JP5910251B2 - シリコンの製造方法、シリコンウェハー及び太陽電池用パネル - Google Patents
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Description
原料シリコン中に含まれる不純物のうち、鉄、アルミニウム、チタン及びカルシウムは、溶融シリコン(不純物を含む原料シリコンを溶融させたシリコン)を凝固偏析させることによって、シリコン液相側に除去することができる。また、カルシウム等は、溶融シリコンを1.3×10−2〜1.3×10−4Pa(10−4〜10−6Torr)程度の真空中で蒸発処理することにより、除去することができる。
上述した方法において、原料シリコン中のホウ素(B)を、水蒸気等を用いて酸化し、BOガスとして除去するには時間がかかり、またその時に同時にシリコンも酸化されてしまい、ロスが大きい。特に、水蒸気を溶融シリコン中に吹き込むと、副反応として大量の水素が発生するために安全上の問題もある。
しかしながら、原料となるシリコンが酸素や炭素を含んでいると、当該酸素や炭素と溶融シリコンとが反応して酸化物(特にシリカ)や炭化物(特にシリコンカーバイド)を生成する場合があり、これらの酸化物や炭化物が不純物を含む溶融シリコンと塩の間に存在することにより、不純物と塩との反応が阻害され、不純物を効率よく除去できない問題があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、NaF等の塩などの処理剤を用いて溶融シリコン中の不純物を除去する際に、処理剤を溶融シリコンに接触させやすくでき、処理剤と不純物とを効率よく反応させ、反応により生成した生成物を蒸発物として溶融シリコンから除去することが可能な、シリコンの製造方法を提供することを目的とする。
(1)原料シリコンを加熱溶融し、その後容器内で一方向凝固して、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする工程と、
該残部の液相のシリコンを排出する工程と、
該固相のシリコンを処理剤に接触させて加熱溶融するか、又は、
該固相のシリコンを加熱溶融したシリコンに処理剤を接触させ、
溶融シリコン中の不純物と該処理剤とが反応して生成した生成物を蒸発物として該溶融シリコンから除去する工程と、
をこの順に含むことを特徴とするシリコンの製造方法。
(2)前記不純物にはホウ素が含まれる、前項(1)に記載のシリコンの製造方法。
(3)前記処理剤が塩である、前項(1)又は(2)に記載のシリコンの製造方法。
(4)前記処理剤が、アルカリ金属とハロゲンとの塩、アルカリ土類金属とハロゲンとの塩、アルカリ金属とハロゲンとを含む複合塩、及び、アルカリ土類金属とハロゲンとを含む複合塩、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むものである、前項(1)〜(3)のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
(5)前記処理剤が、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ルビジウム(RbF)、フッ化セシウム(CsF)、珪フッ化ソーダ(Na2SiF6)、クリオライト(Na3AlF6)、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムとの混合物、及び、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムと塩化バリウムとの混合物、並びに、これらの混合物、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、前項(1)〜(4)のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
(6)前記処理剤の量が、前記溶融シリコンに対して、5質量%以上300質量%以下である、前項(1)〜(5)のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
(7)前記の各工程をすべて、不活性ガス雰囲気の中で実施することを特徴とする前項(1)〜(6)のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
1.シリコンの製造方法
本発明に係るシリコンの製造方法は、原料シリコンを加熱溶融し、その後容器内で一方向凝固して、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする工程(以下、一部
一方向凝固工程ともいう)と、該残部の液相のシリコンを排出する工程(以下、液相排出工程ともいう)と、該固相のシリコンを処理剤に接触させて加熱溶融するか、又は、該固相のシリコンを加熱溶融したシリコンに処理剤を接触させ、溶融シリコン中の不純物と該処理剤とが反応して生成した生成物を蒸発物として該溶融シリコンから除去する工程(以下、蒸発除去工程ともいう)と、をこの順に含む。
以下、本発明の製造方法を工程順に説明する。
一部一方向凝固工程は、原料シリコンを加熱溶融し、その後容器内で一方向凝固して、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする工程である。
1.1.1 原料シリコン
原料シリコンは金属シリコンである限り特に限定されず、例えばアーク炭素還元により得られた金属シリコン、シリコンの切削屑、炭素還元により炭化ケイ素を除去したシリコンなど、公知の金属シリコンを用いることができる。
原料シリコンは不純物として、少なくともホウ素(B)、シリカなどの酸化物やシリコンカーバイドなどの炭化物及びその生成原因となる成分元素を含む。さらに、例えば、リン(P)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)又はチタン(Ti)等を含んでいてもよい。
原料シリコン中の不純物の合計濃度は、質量基準で、10〜50ppmであることが好ましく、10〜30ppmであることが好ましい。このような濃度範囲にある原料シリコンは、例えばアーク炭素還元等によって得ることができ、コストを低く抑えることができるので好ましい。
原料シリコンの加熱溶融は一部一方向凝固を行う容器内で行ってもよく、別の設備で加熱溶融した溶融シリコンを一方向凝固を行う容器内に投入してもよいが、操作が簡便なことから一方向凝固を行う容器内で行うのが好ましい。
容器内で加熱溶融を行う場合には、加熱手段は、容器内に充填されたシリコンを加熱可能なものであれば、特に限定されるものではない。通常、シリコンの融点以上、具体的には1410℃以上が好ましく、1450℃以上がより好ましい。また、該温度の上限は、2000℃以下が好ましく、1700℃以下がより好ましい。
また、誘導加熱炉を用いると、容器内の溶融シリコンが誘導攪拌され、原料シリコンの溶融を促進させることができ、好ましい。
容器の材質については、本発明のシリコンの一部一方向凝固を実施可能なものであれば特に限定されるものではないが、グラファイト又はシリコンカーバイドからなる容器を用いることが好ましい。容器の形状、大きさについては、製造プロセスの規模(加熱手段の規模)などに応じて適宜決定すればよい。
1.1.4 一部一方向凝固(冷却)
容器内に充填された溶融シリコンを冷却して一方向凝固を行い、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする。一方向凝固の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
冷却手段は、容器内に充填された溶融シリコンを冷却し、一方向凝固が可能なものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、加熱を終了して空冷する方式や、冷却手段の内部に冷媒を通すことにより冷却する方式、例えば、水冷式・ガス冷却式などを適宜選択することができる。
、好ましくは10mm/分以下、より好ましくは5mm/分以下、更に好ましくは3mm/分以下である。前記下限値以上とすることにより、短時間で偏析のための一方向凝固を完了できるため生産性が向上しうる。また、前記上限値以下とすることにより、偏析をより確実に実施することができ、固相シリコン中の不純物量を低減しうる。
一方向凝固は、上方から下方へ行っても、下方から上方へ行ってもよいが、下方から上方へ行うのが好ましい。一方向凝固を下方から上方へ行うためには、容器の下部を冷却すればよい。
液相排出工程は、一部一方向凝固工程において形成した残部の液相のシリコンを排出する工程である。
残部の液相のシリコンを排出する手段は、容器から液相のシリコンを排出できる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、容器を傾動して液相のシリコンを排出する方法、容器内の液相のシリコンを上部に設置した公知の吸引手段により吸引して排出する方法、又は容器の上部側壁を貫通する排出管を通して、液相のシリコンを容器に排出する方法等が挙げられる。このうち、容器の上部を貫通する排出管55を通して、液相のシリコンを容器に排出する方法の例を、図1に示した。
ここで、前述の通り、シリカなどの酸化物等の比重は、溶融シリコンの比重より小さいため、シリカなどの酸化物等が液相のシリコンに浮かんだ状態となる場合があり、これら
を液相のシリコンに接した状態で容器の外部に排出することが好ましい。なお、本明細書において、液相シリコンに浮かんだ前記の酸化物等をも含めて液相シリコン又は液相のシリコンということがある。
これにより、その後の蒸発除去工程において、処理剤を溶融シリコンに接触させやすくでき、処理剤を無駄なく添加をすることが可能となる。すなわち、後述の蒸発除去工程において、シリカなどの酸化物やシリコンカーバイドなどの炭化物が生成したり、あるいはあらかじめ存在すると、処理剤と溶融シリコンとの接触界面を減少させてしまう場合があり、その結果、ホウ素等の不純物と処理剤との反応が阻害され、不純物を効率よく除去できないおそれがあるが、本発明の製造方法によれば、処理剤を溶融シリコンへと確実に到達させて不純物との反応を促進することができるため、偏析等では除去が困難なホウ素等の不純物を効率よく除去することができる。
得られた固相のシリコンは、再度溶融して溶融シリコンとしてもよい。該溶融シリコンは、同一容器内で後述の蒸発除去工程に供してもよいし、また、容器から取り出して別の容器に移した上で後述の蒸発除去工程に供してもよい。
蒸発除去工程は、一部一方向凝固工程において形成した、固相のシリコンを処理剤に接触させて加熱溶融するか、又は、固相のシリコンを加熱溶融したシリコンに処理剤を接触させることによって、溶融したシリコン中の不純物と処理剤とが反応して生成した生成物を蒸発物として溶融シリコンから除去する工程である。
本発明において、「系内」とは、例えば、溶融シリコンと処理剤との反応、処理剤との反応による不純物の蒸発及び処理剤の蒸発を生じさせる場をいう。より具体的には、例えば、排出口を供えた筐体内に加熱手段や容器等が収容され、筐体内部においてシリコンの精製を行い、排出口を介して不純物を蒸発除去する場合は、筐体内を系内とみなすことができる。
解・気化するものであってもよい。
処理剤は、原料シリコンの溶融温度で融解し、不純物を含む溶融シリコンと接触、例えば、シリコン液相と処理剤液相との界面を構成することによって、溶融シリコン中のホウ素(B)やアルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の不純物と反応し、不純物を気相に蒸発させ得る物質、或いは、不純物を処理剤自体に溶解させて不純物とともに蒸発させ得る物質であれば特に制限されないが、不純物との反応性等の点から、塩(えん)であることが好ましい。
処理剤中の不純物の含有量は低い方が望ましいが、仮に処理剤に不純物が含まれていたとしても、当該不純物はフッ素化等ハロゲン化されている場合が多く、原料シリコンが溶融する温度領域では、大部分が蒸発してしまうので問題はない。したがって、処理剤として通常の工業用の薬品を用いることが可能である。
1.3.2 溶融したシリコンと処理剤との接触
シリコンに処理剤を接触させ、シリコン中の不純物と処理剤とを反応させる形態としては、例えば、原料シリコンと処理剤とを混合した後に、同時に加熱溶融する形態であってもよく、原料シリコンのみを加熱溶融して溶融シリコンとした後、ここに処理剤を添加する形態であってもよい。
ただし、処理剤の蒸発を抑え効率的に使用する点から、好ましくは、原料シリコンのみを加熱溶融して溶融シリコンとした後、ここに処理剤を添加する。
上記のいずれの場合でも、加熱溶融の温度は、シリコンの融点(1410℃)以上が好ましく、1450℃以上がより好ましい。また、該温度の上限は、2000℃以下が好ましく、1700℃以下がより好ましい。
ここで、溶融シリコンを攪拌して流動させることで、不純物と処理剤との反応を一層促進することができる。処理剤に対する溶融シリコンの流動速度を大きくするためには、例えば、電磁誘導攪拌によって加熱を行えばよい。
(i)不活性ガスをシリコン液相に吹き込む方法。
(ii)高周波誘導炉を用いてシリコン液相を誘導攪拌する方法。
(iii)上層の処理剤を機械的に下層のシリコン層に押し込む方法。或いは、下層の処理剤を機械的に上層のシリコン層に押し上げる方法。機械的に押し込む或いは押し上げるとは、機械的手段、例えばグラファイトでできた凹型の治具を用いて上層の処理剤を下層のシリコン層に押し込む、或いは、下層の処理剤を上層のシリコンに押し上げることをいう。
(iv)回転子を使って液相を攪拌する方法。
上記の通り、溶融シリコンと処理剤とが接触することにより生成した不純物を含む化合物、すなわちシリコン中の不純物と処理剤とが反応して生成した生成物は、蒸発するか又は一部は処理剤に溶け込み、処理剤とともに蒸発させて除去することができる。
蒸発除去時の圧力(減圧度)は、大気圧であれば十分であるが、場合により10−4Pa程度まで減圧することが好ましい。また、蒸発除去時に、アルゴン等の不活性ガスをキャリアガスとして溶融シリコン中に吹き込むと、蒸発除去が促進されるので好ましい。
不純物を処理剤とともに蒸発除去した後に、必要に応じて、容器内を真空排気することにより残存する処理剤や溶融シリコン中に含まれるその他の不純物(リン等)を除去することも好ましい。
溶融シリコンに含まれる不純物と処理剤との反応について、その作用等も含めさらに詳細に説明する。
1.3.4.1 処理剤としてフッ化ナトリウム(NaF)を用いる場合
フッ化ナトリウム(NaF)の1500℃での比重は約1.8であり、シリコンの比重(約2.6)よりも軽い。そのため、系内では、下層であるシリコン液相と上層であるNaF液相との界面が構成される。
このような場合、界面を介して、次の反応が起こると考えられ、溶融シリコン中の不純物であるホウ素(B)は反応物として気相に蒸発し、一部は処理剤中に溶解して移動する。
また、溶融シリコン中の不純物であるアルミニウム(Al)についても、次の反応が起こると考えられる。ホウ素とは違い、生成物の蒸気圧は低いので、この場合は処理剤に溶解するが、処理剤を蒸発除去する時に一緒に除かれる。
Al+6NaF=Na3AlF6+3Na
一方で、NaF中のNaの一部が、溶融シリコン中に取り込まれるが、これについてはアルカリ除去処理によって容易に除去可能である。
アルミニウム(Al)やカルシウム(Ca)も同様のプロセスで、溶融シリコンから除去されることになる。アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)は、NaFと反応し、それぞれ、Na3AlF6、NaCaF5を生成して処理剤に溶解し、処理剤を除去するプロセスにおいて除去される。
1.3.4.2 処理剤としてNaFとSiF4の複合化合物(Na2SiF6)を用いる場合
処理剤としてNaFとSiF4の複合化合物(Na2SiF6)を用いることもできる。この場合、Na2SiF6は液相になる前に一部分解が起こり、NaFとSiF4になる。
これらの反応は、通常0.5〜2気圧で行うことが好ましく、アルゴン等の不活性ガスでシールした大気圧が経済的に望ましい。大気圧でも、処理剤は殆ど蒸発させることができる。さらに、完全に除去する場合は、約1.3×102〜1.3×10−3Pa(1〜10−5Torr)の真空にして蒸発させることが好ましい。こうすることによって、融液はシリコンだけとなり、鋳型に鋳込むことによって容易に回収できるようになる。
また、本発明の蒸発除去工程においては、系内において、不純物を含む処理剤を蒸発させた蒸発物を凝縮手段により凝縮させてもよい。これは、処理剤と溶融シリコン中の不純物との反応においては、反応に寄与しないまま大部分の処理剤が蒸発してしまう場合があるが、凝縮手段を設けることにより、蒸発物を系外に排出せず、凝縮手段により凝縮物(処理剤と溶融シリコン中の不純物とが含まれる。)とするものである。前記凝縮物を、溶融シリコンへと落下させることで、凝縮物中の処理剤を溶融シリコンと接触させることができる。すなわち、前記凝縮物を系内で処理剤として利用することになる。
凝縮手段は系内の上部に設けられていることが好ましく、前記蒸発物を冷却することによって凝縮し、凝縮物とする冷却手段であることがより好ましい。系内の上部とは、溶融シリコンや処理剤の上方であって、溶融シリコン及び処理剤の液相界面に対向する位置をいう。これによって、凝縮手段において凝縮された凝縮物は、例えば、自然落下、下降気流等によって再び溶融シリコンへと落下し、反応に寄与することとなる。凝縮手段の具体的な形態については、後述する。
尚、凝縮物が凝縮手段に固着した場合は、例えば、凝縮物に振動を与える、J字型などの棒で凝縮物を掻き落とす等の方法により、凝縮手段に付着した凝縮物を溶融シリコンへと落下させることが好ましい。
このように、蒸発した処理剤を、凝縮手段により凝縮させて凝縮物とした後、該凝縮物を溶融シリコンへと落下させて再度処理剤として利用することで、溶融シリコンと処理剤との界面が常時適切に形成される。本発明では、反応系内で処理剤を再利用することが可能であり、これによって、処理剤を無駄なく反応に寄与させることができる。
本発明の蒸発除去工程においては、溶融シリコン中の不純物を除去する。そして、不純物の除去を終了後、処理剤を蒸発除去するとよい。また、さらに、純度を上げたい場合は、処理剤の蒸発除去の後、新たに処理剤を添加し、再度処理剤によるシリコンの精製を繰り返すとよい。
また、蒸発除去された処理剤を回収しておけば、次回以降のシリコン精製の際、再び処理剤として用いることもできる。場合によっては、公知の方法で精製した後に、用いてもよい。
凝縮手段に、不純物を含む凝縮物が付着して一定時間を経過すると、凝縮物に含まれる不純物の量が増加し、自然落下等により系内の下部において溶融シリコンと接触する該凝縮物に含まれる不純物の量も増加することとなる。
凝縮手段に付着した凝縮物を凝縮手段から除去する方法としては、例えば、凝縮物が付着した凝縮手段を凝縮物が付着していない凝縮手段と交換する方法、または凝縮物を除去する手段により凝縮手段に付着した凝縮物を除去する方法が挙げられる。凝縮物を除去する手段としては、具体的には、例えば、凝縮物に振動を与える手段、凝縮物を掻き落とすための手段(例えば、J字型などの棒)等が挙げられる。
ホウ素(B)、アルミニウム(Al)及びカルシウム(Ca)等の不純物を含む溶融シリコンから、当該不純物を短時間に同一のプロセスで効率よく除去する観点からは、下記のような形態を含むシリコンの製造方法としてもよい。
1.3.6.1 系内から酸素を除去する形態
系内に酸素が存在する場合、当該酸素と溶融シリコンとが反応して酸化物(特に、シリカ)が生成する。シリカは溶融シリコンと処理剤との界面に固体状で存在することとなり、処理剤と溶融シリコンとの接触界面を減少させてしまう場合がある。
すなわち、系内に酸素を含まないガスを流通させることで、系内から系外へと酸素を除去する工程を含むとともに、不純物を含む溶融シリコンと処理剤とを系内で接触させ、該溶融シリコン中の不純物と処理剤とを反応させ、該不純物を系外に除去する工程を含む、シリコンの製造方法とすることにより、系内の酸素が除去されることとなる結果、シリカの生成を抑制することができる。
酸素を含まないガスとしては、アルゴンガスが好ましい。
また、系内に酸素を含まないガスを流通させる場合、当該ガスをキャリアガスとして使用することもできる。すなわち、溶融シリコンから蒸発除去された不純物を、酸素を含まないガスをキャリアガスとして系外へ除去することができる。これにより、酸素の除去と不純物の除去とを同時に行うことが可能である。
上記説明では、系内で蒸発した処理剤を凝縮・落下させるものとして説明したが、蒸発した処理剤を系外で回収してもよい。例えば、以下のようなシリコンの製造方法とすることによって、処理剤を効率よく回収して再利用することができる。
これによって、処理剤のロスを抑えることができ、新たな処理剤を用意する必要がなくなる結果、短時間かつ効率的に溶融シリコンを精製することが可能となる。ただし、当該形態は上記した工程S2とは相反する概念である。当該形態を本発明に組み込む場合は、例えば、シリコン精製完了後の処理剤の蒸発除去時に適用するとよい。
また、例えば、ヒュームをキャリアガスとともに吸引する場合において、流通経路における風速(m・s−1)を5以上30以下とすることによっても、流通経路における処理剤の付着を抑制することができ、流通経路の詰まりを防止することができる。また、吸引の際は、吸引口を処理剤または溶融シリコンの液面近傍に設置するとよい。これにより、吸引口における温度を容易に処理剤の融点以上の温度とすることができるとともに、蒸発した処理剤を効率よく吸引することができる。
例えば、ヒュームを、サイクロン又はバグフィルターによって凝縮させ、凝縮物として回収することができる。
すなわち、塊状の凝集物は、粉体よりも容易に溶融・精製することができる。これは、塊状となることで空隙が減少し、密度が大きくなる結果、熱伝導率が高くなり、内部にまで容易に熱を伝導させることができるためと考えられる。これにより凝集物を容易に溶融させることができ、内部に存在する不純物を効率的に除去、精製することができる。
不活性ガスを流通させながらシリコンを製造する形態については既に説明した。しかしながら、例えば、大規模でシリコンの製造を行いたい場合、系内を完全に不活性ガス雰囲気とすることは難しい場合がある。
この観点から、大気雰囲気でシリコンの製造を行うことができれば、効率的にシリコンを製造することができるものと考えられる。また、大気雰囲気で製造することができれば製造コストを抑えることもできる。
しかしながら、上述したように、大気雰囲気では、酸素とシリコンとが反応することによってシリカが生成し、反応界面が減少してしまうという問題がある。この問題は、例えば、下記のようなシリコンの製造方法とすることにより解決できる。
酸化物の移動については、機械や道具を使用して移動させる形態の他、誘導加熱によって溶融シリコンを誘導攪拌し、流れを誘起することで酸化物を一定の方向に移動させる形態、または、プラズマ処理等によって酸化物を移動若しくは除去する形態であってもよい。
以上のような形態であっても、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)及びカルシウム(Ca)等の不純物を含む溶融シリコンから、短時間に同一のプロセスで不純物を効率よく除去することができる。
次に、本発明の蒸発除去工程で用いるシリコンの製造装置について説明する。
本発明の蒸発除去工程で用いる容器は、溶融シリコンと処理剤とが充填されるものであり、溶融シリコン中の不純物と処理剤とを反応させることができる。この場合において、容器内で上記溶融シリコンと処理剤との界面が形成されることが、反応促進の観点から好ましい。そして、不純物は、気相に蒸発し、または、処理剤中に溶解して該処理剤と共に気相に蒸発することによって、溶融シリコンから上部開口部及び排出手段を介して系外へと除去される。
本発明の蒸発除去工程で用いる加熱手段は、容器内に充填された溶融シリコンと処理剤とを加熱可能なものであれば特に限定されるものではない。特に、誘導加熱炉を用いると、容器内の溶融シリコン及び処理剤が誘導攪拌され、反応を促進させることができ好ましい。
例えば、凝縮手段は、系内の上下方向に延在する側壁を有するとともに、上部及び下部が開口部とされた、中空の筒状体とすることができる。このような筒状体の内部(中空部)においては、温度分布が存在し、容器側から離れるにしたがって温度が低下する。すなわち、蒸発した処理剤は、筒状体の内部を上昇するにつれて冷却され、いずれは凝縮することとなる。
筒状体の材質についても系内の温度に耐え得るものであって、蒸発した処理剤との反応を生じ難いものであれば特に限定されるものではない。例えば、上記容器と同様の材質のものとすることができる。
また、凝縮手段を筒状体とする場合、当該筒状体の内部には、仕切り部材が設けられていてもよい。仕切り部材によって、筒状体内部の表面積を増大させることができる。また、蒸発した処理剤の上昇を制御することもできる。仕切り部材の形状や材質については特に限定されるものではない。
板状体の材質については、上記筒状体と同様のものとすればよい。また、板状体の形状、大きさについては、容器の大きさを考慮して適宜決定すればよい。尚、板状体とする場合も、板状体と容器との間、または板状体の一部に、蒸発除去された不純物の逃げ道として間隙や孔を設けることが好ましい。
凝縮手段においては、蒸発した処理剤が融点以下に凝縮されれば、処理剤を落下させるという効果を期待できる。特に、凝縮手段は、蒸発した処理剤を凝固点以下にまで冷却する手段であることが好ましい。
また、本発明の蒸発除去工程で用いるシリコンの製造装置は、前記凝縮手段に付着した凝縮物を凝縮手段から除去する手段をさらに備えることが好ましい。凝縮手段に付着した凝縮物を凝縮手段から除去する手段をさらに備えることにより、不純物の含有量の多い凝縮物が凝縮手段から除去され、処理剤として利用される凝縮物に含まれる不純物の量を低減することができる。
ここで排出とは、系内から系外への排出を意味する。すなわち、排出手段としては、例えば、系内と系外とを連通するように設けられた排出口が挙げられる。上記したように、排出口は、チャンバー等の筐体の一部に設けることができる。特に、筐体の上部に設けることが好ましい。
尚、吸引手段によって蒸発除去された不純物も吸引されることとなるが、上述したように蒸発除去された不純物は蒸気圧が大きいため、気体で系外に除去されるか、又は、系外では温度が低いため、やはり凝縮し、処理剤と共に回収される。
例えば、シリコンの精製が完了した後、処理剤を蒸発除去する場合、回収手段によって蒸発除去した処理剤を系外にて回収しておけば、次回のシリコン精製時に再び処理剤として再利用することができる。
シリコンの精製が完了し、処理剤を蒸発除去する場合は、冷却手段を機能させないようにする(例えば、筒状体若しくは板状体の向きを変更する、または、筒状体若しくは板状体を系内から系外へと取り外す等)。これにより、処理剤をスムーズに蒸発除去させることができる。
また、加熱用の誘導コイル4、断熱材8、るつぼ3は、一体で傾動できるようになっており、処理の済んだ原料金属シリコン1は、鋳型9に流しこまれる。
投入された処理剤は、加熱溶融した後蒸発するが、筒13の中で蒸気が上昇した時に冷えて凝縮し、液状または固体状となり、密度が高いために再びるつぼ3中に自然落下することによって循環する。
るつぼ3の上方にある筒、又は上部が蓋になった筒13の内側に、酸化物または窒化物、例えば、シリカまたは窒化シリコンをコーティングすることが好ましい。高純度のシリカや窒化シリコンの粒子をコーティングしてもよい。このようにコーティングすることにより、NaFの固着を容易に防止することができる。
誘導加熱の場合、電源の周波数が比較的低い、例えば、0.5〜5KHz程度の電源を用いると、誘導電流がシリコン融液内で発生し、特有の攪拌現象が発生するので好ましい。特に、この場合、攪拌板等をシリコン融液内に挿入する機械的撹拌をすることなく融液を攪拌できるので、汚染の点からも好ましい。
その他の形態について、以下説明する。ホウ素(B)、アルミニウム(Al)及びカルシウム(Ca)等の不純物を含む溶融シリコンから、当該不純物を短時間に同一のプロセスで効率よく除去する観点からは、更に、下記のような構成を備えるシリコンの製造装置としてもよい。
流通経路の径は小さくすることが、風速を大きくして、経路壁面に処理剤が付着することを抑制するために好ましいが、小さすぎると圧力損失が大きくなる。そのため、流通経路の風速(m・s−1)が、5以上30以下とするように、流通経路の径と風量を決めることが好ましい。
回収手段の形態としては特に限定されないが、例えば、サイクロン、バグフィルター、または湿式捕集手段等を挙げることができる。湿式捕集手段を用いる場合は、溶媒として水を用いると好ましい。
また、吸引口がるつぼ3の内側(上部開口部よりも下方)に設けられているので、蒸発した処理剤を効率的に吸引することが可能である。これにより、処理剤を吸引口で凝縮させることなく効率的に吸引することができる。
本発明に係るシリコンの製造方法により得られるシリコンの不純物濃度は、ホウ素(B)については2.0ppm以下が好ましく、1.5ppm以下がより好ましく、1.0ppm以下がさらに好ましく、0.5ppm以下が特に好ましい。
シリコン中の不純物濃度は、例えば、ICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer:高周波誘導結合プラズマ質量分析計)により分析することができる。前記のとおり、シリコン中の酸素濃度は、例えば、LECO社製酸素窒素水素分析装置TCH600を用いて、不活性ガス雰囲気下インパルス炉加熱抽出−IR検出法により測定することができ、シリコン中の炭素濃度は、例えば、LECO社製炭素硫黄分析装置CS600を用いて、高周波炉燃焼−IR検出法により測定することができる。
本発明に係るシリコンの製造方法により得られるシリコンは、さらに他の精製方法を組み合わせてより純度を高めてもよい。
本発明に係るシリコンの製造方法によって得られたシリコンは、公知の方法で加工することにより、例えば、太陽電池用のシリコンインゴットまたはシリコンウェハーとして用いることができる。または、太陽電池用パネルを制作する際の素材に使用される高純度シリコンとして用いることもできる。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
2 処理剤
3 容器(蒸発除去工程)
4 コイル
6 原材料投入口(投入管)
7 筐体
8 断熱材
9 鋳型
10 支持台
11 ガス導入口
12 排気口
13 筒
14 間隙
25 ガス吹き込み管
33 板
40 吸引手段
51 不純物を含む液相シリコン
52 固相シリコン
53 冷却手段
54 加熱手段
55 排出管
56 容器(一部一方向凝固工程)
100、200、300、400 シリコンの製造装置(蒸発除去工程)
500 シリコンの製造装置(一部一方向凝固工程)
Claims (7)
- 原料シリコンを加熱溶融し、その後容器内で一方向凝固して、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする工程と、
該残部の液相のシリコンを排出する工程と、
該固相のシリコンを処理剤に接触させて加熱溶融するか、又は、
該固相のシリコンを加熱溶融したシリコンに処理剤を接触させ、
該溶融シリコン中の不純物と該処理剤とが反応して生成した生成物を蒸発物として該溶融シリコンから除去する工程と、
をこの順に含むことを特徴とするシリコンの製造方法。 - 前記不純物にはホウ素が含まれる、請求項1に記載のシリコンの製造方法。
- 前記処理剤が塩である、請求項1又は請求項2に記載のシリコンの製造方法。
- 前記処理剤が、アルカリ金属とハロゲンとの塩、アルカリ土類金属とハロゲンとの塩、アルカリ金属とハロゲンとを含む複合塩、及び、アルカリ土類金属とハロゲンとを含む複合塩、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むものである、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
- 前記処理剤が、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ルビジウム(RbF)、フッ化セシウム(CsF)、珪フッ化ソーダ(Na2SiF6)、クリオライト(Na3AlF6)、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムとの混合物、及び、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムと塩化バリウムとの混合物、並びに、これらの混合物、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
- 前記処理剤の量が、前記溶融シリコンに対して、5質量%以上300質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
- 前記の各工程をすべて、不活性ガス雰囲気の中で実施することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
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