JP5910251B2 - シリコンの製造方法、シリコンウェハー及び太陽電池用パネル - Google Patents

シリコンの製造方法、シリコンウェハー及び太陽電池用パネル Download PDF

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Description

本発明は、例えば、太陽電池用パネルを製造する際の素材として用いられるシリコンの製造方法に関する。
ポリシリコン太陽電池には、一般に比抵抗値が0.5〜1.5Ω・cm以上で且つ純度が99.9999%(6N)以上の高純度シリコンが使用される。この高純度シリコンは、原料単価が安価で、比較的不純物を多く含む原料シリコンから不純物を精製・除去して製造するのが工業的方法としては最も好ましい。
原料シリコン中に含まれる不純物のうち、鉄、アルミニウム、チタン及びカルシウムは、溶融シリコン(不純物を含む原料シリコンを溶融させたシリコン)を凝固偏析させることによって、シリコン液相側に除去することができる。また、カルシウム等は、溶融シリコンを1.3×10−2〜1.3×10−4Pa(10−4〜10−6Torr)程度の真空中で蒸発処理することにより、除去することができる。
しかしながら、不純物のうち、ホウ素及びリンは、除去が非常に難しく、特にホウ素の除去が困難である。例えば、溶融シリコン中において、不活性なアルゴンに、酸素若しくは二酸化炭素、又は水蒸気を添加して吹き込むことで、ホウ素、酸素又は水素の化合物としてガス化させて除去する酸化処理が行われている(特許文献1、特許文献2参照)。
上述した方法において、原料シリコン中のホウ素(B)を、水蒸気等を用いて酸化し、BOガスとして除去するには時間がかかり、またその時に同時にシリコンも酸化されてしまい、ロスが大きい。特に、水蒸気を溶融シリコン中に吹き込むと、副反応として大量の水素が発生するために安全上の問題もある。
また、アルカリハライドを用いるシリコンの精製方法としては、原料シリコンのスラッジからスラグ(原料シリコン中の二酸化ケイ素を主成分とするスラグ)を作り、不純物を除去する際の成分調整にこれを使用してシリコンを回収する技術(特許文献3参照)が提案されているが、必ずしも満足な純度のシリコンは得られていなかった。また、スラグが酸化物であるため、使える容器としては、シリカ、アルミナ等の酸化物系耐火材に限られ、装置が高価となる問題があった。また、誘導加熱の際は、シリコンが溶融するまで、グラファイトの棒等を容器の中で加熱する等の必要があり、プロセスが複雑となる場合があった。さらに、スラグ法においては、溶融スラグのシリコンからの分離プロセスが必要であり、この点でもプロセスが複雑となる問題があった。
また、特許文献4には、20gの原料シリコン粉末を粉砕し、これと同じ粒径のNaFと1:1の質量比で混合する工程、1300℃で加熱して固体シリコンを溶融したNaFと接触させる工程、第二の試料を1450℃で10分間加熱してNaF及び原料シリコンを溶融させる工程、これらの試料(NaF及びシリコン)を室温に冷却する工程、水性溶出及び引き続く傾瀉(decantation)及び濾過(filtering)により各試料中のNaFからシリコンを分離する工程が記載されている。
しかし、特許文献4に記載の方法では、NaFと原料シリコンを含む固形物から、濾過等を用いてシリコンを分離することによりシリコンを精製しているに過ぎず、精製効果が十分でなく、またシリコンを分離する作業が容易ではないという問題があった。また、シリコン(Si)の融点付近ではNaFの蒸気圧が高く、SiとNaFを混合したものを加熱して温度を上昇させる間にNaFが蒸発してしまうという問題があった。
上記問題を解決できる手段として、出願人は、特許文献5を開示している。すなわち、ホウ素などの不純物を含む原料シリコンを容器内で溶融して溶融シリコンとし、さらに、容器内にNaF等の塩を投入することにより、溶融シリコン中の不純物と塩とを反応させ、当該不純物を系外に除去することにより、溶融シリコンに含まれる不純物を効率的に除去することができる。
特開平11−49510号公報 特開平4−228414号公報 米国特許第4388286号 特開昭62−502319号公報 国際公開第2011/001919号パンフレット
ここで、特許文献5に係る技術にあっては、溶融シリコン中のホウ素などの不純物と、投入したNaF等の塩とを反応させることにより、塩と反応したホウ素などを蒸発物として系外に排出し、除去している。
しかしながら、原料となるシリコンが酸素や炭素を含んでいると、当該酸素や炭素と溶融シリコンとが反応して酸化物(特にシリカ)や炭化物(特にシリコンカーバイド)を生成する場合があり、これらの酸化物や炭化物が不純物を含む溶融シリコンと塩の間に存在することにより、不純物と塩との反応が阻害され、不純物を効率よく除去できない問題があった。
また、このような場合に、非常に除去されづらいホウ素などの不純物を除去するためには、容器内にNaF等の塩を大量に投入することが必要となる場合があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、NaF等の塩などの処理剤を用いて溶融シリコン中の不純物を除去する際に、処理剤を溶融シリコンに接触させやすくでき、処理剤と不純物とを効率よく反応させ、反応により生成した生成物を蒸発物として溶融シリコンから除去することが可能な、シリコンの製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記課題を解決するための種々の検討を行った結果、溶融シリコン中のホウ素などの不純物と、処理剤とを反応させる前に、あらかじめ溶融シリコンの一部を一方向凝固し、液相のシリコンの排出を行うことにより、シリカなどの酸化物やシリコンカーバイドなどの炭化物を除去し、又はその生成を抑制し、処理剤を溶融シリコンへと確実に到達させて無駄なく添加できることを見出した。これにより、処理剤を溶融シリコンに接触させやすくでき、処理剤と不純物との反応に効率的に寄与させることができた。本発明はかかる知見に基づいて成し遂げられたものである。
すなわち、本発明の要旨は、次の(1)〜()に存する。
(1)原料シリコンを加熱溶融し、その後容器内で一方向凝固して、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする工程と、
該残部の液相のシリコンを排出する工程と、
該固相のシリコンを処理剤に接触させて加熱溶融するか、又は、
該固相のシリコンを加熱溶融したシリコンに処理剤を接触させ、
溶融シリコン中の不純物と該処理剤とが反応して生成した生成物を蒸発物として該溶融シリコンから除去する工程と、
をこの順に含むことを特徴とするシリコンの製造方法。
(2)前記不純物にはホウ素が含まれる、前項(1)に記載のシリコンの製造方法。
(3)前記処理剤が塩である、前項(1)又は(2)に記載のシリコンの製造方法。
(4)前記処理剤が、アルカリ金属とハロゲンとの塩、アルカリ土類金属とハロゲンとの塩、アルカリ金属とハロゲンとを含む複合塩、及び、アルカリ土類金属とハロゲンとを含む複合塩、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むものである、前項(1)〜(3)のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
(5)前記処理剤が、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ルビジウム(RbF)、フッ化セシウム(CsF)、珪フッ化ソーダ(Na2SiF6)、クリオライト(Na3AlF6)、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムとの混合物、及び、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムと塩化バリウムとの混合物、並びに、これらの混合物、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、前項(1)〜(4)のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
(6)前記処理剤の量が、前記溶融シリコンに対して、5質量%以上300質量%以下である、前項(1)〜(5)のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
(7)前記の各工程をすべて、不活性ガス雰囲気の中で実施することを特徴とする前項(1)〜(6)のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法
本発明によれば、溶融シリコン中のホウ素などの不純物と処理剤とを反応させる前に、あらかじめ溶融シリコンの一部を一方向凝固しその残液等を排出することによって、シリカなどの酸化物やシリコンカーバイドなどの炭化物を除去し、又はその生成を抑制できるため、処理剤を溶融シリコンへと確実に到達させて無駄なく添加することができる。このことにより、シリコン中のボロンなどの除去が困難な不純物を効率よく除去することができ、より少ない使用量で処理剤の効果を十分に引き出すことができる。すなわち、本発明によれば、短時間に一連のプロセスで溶融シリコンに含まれる不純物を効率よく除去し、高純度のシリコンとすることが可能な、シリコンの製造方法を提供することができる。
図1は、本発明に係るシリコンの製造方法(一部一方向凝固工程)を実施可能な製造装置の一例を概略的に示す図である。 図2は、本発明に係るシリコンの製造方法(蒸発除去工程)を実施可能な製造装置の一例を概略的に示す図である。 図3は、本発明に係るシリコンの製造方法(蒸発除去工程)を実施可能な製造装置の一例を概略的に示す図である。 図4は、本発明に係るシリコンの製造方法(蒸発除去工程)を実施可能な製造装置の一例を概略的に示す図である。 図5は、本発明に係るシリコンの製造方法(蒸発除去工程)を実施可能な製造装置の一例を概略的に示す図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
1.シリコンの製造方法
本発明に係るシリコンの製造方法は、原料シリコンを加熱溶融し、その後容器内で一方向凝固して、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする工程(以下、一部
一方向凝固工程ともいう)と、該残部の液相のシリコンを排出する工程(以下、液相排出工程ともいう)と、該固相のシリコンを処理剤に接触させて加熱溶融するか、又は、該固相のシリコンを加熱溶融したシリコンに処理剤を接触させ、溶融シリコン中の不純物と該処理剤とが反応して生成した生成物を蒸発物として該溶融シリコンから除去する工程(以下、蒸発除去工程ともいう)と、をこの順に含む。
以下、本発明の製造方法を工程順に説明する。
1.1 一部一方向凝固工程
一部一方向凝固工程は、原料シリコンを加熱溶融し、その後容器内で一方向凝固して、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする工程である。
1.1.1 原料シリコン
原料シリコンは金属シリコンである限り特に限定されず、例えばアーク炭素還元により得られた金属シリコン、シリコンの切削屑、炭素還元により炭化ケイ素を除去したシリコンなど、公知の金属シリコンを用いることができる。
原料シリコンは不純物として、少なくともホウ素(B)、シリカなどの酸化物やシリコンカーバイドなどの炭化物及びその生成原因となる成分元素を含む。さらに、例えば、リン(P)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)又はチタン(Ti)等を含んでいてもよい。
原料シリコン中の不純物の合計濃度は、質量基準で、10〜50ppmであることが好ましく、10〜30ppmであることが好ましい。このような濃度範囲にある原料シリコンは、例えばアーク炭素還元等によって得ることができ、コストを低く抑えることができるので好ましい。
1.1.2 加熱溶融
原料シリコンの加熱溶融は一部一方向凝固を行う容器内で行ってもよく、別の設備で加熱溶融した溶融シリコンを一方向凝固を行う容器内に投入してもよいが、操作が簡便なことから一方向凝固を行う容器内で行うのが好ましい。
容器内で加熱溶融を行う場合には、加熱手段は、容器内に充填されたシリコンを加熱可能なものであれば、特に限定されるものではない。通常、シリコンの融点以上、具体的には1410℃以上が好ましく、1450℃以上がより好ましい。また、該温度の上限は、2000℃以下が好ましく、1700℃以下がより好ましい。
また、誘導加熱炉を用いると、容器内の溶融シリコンが誘導攪拌され、原料シリコンの溶融を促進させることができ、好ましい。
1.1.3 容器
容器の材質については、本発明のシリコンの一部一方向凝固を実施可能なものであれば特に限定されるものではないが、グラファイト又はシリコンカーバイドからなる容器を用いることが好ましい。容器の形状、大きさについては、製造プロセスの規模(加熱手段の規模)などに応じて適宜決定すればよい。
1.1.4 一部一方向凝固(冷却)
容器内に充填された溶融シリコンを冷却して一方向凝固を行い、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする。一方向凝固の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
冷却手段は、容器内に充填された溶融シリコンを冷却し、一方向凝固が可能なものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、加熱を終了して空冷する方式や、冷却手段の内部に冷媒を通すことにより冷却する方式、例えば、水冷式・ガス冷却式などを適宜選択することができる。
一方向凝固の凝固速度は、好ましくは0.01mm/分以上、より好ましくは0.1mm/分以上、更に好ましくは0.5mm/分以上である。前記の一方向凝固の凝固速度は
、好ましくは10mm/分以下、より好ましくは5mm/分以下、更に好ましくは3mm/分以下である。前記下限値以上とすることにより、短時間で偏析のための一方向凝固を完了できるため生産性が向上しうる。また、前記上限値以下とすることにより、偏析をより確実に実施することができ、固相シリコン中の不純物量を低減しうる。
一方向凝固は、上方から下方へ行っても、下方から上方へ行ってもよいが、下方から上方へ行うのが好ましい。一方向凝固を下方から上方へ行うためには、容器の下部を冷却すればよい。
原料シリコンが含む不純物のうち、特にシリカなどの酸化物等はシリコンよりも比重が小さく、溶融シリコンの上に浮遊する場合もあるため、一方向凝固を下方から上方へ行うことでシリカなどの酸化物を効率的にシリコン液相に濃縮することができる。また、後の液相排出工程における液相の排出が容易になる点でも好ましい。このように、本発明における一方向凝固は、好ましくは下方から上方への一部一方向凝固であって、溶融シリコンの一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとするものである。
これにより、原料シリコンに含まれる鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)又はチタン(Ti)に加えて、シリカなどの酸化物やシリコンカーバイドなどの炭化物及びその生成原因となる成分元素を固相のシリコンから排除して、液相のシリコン側に移動させることができる。すなわち、前記の酸化物や炭化物は粒子として固相界面から液相側に排除され、又、炭素等は偏析により固相界面から液相側に排除されることができ、この液相部分を除去することによって、純度の高い固体のシリコンを得ることができる。
図1に、一部一方向凝固工程の一実施形態に係る本発明のシリコンの製造装置500を概略的に示す。図1においては、容器56の上方に加熱手段54を設置し、容器56の底面に接して冷却手段53を設置し、容器56の内部で、溶融シリコンの下方から上方への一部一方向凝固が完了している。溶融シリコンの一部が固相シリコン52として凝固し、残部が不純物を含む液相シリコン51として凝固せずに残っている。
前記の固相のシリコンの原料シリコンに対する割合は、好ましくは質量比で50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。前記の固相のシリコンの原料シリコンに対する割合は、好ましくは質量比で98%以下、より好ましくは95%以上、更に好ましくは90%以上である。前記下限値以上とすることにより、シリコンの高い歩留まりを確保することができる。また、前記上限値以下とすることにより、100%一方向凝固を行った場合と比べて固相のシリコンにおいて不純物が濃縮された部分が格段に少ないため、当該不純物が濃縮された部分を切断除去する工程を省略し得るという長所がある。また、前記下限値以上とすることにより、より多くの固相シリコンを得ることができ、シリコンのロスを防ぐことができる。
1.2 液相排出工程
液相排出工程は、一部一方向凝固工程において形成した残部の液相のシリコンを排出する工程である。
残部の液相のシリコンを排出する手段は、容器から液相のシリコンを排出できる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、容器を傾動して液相のシリコンを排出する方法、容器内の液相のシリコンを上部に設置した公知の吸引手段により吸引して排出する方法、又は容器の上部側壁を貫通する排出管を通して、液相のシリコンを容器に排出する方法等が挙げられる。このうち、容器の上部を貫通する排出管55を通して、液相のシリコンを容器に排出する方法の例を、図1に示した。
ここで、前述の通り、シリカなどの酸化物等の比重は、溶融シリコンの比重より小さいため、シリカなどの酸化物等が液相のシリコンに浮かんだ状態となる場合があり、これら
を液相のシリコンに接した状態で容器の外部に排出することが好ましい。なお、本明細書において、液相シリコンに浮かんだ前記の酸化物等をも含めて液相シリコン又は液相のシリコンということがある。
上記の方法により、シリカなどの酸化物やシリコンカーバイドなどの炭化物及びその生成原因となる成分元素が含まれる不純物が濃縮された液相のシリコンを、固相のシリコンから分離排除することができ、より純度の高い固相のシリコンのみを得ることができる。一部一方向凝固によって得られる前記固相のシリコン中の酸素濃度は、好ましくは1.0wt%(10000ppm)以下、より好ましくは0.1wt%(1000ppm)以下、更に好ましくは0.01wt%(100ppm)以下である。又、前記の固相のシリコン中の炭素濃度は、好ましくは1.0wt%(10000ppm)以下、より好ましくは0.1wt%(1000ppm)以下、更に好ましくは0.01wt%(100ppm)以下である。
尚、シリコン中の酸素濃度は、例えば、LECO社製酸素窒素水素分析装置TCH600を用いて、不活性ガス雰囲気下インパルス炉加熱抽出−IR検出法により測定することができる。又、シリコン中の炭素濃度は、例えば、LECO社製炭素硫黄分析装置CS600を用いて、高周波炉燃焼−IR検出法により測定することができる。
これにより、その後の蒸発除去工程において、処理剤を溶融シリコンに接触させやすくでき、処理剤を無駄なく添加をすることが可能となる。すなわち、後述の蒸発除去工程において、シリカなどの酸化物やシリコンカーバイドなどの炭化物が生成したり、あるいはあらかじめ存在すると、処理剤と溶融シリコンとの接触界面を減少させてしまう場合があり、その結果、ホウ素等の不純物と処理剤との反応が阻害され、不純物を効率よく除去できないおそれがあるが、本発明の製造方法によれば、処理剤を溶融シリコンへと確実に到達させて不純物との反応を促進することができるため、偏析等では除去が困難なホウ素等の不純物を効率よく除去することができる。
得られた固相のシリコンは、再度溶融して溶融シリコンとしてもよい。該溶融シリコンは、同一容器内で後述の蒸発除去工程に供してもよいし、また、容器から取り出して別の容器に移した上で後述の蒸発除去工程に供してもよい。
1.3 蒸発除去工程
蒸発除去工程は、一部一方向凝固工程において形成した、固相のシリコンを処理剤に接触させて加熱溶融するか、又は、固相のシリコンを加熱溶融したシリコンに処理剤を接触させることによって、溶融したシリコン中の不純物と処理剤とが反応して生成した生成物を蒸発物として溶融シリコンから除去する工程である。
溶融シリコン中の不純物と処理剤とを反応させることによって生じた生成物は、蒸気圧が高いことが好ましく、系外に蒸発除去されることが好ましい。これによって、系内から精製されたシリコンを系内から回収することができる。
本発明において、「系内」とは、例えば、溶融シリコンと処理剤との反応、処理剤との反応による不純物の蒸発及び処理剤の蒸発を生じさせる場をいう。より具体的には、例えば、排出口を供えた筐体内に加熱手段や容器等が収容され、筐体内部においてシリコンの精製を行い、排出口を介して不純物を蒸発除去する場合は、筐体内を系内とみなすことができる。
一方、「系外」とは、例えば、溶融シリコンから除去された不純物の回収、処理剤の蒸発物の回収・精製が行われる場をいう。より具体的には、例えば、筐体外を系外とみなすことができる。「処理剤」とは、溶融シリコンに含まれる不純物と反応し得る物質を意味する。ただし、処理剤を、固相のシリコンに接触させて加熱溶融した場合、又は、固相のシリコンを加熱溶融した溶融シリコンに接触させた場合に、処理剤の少なくとも一部が分
解・気化するものであってもよい。
1.3.1 処理剤
処理剤は、原料シリコンの溶融温度で融解し、不純物を含む溶融シリコンと接触、例えば、シリコン液相と処理剤液相との界面を構成することによって、溶融シリコン中のホウ素(B)やアルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)等の不純物と反応し、不純物を気相に蒸発させ得る物質、或いは、不純物を処理剤自体に溶解させて不純物とともに蒸発させ得る物質であれば特に制限されないが、不純物との反応性等の点から、塩(えん)であることが好ましい。
より好ましくは、処理剤はアルカリ金属とハロゲンとの塩、アルカリ土類金属とハロゲンとの塩、アルカリ金属とハロゲンとを含む複合塩、及び、アルカリ土類金属とハロゲンとを含む複合塩、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むものである。特に、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ルビジウム(RbF)、フッ化セシウム(CsF)、珪フッ化ソーダ(NaSiF)、クリオライト(NaAlF)、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムとの混合物、及び、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムと塩化バリウムとの混合物、又は、これらの混合物、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。これらの中でも、シリコン中に処理剤成分が多量に取り込まれることを抑制し、且つ、取り込まれた場合でも容易に精製することが可能である観点から、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のフッ化物が好ましく、アルカリ金属のフッ化物がより好ましく、NaFが特に好ましい。この場合、他の塩との複合塩や混合塩であってもよい。これらの処理剤であれば、処理剤を保持する容器として通常のグラファイトを使用することができ、経済的観点からも好ましい。 処理剤の液相を溶融シリコンの液相の上に形成させる場合は、シリコン(Si)より密度の小さい処理剤を用いるとよい。当該処理剤としては、例えば、Csよりも原子番号の小さなアルカリ金属フッ化物塩が挙げられる。
処理剤中の不純物の含有量は低い方が望ましいが、仮に処理剤に不純物が含まれていたとしても、当該不純物はフッ素化等ハロゲン化されている場合が多く、原料シリコンが溶融する温度領域では、大部分が蒸発してしまうので問題はない。したがって、処理剤として通常の工業用の薬品を用いることが可能である。
処理剤の使用量は、原料シリコン(溶融シリコン)に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上が特に好ましい。また、300質量%以下が好ましく、100質量%未満がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましい。処理剤の使用量を5質量%以上とすることにより、十分な精製効果が得られる。また、本発明では、後述するように、まず、閉鎖系で溶融シリコンと処理剤とを十分に反応させ、その後、溶融シリコン中の不純物と処理剤とが反応して生成した生成物を蒸発物として溶融シリコンから除去するものとしてもよく、これにより処理剤の使用量を減少させることができる。
1.3.2 溶融したシリコンと処理剤との接触
シリコンに処理剤を接触させ、シリコン中の不純物と処理剤とを反応させる形態としては、例えば、原料シリコンと処理剤とを混合した後に、同時に加熱溶融する形態であってもよく、原料シリコンのみを加熱溶融して溶融シリコンとした後、ここに処理剤を添加する形態であってもよい。
原料シリコンと処理剤とを混合した後に加熱溶融する場合は、シリコンが溶融するまでに処理剤が蒸発するが、本発明では後述するように、まず、閉鎖系で溶融シリコンと処理剤とを反応させることにより、処理剤のロスを抑えることができる。尚、処理剤は、事前に処理剤同士を必要に応じて混合し、加熱溶融後に冷却し、フラックス化したものを用いることもできる。
ただし、処理剤の蒸発を抑え効率的に使用する点から、好ましくは、原料シリコンのみを加熱溶融して溶融シリコンとした後、ここに処理剤を添加する。
上記のいずれの場合でも、加熱溶融の温度は、シリコンの融点(1410℃)以上が好ましく、1450℃以上がより好ましい。また、該温度の上限は、2000℃以下が好ましく、1700℃以下がより好ましい。
反応処理時間、すなわち溶融シリコンと処理剤との接触時間は、通常0.1時間以上が好ましく、0.25時間以上がより好ましく、0.5時間以上が特に好ましい。また、通常12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましく、2時間以下が特に好ましい。反応処理時間は、長い程、不純物の低下には効果があるが、プロセスコストの観点からは短い方が望ましい。 かくして、溶融シリコンと処理剤とを接触させることにより、シリコン液相と処理剤液相との界面を構成してもよい。この場合、シリコン液相と処理剤液相との界面を介して、溶融シリコン中の不純物と処理剤とを反応させることができ、該不純物を気相に蒸発又は処理剤中に移行させることができる。また、シリコン液相と処理剤液相との界面を介して、処理剤が蒸発したガス又は複合化合物が一部分解してできた分解性生物のガス等をシリコンに作用させることにより、溶融シリコン中の不純物と処理剤とを反応させることができる。
ここで、溶融シリコンを攪拌して流動させることで、不純物と処理剤との反応を一層促進することができる。処理剤に対する溶融シリコンの流動速度を大きくするためには、例えば、電磁誘導攪拌によって加熱を行えばよい。
処理剤に対する溶融シリコンの流動速度が大きくなることにより反応が促進される理由は、シリコン液相と処理剤液相の界面近傍に形成される反応場として機能する境界層を相対的に薄くできるためと考えられる。境界層は溶融シリコンと処理剤とが接触する際にそれぞれの分子が移動する抵抗となるため、境界層が薄くなることで溶融シリコンと処理剤とが接触しやすくなると推定される。
また、下記(i)〜(iv)に係る方法によっても、不純物と処理剤との反応を一層促進することができる。
(i)不活性ガスをシリコン液相に吹き込む方法。
(ii)高周波誘導炉を用いてシリコン液相を誘導攪拌する方法。
(iii)上層の処理剤を機械的に下層のシリコン層に押し込む方法。或いは、下層の処理剤を機械的に上層のシリコン層に押し上げる方法。機械的に押し込む或いは押し上げるとは、機械的手段、例えばグラファイトでできた凹型の治具を用いて上層の処理剤を下層のシリコン層に押し込む、或いは、下層の処理剤を上層のシリコンに押し上げることをいう。
(iv)回転子を使って液相を攪拌する方法。
1.3.3 蒸発除去
上記の通り、溶融シリコンと処理剤とが接触することにより生成した不純物を含む化合物、すなわちシリコン中の不純物と処理剤とが反応して生成した生成物は、蒸発するか又は一部は処理剤に溶け込み、処理剤とともに蒸発させて除去することができる。
蒸発除去時の圧力(減圧度)は、大気圧であれば十分であるが、場合により10−4Pa程度まで減圧することが好ましい。また、蒸発除去時に、アルゴン等の不活性ガスをキャリアガスとして溶融シリコン中に吹き込むと、蒸発除去が促進されるので好ましい。
不純物を処理剤とともに蒸発除去した後に、必要に応じて、容器内を真空排気することにより残存する処理剤や溶融シリコン中に含まれるその他の不純物(リン等)を除去することも好ましい。
1.3.4 溶融シリコンと処理剤との接触の具体例
溶融シリコンに含まれる不純物と処理剤との反応について、その作用等も含めさらに詳細に説明する。
1.3.4.1 処理剤としてフッ化ナトリウム(NaF)を用いる場合
フッ化ナトリウム(NaF)の1500℃での比重は約1.8であり、シリコンの比重(約2.6)よりも軽い。そのため、系内では、下層であるシリコン液相と上層であるNaF液相との界面が構成される。
このような場合、界面を介して、次の反応が起こると考えられ、溶融シリコン中の不純物であるホウ素(B)は反応物として気相に蒸発し、一部は処理剤中に溶解して移動する。
4NaF+B=3Na+NaBF、又は、3NaF+B=3Na+BF
また、溶融シリコン中の不純物であるアルミニウム(Al)についても、次の反応が起こると考えられる。ホウ素とは違い、生成物の蒸気圧は低いので、この場合は処理剤に溶解するが、処理剤を蒸発除去する時に一緒に除かれる。
Al+6NaF=NaAlF+3Na
一方で、NaF中のNaの一部が、溶融シリコン中に取り込まれるが、これについてはアルカリ除去処理によって容易に除去可能である。
NaBF及びBF等は、最初NaFに溶解すると思われるが、蒸気圧も高く、プロセス中に大部分は蒸発する。仮に、不純物がNaF中に溶解して残っていても、工程S6にて温度を上げるか、又は減圧状態で蒸発させることにより、NaFとともに不純物を一緒に蒸発除去することができる。
アルミニウム(Al)やカルシウム(Ca)も同様のプロセスで、溶融シリコンから除去されることになる。アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)は、NaFと反応し、それぞれ、NaAlF、NaCaFを生成して処理剤に溶解し、処理剤を除去するプロセスにおいて除去される。
尚、NaFとSiとが反応して、SiFが生成することも考えられ、気体のSiFが不純物と反応することも考えられるが、いずれにしても、不純物は蒸気圧の高いフッ化物として除去することができる。
1.3.4.2 処理剤としてNaFとSiFの複合化合物(NaSiF)を用いる場合
処理剤としてNaFとSiFの複合化合物(NaSiF)を用いることもできる。この場合、NaSiFは液相になる前に一部分解が起こり、NaFとSiFになる。
SiFはガスであるので、NaSiFを機械的に溶融シリコン中に押し込んでやると、ガスが融液中の不純物と反応して好都合である。また、NaFと液相シリコン(Si)との反応が抑制されるために、精製するシリコンの歩留まりが向上するという利点がある。
これらの反応は、通常0.5〜2気圧で行うことが好ましく、アルゴン等の不活性ガスでシールした大気圧が経済的に望ましい。大気圧でも、処理剤は殆ど蒸発させることができる。さらに、完全に除去する場合は、約1.3×10〜1.3×10−3Pa(1〜10−5Torr)の真空にして蒸発させることが好ましい。こうすることによって、融液はシリコンだけとなり、鋳型に鋳込むことによって容易に回収できるようになる。
1.3.5 蒸発物の凝縮
また、本発明の蒸発除去工程においては、系内において、不純物を含む処理剤を蒸発させた蒸発物を凝縮手段により凝縮させてもよい。これは、処理剤と溶融シリコン中の不純物との反応においては、反応に寄与しないまま大部分の処理剤が蒸発してしまう場合があるが、凝縮手段を設けることにより、蒸発物を系外に排出せず、凝縮手段により凝縮物(処理剤と溶融シリコン中の不純物とが含まれる。)とするものである。前記凝縮物を、溶融シリコンへと落下させることで、凝縮物中の処理剤を溶融シリコンと接触させることができる。すなわち、前記凝縮物を系内で処理剤として利用することになる。
1.3.5.1 凝縮手段
凝縮手段は系内の上部に設けられていることが好ましく、前記蒸発物を冷却することによって凝縮し、凝縮物とする冷却手段であることがより好ましい。系内の上部とは、溶融シリコンや処理剤の上方であって、溶融シリコン及び処理剤の液相界面に対向する位置をいう。これによって、凝縮手段において凝縮された凝縮物は、例えば、自然落下、下降気流等によって再び溶融シリコンへと落下し、反応に寄与することとなる。凝縮手段の具体的な形態については、後述する。
また、凝縮物の温度を処理剤の融点以下として固化させ、凝固物を溶融シリコンへと落下させるとより好ましい。凝縮物を固化させることで、凝固物中に不純物が溶解するのを抑制することができる。また、凝固物は密度が高く、系内で自然落下して、溶融シリコンへと容易に到達し得る。
尚、凝縮物が凝縮手段に固着した場合は、例えば、凝縮物に振動を与える、J字型などの棒で凝縮物を掻き落とす等の方法により、凝縮手段に付着した凝縮物を溶融シリコンへと落下させることが好ましい。
1.3.5.2 凝縮物の再利用
このように、蒸発した処理剤を、凝縮手段により凝縮させて凝縮物とした後、該凝縮物を溶融シリコンへと落下させて再度処理剤として利用することで、溶融シリコンと処理剤との界面が常時適切に形成される。本発明では、反応系内で処理剤を再利用することが可能であり、これによって、処理剤を無駄なく反応に寄与させることができる。
本発明の蒸発除去工程においては、溶融シリコン中の不純物を除去する。そして、不純物の除去を終了後、処理剤を蒸発除去するとよい。また、さらに、純度を上げたい場合は、処理剤の蒸発除去の後、新たに処理剤を添加し、再度処理剤によるシリコンの精製を繰り返すとよい。
また、蒸発除去された処理剤を回収しておけば、次回以降のシリコン精製の際、再び処理剤として用いることもできる。場合によっては、公知の方法で精製した後に、用いてもよい。
また、本発明の蒸発除去工程においては、凝縮手段により系内で凝縮させた処理剤と、系外から新たに添加される処理剤とを使い分けてもよい。例えば、溶融シリコン中の不純物濃度が高い、精製プロセスの前半においては、凝縮手段により凝縮物を系内にて処理剤として利用し、溶融シリコン中の不純物濃度の低いプロセスの後半(例えば、精製時間全体の8割以上が経過した際、または、溶融シリコン中のホウ素濃度が質量基準で1ppm以下となった際)では、一度系内の処理剤を除去した後、系外から新品の処理剤(未使用の処理剤または精製後の処理剤)を投入して引き続き処理剤によるシリコンの精製を行うとよい。
凝縮手段に、不純物を含む凝縮物が付着して一定時間を経過すると、凝縮物に含まれる不純物の量が増加し、自然落下等により系内の下部において溶融シリコンと接触する該凝縮物に含まれる不純物の量も増加することとなる。
したがって、このような場合は、凝縮手段に付着した凝縮物を凝縮手段から除去することにより、不純物の含有量の多い凝縮物が除去され、自然落下等により系内の下部において溶融シリコンと接触する凝縮物に含まれる不純物の量を低減することができる。
凝縮手段に付着した凝縮物を凝縮手段から除去する方法としては、例えば、凝縮物が付着した凝縮手段を凝縮物が付着していない凝縮手段と交換する方法、または凝縮物を除去する手段により凝縮手段に付着した凝縮物を除去する方法が挙げられる。凝縮物を除去する手段としては、具体的には、例えば、凝縮物に振動を与える手段、凝縮物を掻き落とすための手段(例えば、J字型などの棒)等が挙げられる。
1.3.6 その他の形態
ホウ素(B)、アルミニウム(Al)及びカルシウム(Ca)等の不純物を含む溶融シリコンから、当該不純物を短時間に同一のプロセスで効率よく除去する観点からは、下記のような形態を含むシリコンの製造方法としてもよい。
1.3.6.1 系内から酸素を除去する形態
系内に酸素が存在する場合、当該酸素と溶融シリコンとが反応して酸化物(特に、シリカ)が生成する。シリカは溶融シリコンと処理剤との界面に固体状で存在することとなり、処理剤と溶融シリコンとの接触界面を減少させてしまう場合がある。
すなわち、シリカの生成によって、不純物と処理剤との反応が阻害され、不純物を効率よく除去できない虞がある。上記においては、当該酸化物を処理剤中に溶解させるものとして記載したが、下記のような工程を含むことで、シリカの生成を防いでもよい。
すなわち、系内に酸素を含まないガスを流通させることで、系内から系外へと酸素を除去する工程を含むとともに、不純物を含む溶融シリコンと処理剤とを系内で接触させ、該溶融シリコン中の不純物と処理剤とを反応させ、該不純物を系外に除去する工程を含む、シリコンの製造方法とすることにより、系内の酸素が除去されることとなる結果、シリカの生成を抑制することができる。
この場合、溶融シリコンの液相中に酸素を含まないガスを吹き込むことによって、系内に酸素を含まないガスを流通させてもよい。これによって、溶融シリコン中の酸素も系外へと追い出すことができ、シリカの生成を一層抑制することができる。
酸素を含まないガスとしては、アルゴンガスが好ましい。
また、系内に酸素を含まないガスを流通させる場合、当該ガスをキャリアガスとして使用することもできる。すなわち、溶融シリコンから蒸発除去された不純物を、酸素を含まないガスをキャリアガスとして系外へ除去することができる。これにより、酸素の除去と不純物の除去とを同時に行うことが可能である。
1.3.6.2 処理剤を効率よく回収して再利用する形態
上記説明では、系内で蒸発した処理剤を凝縮・落下させるものとして説明したが、蒸発した処理剤を系外で回収してもよい。例えば、以下のようなシリコンの製造方法とすることによって、処理剤を効率よく回収して再利用することができる。
これによって、処理剤のロスを抑えることができ、新たな処理剤を用意する必要がなくなる結果、短時間かつ効率的に溶融シリコンを精製することが可能となる。ただし、当該形態は上記した工程S2とは相反する概念である。当該形態を本発明に組み込む場合は、例えば、シリコン精製完了後の処理剤の蒸発除去時に適用するとよい。
すなわち、不純物を含む溶融シリコンと処理剤とを系内で接触させ、該不純物を含む処理剤を蒸発させて蒸発物とすることにより該不純物を該溶融シリコンから除去する工程と、該蒸発物と不純物とを含んだヒュームを、吸引口から吸引して流通経路を介して系外に除去する工程と、吸引したヒュームを捕集して回収する工程と、回収したヒュームを精製し、精製物とする工程と、精製物を系内へ投入し、不純物を含む溶融シリコンと接触させる工程とを含む、シリコンの製造方法とすることによって、系外において、効率的に処理剤(気体状、液状、または粉体状)を回収することができる。
尚、蒸発した処理剤を吸引口にて不要に凝固させることなく吸引することができ、且つ、流通経路における処理剤の詰まりを防止できる観点から、吸引口または流通経路を処理剤の融点よりも高温となるように設定しておくことが好ましい。
また、例えば、ヒュームをキャリアガスとともに吸引する場合において、流通経路における風速(m・s−1)を5以上30以下とすることによっても、流通経路における処理剤の付着を抑制することができ、流通経路の詰まりを防止することができる。また、吸引の際は、吸引口を処理剤または溶融シリコンの液面近傍に設置するとよい。これにより、吸引口における温度を容易に処理剤の融点以上の温度とすることができるとともに、蒸発した処理剤を効率よく吸引することができる。
また、処理剤を回収した後で精製するとよい。精製の方法としては、例えば、ヒュームを捕集した後、凝縮させて凝縮物として回収し、該凝縮物を処理剤の融点以上の温度で溶融させることによって精製することができる。
例えば、ヒュームを、サイクロン又はバグフィルターによって凝縮させ、凝縮物として回収することができる。
または、ヒュームを湿式捕集によって溶媒中に捕集してスラリーとし、該スラリーを乾燥することで塊状の凝縮物として回収することもできる。この場合、溶媒としては水が好適に用いられる。尚、湿式捕集を経て塊状の凝集物として回収することで、以下の効果も奏する。
すなわち、塊状の凝集物は、粉体よりも容易に溶融・精製することができる。これは、塊状となることで空隙が減少し、密度が大きくなる結果、熱伝導率が高くなり、内部にまで容易に熱を伝導させることができるためと考えられる。これにより凝集物を容易に溶融させることができ、内部に存在する不純物を効率的に除去、精製することができる。
1.3.6.3 大気雰囲気下においてシリコンを製造する形態
不活性ガスを流通させながらシリコンを製造する形態については既に説明した。しかしながら、例えば、大規模でシリコンの製造を行いたい場合、系内を完全に不活性ガス雰囲気とすることは難しい場合がある。
この観点から、大気雰囲気でシリコンの製造を行うことができれば、効率的にシリコンを製造することができるものと考えられる。また、大気雰囲気で製造することができれば製造コストを抑えることもできる。
しかしながら、上述したように、大気雰囲気では、酸素とシリコンとが反応することによってシリカが生成し、反応界面が減少してしまうという問題がある。この問題は、例えば、下記のようなシリコンの製造方法とすることにより解決できる。
すなわち、不純物を含む溶融シリコンと処理剤とを、酸素を含む系内で接触させ、該溶融シリコン中の不純物と処理剤とを反応させ、該不純物を系外に除去する工程を含むとともに、処理剤を、溶融シリコンの液面部分及び/又は内部であって、酸素と反応することによって生成した酸化物の存在しない部分に供給する、シリコンの製造方法とすることによって、溶融シリコンと処理剤とを適切に接触させることが可能となる。
この場合は、例えば、溶融シリコンの液面に生成した酸化物を移動させることによって、溶融シリコンの液面部分及び/又は内部に、酸化物の存在しない部分を作り出すとよい。
酸化物の移動については、機械や道具を使用して移動させる形態の他、誘導加熱によって溶融シリコンを誘導攪拌し、流れを誘起することで酸化物を一定の方向に移動させる形態、または、プラズマ処理等によって酸化物を移動若しくは除去する形態であってもよい。
さらには、溶融シリコンの内部に処理剤を押し込むことにより、溶融シリコンの内部における酸化物の存在しない部分に処理剤を供給する形態であってもよい。
以上のような形態であっても、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)及びカルシウム(Ca)等の不純物を含む溶融シリコンから、短時間に同一のプロセスで不純物を効率よく除去することができる。
本発明においては、一部一方向凝固工程、液相排出工程及び、蒸発除去工程を一連のプロセスとして実施することが、短時間に効率よくシリコンを製造しうる点で好ましく、各工程をこの順で実施することが好ましい。また、同一容器内で上記の各工程を実施してもよい。さらに、各工程を、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気の中で実施することが好ましく、中でもアルゴンガスを用いるのが特に好ましい。このような態様で本発明を実施することにより、気相からシリコンへの不純物の混入を抑制することができ、不純物の少ない高純度のシリコンを製造することができる。
1.3.7 蒸発除去工程で用いるシリコンの製造装置
次に、本発明の蒸発除去工程で用いるシリコンの製造装置について説明する。
本発明の蒸発除去工程で用いる容器は、溶融シリコンと処理剤とが充填されるものであり、溶融シリコン中の不純物と処理剤とを反応させることができる。この場合において、容器内で上記溶融シリコンと処理剤との界面が形成されることが、反応促進の観点から好ましい。そして、不純物は、気相に蒸発し、または、処理剤中に溶解して該処理剤と共に気相に蒸発することによって、溶融シリコンから上部開口部及び排出手段を介して系外へと除去される。
容器の材質については、本発明に係るシリコンの製造方法(蒸発除去工程)を実施可能なものであれば特に限定されるものではないが、グラファイトまたはシリコンカーバイドからなる容器を用いることが好ましい。容器の形状、大きさについては、精製プロセスの規模(加熱手段の規模)に応じて適宜決定すればよい。
本発明の蒸発除去工程で用いる加熱手段は、容器内に充填された溶融シリコンと処理剤とを加熱可能なものであれば特に限定されるものではない。特に、誘導加熱炉を用いると、容器内の溶融シリコン及び処理剤が誘導攪拌され、反応を促進させることができ好ましい。
本発明の蒸発除去工程で用いる凝縮手段は、容器の上部開口部の上方に設けられ、前記不純物を含む処理剤を蒸発させた蒸発物を凝縮させ、凝縮物とすることが可能なものであれば、特に限定されるものではない。凝縮手段は、該蒸発物を冷却することによって凝縮させ凝縮物とする冷却手段であることが好ましい。
例えば、凝縮手段は、系内の上下方向に延在する側壁を有するとともに、上部及び下部が開口部とされた、中空の筒状体とすることができる。このような筒状体の内部(中空部)においては、温度分布が存在し、容器側から離れるにしたがって温度が低下する。すなわち、蒸発した処理剤は、筒状体の内部を上昇するにつれて冷却され、いずれは凝縮することとなる。
本発明の蒸発除去工程で用いるシリコンの製造装置は、前記凝縮物を処理剤として再利用する手段をさらに備えることが好ましい。凝縮物を処理剤として再利用する手段としては、例えば、容器の上部開口部から溶融シリコンへと落下させる手段が挙げられる。容器の上部開口部から溶融シリコンへと落下させる手段としては、具体的には、例えば、凝縮物に振動を与える手段、凝縮物を掻き落とすための手段(例えば、J字型などの棒)等が挙げられる。
凝縮した処理剤の密度が増加し、筒状体の内部から容器の上部開口部へと、例えば、自然落下、下降気流等によって溶融シリコンへと接触することにより、反応に寄与する。一方で、蒸発除去された不純物は蒸気圧が大きいため、筒状体の内部において凝縮することなくそのまま上昇して系外へと排出される。これによって、不純物を除去しつつ、凝縮した処理剤を再度溶融シリコン中に供給することが可能となる。
尚、蒸発した処理剤は、筒状体の中空の空間部で冷却・凝縮されてもよく、筒状体の内部側壁に付着して凝縮されてもよい。内部側壁に付着した凝縮物であっても、側壁から剥がれ落ちることで、または、側壁から流れ落ちることで、容器の上部開口部へと自然落下可能である。この際は、筒状体に振動を加えられるような手段を設けると、処理剤の落下が促され好ましい。
筒状体の形状および大きさは特に限定されるものではない。蒸発した処理剤が冷えて凝縮し、自由落下するような構造であればよく、例えば、上記容器の上部開口部と同程度の大きさの口(中空部)を有し、容器から上方に延びる筒状体とすることができる。
筒状体の材質についても系内の温度に耐え得るものであって、蒸発した処理剤との反応を生じ難いものであれば特に限定されるものではない。例えば、上記容器と同様の材質のものとすることができる。
また、筒状体の周囲に温度制御のためにセラミック等の断熱材をつけてもよい。さらに、筒状体の開口部には、ガスだけを逃がすようにカーボンフェルト等でフィルターをつけてもよい。
また、凝縮手段を筒状体とする場合、当該筒状体の内部には、仕切り部材が設けられていてもよい。仕切り部材によって、筒状体内部の表面積を増大させることができる。また、蒸発した処理剤の上昇を制御することもできる。仕切り部材の形状や材質については特に限定されるものではない。
また、筒状体の上部が閉じられていてもよい。これにより蒸発した処理剤を適切に捕捉し凝縮させることができる。ただし、筒状体の上部を閉じる場合は、蒸発除去された不純物の逃げ道として、筒状体と容器との間、または筒状体の側壁等に間隙を設けることが好ましい。これにより、系内において処理剤だけでなく不純物まで循環してしまうことを防止することができる。
一方、凝縮手段は、系内の上下方向とは交差する方向に延在する板状体であってもよい。このような形態であっても、板状体の容器側表面近傍にて、蒸発した処理剤を凝縮させることができる。特に、水冷定盤とするとよい。蒸発した処理剤をより適切に凝縮させることができるからである。
板状体の材質については、上記筒状体と同様のものとすればよい。また、板状体の形状、大きさについては、容器の大きさを考慮して適宜決定すればよい。尚、板状体とする場合も、板状体と容器との間、または板状体の一部に、蒸発除去された不純物の逃げ道として間隙や孔を設けることが好ましい。
板状体の設置位置は、容器の上部開口部の上方であればよい。特に、系内において処理剤の蒸気で満たされている位置に設けることが好ましい。
凝縮手段においては、蒸発した処理剤が融点以下に凝縮されれば、処理剤を落下させるという効果を期待できる。特に、凝縮手段は、蒸発した処理剤を凝固点以下にまで冷却する手段であることが好ましい。
したがって、不要な温度上昇を避けるべく、凝縮手段は加熱手段よりも外側(上方)に設けられることが好ましい。例えば、加熱炉を誘導炉とした場合、コイルよりも上方に延びる側壁を有する筒状体、または、コイルよりも上方に設けられた板状体とすることが好ましい。
また、本発明の蒸発除去工程で用いるシリコンの製造装置は、前記凝縮手段に付着した凝縮物を凝縮手段から除去する手段をさらに備えることが好ましい。凝縮手段に付着した凝縮物を凝縮手段から除去する手段をさらに備えることにより、不純物の含有量の多い凝縮物が凝縮手段から除去され、処理剤として利用される凝縮物に含まれる不純物の量を低減することができる。
凝縮手段に付着した凝縮物を凝縮手段から除去する手段としては、例えば、凝縮物を溶融シリコンへと落下させ、反応に寄与させる手段、凝縮物を系外に除去する手段が挙げられる。具体的には、例えば、凝縮物に振動を与える手段、凝縮物を掻き落とすための手段(例えば、J字型などの棒)、凝縮物を高温にして系外に排出する手段、系内と系外とを連通するように設けられた排出口等が挙げられる。これらの手段は、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
排出手段は、処理剤との反応によって溶融シリコンから除去された不純物、不純物を含む処理剤を蒸発させた蒸発物、または該蒸発物を凝縮手段により凝縮させた凝縮物を系外に排出する手段である。本発明の蒸発除去工程で用いるシリコンの製造装置は、複数の排出手段を備えていてもよい。
ここで排出とは、系内から系外への排出を意味する。すなわち、排出手段としては、例えば、系内と系外とを連通するように設けられた排出口が挙げられる。上記したように、排出口は、チャンバー等の筐体の一部に設けることができる。特に、筐体の上部に設けることが好ましい。
尚、排出手段が不純物を含む処理剤を蒸発させた蒸発物を吸引する吸引手段であってもよい。これにより、処理剤を逃すことなく凝縮させることができる。
尚、吸引手段によって蒸発除去された不純物も吸引されることとなるが、上述したように蒸発除去された不純物は蒸気圧が大きいため、気体で系外に除去されるか、又は、系外では温度が低いため、やはり凝縮し、処理剤と共に回収される。
また、本発明の蒸発除去工程で用いるシリコンの製造装置には、さらに、前記蒸発物を回収するための回収手段が備えられていてもよい。回収手段は製造装置の系外に備えられていることが好ましい。
例えば、シリコンの精製が完了した後、処理剤を蒸発除去する場合、回収手段によって蒸発除去した処理剤を系外にて回収しておけば、次回のシリコン精製時に再び処理剤として再利用することができる。
回収手段の具体例としては、サイクロン、バグフィルター又は湿式捕集手段のいずれかが好ましい。
シリコンの精製が完了し、処理剤を蒸発除去する場合は、冷却手段を機能させないようにする(例えば、筒状体若しくは板状体の向きを変更する、または、筒状体若しくは板状体を系内から系外へと取り外す等)。これにより、処理剤をスムーズに蒸発除去させることができる。
本発明の蒸発除去工程で用いるシリコン製造装置は、前記容器に処理剤を充填する手段を備えていてもよい。容器に処理剤を添加する場合、液状の処理剤を添加してもよいし、固体状にした処理剤を添加してもよい。いずれの場合も、例えば、原材料投入口(投入管)を通じて容器に添加することができ、又、処理剤を入れたバケット(bucket)から直接容器に添加してもよい。固体状にした処理剤を容器に添加する場合、粉末状にした処理剤を添加してもよく、又、棒状に成形した処理剤を、容器の中に挿入してシリコンと接触させてもよい。
図2に、蒸発除去工程の一実施形態に係る本発明のシリコンの製造装置100を概略的に示す。この装置100は、密閉可能なチャンバー、またはアルゴン等の不活性ガスでシールできる筐体7、その内部に配置したグラファイト等の容器(るつぼ)3、誘導加熱用のコイル4、断熱材8、るつぼ3を支持する支持台10、及びシリコンを鋳込むための鋳型9などから成り、原料の金属シリコン1、処理剤2は、るつぼ3の中に液相分離の形で充填されている。
筐体7には、ガスの導入口11、排気口12、原材料投入口6等が取り付けられている。筐体7として真空容器を用いる場合は、チャンバーの中を0.01〜2×10Pa(真空から2気圧)程度の圧力範囲まで制御することができるが、通常の、Ar等の不活性ガスシール筐体を用いる方が経済的である。
また、加熱用の誘導コイル4、断熱材8、るつぼ3は、一体で傾動できるようになっており、処理の済んだ原料金属シリコン1は、鋳型9に流しこまれる。
図2においては、まず、るつぼ3の上方にある筒、又は上部が蓋になった筒13とるつぼ3との間を開けて、粉又は粒状の処理剤を、原材料投入口6から溶融シリコン表面に一定量投入し、投入した後に、筒13をるつぼ3の上方に再び設置する。
投入された処理剤は、加熱溶融した後蒸発するが、筒13の中で蒸気が上昇した時に冷えて凝縮し、液状または固体状となり、密度が高いために再びるつぼ3中に自然落下することによって循環する。
これによって、反応に関与せずに無駄に蒸発する処理剤を減らすことができる。また、シリコン1中の不純物は処理剤2と反応してガス状反応生成物となる。当該ガス状反応生成物は、筒13の上部開口、または、るつぼ3と筒13との間の間隙14から系外に除去され、溶融シリコンが精製される。尚、ガス状反応生成物をより効率的に系外に排出するために、筒13の一部にガスが通過できる小さな穴を空けておくことも有効である。
一定時間後に、筒13をるつぼ3から遠ざけ、残っている処理剤を蒸発させる。この時、処理剤にも不純物が微量溶解しているので、このプロセスによっても溶融シリコンは精製されることとなる。蒸発物は、排気口12から系外に排気される。必要によっては、これらのプロセスを繰り返すことによって、溶融シリコン1は高純度化される。
るつぼ3の上方にある筒、又は上部が蓋になった筒13の内側に、酸化物または窒化物、例えば、シリカまたは窒化シリコンをコーティングすることが好ましい。高純度のシリカや窒化シリコンの粒子をコーティングしてもよい。このようにコーティングすることにより、NaFの固着を容易に防止することができる。
図3に、蒸発除去工程の一実施形態に係る本発明のシリコンの製造装置200を概略的に示す。図3の装置200においては、上記の両液相の界面を動かすことが不純物処理に有利であることに鑑み、液相の中に不活性ガスであるアルゴン等をガス吹き込み管25で吹き込むことによって液相を攪拌し、両液相界面での接触状態を改善可能としている。こうすることにより、不活性ガスとともに、界面での不純物の反応生成物を効率よく追い出すこともできる。
溶融シリコン1の撹拌に関しては、上記のようなガス吹き込みの変わりに、高周波誘導炉を用いてシリコン液相を誘導攪拌することや、また、攪拌板を溶融シリコン1中で回転し液相を攪拌する方法も有効である。
誘導加熱の場合、電源の周波数が比較的低い、例えば、0.5〜5KHz程度の電源を用いると、誘導電流がシリコン融液内で発生し、特有の攪拌現象が発生するので好ましい。特に、この場合、攪拌板等をシリコン融液内に挿入する機械的撹拌をすることなく融液を攪拌できるので、汚染の点からも好ましい。
図4に、蒸発除去工程の一実施形態に係る本発明のシリコンの製造装置300を概略的に示す。図4の装置300においては、装置100の筒13に替えて、板33が設けられている。このように筒13に替えて板33が系内の上下方向と交差するように設けられていることで、板33のるつぼ3側の表面近傍において、蒸発した処理剤を適切に凝縮させることができる。
装置100、200、300に例示されるようなシリコンの製造装置によって、上記した本発明に係るシリコンの製造方法(蒸発除去工程)を適切に実施することができる。
その他の形態について、以下説明する。ホウ素(B)、アルミニウム(Al)及びカルシウム(Ca)等の不純物を含む溶融シリコンから、当該不純物を短時間に同一のプロセスで効率よく除去する観点からは、更に、下記のような構成を備えるシリコンの製造装置としてもよい。
例えば、不純物を含む溶融シリコンと処理剤とを系内で接触させ、該不純物を含む処理剤を蒸発させ蒸発物とし、該蒸発物と該不純物とを含んだヒュームを吸引口から吸引して系外に除去する、シリコンの製造装置であって、系内には、底部と側部と上部開口部とを有し、不純物を含む溶融シリコンと処理剤とが充填される容器、不純物を含む溶融シリコンと処理剤とを加熱する加熱手段、溶融シリコン及び処理剤の液面と対向する位置に設けられた吸引口、及び、吸引口と接続され系外へと延びる流通経路が備えられ、系外には、流通経路に接続された吸引手段及び回収手段が備えられる、シリコンの製造装置によって、溶融シリコンの精製の際に、蒸発した処理剤や不純物を吸引口から流通経路を介して系外へと吸引・除去することができる。そして、系外に設けられた回収手段によって、処理剤を回収することができ、処理剤を再利用することが可能となる。
ここで、吸引口が、溶融シリコン及び処理剤の液面と対向する位置であって、容器の上部開口部よりも下方に設けられるとよい。また、蒸発した処理剤や不純物を効率よく吸引するために、溶融シリコンと処理剤とが充填される容器側壁の最上端部の風速(m・s−1)を、0.5以上とすることが好ましい。
流通経路の径は小さくすることが、風速を大きくして、経路壁面に処理剤が付着することを抑制するために好ましいが、小さすぎると圧力損失が大きくなる。そのため、流通経路の風速(m・s−1)が、5以上30以下とするように、流通経路の径と風量を決めることが好ましい。
このような形態にあっては、回収した処理剤を精製するため、処理剤を溶融させる加熱手段を系外にさらに備えるとよい。回収した処理剤を加熱溶融させることで、処理剤中に溶解・残存する不純物を除去することができる。
回収手段の形態としては特に限定されないが、例えば、サイクロン、バグフィルター、または湿式捕集手段等を挙げることができる。湿式捕集手段を用いる場合は、溶媒として水を用いると好ましい。
図5に、蒸発除去工程の一実施形態に係るシリコンの製造装置400を概略的に示す。図5の装置400においては、装置100の筒13に替えて、吸引手段40が設けられている。吸引手段40は、吸引口が溶融シリコン1及び処理剤2の液面と対向する位置に設けられている。
また、吸引口がるつぼ3の内側(上部開口部よりも下方)に設けられているので、蒸発した処理剤を効率的に吸引することが可能である。これにより、処理剤を吸引口で凝縮させることなく効率的に吸引することができる。
以上のようなシリコンの製造装置によれば、本発明に係るシリコンの製造方法を適切に実施することができる。また、一部一方向凝固工程、液相排出工程及び、蒸発除去工程を一連のプロセスとして実施することが、短時間に効率よくシリコンを製造しうる点で好ましく、各工程で用いる装置を連結して自動化することが好ましい。また、同一容器内で上記の工程をすべて実施してもよい。さらに、各工程で用いる装置を、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気の中で管理し、これらの雰囲気の中で装置を運転することが特に好ましい。中でもアルゴンガスを用いるのが更に好ましい。このような態様で本発明を実施することにより、気相からシリコンへの不純物の混入を抑制することができ、不純物の少ない高純度のシリコンを製造することができる。
本発明に係るシリコンの製造方法により得られるシリコンの不純物濃度は、ホウ素(B)については2.0ppm以下が好ましく、1.5ppm以下がより好ましく、1.0ppm以下がさらに好ましく、0.5ppm以下が特に好ましい。
また、アルミニウム(Al)については、通常20ppm以下が好ましく、18pm以下がより好ましく、2ppm以下がさらに好ましく、1ppm以下が特に好ましい。さらに、カルシウム(Ca)については、通常20ppm以下が好ましく、5ppm以下がより好ましく、2ppm以下がさらに好ましく、1ppm以下が特に好ましい。
シリコン中の不純物濃度は、例えば、ICP−MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer:高周波誘導結合プラズマ質量分析計)により分析することができる。前記のとおり、シリコン中の酸素濃度は、例えば、LECO社製酸素窒素水素分析装置TCH600を用いて、不活性ガス雰囲気下インパルス炉加熱抽出−IR検出法により測定することができ、シリコン中の炭素濃度は、例えば、LECO社製炭素硫黄分析装置CS600を用いて、高周波炉燃焼−IR検出法により測定することができる。
本発明に係るシリコンの製造方法により得られるシリコンは、さらに他の精製方法を組み合わせてより純度を高めてもよい。
2.シリコンの用途
本発明に係るシリコンの製造方法によって得られたシリコンは、公知の方法で加工することにより、例えば、太陽電池用のシリコンインゴットまたはシリコンウェハーとして用いることができる。または、太陽電池用パネルを制作する際の素材に使用される高純度シリコンとして用いることもできる。
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うシリコンの製造方法及び製造装置、シリコンウェハー、並びに、太陽電池パネルもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
本発明に係るシリコンの製造方法によって得られたシリコンは、例えば、シリコンウェハーまたは太陽電池用パネルの材料として利用することができる。
1 溶融シリコン
2 処理剤
3 容器(蒸発除去工程)
4 コイル
6 原材料投入口(投入管)
7 筐体
8 断熱材
9 鋳型
10 支持台
11 ガス導入口
12 排気口
13 筒
14 間隙
25 ガス吹き込み管
33 板
40 吸引手段
51 不純物を含む液相シリコン
52 固相シリコン
53 冷却手段
54 加熱手段
55 排出管
56 容器(一部一方向凝固工程)
100、200、300、400 シリコンの製造装置(蒸発除去工程)
500 シリコンの製造装置(一部一方向凝固工程)

Claims (7)

  1. 原料シリコンを加熱溶融し、その後容器内で一方向凝固して、一部を固相のシリコンとし、残部を液相のシリコンとする工程と、
    該残部の液相のシリコンを排出する工程と、
    該固相のシリコンを処理剤に接触させて加熱溶融するか、又は、
    該固相のシリコンを加熱溶融したシリコンに処理剤を接触させ、
    該溶融シリコン中の不純物と該処理剤とが反応して生成した生成物を蒸発物として該溶融シリコンから除去する工程と、
    をこの順に含むことを特徴とするシリコンの製造方法。
  2. 前記不純物にはホウ素が含まれる、請求項1に記載のシリコンの製造方法。
  3. 前記処理剤が塩である、請求項1又は請求項2に記載のシリコンの製造方法。
  4. 前記処理剤が、アルカリ金属とハロゲンとの塩、アルカリ土類金属とハロゲンとの塩、アルカリ金属とハロゲンとを含む複合塩、及び、アルカリ土類金属とハロゲンとを含む複合塩、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むものである、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
  5. 前記処理剤が、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化ルビジウム(RbF)、フッ化セシウム(CsF)、珪フッ化ソーダ(Na2SiF6)、クリオライト(Na3AlF6)、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムとの混合物、及び、フッ化ナトリウムとフッ化バリウムと塩化バリウムとの混合物、並びに、これらの混合物、よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
  6. 前記処理剤の量が、前記溶融シリコンに対して、5質量%以上300質量%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
  7. 前記の各工程をすべて、不活性ガス雰囲気の中で実施することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のシリコンの製造方法。
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