、炭化物の面積率は約38%であり、耐摩耗性に劣る焼結体となった。
このように、Cの質量比における配分を高くしても、冷却速度が低ければ見掛け硬さに比べて焼結体の炭化物の面積率は低く、耐摩耗性を確保することが困難であることが判明した。
一方、図8は、成形;8.0ton/Cm、焼結:1120℃×60minの条件とするとともに、冷却速度を60〜100℃/minとすることで炭化物の面積率が画像解析上において、0.19×0.23mmの視野で40%以上の例を示す。
図8(A)では、図7(A)と同じ配分であるFe−1.5Mo−0.5Cとし、冷却速度を100℃/minとした。この場合、見掛け硬さは190HVと高く、炭化物の面積率も約42%を確保し、耐摩耗性も確保する焼結体となった。なお、図8(A)において、例えば、図示左上角付近の黒い部分は空孔に起因するものである。
図8(B)では、図7(B)と同じ配分であるFe−1.5Mo−1.1Cとし、冷却速度を60℃/minとした。この場合、見掛け硬さは209HV、炭化物の面積率は約60%であり、耐摩耗性も高く確保する焼結体となった。
図8(C)では、図7(B)と同じ配分であるFe−1.5Mo−1.1Cとし、冷却速度を100℃/minとした。この場合、見掛け硬さは210HVと冷却速度60℃/minと比べて差は出ないものの、炭化物の面積率は約72%と飛躍的に延び、耐摩耗性もさらに高く確保する焼結体となった。
このように、Cの質量比における配分を高くしても、冷却速度が低ければ見掛け硬さに比べて焼結体の炭化物の面積率は低く、耐摩耗性を確保することが困難であることが判明した。
ちなみに、図9に示すように、図8(B),(C)と同じ配分であるFe−1.5Mo−1.1Cとし、冷却速度を約10〜100℃/minの範囲で確認を行った。その結果、冷却速度が40℃/minを超えると、見掛け硬さ並びに耐摩耗性を高く確保する焼結体となることが判明した。
したがって、Fe−1.5Mo−1.1Cからなる上部ベイナイトの場合、冷却速度に関し、50℃/minを下回るとパーライト変態が生じ、150℃/minを上回るとマルテンサイト変態が開始することが判明した。
このように、成形時の焼結後の冷却速度を40〜150℃/minとすれば、炭化物の面積率を40%以上で確保することが可能となり、耐摩耗性と被削性とを両立した耐磨耗性鉄基焼結金属とすることができる。
また、炭化物の析出状態が粗な上部ベイナイトは耐摩耗性が低く、炭化物の析出状態が密な上部ベイナイトは耐摩耗性が高いものの、炭化物を極限まで密にした上部ベイナイトの組織は下部べイナイトの組織であることが判明した。これにより、炭化物の析出状態が密すぎても加工硬化が小さく、耐摩耗性が低くなることが判明した。
このように、従来のバルブシートでは耐摩耗性を確保しているために非常に硬く高価な硬質粒子が添加されており材料費が高くかつ工具寿命を短くするものであった。
これに対し、本実施の形態のバルブシート2は、
(1)圧縮気体や燃焼ガスが洩れるのを防ぐための気密保持機能
(2)排気バルブ5の熱をシリンダヘッド1側に逃がすための熱伝導機能
(3)排気バルブ5の弁体5bが着座したときの衝撃に耐えうる強度
(4)排気バルブ5への攻撃性が少ないこと
といった条件を維持しつつ、
(5)高熱且つ高負荷の環境においても摩耗しにくい耐摩耗機能
(6)リーズナブルな価格であること
(7)加工の際に削り易いこと
といった条件も確保することができる。
このように、本実施の形態では、硬質粒子を含まず、上部ベイナイトが実機(エンジン)において排気バルブ5の面圧により硬化し、耐摩耗性を容易に発揮させることができ、しかも、加工時の硬さは低く工具寿命を犠牲にすることなく、被削性に優れる。
ところで、上記実施の形態では、Mo;0.02〜2.0%、C;0.2〜1.2%を含有した例で示したが、例えば、質量比で、Cr;0.05〜2.0%又はV;0.02〜4%を含むようにしてもよい。すなわち、Mo−C−Cr、Mo−C−V、Mo−C−Cr−Vの何れとしてもよい。
CrはCCT線図のパーライト領域を冷却速度の遅い側に移行するとともにベイナイト領域を拡張する作用があり、0.05%を下回ると効果が不十分であり、2.0%を超えると硬質のマルテンサイトが出現し易くなり被削性を悪化させる。
Vは結晶粒を微細化させる作用があり、0.02%を下回ると効果が不十分であり、4.0%を超えるとV炭化物を多量に形成し、相手攻撃性が高まる。
具体的には、本実施の形態においては、金属組織が全体的に上部ベイナイトを呈する条件として、V;0.02〜4%を含ませることにより、上部ベイナイトの平均結晶粒径を2〜40μmとすることができる。冷却速度が速すぎると、平均結晶粒径が2μmよりも小さいときは、上部ベイナイトのみの金属組織を呈することが困難になり相手攻撃性を有するマルテンサイトが含まれてしまう。また、冷却速度がゆっくりすぎると、平均結晶粒径が40μmよりも大きくなり、パーライト変態が生じる。金属組織が全体的に上部ベイナイトを呈する条件は、後述する冷却速度と密接に関連する。
なお、平均結晶粒径とは、図10の左側の各目を結晶粒とした場合である。ここで、結晶粒の内部構造は、図10の右側に示すように、SEM写真(×4000)では図示白色部分が炭化物となる。すなわち、正確には図10の右側のように白色で観察されるが、炭化物はエッチングされずに白色になり、炭化物の周りの基地が黒色となる。一方、光学顕微鏡による観察の場合にはそこまで見えないため、図6に示すように、図示黒色部分が炭化物の存在部分として捉えることができる。
さらに、本実施の形態においては、質量比で、Ni;0.4〜5.0%、Mn;0.05〜1.0%の少なくとも1種を含むようにしてもよい。すなわち、Mo−C−Ni、Mo−C−Mn、Mo−C−Ni−Mnの何れとしてもよい。また、上記Cr;0.05〜2.0%、V;0.02〜4%の少なくとも1をさらに含む(例えば、Mo−C−Cr−Ni)ものとしてもよい。
Ni及びMnを含有させることは、耐磨耗性鉄基焼結金属の機械的性質を一層高めるうえで有利である。
Niは主として耐熱性・耐食性を考慮したものであり、0.4%を下回ると効果が不十分であり、5.0%を超えて含有させても効果の更なる向上はみられないうえ、摩耗し易くなる。
Mnは主として耐食性を考慮したものであり、0.05%を下回ると効果が不十分であり、1.0%を超えて含有させても効果の更なる向上はみられないうえ、耐摩耗性及び強度が低下する。
なお、上記実施の形態では、エンジンの排気側に配置したバルブシート2について説明したが、吸気側に配置しても同様の効果を奏することができる。
また、本実施の形態では、耐磨耗性鉄基焼結金属をバルブシート2に適用し、排気バルブ5によって加えられる面圧により組織を硬化させるもので説明したが、例えば、ショットピーニング技術によって表面硬化をさせる各種部品、金型を用いて圧縮成型する冷間鍛造により形成する各種部品、或いは、形状矯正のためのサイジング加工や転造加工を施して形成する各種部品、等の塑性変形を要する金属材料として耐磨耗性鉄基焼結金属を用いる場合にも適用可能である。
以上説明したように、本発明に係る耐磨耗性鉄基焼結金属は、硬質粒子を含まず炭化物の密度を高めた上部ベイナイトのみからなり硬さを低く抑えることができるので、バルブシートに加工する際は被削性に優れ工具寿命を短くすることを抑制することができ、バルブシートとして使用する際は大きく加工硬化して安定した耐摩耗性を有する安価な耐磨耗性鉄基焼結金属であるという効果を有し、特に、高温や高面圧環境下で適用され、初期加工が必要となる部品等の耐磨耗性鉄基焼結金属全般に有用である。
2…バルブシート(耐磨耗性鉄基焼結金属)

Claims (4)

  1. 質量比で、Mo;0.02〜2.0%、C;0.2〜1.2%を含有し、残部が不可避不純物とFeとからなる金属組織が上部ベイナイトのみからなり、初期硬さが120〜400Hvの範囲内であり、炭化物の面積率が40%以上であることを特徴とする耐磨耗性鉄基焼結金属。
  2. 質量比で、V;0.02〜4.0%を含むことを特徴とする請求項1に記載の耐磨耗性鉄基焼結金属。
  3. 質量比で、Cr;0.05〜2.0%を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1の請求項に記載の耐磨耗性鉄基焼結金属。
  4. 質量比で、Ni;0.4〜5.0%、Mn;0.05〜1.0%の少なくとも1種を含む、請求項1乃至請求項の何れか1の請求項に記載の耐磨耗性鉄基焼結金属。
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